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【米国株見通し】景気後退懸念で調整売り、FANG+指数の今後と個人投資家が考慮すべき事は?

【米国株見通し】景気後退懸念で調整売り、FANG+指数の今後と個人投資家が考慮すべき事は?

本記事では、FANG+指数の下落要因について概説し、個人投資家が考慮すべき事項や今後の見通しについて紹介します。FANG+指数の構成銘柄の入れ替え基準と過去のパフォーマンスについてはこちらの記事で解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。※FANG(ファング)は、Facebook・Amazon・Netflix・Googleの4銘柄の頭文字を意味し、これらの銘柄にアップル、マイクロソフトを含む6銘柄を加えた大型テクノロジー10銘柄に10%ずつ等配分投資をする株価指数がFANG+指数です。米国株調整で、FANG+は大幅下落2025年、ドナルド・トランプ大統領の関税政策やその他の政策の不透明感による貿易戦争や景気後退への懸念から、米国株は2023年以来初の調整局面に入りました。S&P 500指数は2月19日の高値から10%以上下落し、ハイテク銘柄で構成されるFANG+指数は、投資家がリスク回避志向を強めていることから市場全体よりも大きく下落しています。株価の一時的な調整はよくあることLPL Researchによると、1928年以降に米国株は10%以上の調整を1.1年ごと、15%以上の大幅な調整を2年ごとに迎えており、調整相場でのピークから底までの平均下落率は13.8%となっています。一方、1950年以降においてS&P 500指数は調整局面に入ってから3ヶ月後には平均6.5%、6ヶ月後には12%のリターンを記録。中でも、経済政策の不透明感が株安を引き起こした事例では、短期的に市場が不安定化したものの、長期的には米国株の買いの好機となりました。ただし、大きな買いに積極的になるべきというわけではありません。一般的に、調整局面での底打ちは一度限りの出来事ではなく、プロセスとして生じます。ヤルデニ・リサーチによると、平均的な調整期間は115日であり、株価が持続的に上昇するには時間がかかるので、投資家は時間をかけて少しずつ株を買い戻すことが賢明と言えます。ハイテク株の見通しはマクロ経済状況に依存また、相場に対する投資家心理を反映する指数として知られるボラティリティ指数は依然として20を超え、政策や経済成長に対する市場参加者の強い警戒感が続いていることを示しています。FANG+の見通しは不透明が強く、政策金利の引き下げが確実視されればハイテク株は反発する可能性がありますが、中国、メキシコ、カナダからの輸入品に対する関税がインフレ懸念の長期化を招けば、ハイテク企業の利益率に重しとなる可能性があります。さらに、景気後退が起こった場合は、消費者や企業のテクノロジーへの支出が減り、株価にさらなる圧力がかかることが想定されます。FANG+への投資を検討する際には、リスクの許容度と投資期間を考慮する必要があります。マクロ経済の見通しが明確になるまでハイテク株は低迷する可能性がありますが、経済状況が改善すれば大幅な上昇も期待できます。一方、インフレと景気後退への懸念が高まる状況では、特定のセクターに特化するのではなく、ボラティリティの低い堅実な資産へ投資をし、より分散されたポートフォリオをを検討するのも手です。マーケットの底打ちはいつか市場は経済成長の鈍化をある程度織り込んでいるため、今後数か月で景気後退リスクがさらに高まるかどうかが当面の注目点となります。市場の底打ちには、1) 実体経済が堅調であり、景気後退リスクが限定的であることを示唆するデータ(経済指標)、2) FR​​Bの金融緩和シグナル、3) 政権のスタンス変化等が観測されることが必要と考えられます。ただし、経済指標が悪化した場合には市場の懸念が裏付けられますが、堅調な指標が維持されたとしても、景気後退を回避できると市場が十分に確信するまでに時間がかかる可能性があります。政策による下振れリスクが最も懸念されていることを考えると、政策スタンスの変化や政権が経済支援のために政策を調整する用意があるといったメッセージを発することが、明確な回復への道となると想定されます。

景気後退懸念で株価は大きく下落。インフレ鈍化と買い戻しで反発し、株式市場は一進一退に|米国市場サマリー

景気後退懸念で株価は大きく下落。インフレ鈍化と買い戻しで反発し、株式市場は一進一退に|米国市場サマリー

先週は、トランプ大統領の報道番組での景気後退シナリオ容認ともみられる発言を契機に、米国の景気後退懸念が市場に広がり、週頭から株価が大きく下落しました。CPI結果でインフレ鈍化傾向が見えたので、一時株価は回復するも、トランプ大統領がEUに対する関税も表明したことで再度下落します。週末には、直近の相場が下落し過ぎているとの見立てから、買い戻しが入り、株価は急上昇して1週間を終えました。為替は、米国の景気後退懸念からリスクオフ先として円が買われ、一時的に円高が進行しました。しかし、米国の株式市場が反発すると、円買いを強めていた海外投機筋が一部資金を引き上げ、円安が進行しました。全体としては、円安が進んだ1週間となりました。米国株式市場:景気後退懸念から株式市場は大幅下落するも、インフレ鈍化と買い戻しで市場は一進一退3月10日(月) 米国株式市場は急落し、景気後退懸念が強まりました。ダウ (-890ドル)、NASDAQ (-4%)、S&P 500 (-2.7%) と大幅安となり、S&P 500は200日移動平均線を割り込む 事態となりました。トランプ大統領の関税政策 や米政府機関閉鎖の可能性 が不安要因となりました。NVIDIA、Tesla (-15.4%)、Coinbase (-17.6%) などハイテク株が売られました。3月11日(火) 市場は続落しましたが、ウクライナとロシアの暫定停戦報道 を受けて下げ幅を縮小しました。S&P 500は一時、最高値から10%以上の下落 となり、調整局面入りが懸念されました。トランプ大統領がカナダからの鉄鋼・アルミニウム関税を50%に引き上げ たことで、景気減速懸念が高まりました。Kohl’s (-24.1%)、Delta Air Lines (-7.3%)、American Airlines (-8.3%) など消費・航空関連株が大幅安となりました。3月12日(水) S&P 500は反発しました。2月の消費者物価指数 (CPI) が前年比2.8%上昇 し、市場予想を下回ったことで、インフレ鈍化が好感されました。NASDAQは1%以上上昇 し、ハイテク株に買いが入りました。Intel (+4.6%)、NVIDIA、AMD など半導体株が上昇。一方、PepsiCo (-2.7%) は投資判断引き下げを受け下落しました。3月13日(木) 市場は大幅下落し、S&P 500は調整局面入りを確認しました。トランプ大統領がEUのアルコール製品に200%関税を課すと表明 したことで、関税合戦が激化し、景気後退懸念が強まりました。NASDAQ (-2%) は売り込まれ、ダウ輸送株指数も急落しました。Intel (+14.6%) は新CEOの就任を好感し急伸しましたが、Adobe (-13.9%) は四半期売上見通しが予想並みだったことで急落しました。3月14日(金) 市場は反発し、売られすぎ感からの買い戻しが入りました。S&P 500とNASDAQは昨年11月6日以来の大きな上昇率 を記録し、主要11セクターがすべて上昇しました。Tesla (+3.9%) は上海工場でのモデルY廉価版生産計画が報じられ買われました。NVIDIA (+5.3%) もCEOの講演を控え期待が高まりました。しかし、S&P 500とNASDAQは4週連続の下落 となり、市場は依然として不安定な状況が続いています。為替市場:トランプ大統領が日本の通貨安を批判し、米国からのリスクオフも進んだことで円高が進む為替は、米国の景気後退懸念からリスクオフで円が買われ、一時147円まで円高が進みました。しかし、株式市場の反発に合わせて、円安に戻しており、全体としては円安が進んだ1週間となりました。現在の円高要因には海外投機筋による円買いもあるとされ、投機筋のポジション解消次第では円安が進むとみられますが、トランプ大統領の関税政策により経済への不透明感が強いため、為替の反発は限定的になっています。今週のマーケット:FOMCは金利据え置きが予想されるも、コメントに注目か今週(2025/3/17-3/21)は、FOMCが開催されますが、現在の市場予想は金利据え置きです。FOMC後の要人発言が今後の金利水準や株価への影響では大事でしょう。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

調整局面の米国株、安全な投資先として需要が高まる銘柄とは?

調整局面の米国株、安全な投資先として需要が高まる銘柄とは?

2025年、ドナルド・トランプ大統領の関税政策やその他の政策の不透明感による貿易戦争や景気後退への懸念が、米国株下落の波を引き起こしています。本記事では、先行き不安の強い米金融市場において安全投資先として需要が高まっている銘柄を紹介します。1. 中小型バリュー株景気後退懸念時には、安定した収益を上げている企業や割安な株が見直されやすく、バリュー株へ新たな資金が流入しています。特に、関税などのマイナス要因よりも規制緩和や減税の恩恵が大きい中小型株が注目され、ドラッグストア運営と処方箋の販売および管理を提供するヘルスケア企業CVSヘルス(CVS)の年初来上昇率は50%超、世界最大のたばこメーカーフィリップ・モリス・インターナショナル(PM)は25%超、アッヴィ(ABBV)は17%超と主要指数を大きく上回るパフォーマンスを発揮しています。また、バリュー投資家として知られるウォーレン・バフェットが率いる投資会社バークシャー・ハザウェイ(BRK.B)は金利上昇により同社の投資収益が増加し、株価が年初来上昇率は13%超となっています2. 大型高配当株市場の不確実性がますます高まる中、安定した四半期配当を提供する高配当銘柄の一部も好調に推移しています。米国で財務が健全な高配当企業を厳選したETFであるiシェアーズ・コア高配当株ETF(HDV)は年初来で5%超上昇。同指数の組入上位銘柄である医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)の年初来上昇率は12%超、コカ・コーラ(KO)は11%超といずれも年初来上昇率が2桁に達しています。3. 金・銀ETF古くから市場の不確実性に対するヘッジとして見られる金は、安全資産としての魅力がさらに高まっています。中央銀行による金買い需要も堅調であり、SPDRゴールドETF(GLD)は年初来で12%超上昇。銀価格も堅調に推移し、iシェアーズ シルバーETF(SLV)は年初来で14%超上昇しています。3月14日、金スポット価格は史上初めて1オンス=3000ドルを突破しました。過去1年、アナリストらは金価格予想を上方修正してきており、一部アナリストは1オンス=3500ドルが次の目標になると予想しています。一方で、貿易問題の解決が見え株式市場の混乱が解消すれば、大幅な調整が起きる可能性があるとの見方も示されています。4. 米国債安全資産需要から米国債相場も急上昇し、昨年11月5日の大統領選以降の期間では米国株を上回るリターンとなっています。また、ベッセント米財務長官が「当面は長期債増発の計画がない」「トランプ氏の政策により米10年債利回りは自然に低下するはずだ」と述べたことや、複数のFRB当局者が量的引き締め(QT)の停止ないし縮小に言及したことも米国債への強気姿勢を促しました。債券投資を行う際は、個別債券への投資のほか債券型のETFによる投資も可能です。債券ETFであれば、少額から投資可能で、満期がなく取引所が空いている間リアルタイムで取引を行うことができます。また、株式と一体に証券口座内で管理できるため、損益状況やポートフォリオが把握しやすいというのも特徴です。

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調整局面の米国株、安全な投資先として需要が高まる銘柄とは?

