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【米国株見通し】S&P500相次ぐ年末目標上方修正、強気相場継続なるか

【米国株見通し】S&P500相次ぐ年末目標上方修正、強気相場継続なるか

2025年第2四半期、S&P500は2023年以来、ナスダック総合指数は2020年以来の大幅上昇となり、米国株は過去最高値で四半期を終えました。 本記事では、市場関係者による2025年後半の米国株見通しを紹介します。S&P500、相次ぐ年末目標の上方修正足元では、米国株の好調を受けて、ウォール街でS&P500の年末目標の引き上げが相次いでいます。主要金融機関・調査会社による2025年末のS&P 500の目標値ファンドストラット: 6600モルガン・スタンレー:6500ヤルデニ・リサーチ:6500ドイツ銀行:6550シティ:6300UBS:6200ゴールドマン・サックス:6100バークレイズ:6050JPモルガン:6000ファンドストラット:年末6600予想ファンドストラット・グローバルアドバイザーズのトム・リー氏は、AI関連企業を中心に企業業績が堅調で、関税問題の影響も予想より小さく、インフレ圧力も抑えられていることから、S&P500指数の年末目標を6600に設定しています。同氏は、関税懸念に敏感に反応していた市場が、現在むしろ企業業績や経済指標、そしてAI関連の投資動向に注目しており、楽観的なムードが広がりつつあると指摘。また、ISM製造業指数が50を下回る「景気後退圏」で推移していることから、まだ景気の谷にある可能性が示されており、指数が50を超えれば新たな強気相場への転換するとの見通しを示しました。懸念点としては、ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法案(税制改正草案)が米国債務の持続可能性に与える影響があるものの、ここ数週間の市場の反応を見ると、投資家は「単なる予算の問題」として捉えていないようだと述べています。モルガン・スタンレー:年末6500予想モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、年内2回の利下げが実施される可能性があることから、S&P500指数の年末目標を6500と予想しています。同氏は、4月に市場が一時的に下落したものの、すでに底を打ち、現在の反発局面はより持続的な上昇トレンドの始まりであると見ています。関税問題についても、市場はトランプ前大統領の姿勢が今後軟化する可能性を織り込み始めており、過度な懸念は不要だと指摘。企業業績も予想以上に底堅く、収益の上方修正が相次いでいることが強気の背景にあります。また、中東の地政学リスクや原油価格の動向が落ち着きを見せていることから、経済全体としての不透明感は後退しつつあると判断しています。ヤルデニ・リサーチ:年末6500予想ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏は、S&P500指数の年末目標を6500に設定し、「現在は明確なブルマーケットであり、1960年代半ば以降の最も優れた強気相場のリターンに匹敵する可能性がある」と述べています。同氏は、地政学リスクや関税圧力等の逆風にもかかわらず、関税不安の緩和やAI関連企業への投資増加、今後の利下げ見通しなどを根拠にリバウンドを強調。S&P 500は2030年までに10000まで上昇しうると楽観的なシナリオを示しています。一方で、現状は「マイルドなバブル(melt‑up)」に近い状態であり、実際にバブルへと発展する可能性をリスクとして提示。特に市場心理が過熱しすぎるタイミングには「急落リスク」も視野に入れるべきだと警鐘を鳴らしています 。ドイツ銀行:年末6550予想6月2日、ドイツ銀行は関税の影響緩和や好調な経済見通しを理由に、S&P500指数の年末目標を6150から6550に引き上げました。過去2年間の株高をけん引した多額の資金流入と強力な自社株買いが2025年も続き、S&P500構成銘柄の1株利益は282ドルと見通しました。シティ:年末6300予想シティグループは、これまでの予想を上回るAI関連銘柄の強さや企業の業績改善、インフレの落ち着きなどを背景に、S&P500指数の年末目標値を5800から6300に引き上げました。同社は「金利がピークを打ち、関税に対する過度な懸念も後退している」と分析しており、テックセクターを中心とした投資家のリスク選好が継続していることから、中期的には6500も視野に入ると述べています。UBS: 年末6200予想6月26日、UBSグローバル・ウェルス・マネジメントは、貿易摩擦の緩和や底堅い四半期の企業利益見通しを踏まえ、2025年末のS&P500指数の目標を従来の6000から6200に引き上げました。また、「経済が関税の一時的な影響に適応すれば、2025年後半には成長とインフレが改善し始めるだろう」という見通しを示し、2026年の年末目標についても6400から6500に上方修正しました。ゴールドマン・サックス:年末6100予想ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・コスティン氏は、関税率の低下、経済成長の改善、景気後退リスクの減少を織り込み、6ヶ月後(2025年末)の目標株価を5900から6100に引き上げ、12ヶ月後の目標株価を6500としました。同行は、S&P 500企業の1株当たり利益が2025年に前年比7%増の262ドル、2026年には同じく7%増の280ドルになると予想し、これらの予想は「2025年第1四半期の業績が予想を上回り、今後数四半期における米国経済の成長見通しが力強いことを反映している」と述べています。バークレイズ:年末6050予想6月4日、バークレイズは関税不安の収束や企業業績の回復を材料に、S&P500指数の年末目標を5900から6050に引き上げました。同社は関税について、来年は今年と比較して追加の直接的な影響はないと予想されるが、成長とインフレへの二次的な影響は来年まで及ぶ可能性があると述べました。また、来年末のS&P500種指数の目標を6700ドル、構成銘柄の1株利益285ドルと見通しています。JPモルガン:2025年末までに6000予想6月5日、JPモルガンのストラテジスト、ドゥブラヴコ・ラコスブジャス氏は、S&P500指数の年末目標を5200から6000に引き上げました。同氏は「上昇余地はほとんど残されていない」と述べ、現在の株価水準は多くのポジティブ材料をすでに織り込んでいると指摘。AIブームや関税リスクの後退を認めつつも、今後のリスク管理の重要性を強調しました。また、相場の主導役が、これまでの強気相場をけん引してきた大型テクノロジー企業に再び戻ると予想。最も確信度の高い取引としてモメンタム株、特にハイテク7社「マグニフィセント・セブン」や半導体、その他AI関連の銘柄を挙げています。

中東情勢の安定化とFRB利下げ見通しで株価は最高値へ|米国市場サマリー

中東情勢の安定化とFRB利下げ見通しで株価は最高値へ|米国市場サマリー

先週は、イスラエルとイランの停戦報道による地政学リスクの後退や、FRBによる早期利下げ期待の高まりを背景に、全体として堅調な展開となりました。原油価格が急落したことでインフレ懸念が和らぎ、市場心理が改善。また、パウエルFRB議長が議会証言で慎重な姿勢を示したことで利下げ観測が一段と強まり、株式市場への資金流入を後押ししました。特にTeslaやBroadcom、Nikeなどが好材料で大きく上昇したほか、FRBが銀行のレバレッジ規制緩和を示唆したことで金融株も買われました。米中間でレアアース供給に関する合意が成立したことも投資家心理を支援し、週末にはNASDAQとS&P500が過去最高値を更新。NASDAQは4月の安値から20%超の回復を見せ、「強気相場」入りを明確にしました。結果として、主要指数は週間を通じて強い上昇基調を維持しました。為替は、中東情勢の緊張再燃で週初に146円台へ上昇しましたが、その後は地政学リスクの後退と米利下げ期待が強まったことで円高方向へ戻し、週末は144円台半ばで終了。週間では上下に振れる展開でした。米国株式市場:中東情勢の沈静化と米中協議進展でリスクオン、株価は最高値へ6月23日(月) 原油先物が一時+6%高から-7%安へ急反落し、インフレ懸念が後退したことで買いが優勢となり、ダウは+0.9%(+375ドル)、S&P500は+1.0%、NASDAQは+0.9%で反発しました。FRBボウマン副議長が「7月会合での利下げも排除せず」と発言し、金利先安観が強まったことも追い風でした。個別では Tesla がロボタクシー実証開始を受けて8%超急伸し指数をけん引、エネルギー株は原油安で軟調でした。6月24日(火) イスラエル‐イラン停戦報道で地政学リスクが緩和し、原油続落とともに金利低下期待が高まり、ダウ+1.19%、S&P500+1.11%、NASDAQ+1.43%と続伸しました。Broadcom がHSBCによる格上げで過去最高値を更新し、半導体株が全面高。FRBパウエル議長の議会証言は「当面様子見」の姿勢にとどまり、利下げ観測を裏付ける形となりました。引け後には FedEx が決算を発表し、時間外で売られました。6月25日(水) パウエル議長2日目証言を控え様子見が強まり、ダウ-0.25%、S&P500横ばい、NASDAQ+0.31%とまちまち。Tesla は欧州販売不振報道で下落し、FedEx と General Mills も弱い業績見通しで売られました。一方、引け後の決算で Micron Technology が予想を上回るガイダンスを示し、時間外で急伸。中東情勢が小康状態を保つなか、指数は高値圏で足踏みしました。6月26日(木) 好調な米耐久財受注・新規失業保険申請の減少を背景に景気懸念が後退し、ダウ+0.9%(+404ドル)、S&P500+0.8%、NASDAQ+1.0%へ上昇。FRBが大手銀行のレバレッジ規制(eSLR)緩和案を公表し、JPMorgan Chase や Goldman Sachs など金融株が全面高となりました。また、銅高を受け Freeport-McMoRan や Southern Copper が買われ、景気敏感株に資金が循環しました。6月27日(金) 米中レアアース供給加速の合意と利下げ期待を背景に、S&P500とNASDAQが終値ベースで史上最高値を更新し、それぞれ+0.52%、NASDAQも+0.52%、ダウは+1.00%で締めくくりました。好決算と関税対策を示した Nike が15%急伸し、消費関連を押し上げた一方、中国向け売り上げ懸念で MP Materials などレアアース関連が下落。トリプルウィッチング(株価指数・個別株先物・オプション同時清算)による出来高急増も相場を活性化させました。主要3指数はいずれも週間で上昇し、NASDAQは年初来高値を更新しました。為替市場:中東情勢安定化からドル高になるも、FRBの利下げ観測が出て円高に戻す為替は中東情勢と米金融政策の見通しを背景に上下に揺れ動きました。週明けの23日は、中東の軍事緊張が高まる中で安全通貨としてのドル需要が強まり、ドル/円は145円台後半から146円台へと急伸。原油価格の上昇により対円で約2.4%の急落となりました。24日以降はリスク環境がやや落ち着きを見せ、米連邦公開市場委員会(FOMC)への思惑からドルが若干軟化。テクニカル的には145円~146円のレンジ内で推移しました。米中の地政学リスク後退とも呼応し、27日には一時144.38円まで下押しされ、週末には144.6円で取引を終えました。全体として、週前半の地政学ショックによるドル高が中心となる一方、週後半にはやや落ち着いた動きに。これは、地政学リスクだけでなく米金利政策への思惑が両通貨の行方を左右したことを示しています。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

