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米中貿易摩擦の緩和と好調なテクノロジー株決算で投資家心理は好転して株価上昇|米国市場サマリー

米中貿易摩擦の緩和と好調なテクノロジー株決算で投資家心理は好転して株価上昇|米国市場サマリー

先週は、トランプ大統領によるFRBパウエル議長批判や利下げ要求で急落して始まりましたが、その後は米中貿易摩擦の緩和期待を背景に急回復しました。財務長官が貿易緩和を示唆したことで投資家心理が好転し、ハイテク株を中心に買い戻されました。週後半はAlphabetなど好決算企業が相場を支援し、NASDAQとS&P500は4日続伸して週を終えました。為替は、週初にトランプ大統領のFRB議長解任検討報道や米中貿易摩擦の懸念から一時139円台まで下落しました。​しかし、週後半にかけてトランプ大統領がパウエル議長の解任を否定し、中国が一部米国製品への関税撤廃を検討しているとの報道が伝わると、リスク回避姿勢が後退し、ドルは反発。​25日には一時143.80円まで上昇し、週末には143.68円で取引を終えました。米国株式市場:貿易摩擦の緊張緩和で株価上昇。テック企業の好決算も後押しに4月21日(月) トランプ大統領がFRBのパウエル議長に対し強い批判を展開し、即時利下げを要求したことで、FRBの独立性が脅かされるとの懸念が強まり、市場は大幅下落しました。ダウ平均は一時1300ドル以上下げ、最終的に971ドルの下落。NASDAQとS&P500もそれぞれ2%超の下落となり、大型ハイテク株群の「マグニフィセント・セブン」も売り込まれました。Teslaが新モデルの生産遅延報道で5.8%下落、NvidiaもファーウェイのGPU量産報道で4.5%安と振るわず、全面安の展開でした。4月22日(火) 前日の悲観から一転し、米財務長官が米中貿易摩擦の緩和を示唆する発言をしたことで、投資家心理が大きく改善し、市場は急反発しました。ダウ平均は1016ドル高、NASDAQとS&P500も2.5%超の上昇を記録。特に金融株や一般消費財セクターが強く買われました。決算発表では3Mが第1四半期の利益好調を背景に8.1%高。一方、関税の影響で業績悪化を示したNorthrop Grummanは12.7%、RTXも9.8%下落しました。4月23日(水) トランプ大統領が前日に引き続きパウエル議長を批判しつつも、解任の可能性を明確に否定したこと、さらに米中貿易摩擦の緩和に向けた交渉の進展期待が高まり、市場は続伸しました。ダウ平均は419ドル高で引けました。Teslaがイーロン・マスクCEOが経営に再び専念すると発表したことで5.3%上昇、Boeingも業績が市場予想より改善し6.1%の上昇を見せました。一方、General Dynamicsは受注減少を嫌気し3.3%安となりました。4月24日(木) 企業の決算好調と米中貿易摩擦のさらなる緩和期待により、市場の楽観ムードが継続しました。ダウ平均は486ドル上昇、NASDAQは2.7%高となりました。特に好決算を発表したServiceNowが15.5%の急伸を見せ、ハイテク株の上昇を主導しました。一方、消費関連のProcter & GambleとPepsiCoは景気減速懸念を背景に見通しを下方修正し、それぞれ3.7%と4.9%下落しました。4月25日(金) 米中関税措置の一部品目除外など、具体的な緩和策が出たことで、市場は4日続伸しました。NASDAQとS&P500は堅調に推移。Alphabet(Googleの親会社)は第1四半期の好決算が評価され1.7%高となりました。一方、Intelは業績見通しが市場予想を下回ったことで6.7%安と逆行安の展開。週間ベースでは主要指数が揃って上昇し、小型株のラッセル2000も昨年11月以来の上昇率を記録するなど、市場の回復ムードが強まりました。為替市場:一時リスクオフで円高が進むも、緊張緩和と日米財務大臣会合を受けて円安に為替は、米国の金融政策や米中貿易摩擦に関する報道に左右され、乱高下する展開となりました。週初、トランプ大統領がFRBのパウエル議長の解任を検討しているとの報道や、米中貿易交渉の進展が見られないことから、ドルは対円で一時140.72円まで下落し、昨年9月以来の安値を記録しました​。しかし、週後半にかけては、中国が米国からの一部輸入品に対する125%の関税を撤廃することを検討しているとの報道が伝わり、米中貿易摩擦の緩和期待が高まりました​。また、日米財務相会談では、為替水準や目標に関する言及がなかったことが明らかになり、円安是正への懸念が後退しました​。これらの要因から、ドルは対円で買い戻され、25日には一時143.91円まで上昇し、週末には143.68円で取引を終えました​。週を通じて、ドル円相場は約3円の値幅で推移し、米中貿易摩擦や米国の金融政策に対する市場の関心の高さが示されました。今週のマーケット:決算ラッシュが続く。M7決算もNVIDIA以外は出揃う今週(2025/4/28-5/2)は、決算ラッシュが続き、M7決算もNVIDIA以外の6社が出揃うことになります。ハイテク株への追い風は続くが注目です。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

【アマゾン決算みどころ】AWS成長率とAI戦略に注目、過去最高益更新なるか(Amazon)

【アマゾン決算みどころ】AWS成長率とAI戦略に注目、過去最高益更新なるか(Amazon)

本記事では、アマゾン(Amazon)の2024年第4四半期決算を振り返り、5月1日に控える2025年第1四半期決算の見どころを解説します。アマゾンの2024年第4四半期決算は、売上高1,878億ドル(前年比+10%)、純利益200億ドル(約2倍)と好調でした。AWSクラウド事業は売上高288億ドルで前年比+19%の成長を達成し、広告事業も173億ドルと前年比+18%増と堅調でした。2025年に入り、生成AI機能を搭載した次世代版「Alexa+」を発表し、クラウドインフラとAI関連への大規模投資を継続しています。コスト効率化と成長投資のバランスを取りながら、業績は順調に推移しています。今回決算は、AWSや広告といった高収益エンジンが順調でコスト管理もうまくいっていればポジティブ、一方で成長鈍化や投資増による利益圧迫が見られればネガティブという評価になりそうです。アマゾン株は直近まで大きく上昇してきたため、良い意味でも悪い意味でも市場の期待値が高まっています。その分ハードルも上がっていますが、裏を返せば複数の事業がバランスよく成長している強みが評価されているとも言えます。前回決算(2024年第4四半期)ハイライト売上高と利益が市場予想を上回る: 2024年10-12月期のアマゾン実績は、売上高が1,878億ドル(約28.2兆円)と前年同期比+10%と好調でした​。為替の影響を除くと+11%の成長で、年末商戦(ホリデーシーズン)の強い消費需要が貢献しました。また営業利益は前年同期の132億ドルから61%増加し212億ドルに達し、純利益も前年同期の106億ドルから約2倍の200億ドルに急増しました。一株当たり利益(EPS)は$1.86となり、市場予想の$1.49を大きく上回っています。増収増益となった主因は、堅調な売上成長に加え、倉庫・物流網の効率化や人員削減によるコスト圧縮で採算が改善したためです。主要セグメント別の業績: アマゾンは事業を大きく「北米」「国際」「AWS(クラウド)」の3セグメントに分けて開示しています。北米(主に米国のECと関連事業)セグメントは売上1,156億ドル(+10%)と2桁成長し、プライム会員向け配送スピードの向上策やブラックフライデー・サイバーマンデーの販売好調が寄与しました。北米部門の営業利益も93億ドルと前年の65億ドルから約43%増加し、大幅な増益となりました。国際セグメント(北米以外のEC)は売上434億ドル(+8%、為替調整後+9%)で、営業損益は前年同期の▲4億ドルから本四半期は13億ドルの黒字へと改善しています。これはヨーロッパやアジアでEC需要が持ち直したことやコスト見直しの効果によるものです。AWSクラウド事業の成長: クラウドサービスの Amazon Web Services (AWS) は引き続きアマゾン全体の稼ぎ頭です。2024年Q4のAWS売上高は288億ドルと前年同期比+19%の伸びを記録しました​。伸び率は前四半期(+19%)と同水準で、市場予想(約289億ドル)にほぼ達しています。AWSの営業利益は106億ドルと前年同期比+48%増加し、営業利益率は36.9%へ拡大しました。この高収益なAWS事業だけで全社営業利益の約5割を稼いでおり​、アマゾンの利益成長を力強く牽引しています。AWS成長の背景には、企業のデジタルトランスフォーメーション需要やAI関連サービスの導入拡大があり、2024年Q4には自社開発のAI用半導体「Trainium2」の提供開始も成長を後押ししました​。広告・その他事業の動向: アマゾンの広告事業も主要な成長セグメントです。同社サイトやFireタブレット、Twitchなどで展開する広告サービス収入は2024年Q4に173億ドルと前年同期比+18%増加し、四半期として過去最高水準に達しました​。増収率は昨年同時期(+26%)からは鈍化したものの、依然として20%近い高成長を維持しています。アマゾンの広告売上はここ4年間で倍以上に拡大したとされ、GoogleやFacebookに次ぐデジタル広告プラットフォームとして地位を確立しています。また、物流部門やサブスクリプション(プライム会費など)も着実に成長しました。特に物流面ではサプライチェーン最適化や倉庫の自動化投資が奏功し、1個あたり配送コストの削減や翌日配送比率の向上につながっています。コスト効率の改善と株価反応: 前年から続く構造改革の成果で、アマゾンは大幅なコスト効率化を達成しました。2023年には全社で約27,000人の人員削減(主に本社部門)を断行し、組織のスリム化によって年間数十億ドル規模のコスト削減効果を見込んでいます​。その結果、2024年Q4の営業費用の増加率は+5.7%に抑えられ、売上+10%を下回りました。これが前述の営業利益急増に直結しています。決算発表直後の株式市場の反応はやや波乱含みでした。時間外取引で株価は一時▲5%下落し、時価総額900億ドルが吹き飛ぶ場面もありました​。主な要因はクラウド事業の伸び悩み懸念と、発表された2025年Q1ガイダンス(見通し)が市場予想を下回ったことです​。ただしその後株価は持ち直し基調となり、2025年4月上旬には年初来で+20%以上上昇し2年半ぶりの高値水準を更新しています(市場全体のハイテク株上昇の追い風もあり)。個人投資家にとっては、このような決算直後の変動に惑わされず、長期的な成長ドライバーに注目する姿勢が重要と言えます。前回決算以降の主なニュース動向生成AI関連の戦略発表: 2025年に入り、アマゾンは生成AI(Generative AI)分野でいくつかの大きな動きを見せました。2月末には10年ぶりとなる音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」の大型アップデートを発表し、次世代版「Alexa+(アレクサ・プラス)」を公開しました。新しいAlexa+は生成AIを活用した高度な会話能力を備え、従来のような一問一答形式でなく自然な対話の流れでユーザーの意図を汲み取り、コンサートやレストラン予約、メール送信など複雑なタスクを音声だけで処理できます。この刷新は当初計画より1年遅れとなりましたが、競合のChatGPTやGoogleアシスタントに対抗し、「AI時代における家庭内アシスタントの再定義」を目指すアマゾンの意気込みがうかがえます。またクラウド面でも、AWSは自社開発の大規模言語モデル(LLM)「Amazon Nova」シリーズを投入し、外部パートナーのAIモデル(例:Anthropic社のClaudeなど)も統合する生成AIプラットフォームを強化しています。こうした取り組みにより、アマゾンはクラウド顧客に対しAIソリューションを包括的に提供し、マイクロソフトやグーグルとのクラウドAI競争で後れを取らないよう努めています。AWSクラウドの成長と競争環境: 前述の通りAWSの直近成長率は+19%と堅調でしたが、クラウド業界全体では成長鈍化傾向がみられます​。マイクロソフトのAzureやグーグルクラウドも2024年後半に伸び率が低下しており、企業のクラウド支出が一巡したことやコスト最適化の動きが背景にあります。アマゾン経営陣は決算説明で「需要に対し供給側の制約が成長を幾分抑制している」と述べ、特に高度なAI処理に必要な半導体チップやデータセンター電力の供給が追いつかず、もし供給制約がなければより高成長も可能だったとの認識を示しました。実際、AWSは需要増に対応するため2024年下期から2025年にかけて過去最大規模の設備投資を計画しています。この巨額投資には新規データセンター建設やAIチップ増産が含まれ、CEOのアンディ・ジャシー氏は「AIはインターネット以来の大きな機会」であり、中長期での成長拡大に向けた前向きな投資と強調しています。一方で競争も激化しており、例えば中国では低コストのAIクラウドを掲げる新興企業の台頭も報じられています。AWSが今後もクラウド首位の座を維持するには、高性能かつコスト効率の良いサービスを提供し続けることが不可欠です。広告事業の拡大と戦略: アマゾンの広告ビジネスは、前回決算で示されたように年率+18%と順調に拡大しています。特に動画ストリーミング「プライム・ビデオ」への広告導入は大きな話題となりました。アマゾンは2024年から米国や欧州でプライム会員向け動画に広告を挿入し始め、そして日本でも2025年4月よりプライム・ビデオに広告付きプランを導入しました(従来会費に月数百円を追加すれば広告無し視聴も可能)。この施策は動画配信サービス全体の潮流であり、自社オリジナル作品などコンテンツ投資を続けるための収益源確保が目的です。広告主にとっても、アマゾンの豊富な購買データに基づくターゲティング広告や、音声AIアシスタント(Alexa経由の広告など新形態含む)は魅力的であり、今後も広告事業はグーグルやメタ(旧Facebook)に次ぐ第3のデジタル広告巨頭として成長が期待されています。コスト管理と投資戦略のバランス: 2023年に大規模リストラを実施したアマゾンは、2024年以降も継続して経費構造の見直しを図っています。直近では2025年1月にもコーポレート部門で若干の追加レイオフが行われました​。同社は「組織の階層をフラット化し、迅速な意思決定を妨げるポジションを整理した」と説明しており、肥大化した本社機能をスリムに保つ姿勢を示しています。一方で将来の成長分野への投資は惜しまない方針です。特にリソースを投入しているのがクラウドインフラとAI関連で、前述のように2024年第4四半期の設備投資額は263億ドルにも上りました。CFOのブライアン・オルサブスキー氏によれば「今後もこのペースの高水準投資を続ける見通し」とのことで、最新技術への積極投資により競争優位を維持する戦略です。キャッシュフロー面では、2024年の営業キャッシュフローは前年から+82%増の849億ドルと潤沢で、フリーキャッシュフローも大幅黒字に転換しています。このため財務的な投資余力は十分にあり、AI・物流・デバイスなど複数の分野で「次の成長のタネ」を蒔きつつあります。株主還元と株価動向: アマゾンは伝統的に利益を事業再投資に充てて成長を優先してきた企業で、配当は無配、株主還元(自社株買い)も同業他社と比べ控えめです。2022年に100億ドル規模の自社株買い枠を設定しましたが、2023年までの買い戻し実績は60億ドル程度に留まっており​、過去4四半期でも発行済株式数は1%弱しか減っていません​(※社員へのストックオプションによる希薄化をほぼ相殺する水準)。しかし足元でキャッシュ創出力が急向上したことから、一部では「そろそろ株主還元を拡充すべき」との声も出始めています。実際2024年末時点で手元現金は約1000億ドルに達しており、負債を除いたネットキャッシュも潤沢です。もっとも、経営陣は依然としてAIや物流網への大型投資に前向きで、短期的に配当開始や大規模買戻しを行う可能性は低いと見られます。そのため株主還元よりも株価自体の上昇によるリターン(キャピタルゲイン)が当面の投資妙味となるでしょう。昨年から今年にかけてアマゾン株は力強く反発しており、2023年の低迷からV字回復しました。個人投資家としては、業績動向と併せて株価トレンドにも目を配りつつ、押し目があれば中長期の視点で投資判断するスタンスが求められます。今回(2025年Q1)決算での注目ポイントと株価への影響クラウドAWSの成長率と収益性: 最大の注目はやはりAWS事業の動向です。市場では「AWS成長率は底打ちしたのか」が関心事となっています。前年(2024年)前半に一時10%台前半まで減速したAWS成長率は、後半に18~19%まで持ち直しました。今回発表の2025年Q1でも引き続き15~20%程度の前年同期比成長を維持できるかがポイントです。もっとも前回決算時に示されたQ1の会社売上ガイダンスは全社で+6~8%増程度と保守的で​、これを踏まえるとAWSも若干鈍化する可能性があります。供給制約(チップ不足など)の影響がどの程度続いているか、決算説明での経営陣コメントも重要です。AWSの営業利益率(直近36.9%)が今期も高水準を保てるかもチェックしましょう。旺盛な設備投資によって減価償却費や運用コストが増えれば短期的に利益率は圧迫される懸念がありますが、前四半期同様にコスト増を売上拡大が上回れば高収益性を維持できます​。もしAWS成長が再減速したり利益率低下が見られれば、発表直後に株価下落要因となり得ます。一方で予想以上の成長加速やポジティブな見通しが示されれば、株価押上げの原動力となるでしょう。広告収入の伸びと収益源の多様化: 第2の注目点は広告事業の動向です。前述のようにアマゾンの広告売上は四半期170億ドル規模に達しており、同社にとってAWSに次ぐ利益柱です。特に1-3月期は他の四半期と比べホリデー要因がなく広告売上が落ち込みやすい傾向がありますが、それでも前年同期比で二桁成長を維持できるかがポイントです。競合のグーグルやメタもデジタル広告市場で持ち直しを見せている中、アマゾン広告が引き続きシェア拡大できていれば、収益源の多様化という観点で投資家の安心材料となります。またプライム・ビデオへの広告導入効果や、生成AIを活用した広告クリエイティブ自動生成ツール(出品者が商品の広告画像や動画をAIで簡単に作成できるサービスなど)の普及状況にも注目です。広告事業は利益率が高く、売上1ドルの増加がそのまま利益寄与しやすいため、今期も順調なら全社の営業利益を底支えするでしょう。コアEC部門の成長率とコスト最適化: アマゾンの原点であるオンライン小売(EC)部門も引き続き注視すべきです。米国を中心とした個人消費はインフレや景気動向の影響を受けやすく、2025年初にはやや減速懸念も取り沙汰されています。その中でアマゾンの商品売上(自社販売+マーケットプレイス手数料)が前年同期からどの程度伸びたか、見極めが必要です。前回Q4は北米+10%、国際+8%でしたが、1-3月期は季節的な低調期であるため一桁前半~中盤の成長にとどまる可能性があります。プライム会員数やその購買頻度、サブスクリプション収入(プライム年会費、Audibleなど)の伸びも参考情報です。またEC部門の収益性改善にも注目しましょう。これまで赤字だった国際セグメントが直近黒字化したように、巨大な物流ネットワークの効率化や在庫管理の高度化(データ分析による適正在庫配置)、配送の自動化などが奏功すれば、低マージンと言われたEC事業が着実に利益を生む体質へ変わりつつある可能性があります​。もし今回の決算でもEC部門の利益率改善が確認できれば、中長期でアマゾンの収益ポテンシャルを押し上げる好材料となります。生成AIサービスの進捗とガイダンス修正: 決算発表では、今後の戦略や見通しについて経営陣が語る「ガイダンス」も重要です。特にAI関連では、先述のAlexa+の提供開始スケジュールやユーザー反応、AWSにおける生成AIサービス(Amazon Bedrock経由での各種AIモデル提供)の顧客利用状況などについてアップデートがあるか注目されています。AIは短期的な収益貢献よりも将来への投資色が強い分野ですが、アマゾンが具体的な成果(例:大口顧客の導入事例やサービス利用数の拡大)を示せれば投資家心理の改善につながります。また2025年Q2の会社側見通し(売上高レンジや営業利益レンジ)が上方修正されるかもポイントです。前回発表時点では2025年Q1見通しが市場予想を下回り失望を招いただけに、今回のガイダンスが保守的すぎないかどうかマーケットは敏感に反応するでしょう。仮にガイダンスが強気に修正されれば、年後半に向けた成長加速への自信と受け取られ株価の追い風となり得ます。逆に引き続き慎重な見通しの場合、一時的に売り材料となる可能性もあります。株価への総合的なインパクト: 上記の各ポイントの結果如何によって、決算後の株価は上下に振れやすい状況です。総じて、AWSや広告といった高収益エンジンが順調でコスト管理もうまくいっていればポジティブ、一方で成長鈍化や投資増による利益圧迫が見られればネガティブという評価になりそうです。アマゾン株は直近まで大きく上昇してきたため、良い意味でも悪い意味でも市場の期待値が高まっています。その分ハードルも上がっていますが、裏を返せば複数の事業がバランスよく成長している強みが評価されているとも言えます。個人投資家としては、決算発表の数字と経営陣コメントを丹念に分析し、短期的な株価変動に一喜一憂するのではなく、クラウド・広告・EC・AIという複数の成長エンジンを持つアマゾンの中長期的な企業価値を見極めることが肝要でしょう​。今回の決算は、そうした判断材料を提供してくれる重要なイベントとなりそうです。

