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ハリス氏対トランプ氏で接戦予想の米大統領、株価にどう織り込むか

ハリス氏対トランプ氏で接戦予想の米大統領、株価にどう織り込むか

本記事では、接戦が予想される米大統領選が米国株市場に与える影響を考察します。「トランプラリー」、「トランプトレード」やトランプ氏再選が米国株市場に与える影響については過去の記事で解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。支持率横並び、接戦予想の米大統領6月の第1回討論会、7月のトランプ氏の暗殺未遂事件を受けて、今年の大統領選挙戦はトランプ候補優位との見方が強まっていましたが、バイデン氏の選挙戦撤退から大統領選の先行きに対する不透明感が強まっています。民主党は8月19日から22日までシカゴで開催される党大会で新たな候補者を選出する必要がありますが、ハリス副大統領が候補とされています。ブルームバーグの世論調査によると、選挙戦の結果を左右する可能性のある激戦7州全体でのハリス氏の支持率は48%、トランプ氏は47%と1ポイント差に迫る接戦になっており、ロイター通信の調査では、ハリス氏がトランプ氏を2ポイント上回っていました。11月の投票までは様子見ムードかアナリストらは、政治ニュースで市場は変動するものの、11月の投票を前に多くのことが変わる可能性があり、投資家の関心はファンダメンタルズ・FRB(米連邦準備理事会)の政策動向・地政学的な懸念の3つであると想定しています。特に、金利と企業の利益成長に焦点が当てられており、2024年上期は生成AIへの期待が市場の成長を牽引し、S&P500のリターンの30%はエヌビディア1社によるものでした。また、9月の利下げを確信するにつれて、地政学的リスクへの注目が高まりつつあります。7月30-31日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の定例会合の会見では、パウエル議長から9月にも利下げに動く可能性があるとの見解が示されています。市場関係者の多くは、ウクライナ戦争、ガザとイスラエルの紛争、米中関係の継続により、地政学的緊張から下半期に逆風が強まることを懸念し、下落リスクを回避するポートフォリオへ調整しています。一方、防衛関連株セクターを追跡する指数は7月に9.2%上昇し、2022年10月以来の最大の値上がりとなりました。これは、S&P500指数全体の1.1%上昇の8倍以上のパフォーマンスでした。大統領選挙年は、夏季にサマーラリーが期待され、その後9月10月は選挙を目前としマーケットは様子見へ。選挙を終え、大統領が決定した後から年末にかけて株価が再び上昇に転じるというのが大統領選挙年のアノマリー(規則性や傾向)となっていますが、2024年の夏については米大統領選を巡る不透明感から、夏枯れとなる可能性も指摘されています。また、UBSは2024年末までにS&P500が5,900前後で推移するという基本シナリオは、民主党政権が法人税を上げたり、トランプ氏が選挙演説で掲げたほどの高関税を課したりした場合を除き、ほとんどの政治シナリオに沿うとの見解を示しています。 

