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【米国株見通し】米中相互関税削減でリスクオン回帰、再び高値更新なるか

【米国株見通し】米中相互関税削減でリスクオン回帰、再び高値更新なるか

5月12日、米国と中国が相互に発動していた関税を90日間大幅に引き下げることで合意したことを受け、米ドルと米国株先物が急上昇しました。投資家の不安心理を示すVIX指数は20を下回り、市場はリスクオンに回帰しています。本記事では、米国株の短中期的見通しについて市場関係者の見方を紹介します。予想を上回る合意内容で投資家心理改善多くの市場関係者が、米中協議の結果は対話の枠組み設定や60%未満の関税引き下げにとどまると見ていたなか、米中双方の115%の関税引き下げ合意は予想を大きく上回りました。猶予期間も90日間と比較的長く、機関投資家が株式投資比率の拡大を検討しているタイミングと重なったことで、投資家心理が大きく改善しています。一方で、今回の合意内容が「市場のベストシナリオ」に近い結果となったことから、今後関税を巡って追加の好材料が出たとしても、市場への影響は限定的になるとの指摘もあります。アナリストの間では、市場の注目テーマは関税から次の材料へ移り始めているとの見方が広がっています。中期的な焦点は、利下げ動向と減税案の行方に現在、S&P500とナスダック100指数はいずれも200日移動平均線を上回っており、米国株式市場は元値回復を目指す展開が予想されます。中期的には、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げスタンスや企業業績の動向を見極めていくことが重要となります。利下げ観測は年内2回へ後退本格的な貿易戦争は回避され、米国は景気後退にはならない可能性が高いとの見方から、5月12日時点のFedWatchでは7月のFOMC会合では利下げ見送りの可能性が高く、9月と10月会合で0.25%ずつの利下げが実施されるとの見方が優勢です。足元の経済指標は米国経済と労働市場の底堅さを示しており、相互関税率が10%程度に落ち着き、薬価引き下げが進めば、2025年を通じてインフレは緩やかに低下するとの見通しもあります。次回の6月FOMCでは、参加者それぞれの金利見通しを示す「ドットプロット」が発表され、注目されるポイントとなります。減税法案が追い風になる可能性もまた、トランプ大統領が掲げる減税案はまだ株価に織り込まれておらず、米国株の上昇を支援する可能性があります。5月9日に米下院歳入委員会は税制案の一部を公表し、13日に採択が予定されています。ただし、懸念されるのは財政悪化です。減税による財源の確保が最大の課題となっており、今後の議論の行方に注目が集まります。今後の注目イベント5月13日:消費者物価指数(CPI)5月14日:生産者物価指数(PPI)・小売売上高5月15日:パウエル議長講演5月28日:NVIDIA決算5月末:税制法案の成立目標6月17-18日:FOMC

米英関税交渉成立するも米中交渉は不透明感を残し、株式市場は様子見の展開に|米国市場サマリー

米英関税交渉成立するも米中交渉は不透明感を残し、株式市場は様子見の展開に|米国市場サマリー

先週は、トランプ大統領の関税政策や米中貿易協議、FOMCを巡り乱高下しました。週初は外国映画への関税導入やOPECプラスの増産発表で反落し、ヘルスケア株やエネルギー株が売られました。その後も医薬品関税の可能性で市場心理は悪化しましたが、FRBの金利据え置きや、半導体の輸出規制緩和報道、Disneyの好決算が市場を押し上げました。米英貿易協定の成立も好感されましたが、週末に米中協議を控えて慎重姿勢が強まり、トランプ氏が再び中国への高関税を示唆したため、不透明感の残る展開で引けました。為替は、米国の日本関税免除拒否報道と米指標軟化で円買いが先行し週安値142.35円になりましたが、日銀成長見通し下方修正で利上げ後ズレ観測が浮上して円売りに転じ、7日に143円台後半へ反発。米中協議の関税緩和観測で8日に146.19円、9日は協議日程確定とパウエル議長の利下げ慎重発言で145.36円で引けました。米国株式市場:関税政策と貿易交渉の進展で相場は乱高下するも週間ではフラット5月5日(月) 米国株式市場は反落し、S&P500は9営業日続いた連騰が終了しました。トランプ大統領が外国映画への関税を発表したことが影響し、Netflix(-1.9%)、Amazon(-1.9%)、Paramount Global(-1.6%)など映像関連銘柄が下落しました。OPECプラスが増産を決定したため、エネルギー株が売られ、セクター全体で2%下落しました。また、ウォーレン・バフェット氏がバークシャー・ハサウェイCEO退任を発表したことを受け、同社株は5.1%の大幅安。投資家は週内に開催されるFOMCを前に慎重な姿勢を強めています。5月6日(火) 市場は続落しました。トランプ大統領とベセント財務長官が貿易関税に関するコメントを発表したものの、明確な進展がなく、市場の不安感が残りました。特に医薬品に対する関税発表を控え、ヘルスケアセクターが大幅に下落。イーライ・リリー(-5.6%)、モデルナ(-12.3%)が急落しました。米国の3月貿易赤字が過去最大の1405億ドルに達し、関税措置前の駆け込み輸入が原因と指摘されています。データ分析企業パランティアは決算が予想を下回り、12%下落。一方、決算が好調だった電力大手コンステレーション・エナジーは10.3%上昇しました。5月7日(水) 市場は反発。FRBは政策金利を4.25~4.50%のレンジで据え置きましたが、トランプ政権の関税政策により経済の不透明感が高まっているとの見解を示しました。この日は序盤、不安定な動きが続きましたが、終盤にトランプ政権が人工知能(AI)向け半導体輸出規制の緩和を検討しているとの報道を受け、エヌビディアをはじめとする半導体株が急伸。フィラデルフィア半導体指数は1.7%上昇しました。またDisneyは予想を上回る好決算を発表し、10.8%高でダウを押し上げました。一方、Alphabetは7%超の下落となり、NASDAQ指数の伸びを抑えました。5月8日(木) 株式市場は続伸しました。米英間で新たな貿易協定が結ばれ、英国が米国製品への関税を引き下げることを決定し、市場心理が改善。航空株が特に買われ、デルタ航空は7.2%高、ボーイングも3.3%高となり、航空関連指数が5.4%上昇しました。また、週末の米中貿易協議を巡ってトランプ大統領が合意に前向きな姿勢を示したことも支援材料に。半導体輸出規制の撤廃・緩和期待が継続し、フィラデルフィア半導体指数も1%高。一方、Armは業績見通しが市場予想を下回り、6.2%の下落。小型株指数ラッセル2000は1.9%高と、4月2日の関税発表以降の最高値を記録しました。5月9日(金) 市場はほぼ変わらずで引けました。週末に控える米中貿易協議の行方に投資家が慎重姿勢を強めたことが影響。トランプ大統領がSNS上で中国への80%の関税導入を示唆したため、貿易協議への警戒感が再燃しました。原油価格が堅調でエネルギーセクターは1.1%高、一方でヘルスケアセクターは1.1%の下落。個別ではオンライン旅行大手のエクスペディアが業績の悪化を嫌気され、7.3%下落しました。週間では主要指数が小幅なマイナスとなり、S&P500は週間で0.47%安、NASDAQは0.27%安、ダウ平均は0.16%安でした。為替市場:経済指標軟化で一時的に円高が進むが、米中協議の進展と日銀利上げ後ずれ予想で円安に為替は、米国が日本の関税免除要請を拒んだとの報道や米指標軟化を受けリスク回避の円買いが先行し、6日には週安値142.35円を付けました。しかし前週の「日銀成長見通し下方修正で追加利上げ後ずれ」との見方が改めて意識され円売りが優勢に転じると、7日には143円台後半へ反発しました。8日は米新規失業保険申請が予想外に増えたものの、米中がジュネーブ協議へ向け関税緩和を協議しているとの観測が広がり、ドル買い優勢で高値146.19円を記録しました。9日は米中協議日程確定とパウエル議長の利下げ慎重発言を受けた米金利上昇が支えとなり、145.36円で週を終えました。週間レンジは約3.8円(142.35〜146.19円)で、①米中通商ヘッドライン、②日銀の「ハト派据え置き」、③米労働・雇用統計への思惑が値動きを左右しました。今週のマーケット:CPI発表でインフレ動向はどうなるか今週(2025/5/12-5/16)は、注目指数のCPIの発表があり、インフレ傾向に関心が集まります。また、米国と各国との貿易交渉の進捗にも注目です。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

【バフェット年末退任】後継グレゴリー・アベル氏とは何者か

【バフェット年末退任】後継グレゴリー・アベル氏とは何者か

ウォーレン・バフェット氏は、年末にバークシャー・ハサウェイの最高経営責任者(CEO)を退任し、後任としてグレッグ・アベル副会長が2026年1月1日付でCEOに就任します。バフェット氏は引き続き同社の執行会長を務めます。本記事では、アベル氏の人物像とこれまでのキャリアを解説します。アベル氏の人物像とキャリアの歩み 年表1962 カナダ アルバータ州エドモンド生まれ1984 アルバータ大学で会計学学士を取得、PwC入社1992 地熱発電会社カルエナジー入社1998 カルエナジーがミッドアメリカン・エナジーを買収2000 バークシャーがミッドアメリカンの経営権を取得2008 ミッドアメリカンCEOに就任2011 同会長に就任2014 ミッドアメリカンがバークシャー・ハサウェイ・エナジーに改名2018 バークシャー取締役に就任、非保険事業を統括2021 バークシャーの後継者として公式に言及される2026 バークシャーCEOに就任予定ホッケーと育った青年期、キャリアは会計事務所からカナダ・エドモントンの平原地帯で生まれ育ったアベル氏は、幼い頃からホッケーに熱中していました。叔父のシド・アベル氏(元デトロイト・レッドウィングスの名選手)の影響もあり、毎日のように氷上で過ごす中で、チームプレーの重要性とリーダーシップを学んだと言います。1984年にアルバータ大学で会計学士を取得し、同年プライスウォーターハウスクーパース(PwC)に入社。公認会計士としてキャリアをスタートさせました。その後さらなる活躍の場を求めて、サンフランシスコ支社に異動しました。1992年、クライアントの一つであった地熱発電会社会社カルエナジーへ入社。当時のCEOは、のちにバフェット氏の後継者候補と目されたデビッド・ソコル氏でした。エネルギー事業で昇進し、大型買収を数多く手がけてきたアベル氏1998年、カルエナジーは電力・ガス会社ミッドアメリカン・エナジーを40億ドルで買収。アベル氏はソコル氏の要請で、合併後の新会社ミッドアメリカンの社長に就任しました。2000年に、バークシャー・ハサウェイ、ソコル氏、アベル氏、ウォルター・スコット氏(バークシャー元取締役で主要株主)らによって、会社は非公開化され、バークシャー傘下となりました。2008年、ソコル氏がバークシャー傘下のネットジェッツ再建を担当するためCEOを退いた後、アベル氏がミッドアメリカンのCEOに昇格。2011年には会長職を兼務し、同社を多角的なエネルギー企業へと成長させました。特に、エンロンのガスパイプラインと英国企業ノーザン・エレクトリックの買収など、大型ディールを冷静かつ着実に進めた手腕は高く評価されています。バフェット氏は長年にわたり、アベル氏とソコル氏の両名を「非常に優れた経営者」と高く評価していました。(ソコル氏は、バークシャーに対し買収を勧めていた化学会社ルーブリゾール社に事前に投資をしていたことが発覚し、2011年に辞任しました。)2014年、ミッド・アメリカンは「バークシャー・ハサウェイ・エナジー(BHE)」に社名を変更。アベル氏は米国、英国、カナダ、フィリピンで11の子会社を率いることになります。2018年にはバークシャーの取締役会に就任。非保険部門(合計90社以上)の統括を任され、後継者候補として注目される存在となりました。現在も、BHEの会長兼CEO、およびバークシャーの副会長として非保険事業全体を指揮しています。2021年にバークシャー後継CEOとして言及2021年5月、バークシャーの株主総会で、故チャーリー・マンガー氏はアベル氏がバフェット氏の後継者候補であることを示唆。その後、2024年2月に公開された株主への手紙では、バフェット氏はアベル氏について「あらゆる面で、明日にでもCEOに就任する準備が整っている」と強く支持を表明しました。今年2月の株主への手紙においても、経営トップ交代の近さを示唆し、「グレッグは、バークシャーの信条である『報告』こそがバークシャーのCEOが株主に対して毎年負うべき義務であるという考え方を共有している」と述べています。5月3日の株主総会では、アベル氏の経営スタイルについての質問に対して、バフェット氏は「トップとしてきちんと振る舞い、私利私欲で動かない人材が重要です。グレッグはその点でしっかりとした対処をしています。私はそこまで徹底できていなかったかもしれません」と答えています。また、チャーリー・マンガー氏も2023年のインタビューで、アベル氏を「考える力と行動力を兼ね備えた、驚異的なビジネスリーダー」と称賛。「他者を通して物事をスムーズに進める」に秀でた人物だと高く評価しています。バフェットポートフォリオを簡単コピー?ブルーモ証券では、バークシャーのポートフォリオをワンタップでコピーし、投資を始めることができます。株式のみで構成されるポートフォリオのほか、米短期債を含む手元資金を反映したポートフォリオのコピーもできますし、そこから変更を加えてオリジナルのポートフォリオの作成も可能です。