タイガー・グローバルとは?投資戦略と2025年最新ポートフォリオを解説

タイガー・グローバルとは?投資戦略と2025年最新ポートフォリオを解説

本記事では、2020年にヘッジファンド収益ランキングで世界首位となり、投資家に100億ドル以上の利益をもたらしたタイガー・グローバル・マネジメント(Tiger Global Management)を紹介します。同社の創業背景や投資戦略、そして2025年3月末時点の最新ポートフォリオを解説します。Tiger global managementとはタイガー・グローバル・マネジメントは2001年に設立され、ニューヨーク市に本社を置く世界有数のヘッジファンドです。テクノロジーセクターへの集中投資で知られつつも、消費財、フィンテックといった幅広いセクターに投資しており、これまでに20以上のファンドを組成し、運用資産残高は700億ドルを超えています。創業者のチェイス・コールマン氏は、1997年から2000年にかけて著名投資家の故ジュリアン・ロバートソン氏(タイガー・マネジメント創業者)の下で投資の基礎を学びました。ロバートソン氏は、ジョージ・ソロス氏と並んで20世紀が生んだヘッジファンドの大御所と称され、築き上げた純資産総額は40億ドルを超えます。同氏の掲げた「最も長期成長を望める企業の株式を購入し、経営が悪い企業を空売りする」という運用手法は、現在のタイガー・グローバル・マネジメントの投資の核となっています。2000年にロバートソン氏がタイガー・マネジメントを閉鎖した際、コールマン氏は2,500万ドル以上の運用資金を託され、2001年にヘッジファンド「タイガー・テクノロジー」を設立(後に現社名へ改称)しました。2003年にはプライベート・エクイティ(未上場企業)投資に進出し、Facebook(現メタ・プラットフォームズ)やLinkedIn、JDドットコムなど、当時まだ黎明期にあったテック企業へのベンチャー投資を展開。これにより、上場・未上場の双方に投資する「クロスオーバー投資」のパイオニアとして名を馳せるようになります。コールマン氏はメディアへの露出を避けることで知られ、運用そのものに専念する姿勢を貫いています。近年は、AIやクラウド関連のグロース株への投資を積極的に進めており、2023年〜2024年第1四半期の公開株式ポートフォリオの収益率は80%超と、S&P 500のリターン(約35%)を大きく上回る成果を上げています。同時に、AI関連銘柄に偏重しすぎない分散投資も図っており、2024年の投資家向けレターでは、ポートフォリオのうち約30%は非AIセクターであり、これらのポジションも過去15カ月で約2倍に成長し、ヒット率は80%に達したと報告しています。Tiger Global Managementのポートフォリオ5月15日に米証券取引委員会(SEC)に提出された報告書「フォーム13F」により、タイガー・グローバル・マネジメントの2025年3月末時点でのポートフォリオが明らかになりました。上位10銘柄が全体の約63%を占めており、「マグニフィセント・セブン」で知られる大型テック銘柄が上位に並びます。上位保有銘柄メタ・プラットフォームズ(META) : 16.2%マイクロソフト(MSFT) : 8.81%シー(SE): 7.87%アルファベット(GOOGL) : 5.99%アマゾン・ドット・コム(AMZN): 4.71%テイクツー・インタラクティブ (TTWO): 4.55%エヌビディア(NVDA): 4.47%イーライリリー・アンド・カンパニー(LLY): 4.15%アポロ・グローバル・マネジメント(APO): 3.20%フラッター・エンターテインメント(FLUT): 2.81%生成AI領域への強気姿勢公開株式ポートフォリオは、生成AIサービスの成長に最も直接的な恩恵を受ける4大ハイパースケーラー(メタ、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン)が全体の三分の一以上を占めています。2025年の第一四半期には、多くのヘッジファンドがDeepSeekショックやトランプ関税への警戒から、マグニフィセント・セブン銘柄を売却する中で、タイガー・グローバル・マネジメントはマイクロソフト株を約17%、アマゾン株を2.7%買い増し、メタとアルファベットについては売却せず保有を継続しました。一方で、ショートポジションを活用したリスクヘッジをしており、同四半期はショートポジションが主要リターンドライバーとなっていることが報告されています。また、半導体セクターについては選別が進んでいます。同四半期に、エヌビディア株を13%、台湾セミコンダクターズ(TSM)株を17%、ブロードコム株を23%増やす一方で、クアルコム(QCOM)やアーム・ホールディングス(ARM)の株式は全て売却し、AIインフラを支える中核企業に絞った投資方針が読み取れます。デジタルエンタメ分野への投資も維持また注目すべきは、ポートフォリオ上位にデジタルエンターテインメントやゲーム分野の企業が多く含まれている点です。シー、テイクツー・インタラクティブ、フラッター・エンターテインメントなどは、いずれもZ世代以降の「消費の主戦場はリアルからデジタルへ」という潮流を踏まえた構成で、これらのポジションも維持されました。シーは、東南アジア最大のECプラットフォーム「Shopee」や、世界的なモバイルゲーム開発会社「Garena」、急成長中のデジタル金融サービス「Monee」を傘下に持ちます。同社はシンガポールが拠点のため、トランプ政権による関税強化の影響も比較的軽微と見られています。テイクツー・インタラクティブは、人気ゲーム『グランド・セフト・オート(GTA)』シリーズの開発元で、最新作『GTA VI』は2026年5月26日発売予定。ウォール街では、2027年度の予約額が90億ドルに達するとの予測も出ています。フラッター・エンターテインメントは、米国のスポーツベッティング最大手で、オンライン賭博の拡大に乗じて成長を加速させています。著名投資家のポートフォリオを簡単コピー?ブルーモ証券では、2025年3月末時点でのタイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオをもとに、同様の構成銘柄・投資比率で投資を始められるサービスを提供しています。ウォーレン・バフェット氏など他の著名投資家の最新ポートフォリオも閲覧、カスタマイズ可能。気に入った銘柄構成をベースに、自分好みのポートフォリオを簡単に作成できます。

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タイガー・グローバルとは?投資戦略と2025年最新ポートフォリオを解説

タイガー・グローバルとは?投資戦略と2025年最新ポートフォリオを解説

本記事では、2020年にヘッジファンド収益ランキングで世界首位となり、投資家に100億ドル以上の利益をもたらしたタイガー・グローバル・マネジメント(Tiger Global Management)を紹介します。同社の創業背景や投資戦略、そして2025年3月末時点の最新ポートフォリオを解説します。Tiger global managementとはタイガー・グローバル・マネジメントは2001年に設立され、ニューヨーク市に本社を置く世界有数のヘッジファンドです。テクノロジーセクターへの集中投資で知られつつも、消費財、フィンテックといった幅広いセクターに投資しており、これまでに20以上のファンドを組成し、運用資産残高は700億ドルを超えています。創業者のチェイス・コールマン氏は、1997年から2000年にかけて著名投資家の故ジュリアン・ロバートソン氏(タイガー・マネジメント創業者)の下で投資の基礎を学びました。ロバートソン氏は、ジョージ・ソロス氏と並んで20世紀が生んだヘッジファンドの大御所と称され、築き上げた純資産総額は40億ドルを超えます。同氏の掲げた「最も長期成長を望める企業の株式を購入し、経営が悪い企業を空売りする」という運用手法は、現在のタイガー・グローバル・マネジメントの投資の核となっています。2000年にロバートソン氏がタイガー・マネジメントを閉鎖した際、コールマン氏は2,500万ドル以上の運用資金を託され、2001年にヘッジファンド「タイガー・テクノロジー」を設立(後に現社名へ改称)しました。2003年にはプライベート・エクイティ(未上場企業)投資に進出し、Facebook(現メタ・プラットフォームズ)やLinkedIn、JDドットコムなど、当時まだ黎明期にあったテック企業へのベンチャー投資を展開。これにより、上場・未上場の双方に投資する「クロスオーバー投資」のパイオニアとして名を馳せるようになります。コールマン氏はメディアへの露出を避けることで知られ、運用そのものに専念する姿勢を貫いています。近年は、AIやクラウド関連のグロース株への投資を積極的に進めており、2023年〜2024年第1四半期の公開株式ポートフォリオの収益率は80%超と、S&P 500のリターン(約35%)を大きく上回る成果を上げています。同時に、AI関連銘柄に偏重しすぎない分散投資も図っており、2024年の投資家向けレターでは、ポートフォリオのうち約30%は非AIセクターであり、これらのポジションも過去15カ月で約2倍に成長し、ヒット率は80%に達したと報告しています。Tiger Global Managementのポートフォリオ5月15日に米証券取引委員会(SEC)に提出された報告書「フォーム13F」により、タイガー・グローバル・マネジメントの2025年3月末時点でのポートフォリオが明らかになりました。上位10銘柄が全体の約63%を占めており、「マグニフィセント・セブン」で知られる大型テック銘柄が上位に並びます。上位保有銘柄メタ・プラットフォームズ(META) : 16.2%マイクロソフト(MSFT) : 8.81%シー(SE): 7.87%アルファベット(GOOGL) : 5.99%アマゾン・ドット・コム(AMZN): 4.71%テイクツー・インタラクティブ (TTWO): 4.55%エヌビディア(NVDA): 4.47%イーライリリー・アンド・カンパニー(LLY): 4.15%アポロ・グローバル・マネジメント(APO): 3.20%フラッター・エンターテインメント(FLUT): 2.81%生成AI領域への強気姿勢公開株式ポートフォリオは、生成AIサービスの成長に最も直接的な恩恵を受ける4大ハイパースケーラー(メタ、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン)が全体の三分の一以上を占めています。2025年の第一四半期には、多くのヘッジファンドがDeepSeekショックやトランプ関税への警戒から、マグニフィセント・セブン銘柄を売却する中で、タイガー・グローバル・マネジメントはマイクロソフト株を約17%、アマゾン株を2.7%買い増し、メタとアルファベットについては売却せず保有を継続しました。一方で、ショートポジションを活用したリスクヘッジをしており、同四半期はショートポジションが主要リターンドライバーとなっていることが報告されています。また、半導体セクターについては選別が進んでいます。同四半期に、エヌビディア株を13%、台湾セミコンダクターズ(TSM)株を17%、ブロードコム株を23%増やす一方で、クアルコム(QCOM)やアーム・ホールディングス(ARM)の株式は全て売却し、AIインフラを支える中核企業に絞った投資方針が読み取れます。デジタルエンタメ分野への投資も維持また注目すべきは、ポートフォリオ上位にデジタルエンターテインメントやゲーム分野の企業が多く含まれている点です。シー、テイクツー・インタラクティブ、フラッター・エンターテインメントなどは、いずれもZ世代以降の「消費の主戦場はリアルからデジタルへ」という潮流を踏まえた構成で、これらのポジションも維持されました。シーは、東南アジア最大のECプラットフォーム「Shopee」や、世界的なモバイルゲーム開発会社「Garena」、急成長中のデジタル金融サービス「Monee」を傘下に持ちます。同社はシンガポールが拠点のため、トランプ政権による関税強化の影響も比較的軽微と見られています。テイクツー・インタラクティブは、人気ゲーム『グランド・セフト・オート(GTA)』シリーズの開発元で、最新作『GTA VI』は2026年5月26日発売予定。ウォール街では、2027年度の予約額が90億ドルに達するとの予測も出ています。フラッター・エンターテインメントは、米国のスポーツベッティング最大手で、オンライン賭博の拡大に乗じて成長を加速させています。著名投資家のポートフォリオを簡単コピー?ブルーモ証券では、2025年3月末時点でのタイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオをもとに、同様の構成銘柄・投資比率で投資を始められるサービスを提供しています。ウォーレン・バフェット氏など他の著名投資家の最新ポートフォリオも閲覧、カスタマイズ可能。気に入った銘柄構成をベースに、自分好みのポートフォリオを簡単に作成できます。