リスクオフとは?相場下落時の3つのオプション

リスクオフとは?相場下落時の3つのオプション

こんにちは、ブルーモ証券代表の中村です。米国株市場は近年右肩上がりで上昇していますが、上昇相場には「調整」と呼ばれる短期的な下落局面が必ず生まれます。これは、過熱した株価を適正水準に修正するような取引が生まれ、それまでとは逆方向に株価が揺れることを意味します。上昇相場の中で投資を始めた方も多く、下落局面を初めて経験する方もいると思うので、相場が下落した時にどうすれば良いのか、いくつか判断材料を提供できればと思います。ブルーモでは、リバランス機能によってポートフォリオの組み替えを簡単に実行できるので、今後の運用を迷っているユーザーの皆さんも是非読んでみてください。(最終更新:2024年8月)目次前提:長期投資であれば時間は味方リスクオフとは?「何もしない」以外の3つのオプションオプション1:株式に追加投資していくオプション2:安全資産の比率を高めるオプション3:一時的に安全資産に逃避する安全資産とは?おすすめのリスクオフ先米国短期債券ゴールド2024年の調整局面4月:米国利下げ延期見通しと中東情勢で、上昇相場に調整が入った7月:過熱した株価に企業業績が追いつかず、調整局面へ下落相場の中でも上がっているポートフォリオは?前提:長期投資であれば時間は味方まず基本的な部分ですが、長期で分散した投資をしている場合、足下の相場が下落しても慌てる必要はありません。投資期間が1ヶ月のような短期ではなく、10年以上のような長期であれば、世界経済が成長する中でリターンが出る確率は高いです。以下は当社HPにも掲載している過去30年の株式相場推移ですが、少なくとも米国市場は過去に大きなショック(ドットコムバブル、リーマンショック、コロナショック)もありましたが、長期的に株式市場は上昇しています。もう少し細かく月次のS&P500指数の動きから、各ショックの継続期間と下落幅をまとめたものは以下になります。足下の相場下落はここまで大きな話になっていませんが、ワーストシナリオを知る意味で参考になります。なので、長期的な資産運用をするのであれば「ここで投資をやめる」は得策ではなく、「何もしない」でも大きな問題はないです。ただ、足下の下落に対して何か動きたい方に向けて、いくつかのオプションを解説したいと思います。リスクオフとは?「何もしない」以外の3つのオプション投資用語で「リスクオフ」とは、投資家が相場の下落に備えて金融資産をリスクの高い商品からリスクの低い商品(安全資産)に移すことを言います。逆に「リスクオン」とは、投資家がリスクの高い商品に移行することを指します。足下の相場に対して「リスクオフ」をするかどうかは、今後の市場に対する見立てに依存します。以下に「何もしない」パターン以外の投資オプションを、市場への見立てによってまとめました。オプション1:株式に追加投資していく仮に足下の相場下落が一時的な場合、下落した価格で投資できるチャンスと考えることができます。投資からのリターンは、投資している銘柄の平均取得単価(投資時の株価平均)と時価の差分で生まれるので、株価が低い時に資金をたくさん入れると、当然ですが将来上昇した時のリターンも大きくなります。なので、投資銘柄の平均取得単価を下げるため、新たに現金を投入して追加投資することがオプションになります。注意点としては、株価の下落がさらに続く場合、追加投資分も含めてしばらく損失が出るので、相場の下げ止まりに確信が持てない場合、分割して徐々に資金を入れていくのが得策です。積立投資設定をしている方は、何も設定を変えないと基本はこのオプションで投資が続きます。オプション2:安全資産の比率を高める相場が下落しても影響を受けない安全資産のポートフォリオ比率を高め、相場変動に対する影響を中和するオプションで、今回のオプション1とオプション3の中間に当たります。具体的には株式・暗号資産・不動産といったリスクの高い商品を売却し、債券などのリスクの低い商品に投資するリバランスを実行することになります。相場変動への影響中和は下落時も上昇時も同じなので、相場上昇時のリターンも限定的になる点には注意が必要です。基本は一時的に安全資産の比率を高める想定ですが、今回のような相場下落に備え、安全資産をこの先もある程度組み込むのも良いでしょう。オプション3:一時的に安全資産に逃避する3つ目は相場下落に対して最も大きな動きになりますが、一時的にポートフォリオ全体を安全資産で構成してリバランスするというオプションになります。相場下落の影響は全く受けなくなるので、どれだけ市場が悪化しても資産が減ることはなくなります(安全資産そのものに変動がある場合を除く)。「ここで投資をやめる」に近いように感じるかも知れませんが、大きな違いは「一時的なこと」「安全資産からも一定のリターンを期待する」点にあります。「一時的なこと」とは、上昇のタイミングでのリスクオン(安全資産から株式等にリバランスすること)を実行し、上昇局面でのリターンを取り逃がさないことを意味します。このオプションを取る場合、いつ戻すかをその後も検討するのが大事です。安全資産とは?おすすめのリスクオフ先現金以外の安全資産として、ブルーモからも投資できる代表的なものを2つ紹介します。うまく活用すれば下落相場でも一定のリターンを期待できます。米国短期債券安全資産の一番代表的なものは債券(特に国債)です。債券は一定の利率を設定して発行された借入のための有価証券です。国債であれば借入元は政府なので、(特に先進国なら)債務不履行のリスクはほとんどなく、利率から安定したリターンを期待できます。今回の相場下落の大きな要因にもなっている「米国の高金利」ですが、これは裏を返すと米国の債券の利率が高いことを意味しています。なので、米国債に投資することで相場変動を回避しつつ、日本の金利よりは遥かに高いリターン(2024年4月時点で年利回り5%程度)を得ることができます。ただし、リスクオフを目的に債券投資する場合、気をつけないといけないのが「短期債であること」です。長期債の場合、金利が上がると価格が下がる関係にあるため、米国の利下げがさらに遅れるとそのタイミングで価格下落に直面するリスクがあります。ブルーモでも取り扱っている具体的な商品としては、「米国短期国債ETF(SHV)」と「米ドル建て投資適格変動金利ETF(FLRN)」がリスクの低さからおすすめです。米国短期国債ETF(SHV)残存期間1年未満の米国債に投資するETFで、流動性が極めて高いため、金利が上下してもほとんど価格が変動しません。過去5年間の値動きでも、+0.47%~-0.71%の間でしか動いておらず、ほぼ現金見合いとも言える変動の低さです。ここまで安全だとリターンも低そうですが、足下の米国金利の高さから分配年利回りは2024年4月時点で5.27%と、安全資産としては安定したインカムリターンを提供してくれます。米ドル建て投資適格変動金利ETF(FLRN)こちらは変動金利債に投資するETFで、投資債券の金利自体が市場水準に合わせて変動するので、金利の影響での価格変動は限定的です。こちらも2024年4月時点の分配金利回りは5.97%と、一定のインカムリターンを提供してくれます。SHVも同様ですが、短期債は金利が下落するとそれに伴い分配金利回りもすぐ下がるので、将来的にも年5%のリターンを約束されているわけではなく、金利下落局面(そしておそらくは株価上昇局面)での見直し検討は必要です。ゴールドもう一つの代表的な安全資産がゴールド(金)です。信用リスクのない(投資先が破綻したりがない)現物資産として、金はリスクオフのタイミングで買われる傾向にあります。最近は世界の中央銀行が運用先として金を買っていることから、さらに相場が上がっており、株式市場が下落する中でも金は上がり続けています。金に手軽に投資する方法は、ETFを購入することで、ブルーモでもゴールドETF(GLD)を取り扱っています。ゴールドETFは過去5年で83%上昇しており、過去1ヶ月間でも9.3%上昇しています。ただし、短期債と違って、金は現物資産の取引状況によって下落する可能性もあるので注意が必要です。資産価格の変動をどれだけ排除したいかで、短期債ETFにするかゴールドETFにするかを決めると良いでしょう。2024年の調整局面2024年の相場は年間で好調なものの、何度か調整局面が出ています。ここでは7月末時点での調整局面を紹介します。4月:米国利下げ延期見通しと中東情勢で、上昇相場に調整が入った2024年第2四半期は世界的に株式市場が調整局面に入り、4/15-4/19の1週間で米国のS&P500指数は3.8%下落、日本の日経平均も5%下落するなど、大きな市場変動が起きています。そもそもの話として、4月に入ってからの株式市場で何が起きているかを振り返ります。2024年の株式相場は、米国での利下げ期待により好調でした(上昇を続けていました)。利下げで企業業績が良くなり、株価上昇を見越した投資家が米国株への投資を進めたことで、相場全体が上がっていました。ここに「利下げ延期見通し」と「中東情勢の不安定化」が飛び込んできました。「利下げ延期見通し」は、米国経済の強すぎる指標(物価指数など)が明らかになることで、FRBが利下げを予想通りには実行できない見通しが出てきたことを意味します。経済が強いのは良いことなのですが、結果的に利下げ延期見通しになって株式相場を下落させています。「中東情勢の不安定化」は、イスラエルと周辺勢力の関係が悪化することで原油の流通に問題が出て、原油価格の高騰から経済の低成長につながるのではないかという株価を伸びにくくしています。大きな危機が顕在化している状況ではなく、米国に限れば実体経済は堅調ですが、上記による不確実性から株式市場のリスクオフが進んでいるのが現状です。7月:過熱した株価に企業業績が追いつかず、調整局面へ2024年第2四半期は、4月の調整局面後、7月頭まで半導体中心に株価の急上昇が続きました。物価・景気の鈍化がFRBの利下げ期待を引き上げ、NVIDIAはじめ半導体企業の好業績がテクノロジー銘柄の株高を牽引しました。しかし、7月中旬くらいから大型テクノロジー株への過度な資金集中を避けるための資金流出が始まり、過熱した半導体相場も米中関係への懸念から調整が入りました。また、2024年第3四半期発表の決算も、NVIDIAを除くM7銘柄はMetaとAppleを除いて内容は期待に満たないもので、これまで高金利で抑制が必要だった米国企業業績に陰りが出てきて、それが株価の下落につながりました。9月の利下げは市場に織り込まれる中、製造業指数などで景気鎮静化のシグナルが出ると、景気後退(=企業業績の悪化)シグナルと捉えられ、株価が下落する関係も出てきました。これは、2024年上半期の市場が景気鎮静化が利下げ期待につながって株価上昇をもたらしたのと、大きく異なる傾向です。下落相場の中でも上がっているポートフォリオは?ブルーモでは、「週間比ランキング」から直近でどんなユーザーのポートフォリオが評価損益で上昇しているか分かります。2024年4月の調整局面での動きを見ると、高配当株の公式ポートフォリオをコピーして運用しているユーザーのポートフォリオが伸びていました。具体的には「ダウの犬」「高配当株式セレクション」の公式ポートフォリオは週間比で1.8%くらいの上昇を見せていました(同期間でS&P500は3.8%下落)。また、債券ETFをミックスした公式ポートフォリオも価格変動しておらず、一定の分配金利回りがあることを考えると、これらのポートフォリオをコピーして運用している場合もリスクオフ時の投資としてはうまくいっていそうです。セクター特化のポートフォリオでは、「小売・生活必需品」「金融サービス」の週間比上昇が大きく、リスク時に強いセクターも見えています。

