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「貯蓄から投資へ」「老後2000万円問題」という話を聞くけど、「投資は難しそう」「なんとなく怖い」「なにから学べばいいか分からない」といった人向けに、様々なコンテンツを用意しています。ブルーモと一緒に、投資や金融について学んでいきましょう。
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【米国株】好決算の裏で調整局面懸念、市場が注視する3つのリスク
米国株式市場の主要3指数は、10月28日に3営業日連続で終値ベースの過去最高値を更新し、ナスダック総合指数は年初から20%超の上昇、S&P500 指数も約15%の上昇率を示しました。しかしその後、11月4日には株価が急落。ナスダック総合指数とS&P 500指数はいずれも数週間ぶりの大幅下落となりました。足元で株価が高水準にあったことを背景に、「調整局面入り」ではないかとの見方も浮上し、投資家は警戒感と楽観の間で相場に臨んでいます。本記事では、現在米国市場で懸念されている主なリスク要因を整理します。好決算もリスク警戒が市場心理の重しに2025年第3四半期の決算発表では、多くの企業が市場予想を上回る好業績を示しました。LSEGのデータによれば、既に決算を発表したS&P 500構成企業315社のうち、83.2%がアナリスト予想を上回っており、過去平均の約67%を大きく上回っています。さらに、S&P 500指数の第3四半期の年間利益成長率は前年同期比で約14%と見込まれ、1か月前の見通しを約5ポイント上回る勢いです。しかし、好決算を背景にしつつも、連邦準備制度理事会(FRB)政策の行方、信用市場の動揺、政府閉鎖による経済への悪影響などが米国株市場の下押し要因として警戒されています。FRBの利下げ観測後退10月末のFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利が0.25%引き下げられ、9月に続く2会合連続の利下げとなりました。しかし、パウエル議長は記者会見で「12月会合での利下げは既定路線ではない」と述べ、追加利下げに慎重な姿勢を示したことで、市場が織り込んでいた年内の追加利下げ期待は後退しました。また、政府閉鎖による統計データの不足については「濃霧の中で運転するような状況では慎重にならざるを得ない」との例えを用い、データ欠如下での政策運営に慎重姿勢を示しています。これら一連の発言を受け、景気敏感セクター中心に売りが優勢となりました。12月利下げの確率はFOMC前の90%台から、11月6日時点のFedWatchでは約64.5%まで低下しています。高債務企業への信用リスク浮上一方で、10月末に市場ではオラクル社への信用不安が浮上しました。同社はAIインフラの拡充を目的に巨額の投資を行っており、借入や社債発行による資金調達を増加させています。モルガン・スタンレーの試算によると、オラクルの純負債残高が現在の約1,000億ドルから2028年度には約2,900億ドル(約44兆900億円)へとおよそ3倍に膨らむ見通しです。高い債務レバレッジが将来の業績維持を圧迫しかねないとの懸念は度々指摘されており、同社の債務不履行に備える5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の価格は10月時点で2023年10月以来の高水準に達し、投資家のリスク回避の姿勢が強まっています。AI需要を追い風に株価上昇を続けてきた米国市場ですが、こうした動きは高成長分野であっても過剰な債務拡大が企業の持続性を揺るがす可能性を示唆し、IT・ハイテク銘柄を中心に形成されてきた上昇相場に対して、投資家が慎重な見方を強める一因となりました。政府機関閉鎖の長期化加えて、米国では2025年度予算を巡る与野党対立により、10月1日から連邦政府機関の一部が閉鎖され、11月5日に過去最長を更新しました。上院共和党の指導部からは「週内に決着する可能性がある」との楽観的な発言も出ていますが、政府閉鎖の長期化による経済活動への悪影響は避けられません。議会予算局(CBO)は、2018年から2019年のトランプ大統領の国境の壁建設費用をめぐる対立での34日間の政府閉鎖によって国内総生産(GDP)が約110億ドル減少したと試算しています。もっとも、過去の事例では閉鎖解消後に経済が比較的速やかに正常化したケースも多く、市場も長期化リスクをある程度織り込んでいたため、現時点では株価への影響は限定的にとどまっています。市場調整は健全なプロセス11月4日に香港で開催されたGlobal Financial Leaders' Investment Summitにおいて、モルガン・スタンレーの最高経営責任者(CEO)であるテッド・ピック氏は、株式相場における10〜15%程度の調整は、マクロ経済への衝撃によるものではない限り「歓迎すべきもの」との見方を示しました。また、ゴールドマン・サックスCEOのデビッド・ソロモン氏は、今後12~24ヶ月の間に株式市場が10~20%下落する可能性はあり得るとしたものの、「うまくいかない可能性はたくさんあるが、現時点では短期的な結果の分布から見て、差し迫った危機感はない」との認識を示しています。現時点の米国株市場は、企業の好決算というポジティブな基盤を持ちながらも、利下げ観測の後退や高債務企業への信用リスク、政府機関閉鎖の長期化といった複数の不安要因を抱えています。こうした環境下では、一時的な調整が生じる可能性も念頭に置く必要があります。投資家にとっては、短期的な値動きに左右されず、金利動向や企業財務の健全性など構造的な要素を冷静に見極める慎重さが求められる局面といえるでしょう。

AI相場の次なる本命は?M7からインフラ銘柄へ
「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれる、米国の大型テクノロジー企業7社(エヌビディア、マイクロソフト、アップル、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、テスラ)は、生成AIの進化を背景に、2023年以降米国株市場の上昇を牽引してきました。しかし2025年に入り、市場のリーダー銘柄は拡大し、AI相場の主役が再定義されつつあります。本記事では、こうした変化の背景と注目される新たな成長銘柄を整理します。M7の収益優位性に変化の兆しM7はスマートフォン、検索、Eコマースなど、消費者接点を強みに成長し、近年はAIモデルの開発を原動力に、クラウド、半導体、デジタル広告などの分野でリーダーシップを強化しています。2025年第2四半期の決算ではM7の合算EPS成長率は約25.3%と、M7を除くS&P 500構成銘柄群の約7.5%に比べて3倍以上の伸びを示しました。一方で、M7内でも成長の二極化が進みつつあり、エヌビディア、マイクロソフト、アルファベット、メタの4社が、AI領域で優位性を維持する一方、テスラやアップルの影響力は低下傾向にあるとの見方も出ています。FactSetの分析によると、M7の成長鈍化に伴い、M7を除くS&P 500の493社との成長率の差はすでに縮小しており、今後1年間でさらに縮まる見通しです。M7のEPS成長率は2026年第1四半期まで約15%で推移し、同時期に他の銘柄群は約11%へ成長。その後2026年第3四半期には約14.6%に到達する見込みです。「AIつるはし銘柄」の急成長2025年は、AIモデルの開発・運用を支える「AIつるはし銘柄」の株価が大きく上昇しています。19世紀のゴールドラッシュで、金を掘る人よりも「つるはしやスコップを売る商人」が儲けたように、生成AIの活用が本格化する時代においては、AIモデルを動かすための半導体やクラウド基盤、電力インフラ企業などが、業界全体の成長を支え、安定的な収益を確保する構図が広がっています。こうした潮流を受け、市場では「AI相場の主役はアプリケーションからインフラ層へと移りつつある」との見方が広がり、M7にブロードコムや台湾積体電路製造を加えた「Elite 8」や「Incredible8」といった新たな分類も提起されています。注目される成長銘柄候補ブロードコム(AVGO)AI向け半導体需要の拡大により、エヌビディアの株価が過去1年間で約44%上昇しているなか、ブロードコムの株価は同期間で約108%上昇しました。2025年10月29日時点で、同社の時価総額は約1.76兆ドルに達し、すでにメタやテスラを上回っています。ブロードコムは、データセンターで重要なコンポーネントとなっているイーサネットスイッチングおよびネットワーク製品のパイオニアであり、公式ブログでは「インターネットトラフィックの99%が何らかの形でブロードコムの技術を経由している」と説明されています。今後の成長を牽引するのは、特定用途向け集積回路(ASIC)です。これらのチップは特定のAIタスクにカスタマイズ可能で、電力コストや処理効率の両面で優位性を持ちます。10月13日にはOpenAIとの間で、今後4年間で10ギガワットのカスタムチップ導入を支援する契約を発表しました。メリウス・リサーチの推計では、1ギガワットあたり200億ドルの追加収益につながり、2026年後半から少なくとも年間400億ドルの収益が上積みされる可能性があるとされています。台湾積体電路製造(TSMC)TSMCは世界最大の半導体ファウンドリーとして、エヌビディアやアップルをはじめとする主要テクノロジー企業の最先端チップを製造しています。生成AI需要による高性能コンピューティング(HPC)向けチップ受注が業績を押し上げており、2025年第3四半期の純利益は前年同期比で39.1%増となり、7四半期連続で増収増益を記録しています。TSMCは、AIチップに不可欠な先端パッケージ技術「CoWoS」を独占的に供給しています。このパッケージ工程は、AIサーバー向けGPU生産のボトルネックとされており、TSMCが供給能力を拡張できるかどうかがAIインフラ全体の生産ペースを左右します。同社は2025年から2026年にかけて大規模な増産投資を進めていますが、2026年前半までは需給のひっ迫が続く見通しです。また、地政学的リスクに対応するため、台湾に集中していた生産拠点を米国、日本、そして欧州へと分散させています。競合するサムスンやインテルも同様に工場の海外展開を進めていますが、歩留まりや顧客基盤、パッケージ技術の成熟度ではTSMCが依然として先を行っています。マイクロン・テクノロジー(MU)マイクロン・テクノロジーは、AI向けメモリ市場におけるリーダー格の一角として存在感を高めており、株価は過去1年間で約120%上昇しました。メモリ産業は本来汎用品が多く価格競争が激しいため、利益率が低く景気変動に左右されやすい循環型の構造を持っています。しかし生成AIの普及によって、AIモデルの規模と演算量が飛躍的に増大し、GPUの演算性能だけでなく「どれだけ速く・大量にデータを供給できるか」というメモリの帯域幅と容量が新たなボトルネックとなり、AIサーバーに不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)の需要が急増しています。こうした背景の中、同社はHBMの次世代品「HBM3E」を量産化を開始。