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【バフェット年末退任】後継グレゴリー・アベル氏とは何者か

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ウォーレン・バフェット氏は、年末にバークシャー・ハサウェイの最高経営責任者(CEO)を退任し、後任としてグレッグ・アベル副会長が2026年1月1日付でCEOに就任します。バフェット氏は引き続き同社の執行会長を務めます。本記事では、アベル氏の人物像とこれまでのキャリアを解説します。アベル氏の人物像とキャリアの歩み 年表1962 カナダ アルバータ州エドモンド生まれ1984 アルバータ大学で会計学学士を取得、PwC入社1992 地熱発電会社カルエナジー入社1998 カルエナジーがミッドアメリカン・エナジーを買収2000 バークシャーがミッドアメリカンの経営権を取得2008 ミッドアメリカンCEOに就任2011 同会長に就任2014 ミッドアメリカンがバークシャー・ハサウェイ・エナジーに改名2018 バークシャー取締役に就任、非保険事業を統括2021 バークシャーの後継者として公式に言及される2026 バークシャーCEOに就任予定ホッケーと育った青年期、キャリアは会計事務所からカナダ・エドモントンの平原地帯で生まれ育ったアベル氏は、幼い頃からホッケーに熱中していました。叔父のシド・アベル氏(元デトロイト・レッドウィングスの名選手)の影響もあり、毎日のように氷上で過ごす中で、チームプレーの重要性とリーダーシップを学んだと言います。1984年にアルバータ大学で会計学士を取得し、同年プライスウォーターハウスクーパース(PwC)に入社。公認会計士としてキャリアをスタートさせました。その後さらなる活躍の場を求めて、サンフランシスコ支社に異動しました。1992年、クライアントの一つであった地熱発電会社会社カルエナジーへ入社。当時のCEOは、のちにバフェット氏の後継者候補と目されたデビッド・ソコル氏でした。エネルギー事業で昇進し、大型買収を数多く手がけてきたアベル氏1998年、カルエナジーは電力・ガス会社ミッドアメリカン・エナジーを40億ドルで買収。アベル氏はソコル氏の要請で、合併後の新会社ミッドアメリカンの社長に就任しました。2000年に、バークシャー・ハサウェイ、ソコル氏、アベル氏、ウォルター・スコット氏(バークシャー元取締役で主要株主)らによって、会社は非公開化され、バークシャー傘下となりました。2008年、ソコル氏がバークシャー傘下のネットジェッツ再建を担当するためCEOを退いた後、アベル氏がミッドアメリカンのCEOに昇格。2011年には会長職を兼務し、同社を多角的なエネルギー企業へと成長させました。特に、エンロンのガスパイプラインと英国企業ノーザン・エレクトリックの買収など、大型ディールを冷静かつ着実に進めた手腕は高く評価されています。バフェット氏は長年にわたり、アベル氏とソコル氏の両名を「非常に優れた経営者」と高く評価していました。(ソコル氏は、バークシャーに対し買収を勧めていた化学会社ルーブリゾール社に事前に投資をしていたことが発覚し、2011年に辞任しました。)2014年、ミッド・アメリカンは「バークシャー・ハサウェイ・エナジー(BHE)」に社名を変更。アベル氏は米国、英国、カナダ、フィリピンで11の子会社を率いることになります。2018年にはバークシャーの取締役会に就任。非保険部門(合計90社以上)の統括を任され、後継者候補として注目される存在となりました。現在も、BHEの会長兼CEO、およびバークシャーの副会長として非保険事業全体を指揮しています。2021年にバークシャー後継CEOとして言及2021年5月、バークシャーの株主総会で、故チャーリー・マンガー氏はアベル氏がバフェット氏の後継者候補であることを示唆。その後、2024年2月に公開された株主への手紙では、バフェット氏はアベル氏について「あらゆる面で、明日にでもCEOに就任する準備が整っている」と強く支持を表明しました。今年2月の株主への手紙においても、経営トップ交代の近さを示唆し、「グレッグは、バークシャーの信条である『報告』こそがバークシャーのCEOが株主に対して毎年負うべき義務であるという考え方を共有している」と述べています。5月3日の株主総会では、アベル氏の経営スタイルについての質問に対して、バフェット氏は「トップとしてきちんと振る舞い、私利私欲で動かない人材が重要です。グレッグはその点でしっかりとした対処をしています。私はそこまで徹底できていなかったかもしれません」と答えています。また、チャーリー・マンガー氏も2023年のインタビューで、アベル氏を「考える力と行動力を兼ね備えた、驚異的なビジネスリーダー」と称賛。「他者を通して物事をスムーズに進める」に秀でた人物だと高く評価しています。バフェットポートフォリオを簡単コピー?ブルーモ証券では、バークシャーのポートフォリオをワンタップでコピーし、投資を始めることができます。株式のみで構成されるポートフォリオのほか、米短期債を含む手元資金を反映したポートフォリオのコピーもできますし、そこから変更を加えてオリジナルのポートフォリオの作成も可能です。

金融市場の米国離れ、国際分散先として有望な国・地域は

金融市場の米国離れ、国際分散先として有望な国・地域は

2025年米国の経済安定性やドルの信頼性に対する懸念が高まる中、投資家が米国資産を売却し、他の資産へと資金を移す「米国離れ(Sell America)」の動きが加速しました。先週、貿易交渉進展への期待から米主要指数は上昇したものの、米国資産の信頼性への懸念は続いており、投資家は世界的に資産を再配分し始めています。本記事では、米国からの国際分散先として有望な地域を紹介いたします。米国資産から流出した資金は欧州やアジアにモルガンスタンレーのポートフォリオ・マネジャーのヴィシャール・カンドゥジャ(Vishal Khanduja)氏は、米国資産から流出した資金は欧州や日本が引きつけていると述べています。またバーンスタインは、アジアが引き続き好調を維持すると予想しており、日本、インド、韓国を最も魅力的な市場として挙げています。欧州: 長期上昇期待も、銘柄の選定が重要に2025年、欧州先進国の主要銘柄で構成されるストックス600指数のパフォーマンスはS&P500指数を上回り、ドイツの主要株価指数であるDAX指数は年初来約12%上昇と堅調なパフォーマンスを見せています。上昇の背景には、EU(欧州連合)とドイツの財政拡張、欧州中央銀行(ECB)の利下げ、ウクライナ和平合意の可能性によるエネルギー価格の下落期待、中国の景気刺激策による輸出企業への追い風、好調な企業収益といった複数の要因があり、これらは今現在も健在であることから欧州株の回復モメンタムは今後数ヶ月間継続する可能性があります。一方で、トランプ政権による関税政策が特に自動車セクターに対して打撃を与えるリスクや、ウクライナ和平が成立してもロシア依存の脱却を目指すEUの方針からエネルギー価格が期待ほど下落しない可能性など、いくつかのリスク要因も存在します。アナリストらは、長期的には「欧州第一主義」的な政策スタンスや財政支援が市場を下支えすると予想していますが、株価水準は過去に比べて割高感も意識され、銘柄の選定とポートフォリオのバランスが求められます。日本: 割安感と収益性改善で株価回復か日本株は米関税政策の影響で一時急落しましたが、市場関係者の間では4月上旬の安値が大底との見方が広がり始めています。米国市場の​株価純資産倍率(PBR)が3.9倍であるのに対し、TOPIX指数は1.3倍と大幅に割安であり、予想株価収益率(PER)も13倍と過去最低水準に近づいています。さらに、日本株はコーポレートガバナンスの改善や収益性の向上により上振れの可能性も期待され、魅力的な投資先とみなされています。また、日本も米関税政策の影響を受けると想定されていますが、他の国や米国と比較すると影響は小さいと予想する声が多くなっております。インド: 貿易合意期待も地政学リスクが脅威にインド株は昨年9月後半以降、低調な動きが続いていましたが、足元では米関税政策の影響が限定的との見方から海外投資家の資金が流入し、株価指数が上昇しています。4月28日に、ベッセント米財務長官が最初の貿易合意はインドとの間で締結される可能性が高いとの見通しも示したことも市場心理をさらに押し上げました。また今年2月には、インド政府が所得税の減税を盛り込んだ2025年度予算案を発表したほか、4月9日にインド準備銀行(中央銀行)が2月に続いて2会合連続の利下げを実施し、さらなる追加利下げの余地を示唆しました。これらの政策は、インドの景気を中長期に後押しすることが期待されています。ただし、直近ではカシミール地方で発生したテロ事件をめぐり、パキンスタンとの緊張が高まっており、4月29日にインド財務省は貿易摩擦と地政学リスクが2025/2026年度の経済成長に悪影響を及ぼす可能性があるとの見解を示しています。

米国債務上限問題とは、市場はデフォルトリスク警戒

米国債務上限問題とは、市場はデフォルトリスク警戒

​2025年、米国の債務上限問題は、米金融市場の安定性に深刻な影響を及ぼしています。本記事では、「米国債務上限」とは何かを解説し、FRBの金融政策対応やトランプ政権の政策の影響も触れつつ、金融市場が直面する構造的緊張について説明します。債務上限が2025年1月から再適用「債務上限」とは、政府が国債発行などで借り入れできる金額の法的な上限を指します。これは政府支出の予算編成とは異なる枠組みで定められており、主要先進国では米国独自の制度です。​上限に達すると、議会の承認がない限り新たな借入ができなくなり、国債の元利払いが滞る「デフォルト(債務不履行)」のリスクが生じます。2023年に成立した「財政責任法」により、債務上限は一時的に停止されていましたが、2025年1月2日に約36.1兆ドルで再び適用されました。これにより、財務省は債務上限の突破を避けるために退職年金や保険基金などへの拠出を一時停止する「特別措置」で資金繰りを行っていますが、議会予算局(CBO)の推計によると、財政資金が8月に尽きる可能性が高いとしています。また、ベッセント米財務長官は、連邦政府が早ければ5月下旬から6月にかけて資金不足により一部の支払い義務を履行できなくなる恐れがあると指摘しています。米国債市場に広がる流動性リスク財政の不確実性から、安全性を重視するマネー・マーケット・ファンド(MMF)や機関投資家のリスク回避姿勢が強まる中、短期国債市場では資金枯渇見込み日前後に償還を迎える財務省短期証券(T-Bills)の流動性が低下し、利回りが上昇しています。こうした市場の機能不全を緩和すべく、連邦準備制度理事会(FRB)は2025年春に入り、量的引き締め(QT)の減速に踏み切る方針を打ち出しました。QTは、FRBが保有する国債や住宅ローン担保証券(MBS)を償還に任せる形で市場から資金を吸収するプロセスであり、4月のFOMC議事要旨では、「市場の緊張緩和と準備金の安定的な供給の必要性」を理由にQT減速を支持する声が挙がっており、6月にも月間縮小額の減額が正式に決定される可能性があります。債務上限の引き上げ時期は不透明一方、トランプ大統領が推進する減税案とともに債務上限を5兆ドル引き上げる条項が盛り込まれた「予算決議案」が米下院で可決されましたが、上院には大幅な歳出削減に反対する議員が複数いるため、最終段階で上院との対立が生じる可能性があり、債務上限の引き上げ時期は依然として不透明です。ジョンソン下院議長は、5月末までに税制法案を成立させる目標を掲げていますが、上院の共和党議員は8月までに手続きを完了できると述べています。ただし、非営利団体「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」の推定によれば、2025年の予算決議案は今後10年間の財政赤字を5.8兆ドル拡大させる恐れがあり、S&Pグローバル・レーティングは4月14日のレポートで、米国の財政状況を悪化させるようないくつかの事態が発生した場合、現在AA+である米国債の信用格付けをさらに1段階引き下げる可能性を示唆しています。つづく金融市場の構造的緊張債務上限問題、FRBの金融政策、トランプ政権の政策は、市場構造において密接に連関しています。とりわけ、関税政策の不透明感から、金融政策と財政政策の方向性が逆行するリスクは大きく、景気不安、財政不安、信用格付け懸念が同時に波及しています。今後数カ月間、議会による債務上限の見直しと、FRBによるQT減速の実行タイミングが市場の注目を集める展開となります。また、7月初旬の相互関税一時停止措置の期限が近づくにつれ、交渉の構図は一段と複雑化していくことが予想されます。今後の注目イベント5月6-7日:FOMC(QT減速の方針明確化の可能性)5月末:税制法案の成立目標6月17-18日:FOMC6月27日:特別措置延長期限7月初旬:相互関税一時停止期限

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米英関税交渉成立するも米中交渉は不透明感を残し、株式市場は様子見の展開に|米国市場サマリー