なぜ日銀は国債買い入れ減額を緩和?財務省も異例の長期債発行見直しへ

なぜ日銀は国債買い入れ減額を緩和?財務省も異例の長期債発行見直しへ

6月17日、日本銀行(日銀)は政策金利を0.5%程度に据え置くとともに、国債買い入れ額の削減ペースを2026年4月以降に緩和する計画を発表しました。2026年3月までは引き続き国債の月間購入額を四半期ごとに4000億円ずつ削減し、2026年4月から2027年3月までは四半期ごとに2000億円ずつ削減。2027年第1四半期の月間購入額を約2.1兆円にする方針です。本記事では、新たな減額計画の背景や市場の反応を整理しつつ、今後の国債需給における注目点を解説します。なぜ日銀は減額ペースを緩和したのか現在、日本の超長期国債の利回りは発行開始以来の最高水準に達しており、日銀の国債買入れ方針は市場の注目を集めていました。日銀は2024年末時点で国債残高の約半分を保有しており、国債市場における最大の保有者です。今回の措置について、日銀は「国債市場の機能改善と安定の両立」を狙いとしています。植田総裁は記者会見にて「長期金利は金融市場で形成されることが基本」とした上で、国債買い入れの減額は金利形成の自由度を高めるものの、ペースを急ぎすぎるとボラティリティの急拡大を招き、経済に悪影響を与える可能性があると指摘しました。減額ペースの緩和は、こうしたリスクを回避し、市場の安定性への配慮に基づいたものと説明しています。市場では、発表内容は概ね事前の予想通りと受け止められ、目立ったサプライズはありませんでした。ただし、一部市場関係者からは「金融政策の正常化が一歩後退した」との指摘もあり、今回の対応が超長期ゾーンを中心とする国債需給悪化への対症療法的な措置であるとの見方もあります。また、米国の財政悪化懸念やトランプ政権の通商政策に対する不透明感を背景に、世界的に長期金利が上昇する中、日本の長期金利急騰によるグローバル金融市場の混乱を回避したいという意図も透けて見えます。財務省も異例の対応──超長期債発行を年度途中で見直し一方、超長期債の需給悪化を受けて、財務省も動きを見せています。6月20日に開かれた国債市場特別参加者(プライマリーディーラー、PD)会合では、2025年度の国債発行計画の変更案が提示され、20〜40年の超長期債の年間発行額を計3.2兆円減額する方針が明らかになりました。事前報道の予想を約9000億円上回る規模となり、20年債の減額幅は倍に拡大されました。補正予算によらず、年度途中で発行計画が見直されるのは極めて異例であり、超長期債市場の需給悪化に対する危機感の強さがうかがえます。今後の注目点とリスク要因今後、超長期債の流動性の回復とボラティリティの抑制が進むかは、7月以降の長期債・超長期債入札において投資家の堅調な需要が確保できるかにかかっています。また、金融政策を巡るリスクとして、トランプ政権との貿易交渉も引き続き注視が必要です。関税引き上げは日本企業の業績や賃金動向に影響を与える可能性があり、日銀の利上げタイミングにも関わってくるでしょう。先週行われた、石破首相とトランプ大統領の会談では貿易協議に進展は見られず、米国が設定した相互関税の猶予期限(7月9日)が迫る中、政権関係者から合意時期は「秋以降になる可能性が高い」との見方も出ています。こうした不確実性が払拭されない限り、日銀としても積極的な金融正常化には踏み切りづらい状況が続くと見られます。今後の注目イベント6月24日:20年債入札7月1日:10年債入札7月3日:30年債入札7月9日: 相互関税の猶予期限

キャリートレードとは?日本の金利上昇がもたらす円キャリートレード解消リスク

キャリートレードとは?日本の金利上昇がもたらす円キャリートレード解消リスク

本記事では、「キャリートレード」の基本的な仕組みを解説した上で、円キャリートレードの巻き戻しリスクと、日本の長期金利上昇が円キャリートレードに与える影響について掘り下げていきます。キャリートレードとは「キャリートレード」とは、金利の低い通貨で資金を調達し、高利回りの資産に投資することで、その利回り差から利益を得る投資手法です。例えば、円を借りて米国のハイテク株や新興国通貨建て債券といった相対的にリスクの高い資産に投資し、最終的に外貨を円に戻して元本を返済するという流れが挙げられます。為替レートが安定していれば、調達金利と投資先利回りの差による利益が期待できますが、為替変動や金融政策の転換によって損失を被るリスクもあります。なお、金融用語で「キャリー」とは、保有資産から継続的に得られる金利や収益のことを指します。なぜ「円」がキャリートレードの調達通貨として選ばれるのか円キャリートレードが本格的に広がったのは、1999年に日本でゼロ金利政策が導入されたことが契機でした。デフレと低成長が続いた日本では、日本銀行(日銀)がマイナス金利政策やイールドカーブ・コントロール(YCC)など、長期にわたり緩和的な金融政策を継続してきました。特に、2013年の量的・質的金融緩和以降は、米国の利上げ局面と円安の進行が重なり、円キャリートレードは活発化。円は「低コストで借りやすい通貨」として、国際金融市場での地位を確立しました。また、為替のボラティリティが比較的低いことも調達通貨としての魅力を高めています。2022~2023年にかけては、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を5%超に引き上げる一方、日銀はゼロ金利を維持。結果として金利差が拡大し、キャリートレードは一段と活性化しました。2025年6月時点、日銀の短期金利は0.5%にとどまっており、円キャリートレードの環境は依然として存在しています。円キャリートレードの巻き戻しとは「巻き戻し」とは、キャリートレードによって積み上げられたポジションが、何らかの要因で一斉に解消される動きを指します。これは、金融政策の転換や市場のボラティリティ上昇などをきっかけに発生しやすく、投資家はリスク資産の売却と同時に、調達通貨である円の買い戻しに動きます。レバレッジをかけた取引が多いため、巻き戻しは急激に進行し、株式・債券市場を含む幅広い資産価格の下落を引き起こすことがあります。2024年以降、日銀はマイナス金利とYCCを終了し、政策正常化に舵を切りました。利上げは一時停止中とはいえ、日本国債の利回り上昇観測は資金調達コストの上昇を意味するため、円を借りてリスク資産に投資するメリットが低下しつつあります。昨年8月に円キャリートレードの巻き戻しが進み、急激な円高が発生したことも記憶に新しいところです。日本の長期金利上昇がキャリートレードに与える影響現在、日本の長期金利は過去最高水準付近で推移しており、キャリートレード解消への警戒感が市場で高まっています。この状況に対し、ソシエテ・ジェネラルのアルバート・エドワーズ氏は最近の顧客向けレポートで、日本国債の利回り急上昇により、米国の株式・国債市場の支えとなってきた日本の資金が急激に流出する可能性を指摘。これにより、米国のハイテク株など、円キャリートレードの恩恵を受けてきた資産が下落するリスクがあるとしています。一方、円キャリートレードの巻き戻しが昨年8月のように急激に進むとの見方には慎重論もあります。資産運用会社アムンディのガイ・ステア氏は、「大きなキャリーポジションは通常、為替トレンドが強いとき、または為替ボラティリティが非常に低いとき、そして短期金利差が大きいときに積み上がる」と述べ、短期金利差が縮小している現在、昨年よりも円の空売りポジションが減少していると指摘しています。アムンディのデータによると、2024年第2四半期には米日2年国債の利回り差は4.5%だったのが、直近では3.2%まで縮小し、キャリートレードの収益性を低下させています。日本の金融政策が大きな転換点を迎える中、円キャリートレードを取り巻く環境も徐々に変化しつつあります。特に、円金利の上昇は国際的な資金フローや米国市場のリスク資産価格にも影響を及ぼす可能性がある点で、投資家にとって重要な視点となります。

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中東情勢の安定化とFRB利下げ見通しで株価は最高値へ|米国市場サマリー