調整局面の米国株、安全な投資先として需要が高まる銘柄とは?

2025年、ドナルド・トランプ大統領の関税政策やその他の政策の不透明感による貿易戦争や景気後退への懸念が、米国株下落の波を引き起こしています。本記事では、先行き不安の強い米金融市場において安全投資先として需要が高まっている銘柄を紹介します。1. 中小型バリュー株景気後退懸念時には、安定した収益を上げている企業や割安な株が見直されやすく、バリュー株へ新たな資金が流入しています。特に、関税などのマイナス要因よりも規制緩和や減税の恩恵が大きい中小型株が注目され、ドラッグストア運営と処方箋の販売および管理を提供するヘルスケア企業CVSヘルス(CVS)の年初来上昇率は50%超、世界最大のたばこメーカーフィリップ・モリス・インターナショナル(PM)は25%超、アッヴィ(ABBV)は17%超と主要指数を大きく上回るパフォーマンスを発揮しています。また、バリュー投資家として知られるウォーレン・バフェットが率いる投資会社バークシャー・ハザウェイ(BRK.B)は金利上昇により同社の投資収益が増加し、株価が年初来上昇率は13%超となっています2. 大型高配当株市場の不確実性がますます高まる中、安定した四半期配当を提供する高配当銘柄の一部も好調に推移しています。米国で財務が健全な高配当企業を厳選したETFであるiシェアーズ・コア高配当株ETF(HDV)は年初来で5%超上昇。同指数の組入上位銘柄である医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)の年初来上昇率は12%超、コカ・コーラ(KO)は11%超といずれも年初来上昇率が2桁に達しています。3. 金・銀ETF古くから市場の不確実性に対するヘッジとして見られる金は、安全資産としての魅力がさらに高まっています。中央銀行による金買い需要も堅調であり、SPDRゴールドETF(GLD)は年初来で12%超上昇。銀価格も堅調に推移し、iシェアーズ シルバーETF(SLV)は年初来で14%超上昇しています。3月14日、金スポット価格は史上初めて1オンス=3000ドルを突破しました。過去1年、アナリストらは金価格予想を上方修正してきており、一部アナリストは1オンス=3500ドルが次の目標になると予想しています。一方で、貿易問題の解決が見え株式市場の混乱が解消すれば、大幅な調整が起きる可能性があるとの見方も示されています。4. 米国債安全資産需要から米国債相場も急上昇し、昨年11月5日の大統領選以降の期間では米国株を上回るリターンとなっています。また、ベッセント米財務長官が「当面は長期債増発の計画がない」「トランプ氏の政策により米10年債利回りは自然に低下するはずだ」と述べたことや、複数のFRB当局者が量的引き締め(QT)の停止ないし縮小に言及したことも米国債への強気姿勢を促しました。債券投資を行う際は、個別債券への投資のほか債券型のETFによる投資も可能です。債券ETFであれば、少額から投資可能で、満期がなく取引所が空いている間リアルタイムで取引を行うことができます。また、株式と一体に証券口座内で管理できるため、損益状況やポートフォリオが把握しやすいというのも特徴です。

ドル円は146円台へ。円高はこのまま続くのか

ドル円は146円台へ。円高はこのまま続くのか

2025年3月時点で外国為替市場では急速に円高が進み、ドル円レートは一時1ドル=146円台という約5カ月ぶりの円高水準を記録しました 。わずかな期間で円高が進行した背景には、日本と米国それぞれの金融政策見通しや景気見通しの変化が影響しています。以下では、特に日銀(日本銀行)の利上げ観測と米国の景気後退懸念という二つの要因に焦点を当て、そのメカニズムを解説します。急激に円高が進んだ背景とは日銀の早期利上げ見通しが日米金利差の縮小期待を形成したまず、日本側の要因として日銀の金融政策スタンスの変化が挙げられます。近年、日本では物価上昇率が日銀の目標である2%を上回り、賃金も上昇傾向にあることから、日銀が金融緩和を転換し利上げに踏み切るとの見通しが市場で高まりました 。実際に日銀は2025年1月に政策金利を0.25%から0.5%へと引き上げており、追加利上げへの期待もくすぶっています 。日銀の早期利上げ観測が広がると、日本と米国の金利差(利回り差)が縮小するとの予想につながり、これが円を買う動きを促しました。金利差縮小によりドルを持つ魅力が相対的に低下するため、投資家がドル資産から円資産へとシフトし、結果として円高圧力が強まったのです 。米国の景気後退懸念がドルから資金流出を招いている一方、米国側の要因として、景気後退(リセッション)への懸念がドル安・円高を後押ししました。2025年に入り、米国では高関税政策の影響などで経済成長の減速懸念が台頭し、株式市場が不安定化しています 。特に「貿易戦争」による先行き不安から「有事の円買い」と呼ばれる現象が起こり、リスク回避志向の投資家が安全資産とみなされる円を買う動きが強まりました 。具体的には、米国経済の減速リスクが意識され始めた3月上旬、米株価の急落に追随して投資マネーがドルから流出し、日本円やスイスフランといった安全通貨に流入しました。その結果、ドルは対円で売られ、為替相場は急激な円高方向(ドル安方向)へ振れたのです 。このように、日米金利差だけでなく景気見通しによる資金の流れも円高の背景にあると言えます。円高傾向が長期で続くかは疑問直近の円高は顕著ですが、この円高傾向が長期にわたって持続する可能性は低いのではという懐疑的な見方も専門家から出ています。その理由として、米国の金融政策が思ったほど早く緩和(利下げ)に転じない見通しや、日本国内の金融・財政面での日銀利上げの制約、そして将来的に米国景気の不安要因が解消した際の資金フローの逆転が挙げられます。以下で順に説明します。米国はトランプ関税で利下げが遅れる見通し第一に、米国の金融政策に関して、早期の利下げが見込みにくい状況があります。トランプ大統領による関税引き上げ(いわゆる「トランプ関税」)が再び導入・維持されたことで物価の先行きに不透明感が生じ、インフレ圧力が残るとの見方があるためです。実際、米連邦準備制度理事会(FRB)は直近で追加利下げを急がない方針を示していますが、その背景には米国経済が比較的堅調であることに加え、第2次トランプ政権の高関税政策による世界経済の不確実性が影響しています 。世界的に他国の中央銀行が利下げに動く中で、FRBは「米国経済への信頼が強く、現時点での追加利下げは必要ない」と判断している状況です 。このため日米金利差はすぐには大きく縮小せず、円高基調が長く続く決定打には欠けるとの見通しが強いのです。日本の市中銀行は国債を消化できず日銀の利上げは難しい第二に、日本国内の事情として、日銀が大幅な追加利上げや金融引き締めを行うには高いハードルがあります。長年の金融緩和で日銀が国債市場で圧倒的な存在感を持ってきたため、市中の銀行や機関投資家が国債を安定的に消化する体制が十分に整っていないからです。実際、国内の銀行や保険など機関投資家は10年物国債金利がおおむね2%程度に達しないと、本格的に国債を買い増すのは難しいとの姿勢を示しています 。現在の長期金利水準(1%前後)では、民間が積極的に国債を吸収するインセンティブが弱く、国債市場の安定消化は日銀の買い入れに依存しているのが実情です 。このため日銀が利上げによって国債買い入れを減らそうとすると金利急騰や市場混乱を招くリスクがあり、日銀は利上げに慎重にならざるを得ません。要するに、日本の構造的な事情から日銀は急ピッチの金融引き締めが難しく、円高要因である日米金利差縮小も緩やかになりやすいのです。米国の景気後退懸念が解消するとドルへ資金が還流する第三に、現在円高を促している米国景気への悲観論も永続するわけではありません。仮に米国の景気後退懸念が今後薄れ、経済が安定軌道に戻ると市場参加者のリスク回避姿勢も和らぐでしょう。そうなれば、安全資産とされる円への資金流入は減少し、代わって成長期待のあるドルや新興国通貨への投資資金が戻っていく可能性が高いと考えられます。過去を振り返っても、大きな危機の際に急騰した円は、その危機が去れば徐々に反落し円安基調に戻る傾向があります。今回も米国経済がソフトランディング(景気後退を回避)すれば、現在進んでいるような円高圧力は次第に弱まり、中長期的には再び円安方向に振れていくシナリオが有力です。