日銀が追加利上げを決定。金融政策と為替の行方

日銀が追加利上げを決定。金融政策と為替の行方

2024年7月30-31日に開催された日本銀行の金融政策決定会合で、日銀は追加利上げを決定し、市場に大きなインパクトを残しました。本記事では、今回の金融政策決定会合の主要ポイントと市場の反応を解説していきます。前提:これまでの日銀の金融政策日銀は2000年頃から長期にわたって短期金利についてはゼロ〜マイナスの水準を目標としつつ、長期金利もYCC(イールドカーブコントロール)によって操作し、「量的・質的金融緩和政策」と呼ばれる大規模な金融緩和(=日銀による多額の国債やETFの買入れ)を続けてきました。この方針は植田総裁の就任後、国内の物価水準が上昇基調になったこともあり、大きく転換しているのが現状です。2024年3月の金融政策決定会合では「マイナス金利解除」が決定され、以下の方針転換がされました。日銀当座預金(金融機関が日銀に預けている預金)に対する金利を-0.1%から+0.1%に引き上げ、日銀の短期金利目標を0-0.1%に設定YCCを廃止し、長期金利を市場決定に委ねる(YCCの下では長期金利を下げるための国債買入れが行われた)ETF・REIT買入れの終了(買入れするのは国債のみに=質的金融緩和の終了)2024年3月の大きな政策転換により、長期デフレで日銀が講じた特殊な緩和政策は終了しましたが、「政策金利の更なる引き上げ」「量的緩和の縮小」が次のステップとして期待されていたのが2024年7月の金融政策決定会合でした。24年7月の金融政策決定会合のポイント短期金利目標の引き上げ日銀は短期目標を0-0.1%から0.25%に引き上げました。前回3月の引き上げに続いて2度目となり、7月の段階でここまで踏み込まないのではないかという見通しが優勢だったため、市場からはサプライズになりました。日銀は、2024-26年の消費者物価が安定的に2%程度の上昇することが見通せており、円安でさらなる物価上振れリスクもあるため、現時点での利上げが適切と判断しました。また、9月ではなく7月に利上げに踏み切った理由としては、春闘の結果を踏まえて賃金も安定的に上昇する見通しがあったためとしています(総裁記者会見より)。国債買入れの段階的縮小日銀は現在月額5.7兆円程度の規模で国債を買入れています(=市場に資金を量的注入することによる金融緩和)この国債買入れ額を毎四半期に4000億円ずつ減額し、2026年第1四半期には月額2.9兆円と、現在の半分程度の買入れ額に抑える方針を示しました。これにより、2026年3月までに日銀の国債保有残高はおよそ7-8%減少する見込みとされています。一方、長期金利が急激に上昇した場合、計画以上の買入れをする可能性も示しており、長期金利上昇に対する牽制も盛り込まれています。中間評価は2025年6月今回の国債買入れ減額に対する中間評価は2025年6月に実施する予定が示され、そこで2026年3月以降の国債買入れ方針についても検討・公表される予定です。一方、短期金利目標はさらに追加で引き上げる可能性も示唆しており(総裁記者会見より)、国内物価の上昇によっては今後短期金利が0.5%へと引き上げられる可能性もあります。出典:https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731b.pdf市場の反応日銀が利上げをすると、日米の金利差が縮小するので円高圧力がかかることになります。7月30日には金融政策決定会合の結果が日経新聞等でリークされたことにより、公式発表に先駆けて円高が進行し、ドル円は154円台から152円台にまで円高となりました。7月31日の追加利上げ正式公表後は、更なる円高が進み、31日18時時点でドル円は150円台にまでなりました。一方、これ以降で日銀側からの材料は出てこない(さらなる追加利上げは現状すぐに想定されない)ため、この円高がどこまで進むかはFOMC側(米国の金融政策側)次第となっています。

夏枯れ相場とは?2024年は例年以上の夏枯れの可能性も

夏枯れ相場とは?2024年は例年以上の夏枯れの可能性も

本記事では、「夏枯れ相場」について解説のうえ、2024年夏の米国株市場動向について考察します。7月末から8月頭に大型ハイテク銘柄の決算報告やFOMCと重要イベントが控えるなか、7月24日、S&P500やナスダックは2022年以来最大の下落率を記録し、米国株市場は重要な局面を迎えています。 2024年下半期の市場動向に関連する「サマーラリー」、「サンタクロースラリー」、「大統領選サイクル」のアノマリーについては過去の記事で解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。2024年は夏枯れ相場かサマーラリーか夏枯れ相場とは「夏枯れ相場」とは、機関投資家などが長期休暇を取るため、株式市場の取引高が減少し、相場が上がりにくく、悪材料に反応して株価が下振れしやすいというアノマリー(規則性や傾向)です。一般的に夏枯れ相場は一時的なものであり、市場の基本的な健全性は影響を受けないことが多いです。米国株は、あらゆる好材料が織り込み済みかS&P500は今年38回も史上最高値を更新し、過去100年間で2番目に多い終値最高値を記録するペースにあります。あらゆる好材料が既に織り込まれている可能性が高く、ゴールドマンサックスのトレーディングデスクは少なくとも6月初めから夏場に調整局面に入る可能性があるという見方に傾いているようです。グローバルマーケッツ部門のスコット・ルブナー氏は、S&P500はこの先下落しかないとの慎重な見方を示しており、1928年以降のデータに基づくと、7月17日は歴史的にS&P500のリターンにとって節目であり、続く8月は株式の資金流入が年間で最悪の月であると指摘しています。米大統領選や利下げのタイミングを巡る不透明感も一方で、2024年の夏については米大統領選や利下げのタイミングを巡る不透明感から、例年以上の夏枯れとなる可能性も指摘されています。直近では、トランプ前大統領暗殺未遂事件やバイデン大統領撤退表明と政治的リスクも積み重なり始めており、バンクオブアメリカのファンドマネジャー調査では、政治リスクがインフレ懸念を上回る懸念となっていることが明らかになりました。ただし、調査対象者のほぼ半数は、選挙戦でいずれかの政党が「圧勝」した場合、株価は上昇する可能性が高いと答えています。 また、7月30〜31日にFOMC(米連邦公開市場委員会)の実施が予定されており、FRB(米連邦準備理事会)が早ければ9月に利下げを開始することを示唆するのではと期待されています。しかし、FOMCで引き続き利下げに対して慎重な姿勢が示された場合、選挙戦の様子見ムードもあいまって、株価が停滞または下落する可能性が予想されます。夏枯れ相場に最適なポートフォリオは?このようなボラティリティが高まる時期に備えたい方に向けて、相場下落に備えて金融資産をリスクの高い商品からリスクの低い商品(安全資産)に移す「リスクオフ」についての解説記事もありますので、ご関心のある方はぜひご覧ください。