【アップル決算みどころ】iPhone 16eとサービス成長で中国減速をカバーできるか(Apple)

【アップル決算みどころ】iPhone 16eとサービス成長で中国減速をカバーできるか(Apple)

本記事では、アップル(Apple)の2024年第4四半期決算を振り返り、5月1日に控える2025年第1四半期決算の見どころを解説します。アップルの2025年第1四半期(2024年10-12月期)決算は、売上高1,243億ドル(前年比+4%)、EPS2.40ドル(同+10%)と過去最高を記録しました。地域別では米国+4%、欧州+11%と好調な一方、中国は-11%と苦戦しています。新製品のVision Proは販売不振で生産縮小の可能性があり、生成AI機能の開発も遅れが生じています。一方で、iPhone 16eの投入により世界スマホ市場シェアで首位を獲得し、サービス部門は過去最高の263億ドルの売上を記録するなど、明暗が分かれる結果となりました。今回の決算は「減速する中国をその他地域やサービス収入で補えるか」がテーマといえます。iPhone販売台数やサービス収入の着実な伸びが確認できれば、アップルは逆風下でも成長持続可能との評価から株価にプラスです。一方、中国需要悪化やAI対応の遅れが響いて弱い決算となれば、一時的に株価が調整するリスクもあります。ただアップルは豊富なキャッシュを背景に積極的な株主還元と長期視点の事業投資を続けており​、中長期の企業価値は底堅いと見る向きも多いです。2025年第1四半期(10~12月期)決算ハイライト2025会計年度第1四半期(2024年10~12月期)のアップルの業績は、売上高1,243億ドル(前年同期比+4%)と過去最高を記録し、希薄化後EPS(一株当たり利益)は2.40ドル(前年同期比+10%)となりました。地域別に見ると、米国+4%、欧州+11%、中国は-11%と地域間で明暗が分かれました。特に日本は+15%と大きく伸びており、2年連続の増収となっています。製品別では、iPhone売上高が前年同期比0.8%減とわずかに減少したものの、Macは+15%増、iPadも+15%増とパソコン・タブレットが好調でした。サービス部門(App Storeやサブスクリプションなど)は過去最高の263億ドルの売上を計上し前年比+13%増と引き続き高い成長を示し、ウェアラブル・ホーム・アクセサリ部門(Apple WatchやAirPods等)は-2%減とやや減速しました。純利益は363億ドルと前年を上回り、同四半期として過去最高水準です。こうした堅調な決算を受け、株価は決算発表後に上昇しました。発表当日(米国時間1月30日)終値は前日比0.74%安でしたが、時間外取引では+3.26%高の245.34ドルまで買われています。市場予想を上回る収益と、為替の影響を除けば堅調な次期売上見通しが評価されたためです。アップルは第1四半期に約300億ドル(約4兆円超)もの資金を自社株買いと配当の形で株主に還元しており、取締役会は四半期配当(1株0.25ドル)の支払いも決議しました。潤沢なキャッシュフローを背景にした株主還元策は株価下支え要因となっています。前回決算以降の主なニュースと動向Vision Proの販売状況: 2024年2月に米国で発売されたアップルの高価格帯MR(複合現実)ヘッドセット「Apple Vision Pro」は販売が伸び悩んでいます。報道によれば、アップルは需要低迷を受けて現行モデルの生産を大幅縮小し、2024年末までに一時生産停止の可能性もあるとのことです。実際、発売直後の四半期(2024年2~3月)に10万台も売れず、その後も需要減速から生産台数をピーク時の半分程度に抑制している模様です。アップルは第2世代Vision Proの開発を少なくとも1年延期し、まず低価格モデルの開発に注力する方針とも報じられています。超高額(米国で3,499ドル、日本では約50万円)の初代モデルでは市場拡大が難しく、価格引き下げと「キラーアプリ」の出現による普及拡大を狙う戦略と考えられます。現時点でVision Proの売上への貢献はごく僅かで、ウェアラブル部門全体の売上も前年割れとなっていることから、投資家は今後の販売動向と収益寄与を引き続き注視する必要があります。生成AI機能(Apple Intelligence)の開発動向: アップルはiPhoneやMac向けに独自の生成AI機能群「Apple Intelligence」の提供を進めていますが、その展開は計画より遅れています。2024年秋のiOS 18リリース時に一部機能を提供開始したものの、目玉であるSiriの高度な生成AIアップデートの開発が難航しています。アップルは2024年6月のWWDCで発表したSiriのAI強化機能の提供時期が当初予定(2025年4月頃)より遅れ、2026年初頭までずれ込む可能性を認めました。実際、2025年3月7日に広報を通じ「当社が考えていたよりもこれらの機能の提供に時間がかかる」と声明を出し、事実上の大幅延期を発表しています​。このニュースを受けて株価は3月中旬に急落し、アップルのAI戦略への投資家懸念が高まりました​。競合のGoogleやAmazonが音声アシスタントに生成AIを相次ぎ統合する中、アップルの出遅れは将来のiPhone買い替え需要に影響しかねないと指摘されています。もっともアップルはプライバシー重視からデバイス上で動作する省電力AIに注力しており、完成度を高めた上で順次機能拡張する方針です。個人投資家としては、秋発売の次期iPhoneに間に合う形でどこまでAI機能強化が進むか注目したいところです。iPhone販売と主要市場の需要動向: 前述のとおり、直近四半期(2024年末)のiPhone売上は前年比微減となりましたが、地域別の動向に特徴が出ています。中国市場ではiPhoneが不振で、第1四半期(10-12月)の売上高は前年同期比11%減少しました。背景には、中国本土でアップルの生成AI機能(Apple IntelligenceやChatGPT)が規制により利用できず魅力が削がれていることや、景気減速による消費低迷があるとアップル経営陣は分析しています。実際、調査会社Counterpointによると2024年Q4の中国におけるAppleスマホ販売台数は前年同期比18.2%減と大きく落ち込み、同年通期の中国スマホ市場シェアでもAppleは首位から4位に転落しました。一方、米国や欧州では年末商戦期の需要が堅調で売上横ばいを維持し、日本や新興国での需要は強い伸びを見せています。特に注目すべきはインド市場で、アップルは2023年に同国で初の直営店をオープンし販売体制を強化するとともに、製造面でもインド生産を拡大しています。直近1年間でインドでのiPhone生産量を60%増やし、世界出荷台数の20%がインド製となったことが報じられており、地政学リスク分散と現地需要取り込みに努めています。インドでのアップルのスマホシェアはまだ約8%程度ですが、2024会計年度の売上は約80億ドルに達しており今後も二桁成長が見込まれています。こうした新興国市場でのシェア拡大は、既に成熟した米欧中市場に代わる中長期成長シナリオとして重要です。さらに2025年2月末には新型の「iPhone 16e」を投入しました。これは現行のiPhone16シリーズの廉価版モデルで、価格を抑えつつ最新機能(Apple Intelligenceなど)を搭載した製品です。低価格帯の16e投入は新規需要を喚起し、日本やインドでの販売増に奏功したと伝えられています。調査会社のデータでは、2025年第1四半期(暦年、1~3月期)の世界スマホ市場シェアでアップルが19%を占め、サムスンを抑えて首位となりました​。欧米や中国の販売が苦戦する中でも、iPhone 16eの寄与と日本・インドの堅調な需要が世界シェア首位奪還の原動力となっています。このように前回決算後、地域間で明暗を分けるiPhone需要動向が鮮明になりました。中国市場の減速を他地域での伸びと新製品投入でどこまでカバーできるかが、今後の業績を左右するポイントです。規制リスクと株主還元策: マクロ環境や規制面のニュースも見逃せません。米国と中国の間の貿易摩擦は2025年に入って激化し、米国政府が中国からの輸入品に最大150%の関税を課す可能性が取り沙汰されました。アップル株はこの報道を受け4月初旬に一時25%以上急落する場面がありました。その後、スマートフォンなど一部製品は関税適用除外となる見通しが伝わり株価は持ち直しましたが、依然として中国生産への依存や中国販売減速に対する地政学リスクは株価の重石となっています。また欧州ではデジタル市場法(DMA)の施行により、アップルはEU圏内でiPhoneへのサードパーティ製アプリストア解禁やアプリ内決済手段の開放を余儀なくされています。これは中長期的にApp Store手数料収入(サービス部門)に影響を及ぼす可能性があり、アップルは慎重に対応を進めています。こうした規制リスクの一方で、株主還元策は引き続き強化されています。アップルは12年連続で四半期配当を増配しており、前述の自社株買いも継続中です​。昨年同時期(2024年Q2)には追加で1,100億ドル(約17兆円)もの自社株買い枠を承認し、四半期ベースで過去最高額の買い戻しを実施しました​。これほどの巨額買い戻しは自社株への信頼の表れであり、1株当たり利益の押し上げ効果もあります。個人投資家にとっては、規制環境の変化による向かい風と、手元資金を活用した株主還元による追い風の両方を考慮することが重要です。今回発表(2025年第2四半期、1~3月期)決算の注目ポイントと株価への影響5月上旬に公表予定の2025年第2四半期決算(1~3月期)では、上述の動向を踏まえいくつかの重要ポイントが予想されます。それぞれが株価に与えるインパクトを整理しましょう。iPhone売上の回復または減速: 最大の注目点はiPhone部門の売上動向です。前年の2024年1~3月期は中国での販売低迷などからiPhone売上が減少(前年同期比 -X%)しており、今回はその反動による増収が期待されています​(注: 2024年Q2はiPhone含む主力製品が軒並み減収でした)。特に今年は2月末に発売した「iPhone 16e」の販売寄与が約1か月分含まれるため、中価格帯需要の取り込みでiPhone全体を下支えした可能性があります。実際、前述の通り1-3月期の世界シェアでアップルは首位となっており、数量ベースでは健闘したとみられます。もっとも中国市場の需要回復は不透明で、引き続き前年比マイナスが続くリスクも残ります。iPhone売上が市場予想を上回る増収となればポジティブサプライズとなり株価上昇要因ですが、逆に回復が鈍く横這い~減収に留まる場合は失望売りを招きかねません。決算発表では地域別のiPhone販売動向や、新興国での伸長が中国減速をカバーできたか注視しましょう。サービス部門の成長継続: サブスクリプション収入やApp Storeを含むサービス部門は、第1四半期に過去最高売上を記録するなどアップルの稼ぎ頭となっています。第2四半期も前年比二桁増の堅調成長が続くかが重要ポイントです。足元ではApp Store規制緩和の動きもありますが、本決算への直接的な影響は限定的でしょう。むしろApple MusicやiCloud、有料保証AppleCare+の契約増加や値上げ効果で引き続き高い利益率の収入増が期待されます。サービス部門は粗利率が製品より高いため、売上成長が確認できれば利益面でプラス材料となります。仮に成長減速が見られると将来の収益予想に影響するため、有料サブスクリプション数の増減や地域別サービス売上にも注目です。サービス収入拡大が順調なら、アップルのエコシステム強化による安定収益源として評価され株価支援要因となるでしょう。中国市場の販売状況: 中国売上が前四半期(10-12月)に続き減少するか、あるいは春節需要などで持ち直すかも株価のカギを握ります。昨年末時点で中国売上は約185億ドルと全体の15%超を占めており、この巨大市場のトレンド変化はインパクトが大きいです。中国政府による消費刺激策や、ライバル華為技術(ファーウェイ)の勢いなど外部要因も絡みます。アップルは4月以降、生成AI機能の多言語展開により中国以外の地域で需要拡大を図ると述べていますが、肝心の中国本土でApple Intelligenceが使えない状況が続く限り販売回復は限定的かもしれません。もし中国売上が前年同期比で再び二桁減となればネガティブ材料ですが、一方で「底打ち」して減少幅縮小や横這いとなれば安心感から株価にはプラスでしょう。投資家は決算カンファレンスでのティム・クックCEOの中国市場に関するコメントにも耳を傾ける必要があります。Apple Vision Proの収益貢献: 2024年2月に米国発売となったVision Proの売上寄与が初めて今四半期に表れる見込みです。ただし前述の通り販売台数はごく少数に留まっているため、四半期売上(908億ドル※前年同期)に占める割合は数十億円程度とごく僅かと推測されます。それでも「Wearables, Home and Accessories」セグメントにおいて前年同期比の増減要因として触れられる可能性があります。むしろ重要なのは、アップルが決算説明でVision Proについて今後の販売国拡大や開発計画に何らかのアップデートを示すかどうかです。6月末には日本や欧州での発売も予定されており、その準備状況や初期ユーザーの反応などが語られれば、今後の収益モデルを占う手がかりとなります。仮に需要が想定以上に低迷し続ける場合、在庫や関連費用が業績圧迫要因となりかねず注意が必要です。投資判断としては現時点でVision Proに過度な期待を織り込むのは禁物ですが、長期的なプラットフォーム戦略として注視する価値はあります。ガイダンス修正の有無: アップルはパンデミック以降、正式な数値ガイダンスの提供を控えていますが、決算時に次四半期の売上トレンドについて定性的な見通しを示すことがあります。前回決算では「2025年1-3月期の売上高は為替影響を除けば中〜低シングル(一桁)台の成長」との見込みが示唆されました。今回その見通しに変化があるかどうか、例えば最近の関税問題や中国情勢を受けて保守的に下方修正するのか、あるいは新興国の好調や為替追い風で強気のトーンを維持するのかがポイントです。仮に経営陣が先行きに慎重姿勢を強めれば、将来成長への不安から株価は上値が重くなる可能性があります。逆に「業績は堅調に推移している」「需要は予想通り」といった自信を示せば、市場心理の改善につながるでしょう。特に今年後半にはiPhone新モデルや廉価版Vision Proの噂もあり、中長期見通しについて言及があるか注目です。加えて、例年この時期には新たな自社株買い枠の発表がなされる傾向があります。前述のように昨年は追加1100億ドル規模の買い戻しを決定しており、今回も巨額の資本還元策が示されれば株価の下支え要因となるでしょう。以上のポイントを総合すると、今回の決算は「減速する中国をその他地域やサービス収入で補えるか」がテーマといえます。iPhone販売台数やサービス収入の着実な伸びが確認できれば、アップルは逆風下でも成長持続可能との評価から株価にプラスです。一方、中国需要悪化やAI対応の遅れが響いて弱い決算となれば、一時的に株価が調整するリスクもあります。ただアップルは豊富なキャッシュを背景に積極的な株主還元と長期視点の事業投資を続けており​、中長期の企業価値は底堅いと見る向きも多いです。個人投資家としては、決算数字そのものだけでなく経営陣のコメントや市場環境の変化に注意を払い、目先の株価変動に惑わされず長期的な視点でアップルの戦略と成長余地を評価することが肝要でしょう。

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米国債務上限問題とは、市場はデフォルトリスク警戒

米国債務上限問題とは、市場はデフォルトリスク警戒

​2025年、米国の債務上限問題は、米金融市場の安定性に深刻な影響を及ぼしています。本記事では、「米国債務上限」とは何かを解説し、FRBの金融政策対応やトランプ政権の政策の影響も触れつつ、金融市場が直面する構造的緊張について説明します。債務上限が2025年1月から再適用「債務上限」とは、政府が国債発行などで借り入れできる金額の法的な上限を指します。これは政府支出の予算編成とは異なる枠組みで定められており、主要先進国では米国独自の制度です。​上限に達すると、議会の承認がない限り新たな借入ができなくなり、国債の元利払いが滞る「デフォルト(債務不履行)」のリスクが生じます。2023年に成立した「財政責任法」により、債務上限は一時的に停止されていましたが、2025年1月2日に約36.1兆ドルで再び適用されました。これにより、財務省は債務上限の突破を避けるために退職年金や保険基金などへの拠出を一時停止する「特別措置」で資金繰りを行っていますが、議会予算局(CBO)の推計によると、財政資金が8月に尽きる可能性が高いとしています。また、ベッセント米財務長官は、連邦政府が早ければ5月下旬から6月にかけて資金不足により一部の支払い義務を履行できなくなる恐れがあると指摘しています。米国債市場に広がる流動性リスク財政の不確実性から、安全性を重視するマネー・マーケット・ファンド(MMF)や機関投資家のリスク回避姿勢が強まる中、短期国債市場では資金枯渇見込み日前後に償還を迎える財務省短期証券(T-Bills)の流動性が低下し、利回りが上昇しています。こうした市場の機能不全を緩和すべく、連邦準備制度理事会(FRB)は2025年春に入り、量的引き締め(QT)の減速に踏み切る方針を打ち出しました。QTは、FRBが保有する国債や住宅ローン担保証券(MBS)を償還に任せる形で市場から資金を吸収するプロセスであり、4月のFOMC議事要旨では、「市場の緊張緩和と準備金の安定的な供給の必要性」を理由にQT減速を支持する声が挙がっており、6月にも月間縮小額の減額が正式に決定される可能性があります。債務上限の引き上げ時期は不透明一方、トランプ大統領が推進する減税案とともに債務上限を5兆ドル引き上げる条項が盛り込まれた「予算決議案」が米下院で可決されましたが、上院には大幅な歳出削減に反対する議員が複数いるため、最終段階で上院との対立が生じる可能性があり、債務上限の引き上げ時期は依然として不透明です。ジョンソン下院議長は、5月末までに税制法案を成立させる目標を掲げていますが、上院の共和党議員は8月までに手続きを完了できると述べています。ただし、非営利団体「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」の推定によれば、2025年の予算決議案は今後10年間の財政赤字を5.8兆ドル拡大させる恐れがあり、S&Pグローバル・レーティングは4月14日のレポートで、米国の財政状況を悪化させるようないくつかの事態が発生した場合、現在AA+である米国債の信用格付けをさらに1段階引き下げる可能性を示唆しています。つづく金融市場の構造的緊張債務上限問題、FRBの金融政策、トランプ政権の政策は、市場構造において密接に連関しています。とりわけ、関税政策の不透明感から、金融政策と財政政策の方向性が逆行するリスクは大きく、景気不安、財政不安、信用格付け懸念が同時に波及しています。今後数カ月間、議会による債務上限の見直しと、FRBによるQT減速の実行タイミングが市場の注目を集める展開となります。また、7月初旬の相互関税一時停止措置の期限が近づくにつれ、交渉の構図は一段と複雑化していくことが予想されます。今後の注目イベント5月6-7日:FOMC(QT減速の方針明確化の可能性)5月末:税制法案の成立目標6月17-18日:FOMC6月27日:特別措置延長期限7月初旬:相互関税一時停止期限

【米国株】トランプ関税で米景気後退入りしても成長が見込まれる銘柄は?

【米国株】トランプ関税で米景気後退入りしても成長が見込まれる銘柄は?

