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【米国株見通し】米中相互関税削減でリスクオン回帰、再び高値更新なるか

【米国株見通し】米中相互関税削減でリスクオン回帰、再び高値更新なるか

5月12日、米国と中国が相互に発動していた関税を90日間大幅に引き下げることで合意したことを受け、米ドルと米国株先物が急上昇しました。投資家の不安心理を示すVIX指数は20を下回り、市場はリスクオンに回帰しています。本記事では、米国株の短中期的見通しについて市場関係者の見方を紹介します。予想を上回る合意内容で投資家心理改善多くの市場関係者が、米中協議の結果は対話の枠組み設定や60%未満の関税引き下げにとどまると見ていたなか、米中双方の115%の関税引き下げ合意は予想を大きく上回りました。猶予期間も90日間と比較的長く、機関投資家が株式投資比率の拡大を検討しているタイミングと重なったことで、投資家心理が大きく改善しています。一方で、今回の合意内容が「市場のベストシナリオ」に近い結果となったことから、今後関税を巡って追加の好材料が出たとしても、市場への影響は限定的になるとの指摘もあります。アナリストの間では、市場の注目テーマは関税から次の材料へ移り始めているとの見方が広がっています。中期的な焦点は、利下げ動向と減税案の行方に現在、S&P500とナスダック100指数はいずれも200日移動平均線を上回っており、米国株式市場は元値回復を目指す展開が予想されます。中期的には、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げスタンスや企業業績の動向を見極めていくことが重要となります。利下げ観測は年内2回へ後退本格的な貿易戦争は回避され、米国は景気後退にはならない可能性が高いとの見方から、5月12日時点のFedWatchでは7月のFOMC会合では利下げ見送りの可能性が高く、9月と10月会合で0.25%ずつの利下げが実施されるとの見方が優勢です。足元の経済指標は米国経済と労働市場の底堅さを示しており、相互関税率が10%程度に落ち着き、薬価引き下げが進めば、2025年を通じてインフレは緩やかに低下するとの見通しもあります。次回の6月FOMCでは、参加者それぞれの金利見通しを示す「ドットプロット」が発表され、注目されるポイントとなります。減税法案が追い風になる可能性もまた、トランプ大統領が掲げる減税案はまだ株価に織り込まれておらず、米国株の上昇を支援する可能性があります。5月9日に米下院歳入委員会は税制案の一部を公表し、13日に採択が予定されています。ただし、懸念されるのは財政悪化です。減税による財源の確保が最大の課題となっており、今後の議論の行方に注目が集まります。今後の注目イベント5月13日:消費者物価指数(CPI)5月14日:生産者物価指数(PPI)・小売売上高5月15日:パウエル議長講演5月28日:NVIDIA決算5月末:税制法案の成立目標6月17-18日:FOMC

SCHDはパフォーマンスが悪い?過去1年の高配当ETFパフォーマンス比較と要因分析

SCHDはパフォーマンスが悪い?過去1年の高配当ETFパフォーマンス比較と要因分析

高配当株ETFは、米国株式市場で安定した配当収入を得つつ資産成長も狙える人気の投資手段です。中でも SPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)、VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF)、HDV(iShares Core High Dividend ETF)、SCHD(Schwab U.S. Dividend Equity ETF)は、多くの個人投資家に利用されています。これら4つのETFはそれぞれ異なる指数や運用方針に基づき高配当株に投資しています。本記事では、2024年4月16日から2025年4月15日までの1年間のトータルリターン(株価変動と配当再投資を合わせた総合的なリターン)を比較し、特にSCHDのリターンが他より低調だった理由を分析します。前提:日本におけるSCHDSCHDが他の3つのETFと大きく異なるのは、日本で海外ETFとしての取引ができないところにあります(運用会社のSchwabが登録をしていないため)。なので、これまで日本の個人投資家は投資ができていなかったのですが、2024年に大手ネット証券がSCHDに投資する日本の投資信託を設定したため、一気に投資が加速していきました。弊社ブルーモ証券も、実はこれに先立ち「安定高配当株式」という公式ポートフォリオをアプリ内で使えるようにしており、そちらはSCHDの銘柄構成で投資ができるようになっています。米国ではSCHD自体はかなり浸透している高配当株ETFで、最大手のVYMに比べるとやや運用残高は低いものの、HDVやSPYDよりもかなり大きな残高を持っています。リターン比較まず、4つのETFの直近1年間(2024年4月20日~2025年4月21日)のトータルリターンを見てみましょう。トータルリターンとは、値上がり益(キャピタルゲイン)に加えて受け取った配当金を再投資した場合のリターンを指します。以下のグラフとデータは、その期間における各ETFのトータルリターン(%)を示しています。図:4つの高配当ETFの2024年4月16日〜2025年4月21日のトータルリターン比較(配当込み)各ETFの1年間のリターンは、SPYDが+12%と最も高く、HDVが+10%、VYMが+8%と続き、SCHDは+4%に留まりました。グラフからも分かるように、SCHDのリターンが他の3つより明らかに低い状況です。つまり、この1年間ではSPYDが最も高いリターンを上げ、一方でSCHDの成績が最も低調でした。次章では、なぜSCHDが他の高配当ETFに比べて伸び悩んだのか、その背景を保有銘柄やセクター配分、金利環境、企業の業績(ファンダメンタルズ)といった観点から解説します。SCHDのパフォーマンスが低迷した理由同じ「高配当ETF」といっても、ファンドごとに組み入れている銘柄や投資戦略が異なるため、リターンにも差が出ます。特にSCHDは他のETFと比べてセクター比率(どの業種にどれだけ投資しているか)や銘柄選定の特徴が異なり、それがこの期間の低調なパフォーマンスにつながりました。ここでは主な要因を整理します。保有銘柄の違い:SCHDは質の高い配当株100銘柄に分散投資しますが、その上位構成銘柄を見ると、通信や医薬品など近年株価が伸び悩んだ企業が目立ちます。例えば2025年4月時点でSCHDの組入上位にはコノコフィリップス(COP)やベライゾン(VZ)、コカ・コーラ(KO)などが含まれ、特にコノコフィリップスは資産全体の約4.5%を占める第1位の保有銘柄でした。コノコフィリップスは過去1年で株価低迷が続いており、SCHDの足を引っ張ったと考えられます。一方、他のETFではVYMはブロードコム(AVGO)を約5%組み入れるなど情報技術セクターの有望株も保有しており、これが株価上昇に貢献しました(ブロードコムはAI需要などを背景に株価が大きく伸びた銘柄です)。またHDVはジョンソンエンドジョンソン(JNJ)を約5.3%、アッヴィ(ABBV)を約4.9%組み入れており、ヘルスケア株の上昇恩恵を受けています。SCHDは後述するようにヘルスケア比率自体は低くありませんが、特定の不振銘柄(例えば通信や一部医薬品株)の比重が高かった点で不利でした。セクター配分(業種バランス)の影響:各ETFが投資するセクターの比率の違いもパフォーマンス差を生みました。SCHDの特徴は、情報技術セクターの比率がわずか約10%と低く、代わりに生活必需品(消費財)やエネルギー、ヘルスケアといった伝統的な高配当セクターに多く投資していることです。これにより、「情報技術セクター」「公益事業セクター」「金融セクター」の成長を取りこぼしてしまいました。さらに、SCHDは公益事業(電力など)セクターをほぼ含まず、不動産セクターもゼロでした。これはSCHDのベンチマークがREIT(不動産投資信託)やユーティリティ(公益事業)を含まない構成であり、また財務健全性などの基準で選別しているためです。その結果、2024年後半に公益事業や不動産セクターが金利ピークアウト観測でやや持ち直した際にも、SCHDはその恩恵を受けられませんでした。一方、SPYDは公益事業セクターの比率が高く(構成上位にエクセロンやデューク・エナジーなど電力会社が名を連ねています)、金利低下期待の追い風を受けてリターンが改善しました。また金融セクターについても、SCHDは組入比率が1桁台(約8%)と低く、大型銀行株の上昇の恩恵が小さかった点が挙げられます。例えば2024年は大手銀行JPモルガンの株価が銀行危機後に持ち直しましたが、SCHDはJPモルガンを含まず、代わりに地方銀行のフィフスサード・バンコープなど比重の小さい金融株に限られていました。対照的にVYMは金融セクター比率が高く、JPモルガンなども組み入れていたため(VYMのJPモルガン比率約4%)、相対的に恩恵を受けています。このように「どのセクターにどのように投資していたか」の違いが、リターンの差に直結しました。配当利回りの要因:SCHDは「10年以上の連続増配実績」「高い株主資本利益率(ROE)」など厳格な選定基準を持ち、配当の持続力や企業の財務健全性を重視しています。そのため、一時的に配当利回りが非常に高い銘柄(例:業績悪化で株価暴落→見かけ上利回り急上昇したような銘柄)は組み入れず、安定成長する高配当銘柄が中心です。このアプローチは長期では有効とされていますが、短期的な株価トレンドとは噛み合わない場合があります。2024年前半〜中盤はAI関連などごく一部の大型ハイテク株に資金が集中し、多くの高配当銘柄は企業業績が堅調でも株価が冴えない状況でした。一方でSPYDは利回り重視で組入れた銘柄が多く配当利回り4~5%台と高水準だったため、仮に株価が停滞しても配当分で年4%以上のリターンを確保できました。結果として、この1年間は株価上昇が乏しい中でも「配当分厚み」の差がリターン差に寄与し、利回りの高いSPYDが有利となった面もあります。要するに、SCHDは堅実な増配銘柄中心ゆえ配当利回り水準ではやや見劣りし(執筆時点でSCHDの分配利回りは約3.7%、SPYDは約4.4%程度)、株価上昇も限定的だったためトータルリターンが低く出る結果となりました。以上のように、SCHDの低調な一年間の背景には、組入銘柄・セクター構成と市場環境のミスマッチがあったと言えます。他のETFと比べて情報技術株などの恩恵を受けにくいポートフォリオだったこと、防御色の強い銘柄群が金利上昇局面で市場の関心を集めづらかったことが影響しました。簡単にまとめると、過去1年の短期では、SCHDの選んだ財務健全性の高い企業・セクターの株価がパフォームしない中、より高利回りの配当銘柄を選んだSPYDのような高配当ETFに、配当分で打ち負けたと言えます。まとめ今回比較した4つの高配当ETFのうち、2024年4月~2025年4月の1年間ではSPYDが最も高いリターンを上げ、SCHDが最も低かったことが分かりました。SCHDの低迷は一時的なものであり、運用手法そのものが劣っているわけではありません。実際、SCHDは長期的な増配率や安定性で高い評価を得ており、過去10年のトータルリターンではVYMを上回る実績もあります(設定来の年率リターンではSCHDは約12.1%、VYMは約10.3%といったデータもあります)。したがって、「直近1年の結果だけで優劣を判断しないこと」が重要です。高配当ETFそれぞれに長所と短所、得意な相場局面があります。例えば、SPYDやHDVは景気敏感株やエネルギー株が多いため景気回復局面に強い半面、景気後退時や金融危機時には組入銘柄の減配リスクが相対的に高い可能性があります。一方、SCHDは財務健全性や連続増配実績に優れた銘柄で固められているため不況期でも減配が少なく、長期の安定運用に向いているという魅力があります。VYMは銘柄数が多く幅広い大型株に投資しており、市場全体に近い分散効果を持ちながらS&P500よりやや高い利回りを狙えるバランス型と言えます。投資家としては、ご自身の目標や市場見通しに応じて、これらETFを組み合わせて活用することも検討すると良いでしょう。例えば、高利回りで短期リターンを狙う部分にはSPYD、長期の安定成長にはSCHD、といった具合にポートフォリオ内で役割分担させる戦略も考えられます。今回の比較期間ではSCHDが低迷しましたが、将来金利が下がりディフェンシブ株が見直される局面になれば、再び相対的に優位に立つ可能性も十分あります。高配当ETFは長所を理解した上で分散投資し、長期的な視点で保有することが肝心と言えるでしょう。

