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FANG+とは?構成銘柄の選定基準や過去リターンを徹底解説

FANG+とは?構成銘柄の選定基準や過去リターンを徹底解説

本記事では、「FANG+」指数の構成銘柄や比率、銘柄の入れ替え基準と入れ替え時期、過去のパフォーマンスについて詳しく解説します。FANG+とは「FANG(ファング)」とは、もともと2015年に株式評論家ジム・クレイマー氏によって作られた造語でFacebook(現Meta Platforms)AmazonNetflixGoogle(Alphabet傘下)の4銘柄の頭文字を意味します。これらの銘柄に、世界の時価総額上位2銘柄であるアップル、マイクロソフトを含む6銘柄を加えた大型テクノロジー10銘柄に10%ずつ等配分投資をする株価指数がFANG+指数で、米インターコンチネンタル取引所(ICE)が2017年9月26日から提供を開始しました。構成銘柄と入れ替え基準構成銘柄の入れ替えは四半期ごとに行われ、3月、6月、9月、12月の第3金曜日の後に変更が適用されます。銘柄はFANG(メタ、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット)、アップル、マイクロソフトの6銘柄を主軸とし、残り4銘柄は以下の要素に基づいてランク付して抽出され、現在は電気自動車のテスラ、半導体大手のエヌビディアとブロードコム、データプラットフォームのスノーフレークが選出されています。時価総額(35%の重み)平均日次取引高(35%の重み)売上高対株価比率(15%の重み)1年の売上成長率(15%の重み)過去には、中国のアリババやバイドゥ、Twitter(現X)、 アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などが選出されていました。過去のパフォーマンスICEの分析によると、NYSE FANG+指数は2014年9月19日から 2024年8月30日までの期間に年率27.62%のリターンを上げています。一方、同期間のNASDAQ-100は18.18%、S&P 500は12.99%、S&P 500情報技術セクターは22.06%のリターンとなっており、他の主要な米国指数を一貫して上回っています。出所:ICEその他のテクノロジー銘柄インデックス(Magnificent 7やUS Tech Top20)とのパフォーマンス比較や、FANG+に投資する場合のオプションについてご関心のある方は、以下の記事もぜひご覧下さい。

【アドビ決算みどころ】AI製品好調で、株価続伸なるか(Adobe)

【アドビ決算みどころ】AI製品好調で、株価続伸なるか(Adobe)

本記事では、アドビ(ADBE)の2024年3-5月期の決算を振り返り、9月12日に控える2024年6-8月期決算の見どころを解説します。同社の株価は年初来約3%の下落となっていますが、6月上旬の安値から過去3か月で30%以上上昇しています。オプション市場は決算発表後に約±4%の変動を織り込んでいます。前期の振り返り:通期見通し上方修正で株価大幅上昇6月13日に発表された2024年3-5月期決算では、売上高が前年同期比10%増、EPSは同15%増と市場予想を上回る結果となりました。また、2024年度通期の売上高見通しも上方修正したことを受けて、時間外取引で株価が16%超の上昇となりました。売上高:$53.1億(予想:$52.9億)EPS:$4.48(予想:$4.39) 全体の約75%を占める主要事業セグメントである、デジタルメディア部門の収益は前年同期比11%の成長を遂げ、アナリストらが注目する6-8月期の新規年間経常収益(ARR)は4.6億ドルと、市場予想の4.35億ドルを上回りました。ARRはサブスクリプション(継続課金型)サービスの成長指標とみなされています。アドビは近年、より手頃な価格で同様のサービスを提供するCanvaやFigma、AI に重点を置いた新興スタートアップなどとの競争に直面しており、一部のアナリストから「アドビはこれまで企業としての高い競争優位性を維持してきたが、AI はこうした競争障壁の多くを崩し、時間の経過とともに競争圧力が高まっている」と指摘されていました。しかし、今回の決算ではAI 搭載製品を拡充しユーザーエクスペリエンスを向上させることに注力する同社の取り組みが、顧客の支持を集めていることを示唆する結果となりました。ダン・ダーン最高財務責任者(CFO)は、「市場をリードする当社の製品、強力な実行力、そして世界クラスの財務規律により、2024年後半以降も当社は好調な状態にあります」と声明文で述べています。6-8月期の注目点:デジタルメディア部門のARRの成長見通し2024年6-8月期のアドビの「売上高予想は$53.7億、EPS予想は$4.53」、平均目標株価は$610です。デジタルメディア部門の好調な成長が予想されることから、市場関係者は同社の見通しに強気です。下半期は価格設定が追い風になる予想注目は引き続き、デジタルメディア部門の新規ARRの成長見通しです。下半期は、過去2年間におけるCreative Cloudの値上げ実施の成果に加えて、現在ベータ版であるさまざまなAI搭載製品がリリースされることで収益化が開始し、ARRの成長に貢献すると想定されています。特に、アドビの最近の成長は「Acrobat AI Assistant」と同社の画像生成AI「Adobe Firefly」の貢献が大きく、Firefly AIは発売以来90億枚を超える画像を生成しています。また、決算後の10月14日-16日には、毎年恒例の 「MAX Creativity Conference」 がマイアミでの開催を予定しており、大きく注目を集めています。

弱い経済指標とアノマリー警戒で株式市場は大きく下落。9月利下げ期待で円高も進む|米国市場サマリー

弱い経済指標とアノマリー警戒で株式市場は大きく下落。9月利下げ期待で円高も進む|米国市場サマリー

先週は、米国の製造業指数と雇用統計の結果が弱かったことから米経済の景気後退が再び懸念される中、歴史的に9月に株価が下がりやすいアノマリーも警戒され、大幅に株価の下がった1週間でした。特にNVIDIAをはじめとするグロース株の下落が顕著となりました。為替は、経済指標の結果により、FRBの9月利下げが大幅になるとの期待も生まれ、円高が大きく進んだ1週間でした。米国株式市場:経済指標の弱さと9月アノマリー警戒で株式は大幅下落9月2日(月) レイバー・デーの祝日で株式市場は休場9月3日(火) 米国株式市場は、主要3指数が大幅に下落しました。特にNVIDIAは約10%の急落を記録し、同社の時価総額は2,790億ドル減少しました。フィラデルフィア半導体指数(SOX)は7.8%安と、米製造業の活動低迷を示す指標が市場心理に悪影響を与えました。Alphabetは3.6%、Appleは2.7%、Microsoftは1.8%下落するなど、ハイテク株も軒並み下落しました。市場全体では、不安心理を示すVIX指数が急上昇しました。9月4日(水) 市場は不安定な取引を経て、S&P 500とNASDAQは小幅に下落し、ダウ工業株30種はわずかに上昇しました。NVIDIAは引き続き1.7%の下落を見せ、AppleやMicrosoftも弱含みました。JOLTS(雇用動態調査)では求人件数が低下し、労働市場の緩和が続いていることが示され、FRBが9月の会合で利下げを行う可能性が高まっています。公益事業株や主要消費財が堅調でした。9月5日(木) 市場では、S&P 500とダウがマイナス圏で引け、NASDAQは小幅高でした。Teslaは約5%上昇し、S&Pの一般消費財セクターを牽引しました。FRBの金融政策への注目が続く中、テクノロジーセクターは約4.8%の下落となりました。9月6日(金) 米8月雇用統計の発表後、労働市場の減速が確認される一方で、FRBの利下げ幅に対する市場の不透明感が続き、主要3指数が下落しました。特に、NVIDIA、Tesla、Alphabet、Amazonといった大型グロース株が大きく下落し、フィラデルフィア半導体指数は4.5%の下落を記録しました。各種経済指標が弱かったことに、9月は歴史的に株式パフォーマンスが低いことを警戒する市場心理が重なり、市場全体が大きく下落した1週間でした。指標によってFRBの9月利下げ幅が広がるかは不透明な中、景気後退懸念の方が相場をリードした形になります。為替市場:弱い経済指標で9月利下げへの期待が高まり大幅な円高進行為替は、製造業指数と雇用統計の弱さから、米国における利下げが想定よりも早いペースで進むとの期待が形成され、大きく円高に進みました。一方、日銀は年内に追加利上げに踏み切る期待は継続しており、円高進行の下支えになっています。今週のマーケット:FOMC直前のCPI公表に注目今週(2024/9/9-9/13)は、9月利下げを決めるFOMC直前の重要経済指標であるCPIが公表されます。ここでCPIの沈静化が明確になれば、9月利下げが大幅になる期待が形成され、株高に振れる可能性があるので要注目です。ブルーモの公式Xでも決算や指標の速報をお届けするので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