S&P500はどうなる?トランプ危機への対応は

S&P500はどうなる?トランプ危機への対応は

2025年3月10日、米国株式市場で大幅な暴落が起き、S&P500指数は1日で2.7%安、ナスダック総合指数も4%安と今年最大の下げ幅を記録しました 。ダウ平均株価は一時1100ドル超下落し、終値でも890ドル安(-2.08%)となっています。この急落の背景には、トランプ政権による政策への不透明感と、それに伴う景気後退(リセッション)への懸念が急速に広がったことがあります。以下では「トランプ危機」とも言える今回の状況について、その原因と背景を詳しく見ていきます。1. 何が起きているのか1-1. トランプ政権の不透明感が相場を止めた今回の相場急落の大きな要因は、トランプ大統領による政策運営の不透明さです。就任当初、市場はトランプ氏の減税や規制緩和といった成長重視の政策に期待し株高が進んでいました。しかし足元では貿易関税の引き上げや連邦政府職員の大量解雇など、場当たり的で予測困難な政策運営により投資家心理が冷え込んでいます 。実際、トランプ大統領の関税政策による不確実性が景気悪化懸念を招き、S&P500指数の時価総額は2月の過去最高値から約4兆ドルも減少しました 。主要な貿易相手国(カナダ・メキシコ・中国)への関税方針が二転三転するなど、不安定な政策運営が市場の先行き見通しを困難にしています 。米株式市場を牽引してきたハイテク大型株も売りの直撃を受け、アップルやエヌビディアが5%前後の急落、テスラに至っては15%安と急落しました 。かつて「トランプトレード」と呼ばれた楽観的な買いムードは完全に影を潜め、市場はトランプ政権の政策リスクを意識して慎重姿勢に転じています。ジョーンズ・トレーディングのチーフ市場ストラテジストのコメントも、この状況を端的に表しています。「以前はトランプ氏就任で何もかも素晴らしくなるという圧倒的コンセンサスがあった」が、「構造的変化には不確実性と摩擦が伴う。市場参加者が懸念を強め利益確定に動き始めたのも理解できる」と指摘されています 。つまり、これまで追い風だった政策期待が一転、政策の不透明感が株式相場の重しとなり、上昇基調を止めてしまったのです。1-2. 景気後退懸念が市場を支配政策への不安に加え、景気後退(リセッション)への懸念が投資家心理を一気にネガティブに傾けました。引き金となったのはトランプ大統領自身の発言です。3月9日放送のFOXニュースのインタビューで、トランプ氏は「米経済は今、過渡期にある」と述べ、2025年内に景気後退入りする可能性を明確には否定しませんでした 。年内リセッション予測について問われた際、「そういった予測は好まない。我々はいま非常に大きなことを進めているので、過渡期がある」と述べ、事実上景気後退の可能性を排除しなかったのです。この発言に市場は敏感に反応し、以前から警戒感を募らせていた投資家の間で不安が一気に広がりました 。その結果、「景気後退が来るかもしれない」という恐怖が市場を支配し、大量の売りが発生しました。ウォール街の恐怖指数と呼ばれるVIX指数は年初来最高水準に急上昇し、CNNの「恐怖と強欲指数」でも直近2週間は「極度の恐怖」が市場を支配している状態です 。米国株だけでなくリスク資産全般に売りが波及し、暗号資産のビットコインですら7万8000ドル近辺まで急落し昨年11月以来の安値を付けました 。一方で、安全資産とされる米国債が買われ長期金利が低下するなど、市場は典型的なリスクオフの動きを示しています 。こうした景気後退懸念の高まりが、短期的な投機筋の動きも巻き込み相場下落に拍車をかけました。ヘッジファンドは3月上旬にかけて株式ポジションを大幅に縮小し、ここ2年で最大規模の売り越しを行ったとの指摘もあります 。投資家のリスク回避姿勢が極度に強まった結果、昨年11月の大統領選以降の米株上昇分はほぼ帳消しとなり、主要株価指数は調整局面(高値から10%以上の下落)入りが意識される水準にまで低下しました 。言い換えれば、市場は「トランプ政権下で景気後退が起こる」という最悪シナリオを相当織り込み始めた状態と言えます。2. 今後の見通しはどうなるかでは、今後の市場はどう動くのでしょうか。短期的には不安定な動きが続く可能性がありますが、中長期的に見ると過度に悲観する必要はないとの見方も多くあります。ここでは、実体経済の状況と金融政策の見通しを踏まえ、短期と長期それぞれの視点から今後の展望を整理します。2-1. 実体経済は堅調で景気後退リスクは高くないまず押さえておきたいのは、足元の実体経済は依然として堅調だという点です。株式市場が悲観に傾いている一方で、米国経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は決して悪化していません。たとえば失業率は依然歴史的低水準にあり、個人消費も堅調さを維持しています。企業の業績も総じて良好で、金融システム不安などの兆候も見られません。このため、「米国経済がすぐに景気後退に陥る可能性は低い」とする専門家の声が多数を占めています。実際、エコノミストの間では「米国は景気後退には至らず、ソフトランディング(穏やかな経済軟着陸)の可能性が高い」との見通しが有力です。2024年12月時点では第一生命経済研究所の藤代主席エコノミストからも「多くのエコノミストも同様に主張しており、確率的には8割ほどの確度でソフトランディングするだろう。景気後退(GDPが2四半期連続マイナス成長)はまず考えにくい」との指摘がなされています 。つまり、多少の景気減速はあっても「大惨事」にはならず、米経済は底堅さを維持すると見られています。この見立ては3月10日の大幅下落後も大きく変わらず、JPモルガンアセットマネジメントは米国の景気後退確率を15%から20%に引き上げましたが、それでもまだ80%の確率でソフトランディングの見通しを持っています。また、年末時点でのS&P500指数は6400を予想しており、2024年末に予想していた水準と大きく変わらないものとなっています。加えて、インフレ率の低下傾向も追い風となる可能性があります。昨年まで高騰していた物価上昇率は世界的にピークアウトしつつあり、米国でもエネルギー価格の落ち着きなどからインフレ圧力が和らいできました。ニッセイ基礎研究所の井出主任研究員はこちらの記事で「世界的にインフレ率は低下しており、その上米国の景気は底堅い。結果として2025年は米国株の強さが際立つ年になるだろう」と指摘しています 。これは、実体経済の堅調さがいずれ市場にも評価され、過度な悲観は修正されるという見方です。したがって、足元の景気後退不安はあくまで「心理的なもの」が先行している面が強く、現実の経済がすぐ悪化に向かう可能性は高くないと考えられます。2-2. 短期では利下げ延期リスクあるが、年末にかけては戻すのでは短期的な視点では、依然として金融政策をめぐる不確実性が相場の波乱要因となり得ます。市場では当初、2025年半ば以降に米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに転じるとの期待があり、金利先物市場は6月・7月・10月に各0.25%の利下げを織り込んでいました 。しかし、トランプ政権の掲げる大規模な減税や歳出拡大策、関税引き上げなどが短期的にインフレ(物価上昇)圧力を高める可能性があり、FRBが利下げ開始を遅らせるリスクも指摘されています 。実際、ゴールドマン・サックスはこうした政策の影響を踏まえ米国の成長率見通しを引き下げる一方、インフレ率見通しを引き上げました 。仮に物価上昇が続けば、FRBは景気下支えよりもインフレ抑制を優先し、政策金利の引き下げを当初予定より「延期」せざるを得なくなる可能性があります。FRBが利下げを渋れば、目先の株式市場には逆風となるでしょう。利下げ期待で先行していたハイテク株などは失望売りにさらされやすく、投資家心理も不安定さを増すかもしれません。ただし、こうした短期的な金融政策リスクは一時的なものとの見方もあります。仮にインフレが再燃しそうになっても、トランプ政権も物価高対策に動くと表明しており、FRBと政府が協調してインフレ抑制に努める可能性が高いからです 。実際、「そもそも世界的にインフレ率は低下傾向にある中で、米国景気は底堅い。結果として大幅な株価下落リスクは小さい」と指摘する専門家もいます 。短期的に利下げ開始が数ヶ月遅れる程度であれば、実体経済の強さが勝り、企業業績や投資マインドは年後半にかけて持ち直す可能性があります。年末にかけては市場が落ち着きを取り戻し、株価が回復基調に戻るとの予想も少なくありません。実例として、株式ストラテジスト4人による2025年1月下旬時点でのこちらの予測では「2025年前半はトランプ政権の影響で調整局面があるものの、年後半からは上昇に転じ最高値更新へ」との見通しが示されています 。この背景には、前述したように政策の不透明感が徐々に解消し、実体経済の強さが評価され直す展開が想定されているためです。米国株も同様に、「今年後半には景気の底堅さを反映して株価が持ち直す」との見方が現時点では優勢と言えます。従って、短期的には乱高下があり得るものの、2025年全体で見れば緩やかな上昇基調を維持し、年末にかけて株価は今より高い水準に戻っている可能性が十分考えられます。3. 個人投資家はどうすべきか以上を踏まえ、急落局面において個人投資家はどのように行動すべきでしょうか。結論から言えば、長期的な視点を持つことと、機械的な積立投資の継続が鍵となります。相場の下落局面は不安を感じるものですが、こうした局面でこそ冷静に対応し、将来のための有利な投資行動を取ることが重要です。以下では投資期間の長さに応じた戦略と、具体的な資産運用上のポイントを解説します。3-1. 10年以上の長期目線なら投資継続で一択まず、投資期間が10年以上と十分長い場合は、基本戦略は「継続保有」一択と言ってよいでしょう。歴史的に見ても、株式市場は短期的な暴落を何度も乗り越え、長期では成長してきました。例えばリーマンショックやコロナショックのような大暴落でも、その数年後には株価は回復し過去の高値を更新しています。長期の資産形成を目指す個人投資家にとって、目先の下落で保有資産を手放すことは、長い目で見れば機会損失になりかねません 。実際、ある調査によれば弱気相場が終わった後の1年間でフルに株式市場で投資を続けていた場合のリターンは平均+38.3%だったのに対し、下落時に現金化して株式市場への復帰が遅れた場合は+8.0%にとどまったとのデータもあります 。つまり、下落局面で投資をやめてしまうと、その後の大きな反発局面の恩恵を受け損ねるリスクが高いのです。長期目線の投資家は、今回の下落をむしろ「時間を味方につける」好機と捉えるべきです。積立投資を継続している人にとって、一時的な価格下落はドルコスト平均法の効果を高めるチャンスでもあります。こちらの記事の通り「一時的な株価の下落は、長期積立投資をしている人にとってやめるタイミングではなく、むしろドルコスト平均法を実践する時だ」との指摘もあります 。価格が下がった局面で淡々と買い増すことで、取得単価を引き下げ将来のリターンを高められる可能性があるからです。実際、今回のような相場急落時に冷静さを保ち投資を続けられるかどうかが、長期投資の成果を大きく左右すると言えます。要するに、10年以上先の目標に向けて投資している場合、今回の下落で戦略を変える必要はありません。焦って売却したり、タイミングを計って出たり入ったりするよりも、基本方針を貫き通すことが最善策です。米国株式市場の長期的な成長ストーリー(人口増加や技術革新による経済拡大)は大きく変わっておらず、むしろこの局面は割安に仕込む好機とも考えられます。自分のポートフォリオやリスク許容度を再点検しつつ、「長期投資の王道」を継続する姿勢が肝要です。3-2. 積立継続・増額は良いが、大きな買いのタイミングは難しい次に、積立投資を行っている場合の戦略です。基本的には、現在の積立投資(例えば毎月の買付)をそのまま継続するのが賢明です。先ほど触れたドルコスト平均法の通り、価格が下がったときにこそ同じ金額でより多くの口数を購入でき、将来価格が元に戻るだけでプラスのリターンを得られる可能性が高まります 。実際、「相場が下がったときに買った株は、相場回復で値上がりし、元に戻るだけで利益が出る」ことから「下落時こそ積立継続」を推奨する金融機関もあります 。したがって、今回の下落局面でも積立を止めず、むしろ余裕資金があるなら積立額を一時的に増やすことも検討に値します。一方で、「今が買いの好機だからといって、一度に大金を投じる」のは注意が必要です。確かに大きく下がった直後にまとめて買えれば理想的ですが、現実には誰も株価の大底を正確に見極めることはできません。多くの投資家が「もう少し下がってから買おう」と思って現金のまま待機しますが、そのうちに相場が反転して上昇に乗り遅れてしまうケースがよくあります 。マーケットタイミングを完璧に図るのはプロでも難しく、底値を逃してしまうとリターンを大きく損なう可能性があるのです 。ですから、「ここが底だ」と決め打ちしての一括投資はリスクが高く、避けた方が無難でしょう。つまり、個人投資家にとって現実的なのは“時間分散”による投資です。既に積立投資を行っている人は、その計画を崩さず続けることが最善策ですし、追加投資をする場合も何回かに分けて少しずつ買い増す方法がリスクを抑えられます。逆に、「暴落したから全力で買う」といった衝動的な行動は慎むべきです。投資はあくまで余裕資金で、生活に支障が出ない範囲で続けることが大原則 です。この原則を守りながら、下落局面でも計画的に資産形成を継続することこそ、長期的に見た最良の結果につながるでしょう。2024年夏の相場下落をケーススタディに取りつつ、こうした長期・分散・積立投資の大切さを解説した記事はこちらなので、今後の運用方針に迷われる方は併せてお読みください。