米英関税交渉成立するも米中交渉は不透明感を残し、株式市場は様子見の展開に|米国市場サマリー

先週は、トランプ大統領の関税政策や米中貿易協議、FOMCを巡り乱高下しました。週初は外国映画への関税導入やOPECプラスの増産発表で反落し、ヘルスケア株やエネルギー株が売られました。その後も医薬品関税の可能性で市場心理は悪化しましたが、FRBの金利据え置きや、半導体の輸出規制緩和報道、Disneyの好決算が市場を押し上げました。米英貿易協定の成立も好感されましたが、週末に米中協議を控えて慎重姿勢が強まり、トランプ氏が再び中国への高関税を示唆したため、不透明感の残る展開で引けました。為替は、米国の日本関税免除拒否報道と米指標軟化で円買いが先行し週安値142.35円になりましたが、日銀成長見通し下方修正で利上げ後ズレ観測が浮上して円売りに転じ、7日に143円台後半へ反発。米中協議の関税緩和観測で8日に146.19円、9日は協議日程確定とパウエル議長の利下げ慎重発言で145.36円で引けました。米国株式市場:関税政策と貿易交渉の進展で相場は乱高下するも週間ではフラット5月5日(月) 米国株式市場は反落し、S&P500は9営業日続いた連騰が終了しました。トランプ大統領が外国映画への関税を発表したことが影響し、Netflix(-1.9%)、Amazon(-1.9%)、Paramount Global(-1.6%)など映像関連銘柄が下落しました。OPECプラスが増産を決定したため、エネルギー株が売られ、セクター全体で2%下落しました。また、ウォーレン・バフェット氏がバークシャー・ハサウェイCEO退任を発表したことを受け、同社株は5.1%の大幅安。投資家は週内に開催されるFOMCを前に慎重な姿勢を強めています。5月6日(火) 市場は続落しました。トランプ大統領とベセント財務長官が貿易関税に関するコメントを発表したものの、明確な進展がなく、市場の不安感が残りました。特に医薬品に対する関税発表を控え、ヘルスケアセクターが大幅に下落。イーライ・リリー(-5.6%)、モデルナ(-12.3%)が急落しました。米国の3月貿易赤字が過去最大の1405億ドルに達し、関税措置前の駆け込み輸入が原因と指摘されています。データ分析企業パランティアは決算が予想を下回り、12%下落。一方、決算が好調だった電力大手コンステレーション・エナジーは10.3%上昇しました。5月7日(水) 市場は反発。FRBは政策金利を4.25~4.50%のレンジで据え置きましたが、トランプ政権の関税政策により経済の不透明感が高まっているとの見解を示しました。この日は序盤、不安定な動きが続きましたが、終盤にトランプ政権が人工知能(AI)向け半導体輸出規制の緩和を検討しているとの報道を受け、エヌビディアをはじめとする半導体株が急伸。フィラデルフィア半導体指数は1.7%上昇しました。またDisneyは予想を上回る好決算を発表し、10.8%高でダウを押し上げました。一方、Alphabetは7%超の下落となり、NASDAQ指数の伸びを抑えました。5月8日(木) 株式市場は続伸しました。米英間で新たな貿易協定が結ばれ、英国が米国製品への関税を引き下げることを決定し、市場心理が改善。航空株が特に買われ、デルタ航空は7.2%高、ボーイングも3.3%高となり、航空関連指数が5.4%上昇しました。また、週末の米中貿易協議を巡ってトランプ大統領が合意に前向きな姿勢を示したことも支援材料に。半導体輸出規制の撤廃・緩和期待が継続し、フィラデルフィア半導体指数も1%高。一方、Armは業績見通しが市場予想を下回り、6.2%の下落。小型株指数ラッセル2000は1.9%高と、4月2日の関税発表以降の最高値を記録しました。5月9日(金) 市場はほぼ変わらずで引けました。週末に控える米中貿易協議の行方に投資家が慎重姿勢を強めたことが影響。トランプ大統領がSNS上で中国への80%の関税導入を示唆したため、貿易協議への警戒感が再燃しました。原油価格が堅調でエネルギーセクターは1.1%高、一方でヘルスケアセクターは1.1%の下落。個別ではオンライン旅行大手のエクスペディアが業績の悪化を嫌気され、7.3%下落しました。週間では主要指数が小幅なマイナスとなり、S&P500は週間で0.47%安、NASDAQは0.27%安、ダウ平均は0.16%安でした。為替市場:経済指標軟化で一時的に円高が進むが、米中協議の進展と日銀利上げ後ずれ予想で円安に為替は、米国が日本の関税免除要請を拒んだとの報道や米指標軟化を受けリスク回避の円買いが先行し、6日には週安値142.35円を付けました。しかし前週の「日銀成長見通し下方修正で追加利上げ後ずれ」との見方が改めて意識され円売りが優勢に転じると、7日には143円台後半へ反発しました。8日は米新規失業保険申請が予想外に増えたものの、米中がジュネーブ協議へ向け関税緩和を協議しているとの観測が広がり、ドル買い優勢で高値146.19円を記録しました。9日は米中協議日程確定とパウエル議長の利下げ慎重発言を受けた米金利上昇が支えとなり、145.36円で週を終えました。週間レンジは約3.8円(142.35〜146.19円)で、①米中通商ヘッドライン、②日銀の「ハト派据え置き」、③米労働・雇用統計への思惑が値動きを左右しました。今週のマーケット:CPI発表でインフレ動向はどうなるか今週(2025/5/12-5/16)は、注目指数のCPIの発表があり、インフレ傾向に関心が集まります。また、米国と各国との貿易交渉の進捗にも注目です。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

好調なMeta/Microsoft決算、堅調な経済指標で株価上昇。日銀利上げ後退で円安に|米国市場サマリー

好調なMeta/Microsoft決算、堅調な経済指標で株価上昇。日銀利上げ後退で円安に|米国市場サマリー

先週は、株式市場は企業決算と経済指標を受けて堅調に推移しました。週前半は関税政策やGDPの予想外のマイナス成長が重しとなり不安定でしたが、MicrosoftやMetaなどハイテク大手が好決算を発表すると相場は改善。週後半には米雇用統計の強さや米中貿易摩擦緩和への期待が投資家心理を支え、S&P500とダウは8営業日続伸、NASDAQも堅調でした。ただAppleなど一部銘柄は慎重な見通しで売られました。為替は、米経済指標の弱さと関税不透明感で週前半に142円割れ寸前まで円高が進行しました​。その後、米中関税協議が歩み寄りを示し、日銀が4月30日に成長率・物価見通しを下方修正して追加利上げ観測が後退すると円安が進み、5月1日には145.73円と3週間ぶりの円安水準になりました。米国株式市場:景気の底堅さと好調なテック企業決算に支えられて上昇4月28日(月) 米国株式市場は不安定な値動きの末、ほぼ横ばいで終了しました。今週に控える主要経済指標や大型株決算を前に様子見姿勢が強まりました。半導体大手NVIDIA(-2.1%)やAmazon(-0.7%)がNASDAQの重しとなった一方、Boeingは投資判断の引き上げを受けて2.4%上昇し、ダウを支えました。アップル(+0.4%)とMeta(+0.5%)は決算期待で小幅に上昇しました。4月29日(火) 主要3指数は上昇して終了。トランプ政権が自動車と部品に対する25%関税の影響を軽減する措置を導入したことが支援材料となりました。ただ、自動車株の反応は限定的で、ゼネラル・モーターズ(GM)は通期業績予想の撤回が響き0.6%安となりました。一方、決算が好調だったHoneywell(+5.4%)やCoca-Cola(+0.8%)が買われ、相場を押し上げました。UPSはアマゾン向け配送減少を予想し0.4%安となりました。4月30日(水) 米国市場は序盤に大きく売られましたが、終盤の買い戻しでダウとS&P500は小幅高で終了。第1四半期GDPが市場予想を下回るマイナス成長(前期比年率-0.3%)となり、景気後退懸念が強まりました。ただ、個人消費支出の底堅さやインフレ緩和の兆しが見られ、スタグフレーション懸念は和らぎました。Super Micro Computerは業績見通しを引き下げ11.5%急落、Snapも見通し未公表で12.4%の大幅安となりました。5月1日(木) 市場は上昇し、ダウとS&P500はともに8営業日続伸となりました。前日に決算を発表したMicrosoft(+7.6%)とMeta Platforms(+4.2%)が好調な業績見通しを示し、投資家の安心感が高まりました。特にMicrosoftのクラウド事業「Azure」の好調が評価されました。一方、Qualcommは貿易戦争の影響を受け業績懸念が高まり8.9%安。引け後に発表したAmazonもAWSの成長鈍化を嫌気され時間外で4%近く下落しました。5月2日(金) 米国株式市場は続伸。4月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数が市場予想を上回り(17.7万人増)、景気の底堅さが意識されました。また、中国商務省が米国との関税協議再開を示唆し、米中貿易摩擦緩和への期待感が高まりました。一方、Appleは第3四半期の追加コストや自社株買い規模の縮小を嫌気され4%近く下落しましたが、Meta(+4.3%)やNVIDIA(+2.6%)など大型ハイテク株は堅調でした。石油大手Chevron(+1.6%)とExxon Mobil(+0.4%)も決算が評価されました。為替市場:米中の関税交渉進展と日銀の利上げ観測後退で円安が進む為替は、米中貿易摩擦の緩和期待や日銀の政策スタンスを背景に、円安・ドル高が進行しました。​週初は、米国の関税政策に対する不透明感や米経済指標の弱さからドルが売られ、ドル円は一時142円台前半まで下落しました。​しかし、週半ば以降、米中両政府が関税交渉に前向きな姿勢を示したことや、日銀が成長・インフレ見通しを引き下げ、早期の利上げ観測が後退したことから、円売りが加速しました。​これにより、ドル円は5月1日に145.73円まで上昇し、週末の5月2日には144.93円で取引を終えました。​週を通じて、ドル円は約3円の値幅で推移し、米中貿易交渉の進展や日銀の政策スタンスが主な要因となりました。今週のマーケット:主要企業の決算とFOMCに注目今週(2025/5/5-5/9)は、ディズニー・パランティアなど注目企業の決算が続きます。FOMCも開催されるので、FRB高官発言にも注目です。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

米中貿易摩擦の緩和と好調なテクノロジー株決算で投資家心理は好転して株価上昇|米国市場サマリー

米中貿易摩擦の緩和と好調なテクノロジー株決算で投資家心理は好転して株価上昇|米国市場サマリー

先週は、トランプ大統領によるFRBパウエル議長批判や利下げ要求で急落して始まりましたが、その後は米中貿易摩擦の緩和期待を背景に急回復しました。財務長官が貿易緩和を示唆したことで投資家心理が好転し、ハイテク株を中心に買い戻されました。週後半はAlphabetなど好決算企業が相場を支援し、NASDAQとS&P500は4日続伸して週を終えました。為替は、週初にトランプ大統領のFRB議長解任検討報道や米中貿易摩擦の懸念から一時139円台まで下落しました。​しかし、週後半にかけてトランプ大統領がパウエル議長の解任を否定し、中国が一部米国製品への関税撤廃を検討しているとの報道が伝わると、リスク回避姿勢が後退し、ドルは反発。​25日には一時143.80円まで上昇し、週末には143.68円で取引を終えました。米国株式市場:貿易摩擦の緊張緩和で株価上昇。テック企業の好決算も後押しに4月21日(月) トランプ大統領がFRBのパウエル議長に対し強い批判を展開し、即時利下げを要求したことで、FRBの独立性が脅かされるとの懸念が強まり、市場は大幅下落しました。ダウ平均は一時1300ドル以上下げ、最終的に971ドルの下落。NASDAQとS&P500もそれぞれ2%超の下落となり、大型ハイテク株群の「マグニフィセント・セブン」も売り込まれました。Teslaが新モデルの生産遅延報道で5.8%下落、NvidiaもファーウェイのGPU量産報道で4.5%安と振るわず、全面安の展開でした。4月22日(火) 前日の悲観から一転し、米財務長官が米中貿易摩擦の緩和を示唆する発言をしたことで、投資家心理が大きく改善し、市場は急反発しました。ダウ平均は1016ドル高、NASDAQとS&P500も2.5%超の上昇を記録。特に金融株や一般消費財セクターが強く買われました。決算発表では3Mが第1四半期の利益好調を背景に8.1%高。一方、関税の影響で業績悪化を示したNorthrop Grummanは12.7%、RTXも9.8%下落しました。4月23日(水) トランプ大統領が前日に引き続きパウエル議長を批判しつつも、解任の可能性を明確に否定したこと、さらに米中貿易摩擦の緩和に向けた交渉の進展期待が高まり、市場は続伸しました。ダウ平均は419ドル高で引けました。Teslaがイーロン・マスクCEOが経営に再び専念すると発表したことで5.3%上昇、Boeingも業績が市場予想より改善し6.1%の上昇を見せました。一方、General Dynamicsは受注減少を嫌気し3.3%安となりました。4月24日(木) 企業の決算好調と米中貿易摩擦のさらなる緩和期待により、市場の楽観ムードが継続しました。ダウ平均は486ドル上昇、NASDAQは2.7%高となりました。特に好決算を発表したServiceNowが15.5%の急伸を見せ、ハイテク株の上昇を主導しました。一方、消費関連のProcter & GambleとPepsiCoは景気減速懸念を背景に見通しを下方修正し、それぞれ3.7%と4.9%下落しました。4月25日(金) 米中関税措置の一部品目除外など、具体的な緩和策が出たことで、市場は4日続伸しました。NASDAQとS&P500は堅調に推移。Alphabet(Googleの親会社)は第1四半期の好決算が評価され1.7%高となりました。一方、Intelは業績見通しが市場予想を下回ったことで6.7%安と逆行安の展開。週間ベースでは主要指数が揃って上昇し、小型株のラッセル2000も昨年11月以来の上昇率を記録するなど、市場の回復ムードが強まりました。為替市場:一時リスクオフで円高が進むも、緊張緩和と日米財務大臣会合を受けて円安に為替は、米国の金融政策や米中貿易摩擦に関する報道に左右され、乱高下する展開となりました。週初、トランプ大統領がFRBのパウエル議長の解任を検討しているとの報道や、米中貿易交渉の進展が見られないことから、ドルは対円で一時140.72円まで下落し、昨年9月以来の安値を記録しました​。しかし、週後半にかけては、中国が米国からの一部輸入品に対する125%の関税を撤廃することを検討しているとの報道が伝わり、米中貿易摩擦の緩和期待が高まりました​。また、日米財務相会談では、為替水準や目標に関する言及がなかったことが明らかになり、円安是正への懸念が後退しました​。これらの要因から、ドルは対円で買い戻され、25日には一時143.91円まで上昇し、週末には143.68円で取引を終えました​。週を通じて、ドル円相場は約3円の値幅で推移し、米中貿易摩擦や米国の金融政策に対する市場の関心の高さが示されました。今週のマーケット:決算ラッシュが続く。M7決算もNVIDIA以外は出揃う今週(2025/4/28-5/2)は、決算ラッシュが続き、M7決算もNVIDIA以外の6社が出揃うことになります。ハイテク株への追い風は続くが注目です。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