2025年、トランプ政権の貿易政策を巡る不透明さは一段と増し、市場は不安定な動きを見せています。投資銀行らは米景気後退が今後12カ月以内に起きる確率をゴールドマン・サックスが45%、JPモルガンが60%と予測しており、景気後退に陥る可能性を警告しています。本記事では、景気後退入りが現実となっても成長が期待される米国株7銘柄をご紹介します。【サブスクリプション銘柄】NFLX・SPOT・UBERサブスクリプションサービスは、サービス利用料がデジタル取引で完結するため、関税の影響を受けません。なかでもNetflixとSpotifyは、合計で5億人以上の月額有料会員を抱えており、テクノロジーとメディアセクターの中で最も不況に強い企業の一つとみられています。両社、広告事業を徐々に拡大しているものの、依然として全体の売上に占める割合はまだ小さく、景気変動の影響を大きく受けにくい構造となっています。Netflix(NFLX)多くのアナリストは、景気後退懸念が渦巻く中、ネットフリックスを安全な投資先と見ています。同社の株価は年初来で10%弱上昇しており、テクノロジー銘柄の中でも際立ったパフォーマンスを見せています。ローゼンブラットのアナリストは「景気後退が起きても、ネットフリックスは安価な在宅エンタメとして加入者離れが起きにくい」と指摘しています。また4月17日に発表された第1四半期決算は市場予想を上回り、今年の売上高についても強気な見通しを示しました。Spotify(SPOT)オーディオストリーミングサービス「Spotify」の株価も年初来で25%以上上昇しており、成長の加速が注目を集めています。アナリストらは、オーディオブック、動画、ポッドキャストといった複数ジャンルの最適化により、Spotifyが2025年顧客エンゲージメントと収益性をさらに高めると期待しています。Uber Technologies(UBER)JPモルガンは、サブスクリプション企業のサブグループにおいて、ストリーミングサービスのほか配車サービスや飲食サービス、クラウドサービスが厳しいマクロ環境に対して比較的耐性が高いと見ています。配車サービスとフードデリバリーの大手であるウーバー・テクノロジーズの株価は年初来で20%弱上昇しており、一部のアナリストらは同社の事業のほぼ半分が海外市場であることから、今後3年間世界経済動向にある程度左右されることなく、健全な売上高成長を持続できると見込んでいます。【サイバーセキュリティ銘柄】PANWサイバーセキュリティは企業にとって不可欠な投資項目であり、景気後退期でも予算が削られにくい分野とされています。また、技術サービスであるサイバーセキュリティも関税の対象外となっています。Palo Alto Networks(PANW)サイバーセキュリティ銘柄での注目は、パロアルト・ネットワークスです。同社はトップ5に入るサイバーセキュリティ企業でありながら、株価は公正価値から約20%割安であると評価されています。株価は年初来で7%下落していますが、同社のプラットフォーム戦略が成功すれば、年150億ドル規模の収益機会が生まれる可能性があり、将来的な成長が見込まれています。【ディフェンシブ銘柄】WMT・HCA・T歴史的に、生活必需品、ヘルスケア、公益事業などのディフェンシブ銘柄は、景気変動の影響を受けにくく業績が安定していることから、景気後退時に相対的に強いパフォーマンスを見せる傾向があります。経済状況に関わらず、消費者は食事をしなければならず、医療費や公共料金を支払わなければなりません。Walmart(WMT)世界最大の小売企業でありディスカウント業態も展開するウォルマートは、「毎日低価格」という姿勢から節約志向の消費者を惹きつけ、不況から恩恵を受ける傾向があります。また同社は、過去1年間で設備投資をほぼ倍増し、店舗の改装のほか物流と配送ネットワークの強化し、全米各地でウォルマートのプレゼンス拡大を牽引しました。HCA Healthcare(HCA)HCAヘルスケアは米国最大級の病院チェーンであり、医療需要は景気に左右されにくく、同社は過去の景気後退やパンデミック、インフレ環境でも過去5年間堅調な業績を維持してきました。競争の激しい業界でありながら、市場シェアも2012年の24%から10年間で27%に拡大しており、2030年には全米シェア29%を目指しています。AT&T(T)経済状況に関係なく不可欠なサービスである、無線通信やブロードバンドなどを提供するAT&Tは、株価が年初来で19%超、過去1年で66%近い上昇を記録しています。光ファイバーの純増は7年連続で100 万件を達成し、堅調な実績を積み重ねています。また、安定したキャッシュフローに裏付けられた高配当銘柄としても注目されており、2025年の予想配当利回りは4.1%となっています。

中国の報復関税で貿易摩擦に。世界で危機感が広がる中、相場下落の歴史を振り返る

中国の報復関税で貿易摩擦に。世界で危機感が広がる中、相場下落の歴史を振り返る

トランプ大統領が4月2日に公表した関税政策の衝撃から2日、4月4日も世界の株式市場は大きく下落しました。米国だけの問題ではなく、世界全体の危機とも言える状況となり、米国ではFRBによる利下げが急速に織り込まれつつあります。一方、こうした下落局面は過去を振り返ると何度も起きていることなので、長期投資であれば冷静に「市場に居続けること」の大事さを認識することも重要です。長期投資の基本については以下記事も参考にしてみてください。以下、詳細に解説します。「解放の日」から2日後、4月4日の動き米国株式市場はコロナショック以来の下落4月4日のニューヨーク株式市場は、トランプ米大統領が追加関税を発表したことに端を発した米中貿易戦争への懸念から、前日に続いて急落しました 。ダウ工業株30種平均は前日比2,231ドル安(-5.5%)の38,314.86ドルと大幅下落し、昨年12月の史上最高値から10%以上下げて調整局面入りしたことが確認されています 。ハイテク株中心のナスダック総合指数も5.8%安で取引を終え、昨年12月の最高値から22.7%下落して弱気相場(ベアマーケット)入りが明確となりました 。S&P500種指数もこの2日間で10.5%下落し、主要3指数の2日間下落率はいずれも2020年の新型コロナ・ショック以来の大きさとなっています 。マーケット全体の時価総額で見ると、1月中旬以降の下落で約9.6兆ドルもの価値が失われ、そのうち約5兆ドルはわずか直近2日間で蒸発した計算です 。これは史上最大規模の2日間の時価総額減少であり、市場がいかに衝撃を受けたかを物語っています。投資家の不安心理も急激に高まりました。いわゆる「恐怖指数」として知られるVIX指数(ボラティリティ指数)は8カ月ぶりの高水準に急上昇し、リスク回避ムードが一気に広がりました 。市場では「貿易戦争がどこまで激化するのか不透明だ」との不安が支配的で、「トランプ政権が本気で関税措置をエスカレートさせるなら、市場は明確にノーを突き付けている」との声も聞かれました 。貿易摩擦の懸念は世界に広がる業種別の動きを見ると、エネルギー株の下げが特に顕著でした。中国の報復関税発表を受けて景気後退懸念が強まったことで原油価格が急落し、WTI原油先物は一時1バレル=62ドル前後と約4年ぶりの安値をつけました 。その結果、エネルギーセクター指数はS&P主要11セクター中で最大の下げ幅となりました 。また、ハイテク株や工業株など貿易摩擦の影響を受けやすい銘柄が軒並み売られています。例えば中国市場への依存度が高いアップルはこの日7.3%の急落となり 、米市場に上場する中国企業(アリババやバイドゥなど)の株価も大きく値下がりしました 。半導体や自動車などの輸出関連株、ボーイングなど大型製造業も大幅安となり、金融株も金利低下を嫌気して売られるなど、ほぼ全面安の展開でした。この急落は米国市場に留まらず世界に波及しました。4月4日には東京市場や欧州市場も連日の大幅安となり、世界同時株安の様相を呈しています 。米国が2日に発表した追加関税措置への対抗として、4日には中国政府が「10日から米国からの全輸入品に対し34%の追加関税を課す」と表明し、米中双方が強硬な姿勢を示したことが不安に拍車をかけました 。さらに英国・オーストラリア・イタリア各国の首脳が緊急協議に動くなど、各国政府も対応に追われているとの報道が伝わると、市場では「貿易戦争が世界経済に波及する」との見方が一段と強まり、株価の下げ幅は一層拡大しました 。こうした動きにより、投資家心理は極度に冷え込み、リスクオフ(危険資産から安全資産へ資金を避難させる動き)が鮮明となったのが4月4日の市場と言えます。米経済・世界経済への影響と市場の今後の見通しFRBへの利下げ圧力が強まるこうした中、金融政策を司る米連邦準備制度理事会(FRB)の動向にも注目が集まっています。パウエルFRB議長は4日に行った講演で、今回の新たな関税措置について「予想以上に大きなもの」であり、インフレや経済成長への影響も「同様に予想以上になる公算が大きい」と指摘しました 。もっとも現時点では「金融政策スタンスの調整(=利下げ)を検討する前に、より明確な状況を見極める必要がある」と述べ、性急な対応を慎重に避ける姿勢も示しています 。しかし市場の方はすでに「FRBが利下げで景気を下支えせざるを得ない」という見方を強めています。実際、短期金融市場では利下げ織り込みが急速に進みました。4日の時点で「年内4回の0.25ポイント利下げ」が完全に織り込まれ、さらに年内5回もの利下げが行われる確率も50%に達したとされています 。これはトランプ大統領が2日に関税を発表する前は年内3回の利下げが織り込まれていたのに比べ、大幅な変化です。トランプ大統領自身も4日、パウエル議長に対し露骨な利下げ圧力をかけました。大統領はSNS上に「パウエル議長が金利を引き下げるには今が絶好のタイミングだ。議長はいつも遅れているが、今ならそのイメージを覆し素早く行動できる」などと投稿し、利下げの決断を迫りました 。伝統的に、大統領がFRBの金融政策に直接言及することは避けられてきましたが、トランプ氏は以前から再三にわたり低金利政策を求めており、今回の市場急落を受けてその圧力を一段と強めた形です。今後のリスクシナリオと楽観シナリオでは、市場や経済の先行きはどう見通せるでしょうか。まず、米中対立がエスカレートした場合の最悪シナリオとしては、関税の応酬が長期化し企業マインドが萎縮、本格的な景気後退に陥る可能性があります。その場合、企業収益の悪化や雇用の縮小を通じて、株式市場も更なる下落基調が続きかねません。一部の専門家は「ホワイトハウス(米政権)は遅くとも2カ月以内に今回の“相互関税”を撤回するような妥協策を見出さなければ、2025年の市場は2022年のような低迷に陥るだろう」と警鐘を鳴らしています 。一方で、楽観シナリオとして考えられるのは、米中がある程度早期に歩み寄り関税措置を緩和するか、あるいはFRBの機動的な利下げなど政策支援によって市場心理が改善する展開です。もし貿易摩擦が沈静化すれば、企業業績や経済見通しの不透明感が薄れ、株式市場が落ち着きを取り戻す可能性があります。また仮に景気が減速しても、FRBによる予防的な利下げや各国政府の財政出動が速やかに行われれば、リセッションを浅く短いものに食い止められるとの見方もあります。現在のところ米国ではインフレ率が低下傾向にあるため、金融当局としても比較的柔軟に緩和策を講じやすい環境です。実際、10年物米国債利回りは今回の動揺で一時4.0%を割り込み、昨年のトランプ氏再選前の水準まで低下しました 。これは市場が将来的な利下げと低インフレを織り込んだ動きで、長期金利の低下自体が企業や住宅市場には下支え材料となり得ます。個人投資家への今後の影響過去の弱気相場との比較も参考になります。今回ナスダック総合やラッセル2000指数(小型株指数)が20%以上下落して弱気相場入りしましたが、歴史を振り返ると弱気相場は定期的に発生しています 。第二次大戦後だけでも米国株は17回前後の弱気相場を経験しており、平均すると下落率は約30%前後、期間は1年弱に及ぶと言われます 。例えば直近の大きな弱気相場としては、2008年の金融危機時にはS&P500がピーク比で約57%下落し1年以上低迷しました。また2020年のコロナ禍では最深部で約34%下げましたが、その後わずか数カ月で急回復しています。歴史的に見ると、暴落の原因は様々でも最終的には株価が持ち直し、過去の高値を上回って成長を続けてきたケースがほとんどです 。したがって現在の下落局面も永遠に続くわけではなく、いずれ転機を迎える可能性が高いと言えるでしょう。ただし、底入れまでの道のり(時間や下落幅)はケースバイケースであり、今後数週間から数カ月は景気指標や米中交渉の行方、政策対応などに一喜一憂する不安定な相場が続くことを念頭に置いておく必要があります。個人投資家がいま取るべき行動市場に居続けることが長期投資では大事以上のような荒れた市場環境に直面していると、短期的な値動きに心を揺さぶられ、不安になる個人投資家の方も多いでしょう。しかし、こういう時こそ長期目線を持つことが何より重要です。歴史が示す通り、株式市場は10%程度の調整や20%を超える弱気相場を織り交ぜながらも長期的には成長してきました 。実際、S&P500指数は過去35年間に幾度も調整や暴落を経験しながらも、その都度回復し、配当再投資込みで年平均10.4%という高いリターンを残しています 。ドットコム・バブル崩壊(2000年代初頭)やリーマン・ショック(2008年)、コロナ・ショック(2020年)など、大きな危機が起こるたびに理由は違えど株価は急落しました。しかしその後いずれも乗り越え、結果的に過去の高値を更新してきました 。今回の関税ショックも「理由が違うだけでパターンは同じ」と考えれば、長期投資家にとっては一時的な試練に過ぎない可能性があります。重要なのは、この下落局面を長期的な資産形成の妨げとしないことです。まず避けるべきは、感情に駆られた短絡的な売買です。急激な下げを目の当たりにすると、不安からつい持ち株をすべて売りたくなるかもしれません。しかし、感情的な売却は多くの場合、後になって後悔する結果を招きます。下落局面で慌てて売ってしまうと、その時点で大きな損失が確定してしまいます。そして往々にして、一般の投資家は売った後に再び買い戻すタイミングを逃しがちです。市場が落ち着きを取り戻し上昇に転じた頃には買い戻せず、結果として「安値で売って高値で買い戻す」最悪の展開になりかねません。特に、急落直後の相場では一時的なテクニカル反発(自律反発)も起こりやすく、大きく下げた後の数日で急騰する局面も歴史的に頻繁にあります。もし現金化してその後の反発を逃すと、長期のトータルリターンが大きく削られる恐れがあります。長期投資では「市場に居続けること(Time in the market)」が「市場のタイミングを計ること(Timing the market)」よりも重要だと言われますが、まさに今はその格言を胸に刻むべき時でしょう。守りと攻めのバランスをでは具体的に個人投資家はどう行動すべきか、守りと攻めのバランスという観点で考えてみます。守り(リスク管理)の面まず、自分の資産配分(ポートフォリオ)を見直してみましょう。今回の急落で感じた不安の大きさは、リスク許容度に見合った投資をしていたかを測る試金石でもあります。仮に「夜も眠れないほど不安」だったのであれば、株式の比率が高すぎた可能性があります。無理のない範囲で債券やゴールドなど安定資産を組み入れ、分散投資を徹底することが重要です。十分な緊急予備資金(生活費の数ヶ月分など)を現金で確保しておけば、株価が低迷している間に生活費のために株をやむなく売却する必要も減り、余裕を持って長期戦に臨めます。また、今回株価が大きく下がったことで、自身の目標とする資産配分から乖離が生じたかもしれません。その場合は、落ち着いた段階でリバランス(資産比率の調整)を検討しましょう。例えば、本来株式50:債券50を目指していたのに株価下落で株式が40:債券60になっているなら、安くなった株式を買い増すことで目標比率に戻す、といった対応です。これにより、結果的に安値で優良資産を仕込むことにもなり、将来のリターン向上が期待できます。攻め(長期成長を捉える)の面長期的な資産成長のためには、株式などリスク資産への投資を続ける姿勢も維持しましょう。ただし「一度に大金を投入する」のではなく、積立投資やドルコスト平均法などで時間分散しながら段階的に投資するのがおすすめです。これならば仮にこの先さらなる下落局面があっても平均購入単価を引き下げることができますし、心理的な負担も軽減されます。加えて、「何に投資するか」も大切です。個別株の場合は財務健全性が高く競争力のある優良企業に焦点を当て、中長期の成長ストーリーが崩れていないかを確認しましょう。不況期でも安定した収益を出せるディフェンシブ株や、高配当で下支え要因のある株にも注目です。一方、過度なレバレッジを伴う投機的なポジションや、短期の値動きだけを狙ったギャンブル的な取引はこの局面では極力避けるのが賢明です。相場が荒れている時ほど冷静さを失わず、「この投資は5年後10年後を見据えて自信を持てるか?」と自問しながら行動すると良いでしょう。大事なのは一貫性と粘り強さ最後に、長期投資家にとって何より重要なのは一貫性と粘り強さです。市場環境は常に変動しますが、自分の将来設計(例えば老後資金づくりや住宅資金など)のタイムフレームに合わせて、長期的な計画を立て、それをブレずに実行することが大切です。株式市場は歴史的に見れば上昇と下落を繰り返しつつ右肩上がりの成長を遂げてきました 。今回の急落も長い投資人生の中ではひとつの通過点に過ぎません。むしろ、長期投資家にとっては将来のリターンを高めるための買い増しの好機と捉えることもできます。ただし無理は禁物ですので、自身の資金計画に照らして余裕資金で臨むようにしてください。不安定な相場状況ではありますが、こうした時こそ基本に立ち返り、「長期・分散・積立」という王道を守ることが、個人投資家にとって最善策となります。過去の暴落局面でも、それを乗り越えて利益を得たのは、短期的なノイズに振り回されずに持ち続けた投資家でした 。ぜひ目先の値動きに一喜一憂しすぎず、長期的な資産形成の視点を忘れないでください。市場の回復には多少時間がかかるかもしれませんが、歴史が示す通り悲観一色の中にこそ次のチャンスの種があるものです。冷静に守りを固めつつ攻めるべきところは攻め、将来のリターンに備えていきましょう。今は嵐のような市場環境ですが、いずれ晴れ間が訪れたときにしっかりと恩恵を受けられるよう、長期的な視点で航路を守り抜くことが肝心です。

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米中貿易摩擦の緩和と好調なテクノロジー株決算で投資家心理は好転して株価上昇|米国市場サマリー

米中貿易摩擦の緩和と好調なテクノロジー株決算で投資家心理は好転して株価上昇|米国市場サマリー

先週は、トランプ大統領によるFRBパウエル議長批判や利下げ要求で急落して始まりましたが、その後は米中貿易摩擦の緩和期待を背景に急回復しました。財務長官が貿易緩和を示唆したことで投資家心理が好転し、ハイテク株を中心に買い戻されました。週後半はAlphabetなど好決算企業が相場を支援し、NASDAQとS&P500は4日続伸して週を終えました。為替は、週初にトランプ大統領のFRB議長解任検討報道や米中貿易摩擦の懸念から一時139円台まで下落しました。​しかし、週後半にかけてトランプ大統領がパウエル議長の解任を否定し、中国が一部米国製品への関税撤廃を検討しているとの報道が伝わると、リスク回避姿勢が後退し、ドルは反発。​25日には一時143.80円まで上昇し、週末には143.68円で取引を終えました。米国株式市場:貿易摩擦の緊張緩和で株価上昇。テック企業の好決算も後押しに4月21日(月) トランプ大統領がFRBのパウエル議長に対し強い批判を展開し、即時利下げを要求したことで、FRBの独立性が脅かされるとの懸念が強まり、市場は大幅下落しました。ダウ平均は一時1300ドル以上下げ、最終的に971ドルの下落。NASDAQとS&P500もそれぞれ2%超の下落となり、大型ハイテク株群の「マグニフィセント・セブン」も売り込まれました。Teslaが新モデルの生産遅延報道で5.8%下落、NvidiaもファーウェイのGPU量産報道で4.5%安と振るわず、全面安の展開でした。4月22日(火) 前日の悲観から一転し、米財務長官が米中貿易摩擦の緩和を示唆する発言をしたことで、投資家心理が大きく改善し、市場は急反発しました。ダウ平均は1016ドル高、NASDAQとS&P500も2.5%超の上昇を記録。特に金融株や一般消費財セクターが強く買われました。決算発表では3Mが第1四半期の利益好調を背景に8.1%高。一方、関税の影響で業績悪化を示したNorthrop Grummanは12.7%、RTXも9.8%下落しました。4月23日(水) トランプ大統領が前日に引き続きパウエル議長を批判しつつも、解任の可能性を明確に否定したこと、さらに米中貿易摩擦の緩和に向けた交渉の進展期待が高まり、市場は続伸しました。ダウ平均は419ドル高で引けました。Teslaがイーロン・マスクCEOが経営に再び専念すると発表したことで5.3%上昇、Boeingも業績が市場予想より改善し6.1%の上昇を見せました。一方、General Dynamicsは受注減少を嫌気し3.3%安となりました。4月24日(木) 企業の決算好調と米中貿易摩擦のさらなる緩和期待により、市場の楽観ムードが継続しました。ダウ平均は486ドル上昇、NASDAQは2.7%高となりました。特に好決算を発表したServiceNowが15.5%の急伸を見せ、ハイテク株の上昇を主導しました。一方、消費関連のProcter & GambleとPepsiCoは景気減速懸念を背景に見通しを下方修正し、それぞれ3.7%と4.9%下落しました。4月25日(金) 米中関税措置の一部品目除外など、具体的な緩和策が出たことで、市場は4日続伸しました。NASDAQとS&P500は堅調に推移。Alphabet(Googleの親会社)は第1四半期の好決算が評価され1.7%高となりました。一方、Intelは業績見通しが市場予想を下回ったことで6.7%安と逆行安の展開。週間ベースでは主要指数が揃って上昇し、小型株のラッセル2000も昨年11月以来の上昇率を記録するなど、市場の回復ムードが強まりました。為替市場:一時リスクオフで円高が進むも、緊張緩和と日米財務大臣会合を受けて円安に為替は、米国の金融政策や米中貿易摩擦に関する報道に左右され、乱高下する展開となりました。週初、トランプ大統領がFRBのパウエル議長の解任を検討しているとの報道や、米中貿易交渉の進展が見られないことから、ドルは対円で一時140.72円まで下落し、昨年9月以来の安値を記録しました​。しかし、週後半にかけては、中国が米国からの一部輸入品に対する125%の関税を撤廃することを検討しているとの報道が伝わり、米中貿易摩擦の緩和期待が高まりました​。また、日米財務相会談では、為替水準や目標に関する言及がなかったことが明らかになり、円安是正への懸念が後退しました​。これらの要因から、ドルは対円で買い戻され、25日には一時143.91円まで上昇し、週末には143.68円で取引を終えました​。週を通じて、ドル円相場は約3円の値幅で推移し、米中貿易摩擦や米国の金融政策に対する市場の関心の高さが示されました。今週のマーケット:決算ラッシュが続く。M7決算もNVIDIA以外は出揃う今週(2025/4/28-5/2)は、決算ラッシュが続き、M7決算もNVIDIA以外の6社が出揃うことになります。ハイテク株への追い風は続くが注目です。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