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債券の黄金時代?債券ETFへ注目が集まる理由

債券の黄金時代?債券ETFへ注目が集まる理由

2024年、米国の債券ETF(上場投資信託)には年初から7月下旬までに約1500億ドル(約23兆円)が流入し、過去最高を記録しました。2年間の純流出から一転、高利回りと利下げ見込みが投資家に好機をもたらしています。本記事では「債券投資に注目が集まる理由」を解説します。利下げ見込みで債券ETFに資金流入足元では利下げに伴う債券価格の上昇を見込んで、債券ETFが人気化しています。債券価格の変動要因として、短期金利に対する投資家の見通しが大きな役割を果たします。連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げに踏み切ることはほぼ確実との見方が市場で広がる中、投資家は利回りが高水準のうちに債券を確保しようとしています。現在、債券の利回りとパフォーマンスは約20年ぶりの高水準にあります。8月23日時点のS&P 米国債 7-10年指数で測定される米国債(満期が7年以上、10年未満)の1年リターンは約8.7%、S&P グローバル先進国社債指数で測定される投資適格社債の1年リターンが約10.8%と、どちらも全世界株式(オール・カントリー)の米ドルベースでの10年平均利回り9%と同等の水準にあります。 安全性の高い金融商品でも十分なリターンを狙えることが示されていることから、格付け最高位の債券から得られるトータルリターンに焦点を当てた金融商品を購入する投資家も多くなっています。米資産運用大手ブラックロックの債券部門最高投資責任者(CIO)であるリック・リーダー氏は「現在、債券で得られる利回りと収益率は非常に魅力的であり、債券にもっと資金が流入すると予想する」と語ります。景気後退リスクをヘッジする手段にもまた、米国市場の懸念がインフレから景気後退に変わったため、債券は株式市場の混乱に対するヘッジとしての価値を増しています。8月初旬には景気後退懸念を受け、2023年3月に銀行危機への不安が台頭して以来の債券相場上昇となりました。ただし、8月2日以降に発表された米指標では、リセッション(景気後退)の兆候は示されず、ゴールドマン・サックスは今後1年以内に米国が景気後退に陥る確率を20%に引き下げています。債券投資大手ピムコは「株式のバリュエーションに無理が生じている可能性があることは、債券にとって好都合」であり、「長期的に見渡せる範囲でリセッションがなければ、アクティブ債券投資は良好な成績を残せるだろう。リセッションがあれば、さらに成績は良くなる」と説明しています。債券ETFであれば、債券投資が簡単に債券ETFはすでに複数の商品が含まれているため、1回の取引で分散効果が得られ、また最低投資額が1万円代と小口のものが多くなっています。一方で、直接投資の場合は債券の取引単位は大きく、個人では取引できる銘柄が限られます。さらに、ETFは「Exchange-Traded Fund(上場投資信託)」の名前にもある通り上場しているため、取引所が空いている間リアルタイムで取引を行うことができ、債券に直接投資するときには得られない流動性も提供します。運用管理においても、債券ETFであれば株式と一体に証券口座内で管理できるため、損益状況やポートフォリオが把握がしやすいというメリットが挙げられます。

【バフェットのポートフォリオ解説】アップル株なぜ半減?2銘柄への新規投資も明らかに

【バフェットのポートフォリオ解説】アップル株なぜ半減?2銘柄への新規投資も明らかに

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の2024年6月末時点でのポートフォリオが、8月14日に米証券取引委員会(SEC)に提出された報告書「フォーム13F」にて明らかになりました。本記事では、バフェット氏の最新ポートフォリオを紹介の上、今回新たに投資が明らかになったアルタ・ビューティーとハイコについて解説します。バフェットポートフォリオの中身上位10銘柄で90%以上、アップル株は半減も引き続き1位バフェット氏は集中度の高いポートフォリオを運用していることで知られ、上場ポートフォリオは41社で構成されているにもかかわらず、上位5銘柄で70%以上、上位10銘柄は90%以上占めています。上位保有銘柄アップル(AAPL) : 30.1%バンク・オブ・アメリカ(BAC) : 14.7%アメリカン・エキスプレス(AXP) : 12.5%コカコーラ(KO): 9.1%シェブロン(CVX): 6.6%オキシデンタル・ペトロリアム (OXY): 5.8%クラフト・ハインツ(KHC): 3.8%ムーディーズ(MCO): 3.7%チャブ(CB): 2.5%ダビータ(DVA): 1.8%特筆すべきは、4-6月にアップル株の保有を50%近く削減したことでしょう。一部のアナリストは、アップルの長期的な成長能力に少しでも懸念があれば、バフェット氏は全ポジションを手じまいしていた可能性が高いとし、アップル株の保有削減は「単なるリスク管理」または「経済情勢の悪化への備え」であるとの考えを示しています。5月15日に開示された、バークシャーの2024年3月末時点のポートフォリオでは、アップル株は4割近くを占めていましたが、今回の株式売却により保有比率は3割へ低下しました。バフェット氏は、7月以降にアップル株をさらに売却したかどうかを明らかにしていませんが、5月時点では「アップルが年末までバークシャーにとって最大の保有株であり続けると予想している」と述べています。また、ポートフォリオの中で2番目に大きなポジションを占める、バンク・オブ・アメリカ株も7月中旬以降にポジションを8.8%削減していますが、開示されているのは6月末時点でのポートフォリオのため、古い保有状況が示されています。投資縮小の理由や意図について、バフェット氏はこれまでのところ明らかにしていません。化粧品小売と航空機器部品メーカーへのへの新規投資が明らかにそのほか、注目を集めたのはアルタ・ビューティー(ULTA)とハイコ(HEI.A)への新規投資です。アルタ・ビューティーは年商が1兆円を超える米国最大の美容小売チェーンで、米国全50州に約1,395店舗を展開しています。百貨店コスメを自宅近くで試せるのが魅力であり、ポイント獲得プログラムには4,300 万人以上の会員がいます。アルタの株価は、同社が成長鈍化の可能性を警告したことから低迷しており、予想株価収益率 (PER)は12.8倍と非常に割安で取引されていました。アルタのポジションは約2億6000万ドルに相当し、バークシャーにとっては少額の保有となります。ハイコは、民間航空機の交換部品や防衛製品の部品製造するほか、世界の主要航空会社を顧客とする保守サービスを提供しています。航空機部品の製造は当局の認証が必要なため参入障壁が高く、製造業に珍しく営業利益率が20%を超えています。ハイコの株価は、同社製品に対する高い需要と市場でのプレゼンス拡大から年初来約35%上昇しています。バークシャーは、2016年に航空機部品メーカーのプレシジョン・キャストパーツを321億ドルで買収しており、航空宇宙分野にも精通しています。手元資金は2005年6月以来の最大にバークシャーは2024年4-6月期に755億ドル相当の株式を売り越したため、現金と米短期債保有額を合計した広義の手元資金は6月末時点で2769億ドル(約40兆5700億円)に達し、過去最高値を更新しました。バークシャーは最低300億ドルの現金を保有することを約束していますが、適正価格で購入できる企業全体や個別株が見つからない場合には、現金を蓄積させることが多くなっています。バフェットポートフォリオを簡単コピー?ブルーモ証券では、2024年6月末時点でのバークシャーのポートフォリオをワンタップでコピーし、投資を始めることができます。株式のみで構成されるポートフォリオのほか、米短期債を含む手元資金を反映したポートフォリオのコピーもできますし、そこから変更を加えてオリジナルのポートフォリオの作成も可能です。