プレスリリースによると、電力効率と処理帯域の両面で競合を上回る性能を実現しており、これによりデータセンター部門の売上は前年比2倍以上に拡大しました。さらに、2023〜2024年に続いていたメモリ業界全体の在庫調整局面が終息し、PCやスマートフォン向けメモリの出荷数量と価格が回復に転じています。これにより、稼働率の改善やコスト構造の最適化が進み、収益のボトルネックとなっていた要因が解消されつつあります。一方、HBM市場では、SKハイニックスやサムスンとの技術競争は激しさを増しており、性能や供給安定性が企業価値を大きく左右する局面にあります。こうした中で、マイクロンが技術革新をどこまで持続できるかが焦点となります。また、2023年には中国サイバー空間管理局(CAC)が同社製品に対して規制的措置を講じた経緯もあり、地政学リスクへの警戒は引き続き必要です。インフラの制約が次の投資テーマに半導体関連銘柄と異なり、実績EPSよりも将来キャッシュフローへの期待が株価を押し上げる銘柄も増えています。AIワークロードに特化したクラウド事業者(ネオクラウド)であるコアウィーブやネビウスなどは、AI推論需要の拡大とGPUの供給制約を背景に、今後3~5年のシェア拡大とマージン改善を株価に織り込んでいます。また、小型モジュール炉などの原子力関連銘柄も、AIデータセンターの電力需要や規制・制度面の後押しを背景に、実績EPSはほぼゼロ〜赤字圏ながら、2030年代におけるキャッシュフロー急成長を想定した投資が進んでいます。グーグルの元CEOのエリック・シュミット氏は、「AIの実現と活用における最大の課題は、十分な電力の確保であって、チップではない」と語っており、インフラの制約こそが次の投資テーマになりつつあります。

ナスダック100、2025年の採用候補は?指数の仕組みと銘柄入れ替えの基準を解説
本記事では、ナスダック100指数の仕組みと銘柄入れ替えの基準、そして2025年に浮上している組み入れ候補銘柄について解説します。ナスダック100とはナスダック100は、ナスダック取引所に上場する大手非金融企業100社で構成される株価指数であり、テクノロジー企業の比重が高いことが特徴です。2000年以降、テクノロジーセクターの企業は指数の55〜60%を占めていますが、1990年時点では30%程度とセクター構成の変遷が産業構造の変化を映し出しています。1985年1月31日の設定以来、指数の年率リターンは約14%と極めて高いパフォーマンスを記録しています。出所:Nasdaq Index Research指数は最新の市場動向を反映させるため、四半期ごとにリバランスが行われます。また、少数銘柄への過度な集中を防ぐ目的で、上位5銘柄の合計ウエイトを38.5%、上位5銘柄以外の1社当たりのウエイトを4.4%に制限する独自のルールが設けられています。2023年7月には「Magnificent Seven」と呼ばれる大型テック銘柄への集中を是正するため、四半期以外での例外的な特別リバランスが実施されました。発表前後には、大型テックの株価が調整する場面も見られ、市場では需給への影響が意識されました。構成銘柄の入れ替え基準ナスダック100の構成銘柄は、毎年12月に定期的な入れ替え(リコンスティテューション)が行われます。発表から実施まで数営業日という短期間で需給が変化しやすく、新規採用銘柄は上昇、除外銘柄は軟調になる傾向が過去確認されています。また、買収・上場廃止・他市場への移転などにより、既存銘柄が指数要件を満たさなくなった場合、除外銘柄の代わりに「繰り上がり枠」として新規企業が即時追加されるケースもあります。2025年の5月のショッピファイ(SHOP)や2021年8月のクラウドストライク(CRWD)の追加は、この「臨時採用」の例となります。構成銘柄に採用されるためには、以下の条件を満たす必要があります。採用基準上場市場:「Nasdaq Global Select Market」または「Nasdaq Global Market」に主要上場として登録流動性:過去3か月の平均日次売買代金が500万ドル以上浮動株比率:発行株式のうち浮動株比率が10%以上時価総額:上記条件を満たす企業の中で、非金融セクター時価総額上位100社過去40年間で500社以上が構成銘柄として組み入れられてきましたが、現在も残るのはアップル(AAPL)、マイクロン・テクノロジー(MU)、インテル(INTC)、KLA(KLAC)、パッカー(PCAR)、そしてコストコ・ホールセール(COST)の6社のみです。 2025年の注目候補銘柄市場では、2025年の入れ替え候補としていくつかの企業名が浮上しています。コインベース・グローバル(COIN)コインベースは、米国最大級の暗号資産取引プラットフォームとして、仮想通貨市場の活況とステーブルコイン規制整備を背景に株価を大きく伸ばしており、2025年10月29日時点の時価総額は約930億ドルです。2025年5月にはS&P 500指数への採用され、ETF需要を通じた需給面での追い風も強まっています。昨年末にナスダック100入りしたマイクロ・ストラテジーの採用直前時価総額が約920億ドルとほぼ同水準にあることから、構成銘柄入りの有力候補とみなされています。エクイニクス(EQIX)エクイニクスは、REIT形態のデータセンター企業であり、AIインフラやクラウド移行の進展を背景に、構造的な需要拡大が続いています。2025年10月29日時点の時価総額は約840億ドルとナスダック100非採用銘柄では最大級で、流動性の高さからも、市場では長らく採用候補とみなされてきました。特に、AI関連テーマが指数構成の中核に据えられる流れの中で、同社の採用可能性が改めて注目されています。
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AI相場の次なる本命は?M7からインフラ銘柄へ
「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれる、米国の大型テクノロジー企業7社(エヌビディア、マイクロソフト、アップル、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、テスラ)は、生成AIの進化を背景に、2023年以降米国株市場の上昇を牽引してきました。しかし2025年に入り、市場のリーダー銘柄は拡大し、AI相場の主役が再定義されつつあります。本記事では、こうした変化の背景と注目される新たな成長銘柄を整理します。M7の収益優位性に変化の兆しM7はスマートフォン、検索、Eコマースなど、消費者接点を強みに成長し、近年はAIモデルの開発を原動力に、クラウド、半導体、デジタル広告などの分野でリーダーシップを強化しています。2025年第2四半期の決算ではM7の合算EPS成長率は約25.3%と、M7を除くS&P 500構成銘柄群の約7.5%に比べて3倍以上の伸びを示しました。一方で、M7内でも成長の二極化が進みつつあり、エヌビディア、マイクロソフト、アルファベット、メタの4社が、AI領域で優位性を維持する一方、テスラやアップルの影響力は低下傾向にあるとの見方も出ています。FactSetの分析によると、M7の成長鈍化に伴い、M7を除くS&P 500の493社との成長率の差はすでに縮小しており、今後1年間でさらに縮まる見通しです。M7のEPS成長率は2026年第1四半期まで約15%で推移し、同時期に他の銘柄群は約11%へ成長。その後2026年第3四半期には約14.6%に到達する見込みです。「AIつるはし銘柄」の急成長2025年は、AIモデルの開発・運用を支える「AIつるはし銘柄」の株価が大きく上昇しています。19世紀のゴールドラッシュで、金を掘る人よりも「つるはしやスコップを売る商人」が儲けたように、生成AIの活用が本格化する時代においては、AIモデルを動かすための半導体やクラウド基盤、電力インフラ企業などが、業界全体の成長を支え、安定的な収益を確保する構図が広がっています。こうした潮流を受け、市場では「AI相場の主役はアプリケーションからインフラ層へと移りつつある」との見方が広がり、M7にブロードコムや台湾積体電路製造を加えた「Elite 8」や「Incredible8」といった新たな分類も提起されています。注目される成長銘柄候補ブロードコム(AVGO)AI向け半導体需要の拡大により、エヌビディアの株価が過去1年間で約44%上昇しているなか、ブロードコムの株価は同期間で約108%上昇しました。2025年10月29日時点で、同社の時価総額は約1.76兆ドルに達し、すでにメタやテスラを上回っています。ブロードコムは、データセンターで重要なコンポーネントとなっているイーサネットスイッチングおよびネットワーク製品のパイオニアであり、公式ブログでは「インターネットトラフィックの99%が何らかの形でブロードコムの技術を経由している」と説明されています。今後の成長を牽引するのは、特定用途向け集積回路(ASIC)です。これらのチップは特定のAIタスクにカスタマイズ可能で、電力コストや処理効率の両面で優位性を持ちます。10月13日にはOpenAIとの間で、今後4年間で10ギガワットのカスタムチップ導入を支援する契約を発表しました。メリウス・リサーチの推計では、1ギガワットあたり200億ドルの追加収益につながり、2026年後半から少なくとも年間400億ドルの収益が上積みされる可能性があるとされています。台湾積体電路製造(TSMC)TSMCは世界最大の半導体ファウンドリーとして、エヌビディアやアップルをはじめとする主要テクノロジー企業の最先端チップを製造しています。生成AI需要による高性能コンピューティング(HPC)向けチップ受注が業績を押し上げており、2025年第3四半期の純利益は前年同期比で39.1%増となり、7四半期連続で増収増益を記録しています。TSMCは、AIチップに不可欠な先端パッケージ技術「CoWoS」を独占的に供給しています。このパッケージ工程は、AIサーバー向けGPU生産のボトルネックとされており、TSMCが供給能力を拡張できるかどうかがAIインフラ全体の生産ペースを左右します。同社は2025年から2026年にかけて大規模な増産投資を進めていますが、2026年前半までは需給のひっ迫が続く見通しです。また、地政学的リスクに対応するため、台湾に集中していた生産拠点を米国、日本、そして欧州へと分散させています。競合するサムスンやインテルも同様に工場の海外展開を進めていますが、歩留まりや顧客基盤、パッケージ技術の成熟度ではTSMCが依然として先を行っています。マイクロン・テクノロジー(MU)マイクロン・テクノロジーは、AI向けメモリ市場におけるリーダー格の一角として存在感を高めており、株価は過去1年間で約120%上昇しました。メモリ産業は本来汎用品が多く価格競争が激しいため、利益率が低く景気変動に左右されやすい循環型の構造を持っています。しかし生成AIの普及によって、AIモデルの規模と演算量が飛躍的に増大し、GPUの演算性能だけでなく「どれだけ速く・大量にデータを供給できるか」というメモリの帯域幅と容量が新たなボトルネックとなり、AIサーバーに不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)の需要が急増しています。