【米国株見通し】景気後退懸念で調整売り、FANG+指数の今後と個人投資家が考慮すべき事は?

【米国株見通し】景気後退懸念で調整売り、FANG+指数の今後と個人投資家が考慮すべき事は?

本記事では、FANG+指数の下落要因について概説し、個人投資家が考慮すべき事項や今後の見通しについて紹介します。FANG+指数の構成銘柄の入れ替え基準と過去のパフォーマンスについてはこちらの記事で解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。※FANG(ファング)は、Facebook・Amazon・Netflix・Googleの4銘柄の頭文字を意味し、これらの銘柄にアップル、マイクロソフトを含む6銘柄を加えた大型テクノロジー10銘柄に10%ずつ等配分投資をする株価指数がFANG+指数です。米国株調整で、FANG+は大幅下落2025年、ドナルド・トランプ大統領の関税政策やその他の政策の不透明感による貿易戦争や景気後退への懸念から、米国株は2023年以来初の調整局面に入りました。S&P 500指数は2月19日の高値から10%以上下落し、ハイテク銘柄で構成されるFANG+指数は、投資家がリスク回避志向を強めていることから市場全体よりも大きく下落しています。株価の一時的な調整はよくあることLPL Researchによると、1928年以降に米国株は10%以上の調整を1.1年ごと、15%以上の大幅な調整を2年ごとに迎えており、調整相場でのピークから底までの平均下落率は13.8%となっています。一方、1950年以降においてS&P 500指数は調整局面に入ってから3ヶ月後には平均6.5%、6ヶ月後には12%のリターンを記録。中でも、経済政策の不透明感が株安を引き起こした事例では、短期的に市場が不安定化したものの、長期的には米国株の買いの好機となりました。ただし、大きな買いに積極的になるべきというわけではありません。一般的に、調整局面での底打ちは一度限りの出来事ではなく、プロセスとして生じます。ヤルデニ・リサーチによると、平均的な調整期間は115日であり、株価が持続的に上昇するには時間がかかるので、投資家は時間をかけて少しずつ株を買い戻すことが賢明と言えます。ハイテク株の見通しはマクロ経済状況に依存また、相場に対する投資家心理を反映する指数として知られるボラティリティ指数は依然として20を超え、政策や経済成長に対する市場参加者の強い警戒感が続いていることを示しています。FANG+の見通しは不透明が強く、政策金利の引き下げが確実視されればハイテク株は反発する可能性がありますが、中国、メキシコ、カナダからの輸入品に対する関税がインフレ懸念の長期化を招けば、ハイテク企業の利益率に重しとなる可能性があります。さらに、景気後退が起こった場合は、消費者や企業のテクノロジーへの支出が減り、株価にさらなる圧力がかかることが想定されます。FANG+への投資を検討する際には、リスクの許容度と投資期間を考慮する必要があります。マクロ経済の見通しが明確になるまでハイテク株は低迷する可能性がありますが、経済状況が改善すれば大幅な上昇も期待できます。一方、インフレと景気後退への懸念が高まる状況では、特定のセクターに特化するのではなく、ボラティリティの低い堅実な資産へ投資をし、より分散されたポートフォリオをを検討するのも手です。マーケットの底打ちはいつか市場は経済成長の鈍化をある程度織り込んでいるため、今後数か月で景気後退リスクがさらに高まるかどうかが当面の注目点となります。市場の底打ちには、1) 実体経済が堅調であり、景気後退リスクが限定的であることを示唆するデータ(経済指標)、2) FR​​Bの金融緩和シグナル、3) 政権のスタンス変化等が観測されることが必要と考えられます。ただし、経済指標が悪化した場合には市場の懸念が裏付けられますが、堅調な指標が維持されたとしても、景気後退を回避できると市場が十分に確信するまでに時間がかかる可能性があります。政策による下振れリスクが最も懸念されていることを考えると、政策スタンスの変化や政権が経済支援のために政策を調整する用意があるといったメッセージを発することが、明確な回復への道となると想定されます。