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【アドバンスト・マイクロ・デバイセズ決算みどころ】MI300のAI事業貢献とデータセンター成長率がカギ(Advanced Micro Devices)

【アドバンスト・マイクロ・デバイセズ決算みどころ】MI300のAI事業貢献とデータセンター成長率がカギ(Advanced Micro Devices)

本記事では、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(Advanced Micro Devices)の2024年第4四半期決算を振り返り、5月1日に控える2025年第1四半期決算の見どころを解説します。AMDの2024年第4四半期決算は、売上高が過去最高の77億ドルを達成し、前年同期比24-27%増となりました⁠⁠。データセンター部門は前年比69%増の39億ドルと急成長し⁠⁠、PC向けクライアント部門も52%増と好調でした⁠⁠。一方、ゲーム部門は59%減と苦戦⁠⁠。新たなAI向けGPU「MI300」シリーズの本格出荷が開始され⁠⁠、Meta、Microsoft、IBMなど大手企業での採用が進んでいます⁠⁠。2025年第1四半期の売上高は約71億ドルを見込んでおり、前年比30%増、前期比7%減の予想です⁠⁠。前回決算(2024年第4四半期)ハイライト過去最高の売上と成長率: 前回の2024年第4四半期(2025年1月発表)で、AMDの売上高は過去最高となる77億ドルに達しました​。前年同期比で約24〜27%増と力強い成長となり、市場予想も上回りました。粗利益率(売上総利益率)は51%と前年から4ポイント改善し、収益性も向上しています。非GAAPベースの1株当たり利益(EPS)は1.09ドルと予想を上回りました(GAAPベースでは0.29ドルで、リストラ費用等の特別要因により前年より減益)​。この四半期はデータセンター向け製品とPC向け「クライアント」部門の伸びが全社の売上をけん引しました。データセンター事業の急成長:データセンター部門(サーバー向けCPU「EPYC(エピック)」やAI向けGPU「Instinct(インスティンクト)」シリーズを含む)は、前年同期比+69%という驚異的な成長で39億ドルの売上を記録し、過去最高の四半期売上となりました​。この背景には、生成AI(人工知能)ブームによるAI関連の半導体需要の急増があります。クラウド事業者や企業がデータセンターに投資を加速させ、AI処理や高性能計算(HPC)向けにAMDのサーバー用製品を大量導入したことが寄与しました。AMDは2024年にデータセンターAI向け事業の売上を50億ドル超まで拡大させており、今後数年間でこの分野の年次売上が「数百億ドル(数十億ドル規模)に達する可能性がある」と経営陣は見込んでいます​。AI対応のGPU「MI300」シリーズ(AMDの最新AIアクセラレーターチップ)も第4四半期中に出荷が本格化し始め、AI分野への本格参入が伺えました。PC・ゲーム向けチップの明暗:PC向けのクライアント部門(Ryzenプロセッサなど)は前年比+52%と大きく伸び、個人PC市場でシェア拡大に成功しました。2023年まで低迷していたPC需要が2024年後半にかけて底打ちし、世界PC出荷台数は2024年第4四半期に前年同期比+1.8%増と3年ぶりに増加しました。この市場回復と新製品効果により、AMDのPC向けCPU売上も改善しています。一方、ゲーム機・グラフィックス向けの「ゲーム部門」は苦戦しました。2024年第4四半期のゲーム部門売上は前年同期比59%減少し、約5.63億ドルにとどまりました。これはソニーのPlayStation 5やマイクロソフトのXbox Series向けセミカスタムチップ(ゲーム機用特別設計プロセッサ)の需要がピークを越え減速したことが主因です​。現行世代機の普及が進み買い替え需要が落ち着いたことや、消費者のゲーム支出抑制などが影響しました​。またディスクリートGPU(PC用グラフィックスカード)市場でも、競合NVIDIA(エヌビディア)のGeForceシリーズが高性能帯を席巻し、AMDのRadeonシリーズはシェア奪回に苦戦しています​。株価の反応: 前回決算発表後、AMDの株価は急落しました。決算そのものは売上高が予想超え、2025年第1四半期の見通しも堅調と、一見ポジティブな内容でした。しかし市場が注目したデータセンター事業の動向が投資家の期待に届かなかったことが下落の要因です。第4四半期のデータセンター売上は市場予想を下回り、またAMDはアナリストとの会見で「2025年のデータセンター事業は力強い二桁成長を見込むが、上期より下期の方が好調になる」と説明しました​。この慎重な見通しは、前年に売上が毎年2倍近く急拡大していたNVIDIAのAI事業と比較すると見劣りし、AMDのAI分野での伸びに対する失望感を招きました。結果、決算発表直後の時間外取引でAMD株は一時8〜10%近く急落しています​。つまり、市場は「AMDがAI需要をどれだけ取り込めるか」に注視しており、期待値が非常に高かったことが伺えます。前回決算以降の主なニュースと業界動向AI半導体需要とMI300シリーズの採用拡大:前回決算以降も、生成AIブームによるAI半導体需要の高止まりが続いています。AMDはNVIDIAに次ぐ第2の選択肢として、大手ハイテク企業との連携を強化しています。例えばMeta(メタ)社は自社の大規模言語モデル「Llama 2 (405B)」のサービス提供にAMDのMI300X GPUを独占的に使用し始めました。またマイクロソフトも、生成AI機能「Copilot(コパイロット)」のバックエンドにMI300Xを採用し、数千規模のGPUクラスタを構築する新たなAIインフラをAzureクラウド上で展開しています​。さらにIBMをはじめ、DigitalOceanやVultrといったクラウドサービス各社もAMDのInstinct GPUアクセラレータの導入を開始しており、多様な顧客層に広がりを見せています​。AMDによれば、現時点で世界10社以上のクラウド事業者が同社のInstinctプラットフォームを採用しており、この数は2025年にさらに増える見通しです。このように主要顧客の採用事例が相次いだことで、AMDのMI300シリーズに対する市場の期待は一段と高まりました。もっとも、AI向けGPU市場では依然としてNVIDIAが「H100」など圧倒的シェアを握っており、AMDが本格的に食い込むには時間がかかるとの見方もあります​。AMDは価格性能比の高さやオープンなソフトウェア環境を武器に差別化を図り、AI需要の取り込みを狙っています。サーバー・PC市場の回復と競合比較: データセンター向けサーバーCPU市場では、AMDが引き続き存在感を高めています。クラウド大手のMicrosoft AzureやGoogle CloudはAMDのEPYCプロセッサを搭載したサービスを拡充し、インテルのXeon CPUと激しく競合しています​。2024年にはAMDのデータセンター部門売上が前年比+94%増と急伸し、同部門がAMD年間売上の約半分を占めるまでになりました​。これはインテルからのサーバーCPUシェア奪取によるところが大きく、インテルは近年サーバー向け事業の伸び悩みから業績が低迷しています(Intel社の2024年10-12月期の売上高は前年同期比▲7%と減収)。PC市場についても、世界的に需要が持ち直しつつあります。前述の通り2024年Q4に世界のPC出荷台数が増加に転じ、Windows 10のサポート終了(2025年10月予定)を見据えた買い替え特需など追い風もありました。AMDはRyzenシリーズで性能面の競争力を維持しており、新たにAIエンジンを搭載したノートPC向けプロセッサも投入するなど、PC分野でもインテルとの差別化を進めています。一方で、グラフィックス&AI向けGPUではNVIDIAが巨額の受注残を抱えるほど引き合いが強く、AMDはまだシェア獲得の途上です​。総じて、サーバー分野ではAMDがインテルを猛追し、AI・GPU分野ではNVIDIAに挑む構図です。AMD自身もこの流れを加速すべく戦略投資を行っており、2024年には米国のサーバーメーカーZTシステムズ社を約49億ドルで買収してAIサーバー事業を強化しました。また財務面では堅調なフリーキャッシュフローを背景に自社株買いによる株主還元も実施しています。例えば2024年第四四半期には約2億5620万ドル相当の自己株式を取得しており、今後も成長投資とバランスを取りつつ株主還元策を継続する方針です。今回(2025年1〜3月期)決算の注目ポイントと株価への影響いよいよ発表を迎える2025年第1四半期決算(1〜3月期)では、以下の点に市場の注目が集まっています。決算内容次第ではAMD株の短期的な値動きにも影響を与え得るため、個人投資家として押さえておきたいポイントです。MI300シリーズの売上寄与: AMDが注力するAI向けGPU「MI300」シリーズがどの程度この四半期の売上に貢献したかが注目されます。前四半期に本格出荷が始まったとはいえ、当初は大規模受注の立ち上がりに時間がかかる可能性があります。しかし、もし今回の決算でMI300関連の売上が顕在化し始めていれば、AMDがNVIDIA依存の強いAI需要の一角を切り崩しつつある証拠と捉えられるでしょう。具体的な数字や経営陣のコメントで、受注状況や出荷ペースに言及があるか要チェックです。ポジティブなサプライズがあれば株価上昇要因になり得ますし、逆に言及が乏しければ市場の期待先行に対する警戒から売り材料となる可能性もあります。データセンター部門の成長率: データセンター事業(サーバー向けCPUとデータセンターGPU)の成長動向は今回も最大の焦点です。前年同期比では大幅な増収が見込まれていますが、問題は前四半期(2024年Q4)からの勢い維持です。AMD自身の見通しでは「第1四半期の売上高は約71億ドル(±3億ドル)で前年比+30%増だが前期比では▲7%程度減少」とされています。この減少要因は全社的な季節要因(年末商戦後の落ち込み)ですが、データセンターは本来季節性の影響が小さいため、市場では「純粋な需要動向としてデータセンター売上が前期比で伸び悩むのではないか」との懸念もあります。もし今回の発表でデータセンター部門が前年同期比・前期比ともに力強い増収を示せば、AIやクラウド投資需要が引き続き堅調であることを確認でき、株価の追い風となるでしょう。一方、前期比で大きく減速しているようだと、「AI特需の一巡」や競合優位の継続が意識され、ネガティブに捉えられる可能性があります。粗利益率(グローマージン)の動向:製品ミックスの変化が粗利益率に与える影響も見逃せません。データセンター向けのEPYCプロセッサやMI300シリーズは一般に利益率が高い一方、ゲーム機向けセミカスタムチップや低価格帯PC向け製品は利益率が低めです。前四半期は高付加価値製品の構成比上昇により粗利益率が51%まで改善しました。今回、第1四半期は売上全体に占めるゲーム部門の割合が季節的に低下する一方で、データセンターやクライアント部門が伸びる見込みであるため、粗利益率も前年同期比で上振れる可能性があります。実際、AMD経営陣は2025年通年で全社の粗利益率改善を目標として掲げており​、今期もそれが達成できているか注目です。市場予想を上回る高い粗利益率が示されれば収益力向上として好感されるでしょうし、逆にコスト増などで伸び悩めば株価の重石となり得ます。通期業績見通しの修正可能性:前回決算時点でAMDは「2025年通年で売上高・EPSともに前年比二桁成長を達成できる自信がある」とコメントしていました。しかしこれは保守的な前提に基づく可能性もあり、今回の決算発表で通期ガイダンス(業績予想)を上方修正してくるかがサプライズ要素となります。たとえば、AI関連の受注状況が想定以上であれば通期売上見通しを引き上げる余地がありますし、逆にPC・ゲーム市場の不透明要因を勘案して据え置くことも考えられます。ガイダンス引き上げは将来の成長期待を高めるため株価上昇要因となります。一方、据え置きや慎重な姿勢が示された場合、市場は「慎重姿勢=現状維持」と受け止めてしまい、一時的に失望売りを誘う可能性もあります。ただし保守的な見通しはハードルが下がる分、今後のサプライズ余地を残す点も考慮が必要です。以上のポイントを総合すると、今回のAMD決算は「AI関連ビジネスの進捗」と「従来型ビジネスの回復力」を測る重要な機会となります。個人投資家の視点では、短期的な株価反応に一喜一憂するだけでなく、これら指標が示すAMDの長期的な成長余力を見極めることが大切です。前回決算からの流れと今回発表内容をしっかり追いながら、AMDが引き続きデータセンターとAIという成長市場で優位性を拡大できるか注視していきましょう。個人投資家にとって、本記事の分析が今後の判断材料の一助となれば幸いです。

【パランティア決算みどころ】商業部門とAI事業の成長性から見る先行き(Palantir Technologies)