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景気後退懸念で株価は大きく下落。インフレ鈍化と買い戻しで反発し、株式市場は一進一退に|米国市場サマリー

景気後退懸念で株価は大きく下落。インフレ鈍化と買い戻しで反発し、株式市場は一進一退に|米国市場サマリー

先週は、トランプ大統領の報道番組での景気後退シナリオ容認ともみられる発言を契機に、米国の景気後退懸念が市場に広がり、週頭から株価が大きく下落しました。CPI結果でインフレ鈍化傾向が見えたので、一時株価は回復するも、トランプ大統領がEUに対する関税も表明したことで再度下落します。週末には、直近の相場が下落し過ぎているとの見立てから、買い戻しが入り、株価は急上昇して1週間を終えました。為替は、米国の景気後退懸念からリスクオフ先として円が買われ、一時的に円高が進行しました。しかし、米国の株式市場が反発すると、円買いを強めていた海外投機筋が一部資金を引き上げ、円安が進行しました。全体としては、円安が進んだ1週間となりました。米国株式市場:景気後退懸念から株式市場は大幅下落するも、インフレ鈍化と買い戻しで市場は一進一退3月10日(月) 米国株式市場は急落し、景気後退懸念が強まりました。ダウ (-890ドル)、NASDAQ (-4%)、S&P 500 (-2.7%) と大幅安となり、S&P 500は200日移動平均線を割り込む 事態となりました。トランプ大統領の関税政策 や米政府機関閉鎖の可能性 が不安要因となりました。NVIDIA、Tesla (-15.4%)、Coinbase (-17.6%) などハイテク株が売られました。3月11日(火) 市場は続落しましたが、ウクライナとロシアの暫定停戦報道 を受けて下げ幅を縮小しました。S&P 500は一時、最高値から10%以上の下落 となり、調整局面入りが懸念されました。トランプ大統領がカナダからの鉄鋼・アルミニウム関税を50%に引き上げ たことで、景気減速懸念が高まりました。Kohl’s (-24.1%)、Delta Air Lines (-7.3%)、American Airlines (-8.3%) など消費・航空関連株が大幅安となりました。3月12日(水) S&P 500は反発しました。2月の消費者物価指数 (CPI) が前年比2.8%上昇 し、市場予想を下回ったことで、インフレ鈍化が好感されました。NASDAQは1%以上上昇 し、ハイテク株に買いが入りました。Intel (+4.6%)、NVIDIA、AMD など半導体株が上昇。一方、PepsiCo (-2.7%) は投資判断引き下げを受け下落しました。3月13日(木) 市場は大幅下落し、S&P 500は調整局面入りを確認しました。トランプ大統領がEUのアルコール製品に200%関税を課すと表明 したことで、関税合戦が激化し、景気後退懸念が強まりました。NASDAQ (-2%) は売り込まれ、ダウ輸送株指数も急落しました。Intel (+14.6%) は新CEOの就任を好感し急伸しましたが、Adobe (-13.9%) は四半期売上見通しが予想並みだったことで急落しました。3月14日(金) 市場は反発し、売られすぎ感からの買い戻しが入りました。S&P 500とNASDAQは昨年11月6日以来の大きな上昇率 を記録し、主要11セクターがすべて上昇しました。Tesla (+3.9%) は上海工場でのモデルY廉価版生産計画が報じられ買われました。NVIDIA (+5.3%) もCEOの講演を控え期待が高まりました。しかし、S&P 500とNASDAQは4週連続の下落 となり、市場は依然として不安定な状況が続いています。為替市場:トランプ大統領が日本の通貨安を批判し、米国からのリスクオフも進んだことで円高が進む為替は、米国の景気後退懸念からリスクオフで円が買われ、一時147円まで円高が進みました。しかし、株式市場の反発に合わせて、円安に戻しており、全体としては円安が進んだ1週間となりました。現在の円高要因には海外投機筋による円買いもあるとされ、投機筋のポジション解消次第では円安が進むとみられますが、トランプ大統領の関税政策により経済への不透明感が強いため、為替の反発は限定的になっています。今週のマーケット:FOMCは金利据え置きが予想されるも、コメントに注目か今週(2025/3/17-3/21)は、FOMCが開催されますが、現在の市場予想は金利据え置きです。FOMC後の要人発言が今後の金利水準や株価への影響では大事でしょう。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