【米国株】下落相場・調整局面こそ、NISA投資に最適な理由

【米国株】下落相場・調整局面こそ、NISA投資に最適な理由

相場の下落や調整局面では投資を続けることへ不安を感じるものですが、投資銘柄の長期的な成長が期待できる場合、NISAで投資をする好機とも考えられます。本記事では、下落相場・調整局面がNISA投資に最適な理由を解説のうえ、米国株市場の状況を見ていきます。調整局面での投資は、NISAを有効活用しやすい1. 同じ投資額でより多くの非課税資産を形成NISA制度では投資枠の上限が決まっているため、 同じ投資額で多くの口数(または株数)を購入可能な値下がり時に投資を行うと、より多くの資産を積み上げることができます。2. 優良銘柄を割安で取得可能(バーゲンセールのような状態)相場下落時は、多くの銘柄が一時的に本来の価値より過小評価されることが起こります。投資銘柄の本質的な成長ストーリーが大きく変わらない場合、相場回復後のリターンを最大限に享受できます。3. 配当利回りが上昇の可能性調整局面であっても、多くの優良企業や投資信託は配当金を維持する傾向にあり、投資元本に対する配当利回りは上昇します。NISA口座での取引は、売買益だけでなく配当金や分配金も非課税のため、より多くのインカムゲインが期待できます。M7を中心に割高改善がすすむ米国株市場2025年、多くの投資家は昨年につづき米国株市場が堅調に推移すると予想していました。しかし、貿易戦争や景気後退への懸念、AI相場崩壊の兆しが、米国株下落の波を引き起こしています。現在、S&P500指数、ナスダック100指数、ダウ平均株価は、支持線として注視される200日移動平均線を下回り、各指数とも昨年11月の選挙当日の水準を下回っています。株価の割安度を判断する際に用いられる予想PER(株価収益率)に着目すると、2025年1月末から3月10日にかけて、S&P500指数の予想PERは22.1倍から20.4倍と約8%調整しています。調整は割高感のあった大型テクノロジー企業7社「マグニフィセント・セブン(M7:アップル、マイクロソフト、エヌビディア、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、テスラ)」を中心とし、M7は同期間に予想PERは30.9倍から25.2倍と約18%調整しています。一方、エネルギー・公益事業株をはじめとするバリュー株には新たな資金が流入しています。LSEGリッパーによると、米国のバリュー株の予想PERは現在17.6倍で、米国のバリュー型ETFは今月18億ドルの流入を記録しています。重要なのは、政策金利動向と企業業績2025年は政治的な不安定さから株価の乱高下が想定され、長期的な視点で投資を行い、短期的な変動に耐えることが求められます。政策金利動向に目を向けると、2月の米消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の軟調であったことから、米連邦準備理事会(FRB)は6月から利下げを再開し、年内に3回の利下げを実施するとの見方が高まっています。一方、現時点では米国株のEPS下方修正は限定的となっており、投資家はマーケットの底打ちがいつかを探ろうとしています。今後の相場の行方については政策動向のほか、短期的には3月18-19日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で発表される経済見通しやパウエル議長の会見が鍵となります。

中立金利とは?米金利高・ドル高は継続の見通し

中立金利とは?米金利高・ドル高は継続の見通し

本記事では、「中立金利」について解説のうえ、米国の中立金利を巡る市場関係者の見方を紹介いたします。中立金利とは中立金利とは、景気が過度な刺激や抑制を受けず、経済が安定して成長するための政策金利水準です。市場では政策金利のターミナルレート(利下げや利上げの終着点)として注目され、政策金利が中立金利を上回る場合は金融引き締め的、下回る場合は金融緩和的となります。米国の中立金利は3%予測米連邦準備理事会(FRB)が金融政策の誘導目標として設定する政策金利は、FF(フェデラルファンド)レートとして知られ、FRB高官が推定する中立金利は「ロンガーラン」として四半期に一度経済見通し資料で発表されています。2024年は、ロンガーランが四半期予測ごとに上方修正され、12月会合で発表された予測中央値は3%と、前年の2.5%から上昇し、2018年以来の高水準となりました。ロンガーランを3.5%以上と推定するFRB高官の数も6名へと増えました。FRB高官の多くは中立金利について、コロナショック以前の低水準から上昇した公算が大きいとしていますが、最終的にどのような水準に落ち着くかについては不確実性が高まっていると指摘しています。2024年12月会合におけるFRB高官の政策金利見通し | Source: The Federal Reserveまた、トランプ新政権の経済政策の影響について、パウエル議長は「予測に組み込み始めた者もいれば、そうしなかった者もいた」と説明しており、12月の経済見通しでは政策リスクは限定的な織り込みとなっています。ロンガーラン上昇で金利高止まりが意識市場関係者の間では「より高い中立金利に移行」し、すでに政策金利は中立金利に相当近づいたと可能性があると指摘する声が複数上がっています。中立金利の上昇は、利下げペースが緩むだけでなく、政策金利の到達目標であるターミナルレートが上昇するため、利下げの下限が上昇し、金利の高止まりにつながる可能性があることを念頭に置く必要があります。1月8日に開示された12月会合の議事要旨は「委員会は政策緩和のペースを緩めるのが適切な時期にある、もしくは近い段階にあると示唆した」とし、「一部の参加者は、委員会が9月に緩和政策を開始したときよりも政策金利は中立値に大幅に近づいたと指摘した」、「多くの参加者はさまざまな要因によって、今後数四半期の金融政策決定においては慎重なアプローチが必要なことが強調されたと示唆した」と記され、当面の金利据え置きの可能性を示しています。FedWatchによると、議事要旨の発表後の金融市場は、FRBが5月会合までは政策金利の引き下げを見送り、6月会合以降に1回の0.25%利下げを実施するとの見方を織り込んでいます。2025年内に2度目の利下げが行われる可能性は50%程度となっています。対米利差拡大でドル高進展か一方、欧州中央銀行(ECB)は今後4回連続の利下げを予想し、イングランド銀行(英中央銀行)も2025年緩和継続方針を示していることから、市場では各国通貨の対米金利差が拡大し、2025年前半にかけてドル高が全面的に進む可能性が指摘されています。また、トランプ次期大統領の関税引き上げ公約もドル高基調を後押ししていますが、低金利やドル安を志向するトランプ氏がドル高をどれほど許容するのか、けん制に動くのか注目が集まります。2025年のドル円相場見通しについては、以下の記事を合わせてご覧ください。