NASDAQが2年ぶりの大幅下落?7月24日の市場で何が起きたのか

NASDAQが2年ぶりの大幅下落?7月24日の市場で何が起きたのか

こんにちは。ブルーモ証券代表の中村です。7月24日の株式市場は、S&P500が2.3%下落、NASDAQが3.6%下落と、2022年以来の大幅下落となりました。続く翌日25日の日経平均も3%を超える下落となり、2024年の第3四半期は個人投資家にとって厳しい内容で始まりました。本記事では、こうした状況を受け、7月24日の市場で何が起きたのかと、今後何に注目すべきかをまとめています。相場下落時の対応については以下記事もご覧ください。7月24日の米国株式市場2022年以来の市場全体での大幅下落7月24日のS&P500とNASDAQの下落幅は、利上げで株式市場が大きく落ち込んだ2022年以来の大きさでした。取引日換算で過去400日近く(=およそ80週間ほど)NASDAQは1日に3%以上、S&P500は1日に2%以上下落していなかったので、市場にとってインパクトは大きいものでした。過去数週間の下落でS&P500とNASDAQはこれまでの上昇からかなり戻していますが、それでも2024年初から見ると引き続き13-15%上昇しており、2024年の年間パフォーマンスは好調というのが現時点での評価になります。過去数年の市場を振り返ると、2022年は利上げで大きく市場が落ち込み、2023年はその反発で大きく上昇、2024年は利下げ期待とAI投資の活性化で好調な相場が続いていました。上記を踏まえると、①数年単位でホールドしていれば大きな下落を挟んでもプラスだった、②2024年は経済環境的には好材料(2022年と違い)のため現在の下落は上昇トレンドに対する調整に見える、点に留意すべきでしょう。影響が大きかったのは情報通信セクターやM7銘柄以下はS&P500セクター別の株価変動です(以下数字の出典はこちら)。情報技術やコミュニケーションサービス、一般消費財が24日の下落で影響を受ける中、ヘルスケアや公益事業セクターは逆に上がっていたことがわかります。ヘルスケア・公益事業・生活必需品は2022年の下落時にも影響を受けていないので、下落局面に強いことが今回も証明された形になります。逆に今回大きなダメージを受けた(=S&P500の下落率を超えて落ちた)代表的な銘柄は以下のようなものになります。2024年初来でパフォーマンスが高かった銘柄に集中して下がったというより、半導体・大型テクノロジー株・直近の業績が良くなかった銘柄が大きく下落しています。景気変動とセクターパフォーマンスの関係は以下の記事もご覧ください。トリガーはTeslaとAlphabetの決算過熱した大型テクノロジー株を中心とした銘柄の株価に対する調整という整理は、前回記事で示した通りですが、特に今回はMagnificent 7銘柄最初の決算だったTeslaとAlphabetの決算結果が期待に届かなかったことが大きなドライバーになりました。Teslaは利益の減少と自動車販売の不調、ロボタクシー発表の延期から決算後に大きく下落しました。Alphabetは好調な決算内容でしたが、競争激化によりYouTube広告収入が予想を下回ったこともあり、株価は下落しました。この決算結果が2023年からS&P500の成長を牽引してきたMagnificent7銘柄からの資金逃避と株価下落を加速させ、7月24日の市場全体大幅下落のトリガーとなってしまいました。結果、Magnificent7の時価総額は7月24日だけで7680億ドル、過去2週間では1.7兆ドルも減少しました。今後の注目ポイントFRBの利下げ動向7月30-31日に開催されるFOMCの後、FRBのパウエル議長など要人から利下げに対するフォローアップのコメントが出るかに注目です。市場はインフレ沈静化もあり9月の利下げを織り込んで進んでいますが、トランプ前大統領は大統領選のある11月までFRBは利下げをすべきでないと言っています。トランプ前大統領自体は利下げに肯定的ですが、現政権(=民主党)のプラスになる利下げを選挙前に防ぎたい狙いがあります。実際に9月の利下げが行われるかは別として、こうした環境を踏まえてFRB要人から利下げについて何もFOMC後に発言がないと、市場に動揺が走る可能性があります。M7銘柄の決算今回の調整局面はM7銘柄の株価過熱が大きな要因だったこともあり、他のM7銘柄の決算が期待を超えられるかにも注目が集まります。前四半期もNVIDIAの株価高騰に対する不安で一時的に市場が落ち込む中、NVIDIA決算が予想を超えたことで更なる株価上昇局面となりました。今四半期は、Microsoft, Meta, Apple, Amazonの決算は来週に控えており、FOMCと合わせて大きく市場を動かすポイントになりそうです。ただ、再注目のNVIDIAの決算は8月末なので、もう1ヶ月くらい半導体銘柄にとっては不確実な期間が続きそうです。トランプトレードの行方トランプ前大統領が前回就任した際は、トランプ政権の掲げる減税や財政出動などの経済政策期待から米金利・株式・米ドルの急激な上昇が見られ、「トランプラリー」と呼ばれました。トランプ前大統領の暗殺未遂事件があってから、7月25日現在ではトランプ前大統領の再選確率が高いと見られており、トランプ前大統領の政策を先取りした投資活動が活発化することが予想されます(=トランプトレード)。ただ、現状はトランプ前大統領の政策が明確でないこと、民主党がバイデン大統領に代わりハリス副大統領が候補者になることで、選挙戦の行方がやや不透明になった(民主党の勝率が盛り返してきた)ことで、トランプトレードの効果は不透明な状況です。今後、トランプ陣営から明確な政策の発信があったり、選挙戦での進展が見られると、関係する株式の上昇・下落などの動きにつながると考えられます。

トランプトレードの注目銘柄は?トランプ再選が株価に与える影響

トランプトレードの注目銘柄は?トランプ再選が株価に与える影響

本記事では「トランプラリー」、「トランプトレード」について解説のうえ、2024年大統領選でのドナルド・トランプ氏再選が米国株市場に与える影響を考察します。トランプ氏当選への米国株市場の反応や今後の株価見通しについては以下の記事でも解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。トランプラリー、トランプトレードとは「トランプラリー」とは、2016年米国大統領選挙でのトランプ氏当選から生じた、米金利・株式・米ドルの急激な上昇を指します。トランプ政権の掲げる減税や財政出動などの経済政策期待から、米国長期金利が上昇し、外国為替市場ではドル高が進行しました。NYダウは45%、 S&P500は34%上昇し、米株式相場の上昇に伴って、日本をはじめ世界の株式相場も上昇しました。「トランプトレード」は、トランプ氏が大統領に当選した場合の政策を考慮した投資や資産売却を指します。今回の米国大統領選挙でも減税や規制緩和といったトランプ氏の公約に対する市場の期待感は強く、2016年の選挙においては当選後に始まったトランプトレードが前倒しで活発化しています。現在報道されているトランプ氏の公約・主張には以下のような内容が挙げられます。ただし、アナリストらは関税が経済に及ぼす影響については不透明感が強いと指摘しています。減税法人税を21%から15%に引き下げ中間層向けの減税株式売却益の減税関税引き上げ貿易相手国に一律10%の関税中国からの輸入品には追加で10%の対中関税を導入メキシコとカナダからの輸入には25%の関税石油・天然ガス産業の推進、パリ協定から離脱米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の2026年5月の任期満了を認める方針トランプトレードの注目銘柄は?石油・天然ガス関連銘柄トランプ氏は石油・天然ガス投資や掘削活動の拡大方針を表明しており、エクソンモービル(XOM)などの石油生産会社やガソリン車メーカーは恩恵を受ける可能性があります。また、トランプ氏はバイデン政権による電気自動車(EV)普及政策を度々非難していますが、トランプ氏がEV購入に対する連邦税控除の廃止や関税の引き上げを実施すれば、競争が激化するEV市場でテスラ(TSLA)が恩恵を受ける可能性が高いです。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がトランプ氏に献金したことは報じられており、マスク氏はテスラの年次株主総会にてトランプ氏がサイバートラックの大ファンであることも述べています。ヘルスケア(製薬・医療保険)銘柄共和党が政権を奪取した場合、民主党とバイデン氏によるインフレ抑制法の下で導入された薬価抑制が実施される可能性が低くなり、イーライリリー(LLY)やメルク(MRK)などの製薬企業や、ユナイテッドヘルス(UNH)といった医療保険企業が規制緩和の恩恵を受ける見通しです。銀行関連銘柄トランプ政権では金融規制が緩和され、JPモルガン・チェース(JPM)やバンク・オブ・アメリカ(BAC)などの銀行株が恩恵を受けるとみられています。ただし、共和党副大統領候補としてバンス上院議員が選ばれたことから、トランプ政権が誕生した場合、従来の共和党路線とは反して企業の合併・買収(M&A)の審査が厳格化する可能性があります。同氏は合併の際の提出要件の厳格化を支持しており、大型合併の税優遇措置を廃止する法案にも署名しています。その場合、投資銀行をはじめとするM&A関連銘柄には逆風となります。暗号資産関連銘柄トランプ氏は仮想通貨を支持する姿勢を示しており、仮想通貨に対する規制撤廃を公約しています。トランプ氏返り咲きの見方が強まると、コインベース・グローバル(COIN)やマラソン・デジタル・ホールディングス(MARA)などの暗号資産関連銘柄は大幅上昇しました。トランプ氏は、7月27日に開催されるビットコインカンファレンス「ビットコイン2024」への登壇も予定しています。