トランプ関税が二転三転する中、株式市場は下落して調整局面へ。米国リスクオフで円高も進む|米国市場サマリー

トランプ関税が二転三転する中、株式市場は下落して調整局面へ。米国リスクオフで円高も進む|米国市場サマリー

先週は、トランプ大統領の関税政策が二転三転し、市場に不透明感が広がる中で株価は下落し、NASDAQは一時最高値から10%下落となりました。雇用統計も雇用は伸びつつも失業率は上昇し、相場に対して大きなサポートにはなりませんでした。一方、FRBのパウエル議長は「米国の景気は良い状態」と発言し、相場の反発要因となりました。為替は、トランプ大統領が日本政府に対して通貨安政策をやめるように発言し、米国株式市場全体が軟調でリスクオフが進んでいることから、円高が大きく進んだ1週間となりました。日銀副総裁講演を経ての日銀利上げ期待上昇も後押しになっています。米国株式市場:トランプ関税で混迷する中で株式市場は調整局面に、パウエル議長は「景気は良い状態」と発言3月3日(月) 米国株式市場は主要3指数が反落しました。ISM製造業景気指数の低下 や、トランプ大統領がカナダとメキシコへの25%関税発動を表明 したことが影響しました。NVIDIA (-8.7%)、Amazon (-3.4%) など主要ハイテク株が売られました。一方で、不動産、ヘルスケア、公益事業セクター は上昇しました。Tesla (-2.84%) は一時上昇しましたが、終値では下落。Intel (-4%) も一時の上昇を打ち消しました。3月4日(火) 市場は続落し、NASDAQは調整局面に迫りました。トランプ政権がメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税 を導入し、中国製品への追加関税を20%に引き上げ たことで貿易摩擦が激化しました。金融・工業セクターが大きく下落 し、Citigroup (-6.2%)、JPMorgan Chase (-4%) が売られました。NASDAQは一時、昨年12月16日につけた最高値から10%下落する場面がありました。また、Ford (-2.9%)、GM (-4.6%) も下落しました。3月5日(水) 株式市場は反発しました。トランプ大統領がカナダとメキシコに対する関税導入を30日間延期 する可能性を示唆し、これを好感した買いが入りました。主要セクターの中では素材、工業、一般消費財、通信サービスが上昇 しました。一方、エネルギーと公益事業は下落 しました。Ford (+5.8%)、GM (+7.2%)、Tesla (+2.6%) など自動車株が買われましたが、Intel (-2.4%) はトランプ大統領のCHIPS法廃止発言 を受けて下落しました。また、CrowdStrike (-6.3%) は売上高見通しが市場予想を下回り、急落しました。3月6日(木) 市場は反落し、NASDAQは昨年12月以来の調整局面に入りました。トランプ大統領はカナダとメキシコへの関税を1カ月間免除する と発表しましたが、関税政策の混乱が市場の不安を高めました。情報技術、不動産、一般消費財セクターが大幅安 となり、NASDAQは12月16日以来、10.4%下落 しました。Tesla (-5.6%) はベアード証券が「弱気フレッシュ・ピック」に指定したことで下落。Marvell Technology (-20%) は決算が期待を下回り急落し、Broadcom、NVIDIA など半導体株も売られました。3月7日(金) 市場は反発しました。FRBのパウエル議長が「景気は良い状態にある」と発言 し、序盤の下落から持ち直しました。公益事業、エネルギー、情報技術、工業セクターが上昇 しました。Broadcom (+8.6%) は第2四半期の好調な業績見通しを発表し急伸しました。一方、HP Enterprise (-12%) は関税の影響で利益見通しが悪化し下落。また、Costco (-6%) は商品コスト上昇の影響で市場予想を下回る四半期業績を発表し売られました。週間ではS&P 500 (-3.1%)、NASDAQ (-3.45%)、ダウ (-2.37%) と軟調な展開となりました。為替市場:トランプ大統領が日本の通貨安を批判し、米国からのリスクオフも進んだことで円高が進む為替は、トランプ大統領が日本に対して通貨安政策を牽制したことから、円高が進行しつつ1週間が始まりました。5日の内田日銀副総裁の講演から、日銀の利上げ継続を市場は期待し、さらに円高を加速させる要因となりました。米雇用統計がいまいちの結果に終わったことから、米国からのリスクオフが進み、結果として円が買われる局面ともなり、ドル円は大きく円高が進んで1週間を終えています。今週のマーケット:CPIの発表。トランプ関税を前にインフレ傾向は一服するか今週(2025/3/10-3/14)は、米国のインフレ傾向を左右するCPI・PPIの発表があり、今後の利下げ動向にも影響するため要注目です。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

トランプ関税と悪い経済指標で株式市場は大きく下落。NVIDIA決算も回復させられず|米国市場サマリー

トランプ関税と悪い経済指標で株式市場は大きく下落。NVIDIA決算も回復させられず|米国市場サマリー

先週は、消費者信頼感指数の大幅下落と、トランプ大統領のメキシコ・カナダ・中国に対する関税政策の発表が響き、株価指数は大きく下落しました。NVIDIA決算は予想を上回る内容だったものの、粗利率の低下傾向を不安視され、株価の回復要因にはなりませんでした。株式市場は調整局面入りしたと見られています。為替は、トランプ大統領の関税政策による円安進行と、日本の株式市場下落による割安感からの円買いによる円高進行がクロスしましたが、全体としては円安が優位に進み、1週間を円安に進んで終えています。米国株式市場:経済指標悪化とトランプ関税で市場は大きく下落、NVIDIA決算も下落を止められず2月24日(月) NASDAQは1%以上下落し、3営業日続落しました。NVIDIA (-3.1%) の決算発表を前に、AI関連銘柄に売りが広がり、Broadcom (-4.9%)、Amazon (-1.8%)、Microsoft (-1.0%)、Palantir (-10.5%) も下落しました。一方、Apple (+0.7%) は今後4年間で米国に5,000億ドルを投資すると発表し上昇しました。Berkshire Hathaway (+4.0%) は営業利益の過去最高更新を受けて急伸。Nike (+4.9%) もジェフリーズの投資判断引き上げを受けて上昇しました。2月25日(火) NASDAQとS&P 500は4営業日続落し、一時1カ月ぶりの安値を記録しました。消費者信頼感指数が98.3に低下し、2021年8月以来の大幅な下落となった ことが影響しました。NVIDIA (-2.8%) は決算を控え下落し、フィラデルフィア半導体指数を押し下げました。また、暗号資産の下落 を受け、Coinbase (-6.4%)、MicroStrategy (-11.4%) など仮想通貨関連銘柄も売られました。Zoom (-8.5%) は通年の売上高見通しが市場予想を下回り急落しました。2月26日(水) S&P 500はほぼ横ばいで取引を終えました。NVIDIAの決算発表 が控え、市場は慎重な動きとなりました。午後にはトランプ大統領がEUからの輸入品に25%の関税を賦課すると発表 し、メキシコとカナダに対する関税についても4月2日に発動すると表明しました。一方、NVIDIAは上昇して終了し、フィラデルフィア半導体指数も上昇 しました。業種別では情報技術セクターが上昇 した一方、ヘルスケアや主要消費財セクターに売り が出ました。2月27日(木) NASDAQは2.78%下落し、1カ月ぶりの大幅下落 となりました。NVIDIA (-8.5%) は決算発表後に急落し、時価総額が2,740億ドル減少しました。売上高見通しは市場予想を上回ったものの、粗利益率の見通しが予想を下回った ことが嫌気されました。この影響でBroadcom (-7%)、AMD (-5%) も大幅安となり、フィラデルフィア半導体指数は6.1%下落 しました。一方、エネルギー株は原油高を受けて上昇 しました。また、トランプ大統領はメキシコとカナダに対する25%の関税を3月4日に発動すると表明 し、中国に対する追加関税をさらに10%上乗せすることも発表しました。2月28日(金) 市場は不安定な動きの中で反発しました。トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談が決裂したとの報道を受け、株価は一時下落しましたが、その後回復しました。NVIDIA (+4%)、Tesla (+4%) が上昇し、S&P 500を押し上げました。業種別では、S&P 500の11セクター全てが上昇 し、特に金融 (+2.1%)、一般消費財 (+1.8%) が目立ちました。Dell (-4.7%)、HP (-6.8%) は2026年度の見通しが嫌気され下落しました。一方、Snowflake (+4.5%) は売上高見通しが市場予想を上回り上昇しました。為替市場:日銀高田審議委員発言で日銀の早期利上げ観測が強まり、大きく円高に進む為替は、トランプ大統領の関税政策によるインフレ懸念から円安が進んでいますが、一方で日本の株式市場でも大幅な株安が進行しているため、割安感から円が買われる(=円で日本株を買う)動きも見られました。全体としては1週間を通じて円安に振れて終わっています。今週のマーケット:雇用統計が発表。米国経済への懸念は晴れるか今週(2025/3/3-3/7)は、金曜日の雇用統計の発表で米国経済に対する減速懸念が晴れるかに注目です。また、グロース銘柄で注目のCrowdstrikeやBroadcomの決算があるので、こちらもグロース市場に対する影響に注目です。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

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【アドビ決算みどころ】AI機能の収益化で、投資家心理改善なるか(Adobe)

【アドビ決算みどころ】AI機能の収益化で、投資家心理改善なるか(Adobe)

本記事では、アドビ(ADBE)の2024年9-11月期の決算を振り返り、3月12日に控える2024年12月-2025年2月期決算の見どころを解説します。同社の株価は年初来約1%上昇しています。前期の振り返り:業績見通しが予想を下回り、株価下落12月11日に発表された2024年8-11月期決算では、売上高が前年同期比11%増、EPSは同13%増と市場予想を上回る結果となりました。しかし、2025年度通期の売上高見通しが市場予想を下回り、翌日の取引で株価が約14%の下落となりました。売上高:$56.1億(予想:$55億)EPS:$4.81(予想:$4.67) 全体の約75%を占める主要事業セグメントである、デジタルメディア部門の収益は前年同期比12%の成長を遂げ、アナリストらが注目する新規年間経常収益(ARR)は5.8億ドルとなりました。ARRはサブスクリプション(継続課金型)サービスの成長指標とみなされています。アドビは近年、より手頃な価格で同様のサービスを提供するCanvaやFigma、オープンAIやメタ・プラットフォームズ、グーグルらが提供するクリエイティブツールとの競争に直面しており、競合他社に対抗してソフトウェア製品に独自AIモデル「Firefly」を搭載し、ユーザーエクスペリエンスを向上させることに注力してきました。しかし、アナリストらはアドビのAI搭載製品がどれだけ収益化できるか疑問が残る決算であったとし、競争圧力から市場シェアが低下するのではないかという投資家の懸念を払拭しきれぬ結果となりました。ダン・ダーン最高財務責任者(CFO)は、「アドビの戦略、AIイノベーション、そしてクロスクラウドの大きな機会が、2025年以降アドビを有利に導く」と声明文で述べています。12-2月期の注目点:2025年度の売上高見通し2024年12月-2025年2月期のアドビの「売上高予想は$56.6億、EPS予想は$4.97」、平均目標株価は$572で、現在の価格水準に対して約29%の上昇の可能性を示しています。AI機能の収益化見通しはアドビは過去20四半期すべてで利益予想を上回ってきましたが、AI搭載製品が収益に大きく貢献していないことから同社の株価は低い株価収益率で取引され、マイクロソフトやセールスフォースに次ぐテクノロジーセクターのバリュー株として際立っています。モルガンスタンレーのアナリストは、「2025年後半に生成AIによって利益の成長が加速することが、株価上昇の重要なきっかけになると考えている」と述べ、投資家はアドビがAIを理由にサブスクリプション価格を引き上げても成長を維持できるという話を聞きたがっていると指摘しています。新しいAI製品に関する経営陣のコメントや堅調な2025年の業績見通しが示された場合は、株価が上昇する可能性があります。また、アドビは2月12日、業界初の商業的に安全なAIビデオ生成モデル「Adobe Firefly Video Model」をパブリックベータ版としてリリースし、株価が上昇しました。バークレイズのアナリストは、FireflyがCreative Cloudサブスクリプションの一部として収益化できるようになったと指摘し、これがどの程度の貢献をするかはまだ分からないが、同社に対する感情の改善に役立つ可能性があると述べています。