トランプ関税で市場は一進一退。FRBパウエル議長の弱気発言で株式市場は一時的に冷え込む|米国市場サマリー

トランプ関税で市場は一進一退。FRBパウエル議長の弱気発言で株式市場は一時的に冷え込む|米国市場サマリー

先週は、トランプ政権による関税政策の混乱と経済減速懸念から大きく揺れ動きました。​週初はスマートフォンやコンピューターの関税免除を受けてAppleなどが上昇し、主要指数も反発しました。​しかし、半導体への新たな関税が発表されると、NVIDIAは5.5億ドルの費用計上を明らかにし、同社株は6.9%下落、AMDも7.3%下落しました。​また、FRBのパウエル議長が経済成長の減速を示唆し、インフレリスクへの警戒を強調したことで、利下げ期待が後退し、投資家心理が悪化しました。​トランプ大統領はパウエル議長を公然と批判し、利下げを求める発言を繰り返しました。為替は、米国の関税政策の不透明感や米中貿易摩擦への懸念から、方向感に欠ける展開となりました。​ドルは対円で下落し、週末には一時142円台前半まで円高が進行しました。​市場はトランプ政権の関税方針やFRBの金融政策に注目し、慎重な姿勢を維持しています。米国株式市場:トランプ関税の適用範囲で引き続き市場は動揺。パウエルFRB議長から弱気見通しも出る4月14日(月) 米国株式市場は主要3指数が上昇して取引を終えました。スマートフォンやパソコンなどが相互関税の対象から除外されたことが投資家心理を支え、Appleが2.2%上昇しました。Dell Technologiesは4%、HPは2.5%高となり、ハイテク株が市場を押し上げました。一方、NVIDIAは0.2%安と小幅に下落し、Philadelphia Semiconductor Indexは0.3%の上昇にとどまりました。関税政策への不透明感は依然として根強く、投資家の慎重姿勢は続いています。Goldman Sachsは第1四半期に15%の増益となり株価は1.9%上昇しました。恐怖指数(VIX)は30.89と後退し、4月3日以来の低水準となりました。4月15日(火) この日の米国市場は小幅反落しました。Bank of AmericaとCitigroupが好決算を発表し株価を押し上げましたが、関税に対する不透明感が市場全体の重しとなりました。Ford Motorは2.7%安、General Motorsは1.3%安と自動車株が売られ、S&P500の一般消費財セクターは0.8%下落しました。BofAは3.6%上昇し、Merckは1%下落しました。Boeingは中国からの追加発注を拒否されたとの報道を受けて2.4%安となり、ダウ平均を押し下げました。ヘルスケア株や日用品株も軟調でしたが、全体としては往来相場(相場がある一定の幅で上がったり下がったりを繰り返すこと)となり、取引量は平常水準でした。4月16日(水) この日は米国株式市場が大幅に下落し、特にダウは699ドル安と大きく下げました。NVIDIAが中国向け半導体に関する新たな規制の影響で、5.5億ドルの費用負担を発表し、同社株は6.9%安となりました。AMDも7.3%下落し、Philadelphia Semiconductor Indexは4.1%下げました。パウエルFRB議長はこの日、米経済の成長は減速しつつあると述べ、関税がGDP見通しに影響を与えていると指摘したことも市場のセンチメントを冷やしました。市場ではインフレ懸念が再燃し、VIX指数は32.64まで上昇しました。4月17日(木) この日の米国株式市場はまちまちの展開となり、S&P500は上昇したもののNASDAQは小幅に反落しました。トランプ大統領が日本との貿易協議において「大きな進展があった」と発言し、米中関係でも「良いディールになる」と述べたことが一時的な楽観ムードを誘いました。個別では、Eli Lillyが糖尿病治療薬の臨床試験結果を好感されて14%急騰し、Appleも1.4%上昇しました。一方で、UnitedHealthが利益見通しを下方修正し22%急落。CVS HealthやHumanaもそれぞれ下落し、医療保険セクターは軟調でした。全体ではエネルギーと主要消費財セクターが上昇を主導しました。4月18日(金) 米国休日(Good Friday)により市場休場為替市場:米国の関税政策と日米貿易交渉で方向感を欠きつつ、週間では円高が進行為替は、米国の関税政策に対する市場の不透明感と日米貿易交渉の動向を背景に、方向感に欠ける展開となりました。​週初の14日、ドル円は143.95円で始まり、トランプ政権がスマートフォンなどの電子機器を関税対象から一時除外すると発表したものの、その後別の関税を課す方針を示したことで、先行き不透明感が強まり、142.23円まで下落しました。​15日には一時144.04円まで反発する場面もありましたが、上値は重く、143円台前半での取引が続きました。​16日には米中貿易戦争激化への警戒感が続く中でドル売りが優勢となり、141円台後半へと下落しましたが、17日に行われた関税をめぐる日米交渉で為替に関する議論はなかったと伝わったことで買い戻しが進み、143.08円前後へと上値を伸ばしました。​しかし、早期の利下げに慎重な姿勢を取る米FRBのパウエル議長についてトランプ大統領が「対応が遅すぎる」などと発言したことが重しとなり、18日には142.17円で週の取引を終えました。今週のマーケット:決算ラッシュ。テクノロジー銘柄は業績で市場を安心させられるか今週(2025/4/21-4/25)は、株価が大きく揺れて注目のテスラ決算やFANG+にも入ったServiceNow決算があるので注目です。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

「パウエル議長を解任する」トランプ大統領発言の実現性と市場・経済への影響とは?

「パウエル議長を解任する」トランプ大統領発言の実現性と市場・経済への影響とは?

2025年4月17日、トランプ大統領がパウエルFRB議長を「一刻も早く解任すべき」と発言し、一時的に市場が動揺しています。この発言について、米国の制度上「FRB議長の解任」は可能なのか、どのようなタイムラインが想定されるか、そして実際に解任が行われた場合の市場や経済への影響を解説します。大統領は現職FRB議長を解任できるのか – 法的枠組みと前例米連邦準備制度理事会(FRB)議長は大統領が指名し上院が承認するポストですが、その任期中に大統領が一存で解任できるかは 法的に厳しい と考えられます。法律上、FRB理事(議長を含む)は「正当な理由(for cause)」がなければ任期途中で解任できないと定められています。この「正当な理由」とは職務上の不正行為や職務怠慢など重大な落ち度を指す法律用語であり、単に金融政策の方針が政権と合わないといった理由は通常該当しません。実際、パウエル議長自身も「法律上(正当な理由なしに)FRB議長を解任することは認められていない」と明言しています。歴史的に見ても前例はありません。 1913年のFRB創設以来、在任中の議長が大統領によって解任されたケースは一度もなく、FRBの独立性は厳格に尊重されてきました。例えば高インフレと闘ったボルカー議長に対し、1980年代初頭に一部議員が弾劾を口にしたことはありましたが、実際に罷免されたことはなく、議長人事は任期満了や自主的な退任・再任拒否によってのみ行われてきました。1970年代末にはカーター大統領が当時のミラー議長を財務長官職に横滑りさせる形で交代させた例がありますが、これは本人同意の上での人事であり「解任」とは異なります。こうした経緯から、法制度上も慣例上も、現職FRB議長の解任は極めて困難です。トランプ氏自身、2019年の在任時にもパウエル氏の降格・解任を検討しましたが、法的な制約や市場への悪影響を懸念し結局踏みとどまった経緯があります。法律の文言上は「正当な理由による解任」が可能とはいえ、その解釈には争いの余地があり、大統領の恣意的な介入を許せばFRBの独立性という制度の根幹を揺るがすことになります。実際、パウエル議長は「任期満了の2026年まで辞任するつもりはない」と繰り返し表明しており、トランプ氏が解任に動いても法廷闘争になる可能性が高いと見られています。解任を試みる場合の手続き・タイムライン仮に大統領が現職のFRB議長解任に踏み切るシナリオでは、前例がないため不透明な部分もありますが、以下のような手続きとタイムラインが想定されます。大統領からの圧力・辞任要求: トランプ氏はすでに「求めれば彼(パウエル議長)は辞任するだろう」と述べており、まずは口頭または非公式に議長本人へ辞任を促す可能性があります。今回トランプ氏は記者団に対し「私が彼を辞めさせたいと思えば、即座にそうできる」とまで発言しており、辞任要求をちらつかせつつ自発的退任を迫るシナリオが考えられます。もっともパウエル氏はこれを拒否する構えであり、要求に応じないことが予想されています。正式な解任通知と「正当な理由」の主張: パウエル氏が辞任しない場合、大統領は正式に解任手続きに入るでしょう。この際、大統領側は法律上の要件を満たすために何らかの「正当な理由」を示す必要があります。例えば「金融政策運営の失敗により経済に損害を与えた」などと主張する可能性がありますが、金融政策の判断ミスは正当な理由と認められるか極めて疑わしく、法律解釈上グレーゾーンです。解任の意向が正式化すれば、ホワイトハウスから書簡や声明という形でパウエル氏に通知され、同時に後任人事の準備が進むでしょう。法廷闘争と政治的駆け引き: パウエル氏側が解任を不服として法的措置に訴える可能性があります。実際に解任通知が出れば、直ちに差し止めを求めて裁判所に提訴し、「正当な理由」が無効であることを争う展開が見込まれます。FRB議長の地位は国家中枢の独立機関トップであり、このような訴訟は迅速に連邦裁判所~最高裁まで争われる可能性があります​。一方で政権側も強硬策として即座に後任の指名・承認プロセスを進め、既成事実化を図るでしょう。なお現職議長の任期は2026年5月までと限られているため、仮に法廷闘争が長引けば「裁判が決着する頃には任期満了」という事態も考えられ、解任の実効性が失われる可能性もあります。暫定措置と後任指名: 解任通告がなされパウエル氏が職務を追われた場合、FRB内では副議長が議長代行を務めると想定されます(法律上、議長不在時は副議長が職務を代行する規定があります)。そのうえで大統領は速やかに新議長を指名し、上院に承認を要請するでしょう。報道によれば、トランプ氏は解任後の後任候補としてケビン・ウォーシュ元FRB理事の名を挙げて議論していたとされています。上院承認には通常数週間~数カ月を要しますが、仮に上院多数派が大統領与党であれば比較的早期の承認もあり得ます。他方、議長解任に議会の反発が強い場合、承認審議が難航し 長期間「空席」や暫定議長体制 が続くリスクもあります。政策への即時影響: 仮にパウエル氏解任が既成事実化すれば、新議長(または代行)は大統領の意向を汲んで速やかな金融緩和(利下げ)に動く可能性が高いと見られます。トランプ氏は「FRBには米国民のため金利を引き下げる義務がある」と公言しており、パウエル氏が解任されれば早期の利下げが現実味を帯びます。その場合、市場では短期的に株高・金利低下の反応が出るかもしれません。しかしこの政策転換は次項で述べるように中長期的な市場・経済リスクを孕むため、歓迎一色とは限らないでしょう。以上のように、大統領が議長解任に動けば法廷闘争と政治闘争が絡み合い、短期間で決着しない可能性が高いです​。前FRB理事のウォーシュ氏も「解任を試みるべきではなく、任期を全うさせるべきだ」とトランプ氏に進言したと報じられており、現実的には2026年の任期満了を待つ方がスムーズとの見方が強い状況です。トランプ発言への反応 – 政府・議会・FRB・市場・メディアの視点トランプ氏がパウエル議長の解任に言及したことに対し、米国内外で様々な反応が生じています。以下、政府(政権内部)、議会、FRB当局者、金融市場、主要メディアの各方面の動きをまとめます。政権内部(政府)の反応: トランプ政権内でも、パウエル解任には慎重論が出ています。ベッセント米財務長官(トランプ氏が任命)はホワイトハウス高官らに対し「FRB議長の解任は金融市場を不安定化させるリスクがある」と繰り返し警告していると報じられました。実際、ベッセント長官はメディアに「金融政策は宝石箱(のように大事なもの)だ。守らねばならない」と述べており、FRB独立性の維持が重要との立場を明確にしています。これはトランプ大統領と真っ向から見解を異にする発言であり、政権内部ですら解任強行への懸念が強いことを示しています。またウォーシュ元理事との協議でも、ウォーシュ氏は解任に反対し任期満了まで続投させるよう助言したとされ、トランプ氏の周辺からもブレーキがかけられている状況です。議会の反応: 米議会からは超党派でFRBの独立性を守る声が上がっています。上院銀行委員会など金融政策を所管する議員はかねてより「大統領がFRBに介入すべきでない」との立場を表明してきました。民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は今回のトランプ氏の発言を受け、「もし大統領がパウエル議長を解任できるなら、米国市場は暴落する」と警告し、FRBの独立性は世界経済の安定に不可欠だと強調しました。ウォーレン氏はニューヨーク証券取引所での講演で「仮に大統領が魔法の杖を振るように金利を思い通りにできるなら、我が国は他の三流独裁国家と何ら変わらなくなってしまう」とまで述べ、大統領による介入を痛烈に批判しています。共和党側からも、公には発言が少ないものの、FRBの独立を支持する声は根強いとみられます。パウエル議長自身も「FRBの独立性はワシントンや議会において広く理解・支持されている」と述べており、実際に議会多数派が議長解任に反対する場合には後任議長の上院承認を拒否するといった形で対抗する可能性も指摘されています。FRB当局者・パウエル議長本人の反応: パウエル議長本人は冷静ながらも断固たる態度を示しています。前述のとおり「法律上、大統領に解任する権限はない」と述べ、任期を全うする意向を明言しました。また4月16日にシカゴで行った講演では、トランプ政権の通商政策(関税引き上げ)が経済に与える不確実性に言及し、「FRBは政治的な圧力や党派的な思惑と無関係に政策金利を設定していく」と独立性への信念を表明しています。これには聴衆の経営者らから拍手が起こったと伝えられ​、FRB内部のみならず経済界も議長の姿勢を支持していることがうかがえます。また地区連銀総裁の中にも、市場動向について「現時点で利下げの必要は感じない」と述べる者(ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁)がおり​、FRB当局者は総じて政策判断は金融・経済情勢次第であり、政治圧力には左右されないとの立場を崩していません。もっとも、議長解任が現実になればFRB制度への衝撃は大きく、匿名では動揺を示す関係者もいると推測されますが、公の場ではFRB側は冷静さを保ち独立性を訴える対応に徹しています​。金融市場の反応: 市場は今回のトランプ発言を警戒混じりに織り込みつつある状況です。オンライン予測市場では「年内にパウエル議長が職を追われるか」の賭け率が25%前後に急上昇し、1カ月前の2倍近い確率が織り込まれたとの報道があります​。これは市場参加者が一定の現実味を感じ始めたことを示唆します。実際4月17日前後には米国債利回りや株価に神経質な動きが見られ、投資家は「万一解任ならFRBの信頼性低下につながる」というリスクシナリオを意識しています。一部には「パウエル氏が外れるなら、後任の下で早期利下げが実現する」と期待し株式市場にプラスとの見方もありますが、それ以上に「中央銀行の独立性喪失」はインフレ高進や長期金利上昇に直結しかねないため、総合的にはネガティブ要因と受け止められています。著名ストラテジストのクリシュナ・グハ氏(元NY連銀幹部)は「仮にFRB独立性への脅威が現実のものとなれば、市場のストレスは増大し、景気停滞とインフレが同時進行するスタグフレーション的なリスクが高まる」と分析しています。ドル為替相場についても、FRBへの信認低下はドル離れを誘発しかねず下落圧力となる可能性が指摘されています(中央銀行の独立性は基軸通貨ドルへの信頼の柱であり、これが揺らげばドル安・米国からの資本流出を招く懸念がある)。総じて金融市場は、議長解任の脅し自体が市場不安要因となりつつあり、実際に解任が強行されればボラティリティの急騰や価格急変動を引き起こしかねないとの見方が有力です​。メディア・世論の反応: 米主要メディアはトランプ氏の発言を大きく報じ、概ね批判的な論調です。ウォールストリート・ジャーナルは「トランプ氏が数カ月にわたりパウエル解任を私的に検討していた」とスクープしつつ、ウォーシュ氏らの反対論も伝え、同紙の論調は「FRBの独立性を脅かす危険な試み」といったものです。ニューヨーク・タイムズやフィナンシャル・タイムズ(以下「FT」)も、仮に解任に踏み切れば市場と経済への悪影響は計り知れず、アメリカの制度的信用を損なうとする論説を展開しています(FTは「トランプ氏は任期満了前にパウエル氏を解任しないと示唆していたが、発言が揺らいでいる」と報道)。CNNは「トランプ氏が自らの解任権限に言及」と速報し、パウエル氏の「法律が許さない」との反論を伝えました。またBloombergはベッセント財務長官へのインタビューで彼女が独立性擁護を訴えたことを報じています​。さらにガーディアン紙など海外メディアも「トランプ氏が再びFRBに攻撃を加えた」「中央銀行への前代未聞の介入」と伝えており、欧州からも懸念の目が向けられています。世論面では、一般国民にとってFRB議長解任は馴染み薄いテーマながら、「政権の思惑で金利が上下するようになればインフレや景気が不安定化するのでは」との懸念が専門家を中心に語られ始めています。総じてメディアと識者は「解任は法律的にも疑問で、経済・市場へのコストが大きすぎる」との点で概ね一致した見解を示していると言えるでしょう。解任が実現した場合の影響 – 金融市場への波及(株式・債券・為替)仮に最悪のシナリオとしてパウエル議長の解任が強行された場合、金融市場と米国経済(金融政策の信頼性、インフレ、金利など)に重大な影響が及ぶと予想されます。その主なポイントを専門家の見解とともに分析します。まず金融市場ですが、FRB議長解任という異例事態は、短期的な政策変更期待と長期的な信認低下リスクの双方を市場にもたらします。株式市場: 一時的には「利下げ実施→景気刺激」を期待して株価が上昇する可能性があります。実際トランプ氏は「利下げができる人物に替える」と示唆しており、市場の一部には緩和期待があります。しかし、多くの専門家は株高は持続しないとみています。ウォーレン上院議員は「FRB議長解任が現実になれば株式市場は崩落しかねない」と警告しており、FRBへの信頼喪失に伴うリスクオフ(安全資産志向)で株式から資金が逃げる懸念が大きいです。特に金融株や長期投資を必要とするセクターは、金利の先行き不透明化で売り込まれる可能性があります。総じて、目先の利下げメリットより制度不安のデメリットが上回り、株式市場全体には下押し圧力となるとの見方が優勢です​。債券市場(金利): 政策金利こそ新議長の下で引き下げられる可能性がありますが、長期金利はむしろ上昇圧力が強まると予測されます​。理由は、インフレ抑制に対するFRBのコミットメントが疑問視されれば将来のインフレ期待が高まり、債券投資家がリスクプレミアム(金利上乗せ)を要求するからです。エバーコアISIのクリシュナ・グハ氏は「FRB独立性への脅威が現実化すれば市場ストレスが高まり、インフレと金利のテールリスク(極端な悪化シナリオ)が急増する」と述べています。具体的には、長期国債の利回りが上昇(価格下落)し、住宅ローン金利や企業の社債利回りも上昇しかねません。パウエル解任に伴う一時的な利下げは 「短期金利低下・長期金利上昇」という逆効果 を招き、イールドカーブのスティープ化(長短金利差の拡大)や、場合によっては米国債格付けへの不安につながる恐れも指摘されています。要するに、金融引き締めを怠るリスクが金利上昇という形で市場に跳ね返る可能性が高いのです。為替市場(米ドル相場): ドル安圧力が高まる公算です。FRBの独立性はドルの信用の源泉であり、政治介入によってそれが傷つけば国外投資家がドル資産から撤退する誘因となりま。トランプ政権下での低金利政策観測が強まれば金利差縮小でドルの魅力も低下します。実際トルコやアルゼンチンなど、政府が中央銀行総裁を解任した新興国では通貨価値が急落しインフレが悪化する例があり、米国とて無縁ではありません。もっともドルは基軸通貨の地位があるため急落しにくいとの見方もありますが、専門家は「じわじわとドル安・他通貨高が進行し、為替市場のボラティリティ(変動幅)が拡大する」と予想します。IMFのゲオルギエワ専務理事も「中央銀行の信頼性と機動力が政治干渉で損なわれれば、世界経済に悪影響を及ぼし得る」と指摘しており、その意味でドルの国際的地位にも長期的な悪影響が及ぶ懸念があります。解任が実現した場合の影響 – 米国経済全体への波及(信頼性・インフレ・金利動向)FRB議長解任が現実となれば、米国の金融政策運営に対する国内外の信頼が根底から揺らぐ可能性があります。具体的な経済への波及効果を専門家の見解も交えて整理します。金融政策の信頼性低下:もっとも深刻なのは、「FRBは長期的な物価安定より政権の意向を優先するのではないか」という疑念が生じることです。FRBは建前上、議会から与えられた物価安定と雇用最大化の使命を負っていますが、議長解任によって政治圧力に屈すれば、その使命遂行への信頼が損なわれます。ウォーレン議員が「市場や経済を支えているインフラは、政策決定が政治と無関係に行われるという信念だ」と語った通り​、中央銀行への信頼は経済安定の土台です。これが崩れると、企業・消費者・投資家のすべてが将来のインフレや金利に確信を持てなくなり、長期の投資計画や契約が立てづらくなります。その不確実性コストは計り知れず、経済の効率性を低下させる要因となります。インフレ率とインフレ期待への影響: パウエル氏解任→利下げ圧力という流れは、短期的には景気刺激になる一方でインフレ圧力を高めるリスクがあります。現状でもインフレ率はFRB目標を上回って推移している中、政治主導での利下げは需要超過を招きかねません。また重要なのはインフレ期待の昂ぶりです。経済主体が「将来もFRBは政治的理由でインフレを許容するかもしれない」と考えれば、労使交渉や価格設定でインフレを織り込むようになります。その結果、期待インフレが高止まりし、実際のインフレ率も上方にバイアスがかかる恐れがあります。こうした状況を抑え込むには、後にFRBが大幅な利上げを強いられる(いわゆるボルカー式の劇薬が必要になる)可能性もあり、長期的な物価安定達成がより困難になるとの指摘があります。金利環境・経済成長への影響: トランプ氏の思惑通り利下げが実施されれば、短期的には融資コスト低下で経済成長を下支えするかもしれません。しかし前述のように長期金利が上昇すれば、住宅投資や設備投資にはむしろ逆風となります。また市場の信頼低下から株価が不安定化すれば、負の資産効果(株安による消費・投資マインド低下)で景気にマイナスです。エバーコアISIのグハ氏は「独立性への急激な脅威は市場ストレスを強め、景気減速とインフレ高進を同時にもたらすスタグフレーション方向にシフトさせる」と警告しています。つまり景気後退と物価上昇が併存する最悪シナリオさえ現実味を帯びるのです。これは1970年代のような状況で、克服には痛みを伴う政策対応が避けられません。IMFも「中央銀行は信頼性と敏捷性が肝要だが、政治介入はそれを制限してしまう」と述べ、長引く経済停滞を懸念しています。国際的な信頼と資本フロー: 米国の経済運営に対する国際的信認も低下し得ます。FRBの独立性はしばしば他国の中央銀行の模範とされ、ドル資産への投資も「政治から距離を置いた安定した政策」による安心感が支えています​。仮に議長解任で米国が政治優先に舵を切れば、各国は米国債やドル預金に慎重になり、海外からの資金流入が細る恐れがあります。米国は巨額の財政赤字を海外資本で賄っている面がありますが、その構図にも亀裂が入りかねません。結果として金利上昇圧力が一段と高まり、経常収支や財政のファイナンスにも悪影響が波及する可能性があります。以上のように、パウエル議長の解任が実行されれば、金融市場は短期的ショックと長期的不安定化を、米国経済はインフレ取り巻くリスク増大と信用低下を被ると予想されています。これは単なる仮説ではなく、主要メディアや専門家の共通認識です。実際、著名経済学者や金融機関も「FRB議長解任は米国経済にとって自傷行為」との見解を示しており、ウォーレン議員は「違法な解任を強行すれば市場をクラッシュさせ、米国民にさらなる経済的苦痛を与えるだけだ」と非難しています。結論として、FRB議長の解任は制度的にも経済的にもリスクが大きすぎるため、現実となれば市場の混乱や経済への悪影響は避けられないでしょう。