5年に1度の相場下落?個人投資家にとってピンチかチャンスか

5年に1度の相場下落?個人投資家にとってピンチかチャンスか

過去1ヶ月間を振り返ると、7月上旬の最高値から相場は大きく下落し、個人投資家の資産も大きく目減りしていますが、実は日本の個人投資家にとって今回は5年に1度くらいの大きさのインパクトでした。本記事では、過去の相場動向・景気循環の歴史・資産別での変動を分析することで、①今回は日本の個人投資家には5年に1度のイレギュラーだった、②下落のダメージは分散していた投資家ほど小さかった、③5年に1度の相場下落でも慌てず「長期・積立・分散」を継続すべき、点を解説していきたいと思います。日本の個人投資家には5年に1度のイレギュラーだった株安・円高が重なり、日本人にとってコロナショック以来の相場下落2024年7月から1ヶ月間の相場下落は、過去10年の円建てS&P500の推移で見ると、2020年のコロナショック以来の下落幅だったことが分かります。下落率で比較をするとコロナショック当時(2020/2/20-2020/3/23)の下落率は-34%、今回下落(2024/7/10-2024/8/5)の下落率は-18%と、それでもコロナショックの時の方がインパクトは大きかったです。一方、ドル建てS&P500はここまでの下落になっていないので、今回下落は「株安」と「円高」が重なったことによるダブルパンチが問題の本質でした。円建てS&P500のチャートドル建てS&P500のチャート出所:S&P Globalまた、米国市場としてはコロナショックと現在までの間に「FRB利上げ」によって株価が低迷した時期があった(2022年)のですが、その時期はちょうど円安が進行していたため、日本の個人投資家は円建てで資産を見た時に大きなロスは出ませんでした。ドル円と米国株式の変動方向が揃ったことが、今回下落が日本人にとって「コロナショック以来」の出来事になった背景にあります。過去10年で見ると「コロナショック」「今回の円高・株安ショック」が2つの大きな暴落で、さらにその前10年間を振り返ると「ドットコムバブル崩壊」「リーマンショック」があるので、今回下落は「5年に1度」と呼んで良い相場変動だと言えます。今回の相場下落が続くかは米国経済のソフトランディング次第景気には拡大期と後退期が存在し、現在は2020年4月以降の景気拡大期と捉えられています。FRBの利上げによるインフレ抑制が、この景気拡大期を終わらせて米国経済が景気後退に入るかが、相場の低迷が続くか上昇に戻るかの大きな岐路になります。「ハードランディング」シナリオは、FRBの高金利政策継続の影響で米国経済が景気後退に入るパターンです。この場合は平均10ヶ月間ほど経済活動が停滞し、株価の上がりにくい状態が続くことになります。このシナリオに対する懸念から、直近の株式市場は乱高下していました。「ソフトランディング」シナリオは、景気後退を経ずにインフレ率が下がり、米国金利が低下して景気拡大が続くパターンです。過去最長では10年間も景気拡大が続いたことがあるので、長い場合だと2030年まで景気拡大となることもあり得ます。過去には、1991−2001年の景気拡大期は、途中でFRBが利上げをしても景気後退を起こさなかった「ソフトランディング」が成功した事例として有名です。8月12日現在の最新見通しでは、JP Morganが年内の景気後退入りの確率を35%、2025年下半期までの景気後退入りの確率を45%と見込んでいます。出所:JETRO(日本貿易振興機構)今回下落のダメージは分散していた投資家ほど小さかった債券や金を組み込んだポートフォリオのダメージが比較的小さかった2024年7月10日を相場の頂点として、2024/7/10-2024/8/9の1ヶ月間の資産別の株価変動を比較したのが以下のグラフです結果はダメージの小さい方から、金(GLD)が+2.37%、米国短期国債(SHV)が+0.06%、世界株式・オルカン(VT)が-4.19%、S&P500(VOO)が-5.04%、FANG+(NYFANG)が-13.47%、日経平均(NIKKEI)が-16.96%、NVIDIA(NVDA)が-22.36%で、この期間のドル円は-9.31%でした円高を避けて日本株式に投資していたら良かったかというとそうでもなく、日本株は過去1ヶ月の間に-16%も下落しており、米国株式や世界株式と比較しても大きなマイナスとなっています。円高効果と合わせてS&P500に投資しているのとマイナスは大きく変わりませんでした。S&P500かオルカンかも大きな論点ではなく、オルカンの構成要素で米国株式が6割で、米国市場が落ちる時は世界的にも株価が落ちるため、誤差程度の差分しか出ていません。株式の集中という意味では、NVIDIA単体に投資していた場合はドル建てで-20%(円建てではおよそ-30%)と、かなり大きなマイナスになりました。一方、テクノロジーセクターに集中したFANG+インデックスは-13%、S&P500指数では-4%と、分散するほどにマイナスが小さかったことが分かります。さらに異なるアセットクラスで見ると、債券はほぼ変動せず、ゴールドはむしろやや上昇と、下落局面において全く異なる動きを見せています。債券や金をポートフォリオに入れてリスクヘッジしていた場合、ダメージを緩和できていた可能性が高いです。まとめると、今回のような下落局面では当たり前ですがリスクの高いポートフォリオほどマイナスが大きく、ダメージの大きさとしては「テック株集中」>「株式分散」>「バランス型(債券・金など組み合わせ)」という順番になりました。相場下落時にダメージを抑える効果のある資産については以下記事も参考にしてみてください。時間分散できていた投資家はインパクトが小さい保有資産の分散度合いでインパクトを分析しましたが、加えて投資タイミングの時間分散についても考えます。ポートフォリオの中身以外の観点から、今回の相場下落で「勝ち組」だった投資家を分類すると、以下のように整理できます。①大幅下落時に資金投入できた人:日経平均が歴代1位の下落幅だった8月5日など、大きく相場が落ちたタイミング(その後反発上昇するタイミング)で資金投入できた投資家は、全体がマイナスの期間でもプラスのリターンだった可能性があります。実際に8月5日の開場時に投資した場合、S&P500は1週間で4%も上昇しています。②投資余力をまだ残している人:まだ相場が底をついているか不透明なこともあり、今後追加で資金投入する余力を残している投資家は、下落からの回復局面でリターンを得られる可能性があるので、資金投入の時期次第ではリターンを向上させられます。③積立投資をしている人:そもそも積立で定期的に投資しているタイプの人で、いつ市場が底を打っても特定の一時点で集中投資する場合に比べてリターンが平準化されます。今回のような下落局面においても買いを継続的に入れているため、リターンにプラスの影響があったはずです。また、これまで投資してきた人は今回ショックで大きくダメージを受けていますが、最近投資を始めた人(まだ資金をそこまで投資に回していない人)は傷が浅いので、実は最近投資を始めた(これから始める)人にとっては有利な環境でもあります。5年に1度の相場下落でも慌てず「長期・積立・分散」を継続投資をやめたり、リスクの高い取引に走らないこと今回のような大幅下落に直面して、個人投資家として「やるべきではないこと」は以下のような行動になります。①投資をやめてしまうこと:今回の下落を受けた損切りで投資をやめてしまうことです。資産運用は下落時も上昇時も保有し続け、長期で負けないことが大事なので、下落局面でも歴史から長期の上昇を信じて投資し続けましょう。また、一度投資から資金を引くと、日々忙しい中で市場をチェックして再び戻ってくることは難しいです。②短期逆転トレードを狙うこと:一時的な損失を取り返すため、ハイリスク・ハイリターンな取引に手を出すこともお勧めできません。具体的にはレバレッジ型の取引や上下の激しい小型株への集中投資が挙げられます。今回の相場下落は、分散していれば-20%くらいの減少でしたが、さらにレバレッジがかかっていると-60% 超の下落となり、そこから巻き返すのにはかなり時間がかかってしまいます。※ 参考:24/7/10-24/8/9でSOXL(半導体セクターの3倍レバレッジETF)に投資した場合、ドル建てでも-54%の下落となります(円建てでは-60%以上)③上昇した銘柄を後追いすること:市場全体が下落する中でも、決算結果が良好だった銘柄などは上昇することがあります。こうした銘柄はいつも以上に目立ちますが、後追いで投資してもそこから短期での株価上昇は難しいケースもあります。「この企業は長期的になくならそうだから」でも「ブランドが好きだから」でも良いので、足下の株価上昇以外で自分が納得できる理由がある場合に投資すると良いでしょう。相場を気にしすぎず、積立投資でどっしり構えるくらいが良い最後に、今回の下落相場と足下で不安定な市場動向を受け、個人投資家の資産運用としてのアドバイスを3つご紹介します。①短期の変動を気にしすぎない:自分の資産変動はどうしても気になりますが、長期目線の投資であれば短期変動は気にし過ぎないことも大事です。本記事のようなコンテンツも気になる方のために書いていますが、資産運用の方針がクリアならそこまで日々のニュースを追わなくても良いです。②積立投資で下落相場の果実を得る:今後の相場がどちらに転んでも勝てるように、積立投資で定期的に資金投入するとリターンが安定するのでお勧めです。株安・円高のニュースが入った場合でも、「定期的に投資するタイミングで安く買えて良いか」とも思えるので、精神衛生上もプラスです。③投資余力あれば下落時に追加投資:まだ投資余力のあって相場動向も追いたい方は、さらなる下落があったタイミングで追加的に資金投入して、銘柄の平均取得単価を下げることも効果的です。ただ、相場の底を見極めて投資実行するのはかなり難しいので、ある程度下落した時に入れられていたらプラスくらいに捉えると良いでしょう。ブルーモで資産運用されているユーザーも長期目線の方が多いので、相場下落時もむしろ追加投資する方がいたり、最近リリースされたリバランス付き自動つみたて投資機能を活用される方が多いのが特徴的でした。資産運用の原則である「長期・積立・分散」については、以下記事もご覧ください。

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弱い経済指標とアノマリー警戒で株式市場は大きく下落。9月利下げ期待で円高も進む|米国市場サマリー