テクノロジー銘柄が下落する中、ダウ平均や小型株は好調?米国市場の現在地

テクノロジー銘柄が下落する中、ダウ平均や小型株は好調?米国市場の現在地

こんにちは。ブルーモ証券代表の中村です。7月8日週から、米国株式市場ではテクノロジー銘柄の大きな下落と、為替市場ではドル円の円高への是正が進んでいます。特に7月17日の米国市場ではNASDAQが2.7%超の大幅下落をしました。これは2024年冒頭から続いたグロース株上昇と円安進行に対する大きな変化(ショック)で、驚かれている方も多いのではないかと思います。本記事では、足下の米国市場で何が起きているかを解説していきたいと思います。相場下落時の対応については以下記事もご覧ください。米国株式市場に対する調整の背景大型テクノロジー銘柄に過度な資金集中が生じていた2024年はNASDAQが21.8%上昇、S&P500が17.8%上昇と大きな相場上昇が続いていました(年初来、202年7月17日終値ベース)。特に2024年第2四半期(4-6月)はNVIDIAをはじめとする半導体企業の決算が好調だったこともあり、テクノロジー株に投資が集中して株価が上昇する一方、伝統的な大型銘柄は伸び悩んでいました。具体的には、第2四半期でS&P500とNASDAQは四半期でそれぞれ3.9%、8.3%上昇しましたが、ダウ工業株30種は1.7%安でした。こうした大型テクノロジー企業の株価好調に支えられ、S&P500の指数に占めるマグニフィセント7銘柄の比率は30%超と、歴史的な高水準に達していました。好調な業績を背景にしているとはいえ、この資金集中に対する巻き戻しが生じる可能性があったと言えます。資金集中の巻き戻しの結果、7月17日にNASDAQが2.7%下落した際も、ダウ工業株30種は上昇しています。高金利下で過小評価されていた小型株に見直しテクノロジー株から資金移動が起きる中、大きく上昇していたのは米国小型株です。この小型株への資金シフトトレンドが明確に現れたのはRussel2000という米国の小型株インデックスで、米国企業の時価総額1001位から3000位の2000銘柄で構成されています。Russel2000はS&P500やNASDAQが落ちる中、先週から10%近く上昇しており、特徴的な動きとして注目を集めています。小型株は一般的に債務負担が大きい(=借入をして事業に投資する)ため、高金利下では業績が伸び悩む傾向にありますが、足下でFRBの利下げが確定路線になったことで、収益改善の見通しが立って上昇していると考えられます。米政府の対中強行姿勢で半導体株が下落また、足下での動きとして、米国政府が中国に対する最先端の半導体輸出に対して規制をかける可能性があると報じられており、これが半導体企業の業績にマイナスの影響を与えると懸念され、半導体株が大幅下落しています。中国に対する規制検討は現行のバイデン政権での報道ですが、大統領選の対抗馬であるトランプ前大統領も中国に対して強行姿勢のため、いずれが政権を取った場合でも大きな方向性に変わりはないとも見られています。一方、半導体株への期待は足下で高まり過ぎていたところでもあるので、決算を前に一旦の落ち着きを見せて良かったと評価するアナリストもいます。為替市場でのドル高是正の背景日米金利差是正に向けた進展ドル円は160円台と歴史的な高水準に達していましたが、大きな要因は米国と日本の金利差(高金利の米国に低金利の日本から資金が流出する)にありました。2024年は当初利下げが期待されていたものの、第1四半期で中々インフレが沈静化しないのを見て、日米金利差は縮まらない状態でした。ところが、足下の1−2ヶ月間は重要なインフレ指標であるCPIも予想を下回る数字を見せており、FRBの利下げ路線が固まったと見られています。この利下げ予測が日米金利差の縮小を期待させて、円高へのプッシュとなりました。さらに、それを後押しするように7月17日には米国のトランプ前大統領からドル高是正のコメントが、日本の河野太郎デジタル相から日銀への利上げ要求コメントがあり、さらに日米金利差の縮小を期待させる要因になっています。日本の当局による断続的な為替介入こうした円高方向の為替変動トリガーとなるイベントに対して、日本の政府・日銀が断続的な為替介入も続けています。5月の大型介入の後、追加での為替介入はないと見ていた市場関係者からはこれがサプライズとなり、足下の円高進行を支えています。今後の注目ポイント足下の米国市場は、資金が一部のテクノロジー企業から市場全体に循環している動きなので、ある程度分散して投資をしていれば大きな懸念がある状態ではないと言えます。米経済のソフトランディングが進む中、FRBはまだまだ利下げ余地を残しているので、市場全体が大きく落ち込み続けるリスクは低いと言えます。テクノロジー銘柄に集中投資している場合、今後どこまで資金流出が進むかがポイントです。次回決算で出てくる業績が大きなファクターになりますが、足下で一旦過度な期待への調整が入ったので、決算が良かった企業にとってはアップサイドの大きい環境になっています。この機に集中投資からリスクを下げて分散したり、ポートフォリオの構成を見直したい方は以下の記事をご覧ください。ドル円相場はより予測が難しいですが、直近で追加のサプライズは出にくい環境になっています。まず、為替介入は無限に投下されるわけではないので、ここだけに期待することは難しいと見られています。FRBのFOMC(利下げを決める会合)や日銀の金融政策決定会合を控えているので、会合後のコメントで何かサプライズが出れば相場変動の要因になります。7月30日・31日開催予定のFOMCと日銀金融政策決定会合には注目です。金融市場の全体像やFRBの仕組みについての解説はこちらをご覧ください。

過去10年のポートフォリオから学ぶ、バフェット流資産運用(後編)

過去10年のポートフォリオから学ぶ、バフェット流資産運用(後編)