こうした背景の中、同社はHBMの次世代品「HBM3E」を量産化を開始。プレスリリースによると、電力効率と処理帯域の両面で競合を上回る性能を実現しており、これによりデータセンター部門の売上は前年比2倍以上に拡大しました。さらに、2023〜2024年に続いていたメモリ業界全体の在庫調整局面が終息し、PCやスマートフォン向けメモリの出荷数量と価格が回復に転じています。これにより、稼働率の改善やコスト構造の最適化が進み、収益のボトルネックとなっていた要因が解消されつつあります。一方、HBM市場では、SKハイニックスやサムスンとの技術競争は激しさを増しており、性能や供給安定性が企業価値を大きく左右する局面にあります。こうした中で、マイクロンが技術革新をどこまで持続できるかが焦点となります。また、2023年には中国サイバー空間管理局(CAC)が同社製品に対して規制的措置を講じた経緯もあり、地政学リスクへの警戒は引き続き必要です。インフラの制約が次の投資テーマに半導体関連銘柄と異なり、実績EPSよりも将来キャッシュフローへの期待が株価を押し上げる銘柄も増えています。AIワークロードに特化したクラウド事業者(ネオクラウド)であるコアウィーブやネビウスなどは、AI推論需要の拡大とGPUの供給制約を背景に、今後3~5年のシェア拡大とマージン改善を株価に織り込んでいます。また、小型モジュール炉などの原子力関連銘柄も、AIデータセンターの電力需要や規制・制度面の後押しを背景に、実績EPSはほぼゼロ〜赤字圏ながら、2030年代におけるキャッシュフロー急成長を想定した投資が進んでいます。グーグルの元CEOのエリック・シュミット氏は、「AIの実現と活用における最大の課題は、十分な電力の確保であって、チップではない」と語っており、インフラの制約こそが次の投資テーマになりつつあります。

【日銀会合プレビュー】10月は据え置き優勢 利上げ時期とオペ縮小の可能性は
10月29〜30日に開催される日銀の金融政策決定会合を前に、市場関係者の間では「12月や来年1月までに利上げがあるものの、10月は据え置き」との見方が強まっています。本記事では、市場動向や日銀高官の発言内容を踏まえ、10月会合での注目ポイントを整理します。政局変化で利上げ観測が後退21日の首相指名選挙で、自民党の高市早苗総裁が日本初の女性首相に選出されました。高市氏は金融緩和的な政策を支持する姿勢を示しており、「金融政策の手段は日銀が決めるべきだが、財政・金融政策の方向性を決める責任は政府にある」との見解を表明しています。こうした発言を受け、市場の10月利上げ観測は後退。9月会合後に70%程度まで高まっていた10月利上げ観測は、22日時点で11%台まで低下しました。もっとも、日銀は新政権の経済政策の方向性を見極める時間が限られているため、市場では「新政権との協調を重視し、日銀は拙速な判断を避ける」との見方が優勢です。利上げタイミングは「時間の問題」一方、前回の9月会合では、9人の政策委員のうち2人(田村審議委員・内田副総裁)が政策金利の据え置きへ反対し、利上げを提案しました。さらに7月会合の議事要旨からは、他の政策委員の一部にも利上げに前向きな姿勢がうかがえることから、利上げの方向性は既定路線であり、タイミングの問題との見方が強まっています。内田副総裁は10月中旬の講演で、「経済・物価見通しが実現していくなら、引き続き利上げを行う」と発言。植田総裁も10月会合に向けて「会合時点での情報やデータをまとめて議論して決定する」と述べ、両者ともに「条件が整えば利上げを継続する」という日銀の基本スタンスを改めて示すものの、利上げ時期について明確な手がかりを与えることは避けています。市場では、10月会合後の記者会見で利上げ時期に関する手掛かりが示されるかどうかに注目が集まっています。オペ手法に変化はあるか日銀は2024年3月、長期金利を事実上コントロールしてきたイールドカーブ・コントロール(YCC)を正式に撤廃しました。これにより、「10年金利を0%程度に誘導する」という目標はなくなり、長期金利は基本的に市場原理に委ねられています。ただし、日銀は依然として急激な金利上昇を抑えるための「指値オペ」や国債買い入れのガイダンスを維持しており、市場金利の過度な変動を抑制する重要な役割を果たしています。こうした措置は、2025年6月会合で決定された「国債買い入れ減額ペースの緩和」とも連動しています。QT(量的引き締め)を緩やかに進める一方で、市場安定策を併存させる構えをとることで、政策正常化と市場安定の両立を図っているのです。今後の焦点は、こうした安定策をどのようなペースで縮小し、完全に市場任せの金利形成へと移行できるかです。仮にオペ縮小とQTが同時並行で進めば、長期金利のボラティリティは高まりやすくなり、金融市場全体への波及も大きくなります。一方、現行のオペ態勢を維持する姿勢を示せば、「慎重な出口」の姿勢がより明確になるとみられます。今後の注目イベント10月27-29日:日米首脳会談10月29-30日:米連邦公開市場委員会(FOMC)10月29-30日:日銀金融政策決定会合

量子コンピュータ関連株 IONQ・RGTI・QBTSを徹底解説|技術・成長戦略・投資リスク
近年、量子コンピュータ分野は技術革新の加速とともに、米政府による法整備が進み、投資家による資金流入が加速しています。2025年には、米国エネルギー省による量子研究・実証支援を強化する「Quantum Leadership Act」や、防衛分野に量子技術の統括機関を設ける「Quantum National Security Coordination and Competition Act」が議会に提出され、量子技術を国家戦略分野として位置づける流れが鮮明になっています。また、量子およびポスト量子暗号の導入を促す大統領令の準備も報じられており、量子技術は研究段階から実装段階へと移行しつつあります。本記事では、量子コンピュータの現状の課題を解説しつつ、技術アプローチごとに注目銘柄─IonQ(IONQ)、Rigetti Computing(RGTI)、D-Wave Quantum(QBTS)─の技術的特徴と今後の展望を紹介します。量子コンピュータとは従来のコンピュータは「ビット」という単位で情報を処理し、1ビットは「0」または「1」のいずれかの状態しか持ちません。一方、量子コンピュータは「量子ビット」を使い、0と1の状態を同時に扱うことで並列計算が可能となり、計算能力が飛躍的に高まります。AIと量子技術の相乗効果により、将来的には暗号解読、創薬や材料科学、金融モデリング、サイバーセキュリティ、防衛分野など幅広い産業での活用が期待されています。ボストンコンサルティンググループは、量子コンピューティングが2040年までに世界で4,500億〜8,500億ドルの経済価値を生み出すと予測しています。2025年時点の量子コンピュータ産業は、複数の制約が絡み合った発展途上の段階です。商用機は数十〜数百ビット規模にとどまっており、実用的な大規模計算を実現するには数百万ビット規模への拡張が必要です。しかし、量子ビットは外部ノイズや温度変化に非常に敏感で、量子状態が壊れやすく(デコヒーレンス)、長時間の計算を安定して行うのが難しい状況です。また、古典コンピュータ側の進歩も目覚ましく、量子でなければ解けない問題が限定的であることも実用化の足かせになっています。以下では、3つの主要技術アプローチと注目銘柄を紹介します。1) イオントラップ方式:IonQイオントラップは、原子(イオン)を真空中に浮かせて、レーザーで精密に操作します。イオン同士を任意のペアで接続できる「全結合性」があり、回路設計の自由度と演算精度が高いのが強みです。強み全結合性:多くの量子ビットが直接結合可能で、柔軟な回路設計が可能長いコヒーレンス時間:外部ノイズの影響が少なく、量子状態を長く保ちやすい高いゲート精度:制御精度が非常に高く、誤り率が低い留意点処理速度が遅い:超伝導方式(後述)に比べ、相対的に処理速度が長い装置が複雑:高精度レーザーや真空技術を要し、装置コストが高い代表的なプレイヤーは2015年創業のイオンキュー(IONQ)で、同社は1量子ビット/2量子ビットのゲート精度で世界記録(2量子ビットで99.97%の精度)を保持しています。主要クラウド(Amazon Web Services・Microsoft Azure・Google Cloud)を通じて量子コンピューティングサービスを提供しており、2025年6月末時点の過去12ヶ月間の売上高は前年比68%増の5,200万ドルと急成長中です。強固な資金基盤が支える「包括的な量子プラットフォーム」構想イオンキューは、2021年に量子コンピューティング企業として世界初の上場をし、累計調達資金は2025年7月時点で15億ドル超と業界最大級です。今月、さらに20億ドルの増資を実施し、積極的な研究開発と買収による技術拡充を進めています。2025年9月には、英国を拠点とする量子コンピューティング企業Oxford Ionicsの買収により「オンチップ・イオントラップ技術」を導入し、2027年までに99.99999%の制御精度を持つ1万個の量子ビット、2030年までに200万個の量子ビットを実現できる見込みとしています。また、量子ネットワーク企業であるQuBitekkとID Quantique、量子インターコネクト企業Lightsynq、量子衛星Capella Spaceを買収し、量子ネットワーク市場における優位性を拡大。さらに、量子センシング技術のパイオニアであるVector Atomicの買収を完了し、「量子コンピューティング+ネットワーク+センシング」の総合プラットフォーム戦略を進めています。2) 超伝導方式:Rigetti Computing超伝導方式は、絶対零度に近い環境でジョセフソン接合を利用し、超伝導回路で量子ビットを構築します。ナノ秒オーダーで高速に動作できるため、大手(IBM、Google)も採用する主流技術です。強み処理速度が速い:ナノ秒オーダーでゲート操作が可能半導体技術との親和性:CMOS等の既存技術を活用しやすく、量産の道筋を描きやすい留意点短いコヒーレンス時間:ノイズに弱く、誤り訂正の実装が不可欠極低温環境が必要:冷却設備が必要で、装置・運用コストが高い代表的なプレイヤーは2013年創業のリゲッティ・コンピューティング(RGTI)で、2021年に世界で初めてマルチチップ量子プロセッサを発表し、スケーラビリティ向上の先駆けとなる技術を示しました。また、自社で半導体ファブ(Fab-1)を持ち、チップの設計から製造まで一貫した開発体制を構築しています。一方で、売上は数百万ドル規模とまだ小さく、ターンアラウンド期待銘柄として位置づけられています。2025年8月には、ATM増資で約5.7億ドルの資金を確保しており、短期的な資金ショートリスクを回避し、中期的な技術開発を支える体制を整えています。マルチチップ技術の収益化が進めば、再評価リゲッティのロードマップは、一歩ずつビット数・精度を向上させ実用化段階へ入る戦略で、2026年以降に商用規模の拡大を狙う計画です。2025年8月には36ビット・4チップ(Cepheus-1-36Q)の新プロセッサを発表し、誤り率を半減させる成果を出しました。今後は16チップ接続で144ビットへの拡張を目指しています。