弱い経済指標とアノマリー警戒で株式市場は大きく下落。9月利下げ期待で円高も進む|米国市場サマリー

先週は、米国の製造業指数と雇用統計の結果が弱かったことから米経済の景気後退が再び懸念される中、歴史的に9月に株価が下がりやすいアノマリーも警戒され、大幅に株価の下がった1週間でした。特にNVIDIAをはじめとするグロース株の下落が顕著となりました。為替は、経済指標の結果により、FRBの9月利下げが大幅になるとの期待も生まれ、円高が大きく進んだ1週間でした。米国株式市場:経済指標の弱さと9月アノマリー警戒で株式は大幅下落9月2日(月) レイバー・デーの祝日で株式市場は休場9月3日(火) 米国株式市場は、主要3指数が大幅に下落しました。特にNVIDIAは約10%の急落を記録し、同社の時価総額は2,790億ドル減少しました。フィラデルフィア半導体指数(SOX)は7.8%安と、米製造業の活動低迷を示す指標が市場心理に悪影響を与えました。Alphabetは3.6%、Appleは2.7%、Microsoftは1.8%下落するなど、ハイテク株も軒並み下落しました。市場全体では、不安心理を示すVIX指数が急上昇しました。9月4日(水) 市場は不安定な取引を経て、S&P 500とNASDAQは小幅に下落し、ダウ工業株30種はわずかに上昇しました。NVIDIAは引き続き1.7%の下落を見せ、AppleやMicrosoftも弱含みました。JOLTS(雇用動態調査)では求人件数が低下し、労働市場の緩和が続いていることが示され、FRBが9月の会合で利下げを行う可能性が高まっています。公益事業株や主要消費財が堅調でした。9月5日(木) 市場では、S&P 500とダウがマイナス圏で引け、NASDAQは小幅高でした。Teslaは約5%上昇し、S&Pの一般消費財セクターを牽引しました。FRBの金融政策への注目が続く中、テクノロジーセクターは約4.8%の下落となりました。9月6日(金) 米8月雇用統計の発表後、労働市場の減速が確認される一方で、FRBの利下げ幅に対する市場の不透明感が続き、主要3指数が下落しました。特に、NVIDIA、Tesla、Alphabet、Amazonといった大型グロース株が大きく下落し、フィラデルフィア半導体指数は4.5%の下落を記録しました。各種経済指標が弱かったことに、9月は歴史的に株式パフォーマンスが低いことを警戒する市場心理が重なり、市場全体が大きく下落した1週間でした。指標によってFRBの9月利下げ幅が広がるかは不透明な中、景気後退懸念の方が相場をリードした形になります。為替市場:弱い経済指標で9月利下げへの期待が高まり大幅な円高進行為替は、製造業指数と雇用統計の弱さから、米国における利下げが想定よりも早いペースで進むとの期待が形成され、大きく円高に進みました。一方、日銀は年内に追加利上げに踏み切る期待は継続しており、円高進行の下支えになっています。今週のマーケット:FOMC直前のCPI公表に注目今週(2024/9/9-9/13)は、9月利下げを決めるFOMC直前の重要経済指標であるCPIが公表されます。ここでCPIの沈静化が明確になれば、9月利下げが大幅になる期待が形成され、株高に振れる可能性があるので要注目です。ブルーモの公式Xでも決算や指標の速報をお届けするので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

9月初日は大きな下落。過去データから予測する年末までの動き

9月初日は大きな下落。過去データから予測する年末までの動き

本記事では、厳しいスタートになった9月初日の米国市場を振り返り、過去データも踏まえて今後投資家が注目すべきポイントをまとめます。要約すると、①9月初日の下落は弱い製造業指数と9月アノマリーへの警戒が原因、②今月中の相場回復はFRB利下げと経済指標のサプライズ次第、③年末に向けては好材料が多い見通し、となります。弱い製造業指数を受けて9月初日は大幅下落9月3日の米国市場は、S&P500が2.1%下落、NASDAQ総合が3.3%下落し、月初の取引日での下落幅としては2020年以来の大幅下落となりました。特にNVIDIAは10%近い下落で、時価総額が2790億ドル減少し、米国企業の1日の時価総額減少としては最大記録を更新しました。市場のボラティリティ(変動性)を示すVIX指数も、33%上昇して20程度まで上がっています。この動きの背景には、昨日発表されたISM製造業指数が7月よりも上がったものの低い水準となり、新規受注の減少や在庫増から、製造業の低迷がしばらく続くことが予測され、市場全体に不安心理が広がったことがあります。また、9月は歴史的に株価パフォーマンスが悪いというアノマリー(規則性)が存在し、9月に入って投資家がこの動きを警戒したとも見られています。出所:Marketwatch9月の相場は利下げ動向と経済指標次第か歴史的にパフォーマンスの悪い傾向にある9月ですが、過去平均で見ると1%下落くらいが平均であり、初日の大幅下落から回復する可能性は十分にあると言えます。8月にも大きな相場下落があり、一時的に市場は恐慌状態に陥りましたが、その後懸念が晴れると株価は元の水準に戻っていきました(日本の個人投資家は円高がかなり進んだので、それでもマイナスとなりましたが)今年の9月は17−18日にFOMCが予定され、FRBがここで長らく期待されていた利下げを発表する見込みなので、利下げ決定とその後の見通しに対するFRB高官からのコメント次第で、株価が上昇する材料となります。一方、今後出てくる経済指標次第では、景気後退懸念が再燃するため、株価のリバウンド上昇は限定的になる恐れもあります。9月3日のISM製造業指数で雇用は改善していたことから、今のところ経済全体での景気後退懸念を示唆する内容ではありませんが、今後の指標には注意が必要です。足下は厳しいが年末に向けては好材料以前に米国市場のアノマリー記事で解説したように、大統領選のある年の米国市場は選挙前の9−10月は様子見の相場が続きますが、選挙が終わって大統領が決定した後から年末にかけて株価が再び上昇に転じる傾向にあります。大統領選後の情勢安定化・上昇トレンドを抜きにしても、Labor day(9月2日の米国祝日・市場休場日)から年末までの株価パフォーマンスを見ると、過去50年の平均では3%程度の上昇が観測されています。出所:Marketwatchまた、ほぼ確定となっているFRBの9月利下げに続き、さらに年内1−2回の追加利下げの可能性もあることから、年末に向けては好材料が出る余地はまだまだある状況です。足下の急激な株価下落で不安になるかも知れませんが、歴史的な8月暴落後に株価が復調した動きも思い出し、是非皆さんには長期目線での資産運用を継続いただければと思います。

NVIDIA決算は無事通過。リセッション懸念も後退し、市場は安定化へ|米国市場サマリー

NVIDIA決算は無事通過。リセッション懸念も後退し、市場は安定化へ|米国市場サマリー

先週は、NVIDIA決算の前後でテクノロジー株が売られてNASDAQは下落しましたが、強い経済指標からリセッション懸念が和らぎ、ダウ平均は最高値を更新するなど、株式市場全体は堅調でした。S&P500は横ばいで終えており、市場全体としてはリスクが下がった1週間でした。為替は、強い経済指標を受けて9月のFRB利下げ幅は0.25%に留まるとの見方が強まり、円安の進んだ1週間でした。米国株式市場:NVIDIA決算前後でテクノロジー株は下げるも、リセッション懸念は遠ざかる8月26日(月) S&P 500とNASDAQが下落して終了しました。半導体大手NVIDIAの28日の四半期決算発表を控え、売られたことが影響しました。ダウ工業株30種はプラス圏で終了し、CaterpillarやAmerican Expressの買いが押し上げ要因となりました。市場は、30日に発表される7月の個人消費支出(PCE)に注目しました。NVIDIAは2.25%下落し、決算がAI関連銘柄全体に影響を与える懸念が広がりました。8月27日(火) 主要株価指数が上昇し、ダウ工業株30種は終値で最高値を更新しました。NVIDIAの四半期決算発表が注目される中、大型ハイテク株の動きはまちまちでした。NVIDIAは1.5%上昇しましたが、Amazonは1.4%下落しました。S&P 500の情報技術や金融セクターが上昇を主導しました。8月28日(水) NVIDIAの四半期決算発表を控え、下落して終了しました。NVIDIAは2.1%下落し、同社の成長が永続しない可能性が懸念されました。また、他の半導体銘柄も売られ、BroadcomとAMDはそれぞれ約2%、2.75%下落しました。S&P 500の主要11セクターのうち8セクターがマイナス圏で取引を終えました。8月29日(木) ダウ工業株30種は最高値を更新しましたが、NVIDIAは決算発表後に6%超下落しました。米商務省が発表した第2四半期のGDP改定値が上方修正され、米経済がリセッションを回避できるとの観測が強まりました。AI関連株はまちまちで、Microsoftは0.6%上昇した一方、Alphabetは0.7%安となりました。Appleは1.5%上昇し、投資家の関心を集めました。8月30日(金) 株式市場は上昇し、ダウ工業株30種は再び終値ベースで最高値を更新しました。米個人消費支出(PCE)価格指数が発表され、大幅な利下げ観測が後退したことで、AmazonやTeslaなどに買いが入りました。この日はS&P 500の全11セクターが上昇し、特にAI関連銘柄として注目されるDellやIntelもそれぞれ4.3%、約10%高となりました。注目のNVIDIA決算を控えたリスクオフと、NVIDIA決算が期待を大きく超える内容ではなかったことから、テクノロジーセクターの下落した1週間でした。一方、経済全体はリセッション懸念が後退したため、S&P500は横ばいでダウ平均は最高値を更新しました。為替市場:9月のFRB利下げ幅は小幅との期待形成から円安が進む為替は、強い経済指標を受けて円安の進んだ1週間でした。米国GDPが上方改定され、PCE価格指数もインフラ鎮静化を示すほどの内容ではなかったことから、9月のFRB利下げ幅は0.25%に留まるとの見方が強まり、円安方向に振れました。今週のマーケット:9月利下げ前の経済指標に注目が集まる今週(2024/9/2-9/6)は、NVIDIA決算を終えて市場は落ち着きを取り戻しているので、景気指数や失業率が9月のFRB利下げ幅への期待にどう影響するかがポイントになります。現在は0.25%が優勢となりつつあるので、経済指標が弱いと更なる利下げを市場が期待しやすい環境にあります。ブルーモの公式Xでも決算や指標の速報をお届けするので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