なぜ米国株は上昇?2025年、個人投資家が注目すべき動向は

なぜ米国株は上昇?2025年、個人投資家が注目すべき動向は

2024年、連邦準備理事会(FRB)による利下げ・生成AIブーム・堅調な米国経済を背景に、S&P500指数は年初来23%超で取引を終えました。2023-24年の2年続けての上昇率は約50%と、1990年代後半のドット・コム・バブル以降で最大の大きさとなります。本記事では2024年の米国株市場を振り返り、2025年に個人投資家が注目すべき動向を考察します。利下げ・生成AIブーム・堅調な米国経済の3つが相場を牽引1-3月:利下げ期待主導の市場全体底上げ型上昇2024年第1四半期、S&P500指数は10.2%上昇し、終値ベースで過去最高値を22回更新しました。2023年は「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大型ハイテク株が市場をけん引していましたが、第1四半期はアップルが11%、テスラが30%近く下落する一方で不動産を除く全セクターが上昇し、市場全体底上げ型の強気相場となりました。株価上昇がテクノロジーセクターを超えて広範囲に広がった背景としては、FRBの「年内3回」の利下げ期待があり、米経済がソフトランディングに向かい、企業業績が拡大するとの見通しが高まりました。一方ボトムアップサイドの要因としては、生成AI関連株の活況が挙げられます。第1四半期において、半導体大手エヌビディアは82.2%の上昇を記録し、時価総額が米国市場3位まで急浮上しました。その他AI事業に積極的なマイクロソフトや、アマゾン、メタプラットフォームズの年初来上昇率もS&P500をを上回る伸びを見せ、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの分析では、S&P500指数の第1四半期の上昇分の半分近くがこの4社で占められたとされています。4-6月:利下げ期待が後退し、ハイテク大手へ資金集中4月の下落と5-6月の力強い上昇を経て、第二四半期にS&P500指数は3.9%上昇しましたが、第1四半期の強気市場とは異なり、一部のハイテク銘柄のみが上昇に寄与する相場となりました。4月に発表された雇用統計や消費者物価指数(CPI)などの経済指標がインフレの根強さを示し、さらに第1四半期の国内総生産(GDP)速報値が市場予想を大きく下回る結果となったことから、米国経済のインフレ再燃やスタグフレーション懸念が浮上し、株価は値下がりに転じました。しかしその後、CPIが市場予想を下回るなどインフレの鈍化を示す材料が出始め、上昇基調に回帰しました。7-9月:ボラティリティが続くも、上昇継続第3四半期は、公益から資本財、金融に至るまで幅広い銘柄が上昇したことにより、S&P500指数は5.5%上昇し、四半期ベースでは4四半期連続高で2021年以来の長期上昇局面に達しました。7月前半は上昇基調が持続しましたが、7月17日以降は割高感のある大型グロース株から割安感のあるバリュー株や中小型株に投資資金がシフトする動きが、特に情報技術セクターで顕著に見られました。その後、8月に発表された7月の雇用統計が市場予想より悪かったことで米景気が悪化すると懸念され、ダウ平均は1000ドル以上下落と市場心理は一気にリスク回避に傾きました。しかし、低調な雇用統計の背景としてハリケーンの影響があったとの疑いが根強く、その後経済の底堅さを示す経済指標の発表が相次いだほか、FRBのパウエル議長が9月の利下げ開始を示唆したことで相場は急回復しました。9月にはFRBが0.50%の利下げを実施しました。年内さらに利下げが続く見通しに加え、第3、第4四半期の企業利益も過去最高となることが見込まれ、株価は上昇しました。10-12月:大統領選で上昇も、利下げ鈍化見通しで株価調整第4四半期は、ドナルド・トランプ氏の大統領選勝利を受けて、11月に金融・エネルギー・工業株・一般消費財セクターを中心にS&P 500指数が5.7%上昇。しかし、FRBが12月会合で2025年の利下げが鈍化する見通しを発表し、株式市場は大きく下落。四半期全体ではわずか1.9%の上昇にとどまりました。2025年、個人投資家は何に注目すべきか?FRBの利下げ動向FRBが12月会合で発表した経済見通し資料では、2025年内での2回の0.25%利下げ予想が示されました。一方、1月6日時点のFedWatchによると、金融市場はFRBが1月会合では政策金利の引き下げを見送り、3月会合以降に1回の0.25%利下げを実施するとの見方を織り込んでいます。一部の市場関係者は、FRBの金融政策が「休止段階」に入っており、休止状態が長引くほど、市場は利上げと利下げを同程度に織り込む可能性が高いと指摘しており、すでに政策金利は中立金利に近づいたと考える向きもあります。トランプ次期大統領の政策また金融市場では、1月20日の大統領就任初日にトランプ氏が打ち出す大統領令に注目が集まっています。移民政策からエネルギー政策、暗号資産政策等、少なくとも25の大統領令を発表すると予想されています。市場関係者の多くは、トランプ氏が計画する政策が米経済に及ぼす影響については大きな不確実性を伴うと指摘していますが、直近では新政策がインフレに与える影響は「比較的小さい」という楽観的な見解も示されています。これまでに報道されているトランプ氏の公約・主張には以下のような内容が挙げられます。減税法人税を21%から15%に引き下げ中間層向けの減税株式売却益の減税関税引き上げ貿易相手国に一律10%の関税中国からの輸入品には追加で10%の対中関税を導入メキシコとカナダからの輸入には25%の関税石油・天然ガス産業の推進、パリ協定から離脱米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の2026年5月の任期満了を認める方針今後の注目のイベント1月10日 雇用統計1月15日 消費者物価指数(CPI)1月20日 トランプ大統領就式1月28〜29日 連邦公開市場委員会(FOMC)2025年の米国株の見通しについての市場関係者の見方は、以下の記事をご覧ください。

【2025年ドル円相場見通し:後編】日本のマクロ環境は円高への追い風を作りきれないか。2025年末で155円予想

【2025年ドル円相場見通し:後編】日本のマクロ環境は円高への追い風を作りきれないか。2025年末で155円予想

こんにちは。ブルーモ証券代表の中村です。本記事では、前回記事で紹介した市場関係者の2025年末ドル円相場見通しに対して、筆者の予想とその根拠を解説していきたいと思います。結論としては、日本のマクロ環境は円高への追い風を作りきれないまま、米国側での高金利は続くので、現状の円安環境は来年も続くと考えています。よって、ドル円相場のレンジとしては145-165円、中央値としての相場見通しは155円と予想します。なお、本記事は筆者が財務省で勤務した経験に基づき、「政策当局で自分が担当だったらこういう方針にする」という目線で予想を立てているもので、政策当局に対する具体的なヒアリングに基づくものではないことを申し添えておきます。本記事は公式YouTubeでの動画でもご覧いただけます(こちら)おさらい:市場関係者による2025年末の米ドル円相場見通し主要金融機関による2025年末の米ドル円相場見通しみずほ銀行:154(11月29日時点)三菱UFJ銀行:148(11月29日時点)三井住友銀行:133-149(12月20日時点)野村證券:140(12月6日時点)りそなHD:140(12月9日時点)ゴールドマン・サックス:159(11月14日時点)JPモルガン:148(12月17日時点)モルガン・スタンレー:138(11月14日時点)日本のマクロ環境はどこまで円高に追い風か2025年中には日銀の利上げが想定され、財務省も行き過ぎた円安に対して為替介入を行う可能性がありますが、どちらも効果は限定的と見ています。金利を上げきれない日本銀行日銀は金融緩和を段階的に終わらせ、金融引き締めに向かっていますが、長らくゼロ金利・マイナス金利の緩和的環境を続けた日本経済が「金利ある環境」に戻るハードルは高いです。現在の日本のマクロ経済は消費者物価が上昇基調にあるため、金利が上がっても生活実態との乖離は小さいのですが、金利が上がることによる政府部門に対する影響が懸念されます。国の借金である国債残高は現在1100兆円を超えており、政府予算に占める国債の償還金・利払い費は既に一般会計予算の1/4程度になっています。金利が上がると国債費が膨張し、政府はさらに国債を発行して資金調達をする必要に迫られます。資料:財政に関する資料(財務省)政府が国債発行すると、市中銀行がその国債を買いますが、これまでは日銀が緩和政策を取っていたため、市中銀行はすぐに国債を日銀に売却できました。しかし、日銀が金融引き締めに入ると国債の買い取り額が減るため、市中銀行の国債保有残高は急増し、それをどこまで消化可能なのかという問題に直面します。資料:東京財団日本国債の需要が市場で低迷すると、金利はさらに上昇することになるので、国内のマクロ経済環境は意図せず悪化します。東京財団の研究では、政策金利が1%程度にとどまった場合でも、10年金利が7%を超えるシミュレーションも出ています。資料:東京財団このシナリオは日銀も避けたいところなので、国債の市中消化をさらに求めることになる政府の財政悪化は日銀にとっても懸案事項となります。結果、日銀は政府の財政政策と協調しながら利上げをしていくことになり、日本政府がすぐに増税して国債以外での歳入増を図る道筋が見えない中では、利上げによるマクロ経済的リスクは高く、中々踏み込んだ利上げは難しい構造になっています。このため、日本の政策金利が1%を超える水準になるのはだいぶ先になるのではないか(そこまで引き上げるのは無理ではないか)というのが、筆者の見立てです。財務省の為替介入は投機的取引の牽制に使われるが、為替水準への決定打にならないドル円相場に対するもう一つの決定要因が財務省の為替介入です(筆者の古巣で、関係者は大体過去に一緒に仕事をした仲間でもあります)。前提として、財務省の為替介入はファンダメンタルズに逆らって為替水準を決定できるほどの効果はなく、主には投機的取引による相場撹乱を抑えるために実行されます(そもそも相場操縦的な為替介入は国際ルールで禁止されています)。2024年の為替介入も、円キャリー取引が活発化した中で、そうしたヘッジファンドの動きを止める意味合いもあって実行されました。とはいえ、為替水準として異常値と見られる相場レンジはあり、現状だと160-165円がひとつの目安になると思われます。この水準を超えてくる場合、投機筋の動きなどをより財務省も見るようになり、為替介入の確度が高まることになります。よって、財務省の為替介入はドル円のレンジに対して円安方向の限界値を形成するような効果があるものの、大きく円高に流れを変えるほどの効果はないと筆者は見ています。高金利環境の続く米国一方、米国側は新政権の政策方針が生むマクロ環境と、再度の利上げ環境に追い込まれたくないFRBの思惑が交差し、当面は高金利環境が続くと想定されます。トランプ政権での高関税・インフレは既定路線に2024年12月のFOMCで発表された経済見通しサマリーで、FRBは2025年のインフレ率上振れを予想していますが、トランプ政権での関税政策や積極的な財政政策などの影響で、米国のインフレ圧力が強まるトレンドは確定しています。トランプ大統領の任期は最短でも2025年から29年までなので、当面の経済環境としてインフレ圧力が続くと市場は見通しています。FRBはソフトランディングが見えれば利下げを止めるFRBはというと、パウエル議長の悲願であったソフトランディング(景気後退せずにインフレを抑制する)に対して、実体経済側の懸念は薄まりつつあるので、積極的に利下げを打ち出すモメンタムはなくなっています。むしろ「インフレを抑制できたか」が課題で、仮にインフレ率がさらに上振れすることになると、逆に再度の利上げなども検討せざるを得なくなり、マクロ経済環境に混乱をもたらします。FRBとしては利上げ検討が必要な環境にしたくないはずなので、利下げは2025年の早期に手仕舞いとなり、当面は金利を維持して様子見すると考えられます。むしろ、2026年の利下げも現在の予測通りに実行されるか怪しい環境だと筆者は考えています。