中東情勢の安定化とFRB利下げ見通しで株価は最高値へ|米国市場サマリー

先週は、イスラエルとイランの停戦報道による地政学リスクの後退や、FRBによる早期利下げ期待の高まりを背景に、全体として堅調な展開となりました。原油価格が急落したことでインフレ懸念が和らぎ、市場心理が改善。また、パウエルFRB議長が議会証言で慎重な姿勢を示したことで利下げ観測が一段と強まり、株式市場への資金流入を後押ししました。特にTeslaやBroadcom、Nikeなどが好材料で大きく上昇したほか、FRBが銀行のレバレッジ規制緩和を示唆したことで金融株も買われました。米中間でレアアース供給に関する合意が成立したことも投資家心理を支援し、週末にはNASDAQとS&P500が過去最高値を更新。NASDAQは4月の安値から20%超の回復を見せ、「強気相場」入りを明確にしました。結果として、主要指数は週間を通じて強い上昇基調を維持しました。為替は、中東情勢の緊張再燃で週初に146円台へ上昇しましたが、その後は地政学リスクの後退と米利下げ期待が強まったことで円高方向へ戻し、週末は144円台半ばで終了。週間では上下に振れる展開でした。米国株式市場:中東情勢の沈静化と米中協議進展でリスクオン、株価は最高値へ6月23日(月) 原油先物が一時+6%高から-7%安へ急反落し、インフレ懸念が後退したことで買いが優勢となり、ダウは+0.9%(+375ドル)、S&P500は+1.0%、NASDAQは+0.9%で反発しました。FRBボウマン副議長が「7月会合での利下げも排除せず」と発言し、金利先安観が強まったことも追い風でした。個別では Tesla がロボタクシー実証開始を受けて8%超急伸し指数をけん引、エネルギー株は原油安で軟調でした。6月24日(火) イスラエル‐イラン停戦報道で地政学リスクが緩和し、原油続落とともに金利低下期待が高まり、ダウ+1.19%、S&P500+1.11%、NASDAQ+1.43%と続伸しました。Broadcom がHSBCによる格上げで過去最高値を更新し、半導体株が全面高。FRBパウエル議長の議会証言は「当面様子見」の姿勢にとどまり、利下げ観測を裏付ける形となりました。引け後には FedEx が決算を発表し、時間外で売られました。6月25日(水) パウエル議長2日目証言を控え様子見が強まり、ダウ-0.25%、S&P500横ばい、NASDAQ+0.31%とまちまち。Tesla は欧州販売不振報道で下落し、FedEx と General Mills も弱い業績見通しで売られました。一方、引け後の決算で Micron Technology が予想を上回るガイダンスを示し、時間外で急伸。中東情勢が小康状態を保つなか、指数は高値圏で足踏みしました。6月26日(木) 好調な米耐久財受注・新規失業保険申請の減少を背景に景気懸念が後退し、ダウ+0.9%(+404ドル)、S&P500+0.8%、NASDAQ+1.0%へ上昇。FRBが大手銀行のレバレッジ規制(eSLR)緩和案を公表し、JPMorgan Chase や Goldman Sachs など金融株が全面高となりました。また、銅高を受け Freeport-McMoRan や Southern Copper が買われ、景気敏感株に資金が循環しました。6月27日(金) 米中レアアース供給加速の合意と利下げ期待を背景に、S&P500とNASDAQが終値ベースで史上最高値を更新し、それぞれ+0.52%、NASDAQも+0.52%、ダウは+1.00%で締めくくりました。好決算と関税対策を示した Nike が15%急伸し、消費関連を押し上げた一方、中国向け売り上げ懸念で MP Materials などレアアース関連が下落。トリプルウィッチング(株価指数・個別株先物・オプション同時清算)による出来高急増も相場を活性化させました。主要3指数はいずれも週間で上昇し、NASDAQは年初来高値を更新しました。為替市場:中東情勢安定化からドル高になるも、FRBの利下げ観測が出て円高に戻す為替は中東情勢と米金融政策の見通しを背景に上下に揺れ動きました。週明けの23日は、中東の軍事緊張が高まる中で安全通貨としてのドル需要が強まり、ドル/円は145円台後半から146円台へと急伸。原油価格の上昇により対円で約2.4%の急落となりました。24日以降はリスク環境がやや落ち着きを見せ、米連邦公開市場委員会(FOMC)への思惑からドルが若干軟化。テクニカル的には145円~146円のレンジ内で推移しました。米中の地政学リスク後退とも呼応し、27日には一時144.38円まで下押しされ、週末には144.6円で取引を終えました。全体として、週前半の地政学ショックによるドル高が中心となる一方、週後半にはやや落ち着いた動きに。これは、地政学リスクだけでなく米金利政策への思惑が両通貨の行方を左右したことを示しています。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

中東情勢が株価の重しに。FOMCと日銀会合の結果、金利差が意識され円安に|米国市場サマリー

中東情勢が株価の重しに。FOMCと日銀会合の結果、金利差が意識され円安に|米国市場サマリー

先週は、イスラエル‐イラン紛争を巡るヘッドラインとFOMC後のタカ派スタンスが交錯し、方向感に欠ける一週間となりました。週明けは原油急落を追い風にハイテク株が買われ、NASDAQが+1.5%でスタートしましたが、翌日は戦線拡大懸念と弱い小売売上高で主要3指数がそろって約0.8%下落しました。FOMCは利上げを見送りつつ「関税で夏場にインフレが上振れし得る」と警戒を示し、株価の戻りを抑えました。週末金曜日はトリプルウィッチングでは出来高が跳ね上がったものの、ダウ+0.1%、S&P500-0.2%、NASDAQ-0.5%で動かず。結果、週間ではダウ横ばい、S&P500-0.2%、NASDAQ+0.2%と強弱が分かれ、原油・金利・地政学要因が投資家心理を揺さぶる展開でした。為替は、144円台後半で始まり、中東リスクで一時円買いとなったものの、FOMC据え置きや日米金利差拡大観測からドル買いが優勢となり、20日終値は146.10円でした。米2年債利回り上昇がドルを支え、Juneteenthの薄商いとトリプルウィッチングのフローも絡んで上値を試す展開となり、週間では約1.4円のドル高・円安となりました。金融政策の方向性乖離を背景に、円が安全資産として買われにくい構図が鮮明でした。米国株式市場:イスラエル・イラン紛争が株価の重しに、FOMCは金利を据え置き6月16日(月) 米国株式市場は反発し、ダウ工業株30種平均が317ドル高(+0.75%)、S&P500が+0.94%、NASDAQが+1.52%と主要3指数そろって上昇しました。イスラエルとイランの空爆による原油供給懸念が後退し、原油価格が下落したことが買い安心感を誘いました。セクターでは情報技術とコミュニケーションがけん引し、Advanced Micro Devicesが8.8%高、U.S. Steelが日本製鐵の買収承認を受けて5.1%高。一方、Sarepta Therapeuticsは遺伝子治療の2例目の死亡報告で42%急落しました。6月17日(火) 中東情勢の悪化が再び市場心理を冷やし、ダウは299ドル安(-0.70%)、S&P500は-0.84%、NASDAQは-0.91%で終了。原油高を背景にエネルギー株は上昇したものの、太陽光関連銘柄が米上院による税控除段階的廃止案で急落(Enphase Energy-24%、Sunrun-40%)。テクノロジー大手も軟調でTeslaが4%下落しました。米5月小売売上高が予想外の減少となり景気懸念も加わりました。6月18日(水) FOMCは政策金利を据え置きましたが、パウエル議長が「関税の影響で今夏はインフレが上振れし得る」と発言し、序盤の上げを相殺。ダウは-0.10%、S&P500はほぼ横ばい(-0.03%)、NASDAQは+0.13%と小動きで終えました。業種別ではITが堅調で、Stablecoin企業 Circle Internet が米上院の規制法案可決を受け33.8%高、Nucorは好調な利益見通しで3.3%高。エネルギー株は原油反落を受け軟調でした6月19日(木) Juneteenth National Independence Dayの祝日で市場休場6月20日(金) 週末を控え投資家がイスラエル‐イラン紛争の拡大リスクを警戒するなか、ダウは35ドル高(+0.08%)と小幅高となった一方、S&P500は-0.22%、NASDAQは-0.51%で3日続落。四半期末の「トリプルウィッチング」に伴う出来高急増も相場を不安定にしました。個別では、好決算と通期売上高見通し引き上げで Kroger が9.8%急伸、Accenture は新規受注減少を嫌気して6.9%下落。半導体・メガキャップ株は軟調で NVIDIA などが指数の重しとなりました。為替市場:日米金利の乖離が意識され、安全資産としての円逃避も進まず円安へ為替は米長期金利動向と中東情勢をにらみつつ、週を通じて円安基調が続きました。16日はイスラエル―イラン衝突への警戒感から一時円買いが入ったものの、米金利の底堅さが下支えし、終値は144.74円でした。17日は日本銀行が政策金利と国債買い入れ計画を据え置いたことが「慎重姿勢」と受け止められ、ドル買いが優勢となり145.28円で引けました。18日はFOMCが金利を据え置き、パウエル議長がインフレ上振れリスクに言及した一方、弱い米小売売上高が重しとなり、145円近辺でもみ合い、終値は145.12円でした。19日は米国のJuneteenth祝日で薄商いの中、中東リスクとタカ派的なFRB見通しを背景にドル高が続き、145.46円へ小幅続伸しました。20日は地政学リスクへの警戒による安全資産としてのドル需要と四半期末のポジション調整が重なり、日中高値146.23円を付けた後、終値は146.10円となりました。ドルは対円で3週間ぶりの高値を更新し、週間では約1.36円(+0.9%)のドル高・円安です。日銀とFRBの政策スタンスの乖離が改めて意識され、地政学リスク下でも円が「安全資産」として買われにくい構図が浮き彫りになった一週間でした。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