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【アマゾン決算みどころ】AWS成長率とAI戦略に注目、過去最高益更新なるか(Amazon)

【アマゾン決算みどころ】AWS成長率とAI戦略に注目、過去最高益更新なるか(Amazon)

本記事では、アマゾン(Amazon)の2024年第4四半期決算を振り返り、5月1日に控える2025年第1四半期決算の見どころを解説します。アマゾンの2024年第4四半期決算は、売上高1,878億ドル(前年比+10%)、純利益200億ドル(約2倍)と好調でした。AWSクラウド事業は売上高288億ドルで前年比+19%の成長を達成し、広告事業も173億ドルと前年比+18%増と堅調でした。2025年に入り、生成AI機能を搭載した次世代版「Alexa+」を発表し、クラウドインフラとAI関連への大規模投資を継続しています。コスト効率化と成長投資のバランスを取りながら、業績は順調に推移しています。今回決算は、AWSや広告といった高収益エンジンが順調でコスト管理もうまくいっていればポジティブ、一方で成長鈍化や投資増による利益圧迫が見られればネガティブという評価になりそうです。アマゾン株は直近まで大きく上昇してきたため、良い意味でも悪い意味でも市場の期待値が高まっています。その分ハードルも上がっていますが、裏を返せば複数の事業がバランスよく成長している強みが評価されているとも言えます。前回決算(2024年第4四半期)ハイライト売上高と利益が市場予想を上回る: 2024年10-12月期のアマゾン実績は、売上高が1,878億ドル(約28.2兆円)と前年同期比+10%と好調でした​。為替の影響を除くと+11%の成長で、年末商戦(ホリデーシーズン)の強い消費需要が貢献しました。また営業利益は前年同期の132億ドルから61%増加し212億ドルに達し、純利益も前年同期の106億ドルから約2倍の200億ドルに急増しました。一株当たり利益(EPS)は$1.86となり、市場予想の$1.49を大きく上回っています。増収増益となった主因は、堅調な売上成長に加え、倉庫・物流網の効率化や人員削減によるコスト圧縮で採算が改善したためです。主要セグメント別の業績: アマゾンは事業を大きく「北米」「国際」「AWS(クラウド)」の3セグメントに分けて開示しています。北米(主に米国のECと関連事業)セグメントは売上1,156億ドル(+10%)と2桁成長し、プライム会員向け配送スピードの向上策やブラックフライデー・サイバーマンデーの販売好調が寄与しました。北米部門の営業利益も93億ドルと前年の65億ドルから約43%増加し、大幅な増益となりました。国際セグメント(北米以外のEC)は売上434億ドル(+8%、為替調整後+9%)で、営業損益は前年同期の▲4億ドルから本四半期は13億ドルの黒字へと改善しています。これはヨーロッパやアジアでEC需要が持ち直したことやコスト見直しの効果によるものです。AWSクラウド事業の成長: クラウドサービスの Amazon Web Services (AWS) は引き続きアマゾン全体の稼ぎ頭です。2024年Q4のAWS売上高は288億ドルと前年同期比+19%の伸びを記録しました​。伸び率は前四半期(+19%)と同水準で、市場予想(約289億ドル)にほぼ達しています。AWSの営業利益は106億ドルと前年同期比+48%増加し、営業利益率は36.9%へ拡大しました。この高収益なAWS事業だけで全社営業利益の約5割を稼いでおり​、アマゾンの利益成長を力強く牽引しています。AWS成長の背景には、企業のデジタルトランスフォーメーション需要やAI関連サービスの導入拡大があり、2024年Q4には自社開発のAI用半導体「Trainium2」の提供開始も成長を後押ししました​。広告・その他事業の動向: アマゾンの広告事業も主要な成長セグメントです。同社サイトやFireタブレット、Twitchなどで展開する広告サービス収入は2024年Q4に173億ドルと前年同期比+18%増加し、四半期として過去最高水準に達しました​。増収率は昨年同時期(+26%)からは鈍化したものの、依然として20%近い高成長を維持しています。アマゾンの広告売上はここ4年間で倍以上に拡大したとされ、GoogleやFacebookに次ぐデジタル広告プラットフォームとして地位を確立しています。また、物流部門やサブスクリプション(プライム会費など)も着実に成長しました。特に物流面ではサプライチェーン最適化や倉庫の自動化投資が奏功し、1個あたり配送コストの削減や翌日配送比率の向上につながっています。コスト効率の改善と株価反応: 前年から続く構造改革の成果で、アマゾンは大幅なコスト効率化を達成しました。2023年には全社で約27,000人の人員削減(主に本社部門)を断行し、組織のスリム化によって年間数十億ドル規模のコスト削減効果を見込んでいます​。その結果、2024年Q4の営業費用の増加率は+5.7%に抑えられ、売上+10%を下回りました。これが前述の営業利益急増に直結しています。決算発表直後の株式市場の反応はやや波乱含みでした。時間外取引で株価は一時▲5%下落し、時価総額900億ドルが吹き飛ぶ場面もありました​。主な要因はクラウド事業の伸び悩み懸念と、発表された2025年Q1ガイダンス(見通し)が市場予想を下回ったことです​。ただしその後株価は持ち直し基調となり、2025年4月上旬には年初来で+20%以上上昇し2年半ぶりの高値水準を更新しています(市場全体のハイテク株上昇の追い風もあり)。個人投資家にとっては、このような決算直後の変動に惑わされず、長期的な成長ドライバーに注目する姿勢が重要と言えます。前回決算以降の主なニュース動向生成AI関連の戦略発表: 2025年に入り、アマゾンは生成AI(Generative AI)分野でいくつかの大きな動きを見せました。2月末には10年ぶりとなる音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」の大型アップデートを発表し、次世代版「Alexa+(アレクサ・プラス)」を公開しました。新しいAlexa+は生成AIを活用した高度な会話能力を備え、従来のような一問一答形式でなく自然な対話の流れでユーザーの意図を汲み取り、コンサートやレストラン予約、メール送信など複雑なタスクを音声だけで処理できます。この刷新は当初計画より1年遅れとなりましたが、競合のChatGPTやGoogleアシスタントに対抗し、「AI時代における家庭内アシスタントの再定義」を目指すアマゾンの意気込みがうかがえます。またクラウド面でも、AWSは自社開発の大規模言語モデル(LLM)「Amazon Nova」シリーズを投入し、外部パートナーのAIモデル(例:Anthropic社のClaudeなど)も統合する生成AIプラットフォームを強化しています。こうした取り組みにより、アマゾンはクラウド顧客に対しAIソリューションを包括的に提供し、マイクロソフトやグーグルとのクラウドAI競争で後れを取らないよう努めています。AWSクラウドの成長と競争環境: 前述の通りAWSの直近成長率は+19%と堅調でしたが、クラウド業界全体では成長鈍化傾向がみられます​。マイクロソフトのAzureやグーグルクラウドも2024年後半に伸び率が低下しており、企業のクラウド支出が一巡したことやコスト最適化の動きが背景にあります。アマゾン経営陣は決算説明で「需要に対し供給側の制約が成長を幾分抑制している」と述べ、特に高度なAI処理に必要な半導体チップやデータセンター電力の供給が追いつかず、もし供給制約がなければより高成長も可能だったとの認識を示しました。実際、AWSは需要増に対応するため2024年下期から2025年にかけて過去最大規模の設備投資を計画しています。この巨額投資には新規データセンター建設やAIチップ増産が含まれ、CEOのアンディ・ジャシー氏は「AIはインターネット以来の大きな機会」であり、中長期での成長拡大に向けた前向きな投資と強調しています。一方で競争も激化しており、例えば中国では低コストのAIクラウドを掲げる新興企業の台頭も報じられています。AWSが今後もクラウド首位の座を維持するには、高性能かつコスト効率の良いサービスを提供し続けることが不可欠です。広告事業の拡大と戦略: アマゾンの広告ビジネスは、前回決算で示されたように年率+18%と順調に拡大しています。特に動画ストリーミング「プライム・ビデオ」への広告導入は大きな話題となりました。アマゾンは2024年から米国や欧州でプライム会員向け動画に広告を挿入し始め、そして日本でも2025年4月よりプライム・ビデオに広告付きプランを導入しました(従来会費に月数百円を追加すれば広告無し視聴も可能)。この施策は動画配信サービス全体の潮流であり、自社オリジナル作品などコンテンツ投資を続けるための収益源確保が目的です。広告主にとっても、アマゾンの豊富な購買データに基づくターゲティング広告や、音声AIアシスタント(Alexa経由の広告など新形態含む)は魅力的であり、今後も広告事業はグーグルやメタ(旧Facebook)に次ぐ第3のデジタル広告巨頭として成長が期待されています。コスト管理と投資戦略のバランス: 2023年に大規模リストラを実施したアマゾンは、2024年以降も継続して経費構造の見直しを図っています。直近では2025年1月にもコーポレート部門で若干の追加レイオフが行われました​。同社は「組織の階層をフラット化し、迅速な意思決定を妨げるポジションを整理した」と説明しており、肥大化した本社機能をスリムに保つ姿勢を示しています。一方で将来の成長分野への投資は惜しまない方針です。特にリソースを投入しているのがクラウドインフラとAI関連で、前述のように2024年第4四半期の設備投資額は263億ドルにも上りました。CFOのブライアン・オルサブスキー氏によれば「今後もこのペースの高水準投資を続ける見通し」とのことで、最新技術への積極投資により競争優位を維持する戦略です。キャッシュフロー面では、2024年の営業キャッシュフローは前年から+82%増の849億ドルと潤沢で、フリーキャッシュフローも大幅黒字に転換しています。このため財務的な投資余力は十分にあり、AI・物流・デバイスなど複数の分野で「次の成長のタネ」を蒔きつつあります。株主還元と株価動向: アマゾンは伝統的に利益を事業再投資に充てて成長を優先してきた企業で、配当は無配、株主還元(自社株買い)も同業他社と比べ控えめです。2022年に100億ドル規模の自社株買い枠を設定しましたが、2023年までの買い戻し実績は60億ドル程度に留まっており​、過去4四半期でも発行済株式数は1%弱しか減っていません​(※社員へのストックオプションによる希薄化をほぼ相殺する水準)。しかし足元でキャッシュ創出力が急向上したことから、一部では「そろそろ株主還元を拡充すべき」との声も出始めています。実際2024年末時点で手元現金は約1000億ドルに達しており、負債を除いたネットキャッシュも潤沢です。もっとも、経営陣は依然としてAIや物流網への大型投資に前向きで、短期的に配当開始や大規模買戻しを行う可能性は低いと見られます。そのため株主還元よりも株価自体の上昇によるリターン(キャピタルゲイン)が当面の投資妙味となるでしょう。昨年から今年にかけてアマゾン株は力強く反発しており、2023年の低迷からV字回復しました。個人投資家としては、業績動向と併せて株価トレンドにも目を配りつつ、押し目があれば中長期の視点で投資判断するスタンスが求められます。今回(2025年Q1)決算での注目ポイントと株価への影響クラウドAWSの成長率と収益性: 最大の注目はやはりAWS事業の動向です。市場では「AWS成長率は底打ちしたのか」が関心事となっています。前年(2024年)前半に一時10%台前半まで減速したAWS成長率は、後半に18~19%まで持ち直しました。今回発表の2025年Q1でも引き続き15~20%程度の前年同期比成長を維持できるかがポイントです。もっとも前回決算時に示されたQ1の会社売上ガイダンスは全社で+6~8%増程度と保守的で​、これを踏まえるとAWSも若干鈍化する可能性があります。供給制約(チップ不足など)の影響がどの程度続いているか、決算説明での経営陣コメントも重要です。AWSの営業利益率(直近36.9%)が今期も高水準を保てるかもチェックしましょう。旺盛な設備投資によって減価償却費や運用コストが増えれば短期的に利益率は圧迫される懸念がありますが、前四半期同様にコスト増を売上拡大が上回れば高収益性を維持できます​。もしAWS成長が再減速したり利益率低下が見られれば、発表直後に株価下落要因となり得ます。一方で予想以上の成長加速やポジティブな見通しが示されれば、株価押上げの原動力となるでしょう。広告収入の伸びと収益源の多様化: 第2の注目点は広告事業の動向です。前述のようにアマゾンの広告売上は四半期170億ドル規模に達しており、同社にとってAWSに次ぐ利益柱です。特に1-3月期は他の四半期と比べホリデー要因がなく広告売上が落ち込みやすい傾向がありますが、それでも前年同期比で二桁成長を維持できるかがポイントです。競合のグーグルやメタもデジタル広告市場で持ち直しを見せている中、アマゾン広告が引き続きシェア拡大できていれば、収益源の多様化という観点で投資家の安心材料となります。またプライム・ビデオへの広告導入効果や、生成AIを活用した広告クリエイティブ自動生成ツール(出品者が商品の広告画像や動画をAIで簡単に作成できるサービスなど)の普及状況にも注目です。広告事業は利益率が高く、売上1ドルの増加がそのまま利益寄与しやすいため、今期も順調なら全社の営業利益を底支えするでしょう。コアEC部門の成長率とコスト最適化: アマゾンの原点であるオンライン小売(EC)部門も引き続き注視すべきです。米国を中心とした個人消費はインフレや景気動向の影響を受けやすく、2025年初にはやや減速懸念も取り沙汰されています。その中でアマゾンの商品売上(自社販売+マーケットプレイス手数料)が前年同期からどの程度伸びたか、見極めが必要です。前回Q4は北米+10%、国際+8%でしたが、1-3月期は季節的な低調期であるため一桁前半~中盤の成長にとどまる可能性があります。プライム会員数やその購買頻度、サブスクリプション収入(プライム年会費、Audibleなど)の伸びも参考情報です。またEC部門の収益性改善にも注目しましょう。これまで赤字だった国際セグメントが直近黒字化したように、巨大な物流ネットワークの効率化や在庫管理の高度化(データ分析による適正在庫配置)、配送の自動化などが奏功すれば、低マージンと言われたEC事業が着実に利益を生む体質へ変わりつつある可能性があります​。もし今回の決算でもEC部門の利益率改善が確認できれば、中長期でアマゾンの収益ポテンシャルを押し上げる好材料となります。生成AIサービスの進捗とガイダンス修正: 決算発表では、今後の戦略や見通しについて経営陣が語る「ガイダンス」も重要です。特にAI関連では、先述のAlexa+の提供開始スケジュールやユーザー反応、AWSにおける生成AIサービス(Amazon Bedrock経由での各種AIモデル提供)の顧客利用状況などについてアップデートがあるか注目されています。AIは短期的な収益貢献よりも将来への投資色が強い分野ですが、アマゾンが具体的な成果(例:大口顧客の導入事例やサービス利用数の拡大)を示せれば投資家心理の改善につながります。また2025年Q2の会社側見通し(売上高レンジや営業利益レンジ)が上方修正されるかもポイントです。前回発表時点では2025年Q1見通しが市場予想を下回り失望を招いただけに、今回のガイダンスが保守的すぎないかどうかマーケットは敏感に反応するでしょう。仮にガイダンスが強気に修正されれば、年後半に向けた成長加速への自信と受け取られ株価の追い風となり得ます。逆に引き続き慎重な見通しの場合、一時的に売り材料となる可能性もあります。株価への総合的なインパクト: 上記の各ポイントの結果如何によって、決算後の株価は上下に振れやすい状況です。総じて、AWSや広告といった高収益エンジンが順調でコスト管理もうまくいっていればポジティブ、一方で成長鈍化や投資増による利益圧迫が見られればネガティブという評価になりそうです。アマゾン株は直近まで大きく上昇してきたため、良い意味でも悪い意味でも市場の期待値が高まっています。その分ハードルも上がっていますが、裏を返せば複数の事業がバランスよく成長している強みが評価されているとも言えます。個人投資家としては、決算発表の数字と経営陣コメントを丹念に分析し、短期的な株価変動に一喜一憂するのではなく、クラウド・広告・EC・AIという複数の成長エンジンを持つアマゾンの中長期的な企業価値を見極めることが肝要でしょう​。今回の決算は、そうした判断材料を提供してくれる重要なイベントとなりそうです。