【2025年ドル円相場見通し:前編】⾦利差縮小は限定的か、円キャリー復活予想も。各社予想を紹介

【2025年ドル円相場見通し:前編】⾦利差縮小は限定的か、円キャリー復活予想も。各社予想を紹介

2024年の米ドル円相場は、7月に1ドル=161円台後半と約38年ぶりの安値を更新しました。その後、政府の為替介入や⽇銀の追加利上げ等により一時円高が進みましたが、12月19日には一時1ドル=157円台と7月以来の水準まで円安が進行。外国為替市場では2025年も円売り圧力が続くとの見方が強まっています。本記事では、2025年のドル円相場を占う市場環境の前提と市場関係者の見方を紹介します。2025年の⽇米⾦利差縮小は限定的か2025年も、米ドル円の行方は日米金利差に左右されるほか、キャリー取引や米国株の株⾼によるリスクオンの円安圧⼒が働くことが想定されます。FRB、2025年は2回の利下げ予想米連邦準備理事会(FRB)が12月17-18日に開催した定例会合で、主要政策金利を0.25ポイント引き下げ、4.25-4.50%にすることが決定されました。発表された経済見通し資料では、2025年は2回の0.25%利下げが想定され、2025年末時点のフェデラル・ファンド(FF)金利見通しの中央値は3.9%と利下げペース鈍化の可能性が示されました。これは主にインフレ率見通しの引き上げによるもので、パウエル議長は定例会合の記者会見で「今後はインフレの進展を見極めながら慎重に進む必要がある」と述べています。一連の結果を受け、市場ではFRBが1月の会合で金利据え置くとの観測が高まっています。また、トランプ新政権の経済政策の影響について、パウエル議長は「予測に組み込み始めた者もいれば、そうしなかった者もいた」と説明しており、今回の経済見通しでは政策リスクは限定的な織り込みとなっています。トランプ次期大統領による関税の引き上げや移民政策などでインフレ率が上振れした場合は、利下げ回数の減少や市場で利上げの織り込みが始まる可能性も考えられることから、米10年債利回りは底堅く推移することが予想されます。日銀利上げは3月以降との見方一方、日銀は12月18-19日に開催した金融政策決定会合において、政策金利を0.25%程度に据え置くことが決定されました。植田日銀総裁が記者会見で、3月の春季労使交渉(春闘)に向けたモメンタムや、トランプ新政権の不透明感などに言及したことから、市場では来年1月の会合での追加利上げが見送られるとの見方が優勢になっています。また、トランプ新政権の政策が与える影響を見極めるには一定の時間を要することから、ストラテジストの間では2025年の利上げが0.25%から0.5%の1回にとどまる可能性や、「キャリートレード」が復活し、一段と円安が進む可能性が指摘されています。キャリー取引復活の場合は円安が加速円キャリートレードとは、相対的に金利の低い円で資金を調達(借り入れ)して、その円を売り、ドルなど高金利外貨に転換して資産運用する取引のことで、運用益に加えて金利の利ざやを獲得することができます。日米金利差が高い水準で安定し、相場のボラティリティが低いと見込まれる状況は、キャリー取引にとって魅力的な局面となります。市場関係者による2025年末の米ドル円相場見通し主要金融機関による2025年末の米ドル円相場見通しみずほ銀行:154(11月29日時点)三菱UFJ銀行:148(11月29日時点)三井住友銀行:133-149(12月20日時点)野村證券:140(12月6日時点)りそなHD:140(12月9日時点)ゴールドマン・サックス:159(11月14日時点)JPモルガン:148(12月17日時点)モルガン・スタンレー:138(11月14日時点)国内主要金融機関は2025年末に133~154円予想りそなHDは、2025年末時点のフェデラル・ファンド金利見通しを3.50~3.75%、日銀政策金利を0.75%と見込み、金利差縮小を背景にドル円相場を140円予想。一方、三菱UFJ銀行と三井住友銀行はトランプ新政権の発足に際してのドル高リスクを指摘し、FRBが物価および雇用情勢を見極めながら緩やかなペースで政策金利を引き下げていくと見込んでいます。みずほ銀行は、堅調な米経済とインフレ誘発的なトランプ政権が重なることで、年後半は「利下げの終わり」が争点化し、円安が長持ちしやすいと見通しています。外資系金融機関は2025年末に138~159円予想モルガン・スタンレーは、FRBが2025年5月まで合計で1%の利下げ、日銀が2025年1月と7月に利上げをすると見込み、金利差が縮小することで25年前半を中心に円高が進むと予想。一方、ゴールドマン・サックスは、2025年末時点のフェデラル・ファンド金利見通しを3.25~3.50%、日銀政策金利を0.75%と予想しつつも、米ドル高が続き円相場は150円台後半で推移すると見込んでいます。JPモルガンは「米国と日本の金融政策の相違は米ドル/円の小幅な下落を示唆しているが、通貨ペアを大幅に下落させるほどの力はないだろう」と予想しつつ、「円安が加速すれば、よりタカ派的な円買い介入によって対抗されるだろう」と指摘しています。後編ではブルーモ代表中村も見通しを発表本記事では2025年ドル円相場を占う市場環境の前提と各社予想をまとめましたが、次回の後編記事では、ブルーモ証券代表の中村からも見通しを発表します。合わせて、2025年の米国株見通しの記事もご覧ください。