【ブロードコム決算みどころ】好調なAI需要で見通し上方修正なるか(Broadcom)

【ブロードコム決算みどころ】好調なAI需要で見通し上方修正なるか(Broadcom)

本記事では、半導体大手ブロードコム(AVGO)の2024年8-10月期の決算を振り返り、3月12日に控える2024年11月-2025年1月期決算の見どころを解説します。AI支出に対する懸念や、関税や半導体の輸出制限に関するトランプ政権の政策の不確実性の中、同社の株価は年初来から約19%の下落となっています。前期の振り返り:予想を上回る見通しで、株価上昇12月12日に発表された2024年8-10月期決算では、売上高が前年同期比51%増と市場予想をわずかに下回りました。しかし、AIチップの需要が急増するとの見通しを示したことから、時間外取引で株価が約14%上昇し、時価総額は初めて1兆ドルに達しました。売上高:$140.5億(予想:$140.9億)EPS:$1.42(予想:$1.39) セグメント別では、ソフトウェア部門が2023年11月に買収したソフトウェアプロバイダーVMwareの売上が寄与し、売上高前年比約3倍の58億ドルと成長を大きく牽引しました。半導体部門は同12%増の82億ドルとなりました。AI関連の収益は、カスタムAIチップ「XPU」とデータセンター向けのイーサネットネットワークキングポートフォリオが牽引し、前年同期比3.3倍となりました。ホック・タン最高経営責任者(CEO)は、同社が3つの大手クラウド顧客とAIチップを開発していると述べ、2027年度までにAI関連収益は600~900億ドルに達する可能性があると語りました。11-1月期の注目点:2025年度の売上高見通し2024年11月-2025年1月期のブロードコムの「売上高予想は$151億、EPS予想は$1.51」、平均目標株価は$252です。アナリストの多くは、最近の株価下落にもかかわらず、楽観的な見通しを維持しています。好調なAI需要で見通し上方修正なるか直近の決算において、アルファベットやメタ・プラットフォームズなどのブロードコムの大口顧客が今年の設備投資額を大幅に増加し、データセンターやAI向けインフラ構築に投じる方針を示したことから、半導体部門の売上成長への関心が高まっています。2025年、アルファベットの設備投資予定額は前年比43%増の750億ドル(約11.5兆円)。メタは、AI関連の投資を最大で前年比59%増の650億ドル(約10.2兆円)に増やす計画を発表しました。アナリストは、ブロードコムのAI製品需要が堅調であり、カスタムAIチップにおけるブロードコムの優位な立場を考慮すると、2025年度の売上高見通しを上方修正する可能があると指摘しています。また他の最近のニュースでは、2月15日に、ブロードコムが半導体大手インテルの半導体設計とマーケティング部門の買収に関心を示していることが報じられました。インテルのこれらの事業はシェア低下に直面しているものの、2024年には約490億ドルを売り上げ、20%台半ばの営業利益率を達成しています。

【クラウドストライク決算みどころ】好調なクロスセルで成長再加速なるか(CrowdStrike)

【クラウドストライク決算みどころ】好調なクロスセルで成長再加速なるか(CrowdStrike)

本記事では、米サイバーセキュリティ企業クラウドストライク(CRWD)の2024年8-10月期の決算を振り返り、3月4日に控える2024年11月-2025年1月期決算の見どころを解説します。同社の株価は年初来から約14%上昇し、S&P500指数の上昇率1.5%を大きく上回るパフォーマンスとなっています。前期の振り返り:利益見通しが予想を下回り、株価下落11月26日に発表された2024年8-10月期決算では、売上高が前年同期比29%増と市場予想を上回る結果となりました。しかし、2024年11月-2025年1月期の利益見通しが市場予想を下回ったことから、株価は時間外取引で約1.5%下落しました。売上高:$10.1億(予想:$9.82億)EPS:$0.93(予想:$0.81) サブスクリプションサービスの成長指標とみなされる、年間経常収益(ARR)は前年同期比27%増の40億1800万ドル。そのうち1億5300万ドルは四半期中に追加された新規ARRでした。また、クラウドストライクはモジュールをバンドルで販売しており、クロスセルも重要な成長の原動力となっています。8-10月期にモジュールの採用は加速し、採用率は5つ以上のモジュールが66%、6つ以上が47%、7つ以上が31%、8つ以上のモジュールで20%に増加しました。ジョージ・カーツ最高経営責任者(CEO)は、声明文にて「顧客は(主力製品の)Falconプラットフォームの技術的優位性とサイバーセキュリティ統合のメリットに引き続き注目している」と説明し、サイバーセキュリティAIプラットフォームとしてのクラウドストライクの明るい未来に自信を持っていると述べています。11-1月期の注目点:業績見通しとモジュール採用率2024年11月-2025年1月期のクラウドストライクの「売上高予想10億、EPS予想は$0.86」、平均目標株価は$414です。同社の株式は機関投資家とヘッジファンドによる保有が7割以上と高いことから、株価は大口投資家の取引に左右される可能性があります。堅調な業績で投資家心理改善なるか直近のアナリスト調査では、システム障害による顧客の離脱は最小限であり、Falconプラットフォームの有効性に対する顧客の評価は大きく変化しなかったことが示されています。むしろ顧客はより多くのモジュールを追加または、クラウドストライクとの契約期間を延長しており、アナリストらはクロスセルやアップセル戦略による収益増加の可能性も指摘しています。今回の決算発表で、新規ARRが予想を大きく上回り、今年後半に成長の再加速が見込まれれば、システム障害の影響は限定的であったと投資家に安心感を与える可能性があります。また、2024年11月-2025年1月期にFalconプラットフォームは、ドイツ連邦情報技術安全局 (BSI) が定めるクラウドセキュリティの監査基準「C5 コンプライアンス」を達成し、米国連邦政府のクラウドサービスを対象とした認証制度「FedRAMP(Federal Risk and Authorization Management Program)」を取得しました。これら2つの新たな認証により、同社は両国の連邦政府機関からより多くの契約を獲得し、売上高に貢献したと考えられています。

経済コラム

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【米国株見通し】景気後退懸念で調整売り、FANG+指数の今後と個人投資家が考慮すべき事は?

【米国株見通し】景気後退懸念で調整売り、FANG+指数の今後と個人投資家が考慮すべき事は?

本記事では、FANG+指数の下落要因について概説し、個人投資家が考慮すべき事項や今後の見通しについて紹介します。FANG+指数の構成銘柄の入れ替え基準と過去のパフォーマンスについてはこちらの記事で解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。※FANG(ファング)は、Facebook・Amazon・Netflix・Googleの4銘柄の頭文字を意味し、これらの銘柄にアップル、マイクロソフトを含む6銘柄を加えた大型テクノロジー10銘柄に10%ずつ等配分投資をする株価指数がFANG+指数です。米国株調整で、FANG+は大幅下落2025年、ドナルド・トランプ大統領の関税政策やその他の政策の不透明感による貿易戦争や景気後退への懸念から、米国株は2023年以来初の調整局面に入りました。S&P 500指数は2月19日の高値から10%以上下落し、ハイテク銘柄で構成されるFANG+指数は、投資家がリスク回避志向を強めていることから市場全体よりも大きく下落しています。株価の一時的な調整はよくあることLPL Researchによると、1928年以降に米国株は10%以上の調整を1.1年ごと、15%以上の大幅な調整を2年ごとに迎えており、調整相場でのピークから底までの平均下落率は13.8%となっています。一方、1950年以降においてS&P 500指数は調整局面に入ってから3ヶ月後には平均6.5%、6ヶ月後には12%のリターンを記録。中でも、経済政策の不透明感が株安を引き起こした事例では、短期的に市場が不安定化したものの、長期的には米国株の買いの好機となりました。ただし、大きな買いに積極的になるべきというわけではありません。一般的に、調整局面での底打ちは一度限りの出来事ではなく、プロセスとして生じます。ヤルデニ・リサーチによると、平均的な調整期間は115日であり、株価が持続的に上昇するには時間がかかるので、投資家は時間をかけて少しずつ株を買い戻すことが賢明と言えます。ハイテク株の見通しはマクロ経済状況に依存また、相場に対する投資家心理を反映する指数として知られるボラティリティ指数は依然として20を超え、政策や経済成長に対する市場参加者の強い警戒感が続いていることを示しています。FANG+の見通しは不透明が強く、政策金利の引き下げが確実視されればハイテク株は反発する可能性がありますが、中国、メキシコ、カナダからの輸入品に対する関税がインフレ懸念の長期化を招けば、ハイテク企業の利益率に重しとなる可能性があります。さらに、景気後退が起こった場合は、消費者や企業のテクノロジーへの支出が減り、株価にさらなる圧力がかかることが想定されます。FANG+への投資を検討する際には、リスクの許容度と投資期間を考慮する必要があります。マクロ経済の見通しが明確になるまでハイテク株は低迷する可能性がありますが、経済状況が改善すれば大幅な上昇も期待できます。一方、インフレと景気後退への懸念が高まる状況では、特定のセクターに特化するのではなく、ボラティリティの低い堅実な資産へ投資をし、より分散されたポートフォリオをを検討するのも手です。マーケットの底打ちはいつか市場は経済成長の鈍化をある程度織り込んでいるため、今後数か月で景気後退リスクがさらに高まるかどうかが当面の注目点となります。市場の底打ちには、1) 実体経済が堅調であり、景気後退リスクが限定的であることを示唆するデータ(経済指標)、2) FR​​Bの金融緩和シグナル、3) 政権のスタンス変化等が観測されることが必要と考えられます。ただし、経済指標が悪化した場合には市場の懸念が裏付けられますが、堅調な指標が維持されたとしても、景気後退を回避できると市場が十分に確信するまでに時間がかかる可能性があります。政策による下振れリスクが最も懸念されていることを考えると、政策スタンスの変化や政権が経済支援のために政策を調整する用意があるといったメッセージを発することが、明確な回復への道となると想定されます。