製造プロセスでは、米空軍研究所支援の下で新たな「through-silicon vias (TSV)」技術導入による多層配線チップ開発も進めており、歩留まり改善と高密度集積を目指しています。またソフトウェアでは、エラー緩和アルゴリズムや量子古典ハイブリッド手法の開発にも取り組み、金融分野向けの実証実験なども進行中です。3) 量子アニーリング方式:D-Wave Quantum量子アニーリングは、膨大な選択肢から最適解を探索する「組合せ最適化」に特化した方式です。汎用計算には向かないものの、物流・サプライチェーンなど現場の最適化ニーズに刺さりやすいく、現時点でも実用化が進んでいます。強み特定の最適化問題に強い:組合せ最適化などでは古典コンピュータより高速な場合も技術成熟度が高い:特定分野で数千〜万ビット規模を商用化留意点汎用計算は苦手:幅広いアルゴリズムの実行には向かないノイズの影響:実際の性能は問題設定やノイズレベルに強く依存代表的なプレイヤーは、1999年創業のディーウェーブ・クオンタム(QBTS)で、世界で初めて商用アニーラを開発した企業です。現行機の「Advantage2」は約4,400ビットを実装。ハード販売に加えクラウド課金やコンサル契約収入もあり、2025年6月末時点の過去6ヶ月間の売上高は前年比289%増の1,350万ドルと成長基調にあります。ゲート方式との「ハイブリッド」へ戦略転換ディーウェーブ・クオンタムは、ニッチ市場において高い支持と顧客導入実績を誇り、ロードマップ上では量子アニーラが数年内にビット数10万規模へ到達することを目標に掲げています。しかし、量子アニーラ自体が今後も有効なアプローチかについては議論があり、汎用向け量子計算が台頭すると優位性を失うリスクがあります。同社はそのリスクヘッジとしてアニーリング専業からゲート方式とのハイブリッド展開に路線拡大しています。ただし、経営陣はゲート方式製品の提供時期について明確なコミットをしておらず、当面はアニーラで商用ユースケースからフィードバックを得つつ、将来的にゲート汎用機が成熟した段階で両者を組み合わせたハイブリッド計算サービスを展開する道筋が示されています。また、2025年に4億ドルの増資とワラント資金行使により史上最高の現金残高8.19億ドルを確保し、研究開発と国際展開を加速させています。
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FRBが利下げを実行も年内追加利下げは不透明に。GAFAM決算でAI投資が増加|米国市場サマリー
先週は、米中対話進展観測と決算期待を背景に週前半は上昇基調となり、主要3指数が過去最高を更新する場面がありました。27日はテクノロジー中心に買いが広がり、ダウ・S&P500・NASDAQがそろって最高値圏で推移しました。28日もPayPalやUPSの好決算が支えとなり、相場は連日の高値更新となりました。一方、29日のFOMCは0.25%の利下げを決定したものの、Powell議長が「12月の追加利下げは保証されない」と示唆し、引けはまちまちでした。 30日はMeta Platformsが巨額の一時的税負担やAI向けCAPEX増額を示した後に急落し、ハイテクを中心に調整が広がりました。しかし31日はAmazonがAWS売上20%増など強い決算を発表して急伸し、主要指数は持ち直しました。総じて、通商や金融政策の不透明感が残るなかでもAI関連をはじめとする好決算が下支えとなり、高値圏を維持する一週間となりました。為替は、週初に153円台へ上昇後、28日は153.25のダブルトップ形成から一時152円割れへ反落しました。29日は151.7~152.5円で持ち合い、30日は日銀の据え置きを受けて円安が加速し、8カ月半ぶりの154.45円まで上伸しました。31日は片山財務相のけん制発言でやや押し戻されつつも154円前後で高止まりしました。週間レンジは約151.7~154.5円でした。米国株式市場:FRBの利下げが実施、GAFAM決算はAI投資増加が鮮明に10月27日(月) 米国株式市場は大幅続伸し、ダウ平均・S&P500・NASDAQがそろって終値で過去最高を更新しました。米中対話の進展観測と、今週相次ぐメガテック決算・FOMC(利下げ観測)への期待がリスク選好を後押ししました。特にNVIDIAやMicrosoftなど大型テックが買いを主導し、半導体関連も堅調でした。10月28日(火) 主要3指数は続伸し、NASDAQが主導して再び過去最高を更新しました。米中摩擦の沈静化期待とテック高が相場を支え、FOMC前ながら金利警戒は限定的でした。場中にはMicrosoftが時価総額で4兆ドル超えを初めて終値で維持し、NVIDIAは米エネルギー省向けAIスーパーコンピュータ計画などを手掛かりに買われました(S&P500+0.2%、ダウ+0.3%)。10月29日(水) FOMCは0.25%の利下げを決定しましたが、Powell議長が「12月の追加利下げは確約できない」と発言したことで、引けはまちまちとなりました(ダウ小幅安、S&P500ほぼ横ばい、NASDAQは小幅高)。引け後はMeta Platformsが決算で2026年に向けたAI投資拡大・CAPEX上振れ見通しを示し、時間外で不安定な値動きとなりました。10月30日(木) ハイテク中心に反落しました。Meta PlatformsがAIインフラ投資拡大を背景に急落し、金額規模の大きい社債起債の準備報道も重石となってグロース株に利益確定売りが波及しました。オプション需給がS&P500の7,000ポイント近辺でボラティリティを高めたとの指摘もあり、指数は広く下押ししました。10月31日(金) Amazonが決算でAWS売上+20%と予想超の伸びを示し急伸、NASDAQとS&P500を押し上げました。主要3指数はそろって上昇し、週・月ともに上昇で締めくくりました(S&P500+0.3%、NASDAQ+0.6%、ダウ+0.1%)。AI関連の設備投資サイクル継続期待が改めて意識され、年末に向けたリスクオンが優勢となりました。為替市場:日銀の金利据え置きで円安は続く為替は、153円台で始まった後も総じてドル高・円安基調で推移し、週後半にかけて上値を伸ばしました。27日(月)は米中対話やFOMC前の思惑からドル買いが先行し、153.26円近辺まで上昇する場面がありました(当日レンジは概ね152.66~153.25円)。 28日(火)は日本の閣僚発言や米財務長官のコメントを受け円がいったん反発し、17時時点で152.15円とやや円高方向に戻しました。29日(水)はFOMCを前に方向感が鈍く、日中は151.54~152.53円のレンジで推移しました。30日(木)は日銀の据え置きと米側のタカ派的な受け止めからドル高が進み、NY時間には154.45円と8カ月ぶり高値を付ける場面がありました(東京17時は153.43~45円)。31日(金)は財務相の「為替動向を高い緊張感で注視」発言もあり円がわずかに持ち直したものの、17時は154.30~32円と高止まりで週を終えました。 週間レンジはおおむね151.5~154.5円で、FOMC後の利下げ観測後退と日銀据え置きがドル買い優勢の地合いを支えました。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

堅調な決算とインフレ鈍化で米国市場は最高値を更新。高市政権誕生で円安基調へ|米国市場サマリー
先週は、政府閉鎖で主要統計の遅延が続くなか、企業決算とインフレ指標を材料に上下しつつも、週末にかけて史上高値を更新する展開となりました。週初はAppleなど大型テックがけん引して上昇し、翌21日にはダウ平均が終値で過去最高を更新しました。しかし週央はNetflixの決算失望や対中輸出規制の観測が重しとなり、ハイテク中心に反落、TeslaのEPS未達もセンチメントを冷やしました。 一方、23日はトランプ・習会談の実施確認やロシア制裁に伴う原油高を受けて持ち直しました。24日は9月CPIが予想比やや弱めとなり利下げ観測が強まって、S&P500・NASDAQ・ダウ平均がそろって終値ベースの最高値を更新しました。週間ではS&P500が+1.9%、NASDAQが+2.3%、ダウ平均が+2.2%と上昇し、AI関連と好決算が相場を支えました。為替は、円安基調でした。20日は150.6円前後で始まりました。 週半ばにかけては米CPIや米制裁報道を見据えたドル買いが優勢となり、23日に152円台後半まで上昇しました。 24日の9月CPIはコア+0.2%と予想下振れで、一時152.3円まで円高に戻しましたが、終盤は152円台後半を維持して週越しでした。 週間レンジはおおむね150.6~152.9円です。米国株式市場:鈍化するインフレ率で利下げを織り込んだ相場上昇10月20日(月) 米国株式市場は大幅に反発し、ダウ工業株30種平均が+1.1%(+515ドル)、S&P500が+1.1%、NASDAQが+1.4%で引けました。AppleがiPhone 17の初動好調やレーティング引き上げを材料に+3.9%上昇し、指数を牽引しました。Cleveland-Cliffsの急伸や中小銀行の持ち直しもセンチメント改善に寄与しました。政府閉鎖による経済統計の遅延が続くなかでも、決算シーズンへの期待が買いを優勢にしました。10月21日(火) 相場はまちまちで、ダウ平均が+0.5%と過去最高値を更新した一方、S&P500は横ばい、NASDAQは▲0.2%でした。3MやCoca-Colaなど決算の強い大型株がダウを押し上げ、General Motorsも通期見通しの上方修正で大幅高となりました。一方で、AlphabetやNVIDIAなど一部ハイテクは利益確定売りが優勢でした。金相場は急反落し、政府閉鎖で公的データが乏しいなか、決算が相場の物差しとなりました。10月22日(水) 市場は反落し、S&P500が▲0.5%、NASDAQが▲0.9%、ダウ平均が▲0.7%でした。Netflixの見通し失望でメガキャップに売りが波及し、米政府が対中輸出制限の拡大を検討との報も重しとなりました。引け後にはTeslaが売上は堅調ながら利益が市場予想未達となり、時間外で神経質な値動きとなりました。小型株も軟調で、広範なセクターで利益確定が優勢でした。10月23日(木) 米株は反発し、ダウ平均+0.31%、S&P500+0.58%、NASDAQ+0.89%でした。米政府がロシア大手石油会社への制裁を発表し原油が急騰、エネルギー株が上昇を主導しました。IBMはクラウド減速観測で軟調でしたが、決算全般はまちまちでも指数は堅調でした。米中首脳会談の実施確認が伝わり、通商リスクの後退も支援材料となりました。10月24日(金) 9月CPIが総合+0.3%(前年比+3.0%)、コア+0.2%と市場予想をわずかに下回り、主要3指数はいずれも終値で過去最高を更新しました。利下げ継続観測が強まり、金利敏感株とテクノロジーがそろって上昇しました。週末を通じ、企業決算の底堅さとインフレ鈍化の組み合わせが買い安心感につながりました。為替市場:高市氏の首相就任で円安基調に為替は、総じて円安基調で推移し、週初の150円台前半から週末には152円台後半へ上昇しました。20日(月)は高市早苗氏の首相就任観測を背景に政治要因が意識され、ドルは対円でじわり優位となりました(当日おおむね150.6円前後)。 21日(火)は高市氏の正式選出と片山さつき氏の財務相起用報道を受け、景気刺激期待から円売りが優勢となり、151円台へと水準を切り上げました。22日(水)は金急落→反発に絡む市場変動で一時円買いが入ったものの、戻りは限定的でした。23日(木)は米CPI(遅延公表)を翌日に控えドルがじり高、円は1週間ぶり安値圏へ。24日(金)は米インフレ指標が総じて「無難」と受け止められるなか、円は2週間ぶり安値となる152.85円近辺まで下落して週を終えました。 この間の週間レンジは150.59~152.98円で、国内政治の新局面と米インフレ動向が同時進行するなか、上値は153円手前まで試す展開でした。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