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【アドビ決算みどころ】AI製品好調で、株価続伸なるか(Adobe)

【アドビ決算みどころ】AI製品好調で、株価続伸なるか(Adobe)

本記事では、アドビ(ADBE)の2024年3-5月期の決算を振り返り、9月12日に控える2024年6-8月期決算の見どころを解説します。同社の株価は年初来約3%の下落となっていますが、6月上旬の安値から過去3か月で30%以上上昇しています。オプション市場は決算発表後に約±4%の変動を織り込んでいます。前期の振り返り:通期見通し上方修正で株価大幅上昇6月13日に発表された2024年3-5月期決算では、売上高が前年同期比10%増、EPSは同15%増と市場予想を上回る結果となりました。また、2024年度通期の売上高見通しも上方修正したことを受けて、時間外取引で株価が16%超の上昇となりました。売上高:$53.1億(予想:$52.9億)EPS:$4.48(予想:$4.39) 全体の約75%を占める主要事業セグメントである、デジタルメディア部門の収益は前年同期比11%の成長を遂げ、アナリストらが注目する6-8月期の新規年間経常収益(ARR)は4.6億ドルと、市場予想の4.35億ドルを上回りました。ARRはサブスクリプション(継続課金型)サービスの成長指標とみなされています。アドビは近年、より手頃な価格で同様のサービスを提供するCanvaやFigma、AI に重点を置いた新興スタートアップなどとの競争に直面しており、一部のアナリストから「アドビはこれまで企業としての高い競争優位性を維持してきたが、AI はこうした競争障壁の多くを崩し、時間の経過とともに競争圧力が高まっている」と指摘されていました。しかし、今回の決算ではAI 搭載製品を拡充しユーザーエクスペリエンスを向上させることに注力する同社の取り組みが、顧客の支持を集めていることを示唆する結果となりました。ダン・ダーン最高財務責任者(CFO)は、「市場をリードする当社の製品、強力な実行力、そして世界クラスの財務規律により、2024年後半以降も当社は好調な状態にあります」と声明文で述べています。6-8月期の注目点:デジタルメディア部門のARRの成長見通し2024年6-8月期のアドビの「売上高予想は$53.7億、EPS予想は$4.53」、平均目標株価は$610です。デジタルメディア部門の好調な成長が予想されることから、市場関係者は同社の見通しに強気です。下半期は価格設定が追い風になる予想注目は引き続き、デジタルメディア部門の新規ARRの成長見通しです。下半期は、過去2年間におけるCreative Cloudの値上げ実施の成果に加えて、現在ベータ版であるさまざまなAI搭載製品がリリースされることで収益化が開始し、ARRの成長に貢献すると想定されています。特に、アドビの最近の成長は「Acrobat AI Assistant」と同社の画像生成AI「Adobe Firefly」の貢献が大きく、Firefly AIは発売以来90億枚を超える画像を生成しています。また、決算後の10月14日-16日には、毎年恒例の 「MAX Creativity Conference」 がマイアミでの開催を予定しており、大きく注目を集めています。