本記事では、過去10年のウォーレン・バフェットのポートフォリオを振り返りながら、バフェット氏の資産運用手法について2回に分けて解説します。前編記事はこちら。目次ワラントでバンカメ株は約6倍に「逆張り投資家」のバフェットコカコーラ株を愛する理由配当を支払うビジネスの価値近年は石油株を買い増し以下の図表は、2015年から2024年にかけて、バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイの上場ポートフォリオで4%以上保有されていた銘柄の比率の推移を示したものです。(*注:2023のKHCは4%以下であるが例外的に記載)出典:フォーム13F ※2024年は3月末時点2015-2024年にバークシャーが4%以上保有していた銘柄アップル(AAPL)バンク・オブ・アメリカ(BAC)アメリカン・エキスプレス(AXP)コカコーラ(KO)シェブロン(CVX)オキシデンタル・ペトロリアム (OXY)クラフト・ハインツ(KHC)ウェルズ・ファーゴ(WFC)アイ・ビー・エム(IBM)フィリップス66(PSX)ワラントでバンカメ株は約6倍にポートフォリオの中で2番目に大きなポジションを占める、バンク・オブ・アメリカ(BAC)への投資は込み入った事情があります。バークシャーがバンク・オブ・アメリカに初めて投資したのは、金融危機が始まった2007年でしたが、2010年までにバンク・オブ・アメリカ株をすべて売却しています。その後、欧州債務危機が発生し、2011年8月、バフェット氏は、バンク・オブ・アメリカに救済資金として50億ドル出資し、2021年9月まで普通株7億株を1株当たり7.14ドルで購入できるワラント(一定の値段で、あらかじめ定められた期間内に発行会社の株式を購入できる権利)付きの優先株を受け取りました。優先株の配当利回りは6%で、配当収入のみで年間3億ドルがもたらされました。その約6年後の2017年に、バークシャーはワラントを行使しました。現在、バンク・オブ・アメリカの株価は40ドル付近で推移しており、バークシャーがワラントを行使するのに支払った価格に対して6倍弱まで上昇しています。さらに、バンク・オブ・アメリカは過去10年間で大幅に増配しており、バークシャーが得るトータルリターンはさらに高いものとなっています。「逆張り投資家」のバフェットバフェット氏は逆張り投資家として有名で「他人が貪欲なときは恐れ、他人が恐れているときは貪欲になれ」という名言を残しています。逆張り投資はその名の通り、特定の時点における投資家の感情の流れに逆らう戦略ですが、バリュー投資に似ており、株価が企業の本質的価値よりも低い株式を探します。他の投資家の悲観的な見方が過剰になっているため、株式の価格が本来あるべき水準を下回っているときに、逆張り投資家は市場に参入し、株価が回復する前に株式を購入します。実際にバフェット氏は金融危機のさなかに積極投資を行なっており、バンク・オブ・アメリカ以外にも2008年9月24日、バークシャーはゴールドマン・サックスに50億ドルの投資を行いました。このとき発行された優先株は年間5億ドルに相当する10%の利回りが約束されており、さらには2013年10月1日まで普通株約4350万株を1株当たり115ドルで購入できるワラントや、ゴールドマン・サックスの都合で優先株を買い戻したい場合にはバークシャーが購入した価格より10%高い価格で買い取るという魅力的な条件もついていました。優先株については11年に買い戻しが完了し、2013年に、バークシャーはワラントは行使されました。コカコーラ株を愛する理由コカコーラ(KO)はバフェット氏が長年絶賛している銘柄で、バークシャー社が絶対に売却しない銘柄の1つと見ています。1988年から継続保有しており、バークシャーが保有する4億株の取得原価は1株当たり約3.25ドルと非常に低いです。そのため、コカコーラの1株当たり年間1.94ドルの配当は、バークシャーにとって取得原価に対する利回り約60%に相当します。また、コカコーラは62回連続で増配をしています。配当を支払うビジネスの価値2023年2月に公開された「株主への手紙」で、バフェット氏は成功の秘訣としてコカコーラを例に挙げ、配当を支払う強固で確立されたビジネスの価値を説明しました。「1994年にコカ・コーラから受け取った現金配当は7500万ドルでした。2022年にはその配当が7億400万ドルに増加しました。成長は毎年、誕生日のように確実に起こりました。チャーリーと私がする必要があったのは、コカ・コーラの四半期ごとの配当金小切手を現金化することだけでした。我々はこれらの小切手が今後も増加する可能性が非常に高いと期待しています。」現在バークシャーのポートフォリオは年間約60億ドルの配当収入を生み出していますが、その7割以上は5社に由来しています。バークシャーの2023年年間配当収入 上位5銘柄バンク・オブ・アメリカ(BAC): 9億9,150万ドルオキシデンタル・ペトロリアム(OXY):8億9,750万ドルアップル(AAPL):8億6,930万ドルシェブロン(CVX):8億2,210万ドルコカコーラ(KO):7億7,600万ドル近年は石油株を買い増しバークシャーのポートフォリオで5番目と6番目に大きいポジションは、シェブロン(CVX)とオキシデンタル(OXY)です。バフェット氏は、近年エネルギーセクターへの投資を増やしており、2社でポートフォリオの約10%を占めています。しかし、バークシャーは2008年に石油会社コノコフィリップスへの投資で大損し、2014年にはエクソンモービルから撤退した過去があり、バフェット氏がバークシャーの2015年の株主総会で「石油・ガス株をあまり頻繁に買うつもりはない」と述べたこともありました。長年バフェット氏を追跡してきた市場関係者からは、化石燃料からの移行は市場予想よりも時間がかかると見立ているのではとの指摘があり、バフェット氏自身も2022年に「米国が石油から完全に離れる兆しは見えなかった」と発言しています。

過去10年のポートフォリオから学ぶ、バフェット流資産運用(前編)

過去10年のポートフォリオから学ぶ、バフェット流資産運用(前編)

本記事では、過去10年のウォーレン・バフェットのポートフォリオを振り返りながら、バフェット氏の資産運用手法について2回に分けて解説します。2024年3月末時点での最新ポートフォリオについては、過去の記事で解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。目次バフェットポートフォリオの変遷「集中投資」型の運用アップル株は19兆円越えの利益にアップルへの投資はバークシャーらしくない?優良企業を適正な価格で買う自社株買いのメリットバフェットポートフォリオの変遷バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ(以下、「バークシャー」)のポートフォリオは、四半期ごとに米証券取引委員会(SEC)に提出される報告書「フォーム13F」にて開示されています。以下の図表は2015年から2024年にかけて、バークシャーの上場ポートフォリオで4%以上保有されていた銘柄の比率の推移を示したものです。(*注:2023のKHCは4%以下であるが例外的に記載)出典:フォーム13F ※2024年は3月末時点2015-2024年にバークシャーが4%以上保有していた銘柄アップル(AAPL)バンク・オブ・アメリカ(BAC)アメリカン・エキスプレス(AXP)コカコーラ(KO)シェブロン(CVX)オキシデンタル・ペトロリアム (OXY)クラフト・ハインツ(KHC)ウェルズ・ファーゴ(WFC)アイ・ビー・エム(IBM)フィリップス66(PSX)「集中投資」型の運用バフェット氏は集中度の高いポートフォリオを運用しており、上場ポートフォリオが40社程度で構成されるなか、4%以上を占める銘柄は5〜7銘柄です。そして、この上位5〜7銘柄がポートフォリオの70%以上を占めているのが特徴です。バフェット氏と長年のパートナーであるチャーリー・マンガー氏は「バフェット氏について、人々は次のことを理解していない。彼は生まれながらの資本主義者であり、小規模で気を散らすようなポジションを好まない」と語っています。また、銘柄の入れ替えや比率の見直しも積極的に行なっており、10年間でポートフォリオの中身が大きく変化したことが見て取れます。アップル株は19兆円越えの利益に近年のポートフォリオ占有率1位であるアップル株(AAPL)をバークシャーが初めて取得したのは、2016年第1四半期です。当時は「買うのが遅すぎたのでは」という市場関係者の声もありましたが、最初の投資以来、13回の購入と7回の売却をし、バークシャーはアップル株に313億ドル(約5兆円)を投資し、1200億ドル(約19.2兆円)以上の利益を得ています。これは投資家や企業が単一株で得た最高額と推定され、バフェット氏のキャリアの中で利益額において最大のホームラン投資となりました。アップルへの投資はバークシャーらしくない?マンガー氏が「アップルほどバークシャーらしからぬ企業は考えられないだろう」と2013年にロイター通信に語ったように、バフェット氏は、IBMを除きテクノロジー株には投資をしないことで長らく知られていました。実際、アップルの株の投資は同社にとって少額の約10億ドルの投資として始まり、最初の投資を主導したのはバフェット氏ではなく、彼の投資マネージャーの1人(テッド・ウェシュラー)でした。しかし、アップルの株主への利益還元、さらには顧客維持率の高く、価格決定力もかなりあることから、バフェット氏はアップルを消費財企業とみなすようになり、強気派に転向しました。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、バフェット氏は孫たちがiPhoneに「依存」していた様子や、iPhoneを紛失して悲嘆に暮れた友人の話にも影響を受けたといいます。優良企業を適正な価格で買うバフェット氏は「株価が企業価値を下回っている株式を買う」バリュー投資家として有名です。バフェット氏の銘柄選定基準のひとつに、今後12か月の予想収益に基づく株価収益率 (PER) が15倍未満が挙げられますが、アップルはその条件も満たしていました。バークシャーが初めてアップル株を購入した当時、13年ぶりの減収でPERは11倍でしたが、現在は30倍以上に上昇しています。自社株買いのメリットまた、バフェット氏は長年自社株買いのメリットを信じており、2022年2月に公開された「株主への手紙」にて、アップルの積極的な自社株買いを大絶賛しています。 「アップル株の保有比率は1年前の5.39%から5.55%に増加しました。この増加は些細なものに見えるかもしれません。しかし、アップル株の0.1%は1億ドルに相当するのを考えてみてください。バークシャーはこの増加のために追加投資をしていません。アップルの自社株買いがこれを実現させました」アップルは2013年に自社株買いプログラムを開始しましたが、米企業が発表した自社株買い規模上位10件のうち、首位から6位までをアップルが占めています。これはアップルの1株当たり利益を押し上げるだけでなく、何もしなくてもバークシャーの同社に対する所有権を着実に増やしています。バフェット氏の資産運用手法、後編はこちら