トランプの対中宥和姿勢で株式市場は復調傾向。地銀不安もありドル安は進む|米国市場サマリー
先週は、対中関税を巡る緊張が一服したとの見方から週初にハイテク主導で急反発し、BroadcomのOpenAI協業報道などがセンチメントを押し上げました。一方で14日はIMF見通しの改善や金相場上昇と同時に通商不安がくすぶり、相場はまちまちの推移となりました。15日はMorgan StanleyやBank of Americaの好決算が支えとなりS&P500とNASDAQが続伸しましたが、16日はZions Bancorporationの貸倒損失開示をきっかけに地域銀行不安が再燃し、主要3指数がそろって下落、金は過去最高を更新しました。もっとも17日はトランプ大統領の対中発言を市場が織り直す中で持ち直し、銀行株の一角も反発して主要指数は上昇して引けました。政府機関閉鎖でCPIの公表が遅延する「データ空白」による不確実性は残ったものの、決算の底堅さと関税リスクの後退観測が勝り、週全体ではS&P500とNASDAQ、ダウ平均はいずれも上昇基調を回復しました。為替は、152円前後で始まり、週末にかけて150円台半ばへじり安となりました。 週初はトランプ大統領が対中姿勢をやや軟化したとの報でドル買いが伸び悩み、15日は151.24近辺までドル安が進み、16日も151円台前半で軟調でした。 政府閉鎖による統計空白や米地銀不安、米中摩擦の警戒が重しです。 週レンジは149.38~152.63円(14日高値、17日安値)でした。 米国株式市場:トランプ大統領の対中宥和姿勢で市場は盛り返す10月13日(月) 米国株式市場は大幅に反発し、S&P500が+1.6%、NASDAQが+2.2%、ダウ平均が+1.3%で引けました。トランプ大統領が対中関係について融和的な発言を行い、通商リスク後退への期待が広がったことが買い戻しを誘いました。セクターではテクノロジーが主導し、BroadcomがOpenAIとの協業報道で急伸、NVIDIAやMicron Technologyも上昇しました。10月14日(火) 相場はまちまちとなり、S&P500は▲0.16%、NASDAQは▲0.76%、ダウ平均は+0.44%でした。Wells FargoやCitigroupの好決算で銀行株が上昇する一方、トランプ大統領の対中追加措置示唆が重しとなりました。個別ではWalmartがOpenAIのChatGPTとの連携発表で上昇しました。終盤にかけては警戒感が続き、ボラティリティ指標は年初来高水準に接近しました。10月15日(水) S&P500は+0.40%、NASDAQは+0.66%と反発、ダウ平均は小反落(▲0.04%)でした。Morgan StanleyとBank of Americaが増益決算で上昇し、金融株が相場を支えました。ASMLの強い受注を手掛かりに半導体株も上昇し、AI関連への資金流入が続きました。景気指標の公表遅延が続くなかでも、決算が投資家心理を下支えしました。10月16日(木) 主要3指数は反落し、S&P500が▲0.63%、NASDAQが▲0.47%、ダウ平均が▲0.65%でした。Zions Bancorporationが貸倒れ計上で急落し、Western Allianceにも売りが波及するなど地域銀行不安が台頭しました。一方でSalesforceは長期売上目標の上振れ観測で上昇しました。金価格は最高値圏を維持し、リスク回避の姿勢もうかがわれました。10月17日(金) 相場は反発し、S&P500が+0.53%、NASDAQが+0.52%、ダウ平均が+0.52%でした。トランプ大統領が「対中100%関税は持続的でない」と発言し、前日の銀行不安も一服して地域銀行株が切り返しました。Truist FinancialやFifth Third Bancorpが上昇し、Zionsも反発。一方で、Eli Lillyは医薬品価格発言を受けて軟調でした。週を通じては変動が大きい一方、決算と通商ヘッドラインが相場を左右しました。為替市場:米中摩擦と米地銀不安によりドル安方向に進む為替は、152円台前半で始まった後、米中通商摩擦の再燃や一部米地銀への警戒感が意識され、週末にかけて円高・ドル安が優勢となりました。13日(月)は、トランプ大統領が前週の強硬姿勢をやや和らげたとの報でドル全体が重く、ドル円は152.46円を上限に伸び悩みました。14日(火)は日本株の急落や国内政治の不透明感も重なり、終値は151.85円へ弱含みました。 15日(水)は米中摩擦を背景に続落して151.05円、16日(木)は東京時間に一時150円半ばまで下落するなど、下方向を試す動きが続きました。17日(金)は米地銀不安や政府機関閉鎖に伴う「データ空白」への懸念からリスク回避が強まり、日中に149.38円まで下押し後、150.64円で引けました。 週間レンジは152.63~149.38円で、戻りは限定的ながら150円台半ばへ収れんする推移でした。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest
米国企業特集
もっとみる【データドッグ決算(2025年3Q)】AI観測需要とクラウドセキュリティで成長持続性を検証(Data Dog)
本記事では、データドッグ(DDOG)の2025年8月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、11月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、今回は売上8.47〜8.51億ドル予想の達成、AI・クラウド観測需要の持続性、セキュリティ事業の伸びが焦点で、堅調なフリーキャッシュフローが株価を下支えするとみられます。前回決算のハイライト売上高は8億27百万ドルで前年同期比28%増となりました。10万ドル超のARR顧客数は約3,850社へと拡大し、エンタープライズでの導入深化が確認されました。クラウド利用の最適化が続く環境でも、同社はDASH 2025で125超の新機能を公開し、生成AIの観測やセキュリティ統合など横断的プロダクトの裾野を広げています。キャッシュ創出力も堅調で、営業キャッシュフローは2億ドル、フリーキャッシュフローは1億65百万ドルでした。会社は第3四半期について、売上高8億47〜8億51百万ドル、非GAAP営業利益1億76〜1億80百万ドル、非GAAP EPS0.44〜0.46ドルを見込み、着実な増収・高利益率を示唆しました。決算発表以降の主要ニュース第2四半期後はプロダクトと市場開拓の双方で更新が相次ぎました。10月にはOracle Cloud Infrastructure対応の拡充を発表し、大規模顧客のハイブリッド/マルチクラウド監視を後押しする姿勢を鮮明にしました。同時期に豪州のIRAP Protected認証を取得し、公共分野での信頼性を高めています。さらに「State of Cloud Security 2025」では認証情報窃取の増加を踏まえデータ・ペリメータ採用が拡大していると指摘し、観測×セキュリティ統合の重要性を裏付けました。11月6日(米東部)には第3四半期の結果とカンファレンスコールを予定しており、AI監視、ログ/APM、クラウドセキュリティの各プロダクトでの案件積み上がりが注目されます。今回決算の注目点市場の視線は、第一にプロダクト横断での消費拡大とガイダンス実行力に集まります。Q3の会社見通しは前年超の増収と高い非GAAPマージンを前提としており、ログ/トレース/セキュリティの同時採用やAIワークロードの本番化がどこまで単価・継続率に波及したかが焦点です。第二に大型顧客の動向です。10万ドル超ARR顧客が順調に増加する一方、生成AIユースケースではワークロード最適化による利用量の揺らぎも想定されます。こうした可変需要の中で、契約の粘着性とプラットフォーム統合によるテイクレート維持が論点です。第三にクラウドセキュリティの伸長です。CSPMやアプリ防御などの拡張が順調なら、観測と防御の統合による差別化が一段と強まり、ストック型の拡張余地が広がります。外部環境では、観測・セキュリティ市場の拡大とツール統合の潮流が同社に追い風である一方、ストレージコストやベンダーロックイン忌避の議論が逆風となり得ます。アナリスト間ではQ3売上を約8億47〜8億51百万ドルとみる見解が多く、着地とあわせて通期見通しのアップデートに注目が集まります。株価への影響株価は年初来で観測・セキュリティ一体型プラットフォームへの期待を織り込みつつ、ヘッドラインに敏感な展開が続いています。DASH後には大手証券が「トップピック」に選定するなど強気評価が強まった一方、特定大口顧客の最適化リスクを理由に格下げが出る局面もあり、短期的なボラティリティは避けにくい状況です。今回決算後の評価軸は、第一にQ3ガイダンス対比の着地、第二に大型顧客の利用動向と単価のトレンド、第三にセキュリティ事業の伸びとプロダクト間クロスセルによるLTV拡大です。これらがポジティブに示されれば、高いフリーキャッシュフロー創出力と併せてバリュエーションの下支えとなる可能性があります。反面、AI関連ワークロードの変動やコスト上振れ、クラウドプロバイダー政策・規制面の不確実性が再評価の重石となり得ます。
【アップラビン決算(2025年3Q)】AXON成長の持続性と規制リスクの見極めが焦点(Applovin)