【マグニフィセント7決算解説】AI需要に懸念、株価調整局面入りか

【マグニフィセント7決算解説】AI需要に懸念、株価調整局面入りか

本記事では、米大型テクノロジー企業7社で構成される、Magnificent 7(マグニフィセント・セブン)の2024年第2四半期決算の振り返りをお届けします。テスラ(Tesla): 純利益大幅減で株価下落7月23日に発表された2024年4-6月期決算では、売上高が前年同期比2%増、純利益は同45%減となりました。投資家から注目されていた自動車部門の粗利益率(規制クレジット除く)についても14.6%と、1-3月期の16.4%から低下し、株価は翌日12%下落しました。売上高:$255.0億(予想:$247.7億)EPS:$0.52(予想:$0.62) セグメント別では、自動車部門の売上が前年同期比7%減の199億ドルでしたが、テスラのエネルギー生成・貯蔵部門の売上が倍増したことにより、全体の売上高の成長に寄与しました。また、7-9月の自動車生産が4-6月期よりも増える見通しを明らかにしたものの、2024年の納車台数の伸び率は前年より「著しく低くなる」見通しをあらためて示しました。テスラは引き続きコスト削減に重点を置くとし、新モデルのサイバートラックは年内に黒字化する方向。低価格車の計画も前進しており、25年前半に生産開始の見込みです。そのほか、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、「ロボタクシー」の発表イベントを10月10日に延期すると明らかにしました。ロボタクシーはヒューマノイドロボット「オプティマス」と同様に、テキサス州オースティンにある工場で製造されます。アナリストからはテスラの株価を押し上げる強力な材料が短期的に不足との指摘もあり、一部アナリストは10月のロボタクシー発表が実質的な内容より願望に近いものになる可能性があると懐疑的に見ています。アルファベット(Alphabet): 好業績も設備投資見通し高止まりで、株価下落7月23日に発表された2024年4-6月期決算では検索とクラウドが成長を牽引し、売上高が前年同期比14%増、純利益が同28.6%増と市場予想を上回る堅調な結果でした。しかし、YouTubeの広告収入が予想に届かず、年間を通じて設備投資額が高止まりするとの見通しを示したことから、時間外取引で株価は2%下落となりました。売上高:$847.4億(予想:$841.9億)EPS:$1.89(予想:$1.84) セグメント別では、主力の広告事業の売上高は前年同期比11%増の646億ドル。うち、Youtube広告が同13%増の87億ドルでした。グーグルクラウドの売上高は同29%増の103.5億ドルと、四半期で初めて100億ドルを超え、営業利益も10億ドルに達しました。「その他の事業」の売上高は、自動運転車会社Waymoを含め、前年同期比28%増の3.65億ドルとなりました。Waymoは、第2四半期中にサンフランシスコ全域のユーザー向けにサービスを拡大し、2020年にフェニックス都市圏でのサービス開始に続く2つ目の都市全域展開を実現しました。また、アルファベットはWaymoに対する新たな50億ドルの複数年投資計画を発表しました。四半期設備投資額は130億ドルとなり、年内の四半期設備投資額は120億ドル以上になる見通しを明らかにしました。スンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は「AIスタックのあらゆる層で革新を進めている」と述べた上で、「過小投資のリスクは、過剰投資のリスクよりはるかに大きい」との考えを示しました。一部アナリストは、グーグルのAIへの巨額投資について、一部投資家が「AIによってどのぐらいの売り上げを得ているか」明確な証拠を求めている段階に入り、これが懐疑的な見方や株価の不安定な動きにつながっていると指摘しています。マイクロソフト(Microsoft): クラウド事業が成長鈍化で、株価下落7月29日に発表された2024年4-6月期では、売上高が前年同期比15%増、純利益は同10%増と市場予想を上回る結果となりました。しかし、同社で最も成長しているセグメントであるクラウド事業の成長が減速したため、時間外取引で株価が一時9%下落しました。売上高:$647.3億(予想:$643.8億)EPS:$2.95(予想:$2.94) セグメント別では、インテリジェント・クラウド部門の売上高は前年同期比21%増の368億ドルで、うちAzureの売上高が同29%増と市場予想の31%を下回る結果となりました。エイミー・フッド最高財務責任者(CFO)は「Azureの成長は7-9月も減速が続く」述べましたが、データセンターとサーバーへの投資が需要の取り込みにつながり、2025年度後半にAzureの成長を加速できるとの見通しも示しました。生産性とビジネスプロセス部門は11%増の203億ドル、個人向けコンピューティング部門は14%増の159億ドルの売上を上げました。メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms): AI活用で堅調な収益、株価急伸7月31日に発表された2024年4-6月期決算では、堅調な広告収益と大規模リストラが功を奏し、売上高が前年同期比22%増、純利益は同73%増と市場予想を上回りました。また、第3四半期の売上高についても明るい見通しを示したことから、株価は時間外取引で7%上昇となりました。売上高:$390.7億(予想:$383.1億)EPS:$5.16(予想:$4.73) メタの収益は98%以上を広告事業で稼ぎ出していますが、2024年4-6月期にメタのサービス全体で配信された広告インプレッションは前年同期比10%増加し、広告あたりの平均価格は同10%増加しました。スーザン・リー最高財務責任者(CFO)は「健全な広告需要が世界的に続いている」とし、同社のAIを活用したデジタル広告事業の効率性を改善するプロジェクトの成果も出ていると説明しました。また、第2四半期のコストは7%増加しましたが、営業利益率は29%から38%に上昇し、収益の伸びがコストの伸びを大幅に上回りました。アナリストは、メタの利益率が健全なことから、同社の積極的なAIとメタバースへの支出について投資家が抱いていた収益性への懸念は和らぐ可能性があると指摘しています。2024年の設備投資は370億ー400億ドルになるとの見通しが示されています。アップル(Apple): 新型iPad好調も中国販売不振で、株価横ばい8月1日に発表された2024年4-6月期決算では、「iPad」の新モデルの販売好調などで売上高が前年同期比5%増と市場予想を上回りました。一方で投資家の懸念材料である中国市場の売上高は6.5%減の147億ドルと市場予想を下回り、時間外取引で株価は横ばいとなりました。売上高:$857.8億(予想:$845.3億)EPS:$1.40(予想:$1.35) 事業別売上高は、総売上の約46%を占めるiPhoneが前年同期比1%減の393億ドル。四半期中に最も成長したiPadの売上高は、同24%増の72億ドルとなりました。一方、アップルにとって重要な成長カテゴリーである、アプリ・音楽・動画配信などのサービス部門の売上高は同14%増の242億ドルとなりました。また、iPhoneやMac、iPad、Apple Watchなどアップル社製のアクティブデバイス数は、すべての製品セグメントと地域セグメントにおいて過去最高を更新しました。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は電話会見で、iPhoneやMac、iPadに搭載予定のAI新機能「Apple Intelligence」が新機種購入の新たな理由になると指摘し、「人を強く引きつけるアップグレードサイクルの極めて重要な時期になるだろう」と語りました。新型デバイスの需要について同社は自信を深めており、9月に発売が予想されている「iPhone 16」は少なくとも9000万台の出荷を目指しています。一部のアナリストは近い将来に新たなiPhoneアップグレードサイクルを迎え、アップルが時価総額4兆ドルに到達する軌道に乗っている可能性があると指摘します。ただし、サービス部門についてはアップストアの変更を求める規制当局からの圧力にさらされているため、サブスクリプションプランやアプリのダウンロードからの収入が抑制される恐れがあります。アマゾン(Amazon): 営業利益見通しが予想を下回り、株価下落8月1日に発表された2024年4-6月期決算ではクラウド事業が成長を牽引し、売上高が前年同期比10%増となりましたが市場予想を下回りました。7-9月期の営業利益見通しについても市場予想を下回り、株価は時間外取引で6%下落しました。売上高:$1480億(予想:$1486億)EPS:$1.26(予想:$1.03) 事業別売上高は、営業利益の60%以上を稼ぐ「クラウド事業」の売上高が前年同期比19%増と市場予想を上回りました。しかし、競合のマイクロソフトやグーグルのクラウド事業と比較すると成長率は遅れ、「アマゾンのクラウド事業の成長が相対的に緩やかなため、首位の座を維持できるか疑問が残る」という懸念の声を払拭しきれていません。オンラインストア部門の売上高は、TemuやSheinなどの割引サイトからの競争激化に直面し、前年同期比5%増。サードパーティ販売者サービスの売上は同12%増となりました。広告事業は同社で最も急成長しているセグメントであり、売上高は前年同期比20%増でしたが、市場予想をわずかに下回りました。アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は記者会見で、2024年上期にクラウド部門アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のデータセンターなどの設備投資に305億ドルを投じたとし、下期には投資額を増やす予定と述べています。エヌビディア(NVIDIA): 売上高見通しが期待に届かず、株価急落8月28日に発表された2024年5-7月期決算では、売上高が前年同期比2.2倍、純利益は同2.7倍と市場予想を上回り、500億ドルの自社株買いも発表されました。しかし、8-10月期の売上高見通しが市場予想のレンジ内に留まり、株価は決算発表後の3営業日で14%下落下落しました。売上高:$300億(予想:$287億)EPS:$0.68(予想:$0.65) 売上の8割以上を占めるデータセンター部門が売上高前年同期比154%増の263億ドルとなりました。一方、8月3日に報道された次世代AI半導体「Blackwell」の発売の遅れについては、出荷遅延は生産効率を向上させるための仕様変更によるものであり、11-1月期に数十億ドルの売上高を達成するを見込みと述べるにとどまり、それ以上詳しく説明しなかったことから、投資家の失望を誘いました。ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は電話会見で、「世界のデータセンターに設置されている時代遅れの機器を置き換えるには、1兆ドル規模の機器が必要になる。その交換作業は始まったばかり」と述べています。また決算後、9月3日に企業のAI支出に警戒感を示す調査レポートが2つ発表され、投資家の動揺を誘いました。一部アナリストは、長期的にはエヌビディア株に引き続き前向きであるものの、「問題なのは明るい材料が提供されそうな予定が当面は見当たらないこと」と指摘しています。

【ブロードコム決算みどころ】AI半導体需要とソフトウェアの業績に高まる期待(Broadcom)

【ブロードコム決算みどころ】AI半導体需要とソフトウェアの業績に高まる期待(Broadcom)

本記事では、半導体大手ブロードコム(AVGO)の2024年2-4月期の決算を振り返り、9月5日に控える2024年5-7月期決算の見どころを解説します。同社の株価は年初来から約50%弱上昇し、S&P500指数の上昇率の約2.5倍のパフォーマンスとなっています。前期の振り返り:予想を上回る収益と見通し上方修正で株価上昇6月12日に発表された2024年2-4月期決算では、売上高が前年同期比43%増と市場予想を上回りました。通期の売上高見通しも市場予想を上回り、時間外取引で株価が一時13%上昇しました。売上高:$124.9億(予想:$120.6億)EPS:$10.96(予想:$10.85) セグメント別では、ソフトウェア部門が2023年11月に買収したソフトウェアプロバイダーVMwareの売上が寄与し、売上高前年比2倍と成長を大きく牽引しました。半導体部門は同6%増の72億ドルとなりました。そのほか、2024年7月15日付で1株を10株にする株式分割が発表されました。5-7月期の注目点:半導体部門の成長続くか2024年5-7月期のブロードコムの「売上高予想は$129.7億、EPS予想は$1.21」、平均目標株価は$193.4です。OpenAIの顧客獲得でAIチップの地位を固める直近の決算において、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフトなどのブロードコムの大口顧客が軒並み設備投資額が過去最高に達したと発表されたため、半導体部門の売上成長への関心が高まっています。また、JPモルガンは顧客向けメモの中で、ブロードコムは最近AIチップの新規顧客としてOpenAIを含む2社獲得し、「経営陣は今後5年間でAI半導体は1500億ドル以上のビジネスチャンスがあると語っている」と述べています。市場はこの協業について好意的な反応を示しており、ウェルズ・ファーゴのアナリストは、OpenAIの最高経営責任者(CEO)であるサム・アルトマンが最大7兆ドルの資金を確保し、チップ生産能力を増強する計画を持っていることを指摘しています。今年のブロードコムのAIチップの収益は、すでにグーグルとメタ・プラットフォームズの2社だけで、90億ドル以上の増加が予想されており、TikTokの親会社バイトダンスからの需要の増加も予想されています。

経済コラム

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FANG+とは?構成銘柄の選定基準や過去リターンを徹底解説

FANG+とは?構成銘柄の選定基準や過去リターンを徹底解説

本記事では、「FANG+」指数の構成銘柄や比率、銘柄の入れ替え基準と入れ替え時期、過去のパフォーマンスについて詳しく解説します。FANG+とは「FANG(ファング)」とは、もともと2015年に株式評論家ジム・クレイマー氏によって作られた造語でFacebook(現Meta Platforms)AmazonNetflixGoogle(Alphabet傘下)の4銘柄の頭文字を意味します。これらの銘柄に、世界の時価総額上位2銘柄であるアップル、マイクロソフトを含む6銘柄を加えた大型テクノロジー10銘柄に10%ずつ等配分投資をする株価指数がFANG+指数で、米インターコンチネンタル取引所(ICE)が2017年9月26日から提供を開始しました。構成銘柄と入れ替え基準構成銘柄の入れ替えは四半期ごとに行われ、3月、6月、9月、12月の第3金曜日の後に変更が適用されます。銘柄はFANG(メタ、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット)、アップル、マイクロソフトの6銘柄を主軸とし、残り4銘柄は以下の要素に基づいてランク付して抽出され、現在は電気自動車のテスラ、半導体大手のエヌビディアとブロードコム、データプラットフォームのスノーフレークが選出されています。時価総額(35%の重み)平均日次取引高(35%の重み)売上高対株価比率(15%の重み)1年の売上成長率(15%の重み)過去には、中国のアリババやバイドゥ、Twitter(現X)、 アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などが選出されていました。過去のパフォーマンスICEの分析によると、NYSE FANG+指数は2014年9月19日から 2024年8月30日までの期間に年率27.62%のリターンを上げています。一方、同期間のNASDAQ-100は18.18%、S&P 500は12.99%、S&P 500情報技術セクターは22.06%のリターンとなっており、他の主要な米国指数を一貫して上回っています。出所:ICEその他のテクノロジー銘柄インデックス(Magnificent 7やUS Tech Top20)とのパフォーマンス比較や、FANG+に投資する場合のオプションについてご関心のある方は、以下の記事もぜひご覧下さい。