米中協議とインフレ沈静化で株価は上昇基調に乗るも、中東情勢緊迫化でリスクオフへ|米国市場サマリー

米中協議とインフレ沈静化で株価は上昇基調に乗るも、中東情勢緊迫化でリスクオフへ|米国市場サマリー

先週は、前半の「米中協議期待」と後半の「中東リスク」で明暗が分かれました。9~10日はロンドンでの米中通商協議への期待から Amazon.com や Alphabet が買われ、S&P500 と NASDAQ が高値圏へ。11日は CPI 減速でもイスラエル・イラン情勢の緊迫化でハイテク中心に反落。12日は Oracle の強気見通しが AI 楽観を再燃させ、Microsoft や NVIDIA が上昇し主要指数も持ち直し。しかし13日、イスラエルがイラン核施設を攻撃したとのニュースで原油高・防衛株高となる一方、ハイテクと航空が売られ、ダウ平均は769ドル安と急落し週間では主要3指数ともマイナスで終了しました。為替は、144円台前半でスタートし、米長期金利の反発で10〜11日に145.41円まで上昇。12日の米5月CPIが予想を下回ると144.20円へ反落し、週末は144.06円で終了。週間レンジは約1.3円と小幅で、米金利動向とインフレ指標が主導し、日銀会合前で国内材料は限定的でした。米国株式市場:米中協議進展とCPI下振れで上昇基調ができるも、中東情勢でリスクオフへ6月9日(月) 米国株式市場は反発し、S&P500とNASDAQがそろって上昇しました。米中がロンドンで開始した第2回閣僚級通商協議への期待が追い風となり、Amazon.comとAlphabetが1%超上昇した一方、Appleは年次開発者会議の材料不足で1.2%下落しました。公益・金融セクターは軟調で、Warner Bros. DiscoveryやMcDonald’sが下げ、Robinhood MarketsもS&P500採用見送りで売られました。6月10日(火) 米中協議の進展期待が続き、市場は続伸。ダウ平均は105ドル高となり、S&P500は史上高値付近で推移しました。Teslaが5.6%急伸して相場を牽引し、AlphabetもGoogle Cloudの採用報道で1.4%高。対照的にMicrosoftは小幅安でした。Insmedが治験好結果で約29%急騰した一方、J.M. Smuckerは通期見通しの下方修正で15%超急落。エネルギーがセクター首位となり、投資家は翌日のCPI発表を注視しました。6月11日(水) 中東情勢の緊迫化を背景に、S&P500とNASDAQが下落し、ダウ平均は横ばいで終了しました。5月CPIは市場予想を下回ったものの、イスラエルとイランを巡る地政学リスクがリスクオフを誘発。Amazon.comとNVIDIAが下げ、GameStopは決算失望で5%超下落しました。Teslaは前週の急落からわずかに反発しましたが、一般消費財と素材セクターが売られ、市場の重しとなりました。6月12日(木) OracleがAI関連需要を背景に通期売上高見通しを引き上げ、株価が13%超急騰。これを受けてAI関連楽観が広がり、Microsoft、NVIDIA、Broadcomも1%超上昇しました。中東リスクやBoeingの5%安(インドでの墜落事故報道)を吸収して主要指数は上昇。PPI低下と失業保険申請増により利下げ期待が強まり、金鉱株も買われました。6月13日(金) イスラエルがイランの核関連施設を攻撃し、報復の応酬懸念が高まったことで投資家心理が急速に悪化。ダウ平均は769ドル安、S&P500とNASDAQも大幅安となりました。原油が約7%急騰し、Exxon Mobilなどエネルギー株、Lockheed Martinなど防衛株が上昇する一方、燃料コスト増懸念から航空株は4%前後下落。AdobeがAI導入ペース懸念で5%安、NVIDIAとAppleも下落しましたが、Oracleは好業績見通しで7%高と逆行高でした。為替市場:関税交渉と雇用統計で相場は揺れるも、ドル買いが優勢2025年6月9日〜13日のドル円は、米金利見通しと米インフレ指標をにらみつつ 144円台中心に小幅上下しました。9日(月)は前週末と同水準の144.69円で寄り付き、材料乏しく144円台前半で小動き。10日(火)は米長期金利が持ち直したためロンドンで145円を超え、NY高値は145.29円。11日(水)も米株堅調を背景に買いが続き、週内の最高値145.41円を記録しました。12日(木)発表の米5月CPIは伸びが市場予想を下回り、利下げ観測が再燃してドル売りが優勢となり、144.20円へ反落して引け。13日(金)は翌週の日銀会合を控えポジション調整が中心で、米生産者物価指数(PPI)がわずかに上振れしたものの動意は限定的、週末終値は144円でした。週間レンジは約1.3円(144.20〜145.41円)と比較的狭く、上方向は米金利反発、下方向はCPI下振れという米指標主導の値動きにとどまりました。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

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【ナイキ決算(2025年4Q)】在庫改善と中国回復が業績底打ちへの試金石に(NIKE)

【ナイキ決算(2025年4Q)】在庫改善と中国回復が業績底打ちへの試金石に(NIKE)

本記事では、ナイキ(NKE)の2025年3月発表2025年度第3四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第4四半期決算の見どころを解説します。株価は年初来20%程度の下落で低迷するなか、今回の決算では「減収幅の着地」「在庫圧縮とコスト削減の進捗」「中国・デジタル販売の回復度合い」が最大の焦点となります。前回決算(2025年第3四半期)の概要ナイキの前回の決算(2025年3月発表)では、売上高は前年同期比で約9%減少し113億ドルとなりました。為替の影響を除いた場合でも7%の減収と苦しい内容でしたが、一方で市場予想を上回る1株あたり利益(EPS)0.54ドルを達成しました。これは市場の予測である0.28ドルを大きく上回る内容だったため、収益面での改善期待から一時的に株価が支えられました。ただし、粗利益率は値引き販売の影響で前年より悪化し41.5%となり、利益率回復の難しさも同時に示されました。経営陣は決算説明会で「Win Now(今すぐ勝つ)」という経営戦略を推進し始めたことで、今後の収益回復に自信を示したものの、次の四半期(今回の決算)に関しても10%台前半の売上減少を予告するなど、依然として慎重な見通しを示しています。決算後の主な動きとニュースこうした業績低迷を受けて、ナイキは収益改善を目指し、2025年4月に世界全体の従業員の約2%に相当する1,600人以上を削減する人員整理を発表しました。また、ナイキにとって長く課題となっている在庫過剰の問題については、2025年4月以降アウトレット店舗を活用した在庫整理が順調に進み始めているとの見方があり、ようやく改善方向に向かっているという報告もあります。ただし、これらは値引き販売に頼った面も強く、収益性にはまだ不安が残っています。海外市場の中でも特に重要な中国市場は、売上が前年比17%減と依然低調な状態が続いています。また、2025年6月には期待された人気ブランド『スキムズ(Skims)』との女性向け商品の共同ブランドの立ち上げが生産遅延により延期されるなど、製品戦略でもつまずきが見られます。一方で『Vaporfly 4』や『Streakfly 2』など高性能ランニングシューズの新製品が投入され、製品ラインの刷新が一定の評価を得ていることも事実です。今回の決算(2025年第4四半期)の注目ポイント今回の決算で投資家が最も気にするべきポイントは、やはり売上高の減少幅が実際にどの程度に収まるかという点です。経営陣が予告した10%台前半の減収という予測よりも改善が見られれば、市場予想を上回る結果として株価の短期的な反発を促す可能性があります。また、在庫問題の改善がさらに進展しているかどうかも注目されます。在庫が想定より大幅に減少し、粗利益率が改善方向に向かう見通しが示されれば、業績の底打ち感が高まり株価へのプラス材料になるでしょう。逆に、在庫整理が思ったより進まず追加の値引きが発生する場合、利益率改善の遅れとして株価へのマイナス材料となります。さらに、中国を中心とした海外市場での需要回復度合いも大きな焦点です。中国市場での売上回復が遅れれば、ナイキのグローバルな収益改善ストーリーに水を差すことになります。この他にも、オンライン直販(DTC)分野での回復状況や、マーケティング投資とコスト削減のバランスをどう取るかといった戦略的なポイントにも注目が集まります。特に、2024年のパリ五輪に向けたマーケティング投資が費用対効果を発揮しているかどうかは、今後の業績見通しを占う意味でも重要です。株価への影響と投資家の対応ナイキの株価は2025年に入ってから約20%下落し、59ドル前後という低水準で推移しています。これは市場がナイキの業績改善に対し慎重な見方を崩していないことを示しています。今回の決算結果次第で、株価は短期的に大きく上下する可能性があります。売上や在庫整理が市場予想より好転していれば、一時的に株価の反発が見られるでしょう。一方、引き続き中国市場が弱含みであったり、追加の値引きが利益を圧迫したりすれば、さらなる株価下落もあり得ます。個人投資家としては、今回の決算では単なる数値だけでなく、ナイキ経営陣が描く2026年度以降の成長戦略や具体的な改善策に注目することが重要です。特に在庫整理やコスト削減の実行度合いが示されれば、長期的な視点で株価回復の可能性を探る上で良いヒントとなるでしょう。業績低迷期は株価のボラティリティが大きくなりがちです。個人投資家の皆様には、リスク管理として投資の規模やタイミングを慎重に検討し、落ち着いた対応をお勧めします。

【ウォルグリーンブーツアライアンス決算(2025年3Q)】業績底打ちを占う再編加速、買収動向も株価の鍵に(Walgreens Boots Alliance)

【ウォルグリーンブーツアライアンス決算(2025年3Q)】業績底打ちを占う再編加速、買収動向も株価の鍵に(Walgreens Boots Alliance)

本記事では、ウォルグリーンブーツアライアンス(WBA)の2025年4月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。前四半期(2Q)は売上高386億ドルで前年同期比4.1%増と増収を確保した一方、のれん減損などの影響で調整後1株利益(EPS)は0.63ドルへ半減、フリーキャッシュフローも赤字が続きましたその後、配当停止や大量閉店、さらにはシカモア・パートナーズによる買収合意など激震が相次ぎ、株価は低迷したままです。今回決算ではコスト削減の実行度合いとヘルスケア事業の再建が焦点となり、買収成立の行方も絡んでボラティリティの高い値動きが予想されます。前回決算(2025年第2四半期)の振り返り前回(2025年度第2四半期)は、売上高が386億ドルとなり、前年同期比で4.1%増加しました。一方、収益面では依然として課題が残り、調整後の1株あたり利益(EPS)は0.63ドルとなりました。この背景には、薬局部門における処方箋の取扱いが増えた一方で、美容品や季節商品といった小売販売の落ち込み、さらに関連会社VillageMDの事業価値の減損(約58億ドル)などの一時的なコスト増があります。結果として、フリーキャッシュフローも大きく赤字となり、WBAの経営課題が改めて浮き彫りになりました。決算発表後の主な動きとニュースWBAは前回の決算発表前から事業再編策がとられており、市場は期待と不安を交錯させながら現在も株価が推移しています。さらに3月には、大規模な店舗再編が発表されました。2025年中に米国内で新たに500店舗を閉鎖し、累計で1,200店規模を整理するという計画です。また、ヘルスケア事業の再編も急速に進めており、かつて成長を期待されたVillageMDについても一部店舗の整理や持分の売却検討が報じられました。最も大きなニュースは、3月下旬に明らかになったプライベートエクイティのシカモア・パートナーズによる買収提案です。WBAを最大237億ドル(1株あたり11.45ドル)で買収し、株式を非公開化するという基本合意が成立し、同社を巡る経営環境は大きく変化しています。今回決算(2025年第3四半期)の注目ポイント今回の決算で投資家が最も注目すべきポイントは、WBAが収益悪化をどこまで抑えられるかということです。前回好調だった薬局部門の売上高が今回も伸びを維持し、収益改善に貢献できるかが第一のポイントになります。また、WBAは1年間で10億ドル規模のコスト削減を掲げていますが、これが実際にどれほど効果を出しているのか、営業費用の削減が進んでいるのかについて、具体的な数字が求められます。さらに重要なのがキャッシュフローです。VillageMDなどの資産整理に伴う追加の減損費用や、米国のオピオイド問題関連の和解金支払いなどが再びキャッシュフローを圧迫する可能性があります。今回の決算ではこうした特別要因が再び利益を押し下げていないか、注意が必要でしょう。そしてもう一つの大きな焦点が、買収提案に関する動向です。買収に関する進捗状況が示されるか、正式な業績見通し(ガイダンス)が再び提示されるかが、株価の短期的な動きを左右する重要な要素になるでしょう。特に、現在の市場株価とシカモアが提示している買収価格との差が縮まるかどうかにも市場は注目しています。株価への影響と今後の見通しWBAの株価は現在、1月中旬以降から10%以上下落したまま低迷が続いています。配当停止や店舗閉鎖、事業再編による将来不安が重なり、買収期待で一時的に上昇したものの、その後は再び低調な動きを見せています。今回の決算発表前後では、市場参加者は株価が上下10%程度動く可能性を想定しています。コスト削減が具体的に成果を出し、キャッシュフロー改善の兆しが見えれば、短期的な反発(リリーフラリー)が起こる可能性があります。一方、減損損失の再発や買収の不透明感が続けば、株価の下押し圧力が強まる恐れもあります。個人投資家としては、この決算で薬局事業の回復やコスト削減策の進捗を確認するとともに、経営陣の買収プロセスに関する説明にも注目しておく必要があります。まとめと個人投資家としての対応WBAは現在、大胆な再編と買収による非公開化という二つの大きな変化の真っただ中にあります。今回の決算はその方向性や経営再建の成果を確かめる重要な局面です。特に収益回復が明確になれば、株価も底打ち感が出てくる可能性があります。しかし、経営の混乱や追加の減損リスクなど、マイナス面も決して軽視できません。このため、投資家の皆様は、決算発表をきっかけに予想される株価の大きな動きに備え、慎重に変化の方向性を分析しながら対応していくことをお勧めします。