【米国株】下落相場・調整局面こそ、NISA投資に最適な理由

【米国株】下落相場・調整局面こそ、NISA投資に最適な理由

相場の下落や調整局面では投資を続けることへ不安を感じるものですが、投資銘柄の長期的な成長が期待できる場合、NISAで投資をする好機とも考えられます。本記事では、下落相場・調整局面がNISA投資に最適な理由を解説のうえ、米国株市場の状況を見ていきます。調整局面での投資は、NISAを有効活用しやすい1. 同じ投資額でより多くの非課税資産を形成NISA制度では投資枠の上限が決まっているため、 同じ投資額で多くの口数(または株数)を購入可能な値下がり時に投資を行うと、より多くの資産を積み上げることができます。2. 優良銘柄を割安で取得可能(バーゲンセールのような状態)相場下落時は、多くの銘柄が一時的に本来の価値より過小評価されることが起こります。投資銘柄の本質的な成長ストーリーが大きく変わらない場合、相場回復後のリターンを最大限に享受できます。3. 配当利回りが上昇の可能性調整局面であっても、多くの優良企業や投資信託は配当金を維持する傾向にあり、投資元本に対する配当利回りは上昇します。NISA口座での取引は、売買益だけでなく配当金や分配金も非課税のため、より多くのインカムゲインが期待できます。M7を中心に割高改善がすすむ米国株市場2025年、多くの投資家は昨年につづき米国株市場が堅調に推移すると予想していました。しかし、貿易戦争や景気後退への懸念、AI相場崩壊の兆しが、米国株下落の波を引き起こしています。現在、S&P500指数、ナスダック100指数、ダウ平均株価は、支持線として注視される200日移動平均線を下回り、各指数とも昨年11月の選挙当日の水準を下回っています。株価の割安度を判断する際に用いられる予想PER(株価収益率)に着目すると、2025年1月末から3月10日にかけて、S&P500指数の予想PERは22.1倍から20.4倍と約8%調整しています。調整は割高感のあった大型テクノロジー企業7社「マグニフィセント・セブン(M7:アップル、マイクロソフト、エヌビディア、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、テスラ)」を中心とし、M7は同期間に予想PERは30.9倍から25.2倍と約18%調整しています。一方、エネルギー・公益事業株をはじめとするバリュー株には新たな資金が流入しています。LSEGリッパーによると、米国のバリュー株の予想PERは現在17.6倍で、米国のバリュー型ETFは今月18億ドルの流入を記録しています。重要なのは、政策金利動向と企業業績2025年は政治的な不安定さから株価の乱高下が想定され、長期的な視点で投資を行い、短期的な変動に耐えることが求められます。政策金利動向に目を向けると、2月の米消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の軟調であったことから、米連邦準備理事会(FRB)は6月から利下げを再開し、年内に3回の利下げを実施するとの見方が高まっています。一方、現時点では米国株のEPS下方修正は限定的となっており、投資家はマーケットの底打ちがいつかを探ろうとしています。今後の相場の行方については政策動向のほか、短期的には3月18-19日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で発表される経済見通しやパウエル議長の会見が鍵となります。

中立金利とは?米金利高・ドル高は継続の見通し

中立金利とは?米金利高・ドル高は継続の見通し

本記事では、「中立金利」について解説のうえ、米国の中立金利を巡る市場関係者の見方を紹介いたします。中立金利とは中立金利とは、景気が過度な刺激や抑制を受けず、経済が安定して成長するための政策金利水準です。市場では政策金利のターミナルレート(利下げや利上げの終着点)として注目され、政策金利が中立金利を上回る場合は金融引き締め的、下回る場合は金融緩和的となります。米国の中立金利は3%予測米連邦準備理事会(FRB)が金融政策の誘導目標として設定する政策金利は、FF(フェデラルファンド)レートとして知られ、FRB高官が推定する中立金利は「ロンガーラン」として四半期に一度経済見通し資料で発表されています。2024年は、ロンガーランが四半期予測ごとに上方修正され、12月会合で発表された予測中央値は3%と、前年の2.5%から上昇し、2018年以来の高水準となりました。ロンガーランを3.5%以上と推定するFRB高官の数も6名へと増えました。FRB高官の多くは中立金利について、コロナショック以前の低水準から上昇した公算が大きいとしていますが、最終的にどのような水準に落ち着くかについては不確実性が高まっていると指摘しています。2024年12月会合におけるFRB高官の政策金利見通し | Source: The Federal Reserveまた、トランプ新政権の経済政策の影響について、パウエル議長は「予測に組み込み始めた者もいれば、そうしなかった者もいた」と説明しており、12月の経済見通しでは政策リスクは限定的な織り込みとなっています。ロンガーラン上昇で金利高止まりが意識市場関係者の間では「より高い中立金利に移行」し、すでに政策金利は中立金利に相当近づいたと可能性があると指摘する声が複数上がっています。中立金利の上昇は、利下げペースが緩むだけでなく、政策金利の到達目標であるターミナルレートが上昇するため、利下げの下限が上昇し、金利の高止まりにつながる可能性があることを念頭に置く必要があります。1月8日に開示された12月会合の議事要旨は「委員会は政策緩和のペースを緩めるのが適切な時期にある、もしくは近い段階にあると示唆した」とし、「一部の参加者は、委員会が9月に緩和政策を開始したときよりも政策金利は中立値に大幅に近づいたと指摘した」、「多くの参加者はさまざまな要因によって、今後数四半期の金融政策決定においては慎重なアプローチが必要なことが強調されたと示唆した」と記され、当面の金利据え置きの可能性を示しています。FedWatchによると、議事要旨の発表後の金融市場は、FRBが5月会合までは政策金利の引き下げを見送り、6月会合以降に1回の0.25%利下げを実施するとの見方を織り込んでいます。2025年内に2度目の利下げが行われる可能性は50%程度となっています。対米利差拡大でドル高進展か一方、欧州中央銀行(ECB)は今後4回連続の利下げを予想し、イングランド銀行(英中央銀行)も2025年緩和継続方針を示していることから、市場では各国通貨の対米金利差が拡大し、2025年前半にかけてドル高が全面的に進む可能性が指摘されています。また、トランプ次期大統領の関税引き上げ公約もドル高基調を後押ししていますが、低金利やドル安を志向するトランプ氏がドル高をどれほど許容するのか、けん制に動くのか注目が集まります。2025年のドル円相場見通しについては、以下の記事を合わせてご覧ください。

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【新NISA】一括投資と毎月積立どちらがいい?メリットとデメリットを解説

【新NISA】一括投資と毎月積立どちらがいい?メリットとデメリットを解説

本記事では、一括投資と毎月積立のメリットとデメリットを紹介し、新NISAでの実践方法を解説します。新NISA制度(少額投資非課税制度)の概要については、以下の解説記事をご覧ください。一括投資と毎月積立のメリットとデメリット一括投資は早期投資でリターンを最大化特徴投資資金を一度に全額投入運用成果が短期的には投資タイミングに依存メリット市場上昇時の利益最大化: 相場上昇する局面では高いリターンを得やすいデメリットタイミングリスク: 投資時期が市場のピーク付近の場合、大きな損失を被る可能性がある資金拘束: 一度に大きな資金を投資するため、流動性が低下一括投資は、リスクを許容しながら、将来の市場上昇を見越して積極的にリターンを追求したいと考える投資家に適しています。世界最大級の資産運用会社Vanguardによると、1976年から2022年にかけて一括投資は積立投資(ドルコスト平均法)と比べて約68%の確率で高い年間リターンを達成しています。これは市場が上昇傾向にある場合、より早く投資資金を市場に投入することでリターンを最大化できるためです。また、ポートフォリオに占める株式の比率が高いほど一括投資の優位性は大きくなります。毎月積立は投資のリスクを分散特徴一定額を定期的に投資投資タイミングが分散され、購入単価が平準化メリットリスク分散: 株価に関係なく投資するため、価格変動リスクを軽減デメリット上昇相場でのリターン低下: 一括投資と比べて、市場が継続的に上昇している場合はリターンが低くなる資産形成に時間がかかる: 投資額を積み上げるのに長期間を要する一方で積立投資は、投資タイミングを分割することで短期間の市場変動リスクを軽減し、特に市場が急落した場合に、一括投資よりもリターンが良いことがあります。そのため、市場の変動に対して冷静でいたい人や、短期損失やリスクを抑えつつ長期的に安定した資産形成を目指す投資家に向いています。新NISAでの一括投資と毎月積立の実践方法年間投資枠は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」で計360万円新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります。つみたて投資枠は、金融庁の基準を満たした投資信託について購入できる枠で、年間投資枠は「120万円」までです。一方、成長投資枠は、投資信託のほか個別株等も購入できる枠で、年間投資枠は「240万円」までです。新NISAで一括投資できるのは、成長投資枠のみつみたて投資枠は積立での投資を前提とされており、原則毎月10万円が上限となっています。そのため、年間投資枠を一括投資することはできません。成長投資枠については、一括投資と積立投資どちらも利用可能なため、年間投資枠の240万円までは一括投資できます。毎月積立する場合は月額30万円まで毎月積立を実践したい方は、つみたて投資枠の10万円と成長投資枠の20万円を合計した30万円までは新NISAで毎月積立投資が可能です(ボーナス月を設定した場合は、年間投資枠の範囲内で追加買付が可能)。ブルーモ証券では、毎月のつみたて投資を設定すると、自動で月々の投資額をつみたて枠と成長投資枠の1:2の比率に分けて買付を行うため、意識せずともNISA枠が効率的に埋まるように投資ができます。ブルーモ証券のかんたんNISAの詳細についてご関心のある方は、以下をご覧ください。