ラッセル2000とは?米小型株に資金がシフトする理由

ラッセル2000とは?米小型株に資金がシフトする理由

本記事では「ラッセル2000」について解説のうえ、米小型株の今後の見通しについて紹介いたします。ラッセル2000とはラッセル2000(Russell 2000)とは、米国株式市場において小型株のパフォーマンスを反映する株価指数で、米国証券取引所に上場している銘柄のうち時価総額上位1001位から3000位の銘柄で構成されています。小型株は経済動向に対して敏感であり、大型株よりもリスクが高いと考えられていることから、ラッセル2000は米国経済の健全性やリスク許容度を測る手段ともなっています。米小型株に資金がシフトする理由?足元では、米連邦準備理事会(FRB)の9月利下げ観測と米経済の底堅さを示す経済指標の発表をきっかけに、大型テック株から中小型株への資金シフトしつつあり、ラッセル2000は8月5日の安値から約9%上昇しています。利下げの恩恵を受けやすいアナリストの中には、今が中小型株のポジションを増やすのに好機であり、FRBの政策転換によりラッセル2000指数は40%上昇する可能性があると考える人もいます。ラッセル2000を構成する企業の約4割は赤字であり、変動金利の負債を抱えています。短期金利の低下は借入コストの低下につながり、こうした企業にとって有利に働く経済状況といえます。8月23日のジャクソンホール会議にて、パウエル議長はインフレ鈍化の面に進展が見られるとの認識を示し「政策を調整する時が来た」と述べ、早くて9月に利下げを開始するとの見通しを裏付けました。一方、雇用市場のリスクが指摘されており、9月6日に発表が予定されている雇用統計が、利下げのタイミングとペースを見通す判断材料として大きく注目を集めています。出遅れ感あり、相対的に割安歴史的に、大型株に対して小型株の相対評価が現在ほど低いのは、1999~2000年のドットコムバブルと2007年の金融危機の2回のみで、長期投資家にとって潜在的な機会となっています。ラッセル2000の株価収益率は15倍程度で取引され、S&P500の26倍、ナスダックの33倍と比べて魅力的な水準となっています。

トリプルウィッチングとは?市場の変動に注意

トリプルウィッチングとは?市場の変動に注意

トリプルウィッチング(Triple Witching)とは、米国市場において個別株オプション・株価指数先物・株価指数オプションの3つのデリバティブ商品が同日に決済期日を迎えることを指します。この日は投資家が期限切れのポジションをクローズ、ロールアウト、または相殺するため、特に取引の最後の1時間に取引活動が急増する傾向があり、市場のボラティリティが高まることが特徴です。トリプルウィッチングは通常、3月、6月、9月、12月の第3金曜日に発生します。2024: 3月15日 / 6月21日 / 9月20日 / 12月20日2025: 3月21日 / 6月20日 / 9月19日 / 12月19日2026: 3月20日 / 6月19日 / 9月18日 / 12月18日クアドラプルウィッチングとはまた、トリプルウィッチングに加えてもう1つ個別株先物の満期が重なり、4つの金融商品が同日に決済期日を迎える現象をクアドラプルウィッチング(Quadruple Witching)といいます。この日もトリプルウィッチングと同様に、3月、6月、9月、12月の第三金曜日に訪れます。ただし、個別株先物は2002年11月から2020年9月まではシカゴ取引所で取引されていましたが、現在は米国で取引されていません。トリプルウィッチングは強気か弱気か歴史的に見ると、トリプルウィッチングの日は市場にとって「上昇」の日でも「下降」の日でもなく、市場の方向性を予測するのが非常に難しい日です。取引量と流動性が増える傾向があるため、一部の投資家は短期的な取引チャンスとして捉えることがありますが、多くの投資家はこの日の動きを基に来週以降の市場動向を読み解くことを避ける傾向があります。また、重要な経済指標の発表やFOMCの政策決定など、より広範なマクロ経済イベントが重なると、市場に大きな動きを引き起こす可能性があることに注意することが重要です。

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バリュー投資とグロース投資とは?投資戦略の選び方

バリュー投資とグロース投資とは?投資戦略の選び方

本記事では、バリュー投資とグロース投資について紹介し、投資スタイルの選び方のポイントを解説します。バリュー投資とはバリュー投資は、ウォーレン・バフェット氏も活用する運用手法で、企業の実態に比べて、株価が割安な銘柄に投資する方法です。優良企業なのに市場が注目していない場合や、悪材料の発表に市場が過剰反応した場合、このような状態になります。特徴低PER(株価収益率)や低PBR(株価純資産倍率)の企業を選定配当利回りが高い企業が多い長期的に安定したリターンを期待経済不況時にも安定感を持つメリットリスクが比較的低い: 割安な株を選ぶため、投資資金が減少するリスクが少ない配当収入: 高配当銘柄が多いため、インカムゲインが得られやすいデメリット成長性が低い: 割安な株は成長余地が少ない場合が多く、大きなキャピタルゲインが得られにくい市場評価の遅れ: 真の価値が市場で認められるまで時間がかかることがあるグロース投資とはグロース投資は、企業の売上高や利益が急速に伸びている企業に投資する方法で、株価の上昇から利益を得ることを目指す投資戦略です。マグニフィセント7銘柄への投資など、グロース株にはITや先進技術を扱う企業が多いです。特徴売上高や利益が急速に伸びている企業を選定配当利回りが低い、もしくは無配当の企業が多い長期的に高いリターンを期待市場の景気拡大時に高いパフォーマンスを示すメリット成長性が高い: 高成長企業に投資するため、大きなキャピタルゲインが期待できる市場のトレンドに乗りやすい: 成長株は市場の注目を集めやすく、短期的にも価格上昇が見込まれる。デメリットリスクが高い: 企業の成長が期待通りにいかない場合のリスクが高い配当が少ない: 利益を再投資に回すため、配当が少ないか無配当の企業が多いバリュー投資とグロース投資の選び方バリュー投資とグロース投資はそれぞれ異なる魅力を持っています。バリュー投資は安定性と配当収入を重視し、グロース投資は成長性と高リターンを狙います。どちらの投資戦略が適しているかは、あなたの投資目標やリスク許容度、市場環境によります。以下のポイントを参考に、自分に合った投資スタイルを見つけてください。1. リスク許容度リスクを抑えたい場合はバリュー投資高リターンを狙い、リスクを取れる場合はグロース投資グロース株とバリュー株を比べると、株価の振れ幅はグロース株のほうが大きいです。つまりグロース投資は「ハイリスク・ハイリターン」、バリュー投資は相対的に「ローリスク・ローリターン」といえます。2. 投資期間長期的に安定したリターンを狙うならバリュー投資中長期で大きな成長を狙うならグロース投資バリュー投資は、長期的な視点で見ると、市場の変動に対して安定したパフォーマンスを示しやすい傾向にあります。一方、成長株は市場の注目を集めやすく、短期間で価格が上昇する可能性があります。3. 市場環境金利上昇局面や経済が後退している時期にはバリュー投資金利低下局面や経済成長が期待される時期にはグロース投資高金利環境下では、既に安定した収益を上げている企業が評価されやすく、配当利回りの高い銘柄が魅力的になるため、バリュー投資が有利になります。一方、低金利環境下では、高成長が期待される企業が資金を調達しやすくなり、株価も上昇しやすいため、グロース投資が有利になります。また、景気が拡大している時期には、企業の業績が全般的に好調となるため、グロース投資が有利です。反対に、景気が後退している時期には、安定した収益を上げている企業や割安な株が見直されやすいため、バリュー投資が有利です。不況時には市場全体が下落することが多いですが、バリュー株は比較的安定したパフォーマンスを示すことがあります。