本記事では、アップラビン(APP)の2025年8月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、11月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、売上13.2〜13.4億ドル予想の達成可否と高利益率維持、SEC調査への対応が焦点で、AXONの成長持続性が株価評価の鍵となります。前回決算のハイライト売上高は12.59億ドルで前年同期比77%増、調整後EBITDAは10.18億ドルと前年の約2倍に拡大しました。純利益は8.20億ドル、営業キャッシュフローは7.72億ドル、フリーキャッシュフローは7.68億ドルと資金創出力の高さも際立ちました。AXONエンジンを核にした広告プラットフォームの拡大が牽引し、ゲーム開発事業は売却完了に伴い「非継続事業」に区分されています。会社はあわせて2025年7〜9月期(Q3)のガイダンスとして、売上高13.20〜13.40億ドル、調整後EBITDA10.70〜10.90億ドル、調整後EBITDAマージン81%を提示し、高水準の収益性維持を見込む姿勢を示しました。決算発表以降の主要ニュース事業ポートフォリオの純化では、モバイルゲーム事業のTripledot Studiosへの売却が6月30日にクローズし、現金4億ドルに加えて約20%の持分を取得する構成があらためて示されました。広告テクノロジーに経営資源を集中する方針が明確化しています。 一方、10月初旬にはデータ収集慣行をめぐるSEC調査の報道が広がり、同社株は一時14%下落しました。会社は規制当局との適切な対話を継続し、必要に応じて開示すると述べています。短期的にはヘッドラインによるボラティリティが意識されやすい地合いです。 今回決算の注目点最大の焦点は、AXONの成長持続性です。Q2時点での高いテイクレートとマージンの維持が確認されれば、AI駆動の最適化による構造的な収益性改善が裏づけられます。広告主のオンボーディング状況、eコマース系の出稿増、セルフサーブ化の進捗など、量・質の双方からの成長がどこまで可視化されるかが注目されます。次に、ポートフォリオ純化の効果です。ゲーム事業売却により売上構成は広告へ一段と傾斜しており、資本効率や運転資本の改善がどの程度数値に現れるかを見極めたいところです。加えて、規制・プラットフォーム環境の変化に対するレジリエンスも論点です。短期的にはSEC報道への説明、長期的には大手アプリストア・IDポリシーの変化に対する技術的対応力が問われます。会社ガイダンスの13.20〜13.40億ドルと調整後EBITDA10.70〜10.90億ドルのレンジに対し、需給の季節性や為替の影響、主要広告主の支出意欲が上振れ・下振れの分岐となります。株価への影響株価は年初来大幅上昇の後、10月のSEC報道で急反落するなどニュースに敏感な展開が続いています。今次決算で注目されるのは、第一にガイダンスに対する着地と来期見通しのトーン、第二にAXONの顧客基盤拡大と単価・稼働の実績、第三に規制面の不確実性への対応方針です。これらがポジティブに示されれば、利益成長の持続に対する信認が回復し、バリュエーションの再上昇余地が生まれます。他方、規制リスクの長期化やプラットフォーム政策変更、マクロ環境に伴う広告費の伸び悩みは下振れ要因です。中期的には、ゲーム事業売却で得た柔軟性と高いフリーキャッシュフロー創出力を財務規律と追加投資の両立にどう振り向けるかが、株価の持続的評価を左右すると見ています。
【イオンキュー決算(2025年3Q)】買収攻勢と資金力で量子×ネットワークの商用化を加速(ionQ)
本記事では、イオンキュー(IONQ)の2025年8月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、11月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。前回は売上2,070万ドルと好調で、手元資金は約16億ドルに拡大しました。Oxford IonicsやLightsynqなどの買収で量子計算・通信・センシングを統合し、商用化を加速しています。前回決算のハイライトIonQは8月6日に2025年4〜6月期(第2四半期)を公表し、売上高は2,070万ドルとガイダンス上限を15%上回りました。純損失は1億7,750万ドル、Adjusted EBITDAは3,650万ドルの赤字でした。6月末の現金等は6.57億ドル、7月9日時点のプロフォーマでは10億ドルのエクイティ調達を経て約16億ドルまで積み増し、成長投資余力を確保しています。通期売上見通しは8,200万〜1億ドル、Q3は2,500万〜2,900万ドルを見込みます。事業面では、英国の量子計算スタートアップOxford Ionicsの約10.75億ドルでの買収提案を発表し、さらに光接続技術を持つLightsynqと衛星基盤のCapellaの買収を完了しました。AstraZeneca・AWS・NVIDIAとの共同で創薬シミュレーションの20倍高速化を示すなど、ユースケースの可視化も進みました。決算発表以降の主要ニュースQ2後はM&Aと量子ネットワーク領域の布石が相次ぎました。9月には米量子センシング企業Vector Atomicの買収意向を発表し、原子時計やナビゲーション等の国家安全保障用途で実績のある同社の技術を取り込む計画です。これにより、計算に加えてセンシングまで含むフルスタック展開が加速します。 英国拠点の獲得を伴うOxford Ionics買収は、イオントラップ・オン・チップの実装力を取り込みつつ、27年に800論理キュービット、30年に8万論理キュービットという長期ロードマップの実現性を高める狙いが示されています。 さらに、量子ネットワークに関しては合成ダイヤモンド材料のブレークスルーやQKD構想の進展が報じられ、量子通信・防諜領域での訴求点が明確になりつつあります。今回決算の注目点今回のQ3では、第一に売上レンジ2,500万〜2,900万ドルの達成可否と、受注・バックログの質が焦点です。学術・政府系に偏りがちな量子需要の中で、物流最適化、創薬、電力系統といった商用ユースケースがどこまで継続的収益に転化しているかを確認したいところです。第二に損益面では、研究開発や買収後の統合費用が嵩む中でのキャッシュバーンの軌道が問われます。潤沢な手元資金は攻勢の原資となる一方、赤字幅の縮小とグロスマージンの改善トレンドが投資家の安心感につながります。第三に技術・製品ロードマップのアップデートです。#AQ64近傍の性能指標やフォトニック相互接続の量産化、さらには量子ネットワークおよびセンシング領域の製品化タイムラインが示されれば、中期の収益ストーリーが一段と明確になります。業界全体では、各国の量子国家戦略と民間クラウド経由の利用増が追い風で、IonQは買収連発により計算・通信・センシングを束ねる稀有なポジションを確立しつつあります。株価への影響株価はM&Aヘッドラインや国家プロジェクト関連ニュースに敏感で、Oxford IonicsやVector Atomicの案件公表時には量子分野のプラットフォーム化期待が意識されました。他方、巨額の希薄化を伴うエクイティ調達や研究開発費の増勢は短期のバリュエーション圧力となり得ます。商用案件の立ち上がりが着実に進み、QKDや量子センシングを含むストック型収益の比率が高まれば、ボラティリティの低減に寄与しますが、技術不確実性、政府予算の時期偏重、統合コストや人材獲得競争、サイバー・輸出管理などの規制対応はリスクです。決算後の株価モメンタムは、ガイダンスの維持・上振れの有無、キャッシュ消費の管理、そして買収資産のシナジー具体化に関する経営陣の説明力に左右されると考えます。
経済コラム
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【米国株】好決算の裏で調整局面懸念、市場が注視する3つのリスク
米国株式市場の主要3指数は、10月28日に3営業日連続で終値ベースの過去最高値を更新し、ナスダック総合指数は年初から20%超の上昇、S&P500 指数も約15%の上昇率を示しました。しかしその後、11月4日には株価が急落。ナスダック総合指数とS&P 500指数はいずれも数週間ぶりの大幅下落となりました。足元で株価が高水準にあったことを背景に、「調整局面入り」ではないかとの見方も浮上し、投資家は警戒感と楽観の間で相場に臨んでいます。本記事では、現在米国市場で懸念されている主なリスク要因を整理します。好決算もリスク警戒が市場心理の重しに2025年第3四半期の決算発表では、多くの企業が市場予想を上回る好業績を示しました。LSEGのデータによれば、既に決算を発表したS&P 500構成企業315社のうち、83.2%がアナリスト予想を上回っており、過去平均の約67%を大きく上回っています。さらに、S&P 500指数の第3四半期の年間利益成長率は前年同期比で約14%と見込まれ、1か月前の見通しを約5ポイント上回る勢いです。しかし、好決算を背景にしつつも、連邦準備制度理事会(FRB)政策の行方、信用市場の動揺、政府閉鎖による経済への悪影響などが米国株市場の下押し要因として警戒されています。FRBの利下げ観測後退10月末のFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利が0.25%引き下げられ、9月に続く2会合連続の利下げとなりました。しかし、パウエル議長は記者会見で「12月会合での利下げは既定路線ではない」と述べ、追加利下げに慎重な姿勢を示したことで、市場が織り込んでいた年内の追加利下げ期待は後退しました。また、政府閉鎖による統計データの不足については「濃霧の中で運転するような状況では慎重にならざるを得ない」との例えを用い、データ欠如下での政策運営に慎重姿勢を示しています。これら一連の発言を受け、景気敏感セクター中心に売りが優勢となりました。12月利下げの確率はFOMC前の90%台から、11月6日時点のFedWatchでは約64.5%まで低下しています。高債務企業への信用リスク浮上一方で、10月末に市場ではオラクル社への信用不安が浮上しました。同社はAIインフラの拡充を目的に巨額の投資を行っており、借入や社債発行による資金調達を増加させています。モルガン・スタンレーの試算によると、オラクルの純負債残高が現在の約1,000億ドルから2028年度には約2,900億ドル(約44兆900億円)へとおよそ3倍に膨らむ見通しです。高い債務レバレッジが将来の業績維持を圧迫しかねないとの懸念は度々指摘されており、同社の債務不履行に備える5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の価格は10月時点で2023年10月以来の高水準に達し、投資家のリスク回避の姿勢が強まっています。AI需要を追い風に株価上昇を続けてきた米国市場ですが、こうした動きは高成長分野であっても過剰な債務拡大が企業の持続性を揺るがす可能性を示唆し、IT・ハイテク銘柄を中心に形成されてきた上昇相場に対して、投資家が慎重な見方を強める一因となりました。政府機関閉鎖の長期化加えて、米国では2025年度予算を巡る与野党対立により、10月1日から連邦政府機関の一部が閉鎖され、11月5日に過去最長を更新しました。上院共和党の指導部からは「週内に決着する可能性がある」との楽観的な発言も出ていますが、政府閉鎖の長期化による経済活動への悪影響は避けられません。議会予算局(CBO)は、2018年から2019年のトランプ大統領の国境の壁建設費用をめぐる対立での34日間の政府閉鎖によって国内総生産(GDP)が約110億ドル減少したと試算しています。もっとも、過去の事例では閉鎖解消後に経済が比較的速やかに正常化したケースも多く、市場も長期化リスクをある程度織り込んでいたため、現時点では株価への影響は限定的にとどまっています。市場調整は健全なプロセス11月4日に香港で開催されたGlobal Financial Leaders' Investment Summitにおいて、モルガン・スタンレーの最高経営責任者(CEO)であるテッド・ピック氏は、株式相場における10〜15%程度の調整は、マクロ経済への衝撃によるものではない限り「歓迎すべきもの」との見方を示しました。また、ゴールドマン・サックスCEOのデビッド・ソロモン氏は、今後12~24ヶ月の間に株式市場が10~20%下落する可能性はあり得るとしたものの、「うまくいかない可能性はたくさんあるが、現時点では短期的な結果の分布から見て、差し迫った危機感はない」との認識を示しています。現時点の米国株市場は、企業の好決算というポジティブな基盤を持ちながらも、利下げ観測の後退や高債務企業への信用リスク、政府機関閉鎖の長期化といった複数の不安要因を抱えています。こうした環境下では、一時的な調整が生じる可能性も念頭に置く必要があります。投資家にとっては、短期的な値動きに左右されず、金利動向や企業財務の健全性など構造的な要素を冷静に見極める慎重さが求められる局面といえるでしょう。