【マイクロン・テクノロジー決算(2025年3Q)】HBM急伸の勢い継続か、巨額投資の影響も焦点に(Micron Technology)

【マイクロン・テクノロジー決算(2025年3Q)】HBM急伸の勢い継続か、巨額投資の影響も焦点に(Micron Technology)

本記事では、マイクロン・テクノロジー(MU)の2025年3月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。前四半期はAI向け高帯域幅メモリ(HBM)の急伸で大幅増益を達成し、会社側ガイダンスでも“過去最高売上”が示唆されています。一方で競合サムスンの追い上げや大型投資によるキャッシュフロー懸念もあり、株価は年初来50%超上昇後に神経質な値動きが続いています。前回(2025年第2四半期)決算のポイント前回決算(2Q)は売上高80.5億ドル(前年同期比38%増)と、業績が大幅に改善しました。利益面でも、非GAAPベースの1株利益(EPS)が1.56ドルと前年同期から約3.7倍となり、業績回復が鮮明となりました。特に、売上増加の背景には生成AI向け高帯域幅メモリ(HBM)需要の急速な拡大があります。データセンター向けDRAMの売上は四半期として過去最高を記録し、HBM関連だけで10億ドルを突破しました。こうした強い成長を背景に、会社側は2025年3Qについても「売上高88億ドル±2億ドル、EPSは1.57ドル±0.10ドル」と強気な見通しを示しました。一方、利益率の改善も注目すべき点で、純利益率は前年同期の14%から20%へと回復しました。これにより営業キャッシュフローも前年同期比で約3倍に増加するなど、好調さが目立つ決算でした。決算後の主な動きとニュース前回決算以降もマイクロンの事業環境には重要な動きがありました。その一つが、次世代HBM3Eメモリの量産を開始したことです。特にNVIDIA向けに供給を始めたことで、株価も一時的に上昇しました。さらに6月には、マイクロンが米国国内での設備投資計画を当初の想定から2000億ドル規模へと大幅に拡大することを発表しました。米国内のDRAM生産比率を40%まで引き上げることを目指し、競争力を長期的に高める狙いがあります。ただ、これほどの巨額な投資は財務上の負担が大きく、将来的なフリーキャッシュフロー(FCF)の圧迫が懸念されています。競合の動きも重要です。5月には韓国サムスン電子がHBM3Eの量産を開始し、主要顧客向け供給準備を整えていると報道されました。これにより競争激化や価格低下圧力が意識され、マイクロンの株価にもネガティブな影響がありました。また、Bloomberg Intelligenceは2033年までにHBM市場規模が今後大きく成長すると予測しており、長期的にはマイクロンにとって追い風となる材料です。アナリストは2025年通期のEPS予想を6.21ドルと前年の10倍近くになると見込んでおり、業績への期待は依然として非常に高い状態が続いています。今回決算で特に注目すべき点は?今回の2025年第3四半期決算ではいくつかのポイントに注目が集まっています。まず、市場の予測値と実績がどうなるかです。アナリストの売上予想は会社のガイダンスをやや下回る水準(84~86億ドル、EPS1.4~1.6ドル)にあり、市場の予想を上回る好決算(ビート&レイズ)であれば、株価にさらなる上昇の可能性があります。また、引き続きHBM関連の売上拡大のペースが焦点となります。前回四半期で急伸したHBMが今後どの程度まで成長を続けられるか、具体的な売上数字や経営陣のコメントが重要になります。特に会社はHBM売上について「年間ベースで数十億ドル規模」と見込んでいるため、この進捗が注目されます。次に、大型投資計画の影響です。米国への2,000億ドルの巨額設備投資は中長期的には市場競争力を高めますが、一方で短期的には財務面への負担増が懸念されます。今回決算では、投資に伴うキャッシュフローの見通しや財務戦略について、明確な説明が求められています。さらに、競合との価格競争状況や中国市場をめぐる地政学リスクも無視できません。特に、サムスンやSK HynixとのHBMのシェア争いが価格プレミアム維持に悪影響を及ぼす可能性があります。また米中関係の緊張がマイクロンのサプライチェーンに与える影響も市場の懸念材料として引き続き注意が必要です。株価への影響と個人投資家の対応ポイントマイクロン株は今年に入ってから既に約40%以上上昇し、6月中旬時点でPER約28倍まで買われています。これはAI関連銘柄としての注目が高まっているためですが、逆に言えば業績予想を少しでも下回ると大きく売られやすい水準でもあります。現在の市場環境では、決算発表当日のオプション市場が±7~10%程度の株価変動を想定していることから、結果次第で株価が大きく動く可能性が高いと見ておいた方が良いでしょう。今回の決算において個人投資家が特に注意すべきポイントは、HBM関連の売上高や利益率の推移、設備投資に伴う財務状況、そして次四半期の会社側ガイダンスの内容です。特にカンファレンスコールでの経営陣のコメントは、投資計画の資金調達方法や競争戦略について重要なヒントを与えてくれるでしょう。以上を踏まえ、短期的な株価変動を覚悟しつつ、中長期的な視点でマイクロンの成長ストーリーを冷静に分析していくことをお勧めします。

経済コラム

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【米国株見通し】S&P500相次ぐ年末目標上方修正、強気相場継続なるか

【米国株見通し】S&P500相次ぐ年末目標上方修正、強気相場継続なるか

2025年第2四半期、S&P500は2023年以来、ナスダック総合指数は2020年以来の大幅上昇となり、米国株は過去最高値で四半期を終えました。 本記事では、市場関係者による2025年後半の米国株見通しを紹介します。S&P500、相次ぐ年末目標の上方修正足元では、米国株の好調を受けて、ウォール街でS&P500の年末目標の引き上げが相次いでいます。主要金融機関・調査会社による2025年末のS&P 500の目標値ファンドストラット: 6600モルガン・スタンレー:6500ヤルデニ・リサーチ:6500ドイツ銀行:6550シティ:6300UBS:6200ゴールドマン・サックス:6100バークレイズ:6050JPモルガン:6000ファンドストラット:年末6600予想ファンドストラット・グローバルアドバイザーズのトム・リー氏は、AI関連企業を中心に企業業績が堅調で、関税問題の影響も予想より小さく、インフレ圧力も抑えられていることから、S&P500指数の年末目標を6600に設定しています。同氏は、関税懸念に敏感に反応していた市場が、現在むしろ企業業績や経済指標、そしてAI関連の投資動向に注目しており、楽観的なムードが広がりつつあると指摘。また、ISM製造業指数が50を下回る「景気後退圏」で推移していることから、まだ景気の谷にある可能性が示されており、指数が50を超えれば新たな強気相場への転換するとの見通しを示しました。懸念点としては、ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法案(税制改正草案)が米国債務の持続可能性に与える影響があるものの、ここ数週間の市場の反応を見ると、投資家は「単なる予算の問題」として捉えていないようだと述べています。モルガン・スタンレー:年末6500予想モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、年内2回の利下げが実施される可能性があることから、S&P500指数の年末目標を6500と予想しています。同氏は、4月に市場が一時的に下落したものの、すでに底を打ち、現在の反発局面はより持続的な上昇トレンドの始まりであると見ています。関税問題についても、市場はトランプ前大統領の姿勢が今後軟化する可能性を織り込み始めており、過度な懸念は不要だと指摘。企業業績も予想以上に底堅く、収益の上方修正が相次いでいることが強気の背景にあります。また、中東の地政学リスクや原油価格の動向が落ち着きを見せていることから、経済全体としての不透明感は後退しつつあると判断しています。ヤルデニ・リサーチ:年末6500予想ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏は、S&P500指数の年末目標を6500に設定し、「現在は明確なブルマーケットであり、1960年代半ば以降の最も優れた強気相場のリターンに匹敵する可能性がある」と述べています。同氏は、地政学リスクや関税圧力等の逆風にもかかわらず、関税不安の緩和やAI関連企業への投資増加、今後の利下げ見通しなどを根拠にリバウンドを強調。S&P 500は2030年までに10000まで上昇しうると楽観的なシナリオを示しています。一方で、現状は「マイルドなバブル(melt‑up)」に近い状態であり、実際にバブルへと発展する可能性をリスクとして提示。特に市場心理が過熱しすぎるタイミングには「急落リスク」も視野に入れるべきだと警鐘を鳴らしています 。ドイツ銀行:年末6550予想6月2日、ドイツ銀行は関税の影響緩和や好調な経済見通しを理由に、S&P500指数の年末目標を6150から6550に引き上げました。過去2年間の株高をけん引した多額の資金流入と強力な自社株買いが2025年も続き、S&P500構成銘柄の1株利益は282ドルと見通しました。シティ:年末6300予想シティグループは、これまでの予想を上回るAI関連銘柄の強さや企業の業績改善、インフレの落ち着きなどを背景に、S&P500指数の年末目標値を5800から6300に引き上げました。同社は「金利がピークを打ち、関税に対する過度な懸念も後退している」と分析しており、テックセクターを中心とした投資家のリスク選好が継続していることから、中期的には6500も視野に入ると述べています。UBS: 年末6200予想6月26日、UBSグローバル・ウェルス・マネジメントは、貿易摩擦の緩和や底堅い四半期の企業利益見通しを踏まえ、2025年末のS&P500指数の目標を従来の6000から6200に引き上げました。また、「経済が関税の一時的な影響に適応すれば、2025年後半には成長とインフレが改善し始めるだろう」という見通しを示し、2026年の年末目標についても6400から6500に上方修正しました。ゴールドマン・サックス:年末6100予想ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・コスティン氏は、関税率の低下、経済成長の改善、景気後退リスクの減少を織り込み、6ヶ月後(2025年末)の目標株価を5900から6100に引き上げ、12ヶ月後の目標株価を6500としました。同行は、S&P 500企業の1株当たり利益が2025年に前年比7%増の262ドル、2026年には同じく7%増の280ドルになると予想し、これらの予想は「2025年第1四半期の業績が予想を上回り、今後数四半期における米国経済の成長見通しが力強いことを反映している」と述べています。バークレイズ:年末6050予想6月4日、バークレイズは関税不安の収束や企業業績の回復を材料に、S&P500指数の年末目標を5900から6050に引き上げました。同社は関税について、来年は今年と比較して追加の直接的な影響はないと予想されるが、成長とインフレへの二次的な影響は来年まで及ぶ可能性があると述べました。また、来年末のS&P500種指数の目標を6700ドル、構成銘柄の1株利益285ドルと見通しています。JPモルガン:2025年末までに6000予想6月5日、JPモルガンのストラテジスト、ドゥブラヴコ・ラコスブジャス氏は、S&P500指数の年末目標を5200から6000に引き上げました。同氏は「上昇余地はほとんど残されていない」と述べ、現在の株価水準は多くのポジティブ材料をすでに織り込んでいると指摘。AIブームや関税リスクの後退を認めつつも、今後のリスク管理の重要性を強調しました。また、相場の主導役が、これまでの強気相場をけん引してきた大型テクノロジー企業に再び戻ると予想。最も確信度の高い取引としてモメンタム株、特にハイテク7社「マグニフィセント・セブン」や半導体、その他AI関連の銘柄を挙げています。