米国株のアノマリーとは?サマーラリーと大統領選サイクルから考える2024年下半期の市場動向

米国株のアノマリーとは?サマーラリーと大統領選サイクルから考える2024年下半期の市場動向

米国株市場にはさまざまなアノマリー(規則性や傾向)が存在し、投資家は市場動向を予測するヒントとして、アノマリーを活用することがあります。米国株のアノマリーの例1月効果(January Effect)セルインメイ(Sell in May and Go Away)サマーラリー(Summer Rally)サンタクロースラリー(Santa Claus Rally)大統領選サイクル(Presidential Cycle)トリプルウィッチング(Triple Witching Day)スーパーボウル指標(Super Bowl Indicator)本記事では、2024年下半期の市場動向に関連する「サマーラリー」、「サンタクロースラリー」、「大統領選サイクル」のアノマリーについて解説のうえ、市場から注目を集めているポイントについても見ていきます。トリプルウィッチングについては過去の記事で解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。サマーラリーとはサマーラリー(Summer Rally)は、夏季に株式市場が上昇する傾向を指し、米国では独立記念日(7月4日)からレイバーデー(9月第1月曜日)までの期間に見られます。海外の機関投資家が夏季休暇の前に株を買いだめすることから株価が上昇するとされています。なかでも、大統領選挙の年は7月と8月にプラスのリターンをもたらす傾向が高まるといわれており、8月最初の10日間は特に好調でS&P 500は平均1.53%上昇しています。2024年のサマーラリーについて、ゴールドマンサックスはパッシブ株式投資からの資金が7月初めに株式市場に流入し、初夏まで上昇が続く見通しを予測しています。また、8月には「夏枯れ相場」というアノマリーも存在します。機関投資家などが長期休暇を取るため、株式市場の取引高が減少し、相場が上がりにくく、悪材料に反応して株価が下振れしやすいともいわれています。一般的に夏枯れ相場は一時的なものであり、市場の基本的な健全性は影響を受けないことが多いです。サンタクロースラリーとはサンタクロースラリー(Santa Claus Rally)は、12月の最後の5営業日と翌年の最初の2営業日にかけて株価が上昇する傾向を指します。1950年以来、S&P 500はサンタクロースラリー期間で平均1.3%上昇しています。ホリデーシーズンの楽観的な見通しや、年末調整で株を売った後の買い戻しなどが影響しているとされています。ただし、2023年末から2024年始にかけての直近のサンタクロースラリーについては、S&P 500は0.9%下落となりました。これは2015年末以来最悪のパフォーマンスであり、7年連続のサンタクロースラリー期間のプラスの記録が途絶える結果になりました。 大統領選サイクルとは大統領選アノマリーとは、米国大統領の4年間の任期が株式市場に与える影響を指します。選挙サイクルは、選挙前年・選挙年・選挙翌年・中間選挙年で構成され、歴史的に見ると、このサイクルと市場のパフォーマンスに一定の相関が見られることがわかります。2023年は選挙前年、今年は選挙年に該当します。選挙前年現職大統領が再選を目指して経済政策を強化し、景気を刺激する施策を打ち出すことが多いことから、選挙前年は市場のパフォーマンスが最も良い年とされています。2023年は米国主要3株価指数がいずれも2桁の上昇を記録しました。選挙年選挙年も比較的好調な市場パフォーマンスが見られることが多くなっています。ただし、大統領選挙の結果やその不確実性が市場に影響を与えるため、ボラティリティが高まることもあります。選挙翌年新大統領が就任する選挙翌年は、市場パフォーマンスが低迷する傾向にあります。新政権の政策が不透明であることや、新たな政策が経済にどのように影響するかが不確定であるためです。特に、大統領選挙で大統領の出身政党が変わった場合には、選挙年と選挙翌年で株価の騰落が逆転することが知られています。具体的には、選挙年の市場パフォーマンスが上昇(下落)であれば、選挙翌年に下落(上昇)することであり、1897年以降このような株価の騰落逆転が75%の確率(12回の政党交代のうち9回)で起こりました。中間選挙年選挙後2年目の中間選挙年も、パフォーマンスがやや低調であることが多いです。中間選挙の結果が議会の勢力図を大きく変える可能性があるため、市場は慎重な姿勢を取ります。下半期はハイテク銘柄決算と9月の政経動向に注目2024年11月5日は米大統領選挙です。大統領選挙年の米国株式市場では、夏季にサマーラリーが期待され、その後9月10月については選挙を目前としマーケットは様子見。選挙が終わり、大統領が決定した後から年末にかけて株価が再び上昇に転じるというのが大統領選挙年のアノマリーとなっています。サマーラリーか調整局面か、ハイテク銘柄の決算次第かS&P 500は今年に入って最高値を31回更新し、年初来の上昇率は15%以上に達しました。しかし、過去3ヶ月に同指数の時価総額上位10銘柄は中央値で17%上昇しましたが、その他の銘柄は1.3%下落しています。これは第1四半期に見られた市場全体底上げ型の強気市場とは異なり、一部のハイテク銘柄を除き、ほとんどの銘柄が上昇に寄与していない状況となっています。直近のS&P500の年末目標引き上げについても、マイクロソフト、エヌビディア、 グーグル、アマゾン、メタ・プラットフォームズのハイテク企業の2024年の業績見通し上方修正とAI投資の高まりによるバリュエーションの拡大が上昇の原動力となっており、これらのハイテク企業を中心とした第2四半期決算の結果がサマーラリーと調整局面どちらに市場が向かうかを左右すると想定されています。また今年の大統領選挙戦は接戦で、全国世論調査ではバイデン氏とトランプ氏がほぼ同数となっています。両氏は6月27日に討論会を行うことで合意しており、これは大統領選史上最も早い討論会となり、投資家の注目が通常より早く選挙結果と政策への影響に集まることとなります。9月からは利下げ動向と選挙戦が焦点か9月には2回目となるバイデン氏とトランプ氏の討論会に加えて、9月17〜18日にFOMC(米連邦公開市場委員会)の実施が予定されており、利下げ実施の有無とFOMC参加者による金利見通しに注目が集まっています。6月のFOMCでは、年内の利下げ回数の見通しが3月の3回から1回に減少し、インフレ見通しが引き上げられました。9月のFOMCでも引き続き利下げに対して慎重な姿勢が示された場合、さらに投資家が選挙戦について様子見ムードになるにつれ、株価が停滞または下落する可能性が予想されます。このようなボラティリティが高まる時期に備えたい方に向けて、相場下落に備えて金融資産をリスクの高い商品からリスクの低い商品(安全資産)に移す「リスクオフ」についての解説記事もありますので、ご関心のある方はぜひご覧ください。