ナスダック100、2025年の採用候補は?指数の仕組みと銘柄入れ替えの基準を解説
本記事では、ナスダック100指数の仕組みと銘柄入れ替えの基準、そして2025年に浮上している組み入れ候補銘柄について解説します。ナスダック100とはナスダック100は、ナスダック取引所に上場する大手非金融企業100社で構成される株価指数であり、テクノロジー企業の比重が高いことが特徴です。2000年以降、テクノロジーセクターの企業は指数の55〜60%を占めていますが、1990年時点では30%程度とセクター構成の変遷が産業構造の変化を映し出しています。1985年1月31日の設定以来、指数の年率リターンは約14%と極めて高いパフォーマンスを記録しています。出所:Nasdaq Index Research指数は最新の市場動向を反映させるため、四半期ごとにリバランスが行われます。また、少数銘柄への過度な集中を防ぐ目的で、上位5銘柄の合計ウエイトを38.5%、上位5銘柄以外の1社当たりのウエイトを4.4%に制限する独自のルールが設けられています。2023年7月には「Magnificent Seven」と呼ばれる大型テック銘柄への集中を是正するため、四半期以外での例外的な特別リバランスが実施されました。発表前後には、大型テックの株価が調整する場面も見られ、市場では需給への影響が意識されました。構成銘柄の入れ替え基準ナスダック100の構成銘柄は、毎年12月に定期的な入れ替え(リコンスティテューション)が行われます。発表から実施まで数営業日という短期間で需給が変化しやすく、新規採用銘柄は上昇、除外銘柄は軟調になる傾向が過去確認されています。また、買収・上場廃止・他市場への移転などにより、既存銘柄が指数要件を満たさなくなった場合、除外銘柄の代わりに「繰り上がり枠」として新規企業が即時追加されるケースもあります。2025年の5月のショッピファイ(SHOP)や2021年8月のクラウドストライク(CRWD)の追加は、この「臨時採用」の例となります。構成銘柄に採用されるためには、以下の条件を満たす必要があります。採用基準上場市場:「Nasdaq Global Select Market」または「Nasdaq Global Market」に主要上場として登録流動性:過去3か月の平均日次売買代金が500万ドル以上浮動株比率:発行株式のうち浮動株比率が10%以上時価総額:上記条件を満たす企業の中で、非金融セクター時価総額上位100社過去40年間で500社以上が構成銘柄として組み入れられてきましたが、現在も残るのはアップル(AAPL)、マイクロン・テクノロジー(MU)、インテル(INTC)、KLA(KLAC)、パッカー(PCAR)、そしてコストコ・ホールセール(COST)の6社のみです。 2025年の注目候補銘柄市場では、2025年の入れ替え候補としていくつかの企業名が浮上しています。コインベース・グローバル(COIN)コインベースは、米国最大級の暗号資産取引プラットフォームとして、仮想通貨市場の活況とステーブルコイン規制整備を背景に株価を大きく伸ばしており、2025年10月29日時点の時価総額は約930億ドルです。2025年5月にはS&P 500指数への採用され、ETF需要を通じた需給面での追い風も強まっています。昨年末にナスダック100入りしたマイクロ・ストラテジーの採用直前時価総額が約920億ドルとほぼ同水準にあることから、構成銘柄入りの有力候補とみなされています。エクイニクス(EQIX)エクイニクスは、REIT形態のデータセンター企業であり、AIインフラやクラウド移行の進展を背景に、構造的な需要拡大が続いています。2025年10月29日時点の時価総額は約840億ドルとナスダック100非採用銘柄では最大級で、流動性の高さからも、市場では長らく採用候補とみなされてきました。特に、AI関連テーマが指数構成の中核に据えられる流れの中で、同社の採用可能性が改めて注目されています。

金価格急騰、5000ドル視野に——構造転換が示す上昇相場の行方
2025年後半、金価格は史上初めて1オンス=4,000ドルの大台を突破しました。10月17日時点で4,254ドルと年初来で62%上昇し、S&P 500指数の上昇率の約4.5倍のパフォーマンスとなっています。従来、金と株は逆相関の関係にあるとされてきましたが、2025年は株高局面においても金価格が上昇するという異例の展開となっており、金市場の構造的な変化を示唆するものとみられています。本記事では金価格高騰の背景と今後の展望を整理します。「有事の金」から戦略的資産配分へ金価格はさまざまな要因によって影響を受けますが、足元の上昇局面では安全資産需要の高まりやインフレや金利動向といったマクロ経済環境の追い風に加え、中央銀行による金準備、投資マネーの流入(ETF経由を含む)が金相場を下支えしています。つまり、今回の金高騰は従来の一時的なリスクオフによる上昇ではなく、金市場の構造的需給要因による上昇相場への移行を迎えている可能性があります。中央銀行の金保有拡大が構造的な下支えに金価格を押し上げる構造的な要因の一つが、各国中央銀行による金準備の積み増しです。2022年のウクライナ侵攻と、その後のロシアの資産凍結・制裁を契機に、近年各国が外貨準備の分散とドル依存度の低下を目的に金保有を拡大しています。世界の中央銀行による金購入量は、2022年に1,082トンと1967年以来の最高水準に達し、2023年には1,037トン、2024年にも1,044トンと毎年1,000トン超の高水準が続きました。2025年においても中国が11ヶ月連続で金準備を積み増しているほか、トルコ、カザフスタンといった新興国を中心にドル資産から金へのシフトが続いています。中央銀行は短期的な価格変動に左右されず、長期的かつ戦略的に金を買い続ける傾向があるため、民間投資家の需給動向に左右されない底堅い需要が形成され、金価格を支える基盤となっています。機関投資家を中心とした金ETFへの巨額資金流入金への資金流入は現物市場にとどまらず、ETF(上場投資信託)市場でも顕在化しています。2025年は欧米の機関投資家を中心に記録的な資金流入が起こり、9月末までの累計流入額は640億ドルに達し、世界全体の金ETF残高も過去最高の4,720億ドルに膨らんでいます。米証券取引委員会(SEC)に提出された13Fベースでは、SPDR Gold Shares(GLD)には2,700超の機関保有者が記録されており、Bridgewater Associatesによる約3.2億ドルの投資など大口機関の動きも報じられています。一方で、個人投資家の存在感は限定的であり、最近の金投資の波は個人投資家主導だった過去の局面とは異なり、大手機関投資家による戦略的なポジション転換が主導しています。また、金ETFは現物金を裏付けにしているため、先物のように容易にショート(売り持ち)を構築することができず、下落方向へのベットが制約される構造になっています。結果として市場ではロング(買い)ポジションが優勢となりやすく、需給が一方向に偏ると価格上昇が加速する要因になり得ます。さらに、ETF価格と現物金価格の間には、保管・流通・先物カーブなどの影響から乖離が生じることがあります。特に現物供給が逼迫した場合、現物金価格が先物・ETFを上回る「プレミアム」が拡大し、ETFへの買い圧力と相まって上昇がさらに加速します。こうした「ショートの難しさ」と「ETFと現物の価格乖離」も、金相場を後押ししています。米利下げ期待とドル安が追い風に米国の利下げ観測も金相場の上昇に拍車をかけています。金は一般的に米ドル建てで取引されるため、ドル安局面では他通貨建ての投資家にとって割安となり、需要が高まります。2025年にはドル指数の下落と並行して主要通貨建てで金価格が上昇しており、為替要因が上昇相場の一因となりました。さらに、金利が低下すると債券や預金の利回りが減少するため、無利息資産である金の相対的な投資妙味が増します。2000年以降の3回の米利下げサイクルでは、金価格は世界株式を上回るパフォーマンスを示してきました。金価格予想の引き上げ相次ぐ、26年末5,000ドル予想もこうした環境を背景に、金融機関による金価格予想の上方修正が相次いでいます。ゴールドマン・サックスは、2026年末の金価格予想を従来の4,300ドルから4,900ドルに引き上げており、市場の強気相場は「まだ終わっていない」と分析しています。バンク・オブ・アメリカも、短期的には調整リスクが考えられるものの、2026年末に金価格が5,000ドル到達を予想し、米国の利下げ観測や政策動向が相場を支えると指摘しています。また、JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は「金価格は5000ドル、1万ドルに達してもおかしくない」と発言し、具体的な時期には言及していないものの、市場ポートフォリオにおける金の重要性を指摘しました。このほか複数の金融機関が、今後6か月〜数年のスパンで金価格は高止まり、あるいは一段の上昇を続けるとの見解を示しています。一方で、こうした上昇トレンドが今後も継続するかどうかは、米国の金融政策や財政動向、為替動向などに大きく左右される可能性もあり、投資家にとってはリスク管理が鍵となります。
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コア・サテライト戦略とは?実践方法や新NISAの活用方法