【2025年米国株見通し】強気相場継続か、S&P年末7000超え予想も

【2025年米国株見通し】強気相場継続か、S&P年末7000超え予想も

2024年幅広い銘柄が上昇したことにより、S&P500指数の年初来上昇率は28%に達しました。過去5年間では90%以上上昇し、長期投資家の資産形成に貢献しています。本記事では、2025年の米国株の見通しについて市場関係者の見方を紹介します。S&P500、2025年末までに7000超えの予想も主要金融機関・調査会社による2025年末のS&P 500の目標値ゴールドマン・サックス:6500モルガン・スタンレー:6500ドイツ銀行:7000バークレイズ:6500JPモルガン:6500バンクオブアメリカ:6666UBS:6500ヤルデニ・リサーチ:7000エバコアISI:6600(6月末まで)ゴールドマン・サックス:2025年末までに6500予想11月18日、ゴールドマン・サックス・グループのチーフ米株ストラテジスト、デービッド・コスティン氏は顧客向けレポートで、「米経済と収益は成長を続け、債券利回りは現在の水準を維持する」との見通しを示し、2025年末のS&P500指数の目標値を6500と予想しました。トランプ次期大統領が提案する関税の引き上げと国内製造業への法人税率を15%に引き下げる案の影響については、ゴールドマンの1株利益予測において互いをほぼ打ち消し合うと分析しています。また、2025年は半導体のエヌビディアをはじめとする「マグニフィセント・セブン」が引き続きS&P500指数の他の構成銘柄をアウトパフォームするものの、その差は2017年以来最も小さくなると予測しています。モルガン・スタンレー:2025年末までに6500予想モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、2025年末のS&P500指数の目標値を6500と予想しています。同氏はモルガン・スタンレーの2025年見通しの中で「FRBが来年に入っても利下げを継続し、景気循環指標が改善を続ける限り、収益成長の拡大は継続するだろう」と述べています。また、同行は選挙結果がもたらす潜在的な不確実性を理由に、株式の予想レンジを通常よりも広く設定しています。弱気シナリオではS&P500は4600まで落ち込み、強気シナリオでは7400に達すると予想されています。ドイツ銀行:2025年末までに7000予想11月25日、ドイツ銀行は米国株市場が引き続き堅調で、2025年末までにS&P500指数が7000に達するとの予想を公表しました。過去2年間の株高をけん引した多額の資金流入と強力な自社株買いが2025年も続き、S&P500構成銘柄の1株利益は282ドルと見通しました。バークレイズ:2025年末までに6600予想11月25日、バークレイズは2025年末までにS&P500指数が6600に達するとの予想を公表しました。同行のアナリストは顧客向けレポートで「米国株は来年に向けてマクロ面でのプラス要因がマイナス要因を上回ると考えている」と記し、上昇の要因としてFRBによる金融緩和局面の継続や、失業率が低水準で推移していること等を挙げています。また、2025年は多くのセクターがインフレ鈍化による利ざや縮小や米国以外の地域での成長鈍化による影響を受けるなか、巨大IT企業が引き続きS&P500全体の業績をけん引するとし、構成銘柄の1株利益271ドルと見通しました。JPモルガン:2025年末までに6500予想11月27日、JPモルガンのストラテジスト、ドゥブラヴコ・ラコスブジャス氏は、2025年末のS&P500指数の目標値を6500とすると明らかにしました。強気見通しの根拠としては、健全な米労働市場と、利下げ、AI設備投資ブームの予想等を見込んでいます。また、トランプ氏の政策が株式にもたらすダウンサイドリスクはあるものの、「トランプ氏の市場重視姿勢と、政策金利の引き下げ、中国による景気刺激の取り組みが株式相場を下支えするはずだ」と指摘しています。バンク・オブ・アメリカ:2025年末までに6666予想12月2日、バンク・オブ・アメリカのサビタ・スブラマニアン氏は、2025年末のS&P500指数の目標値を6666と予想しました。上昇要因としては、低金利や労働市場の生産性向上などの力強い経済成長への期待、そしてトランプ次期大統領の下での収益加速や税率引き下げの可能性等を挙げています。また、2025年の株式上昇は「マグニフィセント・セブン」からS&P500の他の493銘柄に広がると予想し、健全なキャッシュリターンが期待でき、米経済に関連する大型バリュー株に多くの投資機会があるとの考えを示しています。セクター別では、金融、一般消費財、素材、不動産、公益をオーバーウエートとしています。UBS: 2025年末までに6600予想UBSグローバル・ウェルス・マネジメントは、 堅調な米経済の成長、金利低下、AI技術の進展により、2025年末までにS&P500指数が6600に達するとの予想を公表しました。セクター別では、テクノロジー・公益・金融を推奨しています。また、関税引き上げなどの要因により、2025年の市場でボラティリティが上昇するのは避けられないものの、AIの発展が引き続き株式市場に対して大きな追い風になるとの考えを示しています。ヤルデニ・リサーチ:2025年末までに7000予想ベテランストラテジストのエド・ヤルデニ氏は、2025年末のS&P500指数の目標値を7000とし、また2029年末までに1万の大台に到達するだろうと予想しています。同氏の予測は、トランプ次期大統領の経済政策が米企業の増益につながるとの見方に基づいており、「トランプ2.0は経済と株価にとって強気な大きな政権交代を意味する」と語っています。また、ウクライナで続くロシアの戦争と中東の紛争が解決すれば、株式相場の上昇基調はさらに勢いを増すだろうと述べています。エバコアISI:2025年6月末までに6600予想エバコアISIは、米国株の強気相場は「まだ始まったばかり」とし、2025年6月末までのS&P500指数の目標値を6600と設定しました。ストラテジストのジュリアン・エマニュエル氏は、トランプ氏が規制緩和に動き、相場の押し上げにつながると分析しています。また、選挙後の株価上昇が最近行き詰まっていることについては、市場が「消化段階」にあることを示していると語っています。

ダウ平均とは?構成銘柄や過去の値動きを徹底解説

ダウ平均とは?構成銘柄や過去の値動きを徹底解説

本記事では、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(DJIA)の構成銘柄や銘柄の選定基準、過去のパフォーマンスについて解説のうえ、米国の有名な投資戦略である「ダウの犬」投資法を紹介いたします。ダウ平均とはダウ平均とは「ダウ・ジョーンズ工業株価平均」の略称で、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスによって算出される米国の優良企業30社で構成される価格加重平均指数です。株価に基づいて指数内の銘柄の加重が決定されるため、株価の高い銘柄が指数全体に与える影響が大きくなります。1896年5月26日に初めて算出された、130年弱の歴史を持つ米国の市場指数の中で2番目に古い指数であり、アメリカの経済動向を象徴する代表的な指数です。構成銘柄と選定基準構成銘柄の変更は必要に応じて検討され、定期的なリバランスは行われません。一方、分割やスピンオフなどのコーポレート・アクションが起きた際にはいつでも変更を行うことができ、係数の調整が行われ指数の一貫性が維持されます。構成銘柄の変更は通常、予定日の1~5日前に発表されます。銘柄の選定基準は定量的なルールに基づかず、主に高い評判や安定した成長を持ち、S&P 500のなかでも多くの投資家から関心を集める企業が選ばれます。適切なセクター配分を維持することも考慮されており、運輸や公益事業はそれぞれ別の「ダウ・ジョーンズ輸送株価平均」と「ダウ・ジョーンズ公共株価平均」に含まれるため、工業株価平均からは除外されています。2024年11月8日現在、ダウ・ジョーンズ工業株価平均には以下の30社が選出されています。アップル(AAPL)アムジェン(AMGN)アマゾン・ドット・コム(AMZN)アメリカン・エキスプレス(AXP)ボーイング(BA)キャタピラー(CAT)セールスフォース(CRM)シスコシステムズ(CSCO)シェブロン(CVX)ウォルト・ディズニー(DIS)ゴールドマン・サックス(GS)ホームデポ(HD)ハネウェル・インターナショナル(HON)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ(IBM)ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)JPモルガン・チェース(JPM)コカコーラ(KO)マクドナルド(MCD)3M(MMM)メルク社(MRK)マイクロソフト(MSFT)ナイキ(NKE)エヌビディア(NVDA)プロクター・アンド・ギャンブル(PG)シャーウィン・ウィリアムズ(SHW)トラベラーズ(TRV)ユナイテッドヘルスグループ(UNH)ビザ(V)ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)ウォルマート(WMT)2024年11月の入れ替えでは、インテルとダウが落とされ、エヌビディアとシャーウィン・ウィリアムズが新たに組み込まれました。2000年以降では約半数の銘柄が入れ替わっており、過去にはバンク・オブ・アメリカ(BAC)、ゼネラル・エレクトリック(GE)、ゼネラルモーターズ(GM)なども選出されていました。過去のパフォーマンスダウ平均の値動きは米国の歴史を反映し、ITバブルの崩壊やリーマンショックなど過去にさまざまなショックが起こり、一定期間大きく下落する局面もありましたが、長期的には危機を乗り越えて成長をしてきました。CURVOの分析によると、ダウ平均は1990年2月から 2024年9月までの過去34年間にドル建てで年率11%のリターンを上げています。出所: Macrotrendsダウの犬とは高配当株に投資する手法として有名な「ダウの犬」(Dogs of the Dow)とは、ダウ・ジョーンズ工業株価平均に含まれる30銘柄のうち、配当利回りが最も高い10銘柄に投資する投資戦略です。一般的に、1年ごとに銘柄を選定し、定期的にポートフォリオを組み替えます。ダウの犬における犬(Dogs)は、「株価が安いこと」を意味しています。配当利回りが高い銘柄は通常、株価が下落して割安になっている場合が多く、企業の配当は相対的に高くなります。そのため、割安な銘柄を購入(バリュー投資)することで、株価の回復・上昇が期待できると考えられています。ダウの犬にワンタップで簡単投資?ブルーモ証券の提供する投資アプリ「Bloomo」では、今回紹介したダウの犬ポートフォリオもワンタップでコピーし投資を始めることができ、そこから変更を加えて米国株・ETFを組み合わせたオリジナルのポートフォリオの作成も可能です。投資信託と同様に日本円を入金するだけで投資ができ、自分でやると面倒なリバランスもワンタップで実行できるので、米国株インデックスに興味がありつつ、自分でも中身をいじりたい方にはおすすめできます。