【パランティア決算みどころ】商業部門とAI事業の成長性から見る先行き(Palantir Technologies)

本記事では、パランティア(Palantir Technologies)の2024年第4四半期決算を振り返り、5月1日に控える2025年第1四半期決算の見どころを解説します。パランティアの2024年第4四半期決算は、売上高が前年同期比36%増の8億2800万ドルと市場予想を上回りました。米国商業部門が64%増、政府部門が45%増と高成長を達成し、純利益も7,900万ドルを計上して6四半期連続の黒字を維持しています。AIプラットフォーム(AIP)の導入が進み、NATOや米国防総省との大型契約獲得、さらに日本市場での展開も活発化しています。2025年通年の売上は31%増の見通しで、引き続き高成長が期待されています。パランティアについては以下動画でも事業を解説しているので、併せてご覧ください。前回決算(2024年第4四半期)のハイライト2025年2月に発表された2024年第4四半期(Q4)決算では、パランティアの業績が市場予想を上回り、大きな注目を集めました。売上高は前年同期比36%増の8億2800万ドルに達し、ウォール街予想(約7億7600万ドル)を大きく上回りました。特に米国事業の好調さが目立ち、米国売上は前年同期比52%増の5億5800万ドル、その内訳を見ると米国商業部門が64%増と急伸し、米国政府部門も45%増と力強い伸びを示しました。これまで政府向け収入への依存が懸念されていましたが、民間(商業)部門の高成長が確認できた点は重要です。利益面でも、パランティアは引き続き黒字を維持しました。GAAP(米国会計基準)ベースの純利益は7,900万ドル(純利益率10%)を計上し、6四半期連続の黒字となりました。一時的なストック・アプリーシエーション権(SAR)関連費用を除けば純利益は1億6,500万ドル(純利益率20%)に達しています。調整後の1株当たり利益(EPS)は0.14ドルと予想(0.11ドル前後)を上回り、前年同期(0.08ドル)比でも75%増と大幅な改善を示しました​。GAAPベースのEPSは0.03ドルでしたが、こちらも前年の0.04ドルと同水準で黒字圏を維持しています​。こうした好決算を受けて、発表直後に株価は急騰しました。発表翌日の時間外取引で株価は一時23%高となり​、これは好調な四半期業績と強気のガイダンスが投資家心理を押し上げたためです。パランティアは2025年通年の売上ガイダンスを前年比+31%増と発表し、市場予想を大きく上回る強気な見通しを示しました。また2023年中頃にリリースした新製品であるAIプラットフォーム(AIP)の貢献も明らかになってきました。同社CEOのカルプ氏は「生成AI(大規模言語モデル)のコモディティ化は理論から事実となった」と述べており、AIPが業績の原動力になっていることが示唆されました。実際、AIPは企業が自社データに生成AIを組み込むことを可能にするプラットフォームであり、2023年後半から複数の企業に導入されています。第4四半期の商業部門の急成長には、このAIPの寄与が大きかったと考えられます。前回決算以降の主なニュースと動向2月の決算発表以降、パランティアを取り巻くビジネス環境にはいくつかポジティブなニュースがありました。まず米国政府との契約進捗では、国防領域での存在感が一段と高まりました。同社は米陸軍から受注していた次世代AIシステム「TITAN」の初号機を納入し、契約履行が順調に進んでいます。TITANは戦場のセンサー情報と攻撃システムをリアルタイムでつなぐAI搭載地上システムで、パランティアは2024年3月に1億7,800万ドル規模で10台の試作機を受注していました。受注から1年で最初の2台を予定通り・予算内で納入し、2026年までに全10台を完成させる見込みです。この進捗により、将来的に米軍が本格配備(100~150台規模と予想)を決定すれば、更なる大型契約獲得も期待できます。また欧州方面の契約として、NATO(北大西洋条約機構)との新たな連携が話題となりました。2025年3月末、NATO通信情報局はパランティアのAI戦闘支援システム「Maven Smart System」を採用する契約を締結しました​。このシステムは戦場データの融合や生成AIの活用によって情報分析・意思決定を支援するもので、NATOの戦力近代化に寄与します。契約額は非公表ながら、発表直後にパランティアの株価が約8%急伸するなど市場の期待は大きく、NATO側も「要件策定からわずか6ヶ月での契約締結は史上最速級」とスピード発注を強調しました​。さらに米国防総省内でも、全軍共通のAIプラットフォーム構築に向けて5年間・最大4億8千万ドル規模の契約をパランティアと締結済みであり、同社の技術が米欧の安全保障分野で広く採用されつつあることが伺えます。日本市場での展開にも注目です。パランティアは2019年に損保大手の損保ホールディングスと合弁で「パランティア・ジャパン」を設立して以来、日本企業や官公庁との協業を進めてきました​。最近では富士通や日立製作所など国内IT企業との提携も報じられ、パランティアの基盤「Foundry(ファウンドリー)」を活用したデータ分析ソリューションの提供が始まっています※。例えば富士通は同社のハードウェア供給網最適化にファウンドリーを導入しつつ、国内初のファウンドリー販売代理店にもなりました(契約額8百万ドル)。日本企業にもAIPを含むパランティア技術への関心は高まっており、生成AIを業務に活かしたいというニーズに応える形でパランティアの案件が増える可能性があります。政府関連では、過去に日本厚生労働省のCOVID-19対策でパランティアがデータ分析を支援した実績もあり、今後も防災や社会インフラ分野での採用が期待されています。一方、商業部門でのAI活用事例もこの数ヶ月で着実に蓄積されています。医薬品開発受託機関のParexel社はパランティアとの複数年契約を結び、創薬の臨床試験データ管理にAIPを導入しました。これにより従来手作業だったデータ収集・解析を自動化し、試験デザインごとに専門家の作業時間を6~7時間短縮する効果が出ています​。また、世界的な鉱山会社リオ・ティントはパランティアとのエンタープライズ契約を4年間延長し、同社のAIプラットフォームを継続利用することを決めました。リオ・ティントは既にパランティア製品で巨大鉱山のデジタル双子(デジタルツイン)を構築しており、AIPによって膨大なセンサーデータから坑内崩落リスクを予測するなど安全性と効率を飛躍的に高めています​。保険分野でも、損保ホールディングス傘下のブラジル法人がパランティアのAIPを活用して保険引受やリスク評価を高度化する取り組みを開始しました。このように業種を問わず幅広い企業がパランティアのAIプラットフォームを採用し始めており、AIPの普及は順調に進んでいます。パランティア自身も2024年に顧客数が前年比43%増と大きく増加したと発表しており、その背景にはAIPを求める新規顧客の獲得があると見られます。株主還元策や業績見通しに関しては、前回決算以降特段のアップデートはありません。パランティアは2023年8月に最大10億ドルの自社株買いプログラムを承認しましたが、2023年末までに実際の買い戻しは行われず、キャッシュは今のところ成長投資に充てられています。同社は潤沢な現金(約52億ドルの手元資金​)を背景に、引き続き研究開発や戦略投資を優先する方針です。また2025年通年ガイダンス(売上31%増)は据え置かれており、5月の決算発表までは公式な修正はありません。株主への直接的な還元よりも、まずは高成長の維持によって株価価値を高める戦略と言えるでしょう。今回決算(2025年1~3月期)での注目ポイントと株価への影響5月上旬に予定される2025年第1四半期(Q1)決算では、個人投資家は以下のポイントに注目すると良いでしょう。それぞれの動向が株価に与えるインパクトについても考察します。商業部門の成長率(AIPの貢献度):前述の通り、パランティアの商業部門はAIPの追い風を受けて急成長しています。Q4では米国商業売上が前年同期比+64%と驚異的な伸びを示しました​。今回のQ1でも商業セグメント全体で30%以上の成長が続いているかが重要なチェックポイントです。生成AIブームの中で多くの企業がパランティア製品の導入を検討しているため、その需要が実際の売上成長に結びついているかを確認します。もし商業部門の成長が鈍化せず、高い伸び率を維持・加速していれば、市場は「AIP効果が本物だ」と評価し株価上昇要因となるでしょう。一方で期待ほど伸びない場合、AIブームによる特需が一巡したとの見方から失望売りを誘発する可能性もあります。政府部門の契約動向(更新・新規獲得状況)政府向け事業はパランティアの安定収入の柱であり、さらに最近はAI需要で追い風を受けています。Q4の米国政府売上は前年同期比+45%と大きく伸びました。この傾向がQ1でも続くか注目です。具体的には、既存契約(例:米陸軍向けプラットフォーム「Vantage」や前述のTITAN等)の更新・拡大や、新規の政府案件受注が報告されるかを確認しましょう。すでにパランティアは米国防総省との包括的なAI契約(5年総額4億8千万ドル)やNATOとの契約を得ており​、これらが逐次売上に反映されます。Q1決算発表で政府部門の受注残高や新規契約のアナウンスがあれば、今後の業績拡大に弾みがつくと受け止められ株価プラス材料となるでしょう。ただし、政府予算の変動や契約遅延があれば成長鈍化懸念からネガティブに作用し得るため、その点も注視が必要です。収益性(営業利益率と黒字維持):営業利益率の動向も投資判断の重要なポイントです。パランティアは近年コスト最適化を進め、2024年通年で調整後営業利益率45%と高い収益性を誇りました。もっともQ4は一時的な報酬費用計上でGAAPベースの営業利益率が1%に落ち込みましたが​、特殊要因を除けば17%程度確保しており健全です。同社は6四半期連続でGAAP黒字を達成しており、Q1でも黒字維持が確実視されています。決算では、この収益性がさらに改善しているか(例えば営業利益率の上昇や純利益の増加)に注目です。もし利益率の拡大傾向が確認できれば、成長と利益の両立に対する市場の信頼が増し、株価押上げ要因となります。特に生成AI関連の開発競争はコスト増を伴うため、そこでの投資と利益のバランスは重要です。反対に、売上は伸びても人材採用やR&D費用で利益率が低下している場合、将来の成長投資をどう見るかで市場の評価が割れるかもしれません。しかし現在のところフリーキャッシュフローも売上の30%以上を生み出しており、財務体質は良好です。大幅な利益率悪化がない限り、大崩れのリスクは限定的でしょう。AI市場における競争力:競争激化への耐性も見逃せません。生成AIブームにより、データ分析・AIプラットフォーム市場には大手クラウド企業や新興AI企業など多数のプレイヤーが参入しています。その中でパランティアが持続的な競争優位を維持できるか、今回決算のカンファレンスコールや株主向け資料で経営陣が語る内容に注目しましょう。例えば、同社のAIPは企業内の機密データと大規模言語モデルを安全に連携できる点が売りであり、「軍事レベルのセキュリティを持つ生成AI基盤」という独自ポジションを築いています。他社には真似しにくい政府実績もあり、これは大きな強みです。一方で、マイクロソフトやグーグルなども企業向けAIソリューションを強化しており、潜在的な競合となります。そのためパランティアが製品戦略やパートナーシップでどのように差別化を図っているかが重要です。最近ではデータブリックス社(データ分析基盤のリーダー)との提携を発表するなど、エコシステム拡大にも努めています。仮に決算説明で新しいプロダクト発表や有力企業との協業強化(例えばクラウドプロバイダーとの連携)が語られれば、競争力強化とみなされ株価の追い風になるでしょう。逆に具体策が見えない場合、市場シェア争いへの不安から株価が上値の重い展開になる可能性もあります。総じて、2025年Q1決算は「AI特需」を本格的な持続成長に転換できているかを占う重要なイベントです。前回決算で示された力強い業績がこの四半期も続けば、パランティアへの市場の信頼は一段と高まるでしょう。同社株は今年に入ってから大きく上昇しており、それに見合う結果が求められます。個人投資家としては、上記のポイントを踏まえて決算内容を精査し、長期的な成長ストーリーにブレがないかを確認することが肝要です。仮に短期的な株価変動があっても、AIプラットフォーム企業としての競争優位が維持されている限り、パランティアは今後も有望な投資対象であり続けるでしょう。今回の決算発表は、その見極めの材料を提供してくれるはずです。

【エヌビディア決算みどころ】ブラックウェルGPUとデータセンター成長率、粗利益率が焦点に(NVIDIA)

【エヌビディア決算みどころ】ブラックウェルGPUとデータセンター成長率、粗利益率が焦点に(NVIDIA)