【アップル決算みどころ】iPhone 16eとサービス成長で中国減速をカバーできるか(Apple)

【アップル決算みどころ】iPhone 16eとサービス成長で中国減速をカバーできるか(Apple)

本記事では、アップル(Apple)の2024年第4四半期決算を振り返り、5月1日に控える2025年第1四半期決算の見どころを解説します。アップルの2025年第1四半期(2024年10-12月期)決算は、売上高1,243億ドル(前年比+4%)、EPS2.40ドル(同+10%)と過去最高を記録しました。地域別では米国+4%、欧州+11%と好調な一方、中国は-11%と苦戦しています。新製品のVision Proは販売不振で生産縮小の可能性があり、生成AI機能の開発も遅れが生じています。一方で、iPhone 16eの投入により世界スマホ市場シェアで首位を獲得し、サービス部門は過去最高の263億ドルの売上を記録するなど、明暗が分かれる結果となりました。今回の決算は「減速する中国をその他地域やサービス収入で補えるか」がテーマといえます。iPhone販売台数やサービス収入の着実な伸びが確認できれば、アップルは逆風下でも成長持続可能との評価から株価にプラスです。一方、中国需要悪化やAI対応の遅れが響いて弱い決算となれば、一時的に株価が調整するリスクもあります。ただアップルは豊富なキャッシュを背景に積極的な株主還元と長期視点の事業投資を続けており​、中長期の企業価値は底堅いと見る向きも多いです。2025年第1四半期(10~12月期)決算ハイライト2025会計年度第1四半期(2024年10~12月期)のアップルの業績は、売上高1,243億ドル(前年同期比+4%)と過去最高を記録し、希薄化後EPS(一株当たり利益)は2.40ドル(前年同期比+10%)となりました。地域別に見ると、米国+4%、欧州+11%、中国は-11%と地域間で明暗が分かれました。特に日本は+15%と大きく伸びており、2年連続の増収となっています。製品別では、iPhone売上高が前年同期比0.8%減とわずかに減少したものの、Macは+15%増、iPadも+15%増とパソコン・タブレットが好調でした。サービス部門(App Storeやサブスクリプションなど)は過去最高の263億ドルの売上を計上し前年比+13%増と引き続き高い成長を示し、ウェアラブル・ホーム・アクセサリ部門(Apple WatchやAirPods等)は-2%減とやや減速しました。純利益は363億ドルと前年を上回り、同四半期として過去最高水準です。こうした堅調な決算を受け、株価は決算発表後に上昇しました。発表当日(米国時間1月30日)終値は前日比0.74%安でしたが、時間外取引では+3.26%高の245.34ドルまで買われています。市場予想を上回る収益と、為替の影響を除けば堅調な次期売上見通しが評価されたためです。アップルは第1四半期に約300億ドル(約4兆円超)もの資金を自社株買いと配当の形で株主に還元しており、取締役会は四半期配当(1株0.25ドル)の支払いも決議しました。潤沢なキャッシュフローを背景にした株主還元策は株価下支え要因となっています。前回決算以降の主なニュースと動向Vision Proの販売状況: 2024年2月に米国で発売されたアップルの高価格帯MR(複合現実)ヘッドセット「Apple Vision Pro」は販売が伸び悩んでいます。報道によれば、アップルは需要低迷を受けて現行モデルの生産を大幅縮小し、2024年末までに一時生産停止の可能性もあるとのことです。実際、発売直後の四半期(2024年2~3月)に10万台も売れず、その後も需要減速から生産台数をピーク時の半分程度に抑制している模様です。アップルは第2世代Vision Proの開発を少なくとも1年延期し、まず低価格モデルの開発に注力する方針とも報じられています。超高額(米国で3,499ドル、日本では約50万円)の初代モデルでは市場拡大が難しく、価格引き下げと「キラーアプリ」の出現による普及拡大を狙う戦略と考えられます。現時点でVision Proの売上への貢献はごく僅かで、ウェアラブル部門全体の売上も前年割れとなっていることから、投資家は今後の販売動向と収益寄与を引き続き注視する必要があります。生成AI機能(Apple Intelligence)の開発動向: アップルはiPhoneやMac向けに独自の生成AI機能群「Apple Intelligence」の提供を進めていますが、その展開は計画より遅れています。2024年秋のiOS 18リリース時に一部機能を提供開始したものの、目玉であるSiriの高度な生成AIアップデートの開発が難航しています。アップルは2024年6月のWWDCで発表したSiriのAI強化機能の提供時期が当初予定(2025年4月頃)より遅れ、2026年初頭までずれ込む可能性を認めました。実際、2025年3月7日に広報を通じ「当社が考えていたよりもこれらの機能の提供に時間がかかる」と声明を出し、事実上の大幅延期を発表しています​。このニュースを受けて株価は3月中旬に急落し、アップルのAI戦略への投資家懸念が高まりました​。競合のGoogleやAmazonが音声アシスタントに生成AIを相次ぎ統合する中、アップルの出遅れは将来のiPhone買い替え需要に影響しかねないと指摘されています。もっともアップルはプライバシー重視からデバイス上で動作する省電力AIに注力しており、完成度を高めた上で順次機能拡張する方針です。個人投資家としては、秋発売の次期iPhoneに間に合う形でどこまでAI機能強化が進むか注目したいところです。iPhone販売と主要市場の需要動向: 前述のとおり、直近四半期(2024年末)のiPhone売上は前年比微減となりましたが、地域別の動向に特徴が出ています。中国市場ではiPhoneが不振で、第1四半期(10-12月)の売上高は前年同期比11%減少しました。背景には、中国本土でアップルの生成AI機能(Apple IntelligenceやChatGPT)が規制により利用できず魅力が削がれていることや、景気減速による消費低迷があるとアップル経営陣は分析しています。実際、調査会社Counterpointによると2024年Q4の中国におけるAppleスマホ販売台数は前年同期比18.2%減と大きく落ち込み、同年通期の中国スマホ市場シェアでもAppleは首位から4位に転落しました。一方、米国や欧州では年末商戦期の需要が堅調で売上横ばいを維持し、日本や新興国での需要は強い伸びを見せています。特に注目すべきはインド市場で、アップルは2023年に同国で初の直営店をオープンし販売体制を強化するとともに、製造面でもインド生産を拡大しています。直近1年間でインドでのiPhone生産量を60%増やし、世界出荷台数の20%がインド製となったことが報じられており、地政学リスク分散と現地需要取り込みに努めています。インドでのアップルのスマホシェアはまだ約8%程度ですが、2024会計年度の売上は約80億ドルに達しており今後も二桁成長が見込まれています。こうした新興国市場でのシェア拡大は、既に成熟した米欧中市場に代わる中長期成長シナリオとして重要です。さらに2025年2月末には新型の「iPhone 16e」を投入しました。これは現行のiPhone16シリーズの廉価版モデルで、価格を抑えつつ最新機能(Apple Intelligenceなど)を搭載した製品です。低価格帯の16e投入は新規需要を喚起し、日本やインドでの販売増に奏功したと伝えられています。調査会社のデータでは、2025年第1四半期(暦年、1~3月期)の世界スマホ市場シェアでアップルが19%を占め、サムスンを抑えて首位となりました​。欧米や中国の販売が苦戦する中でも、iPhone 16eの寄与と日本・インドの堅調な需要が世界シェア首位奪還の原動力となっています。このように前回決算後、地域間で明暗を分けるiPhone需要動向が鮮明になりました。中国市場の減速を他地域での伸びと新製品投入でどこまでカバーできるかが、今後の業績を左右するポイントです。規制リスクと株主還元策: マクロ環境や規制面のニュースも見逃せません。米国と中国の間の貿易摩擦は2025年に入って激化し、米国政府が中国からの輸入品に最大150%の関税を課す可能性が取り沙汰されました。アップル株はこの報道を受け4月初旬に一時25%以上急落する場面がありました。その後、スマートフォンなど一部製品は関税適用除外となる見通しが伝わり株価は持ち直しましたが、依然として中国生産への依存や中国販売減速に対する地政学リスクは株価の重石となっています。また欧州ではデジタル市場法(DMA)の施行により、アップルはEU圏内でiPhoneへのサードパーティ製アプリストア解禁やアプリ内決済手段の開放を余儀なくされています。これは中長期的にApp Store手数料収入(サービス部門)に影響を及ぼす可能性があり、アップルは慎重に対応を進めています。こうした規制リスクの一方で、株主還元策は引き続き強化されています。アップルは12年連続で四半期配当を増配しており、前述の自社株買いも継続中です​。昨年同時期(2024年Q2)には追加で1,100億ドル(約17兆円)もの自社株買い枠を承認し、四半期ベースで過去最高額の買い戻しを実施しました​。これほどの巨額買い戻しは自社株への信頼の表れであり、1株当たり利益の押し上げ効果もあります。個人投資家にとっては、規制環境の変化による向かい風と、手元資金を活用した株主還元による追い風の両方を考慮することが重要です。今回発表(2025年第2四半期、1~3月期)決算の注目ポイントと株価への影響5月上旬に公表予定の2025年第2四半期決算(1~3月期)では、上述の動向を踏まえいくつかの重要ポイントが予想されます。それぞれが株価に与えるインパクトを整理しましょう。iPhone売上の回復または減速: 最大の注目点はiPhone部門の売上動向です。前年の2024年1~3月期は中国での販売低迷などからiPhone売上が減少(前年同期比 -X%)しており、今回はその反動による増収が期待されています​(注: 2024年Q2はiPhone含む主力製品が軒並み減収でした)。特に今年は2月末に発売した「iPhone 16e」の販売寄与が約1か月分含まれるため、中価格帯需要の取り込みでiPhone全体を下支えした可能性があります。実際、前述の通り1-3月期の世界シェアでアップルは首位となっており、数量ベースでは健闘したとみられます。もっとも中国市場の需要回復は不透明で、引き続き前年比マイナスが続くリスクも残ります。iPhone売上が市場予想を上回る増収となればポジティブサプライズとなり株価上昇要因ですが、逆に回復が鈍く横這い~減収に留まる場合は失望売りを招きかねません。決算発表では地域別のiPhone販売動向や、新興国での伸長が中国減速をカバーできたか注視しましょう。サービス部門の成長継続: サブスクリプション収入やApp Storeを含むサービス部門は、第1四半期に過去最高売上を記録するなどアップルの稼ぎ頭となっています。第2四半期も前年比二桁増の堅調成長が続くかが重要ポイントです。足元ではApp Store規制緩和の動きもありますが、本決算への直接的な影響は限定的でしょう。むしろApple MusicやiCloud、有料保証AppleCare+の契約増加や値上げ効果で引き続き高い利益率の収入増が期待されます。サービス部門は粗利率が製品より高いため、売上成長が確認できれば利益面でプラス材料となります。仮に成長減速が見られると将来の収益予想に影響するため、有料サブスクリプション数の増減や地域別サービス売上にも注目です。サービス収入拡大が順調なら、アップルのエコシステム強化による安定収益源として評価され株価支援要因となるでしょう。中国市場の販売状況: 中国売上が前四半期(10-12月)に続き減少するか、あるいは春節需要などで持ち直すかも株価のカギを握ります。昨年末時点で中国売上は約185億ドルと全体の15%超を占めており、この巨大市場のトレンド変化はインパクトが大きいです。中国政府による消費刺激策や、ライバル華為技術(ファーウェイ)の勢いなど外部要因も絡みます。アップルは4月以降、生成AI機能の多言語展開により中国以外の地域で需要拡大を図ると述べていますが、肝心の中国本土でApple Intelligenceが使えない状況が続く限り販売回復は限定的かもしれません。もし中国売上が前年同期比で再び二桁減となればネガティブ材料ですが、一方で「底打ち」して減少幅縮小や横這いとなれば安心感から株価にはプラスでしょう。投資家は決算カンファレンスでのティム・クックCEOの中国市場に関するコメントにも耳を傾ける必要があります。Apple Vision Proの収益貢献: 2024年2月に米国発売となったVision Proの売上寄与が初めて今四半期に表れる見込みです。ただし前述の通り販売台数はごく少数に留まっているため、四半期売上(908億ドル※前年同期)に占める割合は数十億円程度とごく僅かと推測されます。それでも「Wearables, Home and Accessories」セグメントにおいて前年同期比の増減要因として触れられる可能性があります。むしろ重要なのは、アップルが決算説明でVision Proについて今後の販売国拡大や開発計画に何らかのアップデートを示すかどうかです。6月末には日本や欧州での発売も予定されており、その準備状況や初期ユーザーの反応などが語られれば、今後の収益モデルを占う手がかりとなります。仮に需要が想定以上に低迷し続ける場合、在庫や関連費用が業績圧迫要因となりかねず注意が必要です。投資判断としては現時点でVision Proに過度な期待を織り込むのは禁物ですが、長期的なプラットフォーム戦略として注視する価値はあります。ガイダンス修正の有無: アップルはパンデミック以降、正式な数値ガイダンスの提供を控えていますが、決算時に次四半期の売上トレンドについて定性的な見通しを示すことがあります。前回決算では「2025年1-3月期の売上高は為替影響を除けば中〜低シングル(一桁)台の成長」との見込みが示唆されました。今回その見通しに変化があるかどうか、例えば最近の関税問題や中国情勢を受けて保守的に下方修正するのか、あるいは新興国の好調や為替追い風で強気のトーンを維持するのかがポイントです。仮に経営陣が先行きに慎重姿勢を強めれば、将来成長への不安から株価は上値が重くなる可能性があります。逆に「業績は堅調に推移している」「需要は予想通り」といった自信を示せば、市場心理の改善につながるでしょう。特に今年後半にはiPhone新モデルや廉価版Vision Proの噂もあり、中長期見通しについて言及があるか注目です。加えて、例年この時期には新たな自社株買い枠の発表がなされる傾向があります。前述のように昨年は追加1100億ドル規模の買い戻しを決定しており、今回も巨額の資本還元策が示されれば株価の下支え要因となるでしょう。以上のポイントを総合すると、今回の決算は「減速する中国をその他地域やサービス収入で補えるか」がテーマといえます。iPhone販売台数やサービス収入の着実な伸びが確認できれば、アップルは逆風下でも成長持続可能との評価から株価にプラスです。一方、中国需要悪化やAI対応の遅れが響いて弱い決算となれば、一時的に株価が調整するリスクもあります。ただアップルは豊富なキャッシュを背景に積極的な株主還元と長期視点の事業投資を続けており​、中長期の企業価値は底堅いと見る向きも多いです。個人投資家としては、決算数字そのものだけでなく経営陣のコメントや市場環境の変化に注意を払い、目先の株価変動に惑わされず長期的な視点でアップルの戦略と成長余地を評価することが肝要でしょう。

【マイクロソフト決算みどころ】Azureの成長率とAI投資効果が焦点(Microsoft)

【マイクロソフト決算みどころ】Azureの成長率とAI投資効果が焦点(Microsoft)