米半導体株が急反発、中東AI投資と米中規制緩和が追い風に

米半導体株が急反発、中東AI投資と米中規制緩和が追い風に

4月下旬以降、米国株市場では半導体セクターの主力銘柄が急速に反発し、底値圏からの戻りが鮮明になっています。空売りの買い戻しが相場を押し上げ、米中関税引き下げに加え、中東でのAI投資拡大を追い風に、半導体大手エヌビディア(NVDA)は約40%高の上昇パフォーマンスを記録しました。本記事では、半導体株の見通しを左右する中東のAIインフラ投資や主要半導体企業の決算、そして米中関係を巡る貿易・輸出規制動向を解説します。オイルマネーが半導体需要を下支え米半導体大手、サウジAI企業と相次ぎ提携5月13日、トランプ大統領によるサウジアラビア訪問に合わせて、エヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、クアルコム(QCOM)などが、サウジ政府系ファンド傘下のAIスタートアップ企業「ヒュメイン」との業務提携を発表しました。さらに翌5月14日には、スーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)が、サウジ拠点のデータセンター事業者「DataVolt」 と総額200 億ドルにのぼる提携を発表し、同社の株価は時間外取引で15%急騰しました。トランプ政権は、サウジへの米国製AI向け半導体のアクセス拡大を認める方向で調整をしています。合意が実現すれば、サウジは最先端半導体を一段と購入できる環境が整います。アナリストらは「サウジアラビアの市場機会は、今後数年間で世界のAI市場全体に1兆ドルの付加価値をもたらす可能性がある」と想定しており、こうした動きは市場やハイテク銘柄に織り込まれていない述べています。ただし、両国政府は初期段階の合意に至ったものの、重要な詳細の数字についてはまだ調整が続いています。UEAでは大規模AIインフラ投資が始動5月15日には、トランプ大統領とムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンアラブ首長国連邦(UAE)大統領との会談で、UAEが米国のAIインフラ共同事業「スターゲート・プロジェクト」に出資を行い、両国のAIインフラを整備するというパートナーシップが発表されました。UAE政府系企業G42、オープンAI、オラクル(ORCL)、エヌビディア、シスコシステムズ(CSCO)、ソフトバンクグループが連携し、UAEに大規模次世代AIインフラ「スターゲートUAE」を建設。第一弾として、2026年には200メガワット(MW)分のデータセンターが稼働する見通しです。オープンAIによると、スターゲートUAEは半径2,000マイル圏内、最大で世界人口の半数にAIインフラを提供できるとされています。AI向け半導体企業の決算は好調また足元の決算では、AI投資需要の鈍化を懸念する声がやや先行していたものの、実際には堅調な業績が確認されました。ハイテク大手のAI需要は続く見込みAI向け半導体の主要顧客である、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズの4社による直近数四半期の設備投資は計500億ドルに達しています。1~3月期決算においても設備投資の意欲は衰えておらず、データセンターなどAI向け半導体需要が引き続き強いことが確認できました。中でも、クラウド大手はAIインフラの拡充が収益の成長に直結し、マイクロソフトとアルファベットはクラウド部門の売上高伸び悩み要因として、「AI計算能力の制約」を挙げています。半導体大手は好決算だが、投資家の期待も高いAI用半導体を供給している、エヌビディアの2~4月期売上高は前年同期比69%増の441億ドル。アドバンスト・マイクロ・デバイセズの売上高は前年同期比36%増の74.4億ドルと、大幅な増収で市場予想を上回り、株価上昇となりました。一方、ブロードコム(AVGO)の決算発表では、5~7月期の売上高見通しが予想をわずかに上回ったものの物足りないと受け止められ、株価は下落。AI半導体需要は一部の投資家の期待ほど強くないとの見方も出て、関連銘柄に売りが広がりました。 アナリストは、力強いAI見通しがあるにもかかわらず、ブロードコムの売上高見通しが冴えないのは非AI分野の半導体の回復が鈍く、その分が売上高の成長率を相殺している可能性があると分析しています。対中輸出規制は緩和の兆しも、輸入関税に警戒感こうした中、半導体セクターにとって懸念として残るのは、米国の対中貿易規制です。5月13日、トランプ大統領はバイデン政権下で発表されたAI向け半導体の輸出規制案の撤回を表明。現在、新たな枠組みの策定が進められています。市場では、米中間で歩み寄りの姿勢が見え始めるなか、「想定よりも規制は緩やかになる」との見方が台頭しています。これまで半導体は相互関税の対象外でしたが、今後相互関税とは別の枠組で米国外からの半導体輸入に関税が導入される見込みです。トランプ大統領は過去に、半導体チップに税率25%以上の輸入関税を課す可能性があると発言しており、リスク要因として注視が必要です。

【中国株見通し】米中関税一時緩和で中国株に再評価の動き

【中国株見通し】米中関税一時緩和で中国株に再評価の動き

米国と中国が相互に発動していた関税を90日間大幅に引き下げることで合意したことを受け、主要金融機関は中国経済の成長見通しを上方修正し、中国株への投資スタンスを見直す動きが広がっています。本記事では、市場関係者による中国株の今後の展望を紹介します。米ヘッジファンドが中国株への投資を拡大関税問題で下落していた中国株は、米中交渉の進展を受けて反発。上海総合指数や香港ハンセン指数はいずれも50日移動平均線を上抜け、テクニカル的にも上昇トレンド入りの兆しを見せています。モルガン・スタンレーによると、特に米国拠点のヘッジファンドが中国株への投資を拡大。米国で取引される中国株(ADR)や中国市場のA株(人民元建て株)に資金を振り向け、タイ、インド、オーストラリアなど他のアジア資産の保有を減らす動きが出ています。ただし、中国株へのエクスポージャーは依然として過去のピークを大きく下回っています。M&Gインベストメンツの投資ディレクターは、極端に軽くなった投資家のポジションや割安なバリュエーションにより、中国株はリスク・リターンの面で非常に魅力的となる可能性があると述べています。見通しの上方修正が株式回復を後押しUBSは直近のレポートで、貿易摩擦の緩和が経済成長へのショックを和らげるとし、2025年の中国GDP成長率予想を従来の3.4%から3.7〜4.0%に引き上げました。モルガン・スタンレーも、関税の一時停止措置が輸出や生産の前倒しを促すと見て、短期四半期GDP成長率予想を上方修正。第3四半期には一時的に4%を超える成長になる可能性があると述べています。野村証券は中国株の投資判断を「戦術的オーバーウェイト」に引き上げ、一部ファンドをインドから中国へとシフト。シティは、ハンセン指数の年末目標値を2%引き上げて2万5000とし、2026年上半期には2万6000に達すると予測しています。一時的な反発も、残る不透明感一方で、一部の市場関係者は「今回の合意は一時的な停戦に過ぎず、根本的な突破口とは言えない」と慎重姿勢を保っています。UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのエバ・リー氏は「企業業績の改善や政策支援が見られない限り、株価の上値は限定的」と指摘し、既に多くの好材料は市場に織り込まれており、米中交渉の長期化や中国の有効な経済対策の欠如がリスク要因として残るとしています。また、中国人民元はドルに対して緩やかな上昇基調にあり、デフレ圧力の継続を背景に中国国債の利回りが一段と低下する可能性もあります。

投資の基礎知識

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【投資信託の基礎】人気・実績の高いファンドは?分配金型と再投資型の違いや売却タイミングも解説