セクターローテーションとは?景気サイクルと株価の関係

セクターローテーションとは?景気サイクルと株価の関係

セクターローテンションとは、景気の変動に合わせて値上がりが予想される業種(セクター)に投資対象を切り替える投資戦略です。季節の変わり目に、コートをしまって半袖の服を出す「衣替え」のように、特定の株式セクターが他のセクターよりも好まれる時期があります。この切り替わりのきっかけとなるのが景気サイクル(景気循環)です。セクターローテーションの考え方は、米国では一般投資家にも浸透していますが、どの業種にいつ投資をすればよいか迷う方も多いのではないでしょうか。本記事では、相場の循環とセクターローテーションについて詳しく解説します。目次景気サイクルと株価の関係株式市場は景気サイクルに先駆けて動く相場の循環とセクターローテンション利下げ動向が鍵、米国市場の現在の状況は景気サイクルと株価の関係景気には波があり、好景気と不景気を繰り返して経済は成長します。この波を景気サイクルと呼び、四季のように「好況→後退→不況→回復」の4つの局面が順番に訪れて、繰り返していくと考えられています。景気の最も良い時を「景気の山」、最も悪い時を「景気の谷」と呼び、景気サイクルは、谷から次の谷までを1つの周期としています。株式市場は景気サイクルに先駆けて動く株式市場は、景気サイクルを予想して3~6ヵ月早く動く傾向があります。株式市場の値動きは、将来の材料を株価に織り込みながら波を作っています。そのため、セクターローテーションを活用する時は、実際の景気サイクルと市場の状況を分けて考える必要があります。景気サイクルの変動には中央銀行の金融政策が大きく影響します。中央銀行は物価の安定などを目標に、景気が過熱したり冷え込みすぎたりしないよう金融政策によって景気の大きな変動を抑えます。景気が悪い時には金融緩和をし、景気が良い時にはインフレが進みすぎないよう金融引き締めを行います。相場の循環とセクターローテンション株式市場は、景気と金融政策の影響を重視して株価の変動を「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」という4つの段階で捉えることができます。金融相場:金利が下がり、株価は上昇金融相場とは、金融政策が株価上昇のけん引役となる相場です。中央銀行が金融緩和をする不況期から回復期にかけて見られます。この時期の企業業績は良くなくても、金融緩和によって市場に投資マネーが流入し、成長ポテンシャルが大きい情報技術関連や新興企業などのグロース株が値上がりしやすくなります。業績相場:金利が低いまま、株価はさらに上昇景気サイクルが回復期から好況期に向かうと、消費が増えビジネスが活発になり、企業業績の改善が株価上昇をけん引する「業績相場」となります。この時期には資本財や素材などのセクターが値上がりしやすくなります。逆金融相場:金利が上がり、株価は下落景気が過熱し、インフレが進むと、中央銀行は金融引き締めを実施します。景気拡大ペースが鈍り、株式相場が反転する局面を「逆金融相場」と呼びます。この時期は経済環境が不安定になり、安定した収益を上げる財務体質が強固な企業やエネルギーセクターなどが買われやすくなります。逆業績相場:金利が高いまま、株価はさらに下落後退期が続くと不況期に突入し、企業の売上や消費が大幅に落ち込みます。この悪循環によって株価の下落が続くのが「逆業績相場」です。この時期には、景気に左右されにくい生活必需品や公益事業といったセクターに投資資金が向かいやすくなります。利下げ動向が鍵、米国市場の現在の状況は足元、米経済は4月の消費者物価指数(CPI)の伸び鈍化を受けて、FRBの利下げ期待が再燃しています。一方、米企業全体の良好な業績見通しは維持されており、金融相場と業績相場がせめぎ合いつつ、株式相場を下支えしています。ただし、現在の市場では「好景気→インフレ再燃懸念→利下げ後倒し」という思惑が働くため、株式市場が上昇するために景気減速の方が歓迎されています。5月23日には、米PMI統計が好調な企業活動とインフレ再加速を示す内容となったことで、株・国債ともに下落となりました。Bloomoで簡単セクターローテーションセクターローテーションを効率的に行うには、セクター別のETFをご活用いただけます。ブルーモ証券の提供する投資アプリ「Bloomo」ではセクターETFが購入可能なのはもちろん、投資先を大きく変更したい場合に、投資する銘柄と比率を決めれば、一気に必要な売買を実行してくれるので面倒な個別銘柄の売買をせずに、個別銘柄でのセクターローテーションが簡単にできます。

【ウォーレン・バフェットのポートフォリオ解説】新規保有銘柄のチャブ?手元資金は過去最高に

【ウォーレン・バフェットのポートフォリオ解説】新規保有銘柄のチャブ?手元資金は過去最高に

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)のポートフォリオが、5月15日に米証券取引委員会(SEC)に提出された報告書「フォーム13F」にて明らかになりました。本記事では、2024年3月末時点でのウォーレン・バフェットのポートフォリオについて解説します。2024年6月末時点でのポートフォリオについては、以下の記事をご覧ください。バフェットポートフォリオの中身上位10銘柄で90%以上、アップルは引き続き1位バフェット氏は常に集中度の高いポートフォリオを運用しており、上場ポートフォリオは41社で構成されているにもかかわらず、上位5銘柄で75%以上、上位10銘柄は90%以上占めています。上位保有銘柄アップル(AAPL) : 40.8%バンク・オブ・アメリカ(BAC) : 11.8%アメリカン・エキスプレス(AXP) : 10.4%コカコーラ(KO): 7.4%シェブロン(CVX): 5.8%オキシデンタル・ペトロリアム (OXY): 4.9%クラフト・ハインツ(KHC): 3.6%ムーディーズ(MCO): 2.9%チャブ(CB): 2.0%ダビータ(DVA): 1.1%アップル株は、2024年1-3月期に13%程度売却されましたが、依然として同社はバークシャーのポートフォリオの40%近くを占めています。売却について、バフェット氏は売却益にかかる税率は上昇していくという見立てが背景にあると説明しており、アップルはアメリカン・エキスプレスとコカ・コーラの2社よりも「さらに優れた」企業と高い評価は変わらないと語っています。また、シェブロンの既存ポジションを約2.5%削減し、オキシデンタル・ペトロリアムのポジションを2%弱拡大しました。損害保険会社「チャブ」の大量保有が明らかに13F報告書で最も注目を集めたのはチャブの保有です。チャブのポジションは67億ドル(約1兆300億円)に相当し、上場ポートフォリオの中で9番目に大きな保有ポジションとなります。バークシャーは2023年第3四半期以来特例制度を用いて保有状況を非開示としており、保有の伝わった15日の時間外取引でチャブ株は8%以上上昇しました。チャブはスイスに本拠地を構え、ニューヨーク証券取引所に上場している企業です。3月に、作家E・ジーン・キャロル氏の民事名誉毀損訴訟でトランプ前大統領に9160万ドル(約135億円)の上訴保証金を引き受けたことで話題となりました。バフェット氏は、2月に公開された株主への手紙で、「損保事業はバークシャーの健全性と成長性の中核を担っている」「57年間事業に携わっており、1,700万ドルから830億ドルへ取扱高が5,000倍近く増加しているにもかかわらず、成長の余地は沢山ある」と述べています。バークシャーは子会社に自動車保険ガイコや再保険のジェネラル・リーなどを持ち、業界に精通しています。また、チャブは30年間にわたり毎年配当金を増額しており、バフェット氏の配当好きとも一致しています。 手元資金は過去最高を更新バークシャーの2024年1-3月期の株式売買動向は173億ドルの売り越しとなりました。現金と米短期債保有額を合計した広義の手元資金は3月末時点で1890億ドル(約29兆円)に達し、過去最高値を更新しました。5月4日の株主総会では、バフェット氏が現時点で大規模な投資を行わない理由について、「現時点で効果的な使い道が見当たらないため、手元資金を温存している」「魅力的な投資先が見つからない」と説明しました。また「投資したいが、リスクがほとんどなく、大もうけできるような案件でない限り、投資しないだろう」と述べ、カナダ投資を検討していると付け加えました。