本記事では、エヌビディア(NVIDIA)の2025年2月発表2025会計年度第4四半期決算を振り返り、5月に控える2026会計年度第1四半期決算の見どころを解説します。エヌビディアの2025年2月期第4四半期決算は、売上高が前年同期比78%増の393億ドルと好調でした。主力のデータセンター部門は生成AIブームにより93%増と急成長し、新型GPU「ブラックウェル」も110億ドルの売上を記録しました。今後の注目点は、ブラックウェルの本格展開による売上寄与、データセンター部門の成長持続性(市場予想は前年比68%増の380億ドル)、そして供給制約とTSMCの生産能力拡大の進展です。5月の2026年度第1四半期決算では、売上高430億ドル(±2%)という強気な見通しの達成が焦点となります。前回決算(2025年2月発表、2025会計年度第4四半期)のハイライトエヌビディア(NASDAQ: NVDA)は2025年2月26日に2025会計年度第4四半期(2024年11月~2025年1月期)の決算を発表しました。結果は市場予想を上回る好調さで、売上高は前年同期比+78%の 393億ドル に達し、過去最高を更新しました。この急成長をけん引したのは主力の データセンター部門 (クラウド向けAI計算用半導体事業)で、同部門売上は前年同期比+93%という驚異的な伸びを示しました。これは生成AI(Generative AI)ブームによる大規模言語モデル向けGPU需要の爆発的増加が背景にあります。エヌビディアCEOのジェンスン・フアン氏も、新世代AI用半導体「ブラックウェル (Blackwell)」の量産に成功し、「需要は驚異的だ」と述べています​。利益面でも力強く、調整後EPS(1株当たり利益)は前年同期比+71%の 0.89ドル に達し、こちらも市場予想(約0.85ドル)を上回りました。高成長分野の比率拡大で収益性も高水準を維持していますが、一方で 粗利益率(売上総利益率)は73.5%となり、前年同期の76.7%や直前Q3の75.0%からは低下しました​。この要因として、新製品ブラックウェルの立ち上げに伴う一時的なコスト上昇が挙げられます。もっとも、同社は以前から初期段階では粗利率低下を見込んでおり、2026年1月期後半には粗利益率が再び70%台半ばに回復する見通しとも説明しています​。つまり目先の利益率低下は想定内であり、長期的な収益性に大きな不安はないと見られます。決算発表直後の株価反応は 比較的冷静 でした。決算当日2月26日の通常取引で株価は前日比+3.7%と上昇していましたが、好決算発表後の時間外取引では一時小幅上昇した後、最終的には発表前の水準とほぼ同じ 129.32ドル で推移しました。これは、業績・見通しが市場予想をわずかに上回る程度で「サプライズ」が小さく、既に高成長期待を織り込んでいた投資家が冷静に受け止めたためと考えられます​。直前に株価が大きく上昇していたこともあり、「材料出尽くし」で一服した格好です。前回決算以降の主なニュースと業界動向前回の決算発表後、エヌビディアを取り巻く環境でもいくつか重要なニュースがありました。その一つが、新型GPU「ブラックウェル」チップの本格出荷開始です。ブラックウェルはH100の後継となる次世代AI向けGPUで、第4四半期に売上高 110億ドル を計上し、同社史上最速の立ち上げを記録しました。立ち上げ当初は冷却(過熱)問題による出荷遅れも報じられましたが、現在は大量生産に成功し、大手クラウド事業者(ハイパースケーラー)各社からの旺盛な引き合いに応えています。実際、ブラックウェル関連の需要はデータセンター売上の約半分を占めるまでになっており、生成AIブームを背景にエヌビディアの業績を大きく押し上げています。生成AI需要の拡大 も引き続き鮮明です。ChatGPTに代表される生成AIの普及以降、米国のMicrosoftやAmazon、Meta、Alphabet(Google)といったテクノロジー大手はAIインフラへの巨額投資を競い合っています。エヌビディアはそうした企業にとって不可欠な高性能GPUを供給しており、前述のようにデータセンター向け事業が売上の約8割に達するまでに成長しました。主要顧客の動向としては、例えばMicrosoftがデータセンター拡張計画の一部見直しを検討しているとの報道もありましたが、全体としてクラウド各社のAI投資熱は冷めていません。むしろ生成AIを活用したクラウドサービス競争が激化する中、エヌビディアへの引き合いは今後も強含みで推移するとの見方が一般的です。一方、サプライチェーン(供給網)と供給制約 の状況にも注目が集まっています。エヌビディア製品の製造を請け負うTSMC(台湾積体電路製造)では、高度なチップパッケージ技術(CoWoSなど)の需要急増に伴い生産能力がひっ迫していると報じられています。実際、エヌビディアは需要に応えるため部材の前倒し調達や設備投資を進めており、2025年1月期末時点で 在庫 は前年同期比+31%(101億ドル)に増加、将来の製造能力確保のための前払金 も約51億ドルに達しています。これは供給面のボトルネック解消に向けた先行投資と言えます。前四半期はGPUの供給タイト化により一部のゲーミング向けGPU販売が制約を受けた(売上減少となった)ほどで、エヌビディアとしてもサプライチェーン強化は最優先課題です。幸いTSMCは2024年を通じてAIチップ向けパッケージ能力を大幅増強する計画とされ、エヌビディアも2025年にかけて安定供給の体制を整えつつあります。競合環境 に目を向けると、AI半導体分野での競争も激しさを増しています。米AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)はエヌビディアに対抗すべく「MI300」シリーズと呼ばれるデータセンター向けAIアクセラレータを開発中で、2024年前半から大手クラウド企業への採用が始まりました(例えばIBMクラウドがMI300Xを導入予定)との報道があります。また、中国では新興のAI企業DeepSeek(ディープシーク)が高性能な大規模AIモデルを極めて低コストで動かしたと発表し、市場を驚かせました​。DeepSeekによると、同社の最新AIモデルは米国トップクラスのモデルに匹敵する性能を持ちながら、NVIDIAの先代GPU(H800)を数万枚投入することで安価に学習できたとされます。このニュースが伝わった直後、エヌビディアの株価は1日で50兆円超($0.5トリリオン)もの時価総額を失う急落に見舞われ、投資家心理の動揺を招きました。しかし専門家は、「フロンティア(最先端)AIを支えるには依然としてエヌビディアのような高度な半導体が必要」と指摘しており、DeepSeek台頭による需要減退懸念は現時点では過度に心配する必要はないとの見方が強いようです。加えて、米政府の対中輸出規制によりエヌビディアの最先端GPUは中国企業へ直接販売できない状況もあり、高性能チップ市場では当面エヌビディアとAMDが二強として先行する構図です。総じて、競争圧力は高まりつつあるものの、足元ではエヌビディアが技術・市場シェアともに大きなリードを保っています。今回決算(2026会計年度第1四半期)の注目ポイントと株価へのインパクト5月に発表予定の2026会計年度第1四半期(2025年2月~4月期)の決算では、上述の流れを受けて3つのポイントに注目が集まります。ブラックウェルチップの売上寄与:最新GPUブラックウェルの本格展開によって、今回四半期は前四半期以上の売上寄与が期待されます。前四半期に110億ドルを売り上げたブラックウェルが四半期フルで寄与することで、データセンター部門の売上はさらに増加する見通しです。市場予想では、データセンター売上高は前年同期比+68%の 380億ドル規模 に達するとの見方もあります。ブラックウェルの供給が順調に拡大すれば、エヌビディア全体の業績を押し上げる原動力となるでしょう。特に今回決算では、ブラックウェルの売上構成比や受注残(バックログ)について経営陣から言及があるかがポイントです。仮にブラックウェルの生産・供給が計画通り進み、「需要超過で受注残を積み増している」ような状況が示されれば、今後数四半期にわたる安定成長への信頼感から株価にプラス材料となり得ます。データセンター成長率の持続性:驚異的な成長を遂げてきたデータセンター部門ですが、この高成長がどこまで持続するかも注目点です。直近四半期で+93%だった前年同期比成長率は、今回決算では約60~70%増程度まで減速する見通しです。これは前年の水準が急拡大してハードルが上がっているためで、成長ペースが落ちても依然として極めて高い伸び率である点に留意が必要です。投資家としては、売上の絶対額が市場予想(約430億ドル)に届いているか、さらに上振れるかが焦点となります。エヌビディア経営陣は前回決算時に2025年2-4月期の売上ガイダンスを 430億ドル(±2%) と示しており、市場予想平均(約421億ドル)を上回る強気な見通しでした。これが達成・超過できれば、AI需要が引き続き堅調である証左となり、株価の下支え要因となるでしょう。特に、大口顧客であるクラウド各社の発注動向や、受注のキャンセル・延期がないかといった点についても開示や質疑応答で確認されるはずです。もし需要面で何らかの陰り(例えば主要顧客による発注調整)が見られれば、成長期待に敏感な市場はネガティブ反応を示しうるため注意が必要です。供給制約リスクと粗利益率の見通し:前述のように、エヌビディアにとって供給能力の確保は業績拡大のカギを握ります。今回決算では、生産能力や在庫の状況、サプライチェーンのボトルネック解消への取り組みに関する言及が注目されます。幸い、TSMCをはじめサプライヤー各社は需要増に対応する投資を行っており、エヌビディア自身も前払金で製造枠を確保するなど手を打っていますが、依然として供給制約が成長の上限となりうるリスクは残ります。例えば、予想以上に需要が強まった場合に供給が追いつかず、納期遅延や販売機会の損失が生じる可能性です。投資家としては、経営陣が示す製造キャパシティ見通しや在庫水準をチェックすることで、このリスクの大きさを判断する材料になります。また、粗利益率(グロスマージン)の動向も株価へのインパクトが大きいポイントです。前四半期はBlackwell立ち上げの影響で73.5%まで低下しましたが​、会社側は今回はさらに若干低下し 70~71%程度 になるとの見通しを示しています。これは市場コンセンサス(約72%)をやや下回る水準でしたが、前述のようにBlackwell関連コストが先行する一時的な現象と考えられています。重要なのは今後の粗利益率の方向性であり、経営陣が供給コストの低減や製品ミックス改善によって年度後半にかけて利益率が回復基調に戻ると示せれば、利益面の不安は和らぐでしょう​。逆に、予想以上に粗利益率の低下傾向が続く場合やコスト増大が報告された場合、超高水準の株価収益率(2025年予想PERは約45倍)で取引されるエヌビディア株には下押し圧力となる可能性があります。株価は既にAIブームを織り込み過去5年で+1800%という驚異的な上昇を遂げており、高い成長期待に支えられているため、わずかなマイナス材料にも敏感になり得る点には注意が必要です。まとめ:個人投資家への示唆エヌビディアの2025年5月発表予定の決算は、AIブームの最中で迎える極めて重要なイベントです。前回決算で示された爆発的な業績成長が今回も続くのか、そしてそれが市場予想を上回る勢いなのかが株価のカタリスト(変動要因)となります。個人投資家は、データセンター部門の売上やBlackwellチップの寄与度、主要顧客の需要動向に加え、供給体制や利益率といった裏側の指標にも目を配る必要があります。エヌビディア経営陣はAI需要の持続に自信を示しており、実際に第1四半期も前年比6割以上の増収が見込まれる状況です​。こうした高成長が確認できれば、同社株は引き続き強気相場を維持しやすいでしょう。一方で、供給制約や競合動向など不確実要素も存在するため、一極集中リスクにも注意しつつ、最新の決算情報を今後の投資判断に活かすことが重要です。注目ポイントのおさらい 前回決算は売上・利益が大幅増となりAI需要の勢いを裏付けました​。その後もBlackwell出荷や生成AI拡大など追い風が吹いていますが、供給能力や競合にも目を光らせる局面です。今回発表の決算では、Blackwellがどれだけ売上を押し上げたか、データセンター成長が高水準を維持できるか、そして利益率が安定軌道にあるかがポイントとなります。それらの指標が総じて良好であればエヌビディア株への信頼感は一段と増すでしょうし、万一伸び悩みが見られれば短期的な株価調整もあり得ます。個人投資家としては、こうした点を踏まえつつエヌビディアの中長期的な成長ストーリーを再点検し、ポートフォリオ戦略に反映させると良いでしょう。

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【米国株見通し】米中相互関税削減でリスクオン回帰、再び高値更新なるか

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5月12日、米国と中国が相互に発動していた関税を90日間大幅に引き下げることで合意したことを受け、米ドルと米国株先物が急上昇しました。投資家の不安心理を示すVIX指数は20を下回り、市場はリスクオンに回帰しています。本記事では、米国株の短中期的見通しについて市場関係者の見方を紹介します。予想を上回る合意内容で投資家心理改善多くの市場関係者が、米中協議の結果は対話の枠組み設定や60%未満の関税引き下げにとどまると見ていたなか、米中双方の115%の関税引き下げ合意は予想を大きく上回りました。猶予期間も90日間と比較的長く、機関投資家が株式投資比率の拡大を検討しているタイミングと重なったことで、投資家心理が大きく改善しています。一方で、今回の合意内容が「市場のベストシナリオ」に近い結果となったことから、今後関税を巡って追加の好材料が出たとしても、市場への影響は限定的になるとの指摘もあります。アナリストの間では、市場の注目テーマは関税から次の材料へ移り始めているとの見方が広がっています。中期的な焦点は、利下げ動向と減税案の行方に現在、S&P500とナスダック100指数はいずれも200日移動平均線を上回っており、米国株式市場は元値回復を目指す展開が予想されます。中期的には、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げスタンスや企業業績の動向を見極めていくことが重要となります。利下げ観測は年内2回へ後退本格的な貿易戦争は回避され、米国は景気後退にはならない可能性が高いとの見方から、5月12日時点のFedWatchでは7月のFOMC会合では利下げ見送りの可能性が高く、9月と10月会合で0.25%ずつの利下げが実施されるとの見方が優勢です。足元の経済指標は米国経済と労働市場の底堅さを示しており、相互関税率が10%程度に落ち着き、薬価引き下げが進めば、2025年を通じてインフレは緩やかに低下するとの見通しもあります。次回の6月FOMCでは、参加者それぞれの金利見通しを示す「ドットプロット」が発表され、注目されるポイントとなります。減税法案が追い風になる可能性もまた、トランプ大統領が掲げる減税案はまだ株価に織り込まれておらず、米国株の上昇を支援する可能性があります。5月9日に米下院歳入委員会は税制案の一部を公表し、13日に採択が予定されています。ただし、懸念されるのは財政悪化です。減税による財源の確保が最大の課題となっており、今後の議論の行方に注目が集まります。今後の注目イベント5月13日:消費者物価指数(CPI)5月14日:生産者物価指数(PPI)・小売売上高5月15日:パウエル議長講演5月28日:NVIDIA決算5月末:税制法案の成立目標6月17-18日:FOMC