なぜポートフォリオが投資で重要なのか?作成・運用のコツを解説

なぜポートフォリオが投資で重要なのか?作成・運用のコツを解説

ポートフォリオとは、投資を行う株式や債券などの金融資産の組み合わせを意味します。「何に、どのくらい投資するか」という保有したい資産と比率の2つを決めることで、ポートフォリオは作成でき、その資産配分を「アセットアロケーション」といいます。例えば、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の上場ポートフォリオは、アップルをはじめとする41銘柄で構成されており、上位5銘柄で75%以上の資産配分となっています。なぜ、ポートフォリオが投資で重要なのか?リスクヘッジができる複数の資産・銘柄に資産を分散させて運用することによって、一つの資産の一つの銘柄を保有する場合よりも期待する利益やリスク許容度に近い投資を行うことができます。リスクの異なる資産をどのくらいの比率で持つのか視覚的にわかるようにすることで、いま運用している銘柄でリスクを分散できているか、またリスクの取り方や期待する利益が自分の利益に見合ったものになっているかを確認することができます。ポートフォリオの違いによるリスク度合いの変化については、以下の動画をご覧ください。始めのうちは高いリターンを求めてリスクの大きい資産を運用していた人も、生活の変化によって、リスクの低い資産を多く持って資産をできるだけ減らさないようにしたいと考えるようになるかもしれません。そうした際にもポートフォリオがあると、持っている資産とその比率から「この資産をもう少し増やしておこう」「代わりにこれはもう少し減らしてしまおう」といったことを考えやすくなります。どうやってポートフォリオを作ればいいの?ポートフォリオに正解はなく、投資のゴールやリスク許容度、投資のスタイルに応じて様々な組み合わせのポートフォリオを作ることができます。特に以下のようなポイントは、あなたならではのポートフォフォリオを作るヒントになるでしょう。1. 投資対象の特徴を理解する投資をするにあたっては、株式や債券、不動産等、様々な資産に投資をすることができます。また、例えば株式の中でも特定の会社の株式に投資をするのか、それらを組み合わせたETFに投資をするのかによって将来的な利益もリスクも大きく異なります。例えば、一般的に株式は比較的将来的に大きな利益を期待できる一方でリスクが大きく、反対に債券は将来的に期待できる利益は小さい一方でリスクも小さいと言われています。2.リスクの分散度合いを理解する一般的にはより多くの銘柄を保有することで、リスクは分散できると考えられます。しかしながら、仮に多くの銘柄を保有していたとしても、必ずしもリスクを分散できていない可能性もあります。例えば、あなたが仮に銀行の株式を3つ保有していた場合には、もちろん一つの銀行の株式を保有する場合よりもリスクを抑えた投資を行うことができますが、銀行の業界全体で株価が下がった場合には、あなたの資産もその分減ってしまいます。銀行の他にもエネルギーやヘルスケア等他のセクターの会社の銘柄を保有しておくことで、よりリスクを分散することができます。このように、業種や地域、さらには資産を分散して投資できているかをみることによって、リスクを分散できているかどうかを確認することができます。あなたならではのポートフォリオを作成するのに困った時は、専門家や著名な投資家が実際に作成しているポートフォリオや、あなたの身の回りの人が作成しているポートフォリオを参考にしてみることをお勧めします。ポートフォリオを作ったあとはどうすればいいの?ポートフォリオとは、「一回作ったら終わり」というものではなく、継続的に見直しをしていく必要があります。資産配分が目標に沿っているかどうかを確認仮に株式を50%、債券を50%のポートフォリオを作成したとします。始めのうちはあまり大きな変化はありませんが、時間が経って、例えば、株式の値段が上がり、債券の値段が下がることで株式が70%、債券が30%のポートフォリオになってしまうことがあります。この場合にはあなたが当初想定していたリスク許容度とは異なるポートフォリオを保有してしまうことになります。そのため、始めに作成していたポートフォリオに合わせて保有する資産を調整する必要があります。このように、当初想定していたポートフォリオと実際に保有しているポートフォリオがずれてしまった時に、売買を行うことによって再度資産の比率を当初想定していた比率に調整することを「リバランス」といいます。リバランスをすることで、当初想定していたポートフォリオを継続的に保有し続けることができます。投資戦略の調整また、生活環境の変化等によってポートフォリオの見直しも必要になってきます。最初は大きな利益を求めてリスクの大きい資産を多く持っていたとしても、生活が変化し、投資のゴールやリスクの許容度も変化すると、それに合わせてリスクの小さい資産の比率を増やしたりと、あなたの生活に合わせてポートフォリオ自体を変える場合も出てきます。ポートフォリオを作成し、投資をした後も、ポートフォリオの運用状況や生活の変化に応じた投資のゴール、リスクの許容度を定期的に見直していけると良いでしょう。

【徹底解説】FRBとFOMCの基礎知識と投資家が注目すべきポイント

【徹底解説】FRBとFOMCの基礎知識と投資家が注目すべきポイント

FRBの動向は金融市場に大きな影響を与え、FOMCの発表内容を理解することは投資判断において重要な材料となります。本記事では投資家が抑えておくべき、FRBとFOMCの役割や注目すべきポイントについて詳しく解説します。目次FRBとはFOMCとはFOMC参加者の投票権と金融政策スタンス四半期に1度公表される「経済見通し」と「ドットチャート」FRBとは米連邦準備制度理事会(FRB, The Federal Reserve Board)は米国の中央銀行に相当する組織で、1913年の連邦準備法成立により設立されました。FRBの主な役割は「雇用の最大化」と「物価の安定」で、米経済の情勢を判断し、適切な金利政策を実行することで経済の安定と成長を図ります。また、全米12地区の連邦準備銀行(地区連銀)の業務を監督する権限を付与されており、日本でいうと日本銀行と金融庁の役割をあわせ持つ組織になります。FRBは7名の理事から構成され、うち議長1名、副議長1名、金融監督担当副議長1名が含まれます。理事は大統領が任命し、上院議会の承認を得て就任します。FOMCとは連邦公開市場委員会(FOMC, Federal Open Market Committee)は、FRBが開催する米国の金融政策を決定するための会合です。FOMCは通常年に8回開催され、2024年の開催日程は以下のとおりです。2024年のFOMC開催予定1月30-31日3月19-20日4月30-5月1日6月11-12日7月30-31日9月17-18日11月6-7日12月17-18日FOMC参加者の投票権と金融政策スタンスFOMCの会合では、参加者19名(FRB理事7名と地区連銀総裁12名)のうち理事7名と地区連銀総裁5名が政策決定の投票権を持ちます。理事とニューヨーク地区連銀総裁は、常に投票権を持つ常任メンバーですが、残りの4名の地区連銀総裁は、輪番制により1年の任期となります。政策決定は多数決で決まるため、「タカ派、ハト派」と呼ばれるFOMC参加者の金融政策スタンスを把握することが重要になります。タカ派は金融引き締め寄りの政策を支持する人のことを呼び、反対にハト派は金融緩和的な政策を支持する傾向がある人のことを呼びます。2024年のFOMCで投票権を持つメンバーの政策スタンス<常任メンバー>パウエル議長:中立ジェファーソン副議長:ハト派バー金融監督担当副議長:中立ボウマン理事:タカ派ウォラー理事:中立クック理事:ハト派クグラー理事:ハト派ウィリアムズニューヨーク連銀総裁:中立<メンバー>メスタークリープランド連銀総裁:中立バーキンリッチモンド連銀総裁:中立ボスティックアトランタ連銀総裁:タカ派デイリーアトランタ連銀総裁:中立FOMCの経済見通しと「ドットチャート」FOMCの終了後には声明文が発表され、3月、6月、9月、12月の会合では「経済予想サマリー(SEP, Summaru of Economic Projections)」という経済見通し資料をあわせて発表します。これはFOMC参加者の経済予想を集計したもので、実質GDP成長率、失業率、インフレ率、政策金利の見通しの要素を含みます。これらの予測は米経済の情勢を示し、金融政策の方向性を示す重要な指標です。なかでも、米国の短期金利であるFF(フェデラルファンド)レートの水準を点として図示した、「ドットチャート」からは利上げ/利下げ幅を予測できることから市場からの注目が高くなっています。3月会合で発表されたドットチャート(出典: FOMC)例えば、3月のFOMCで示された政策金利の見通しでは年内利下げ回数は3回でしたが、ドットプロットに着目すると19人の参加者のうち約半数の9人が利下げを2回以下に留めており、FFレートの上振れと利下げ期待の後退リスクを予想できます。また、ここでFOMC参加者の政策スタンスを理解していると、それぞれのドットが誰かと考えることができ、誰がスタンスを変更すると政策決定に大きな影響があるか(利下げ見通しに慎重なタカ派姿勢が中立派のメンバーに波及すると、利下げが遠のくなど)検討をつけることもできます。FRBがどのような政策方針を示すかを市場はあらかじめ予想して、相場に織り込んでいます。この予想と実際の結果に大きな差分があると、市場が大きく動く要因となります。FRB動向について、より理解を深めたい方は以下の経済指標解説記事もぜひご覧ください。経済指標は、連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を決定する際の重要な情報源であり、パウエル議長をはじめとするFRB高官は「米政策金利の次の動きはデータ次第で判断」と繰り返し発言をしています。

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