金相場はなぜ上昇?金ETFへ注目が集まる理由

金相場はなぜ上昇?金ETFへ注目が集まる理由

金に対する強気な市場状況を反映し、9月金ETF(上場投資信託)は14億ドルの流入超となり、5カ月連続での流入超を記録しました。米連邦準備理事会(FRB) が9月18日に利下げ開始を決定したことが好材料となり投資家に好機をもたらしています。本記事では「金価格が上昇している理由」を解説のうえ、ETFを通じた金投資の利点について紹介いたします。最高値を更新し続ける金価格金価格は3月以来急騰し、10月17日には初めて1オンス2700ドルを上回りました。金価格は年初来で約35%上昇しており、S&P500指数の上昇率の約1.5倍のパフォーマンスとなっています。安全資産の需要増、米利下げも追い風金価格は様々な要因によって影響を受けますが、最近の上昇はFRBを含む主要中央銀行による金融緩和への期待と地政学的緊張によって牽引されています。通常、金利が低下すると、銀行に預けた資金や債券から得られる利息が少なくなり、相対的に利息収入が得られない金の魅力が高まります。2000年以降、3回あった米利下げサイクルでは金価格は上昇し、世界株式を上回るパフォーマンスとなっています。また、金は市場の不確実性に対するヘッジとしても見られており、米大統領選や中東紛争をめぐる不透明感から、安全資産としての魅力がさらに高まっています。ゴールドマン・サックスは「世界的な金利低下、構造的な中央銀行の需要増加、地政学、金融、景気後退のリスクに対する金のヘッジ効果により、金ロングをあらためて推奨する」とし、2025年初めの金価格予想を1オンス2700ドルから2900ドルに引き上げました。金価格に連動し、銀価格も高騰また、銀価格も年初来で35%以上上昇し、約12年ぶりの高値近辺で推移しています。金相場高騰に追随していることに加え、銀は太陽光パネルや電子機器など工業用の需要が高まっています。ETFであれば、金投資が簡単に金ETFは、金価格に連動することを目指して投資を行う上場型投資信託で、現物投資と異なり保管リスクがなく、最低投資額が金価格の10分の1〜100分の1と小口のものも多くなっています。さらに、上場投資信託の名前にもある通り上場しているため、取引所が空いている間リアルタイムで取引を行うことができ、運用管理においても、金ETFであれば株式と一体に証券口座内で管理できるため、損益状況やポートフォリオが把握がしやすいというメリットが挙げられます。また現物投資と、ETFを通じて金投資するのでは、利益に対する税金の取り扱いが異なります。現物投資して得た利益は、給与などの他の所得と合わせて総合課税の対象となり、税率は累進課税が適用されます。一方、金ETFに投資して得た利益は株式と同様に税率は20.315%となり、損失が出た場合は株式などとの損益通算ができます。

なぜ大幅利下げ観測が後退?年内利下げ不要論も

なぜ大幅利下げ観測が後退?年内利下げ不要論も

直近の米金融市場では、利下げ観測後退を背景にドル高・円安が進む展開となっています。投資家にとって、今後の利下げ幅とペースは重要な問題であり、本記事では米利下げ観測の変化とその要因を解説します。11月に0.25%の利下げ観測がコンセンサスにFRB(連邦準備制度理事会)は9月17-18日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を0.5%引き下げ、4.75-5%にすることを決定しました。パウエル議長は会合後に記者会見で、大幅利下げに踏み切った一因は労働市場の力強さを維持するための「再調整」と説明しています。予想外に強かった9月雇用統計ところが、10月4日に発表された9月の雇用統計は、7月と8月の就業者数は合計7.2万人の上方修正され、9月の就業者数の伸びは25.4万人と市場予想を大幅に上回りました。失業率も予想外に4.2%から4.1%に低下し、労働市場の底堅さが示されたことから、10月雇用統計が大崩れしない限り、11月のFOMCでは再び0.5ポイントの大幅利下げには踏み切らず、通常の0.25ポイントの利下げを実施する見方が大勢となりました。その後10月10日に発表された、9月の消費者物価指数(CPI)は市場予想をやや上回る伸びとなりました。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは、前年同月比が3.3%上昇と8月の3.2%上昇から反転し、物価上昇率が順調に低下していない可能性があるとの懸念を生じさせました。一方、同日に発表された週次の新規失業保険申請件数は、ハリケーンなどが影響し、前週比3.3万件増と週間の増加幅としては2021年7月以来最大となりました。ハリケーン「ヘリーン」は米南東部の広範囲で甚大な被害を出し、一部では道路や電力の復旧に苦慮しており、事業回復には時間がかかると想定されています。市場はコアCPIインフレ率の上昇よりも失業保険申請件数の急増を重視し、11月の利下げ確率は約90%に急上昇しました。また、10月の労働市場関連の経済指標には、ボーイング従業員3万3000人が加盟する労働組合による9月のストライキとハリケーンの影響から解釈が難しくなることが指摘されています。利下げ継続に慎重な見方も一部からは、米経済の力強さと根強いインフレによって、年内の利下げはあと1回に留まるとの見通しも出ています。具体的には、10月の雇用統計が比較的力強く、インフレ鈍化の流れが休止する状況が続けば、追加利下げを控える可能性が指摘されています。また、著名エコノミストのエド・ヤルデニ氏は、原油価格が上昇傾向にあり、中国が景気刺激策を打ち出す中で、FRBがさらなる利下げを行えば、インフレを引き起こす懸念があるりFRBは年内の利下げは必要ないという見方を示しています。今後の注目イベント11月1日 雇用統計11月5日 大統領選挙11月6〜7日 連邦公開市場委員会(FOMC)会合11月13日 消費者物価指数(CPI)12月6日 雇用統計12月11日 消費者物価指数(CPI)12月17〜18日 連邦公開市場委員会(FOMC)会合