SCHDはパフォーマンスが悪い?過去1年の高配当ETFパフォーマンス比較と要因分析

SCHDはパフォーマンスが悪い?過去1年の高配当ETFパフォーマンス比較と要因分析

高配当株ETFは、米国株式市場で安定した配当収入を得つつ資産成長も狙える人気の投資手段です。中でも SPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)、VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF)、HDV(iShares Core High Dividend ETF)、SCHD(Schwab U.S. Dividend Equity ETF)は、多くの個人投資家に利用されています。これら4つのETFはそれぞれ異なる指数や運用方針に基づき高配当株に投資しています。本記事では、2024年4月16日から2025年4月15日までの1年間のトータルリターン(株価変動と配当再投資を合わせた総合的なリターン)を比較し、特にSCHDのリターンが他より低調だった理由を分析します。前提:日本におけるSCHDSCHDが他の3つのETFと大きく異なるのは、日本で海外ETFとしての取引ができないところにあります(運用会社のSchwabが登録をしていないため)。なので、これまで日本の個人投資家は投資ができていなかったのですが、2024年に大手ネット証券がSCHDに投資する日本の投資信託を設定したため、一気に投資が加速していきました。弊社ブルーモ証券も、実はこれに先立ち「安定高配当株式」という公式ポートフォリオをアプリ内で使えるようにしており、そちらはSCHDの銘柄構成で投資ができるようになっています。米国ではSCHD自体はかなり浸透している高配当株ETFで、最大手のVYMに比べるとやや運用残高は低いものの、HDVやSPYDよりもかなり大きな残高を持っています。リターン比較まず、4つのETFの直近1年間(2024年4月20日~2025年4月21日)のトータルリターンを見てみましょう。トータルリターンとは、値上がり益(キャピタルゲイン)に加えて受け取った配当金を再投資した場合のリターンを指します。以下のグラフとデータは、その期間における各ETFのトータルリターン(%)を示しています。図:4つの高配当ETFの2024年4月16日〜2025年4月21日のトータルリターン比較(配当込み)各ETFの1年間のリターンは、SPYDが+12%と最も高く、HDVが+10%、VYMが+8%と続き、SCHDは+4%に留まりました。グラフからも分かるように、SCHDのリターンが他の3つより明らかに低い状況です。つまり、この1年間ではSPYDが最も高いリターンを上げ、一方でSCHDの成績が最も低調でした。次章では、なぜSCHDが他の高配当ETFに比べて伸び悩んだのか、その背景を保有銘柄やセクター配分、金利環境、企業の業績(ファンダメンタルズ)といった観点から解説します。SCHDのパフォーマンスが低迷した理由同じ「高配当ETF」といっても、ファンドごとに組み入れている銘柄や投資戦略が異なるため、リターンにも差が出ます。特にSCHDは他のETFと比べてセクター比率(どの業種にどれだけ投資しているか)や銘柄選定の特徴が異なり、それがこの期間の低調なパフォーマンスにつながりました。ここでは主な要因を整理します。保有銘柄の違い:SCHDは質の高い配当株100銘柄に分散投資しますが、その上位構成銘柄を見ると、通信や医薬品など近年株価が伸び悩んだ企業が目立ちます。例えば2025年4月時点でSCHDの組入上位にはコノコフィリップス(COP)やベライゾン(VZ)、コカ・コーラ(KO)などが含まれ、特にコノコフィリップスは資産全体の約4.5%を占める第1位の保有銘柄でした。コノコフィリップスは過去1年で株価低迷が続いており、SCHDの足を引っ張ったと考えられます。一方、他のETFではVYMはブロードコム(AVGO)を約5%組み入れるなど情報技術セクターの有望株も保有しており、これが株価上昇に貢献しました(ブロードコムはAI需要などを背景に株価が大きく伸びた銘柄です)。またHDVはジョンソンエンドジョンソン(JNJ)を約5.3%、アッヴィ(ABBV)を約4.9%組み入れており、ヘルスケア株の上昇恩恵を受けています。SCHDは後述するようにヘルスケア比率自体は低くありませんが、特定の不振銘柄(例えば通信や一部医薬品株)の比重が高かった点で不利でした。セクター配分(業種バランス)の影響:各ETFが投資するセクターの比率の違いもパフォーマンス差を生みました。SCHDの特徴は、情報技術セクターの比率がわずか約10%と低く、代わりに生活必需品(消費財)やエネルギー、ヘルスケアといった伝統的な高配当セクターに多く投資していることです。これにより、「情報技術セクター」「公益事業セクター」「金融セクター」の成長を取りこぼしてしまいました。さらに、SCHDは公益事業(電力など)セクターをほぼ含まず、不動産セクターもゼロでした。これはSCHDのベンチマークがREIT(不動産投資信託)やユーティリティ(公益事業)を含まない構成であり、また財務健全性などの基準で選別しているためです。その結果、2024年後半に公益事業や不動産セクターが金利ピークアウト観測でやや持ち直した際にも、SCHDはその恩恵を受けられませんでした。一方、SPYDは公益事業セクターの比率が高く(構成上位にエクセロンやデューク・エナジーなど電力会社が名を連ねています)、金利低下期待の追い風を受けてリターンが改善しました。また金融セクターについても、SCHDは組入比率が1桁台(約8%)と低く、大型銀行株の上昇の恩恵が小さかった点が挙げられます。例えば2024年は大手銀行JPモルガンの株価が銀行危機後に持ち直しましたが、SCHDはJPモルガンを含まず、代わりに地方銀行のフィフスサード・バンコープなど比重の小さい金融株に限られていました。対照的にVYMは金融セクター比率が高く、JPモルガンなども組み入れていたため(VYMのJPモルガン比率約4%)、相対的に恩恵を受けています。このように「どのセクターにどのように投資していたか」の違いが、リターンの差に直結しました。配当利回りの要因:SCHDは「10年以上の連続増配実績」「高い株主資本利益率(ROE)」など厳格な選定基準を持ち、配当の持続力や企業の財務健全性を重視しています。そのため、一時的に配当利回りが非常に高い銘柄(例:業績悪化で株価暴落→見かけ上利回り急上昇したような銘柄)は組み入れず、安定成長する高配当銘柄が中心です。このアプローチは長期では有効とされていますが、短期的な株価トレンドとは噛み合わない場合があります。2024年前半〜中盤はAI関連などごく一部の大型ハイテク株に資金が集中し、多くの高配当銘柄は企業業績が堅調でも株価が冴えない状況でした。一方でSPYDは利回り重視で組入れた銘柄が多く配当利回り4~5%台と高水準だったため、仮に株価が停滞しても配当分で年4%以上のリターンを確保できました。結果として、この1年間は株価上昇が乏しい中でも「配当分厚み」の差がリターン差に寄与し、利回りの高いSPYDが有利となった面もあります。要するに、SCHDは堅実な増配銘柄中心ゆえ配当利回り水準ではやや見劣りし(執筆時点でSCHDの分配利回りは約3.7%、SPYDは約4.4%程度)、株価上昇も限定的だったためトータルリターンが低く出る結果となりました。以上のように、SCHDの低調な一年間の背景には、組入銘柄・セクター構成と市場環境のミスマッチがあったと言えます。他のETFと比べて情報技術株などの恩恵を受けにくいポートフォリオだったこと、防御色の強い銘柄群が金利上昇局面で市場の関心を集めづらかったことが影響しました。簡単にまとめると、過去1年の短期では、SCHDの選んだ財務健全性の高い企業・セクターの株価がパフォームしない中、より高利回りの配当銘柄を選んだSPYDのような高配当ETFに、配当分で打ち負けたと言えます。まとめ今回比較した4つの高配当ETFのうち、2024年4月~2025年4月の1年間ではSPYDが最も高いリターンを上げ、SCHDが最も低かったことが分かりました。SCHDの低迷は一時的なものであり、運用手法そのものが劣っているわけではありません。実際、SCHDは長期的な増配率や安定性で高い評価を得ており、過去10年のトータルリターンではVYMを上回る実績もあります(設定来の年率リターンではSCHDは約12.1%、VYMは約10.3%といったデータもあります)。したがって、「直近1年の結果だけで優劣を判断しないこと」が重要です。高配当ETFそれぞれに長所と短所、得意な相場局面があります。例えば、SPYDやHDVは景気敏感株やエネルギー株が多いため景気回復局面に強い半面、景気後退時や金融危機時には組入銘柄の減配リスクが相対的に高い可能性があります。一方、SCHDは財務健全性や連続増配実績に優れた銘柄で固められているため不況期でも減配が少なく、長期の安定運用に向いているという魅力があります。VYMは銘柄数が多く幅広い大型株に投資しており、市場全体に近い分散効果を持ちながらS&P500よりやや高い利回りを狙えるバランス型と言えます。投資家としては、ご自身の目標や市場見通しに応じて、これらETFを組み合わせて活用することも検討すると良いでしょう。例えば、高利回りで短期リターンを狙う部分にはSPYD、長期の安定成長にはSCHD、といった具合にポートフォリオ内で役割分担させる戦略も考えられます。今回の比較期間ではSCHDが低迷しましたが、将来金利が下がりディフェンシブ株が見直される局面になれば、再び相対的に優位に立つ可能性も十分あります。高配当ETFは長所を理解した上で分散投資し、長期的な視点で保有することが肝心と言えるでしょう。

【米国株見通し】景気後退懸念で調整売り、FANG+指数の今後と個人投資家が考慮すべき事は?

【米国株見通し】景気後退懸念で調整売り、FANG+指数の今後と個人投資家が考慮すべき事は?

本記事では、FANG+指数の下落要因について概説し、個人投資家が考慮すべき事項や今後の見通しについて紹介します。FANG+指数の構成銘柄の入れ替え基準と過去のパフォーマンスについてはこちらの記事で解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。※FANG(ファング)は、Facebook・Amazon・Netflix・Googleの4銘柄の頭文字を意味し、これらの銘柄にアップル、マイクロソフトを含む6銘柄を加えた大型テクノロジー10銘柄に10%ずつ等配分投資をする株価指数がFANG+指数です。米国株調整で、FANG+は大幅下落2025年、ドナルド・トランプ大統領の関税政策やその他の政策の不透明感による貿易戦争や景気後退への懸念から、米国株は2023年以来初の調整局面に入りました。S&P 500指数は2月19日の高値から10%以上下落し、ハイテク銘柄で構成されるFANG+指数は、投資家がリスク回避志向を強めていることから市場全体よりも大きく下落しています。株価の一時的な調整はよくあることLPL Researchによると、1928年以降に米国株は10%以上の調整を1.1年ごと、15%以上の大幅な調整を2年ごとに迎えており、調整相場でのピークから底までの平均下落率は13.8%となっています。一方、1950年以降においてS&P 500指数は調整局面に入ってから3ヶ月後には平均6.5%、6ヶ月後には12%のリターンを記録。中でも、経済政策の不透明感が株安を引き起こした事例では、短期的に市場が不安定化したものの、長期的には米国株の買いの好機となりました。ただし、大きな買いに積極的になるべきというわけではありません。一般的に、調整局面での底打ちは一度限りの出来事ではなく、プロセスとして生じます。ヤルデニ・リサーチによると、平均的な調整期間は115日であり、株価が持続的に上昇するには時間がかかるので、投資家は時間をかけて少しずつ株を買い戻すことが賢明と言えます。ハイテク株の見通しはマクロ経済状況に依存また、相場に対する投資家心理を反映する指数として知られるボラティリティ指数は依然として20を超え、政策や経済成長に対する市場参加者の強い警戒感が続いていることを示しています。FANG+の見通しは不透明が強く、政策金利の引き下げが確実視されればハイテク株は反発する可能性がありますが、中国、メキシコ、カナダからの輸入品に対する関税がインフレ懸念の長期化を招けば、ハイテク企業の利益率に重しとなる可能性があります。さらに、景気後退が起こった場合は、消費者や企業のテクノロジーへの支出が減り、株価にさらなる圧力がかかることが想定されます。FANG+への投資を検討する際には、リスクの許容度と投資期間を考慮する必要があります。マクロ経済の見通しが明確になるまでハイテク株は低迷する可能性がありますが、経済状況が改善すれば大幅な上昇も期待できます。一方、インフレと景気後退への懸念が高まる状況では、特定のセクターに特化するのではなく、ボラティリティの低い堅実な資産へ投資をし、より分散されたポートフォリオをを検討するのも手です。マーケットの底打ちはいつか市場は経済成長の鈍化をある程度織り込んでいるため、今後数か月で景気後退リスクがさらに高まるかどうかが当面の注目点となります。市場の底打ちには、1) 実体経済が堅調であり、景気後退リスクが限定的であることを示唆するデータ(経済指標)、2) FR​​Bの金融緩和シグナル、3) 政権のスタンス変化等が観測されることが必要と考えられます。ただし、経済指標が悪化した場合には市場の懸念が裏付けられますが、堅調な指標が維持されたとしても、景気後退を回避できると市場が十分に確信するまでに時間がかかる可能性があります。政策による下振れリスクが最も懸念されていることを考えると、政策スタンスの変化や政権が経済支援のために政策を調整する用意があるといったメッセージを発することが、明確な回復への道となると想定されます。