本記事では、マイクロソフト(Microsoft)の2024年第4四半期決算を振り返り、4月30日に控える2025年第1四半期決算の見どころを解説します。マイクロソフトの2024年第4四半期決算は、売上高が前年比+12%の696億ドル、EPS3.23ドルと好調でした。Azure売上は前年比31%増で、特にAI関連需要が伸びを牽引しました。生成AI「Copilot」の利用は急拡大し、AI関連ビジネス全体で年間130億ドル規模に達しています。2025年に向けて約800億ドルのデータセンター投資を計画し、OpenAIとは2030年までの新提携契約を締結して競争力を維持する戦略です。マイクロソフトは通常、四半期ごとに売上高などの見通しレンジを提示しますが、今回そのレンジが上方修正されるかどうかが焦点です。もし経営陣が「予想以上に需要が強い」として将来ガイダンスを引き上げれば、市場は業績加速のシグナルと受け取り株価上昇要因となるでしょう。特にAzureやAI関連収入の強気見通しが示されれば評価は高まります。反対に、慎重な見通しや弱気なトーンが出れば、短期的に失望売りを招くリスクがあります。前回はAzure成長見通しがやや保守的だったため株価下落につながりました。今回はその反省も踏まえ、どの程度楽観度合いを調整してくるか注目です。前回決算(2024年第4四半期)ハイライト2024年第4四半期(10-12月)のマイクロソフト決算は、売上高・利益が堅調な成長を示しました。売上高は前年同期比+12%の696億ドルと市場予想を上回り、純利益は1株当たり3.23ドル(前年比+10%)を計上しています​。主要事業セグメントの業績も概ね好調でした。インテリジェントクラウド部門(Azureなど): クラウドプラットフォーム「Azure(アジュール)」の売上は前年同期比31%増と高い伸びを維持しました​。特に生成AI関連のクラウド需要が急増しており、この四半期のAzure成長率31%のうち13ポイントはAIサービス(大規模AIモデルの利用)によるものです。クラウド全体の収益は409億ドル(+21%)に達し​、マイクロソフト全社の売上を牽引しています。プロダクティビティ&ビジネスプロセス部門(Officeなど): 「Microsoft 365(旧Office)」「Dynamics 365」やLinkedInなどを含むこの部門も前年同期比+14%と堅調でした​。企業向けMicrosoft 365クラウド売上が+16%と引き続き2桁成長し、個人向けMicrosoft 365も加入者数増加で+8%伸びています​。これは在宅勤務やデジタルトランスフォーメーション需要に支えられたものです。モアパーソナルコンピューティング部門(Windowsやデバイスなど): 個人向け製品部門の売上は147億ドルで横ばいでした。内訳を見るとWindows OEM(PCメーカー向けライセンス)売上は+4%と微増し、市場のPC需要低迷から持ち直しつつあります​。一方、Surfaceなどデバイス売上は減少しましたがXboxコンテンツサービスは+2%と小幅増、また検索広告(Bingなど)は+21%と好調でした​。検索広告の伸びには、AI搭載検索機能(Bing Chatなど)の強化が寄与した可能性があります。生成AI「Copilot(コパイロット)」の拡大状況: 決算説明会でサティア・ナデラCEOは、生成AIを活用した新サービス群「Copilot」の利用が急速に拡大していると強調しました。マイクロソフトのAI関連ビジネス全体は年換算130億ドル規模に達し、前年比+175%という爆発的な成長を示しています。例えばGitHub Copilot(プログラミング支援AI)は企業利用が前年の3倍近くに増え、年間20億ドル規模の収益ペースに到達しました。また2023年後半に提供開始したMicrosoft 365 Copilot(オフィスAIアシスタント)は、企業ユーザーの日次利用者数が四半期で2倍に増加するなど過去のMicrosoft 365製品の中でも最速の広がりを見せています​。Copilot導入企業の多くが追加ライセンスを継続購入していることも明らかになり、生成AIが既存製品の付加価値向上と収益拡大に貢献し始めていることが示唆されました。株価の反応: 前回決算発表直後のマーケットの反応はややネガティブでした。好調な売上・利益にもかかわらず、Azure成長率の先行きに慎重な見通しが示されたことや、巨額のAI投資負担への懸念から、発表翌日の株価は一時約4.5%下落しました。特にクラウド事業の成長鈍化(Azureの成長率が市場予想を下回ったこと)や、次四半期のAzure売上成長見通しが31~32%と期待より低めに示された点が失望を誘いました。また、「AIブーム」に沸くテック業界全体でデータセンター投資競争が激化し、中国企業による低コストのAIモデル参入も報じられたことから、将来的な価格競争(クラウドAIサービスの値下げ競争)への警戒感も広がりました。こうした理由で短期的には株価が調整しましたが、それでも決算後の株価水準は前年同期比でなお上昇基調にあり、長期的なAI成長期待から投資家の信頼は維持されています。前回決算以降の主なニュースとトレンド2025年初頭から決算発表までの間、マイクロソフトを取り巻く状況では生成AIサービスの展開加速とパートナー戦略・設備投資に関する重要なニュースが相次ぎました。生成AIサービスの進展とOpenAIとの提携動向前回決算後もマイクロソフトは生成AI搭載サービスの拡充を積極的に進めています。Windows 11への「Windows Copilot」統合や、Dynamics 365向けのAI支援機能、新たなBing Chatの機能強化など、個人から企業まで幅広い製品にAIを組み込む戦略が継続しました。企業のIT担当者の関心も高く、ある調査では95%のCIOが今後12か月でマイクロソフトの生成AI製品を採用すると回答しており、この割合は1年前の63%から大きく上昇しています。生成AIは一過性のブームではなく、企業ITに本格浸透する段階に入りつつあると言えるでしょう。こうした中、ChatGPT開発元のOpenAIとの提携関係にも新たな動きがありました。2024年末にはOpenAIの経営体制を巡る騒動がありつつも、マイクロソフトは引き続きOpenAIの主要パートナーとして協業を深化させています。2025年初め、マイクロソフトとOpenAIは2030年までの新たな提携契約を結び直し、OpenAIがマイクロソフト以外のクラウドも一部活用できる柔軟性を持たせる一方で、マイクロソフトは優先交渉権を保持する内容となりました。この契約により、マイクロソフトはOpenAIの先端AI技術(GPT系モデルなど)の独占的な商用利用権を引き続き得ると同時に、OpenAIが他社クラウドを追加利用する場合でもマイクロソフトが最優先で提供機会を得る権利(ROFR)が確保されています。実際、OpenAIはオラクル(Oracle)との間で新たなデータセンター利用契約を締結しましたが、OpenAIの商用モデル提供の大部分は今後もマイクロソフトAzure上でホスティングされる見通しです。つまり競合他社とも協力しつつ、マイクロソフトはOpenAIとの強固なパートナーシップと技術優位性を維持する戦略です。この提携再構築により、マイクロソフトのCopilot各種サービスにはOpenAIの最先端モデルを引き続き優先的かつ独占的に組み込めるため、同社のAIサービス競争力は今後も高い水準に保たれるでしょう。クラウド/AIインフラへの巨額投資と株主還元方針生成AI需要の急拡大に対応するため、マイクロソフトはクラウドインフラへの設備投資を大幅に増強しています。その規模は驚くべきものです。2025会計年度(2024年7月~2025年6月)に約800億ドル(約11兆円)をデータセンター増強に投じる計画であることを、ブラッド・スミス副会長が明らかにしました​。この800億ドルのうち半分以上は米国内の施設拡充に充てられる予定で、残りも欧州やアジアなど世界各地のクラウド拠点強化に投資されます​。実際、2024年10-12月期までにAI需要が既存設備の限界に達したため、同社は2025年初めまでに約20億ドルの追加投資を実行しデータセンター建設を加速しました​。この四半期の設備投資額は前年同期の2倍近い226億ドルに達し、市場予想(約209億ドル)を上回るペースで資本投入しています​。さらに今後も「需要に応じて四半期ごとに継続的な増強を行う」と最高財務責任者(CFO)のエイミー・フッド氏は述べており​、少なくとも2025年中は大規模投資が続く見通しです。巨額投資により短期的な減価償却負担やフリーキャッシュフローへの影響が懸念されるものの、経営陣は中長期的視点で利益率向上に繋がると強調します。実際、クラウドとAIのインフラは共通のアーキテクチャ上に構築されており、AI用途向けに先行投資しても規模の経済が働くことで長期的な収益性向上(オペレーティングレバレッジの確保)が可能としています​。フッドCFOは「クラウド需要とAI需要の両方を一体的に捉え、需要動向に応じて柔軟にコスト構造を調整する」方針を語っており​、目先の利益率に過度に囚われず将来の成長機会に備える姿勢です。また、社内ではコスト削減のためAIモデルの効率化(演算最適化による処理コスト低減)や自社開発AIチップの活用なども進めており、ナデラCEOは「最新モデルでコスト性能が10倍改善した」と述べるなど、投資効率向上にも取り組んでいます。膨大な投資額には驚きもありますが、これは生成AI時代の「設備競争」に勝つための先行投資と言え、マイクロソフトがクラウド/AI基盤で主導権を握り続けるための布石と捉えられます。一方、こうした成長投資を進めながらも株主還元は堅実に継続しています。マイクロソフトは潤沢なキャッシュフローを背景に、自社株買いと配当を組み合わせた安定的な株主還元を長年実施してきました。前回四半期も約97億ドルを配当と自社株買いの形で株主に還元しており​、投資と還元のバランスを保っています。2023年には四半期配当を約10%増額しており、増配は連続20年以上続く見込みです。自社株買いも大型の承認枠の下で継続中で、株価下落局面では機動的に買い増す姿勢を示しています。つまり、攻めの投資と守りの還元を両立する財務戦略が採られており、この点は長期投資家にとって安心材料となるでしょう。今回(2025年第1四半期)決算の注目ポイント最後に、4月下旬に発表予定の2025年第1四半期(1-3月期)決算で個人投資家が特に注目すべきポイントを整理します。今回は生成AIブームの中で迎える初めての年明け決算となり、AI需要がどこまで業績数値に表れているかが焦点です。以下の観点が重要でしょう。Azureクラウド成長率の行方: マイクロソフト全体の成長エンジンであるAzureの伸びが加速に転じるか、それともさらに減速するかは株価へのインパクトが大きいポイントです。前回発表時に示された今四半期のAzure売上ガイダンスは前年比+31~32%成長で、直前四半期(+31%)からほぼ横ばい~微減速の見通しでした​。市場予想(+33%前後)より控えめなため、実際の結果がこれを上回るかどうか注目されます。生成AI需要の追い風で上振れるようなら成長鈍化懸念が和らぎ株価押上げ材料となり得ます。一方、依然として一部大口顧客のクラウド支出抑制や販売パートナー経由案件の弱含みが続けば、Azure成長率が予想を下回り再度失望売りを誘うリスクもあります。特に今年後半にかけてはGoogleやAWSとのクラウド競争に加え、中国発の低コストAIモデル(例:DeepSeek)の登場で価格競争が激化する懸念も指摘されています​。Azureの成長サプライズとともに利益率(クラウド部門の営業利益率)がどう推移するかも見逃せません。AI用途拡大に伴う電力・設備コストでクラウドの利益率が低下していないか、経営陣がどの程度効率化できているかが、投資家の評価を左右するでしょう。Copilot(生成AI)の収益貢献度: Microsoft 365 CopilotやGitHub Copilotなど、追加料金が発生する新AIサービスがどの程度売上に寄与し始めているかもポイントです。現時点ではCopilot関連の売上規模はAzure全体に比べれば小さいですが、着実に積み上がりつつあります。すでにGitHub部門ではCopilotが収益成長の40%以上を占めるまでに拡大しており、Office製品群でも大企業を中心にCopilot有償ライセンスの採用が進んでいます。今回の決算発表やカンファレンスコールで、例えば「Microsoft 365 Copilotの契約社数や利用ユーザー数」「Copilot搭載製品のアップセル(上位プランへの移行)状況」などについて言及があるか注目しましょう。具体的な数値開示がなくとも、経営陣がCopilotの商業的成功に自信を示すかどうかは重要です。特に「ユーザー当たり単価(ARPU)の押し上げにつながっている」といったコメントが出れば、今後数年間の収益押上げ要因として好感される可能性があります。一方、「まだ収益貢献は限定的」「普及に時間を要する」といったトーンであれば、市場の期待先行に対する警戒感から短期的に株価の重荷となるかもしれません。投資家としては、Copilotが将来のサブスクリプション収入増に寄与する成長ストーリーの確度を見極めたいところです。PC需要とWindows業績の底打ち: マイクロソフトの業績のうちWindows関連売上(Windows OEMやSurfaceなど)は、世界PC市場の需要動向に左右されます。2022年から2023年前半にかけてPC出荷台数は減少が続きましたが、直近では企業のハード更新や在庫調整の一巡で市場が回復傾向にあります。実際、2024年Q4(10-12月)の世界PC出荷は前年比+1.8%、続く2025年Q1(1-3月)は+4.8%と、約2年ぶりの増加に転じました。この追い風を受け、前回は横ばいだったWindows OEM売上も今四半期は前年同期比でプラスに戻る可能性があります。CFOも「PC市場は予想通り持ち直している」とコメントしており、今回の決算ではモアパーソナルコンピューティング部門全体での増収が期待されます。特にWindows 10のサポート期限が2025年に迫る中、企業のWindows 11搭載PCへの更新需要が本格化すれば、Windows Commercial(法人向けWindows)の収益も伸びるでしょう。ただし、依然として消費者向け需要の弱さや、MacやChromeOSとの競合、部品供給問題など不透明要因も残るため、大幅成長とまではいかない見通しです。いずれにせよPC事業が最悪期を脱したかどうかは、マイクロソフトの安定収益基盤を占う上で注目されます。ガイダンス修正の有無: 決算発表時に示される次四半期以降の業績見通し(ガイダンス)も株価に直結します。マイクロソフトは通常、四半期ごとに売上高などの見通しレンジを提示しますが、今回そのレンジが上方修正されるかどうかが焦点です。もし経営陣が「予想以上に需要が強い」として将来ガイダンスを引き上げれば、市場は業績加速のシグナルと受け取り株価上昇要因となるでしょう。特にAzureやAI関連収入の強気見通しが示されれば評価は高まります。反対に、慎重な見通しや弱気なトーンが出れば、短期的に失望売りを招くリスクがあります。前回はAzure成長見通しがやや保守的だったため株価下落につながりました。今回はその反省も踏まえ、どの程度楽観度合いを調整してくるか注目です。また、巨額設備投資について「当面は高水準が続く」旨の発言が出た場合も、短期利益圧迫要因と受け止められる可能性があります。一方で、「投資ピークアウトの見通し」や「AIコストの効率化進展」など前向き材料が語られれば、先行投資への不安が和らぐでしょう。総じて、経営陣の口ぶりや示唆するシナリオを注意深く読み取ることが肝要です。以上、マイクロソフトの最新決算に関する注目点を整理しました。前回までの実績を見ると、生成AIブームを追い風に2桁増収増益を維持しつつあり、財務的にも体力十分であることが分かります。一方で、膨大なAI関連投資や競争激化など克服すべき課題も見えています。株価は2023年にAI期待で大きく上昇した後、2025年初には調整が入りましたが、依然として長期成長ストーリーに対する信頼は揺らいでいません。個人投資家としては、今回の決算で示される数字やコメントを材料に、マイクロソフトが描く「AI時代の持続的成長シナリオ」の現実味を評価すると良いでしょう。短期的なアップダウンに一喜一憂するより、クラウド×AIでの競争優位と安定した収益基盤の両面を兼ね備えた同社の中長期的なポテンシャルに注目して判断することをおすすめします。

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SCHDはパフォーマンスが悪い?過去1年の高配当ETFパフォーマンス比較と要因分析

SCHDはパフォーマンスが悪い?過去1年の高配当ETFパフォーマンス比較と要因分析

高配当株ETFは、米国株式市場で安定した配当収入を得つつ資産成長も狙える人気の投資手段です。中でも SPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)、VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF)、HDV(iShares Core High Dividend ETF)、SCHD(Schwab U.S. Dividend Equity ETF)は、多くの個人投資家に利用されています。これら4つのETFはそれぞれ異なる指数や運用方針に基づき高配当株に投資しています。本記事では、2024年4月16日から2025年4月15日までの1年間のトータルリターン(株価変動と配当再投資を合わせた総合的なリターン)を比較し、特にSCHDのリターンが他より低調だった理由を分析します。前提:日本におけるSCHDSCHDが他の3つのETFと大きく異なるのは、日本で海外ETFとしての取引ができないところにあります(運用会社のSchwabが登録をしていないため)。なので、これまで日本の個人投資家は投資ができていなかったのですが、2024年に大手ネット証券がSCHDに投資する日本の投資信託を設定したため、一気に投資が加速していきました。弊社ブルーモ証券も、実はこれに先立ち「安定高配当株式」という公式ポートフォリオをアプリ内で使えるようにしており、そちらはSCHDの銘柄構成で投資ができるようになっています。米国ではSCHD自体はかなり浸透している高配当株ETFで、最大手のVYMに比べるとやや運用残高は低いものの、HDVやSPYDよりもかなり大きな残高を持っています。リターン比較まず、4つのETFの直近1年間(2024年4月16日~2025年4月15日)のトータルリターンを見てみましょう。トータルリターンとは、値上がり益(キャピタルゲイン)に加えて受け取った配当金を再投資した場合のリターンを指します。以下のグラフとデータは、その期間における各ETFのトータルリターン(%)を示しています。図:4つの高配当ETFの2024年4月16日〜2025年4月15日のトータルリターン比較(配当込み)各ETFの1年間のリターンは、SPYDが+11.32%と最も高く、HDVが+9.13%、VYMが+8.70%と続き、SCHDは+3.67%に留まりました。グラフからも分かるように、SCHDのリターンが他の3つより明らかに低い状況です。上記期間中、SPYDは約+11.3%、VYMは約+8.7%、HDVは約+9.1%、そしてSCHDは約+3.7%のトータルリターンを記録しています。つまり、この1年間ではSPYDが最も高いリターンを上げ、一方でSCHDの成績が最も低調でした。次章では、なぜSCHDが他の高配当ETFに比べて伸び悩んだのか、その背景を保有銘柄やセクター配分、金利環境、企業の業績(ファンダメンタルズ)といった観点から解説します。SCHDのパフォーマンスが低迷した理由同じ「高配当ETF」といっても、ファンドごとに組み入れている銘柄や投資戦略が異なるため、リターンにも差が出ます。特にSCHDは他のETFと比べてセクター比率(どの業種にどれだけ投資しているか)や銘柄選定の特徴が異なり、それがこの期間の低調なパフォーマンスにつながりました。ここでは主な要因を整理します。保有銘柄の違い:SCHDは質の高い配当株100銘柄に分散投資しますが、その上位構成銘柄を見ると、通信や医薬品など近年株価が伸び悩んだ企業が目立ちます。例えば2025年4月時点でSCHDの組入上位にはコノコフィリップス(COP)やベライゾン(VZ)、コカ・コーラ(KO)などが含まれ、特にベライゾンは資産全体の約4.3%を占める第2位の保有銘柄でした。ベライゾンやAT&Tといった通信株は近年高配当にもかかわらず株価低迷が続いており、SCHDの足を引っ張ったと考えられます。一方、他のETFではVYMはブロードコム(AVGO)を約5%組み入れるなど情報技術セクターの有望株も保有しており、これが株価上昇に貢献しました(ブロードコムはAI需要などを背景に株価が大きく伸びた銘柄です)。またHDVはエクソンモービル(XOM)を約7.7%、シェブロン(CVX)を約4.8%組み入れており、エネルギー株の上昇恩恵を受けています。SCHDは後述するようにエネルギー比率自体は低くありませんが、特定の不振銘柄(例えば通信や一部医薬品株)の比重が高かった点で不利でした。セクター配分(業種バランス)の影響:各ETFが投資するセクターの比率の違いもパフォーマンス差を生みました。SCHDの特徴は、情報技術セクターの比率がわずか約10%と低く、代わりに生活必需品(消費財)やエネルギー、ヘルスケアといった伝統的な高配当セクターに多く投資していることです。さらに、SCHDは公益事業(電力など)セクターをほぼ含まず、不動産セクターもゼロでした。これはSCHDのベンチマークがREIT(不動産投資信託)やユーティリティ(公益事業)を含まない構成であり、また財務健全性などの基準で選別しているためです。その結果、2024年後半に公益事業や不動産セクターが金利ピークアウト観測でやや持ち直した際にも、SCHDはその恩恵を受けられませんでした。一方、SPYDは公益事業セクターの比率が高く(構成上位にエクセロンやデューク・エナジーなど電力会社が名を連ねています)、金利低下期待の追い風を受けてリターンが改善しました。また金融セクターについても、SCHDは組入比率が1桁台(約8%)と低く、大型銀行株の上昇の恩恵が小さかった点が挙げられます。例えば2024年は大手銀行JPモルガンの株価が銀行危機後に持ち直しましたが、SCHDはJPモルガンを含まず、代わりに地方銀行のフィフスサード・バンコープなど比重の小さい金融株に限られていました。対照的にVYMは金融セクター比率が高く、JPモルガンなども組み入れていたため(VYMのJPモルガン比率約4%)、相対的に恩恵を受けています。このように「どのセクターにどれだけ投資していたか」の違いが、リターンの差に直結しました。金利環境の影響:2024年当時の米国は高金利が長引く局面で、これは高配当株全般に逆風となっていました。高配当株は債券の代替ともみなされるため、金利(水準)が上がると相対的な魅力が薄れやすい側面があります。特にSCHDが多く投資する生活必需品(食品・日用品)セクターや通信セクターは、防御的・成熟企業が多く配当利回りも高めですが、まさに金利上昇局面で敬遠されがちな「債券的」銘柄です。実際、2023年から2024年にかけてはAIブームなども相まって投資家の関心が成長株に集まり、ディフェンシブな高配当株は「割安だけど地味」として売られる傾向が続きました。例えばコカ・コーラやペプシコといった生活必需品大手は堅調な業績ながら株価は伸び悩みました。同様に、通信大手のAT&Tやベライゾンは高配当ながら業績停滞と巨額債務も抱え、金利高騰で債券代替の魅力が薄れたこともあり株価低迷が長引きました。これら金利環境によるセクター間の風向きは、該当分野に比重の大きいSCHDにとって逆風となりました。企業のファンダメンタルズ(基礎的収益力)の要因:SCHDは「10年以上の連続増配実績」「高い株主資本利益率(ROE)」など厳格な選定基準を持ち、配当の持続力や企業の財務健全性を重視しています。そのため、一時的に配当利回りが非常に高い銘柄(例:業績悪化で株価暴落→見かけ上利回り急上昇したような銘柄)は組み入れず、安定成長する高配当銘柄が中心です。このアプローチは長期では有効とされていますが、短期的な市場物色のトレンドとは噛み合わない場合があります。先述のように2024年前半〜中盤はAI関連などごく一部の大型ハイテク株に資金が集中し、多くの高配当銘柄は企業業績が堅調でも株価が冴えない状況でした。SCHDが多く保有する製薬や通信、生活必需品企業も、増収増益とはいかず横ばいまたは減益傾向の企業が散見され、株価成長余力が限られていました。例えば医薬品大手のブリストル・マイヤーズやメルクは特許切れ懸念などから業績期待が低下し、株価も軟調でした。一方でSPYDは利回り重視で組入れた銘柄が多く配当利回り4~5%台と高水準だったため、仮に株価が停滞しても配当分で年4%以上のリターンを確保できました。結果として、この1年間は株価上昇が乏しい中でも「配当分厚み」の差がリターン差に寄与し、利回りの高いSPYDが有利となった面もあります。要するに、SCHDは堅実な増配銘柄中心ゆえ配当利回り水準ではやや見劣りし(執筆時点でSCHDの分配利回りは約3.7%、SPYDは約4.4%程度)、株価上昇も限定的だったためトータルリターンが低く出る結果となりました。以上のように、SCHDの低調な一年間の背景には、組入銘柄・セクター構成と市場環境のミスマッチがあったと言えます。他のETFと比べて情報技術株などの恩恵を受けにくいポートフォリオだったこと、防御色の強い銘柄群が金利上昇局面で市場の関心を集めづらかったことが影響しました。もっと平易に言えば、「堅実だが地味な銘柄」に多く投資するSCHDは、この年のマーケットではやや日陰の存在になってしまったのです。まとめ今回比較した4つの高配当ETFのうち、2024年4月~2025年4月の1年間ではSPYDが最も高いリターンを上げ、SCHDが最も低かったことが分かりました。SCHDの低迷は一時的なものであり、運用手法そのものが劣っているわけではありません。実際、SCHDは長期的な増配率や安定性で高い評価を得ており、過去10年のトータルリターンではVYMを上回る実績もあります(設定来の年率リターンではSCHDは約12.1%、VYMは約10.3%といったデータもあります)。したがって、「直近1年の結果だけで優劣を判断しないこと」が重要です。高配当ETFそれぞれに長所と短所、得意な相場局面があります。例えば、SPYDやHDVは景気敏感株やエネルギー株が多いため景気回復局面に強い半面、景気後退時や金融危機時には組入銘柄の減配リスクが相対的に高い可能性があります。一方、SCHDは財務健全性や連続増配実績に優れた銘柄で固められているため不況期でも減配が少なく、長期の安定運用に向いているという魅力があります。VYMは銘柄数が多く幅広い大型株に投資しており、市場全体に近い分散効果を持ちながらS&P500よりやや高い利回りを狙えるバランス型と言えます。投資家としては、ご自身の目標や市場見通しに応じて、これらETFを組み合わせて活用することも検討すると良いでしょう。例えば、高利回りで短期リターンを狙う部分にはSPYD、長期の安定成長にはSCHD、といった具合にポートフォリオ内で役割分担させる戦略も考えられます。今回の比較期間ではSCHDが低迷しましたが、将来金利が下がりディフェンシブ株が見直される局面になれば、再び相対的に優位に立つ可能性も十分あります。高配当ETFは長所を理解した上で分散投資し、長期的な視点で保有することが肝心と言えるでしょう。

【米国株見通し】景気後退懸念で調整売り、FANG+指数の今後と個人投資家が考慮すべき事は?