【米国株見通し】S&P500は年末6000突破なるか

【米国株見通し】S&P500は年末6000突破なるか

2024年第3四半期、公益から資本財、金融に至るまで幅広い銘柄が上昇したことにより、S&P500指数は5.5%上昇し、年初来の上昇率は21%に達しました。四半期ベースでは4四半期連続高で2021年以来の長期上昇局面。1-9月の上昇率としては1997年以来の大きさとなります。本記事では、2024年第4四半期の米国株の見通しを紹介し、個人投資家が注目すべき動向を考察します。2025年の米国株の見通しについての市場関係者の見方は、以下の記事をご覧ください。S&P500、年末6000超えの予想も企業業績が力強く、米経済が十分健全に見えることから、多くの投資家は強気相場が少なくとも年末まで続く可能性が高いと考え、10-12月(第4四半期)は第3四半期と同様にボラティリティーは高いものの、好調さを維持したまま年末を迎えることが予想されています。ゴールドマン・サックス・グループのスコット・ルブナー氏は顧客向けレポートで「年末の米国株の上げは10月28日に開始すると強気にみている。目標の6000が低過ぎるのではないかと懸念している」と述べています。ルブナー氏の算出によると、1928年以降、S&P500は10月27日から平均で約4%上昇する傾向にあり、米大統領選後は株高になりやすいです。また、ブラックロックは顧客向けレポートにおいて「第3四半期のボラティリティは、部分的には景気減速への懸念と連邦準備制度理事会 (FRB) が対応に遅れを取っているのではないかという懸念に起因しており、株式市場の基盤となるファンダメンタルズとはほとんど関係がないと私たちは考えている」と述べています。 ボラティリティが予想される第4四半期足元の米国株に対して慎重な姿勢については、金融政策の不透明感のほか米大統領選挙や中東地域の緊張等、金融市場を取り巻く不確実性を反映しています。恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所のボラティリティー指数(VIX)は10月1日、一時20.7まで上昇しましたが、投資調査会社CFRAによると、10月の平均ボラティリティーは1945年以降、他の11カ月の平均を34%上回っています。ボラティリティには株価の上昇と下降の両方が伴い、不安をかき立てるものですが、珍しいことではなく、健全な株式をセール価格で買い増す機会となることもあります。ブラックロックの分析によると、VIXが12以下の場合、6か月後のS&P500のリターンは約5%、VIXが29以上に達した場合の6か月後のリターンは16%と、1990年までさかのぼるデータではボラティリティが高いほど短期リターンが高くなることが示されています。試される「ソフトランディング」特に市場心理に影響を与える可能性が高いのは、FRBの利下げ動向です。アナリストらは「ソフトランディングのシナリオや金融緩和継続への期待を後押ししないデータには過敏に反応するだろう」と指摘しており、雇用統計やFRB高官の発言に注目が集まります。10月3日時点のFedWatchでは、11月会合で0.25%の利下げ、12月会合で0.5%の利下げ予想と引き続き積極的な利下げ期待が反映されています。第4四半期注目のイベント10月4日 雇用統計11月1日 雇用統計11月5日 大統領選挙11月6〜7日 連邦公開市場委員会(FOMC)会合11月14日 エヌビディア(NVDA)決算12月6日 雇用統計12月17〜18日 連邦公開市場委員会(FOMC)会合

なぜ大幅利下げも円安・株価下落?先行き不透明も米国株は緩やかな上昇期待

なぜ大幅利下げも円安・株価下落?先行き不透明も米国株は緩やかな上昇期待

FRB(連邦準備制度理事会)は9月17-18日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を0.5%引き下げ、4.75-5%にすることを決定しました。18日の米金融市場では一時株高や円高・ドル安が進む場面がありましたが、米株相場は下落して終え、為替も142円台に反発しました。本記事では、大幅利下げも株安・円安となった背景を解説します。0.5ポイントの利下げも、見通しは市場期待とずれ会合後に公表された経済見通し資料では、年内の利下げ幅見通しについて19名のFOMC参加者のうち10名が少なくとも0.5%の追加利下げを支持していることが示されたものの、0.25%以内でも十分という参加者も9名おり、意見の相違が見られました。9月会合で発表されたドットチャート(出典: SEP)一方、市場の一部では2025年末にかけてより積極的な利下げ予想があり、市場予想よりも控えめな利下げ見通しを受けて、投機勢による円買いポジションの解消や利確が生じ、為替や株の変動が大きくなったと考えられています。パウエルFRB議長は、今回の0.5%の引き下げについては労働市場の冷え込みを回避するためのリスク管理であり、先行き同様のペースで緩和を進めるわけではないとの旨の発言もしており、今後のデータ次第で利下げペースを速める方向・落とす方向のいずれにも柔軟に対応する姿勢を示しました。9月19日時点のFedWatchでは、11月会合で0.25%の利下げ、12月会合で0.5%の利下げ予想と積極的な利下げ期待が反映されています。一部アナリストは「今後は市場の期待とFRBのせめぎ合いとなり、どちらが正しいかを決めるのはインフレデータではなく雇用データとなるだろう」と指摘。次回11月会合までに雇用統計の発表は2ヶ月分控えています。米国株は緩やかな上昇が期待また、9月会合の結果発表後に実施した「マーケッツ・ライブ(MLIV)パルス」調査では、今回の利下げによりソフトランディングの可能性が高まり、米国株は年内に緩やかに上昇するとの見方が示されました。調査回答者のうち、44%が18日の終値から6%未満の上昇、37%は6%を超える上昇を予測。6%の上昇は、S&P500指数の今年これまでの上昇ペースとほぼ一致します。残りの19%は下落の見通しを示しました。株価上昇に対する慎重な期待は、金融政策の不透明感のほか米大統領選挙や地政学リスク等、金融市場を取り巻く不確実性を反映しています。

FANG+とは?構成銘柄の選定基準や過去リターンを徹底解説

FANG+とは?構成銘柄の選定基準や過去リターンを徹底解説

本記事では、「FANG+」指数の構成銘柄や比率、銘柄の入れ替え基準と入れ替え時期、過去のパフォーマンスについて詳しく解説します。FANG+とは「FANG(ファング)」とは、もともと2015年に株式評論家ジム・クレイマー氏によって作られた造語でFacebook(現Meta Platforms)AmazonNetflixGoogle(Alphabet傘下)の4銘柄の頭文字を意味します。これらの銘柄に、世界の時価総額上位2銘柄であるアップル、マイクロソフトを含む6銘柄を加えた大型テクノロジー10銘柄に10%ずつ等配分投資をする株価指数がFANG+指数で、米インターコンチネンタル取引所(ICE)が2017年9月26日から提供を開始しました。構成銘柄と入れ替え基準構成銘柄の入れ替えは四半期ごとに行われ、3月、6月、9月、12月の第3金曜日の後に変更が適用されます。銘柄はFANG(メタ、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット)、アップル、マイクロソフトの6銘柄を主軸とし、残り4銘柄は以下の要素に基づいてランク付して抽出され、現在は半導体大手のエヌビディアとブロードコム、サイバーセキュリティのクラウドストライク、業務SaaSのサービスナウが選出されています。時価総額(35%の重み)平均日次取引高(35%の重み)売上高対株価比率(15%の重み)1年の売上成長率(15%の重み)2024年9月にちょうど変動4銘柄の組み替えがあり、電気自動車のテスラ、データプラットフォームのスノーフレークが落とされ、クラウドストライクとサービスナウが新たに組み込まれました。過去には、中国のアリババやバイドゥ、Twitter(現X)、 アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)なども選出されていました。過去のパフォーマンスICEの分析によると、NYSE FANG+指数は2014年9月19日から 2024年8月30日までの期間に年率27.62%のリターンを上げています。一方、同期間のNASDAQ-100は18.18%、S&P 500は12.99%、S&P 500情報技術セクターは22.06%のリターンとなっており、他の主要な米国指数を一貫して上回っています。出所:ICEFANG+にワンタップで簡単投資?ブルーモ証券の提供する投資アプリ「Bloomo」では、米国株・ETFを組み合わせたオリジナルなポートフォリオで簡単に投資することが可能です。今回紹介したFANG+のポートフォリオをワンタップでコピーし投資を始めることができ、そこから変更を加えてオリジナルのポートフォリオの作成も可能です。投資信託と同様に日本円を入金するだけで分散投資できて、自分でやると面倒なリバランスもワンタップで実行できるので、テクノロジー銘柄インデックスに興味がありつつ、自分でも中身をいじりたい方にはおすすめできます。その他のテクノロジー銘柄インデックス(Magnificent 7やUS Tech Top20)とのパフォーマンス比較や、FANG+に投資する場合のオプションについてご関心のある方は、以下の記事もぜひご覧下さい。