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【新NISA】一括投資と毎月積立どちらがいい?メリットとデメリットを解説

【新NISA】一括投資と毎月積立どちらがいい?メリットとデメリットを解説

本記事では、一括投資と毎月積立のメリットとデメリットを紹介し、新NISAでの実践方法を解説します。新NISA制度(少額投資非課税制度)の概要については、以下の解説記事をご覧ください。一括投資と毎月積立のメリットとデメリット一括投資は早期投資でリターンを最大化特徴投資資金を一度に全額投入運用成果が短期的には投資タイミングに依存メリット市場上昇時の利益最大化: 相場上昇する局面では高いリターンを得やすいデメリットタイミングリスク: 投資時期が市場のピーク付近の場合、大きな損失を被る可能性がある資金拘束: 一度に大きな資金を投資するため、流動性が低下一括投資は、リスクを許容しながら、将来の市場上昇を見越して積極的にリターンを追求したいと考える投資家に適しています。世界最大級の資産運用会社Vanguardによると、1976年から2022年にかけて一括投資は積立投資(ドルコスト平均法)と比べて約68%の確率で高い年間リターンを達成しています。これは市場が上昇傾向にある場合、より早く投資資金を市場に投入することでリターンを最大化できるためです。また、ポートフォリオに占める株式の比率が高いほど一括投資の優位性は大きくなります。毎月積立は投資のリスクを分散特徴一定額を定期的に投資投資タイミングが分散され、購入単価が平準化メリットリスク分散: 株価に関係なく投資するため、価格変動リスクを軽減デメリット上昇相場でのリターン低下: 一括投資と比べて、市場が継続的に上昇している場合はリターンが低くなる資産形成に時間がかかる: 投資額を積み上げるのに長期間を要する一方で積立投資は、投資タイミングを分割することで短期間の市場変動リスクを軽減し、特に市場が急落した場合に、一括投資よりもリターンが良いことがあります。そのため、市場の変動に対して冷静でいたい人や、短期損失やリスクを抑えつつ長期的に安定した資産形成を目指す投資家に向いています。新NISAでの一括投資と毎月積立の実践方法年間投資枠は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」で計360万円新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります。つみたて投資枠は、金融庁の基準を満たした投資信託について購入できる枠で、年間投資枠は「120万円」までです。一方、成長投資枠は、投資信託のほか個別株等も購入できる枠で、年間投資枠は「240万円」までです。新NISAで一括投資できるのは、成長投資枠のみつみたて投資枠は積立での投資を前提とされており、原則毎月10万円が上限となっています。そのため、年間投資枠を一括投資することはできません。成長投資枠については、一括投資と積立投資どちらも利用可能なため、年間投資枠の240万円までは一括投資できます。毎月積立する場合は月額30万円まで毎月積立を実践したい方は、つみたて投資枠の10万円と成長投資枠の20万円を合計した30万円までは新NISAで毎月積立投資が可能です(ボーナス月を設定した場合は、年間投資枠の範囲内で追加買付が可能)。ブルーモ証券では、毎月のつみたて投資を設定すると、自動で月々の投資額をつみたて枠と成長投資枠の1:2の比率に分けて買付を行うため、意識せずともNISA枠が効率的に埋まるように投資ができます。ブルーモ証券のかんたんNISAの詳細についてご関心のある方は、以下をご覧ください。

出金はいつしたら良い?長期資産形成を成功させるためのコツ

出金はいつしたら良い?長期資産形成を成功させるためのコツ

資産運用で利益が出ると、「利益を確保して出金したい」「損失が出る前に売ってしまいたい」と感じる方も多いかもしれません。しかし、長期的に資産を増やす観点から考えると、短期的な利益確定には慎重な判断が必要です。以下に、出金を検討するときに思い出したい、資産運用を成功させるための3つの重要なポイントを詳しく説明します。1. 利益確定によるデメリットを理解する資産がプラスに転じると、売却してその利益を確定したくなるものですが、長期的に資産を成長させるためには、短期の利益確定にはいくつかのリスクとデメリットがあります。税金が発生する資産を売却して利益が出た場合、約20%の税金が利益から差し引かれます。その結果、再投資する際の元本が減り、資産を成長させるための複利効果も小さくなります。長期的な運用を目指すのであれば、売却せずに資産を保有し続けることで、税金の支払いを先送りし、資産が複利で成長する恩恵を最大限に受けることができます。タイミングの見極めが難しい短期的な利益確定では、相場の上昇・下落を予測して適切なタイミングを見極める必要があり、これはプロであっても容易ではありません。売却した後に相場がさらに上昇することも多く、保有し続けていれば得られたはずのリターンを逃してしまう可能性が高くなります。こうした理由から、長期的な視点で持ち続けるほうが、安定した成長を期待できます。複利効果を失う複利の力は、長期的に資産運用を続けることで最大限に発揮されます。利益確定によって出金を繰り返すと、その都度複利効果が断たれ、最終的なリターンが小さくなりがちです。資産を保有し続け、再投資することで「利益が利益を生む」サイクルを活かすことができ、長期的に安定した資産成長が期待できます。たとえば、10年間5%の複利で運用した場合、元本は1.63倍になりますが、毎年の利益確定があるとこの成長は抑えられます。出金の判断は慎重に行い、複利の力が長期的に働くことで資産を着実に増やしていくことを意識しましょう。2. 出金は「本当に必要なときに、必要な分だけ」に留める資産運用の基本方針として、出金のタイミングを「資金が本当に必要なとき」に限定するのが賢明です。急な出費や緊急の資金が必要な場合には、必要な額だけを引き出し、残りの資産はそのまま運用を続けることが、資産成長を最大化する上で大切です。出金をこのように「必要最小限」に留めることで、資産が運用される時間を長く保ち、最終的なリターンを大きくすることができます。3. 短期の相場変動を気にしすぎない資産運用をしていると、短期的な相場変動によって一喜一憂しがちですが、こうした変動に過剰に反応することは、長期的な成長の妨げになりがちです。人間は、「利益があるうちに確保したい」「損失をできるだけ避けたい」という心理が強く働くため、少しでも相場が上昇すると利益確定したくなり、逆に下落すると早めに売却したくなる傾向にあります。しかし、こうした感情的な反応が続くと、資産運用の本来の目標である「長期的な資産成長」に悪影響を及ぼす可能性が高まります。たとえば、過去30年間で米国株(S&P500指数)は平均年率8%で成長してきましたが、年ごとのリターンはプラスとマイナスの変動がありました。長期的に見れば、リーマンショックやコロナショックのような大きな下落も、運用を続けることで回復し、その後の成長を享受することができたケースが多くあります。まとめ:出金は生活の必要ベースにして、長期目線の運用を続ける資産運用で利益が出たときに出金したくなる気持ちは自然なものですが、長期的な資産成長を目指すなら、短期的な利益確定は慎重に検討すべきです。「本当に必要なときに必要な分だけ出金し、それ以外は淡々と運用を続ける」ことで、資産が複利の恩恵を最大限に活かして成長しやすくなります。短期の変動に囚われず、計画に沿った運用を続けることで、最終的な資産成長が期待できるでしょう。

移管してもなくならない?意外と知られていない「NISA口座移管」の真実

移管してもなくならない?意外と知られていない「NISA口座移管」の真実

本記事では、意外と知られていない「NISA口座移管」の仕組みを徹底解説していきたいと思います。NISA口座移管のポイントは、①NISA口座はニーズに合わせて毎年異なる金融機関で開設できる、②一度NISA口座で投資した資産は口座移管してもずっと非課税(実は「移管」してもNISA口座はなくならない)、③政府が金融機関横断でNISA残高を把握するので複数開設しても安心、という3点になります。NISA口座移管のポイントNISA口座はニーズに合わせて毎年異なる金融機関で開設できる「NISA口座は1人1口座」というイメージが強いかも知れませんが、実は「1年間でNISA口座で取引できる金融機関は1つだけ」が制度の正しい説明になります。「NISA口座は1年に1金融機関」なので、毎年NISA口座を移管して、異なる金融機関でNISA口座をいくつも開いていくことも制度上は可能です。NISA口座を利用する金融機関を移管(変更)する理由としては、①「A証券会社で口座開設したが何を買って良いか分からなかったので、もっと分かりやすいB証券会社に移管する」②「C証券会社でおまかせ運用にNISAを使っていたが、個別株も取引したくなったのでD証券会社に移管する」③「E証券会社ではいま投資したい商品がないので、F証券会社に移管する」といったものが考えられます。一度NISA口座で投資した資産は口座移管してもずっと非課税NISA口座は自由に移管できるとして、次に出てくる疑問は「NISA口座を移管した場合、既に投資した資産はどうなるのか?」だと思います。結論から言うと、NISA口座で一度投資した資産は生涯ずっと非課税です(2024年からの新NISAの場合)。つまり、投資した資産から支払われる配当も非課税ですし、売却した際に出てくる利益も非課税です。NISA口座を移管するためには、現在投資しているNISA口座を「廃止」する必要がありますが、これには「勘定廃止」と「口座廃止」の2パターンがあります。「勘定廃止」はNISA口座と残高を残したまま、現在利用中の金融機関でのNISA投資をやめる(=別の金融機関に移管する)もので、この場合だとNISAで投資した資産は引き続き非課税のままとなります。「口座廃止」はNISA口座そのものを廃止するので、現在利用中の金融機関にNISA口座と資産は残りません。「口座廃止」をしたい場合、基本的にはご自身でNISA口座にある資産を売却いただく必要があります。上記から、NISA口座移管の際に「勘定廃止」を選べば、既にNISA口座で投資した資産は非課税のまま以前の金融機関で保有できます。政府が金融機関横断でNISA残高を把握するので複数開設しても安心NISA口座は毎年移管できて、移管することで既に投資した分の節税メリットが失われることがないことまでは分かった上で気になるのが、色々な金融機関でNISA口座を作って投資して、それを忘れてしまうことがないかという点かと思います。前提として、NISA制度の重複利用を防止するため、政府は個人をマイナンバーで紐付けて非課税適用を把握しているので、税務署(国税庁)には誰がどこでNISA口座を開設しているかという情報があります(なので、仮にどこでNISA口座を開いたか忘れても税務署に聞けば教えてくれます)。さらに、新NISA制度では個人の生涯を通じた上限となる買付残高が存在するため、個人の保有残高を政府がクラウドで把握・管理することになります。NISAの生涯残高が上限に達するのは早くても2028年末のため、まだ政府による残高管理は始まっていませんが、2026年を目処に政府のクラウドによる把握・管理が始まるとされています。なので、仮に複数の金融機関でNISA口座を開設・投資して、過去にどこで投資したか忘れてしまった場合でも、政府のクラウドで情報は把握できるので、資産にアクセスできなくなることはないようになっています。NISA口座移管の方法具体的にどのようにしてNISA口座を移管できるかを以下解説します。現在NISA口座を開いている金融機関で「廃止通知書」をもらうまず、現在NISA口座を開いている金融機関にNISA口座を廃止したい旨を伝えて、「廃止通知書」をもらいます。この際、上述したように、既にNISA口座で投資している資産がある場合、資産を維持しつつ「勘定廃止通知書」を貰い、NISA口座を開設したが投資しないでいた場合は「口座廃止通知書」を貰うのがお勧めです。「廃止通知書」は郵送で送られることが多いので、ご自宅で受け取る必要があります。移管する先の金融機関に「廃止通知書」を提出する次に、NISA口座を移管して新たに開設したい金融機関でNISA口座開設の申込みをして、先ほどの「廃止通知書」を提出します。「廃止通知書」が提出できたら、税務署の審査を待って(2週間ほどかかります)、NISA口座の開設が完了します。「廃止通知書」の提出方法は、制度改正があり、2024年からオンラインでも可能になっています。しかし、一部の金融機関では郵送手続きを求められることがあるので、その場合はご自身で送付いただく必要があります。ブルーモ証券では、スマホで「廃止通知書」の写真を撮り、アップロードするだけで提出が完了するようになっています。移管する場合は前年中に作業を終えるように注意「NISA口座は1年に1金融機関」なので、仮にNISA口座を移管しようと思っても、既に元の金融機関でNISA口座を利用していると、その年の間はNISA口座を移管できません。例えば、NISA口座で積立投資を設定していると、1月に元の金融機関のNISA口座にて投資がされた時点でその年はNISA口座が移管できないことになります。NISA制度は、口座移管をスムーズにするため、NISA口座の移管手続きを前年の10月から開始できるようにしています。つまり、移管したい年の1月から積立投資が行われてNISA口座を移管できなくならないように、前年のうちから移管手続きができます。NISA口座を移管される際は、自由に手続きができる「10月〜12月」をひとつのタイミングとして検討されることをお勧めします。ブルーモ証券でも「かんたんNISA」機能を提供ブルーモ証券では、簡単にNISA口座を活用して投資できる「かんたんNISA」機能を提供しており、著名投資家のポートフォリオをコピーしたり、自分の好きな銘柄で組んだポートフォリオで、NISA制度をフル活用することができます。ご関心ある方は、是非以下サイトをご覧ください。

Glossary

用語集

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