【米国株見通し】景気後退懸念で調整売り、FANG+指数の今後と個人投資家が考慮すべき事は?

本記事では、FANG+指数の下落要因について概説し、個人投資家が考慮すべき事項や今後の見通しについて紹介します。FANG+指数の構成銘柄の入れ替え基準と過去のパフォーマンスについてはこちらの記事で解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。※FANG(ファング)は、Facebook・Amazon・Netflix・Googleの4銘柄の頭文字を意味し、これらの銘柄にアップル、マイクロソフトを含む6銘柄を加えた大型テクノロジー10銘柄に10%ずつ等配分投資をする株価指数がFANG+指数です。米国株調整で、FANG+は大幅下落2025年、ドナルド・トランプ大統領の関税政策やその他の政策の不透明感による貿易戦争や景気後退への懸念から、米国株は2023年以来初の調整局面に入りました。S&P 500指数は2月19日の高値から10%以上下落し、ハイテク銘柄で構成されるFANG+指数は、投資家がリスク回避志向を強めていることから市場全体よりも大きく下落しています。株価の一時的な調整はよくあることLPL Researchによると、1928年以降に米国株は10%以上の調整を1.1年ごと、15%以上の大幅な調整を2年ごとに迎えており、調整相場でのピークから底までの平均下落率は13.8%となっています。一方、1950年以降においてS&P 500指数は調整局面に入ってから3ヶ月後には平均6.5%、6ヶ月後には12%のリターンを記録。中でも、経済政策の不透明感が株安を引き起こした事例では、短期的に市場が不安定化したものの、長期的には米国株の買いの好機となりました。ただし、大きな買いに積極的になるべきというわけではありません。一般的に、調整局面での底打ちは一度限りの出来事ではなく、プロセスとして生じます。ヤルデニ・リサーチによると、平均的な調整期間は115日であり、株価が持続的に上昇するには時間がかかるので、投資家は時間をかけて少しずつ株を買い戻すことが賢明と言えます。ハイテク株の見通しはマクロ経済状況に依存また、相場に対する投資家心理を反映する指数として知られるボラティリティ指数は依然として20を超え、政策や経済成長に対する市場参加者の強い警戒感が続いていることを示しています。FANG+の見通しは不透明が強く、政策金利の引き下げが確実視されればハイテク株は反発する可能性がありますが、中国、メキシコ、カナダからの輸入品に対する関税がインフレ懸念の長期化を招けば、ハイテク企業の利益率に重しとなる可能性があります。さらに、景気後退が起こった場合は、消費者や企業のテクノロジーへの支出が減り、株価にさらなる圧力がかかることが想定されます。FANG+への投資を検討する際には、リスクの許容度と投資期間を考慮する必要があります。マクロ経済の見通しが明確になるまでハイテク株は低迷する可能性がありますが、経済状況が改善すれば大幅な上昇も期待できます。一方、インフレと景気後退への懸念が高まる状況では、特定のセクターに特化するのではなく、ボラティリティの低い堅実な資産へ投資をし、より分散されたポートフォリオをを検討するのも手です。マーケットの底打ちはいつか市場は経済成長の鈍化をある程度織り込んでいるため、今後数か月で景気後退リスクがさらに高まるかどうかが当面の注目点となります。市場の底打ちには、1) 実体経済が堅調であり、景気後退リスクが限定的であることを示唆するデータ(経済指標)、2) FR​​Bの金融緩和シグナル、3) 政権のスタンス変化等が観測されることが必要と考えられます。ただし、経済指標が悪化した場合には市場の懸念が裏付けられますが、堅調な指標が維持されたとしても、景気後退を回避できると市場が十分に確信するまでに時間がかかる可能性があります。政策による下振れリスクが最も懸念されていることを考えると、政策スタンスの変化や政権が経済支援のために政策を調整する用意があるといったメッセージを発することが、明確な回復への道となると想定されます。

【米国株】下落相場・調整局面こそ、NISA投資に最適な理由

【米国株】下落相場・調整局面こそ、NISA投資に最適な理由

相場の下落や調整局面では投資を続けることへ不安を感じるものですが、投資銘柄の長期的な成長が期待できる場合、NISAで投資をする好機とも考えられます。本記事では、下落相場・調整局面がNISA投資に最適な理由を解説のうえ、米国株市場の状況を見ていきます。調整局面での投資は、NISAを有効活用しやすい1. 同じ投資額でより多くの非課税資産を形成NISA制度では投資枠の上限が決まっているため、 同じ投資額で多くの口数(または株数)を購入可能な値下がり時に投資を行うと、より多くの資産を積み上げることができます。2. 優良銘柄を割安で取得可能(バーゲンセールのような状態)相場下落時は、多くの銘柄が一時的に本来の価値より過小評価されることが起こります。投資銘柄の本質的な成長ストーリーが大きく変わらない場合、相場回復後のリターンを最大限に享受できます。3. 配当利回りが上昇の可能性調整局面であっても、多くの優良企業や投資信託は配当金を維持する傾向にあり、投資元本に対する配当利回りは上昇します。NISA口座での取引は、売買益だけでなく配当金や分配金も非課税のため、より多くのインカムゲインが期待できます。M7を中心に割高改善がすすむ米国株市場2025年、多くの投資家は昨年につづき米国株市場が堅調に推移すると予想していました。しかし、貿易戦争や景気後退への懸念、AI相場崩壊の兆しが、米国株下落の波を引き起こしています。現在、S&P500指数、ナスダック100指数、ダウ平均株価は、支持線として注視される200日移動平均線を下回り、各指数とも昨年11月の選挙当日の水準を下回っています。株価の割安度を判断する際に用いられる予想PER(株価収益率)に着目すると、2025年1月末から3月10日にかけて、S&P500指数の予想PERは22.1倍から20.4倍と約8%調整しています。調整は割高感のあった大型テクノロジー企業7社「マグニフィセント・セブン(M7:アップル、マイクロソフト、エヌビディア、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、テスラ)」を中心とし、M7は同期間に予想PERは30.9倍から25.2倍と約18%調整しています。一方、エネルギー・公益事業株をはじめとするバリュー株には新たな資金が流入しています。LSEGリッパーによると、米国のバリュー株の予想PERは現在17.6倍で、米国のバリュー型ETFは今月18億ドルの流入を記録しています。重要なのは、政策金利動向と企業業績2025年は政治的な不安定さから株価の乱高下が想定され、長期的な視点で投資を行い、短期的な変動に耐えることが求められます。政策金利動向に目を向けると、2月の米消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の軟調であったことから、米連邦準備理事会(FRB)は6月から利下げを再開し、年内に3回の利下げを実施するとの見方が高まっています。一方、現時点では米国株のEPS下方修正は限定的となっており、投資家はマーケットの底打ちがいつかを探ろうとしています。今後の相場の行方については政策動向のほか、短期的には3月18-19日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で発表される経済見通しやパウエル議長の会見が鍵となります。

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【新NISA】一括投資と毎月積立どちらがいい?メリットとデメリットを解説

【新NISA】一括投資と毎月積立どちらがいい?メリットとデメリットを解説

本記事では、一括投資と毎月積立のメリットとデメリットを紹介し、新NISAでの実践方法を解説します。新NISA制度(少額投資非課税制度)の概要については、以下の解説記事をご覧ください。一括投資と毎月積立のメリットとデメリット一括投資は早期投資でリターンを最大化特徴投資資金を一度に全額投入運用成果が短期的には投資タイミングに依存メリット市場上昇時の利益最大化: 相場上昇する局面では高いリターンを得やすいデメリットタイミングリスク: 投資時期が市場のピーク付近の場合、大きな損失を被る可能性がある資金拘束: 一度に大きな資金を投資するため、流動性が低下一括投資は、リスクを許容しながら、将来の市場上昇を見越して積極的にリターンを追求したいと考える投資家に適しています。世界最大級の資産運用会社Vanguardによると、1976年から2022年にかけて一括投資は積立投資(ドルコスト平均法)と比べて約68%の確率で高い年間リターンを達成しています。これは市場が上昇傾向にある場合、より早く投資資金を市場に投入することでリターンを最大化できるためです。また、ポートフォリオに占める株式の比率が高いほど一括投資の優位性は大きくなります。毎月積立は投資のリスクを分散特徴一定額を定期的に投資投資タイミングが分散され、購入単価が平準化メリットリスク分散: 株価に関係なく投資するため、価格変動リスクを軽減デメリット上昇相場でのリターン低下: 一括投資と比べて、市場が継続的に上昇している場合はリターンが低くなる資産形成に時間がかかる: 投資額を積み上げるのに長期間を要する一方で積立投資は、投資タイミングを分割することで短期間の市場変動リスクを軽減し、特に市場が急落した場合に、一括投資よりもリターンが良いことがあります。そのため、市場の変動に対して冷静でいたい人や、短期損失やリスクを抑えつつ長期的に安定した資産形成を目指す投資家に向いています。新NISAでの一括投資と毎月積立の実践方法年間投資枠は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」で計360万円新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります。つみたて投資枠は、金融庁の基準を満たした投資信託について購入できる枠で、年間投資枠は「120万円」までです。一方、成長投資枠は、投資信託のほか個別株等も購入できる枠で、年間投資枠は「240万円」までです。新NISAで一括投資できるのは、成長投資枠のみつみたて投資枠は積立での投資を前提とされており、原則毎月10万円が上限となっています。そのため、年間投資枠を一括投資することはできません。成長投資枠については、一括投資と積立投資どちらも利用可能なため、年間投資枠の240万円までは一括投資できます。毎月積立する場合は月額30万円まで毎月積立を実践したい方は、つみたて投資枠の10万円と成長投資枠の20万円を合計した30万円までは新NISAで毎月積立投資が可能です(ボーナス月を設定した場合は、年間投資枠の範囲内で追加買付が可能)。ブルーモ証券では、毎月のつみたて投資を設定すると、自動で月々の投資額をつみたて枠と成長投資枠の1:2の比率に分けて買付を行うため、意識せずともNISA枠が効率的に埋まるように投資ができます。ブルーモ証券のかんたんNISAの詳細についてご関心のある方は、以下をご覧ください。

出金はいつしたら良い?長期資産形成を成功させるためのコツ

出金はいつしたら良い?長期資産形成を成功させるためのコツ

資産運用で利益が出ると、「利益を確保して出金したい」「損失が出る前に売ってしまいたい」と感じる方も多いかもしれません。しかし、長期的に資産を増やす観点から考えると、短期的な利益確定には慎重な判断が必要です。以下に、出金を検討するときに思い出したい、資産運用を成功させるための3つの重要なポイントを詳しく説明します。1. 利益確定によるデメリットを理解する資産がプラスに転じると、売却してその利益を確定したくなるものですが、長期的に資産を成長させるためには、短期の利益確定にはいくつかのリスクとデメリットがあります。税金が発生する資産を売却して利益が出た場合、約20%の税金が利益から差し引かれます。その結果、再投資する際の元本が減り、資産を成長させるための複利効果も小さくなります。長期的な運用を目指すのであれば、売却せずに資産を保有し続けることで、税金の支払いを先送りし、資産が複利で成長する恩恵を最大限に受けることができます。タイミングの見極めが難しい短期的な利益確定では、相場の上昇・下落を予測して適切なタイミングを見極める必要があり、これはプロであっても容易ではありません。売却した後に相場がさらに上昇することも多く、保有し続けていれば得られたはずのリターンを逃してしまう可能性が高くなります。こうした理由から、長期的な視点で持ち続けるほうが、安定した成長を期待できます。複利効果を失う複利の力は、長期的に資産運用を続けることで最大限に発揮されます。利益確定によって出金を繰り返すと、その都度複利効果が断たれ、最終的なリターンが小さくなりがちです。資産を保有し続け、再投資することで「利益が利益を生む」サイクルを活かすことができ、長期的に安定した資産成長が期待できます。たとえば、10年間5%の複利で運用した場合、元本は1.63倍になりますが、毎年の利益確定があるとこの成長は抑えられます。出金の判断は慎重に行い、複利の力が長期的に働くことで資産を着実に増やしていくことを意識しましょう。2. 出金は「本当に必要なときに、必要な分だけ」に留める資産運用の基本方針として、出金のタイミングを「資金が本当に必要なとき」に限定するのが賢明です。急な出費や緊急の資金が必要な場合には、必要な額だけを引き出し、残りの資産はそのまま運用を続けることが、資産成長を最大化する上で大切です。出金をこのように「必要最小限」に留めることで、資産が運用される時間を長く保ち、最終的なリターンを大きくすることができます。3. 短期の相場変動を気にしすぎない資産運用をしていると、短期的な相場変動によって一喜一憂しがちですが、こうした変動に過剰に反応することは、長期的な成長の妨げになりがちです。人間は、「利益があるうちに確保したい」「損失をできるだけ避けたい」という心理が強く働くため、少しでも相場が上昇すると利益確定したくなり、逆に下落すると早めに売却したくなる傾向にあります。しかし、こうした感情的な反応が続くと、資産運用の本来の目標である「長期的な資産成長」に悪影響を及ぼす可能性が高まります。たとえば、過去30年間で米国株(S&P500指数)は平均年率8%で成長してきましたが、年ごとのリターンはプラスとマイナスの変動がありました。長期的に見れば、リーマンショックやコロナショックのような大きな下落も、運用を続けることで回復し、その後の成長を享受することができたケースが多くあります。まとめ:出金は生活の必要ベースにして、長期目線の運用を続ける資産運用で利益が出たときに出金したくなる気持ちは自然なものですが、長期的な資産成長を目指すなら、短期的な利益確定は慎重に検討すべきです。「本当に必要なときに必要な分だけ出金し、それ以外は淡々と運用を続ける」ことで、資産が複利の恩恵を最大限に活かして成長しやすくなります。短期の変動に囚われず、計画に沿った運用を続けることで、最終的な資産成長が期待できるでしょう。

移管してもなくならない?意外と知られていない「NISA口座移管」の真実

移管してもなくならない?意外と知られていない「NISA口座移管」の真実

本記事では、意外と知られていない「NISA口座移管」の仕組みを徹底解説していきたいと思います。NISA口座移管のポイントは、①NISA口座はニーズに合わせて毎年異なる金融機関で開設できる、②一度NISA口座で投資した資産は口座移管してもずっと非課税(実は「移管」してもNISA口座はなくならない)、③政府が金融機関横断でNISA残高を把握するので複数開設しても安心、という3点になります。NISA口座移管のポイントNISA口座はニーズに合わせて毎年異なる金融機関で開設できる「NISA口座は1人1口座」というイメージが強いかも知れませんが、実は「1年間でNISA口座で取引できる金融機関は1つだけ」が制度の正しい説明になります。「NISA口座は1年に1金融機関」なので、毎年NISA口座を移管して、異なる金融機関でNISA口座をいくつも開いていくことも制度上は可能です。NISA口座を利用する金融機関を移管(変更)する理由としては、①「A証券会社で口座開設したが何を買って良いか分からなかったので、もっと分かりやすいB証券会社に移管する」②「C証券会社でおまかせ運用にNISAを使っていたが、個別株も取引したくなったのでD証券会社に移管する」③「E証券会社ではいま投資したい商品がないので、F証券会社に移管する」といったものが考えられます。一度NISA口座で投資した資産は口座移管してもずっと非課税NISA口座は自由に移管できるとして、次に出てくる疑問は「NISA口座を移管した場合、既に投資した資産はどうなるのか?」だと思います。結論から言うと、NISA口座で一度投資した資産は生涯ずっと非課税です(2024年からの新NISAの場合)。つまり、投資した資産から支払われる配当も非課税ですし、売却した際に出てくる利益も非課税です。NISA口座を移管するためには、現在投資しているNISA口座を「廃止」する必要がありますが、これには「勘定廃止」と「口座廃止」の2パターンがあります。「勘定廃止」はNISA口座と残高を残したまま、現在利用中の金融機関でのNISA投資をやめる(=別の金融機関に移管する)もので、この場合だとNISAで投資した資産は引き続き非課税のままとなります。「口座廃止」はNISA口座そのものを廃止するので、現在利用中の金融機関にNISA口座と資産は残りません。「口座廃止」をしたい場合、基本的にはご自身でNISA口座にある資産を売却いただく必要があります。上記から、NISA口座移管の際に「勘定廃止」を選べば、既にNISA口座で投資した資産は非課税のまま以前の金融機関で保有できます。政府が金融機関横断でNISA残高を把握するので複数開設しても安心NISA口座は毎年移管できて、移管することで既に投資した分の節税メリットが失われることがないことまでは分かった上で気になるのが、色々な金融機関でNISA口座を作って投資して、それを忘れてしまうことがないかという点かと思います。前提として、NISA制度の重複利用を防止するため、政府は個人をマイナンバーで紐付けて非課税適用を把握しているので、税務署(国税庁)には誰がどこでNISA口座を開設しているかという情報があります(なので、仮にどこでNISA口座を開いたか忘れても税務署に聞けば教えてくれます)。さらに、新NISA制度では個人の生涯を通じた上限となる買付残高が存在するため、個人の保有残高を政府がクラウドで把握・管理することになります。NISAの生涯残高が上限に達するのは早くても2028年末のため、まだ政府による残高管理は始まっていませんが、2026年を目処に政府のクラウドによる把握・管理が始まるとされています。なので、仮に複数の金融機関でNISA口座を開設・投資して、過去にどこで投資したか忘れてしまった場合でも、政府のクラウドで情報は把握できるので、資産にアクセスできなくなることはないようになっています。NISA口座移管の方法具体的にどのようにしてNISA口座を移管できるかを以下解説します。現在NISA口座を開いている金融機関で「廃止通知書」をもらうまず、現在NISA口座を開いている金融機関にNISA口座を廃止したい旨を伝えて、「廃止通知書」をもらいます。この際、上述したように、既にNISA口座で投資している資産がある場合、資産を維持しつつ「勘定廃止通知書」を貰い、NISA口座を開設したが投資しないでいた場合は「口座廃止通知書」を貰うのがお勧めです。「廃止通知書」は郵送で送られることが多いので、ご自宅で受け取る必要があります。移管する先の金融機関に「廃止通知書」を提出する次に、NISA口座を移管して新たに開設したい金融機関でNISA口座開設の申込みをして、先ほどの「廃止通知書」を提出します。「廃止通知書」が提出できたら、税務署の審査を待って(2週間ほどかかります)、NISA口座の開設が完了します。「廃止通知書」の提出方法は、制度改正があり、2024年からオンラインでも可能になっています。しかし、一部の金融機関では郵送手続きを求められることがあるので、その場合はご自身で送付いただく必要があります。ブルーモ証券では、スマホで「廃止通知書」の写真を撮り、アップロードするだけで提出が完了するようになっています。移管する場合は前年中に作業を終えるように注意「NISA口座は1年に1金融機関」なので、仮にNISA口座を移管しようと思っても、既に元の金融機関でNISA口座を利用していると、その年の間はNISA口座を移管できません。例えば、NISA口座で積立投資を設定していると、1月に元の金融機関のNISA口座にて投資がされた時点でその年はNISA口座が移管できないことになります。NISA制度は、口座移管をスムーズにするため、NISA口座の移管手続きを前年の10月から開始できるようにしています。つまり、移管したい年の1月から積立投資が行われてNISA口座を移管できなくならないように、前年のうちから移管手続きができます。NISA口座を移管される際は、自由に手続きができる「10月〜12月」をひとつのタイミングとして検討されることをお勧めします。ブルーモ証券でも「かんたんNISA」機能を提供ブルーモ証券では、簡単にNISA口座を活用して投資できる「かんたんNISA」機能を提供しており、著名投資家のポートフォリオをコピーしたり、自分の好きな銘柄で組んだポートフォリオで、NISA制度をフル活用することができます。ご関心ある方は、是非以下サイトをご覧ください。

Glossary

用語集

知っておくと便利な、金融や投資に関連する専門用語を解説しています。 分からない用語があった際に辞書のように使えます。