出金はいつしたら良い?長期資産形成を成功させるためのコツ

出金はいつしたら良い?長期資産形成を成功させるためのコツ

資産運用で利益が出ると、「利益を確保して出金したい」「損失が出る前に売ってしまいたい」と感じる方も多いかもしれません。しかし、長期的に資産を増やす観点から考えると、短期的な利益確定には慎重な判断が必要です。以下に、出金を検討するときに思い出したい、資産運用を成功させるための3つの重要なポイントを詳しく説明します。1. 利益確定によるデメリットを理解する資産がプラスに転じると、売却してその利益を確定したくなるものですが、長期的に資産を成長させるためには、短期の利益確定にはいくつかのリスクとデメリットがあります。税金が発生する資産を売却して利益が出た場合、約20%の税金が利益から差し引かれます。その結果、再投資する際の元本が減り、資産を成長させるための複利効果も小さくなります。長期的な運用を目指すのであれば、売却せずに資産を保有し続けることで、税金の支払いを先送りし、資産が複利で成長する恩恵を最大限に受けることができます。タイミングの見極めが難しい短期的な利益確定では、相場の上昇・下落を予測して適切なタイミングを見極める必要があり、これはプロであっても容易ではありません。売却した後に相場がさらに上昇することも多く、保有し続けていれば得られたはずのリターンを逃してしまう可能性が高くなります。こうした理由から、長期的な視点で持ち続けるほうが、安定した成長を期待できます。複利効果を失う複利の力は、長期的に資産運用を続けることで最大限に発揮されます。利益確定によって出金を繰り返すと、その都度複利効果が断たれ、最終的なリターンが小さくなりがちです。資産を保有し続け、再投資することで「利益が利益を生む」サイクルを活かすことができ、長期的に安定した資産成長が期待できます。たとえば、10年間5%の複利で運用した場合、元本は1.63倍になりますが、毎年の利益確定があるとこの成長は抑えられます。出金の判断は慎重に行い、複利の力が長期的に働くことで資産を着実に増やしていくことを意識しましょう。2. 出金は「本当に必要なときに、必要な分だけ」に留める資産運用の基本方針として、出金のタイミングを「資金が本当に必要なとき」に限定するのが賢明です。急な出費や緊急の資金が必要な場合には、必要な額だけを引き出し、残りの資産はそのまま運用を続けることが、資産成長を最大化する上で大切です。出金をこのように「必要最小限」に留めることで、資産が運用される時間を長く保ち、最終的なリターンを大きくすることができます。3. 短期の相場変動を気にしすぎない資産運用をしていると、短期的な相場変動によって一喜一憂しがちですが、こうした変動に過剰に反応することは、長期的な成長の妨げになりがちです。人間は、「利益があるうちに確保したい」「損失をできるだけ避けたい」という心理が強く働くため、少しでも相場が上昇すると利益確定したくなり、逆に下落すると早めに売却したくなる傾向にあります。しかし、こうした感情的な反応が続くと、資産運用の本来の目標である「長期的な資産成長」に悪影響を及ぼす可能性が高まります。たとえば、過去30年間で米国株(S&P500指数)は平均年率8%で成長してきましたが、年ごとのリターンはプラスとマイナスの変動がありました。長期的に見れば、リーマンショックやコロナショックのような大きな下落も、運用を続けることで回復し、その後の成長を享受することができたケースが多くあります。まとめ:出金は生活の必要ベースにして、長期目線の運用を続ける資産運用で利益が出たときに出金したくなる気持ちは自然なものですが、長期的な資産成長を目指すなら、短期的な利益確定は慎重に検討すべきです。「本当に必要なときに必要な分だけ出金し、それ以外は淡々と運用を続ける」ことで、資産が複利の恩恵を最大限に活かして成長しやすくなります。短期の変動に囚われず、計画に沿った運用を続けることで、最終的な資産成長が期待できるでしょう。

移管してもなくならない?意外と知られていない「NISA口座移管」の真実

移管してもなくならない?意外と知られていない「NISA口座移管」の真実

本記事では、意外と知られていない「NISA口座移管」の仕組みを徹底解説していきたいと思います。NISA口座移管のポイントは、①NISA口座はニーズに合わせて毎年異なる金融機関で開設できる、②一度NISA口座で投資した資産は口座移管してもずっと非課税(実は「移管」してもNISA口座はなくならない)、③政府が金融機関横断でNISA残高を把握するので複数開設しても安心、という3点になります。NISA口座移管のポイントNISA口座はニーズに合わせて毎年異なる金融機関で開設できる「NISA口座は1人1口座」というイメージが強いかも知れませんが、実は「1年間でNISA口座で取引できる金融機関は1つだけ」が制度の正しい説明になります。「NISA口座は1年に1金融機関」なので、毎年NISA口座を移管して、異なる金融機関でNISA口座をいくつも開いていくことも制度上は可能です。NISA口座を利用する金融機関を移管(変更)する理由としては、①「A証券会社で口座開設したが何を買って良いか分からなかったので、もっと分かりやすいB証券会社に移管する」②「C証券会社でおまかせ運用にNISAを使っていたが、個別株も取引したくなったのでD証券会社に移管する」③「E証券会社ではいま投資したい商品がないので、F証券会社に移管する」といったものが考えられます。一度NISA口座で投資した資産は口座移管してもずっと非課税NISA口座は自由に移管できるとして、次に出てくる疑問は「NISA口座を移管した場合、既に投資した資産はどうなるのか?」だと思います。結論から言うと、NISA口座で一度投資した資産は生涯ずっと非課税です(2024年からの新NISAの場合)。つまり、投資した資産から支払われる配当も非課税ですし、売却した際に出てくる利益も非課税です。NISA口座を移管するためには、現在投資しているNISA口座を「廃止」する必要がありますが、これには「勘定廃止」と「口座廃止」の2パターンがあります。「勘定廃止」はNISA口座と残高を残したまま、現在利用中の金融機関でのNISA投資をやめる(=別の金融機関に移管する)もので、この場合だとNISAで投資した資産は引き続き非課税のままとなります。「口座廃止」はNISA口座そのものを廃止するので、現在利用中の金融機関にNISA口座と資産は残りません。「口座廃止」をしたい場合、基本的にはご自身でNISA口座にある資産を売却いただく必要があります。上記から、NISA口座移管の際に「勘定廃止」を選べば、既にNISA口座で投資した資産は非課税のまま以前の金融機関で保有できます。政府が金融機関横断でNISA残高を把握するので複数開設しても安心NISA口座は毎年移管できて、移管することで既に投資した分の節税メリットが失われることがないことまでは分かった上で気になるのが、色々な金融機関でNISA口座を作って投資して、それを忘れてしまうことがないかという点かと思います。前提として、NISA制度の重複利用を防止するため、政府は個人をマイナンバーで紐付けて非課税適用を把握しているので、税務署(国税庁)には誰がどこでNISA口座を開設しているかという情報があります(なので、仮にどこでNISA口座を開いたか忘れても税務署に聞けば教えてくれます)。さらに、新NISA制度では個人の生涯を通じた上限となる買付残高が存在するため、個人の保有残高を政府がクラウドで把握・管理することになります。NISAの生涯残高が上限に達するのは早くても2028年末のため、まだ政府による残高管理は始まっていませんが、2026年を目処に政府のクラウドによる把握・管理が始まるとされています。なので、仮に複数の金融機関でNISA口座を開設・投資して、過去にどこで投資したか忘れてしまった場合でも、政府のクラウドで情報は把握できるので、資産にアクセスできなくなることはないようになっています。NISA口座移管の方法具体的にどのようにしてNISA口座を移管できるかを以下解説します。現在NISA口座を開いている金融機関で「廃止通知書」をもらうまず、現在NISA口座を開いている金融機関にNISA口座を廃止したい旨を伝えて、「廃止通知書」をもらいます。この際、上述したように、既にNISA口座で投資している資産がある場合、資産を維持しつつ「勘定廃止通知書」を貰い、NISA口座を開設したが投資しないでいた場合は「口座廃止通知書」を貰うのがお勧めです。「廃止通知書」は郵送で送られることが多いので、ご自宅で受け取る必要があります。移管する先の金融機関に「廃止通知書」を提出する次に、NISA口座を移管して新たに開設したい金融機関でNISA口座開設の申込みをして、先ほどの「廃止通知書」を提出します。「廃止通知書」が提出できたら、税務署の審査を待って(2週間ほどかかります)、NISA口座の開設が完了します。「廃止通知書」の提出方法は、制度改正があり、2024年からオンラインでも可能になっています。しかし、一部の金融機関では郵送手続きを求められることがあるので、その場合はご自身で送付いただく必要があります。ブルーモ証券では、スマホで「廃止通知書」の写真を撮り、アップロードするだけで提出が完了するようになっています。移管する場合は前年中に作業を終えるように注意「NISA口座は1年に1金融機関」なので、仮にNISA口座を移管しようと思っても、既に元の金融機関でNISA口座を利用していると、その年の間はNISA口座を移管できません。例えば、NISA口座で積立投資を設定していると、1月に元の金融機関のNISA口座にて投資がされた時点でその年はNISA口座が移管できないことになります。NISA制度は、口座移管をスムーズにするため、NISA口座の移管手続きを前年の10月から開始できるようにしています。つまり、移管したい年の1月から積立投資が行われてNISA口座を移管できなくならないように、前年のうちから移管手続きができます。NISA口座を移管される際は、自由に手続きができる「10月〜12月」をひとつのタイミングとして検討されることをお勧めします。ブルーモ証券でも「かんたんNISA」機能を提供ブルーモ証券では、簡単にNISA口座を活用して投資できる「かんたんNISA」機能を提供しており、著名投資家のポートフォリオをコピーしたり、自分の好きな銘柄で組んだポートフォリオで、NISA制度をフル活用することができます。ご関心ある方は、是非以下サイトをご覧ください。

Glossary

用語集

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