【投資信託の基礎】人気・実績の高いファンドは?分配金型と再投資型の違いや売却タイミングも解説

本記事では、投資信託の基礎知識から、資金流入や運用実績上位のファンドの特徴、分配型と再投資型の違い、売却タイミングの考え方をわかりやすく解説します。目次知っておきたい投資信託の基礎資金流入が多いファンド、運用実績の良いファンドは?テーマ型投資信託の「旬」と選び方「分配金型 vs 再投資型」どちらを選べば良いか?投資信託はいつ売る?知っておきたい投資信託の基礎投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、専門家が株式や債券などに分散投資を行い、その運用成果を投資家に分配する金融商品です。少額から始められ、リスク分散が図れる点が特徴です。2025年5月の追加型株式投信(ETF除く)への資金流入額は約9,000億円と、24カ月連続の流入超過が続いています。資金流入が多いファンド、運用実績の良いファンドは?個別ファンドを見ていくと、上位3ファンドが資金流入額の約45%を占めており、国際分散型・米国株型の根強い人気が際立ちます。過去1カ月で資金流入が多かったファンド(2025年5月末時点)eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):+1620億円eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):+1420億円インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし> 毎月決算型:+1029億円「世界中に分散して投資したい」という投資家心理は根強く、全世界株式型(オルカン)は地政学リスクや特定国への依存を避けられる点が特に評価されています。一方、米国の株式市場が長期的に堅調であるとの見方は崩れておらず、S&P500連動も依然として強い支持を得ています。過去3年の運用実績が良かったファンド(2025年5月末時点)iFreeNEXT FANG+インデックス:年率+42.9%FANG+インデックス・オープン:年率+42.9%野村世界業種別投資シリーズ (世界半導体株投資):年率+38.1%過去の運用実績に注目すると、FANG+(米メガテック10選)や半導体ファンドが上位に並びます。オルカンやS&P500などに比べ、これらのファンドは構成銘柄が絞られており、成長企業への集中投資となっているのが特徴です。リスクは高まるものの、相場環境が追い風になる局面では一気にリターンが伸びやすい構造となっています。FANG+や半導体企業は、生成AIの普及により「業績を伴った株価上昇」が続いているため、過去3年で他のファンドを大きく上回るリターンを記録しています。テーマ型投資信託の「旬」と選び方AIや半導体、宇宙、脱炭素など、特定の産業や社会課題に焦点を当てた「テーマ型ファンド」は、将来性の高い分野に乗れるという魅力がありますが、市場のブームに合わせて値下がりリスクも高く、「投資先の中身」と「投資のタイミング」の見極めが重要になります。テーマ型ファンドのよくある落とし穴としては、投資先の中身がテーマに沿っていないことがあります。例えば、ロボット関連をテーマとしながら、実際には大手IT企業に広く分散しているというケースもあります。また、テーマ型ファンドは話題になった直後に登場しやすく、既にテーマが株価に織り込まれている状態の可能性もあります。銘柄がメディアで頻繁に取り上げられていたり、同じテーマの類似ファンドが増えはじめている状況は、過熱感が出ているサインといえます。堅実な運用を望む方は、ポートフォリオに補助的に加えるのが失敗しにくい運用法です。「分配金型 vs 再投資型」どちらを選べば良いか?また、投資信託を選ぶうえで迷いやすいのが、分配金が出る「受取型」と分配金を再投資する「再投資型」の選択です。✅ 「受取」型は現金収入が定期的に得られる一方で、非NISA口座では分配金に課税✅ 「再投資」型は分配金を自動的に再投資し、資産が複利で成長投資目的が資産形成の場合は「再投資」型、生活費の補填を意識するなら「受取」型が向いています。投資信託はいつ売る?最後に、投資信託をいつ売れば良いか分からない──これは多くの投資家が抱える悩みです。投資信託を売却する際に重要なのは「なぜ売るのか?」という目的の明確化です。✅ 利益が十分出ている→「利益確定」して次の機会へ✅ 長期間パフォーマンスが悪い→ 構造的な弱さがある場合、「損切り」も検討✅ ファンドの方針変更・組入銘柄の入れ替え → 元の想定と違うなら一部売却も視野に投資信託は基本的に長期保有が前提ですが、売ることも投資の重要な戦略です。定期的な見直しと冷静な判断が、投資信託で資産形成を成功させる鍵となります。

【新NISA】一括投資と毎月積立どちらがいい?メリットとデメリットを解説

【新NISA】一括投資と毎月積立どちらがいい?メリットとデメリットを解説

本記事では、一括投資と毎月積立のメリットとデメリットを紹介し、新NISAでの実践方法を解説します。新NISA制度(少額投資非課税制度)の概要については、以下の解説記事をご覧ください。一括投資と毎月積立のメリットとデメリット一括投資は早期投資でリターンを最大化特徴投資資金を一度に全額投入運用成果が短期的には投資タイミングに依存メリット市場上昇時の利益最大化: 相場上昇する局面では高いリターンを得やすいデメリットタイミングリスク: 投資時期が市場のピーク付近の場合、大きな損失を被る可能性がある資金拘束: 一度に大きな資金を投資するため、流動性が低下一括投資は、リスクを許容しながら、将来の市場上昇を見越して積極的にリターンを追求したいと考える投資家に適しています。世界最大級の資産運用会社Vanguardによると、1976年から2022年にかけて一括投資は積立投資(ドルコスト平均法)と比べて約68%の確率で高い年間リターンを達成しています。これは市場が上昇傾向にある場合、より早く投資資金を市場に投入することでリターンを最大化できるためです。また、ポートフォリオに占める株式の比率が高いほど一括投資の優位性は大きくなります。毎月積立は投資のリスクを分散特徴一定額を定期的に投資投資タイミングが分散され、購入単価が平準化メリットリスク分散: 株価に関係なく投資するため、価格変動リスクを軽減デメリット上昇相場でのリターン低下: 一括投資と比べて、市場が継続的に上昇している場合はリターンが低くなる資産形成に時間がかかる: 投資額を積み上げるのに長期間を要する一方で積立投資は、投資タイミングを分割することで短期間の市場変動リスクを軽減し、特に市場が急落した場合に、一括投資よりもリターンが良いことがあります。そのため、市場の変動に対して冷静でいたい人や、短期損失やリスクを抑えつつ長期的に安定した資産形成を目指す投資家に向いています。新NISAでの一括投資と毎月積立の実践方法年間投資枠は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」で計360万円新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります。つみたて投資枠は、金融庁の基準を満たした投資信託について購入できる枠で、年間投資枠は「120万円」までです。一方、成長投資枠は、投資信託のほか個別株等も購入できる枠で、年間投資枠は「240万円」までです。新NISAで一括投資できるのは、成長投資枠のみつみたて投資枠は積立での投資を前提とされており、原則毎月10万円が上限となっています。そのため、年間投資枠を一括投資することはできません。成長投資枠については、一括投資と積立投資どちらも利用可能なため、年間投資枠の240万円までは一括投資できます。毎月積立する場合は月額30万円まで毎月積立を実践したい方は、つみたて投資枠の10万円と成長投資枠の20万円を合計した30万円までは新NISAで毎月積立投資が可能です(ボーナス月を設定した場合は、年間投資枠の範囲内で追加買付が可能)。ブルーモ証券では、毎月のつみたて投資を設定すると、自動で月々の投資額をつみたて枠と成長投資枠の1:2の比率に分けて買付を行うため、意識せずともNISA枠が効率的に埋まるように投資ができます。ブルーモ証券のかんたんNISAの詳細についてご関心のある方は、以下をご覧ください。

出金はいつしたら良い?長期資産形成を成功させるためのコツ

出金はいつしたら良い?長期資産形成を成功させるためのコツ

資産運用で利益が出ると、「利益を確保して出金したい」「損失が出る前に売ってしまいたい」と感じる方も多いかもしれません。しかし、長期的に資産を増やす観点から考えると、短期的な利益確定には慎重な判断が必要です。以下に、出金を検討するときに思い出したい、資産運用を成功させるための3つの重要なポイントを詳しく説明します。1. 利益確定によるデメリットを理解する資産がプラスに転じると、売却してその利益を確定したくなるものですが、長期的に資産を成長させるためには、短期の利益確定にはいくつかのリスクとデメリットがあります。税金が発生する資産を売却して利益が出た場合、約20%の税金が利益から差し引かれます。その結果、再投資する際の元本が減り、資産を成長させるための複利効果も小さくなります。長期的な運用を目指すのであれば、売却せずに資産を保有し続けることで、税金の支払いを先送りし、資産が複利で成長する恩恵を最大限に受けることができます。タイミングの見極めが難しい短期的な利益確定では、相場の上昇・下落を予測して適切なタイミングを見極める必要があり、これはプロであっても容易ではありません。売却した後に相場がさらに上昇することも多く、保有し続けていれば得られたはずのリターンを逃してしまう可能性が高くなります。こうした理由から、長期的な視点で持ち続けるほうが、安定した成長を期待できます。複利効果を失う複利の力は、長期的に資産運用を続けることで最大限に発揮されます。利益確定によって出金を繰り返すと、その都度複利効果が断たれ、最終的なリターンが小さくなりがちです。資産を保有し続け、再投資することで「利益が利益を生む」サイクルを活かすことができ、長期的に安定した資産成長が期待できます。たとえば、10年間5%の複利で運用した場合、元本は1.63倍になりますが、毎年の利益確定があるとこの成長は抑えられます。出金の判断は慎重に行い、複利の力が長期的に働くことで資産を着実に増やしていくことを意識しましょう。2. 出金は「本当に必要なときに、必要な分だけ」に留める資産運用の基本方針として、出金のタイミングを「資金が本当に必要なとき」に限定するのが賢明です。急な出費や緊急の資金が必要な場合には、必要な額だけを引き出し、残りの資産はそのまま運用を続けることが、資産成長を最大化する上で大切です。出金をこのように「必要最小限」に留めることで、資産が運用される時間を長く保ち、最終的なリターンを大きくすることができます。3. 短期の相場変動を気にしすぎない資産運用をしていると、短期的な相場変動によって一喜一憂しがちですが、こうした変動に過剰に反応することは、長期的な成長の妨げになりがちです。人間は、「利益があるうちに確保したい」「損失をできるだけ避けたい」という心理が強く働くため、少しでも相場が上昇すると利益確定したくなり、逆に下落すると早めに売却したくなる傾向にあります。しかし、こうした感情的な反応が続くと、資産運用の本来の目標である「長期的な資産成長」に悪影響を及ぼす可能性が高まります。たとえば、過去30年間で米国株(S&P500指数)は平均年率8%で成長してきましたが、年ごとのリターンはプラスとマイナスの変動がありました。長期的に見れば、リーマンショックやコロナショックのような大きな下落も、運用を続けることで回復し、その後の成長を享受することができたケースが多くあります。まとめ:出金は生活の必要ベースにして、長期目線の運用を続ける資産運用で利益が出たときに出金したくなる気持ちは自然なものですが、長期的な資産成長を目指すなら、短期的な利益確定は慎重に検討すべきです。「本当に必要なときに必要な分だけ出金し、それ以外は淡々と運用を続ける」ことで、資産が複利の恩恵を最大限に活かして成長しやすくなります。短期の変動に囚われず、計画に沿った運用を続けることで、最終的な資産成長が期待できるでしょう。

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