投資の世界では「市場全体に幅広く投資して、長期的な成長を取り込むべきか」、それとも「成長余地の大きい分野や銘柄に集中して高いリターンを狙うべきか」という議論が常にあります。この二つの考え方を組み合わせたアプローチが「コア・サテライト戦略」です。本記事では、その特徴と実践方法を解説します。コア・サテライト戦略とはコア・サテライト戦略は、長期的な安定性を確保する「コア資産」を基盤に据えつつ、高リターンを狙う「サテライト資産」を組み合わせた投資手法です。これにより、「市場全体の成長を取り込む」という投資の王道を押さえつつ、市場平均を上回るリターンの獲得や、自身の投資テーマを反映させることができます。特に、長期的な資産形成を目指す個人投資家にとって、リスクとリターンのバランスを取りやすい戦略といえます。コアとサテライトの役割この手法は、ポートフォリオを以下の2つの主要な構成要素に分割します。コア:安定した土台として機能分散投資と低リスク投資で構成され、長期にわたる安定したリターンを目指す通常、市場ベンチマークに連動するインデックスファンドやETFなどで構成サテライト:リターンの向上に焦点新興セクターの機会を捉えたり、市場全体を上回るパフォーマンスを目指すアクティブ運用ファンド、特定セクターや個別銘柄への投資コアとサテライトの一般的な配分比率は、コア資産が7〜9割、サテライト資産が1〜3割です。多くの研究で、長期投資のパフォーマンスを左右する最大の要因は「資産配分」であり、適切な資産配分は売買のタイミングや銘柄選択よりも重要とされています。ポートフォリオでの実践方法と新NISAの活用ステップ1. コアとサテライトの比率を決定コア・サテライト戦略では、まず投資目的やリスク許容度に応じて配分を決定します。安全性を重視する方はコアの比率を高めに、逆にリターン重視で運用したい場合はサテライトの比率を高めに調節するとよいです。また、投資期間の考慮も重要になります。数年以内に住宅購入など大きな支出がある場合はリスクを抑えるべきですが、10年以上の長期投資の場合であれば、サテライトの割合を増やすのも良いでしょう。ステップ2. コアの構築コア部分は、市場のボラティリティに耐え、市場の平均リターンを安定的に享受するために、分散投資と低コスト化を重視する必要があります。一般的には、時価総額の高い企業で構成される大型株ファンドやETFを保有することが推奨されます。新NISAであれば、つみたて投資枠で投資可能な投資信託やETFで運用することがおすすめです。コア部分には、高格付けの社債や国債、優良株を数株追加することも可能です。ポートフォリオのコア部分を売買しないことで、投資家は平均的な市場リターンを得ることができます。例えば、長期的にはS&P 500指数から年平均10%のリターンが得られます。(※1992年2月~2025年7月までの年平均リターン。過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。)ステップ3. サテライトの構築サテライト部分への投資は、市場平均を上回るリターンを目指す部分であり、リスク許容度に応じて投資対象を自由に選択できます。自身の見解やテーマを反映させることができるため、サテライトの活用は投資家の志向によって方向性が変わります。成長志向の投資家であれば、AIやバイオテクノロジーといった成長株を取り入れることでリターンを追求できますし、ESGを重視する投資家であれば環境配慮型ファンドや再生可能エネルギー関連銘柄に重点を置くことができます。特定の個別株に投資することで、企業の成長に直接的に賭ける戦略も可能ですが、集中投資となりやすいため、全体の資産形成を揺るがさない範囲に抑えることが重要になります。特に新NISAを活用する際には、成長投資枠をすべてサテライトに充ててしまうと高リスクでの運用となるため、注意が必要となります。NISA制度を利用しつつ、コア・サテライト戦略を実践したいという場合は、つみたて投資枠は全額コアに充て、成長投資枠のうち半分以上をコアに配分し、残りをサテライトに割り当てることで、コア・サテライト戦略の原則を守った資産配分を維持することができます。ステップ4. 定期的なリバランス市場の変動によりポートフォリオの配分が崩れるため、四半期や半年ごとのリバランスが推奨されます。これにより、特定資産への偏りを防ぎ、投資方針に沿った運用を継続できます。近年、自動積立やリバランス機能を備えたサービスも登場しており、例えばbloomoでは、設定したポートフォリオの比率に沿って自動投資を行い、乖離が生じた際にはリバランス機能で簡単に元の配分に調整することが可能です。

【投資信託の基礎】人気・実績の高いファンドは?分配金型と再投資型の違いや売却タイミングも解説
本記事では、投資信託の基礎知識から、資金流入や運用実績上位のファンドの特徴、分配型と再投資型の違い、売却タイミングの考え方をわかりやすく解説します。目次知っておきたい投資信託の基礎資金流入が多いファンド、運用実績の良いファンドは?テーマ型投資信託の「旬」と選び方「分配金型 vs 再投資型」どちらを選べば良いか?投資信託はいつ売る?知っておきたい投資信託の基礎投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、専門家が株式や債券などに分散投資を行い、その運用成果を投資家に分配する金融商品です。少額から始められ、リスク分散が図れる点が特徴です。2025年5月の追加型株式投信(ETF除く)への資金流入額は約9,000億円と、24カ月連続の流入超過が続いています。資金流入が多いファンド、運用実績の良いファンドは?個別ファンドを見ていくと、上位3ファンドが資金流入額の約45%を占めており、国際分散型・米国株型の根強い人気が際立ちます。過去1カ月で資金流入が多かったファンド(2025年5月末時点)eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):+1620億円eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):+1420億円インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし> 毎月決算型:+1029億円「世界中に分散して投資したい」という投資家心理は根強く、全世界株式型(オルカン)は地政学リスクや特定国への依存を避けられる点が特に評価されています。一方、米国の株式市場が長期的に堅調であるとの見方は崩れておらず、S&P500連動も依然として強い支持を得ています。過去3年の運用実績が良かったファンド(2025年5月末時点)iFreeNEXT FANG+インデックス:年率+42.9%FANG+インデックス・オープン:年率+42.9%野村世界業種別投資シリーズ (世界半導体株投資):年率+38.1%過去の運用実績に注目すると、FANG+(米メガテック10選)や半導体ファンドが上位に並びます。オルカンやS&P500などに比べ、これらのファンドは構成銘柄が絞られており、成長企業への集中投資となっているのが特徴です。リスクは高まるものの、相場環境が追い風になる局面では一気にリターンが伸びやすい構造となっています。FANG+や半導体企業は、生成AIの普及により「業績を伴った株価上昇」が続いているため、過去3年で他のファンドを大きく上回るリターンを記録しています。テーマ型投資信託の「旬」と選び方AIや半導体、宇宙、脱炭素など、特定の産業や社会課題に焦点を当てた「テーマ型ファンド」は、将来性の高い分野に乗れるという魅力がありますが、市場のブームに合わせて値下がりリスクも高く、「投資先の中身」と「投資のタイミング」の見極めが重要になります。テーマ型ファンドのよくある落とし穴としては、投資先の中身がテーマに沿っていないことがあります。例えば、ロボット関連をテーマとしながら、実際には大手IT企業に広く分散しているというケースもあります。また、テーマ型ファンドは話題になった直後に登場しやすく、既にテーマが株価に織り込まれている状態の可能性もあります。銘柄がメディアで頻繁に取り上げられていたり、同じテーマの類似ファンドが増えはじめている状況は、過熱感が出ているサインといえます。堅実な運用を望む方は、ポートフォリオに補助的に加えるのが失敗しにくい運用法です。「分配金型 vs 再投資型」どちらを選べば良いか?また、投資信託を選ぶうえで迷いやすいのが、分配金が出る「受取型」と分配金を再投資する「再投資型」の選択です。✅ 「受取」型は現金収入が定期的に得られる一方で、非NISA口座では分配金に課税✅ 「再投資」型は分配金を自動的に再投資し、資産が複利で成長投資目的が資産形成の場合は「再投資」型、生活費の補填を意識するなら「受取」型が向いています。投資信託はいつ売る?最後に、投資信託をいつ売れば良いか分からない──これは多くの投資家が抱える悩みです。投資信託を売却する際に重要なのは「なぜ売るのか?」という目的の明確化です。✅ 利益が十分出ている→「利益確定」して次の機会へ✅ 長期間パフォーマンスが悪い→ 構造的な弱さがある場合、「損切り」も検討✅ ファンドの方針変更・組入銘柄の入れ替え → 元の想定と違うなら一部売却も視野に投資信託は基本的に長期保有が前提ですが、売ることも投資の重要な戦略です。定期的な見直しと冷静な判断が、投資信託で資産形成を成功させる鍵となります。
【新NISA】一括投資と毎月積立どちらがいい?メリットとデメリットを解説
本記事では、一括投資と毎月積立のメリットとデメリットを紹介し、新NISAでの実践方法を解説します。新NISA制度(少額投資非課税制度)の概要については、以下の解説記事をご覧ください。一括投資と毎月積立のメリットとデメリット一括投資は早期投資でリターンを最大化特徴投資資金を一度に全額投入運用成果が短期的には投資タイミングに依存メリット市場上昇時の利益最大化: 相場上昇する局面では高いリターンを得やすいデメリットタイミングリスク: 投資時期が市場のピーク付近の場合、大きな損失を被る可能性がある資金拘束: 一度に大きな資金を投資するため、流動性が低下一括投資は、リスクを許容しながら、将来の市場上昇を見越して積極的にリターンを追求したいと考える投資家に適しています。世界最大級の資産運用会社Vanguardによると、1976年から2022年にかけて一括投資は積立投資(ドルコスト平均法)と比べて約68%の確率で高い年間リターンを達成しています。これは市場が上昇傾向にある場合、より早く投資資金を市場に投入することでリターンを最大化できるためです。また、ポートフォリオに占める株式の比率が高いほど一括投資の優位性は大きくなります。毎月積立は投資のリスクを分散特徴一定額を定期的に投資投資タイミングが分散され、購入単価が平準化メリットリスク分散: 株価に関係なく投資するため、価格変動リスクを軽減デメリット上昇相場でのリターン低下: 一括投資と比べて、市場が継続的に上昇している場合はリターンが低くなる資産形成に時間がかかる: 投資額を積み上げるのに長期間を要する一方で積立投資は、投資タイミングを分割することで短期間の市場変動リスクを軽減し、特に市場が急落した場合に、一括投資よりもリターンが良いことがあります。そのため、市場の変動に対して冷静でいたい人や、短期損失やリスクを抑えつつ長期的に安定した資産形成を目指す投資家に向いています。新NISAでの一括投資と毎月積立の実践方法年間投資枠は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」で計360万円新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります。つみたて投資枠は、金融庁の基準を満たした投資信託について購入できる枠で、年間投資枠は「120万円」までです。一方、成長投資枠は、投資信託のほか個別株等も購入できる枠で、年間投資枠は「240万円」までです。新NISAで一括投資できるのは、成長投資枠のみつみたて投資枠は積立での投資を前提とされており、原則毎月10万円が上限となっています。そのため、年間投資枠を一括投資することはできません。成長投資枠については、一括投資と積立投資どちらも利用可能なため、年間投資枠の240万円までは一括投資できます。毎月積立する場合は月額30万円まで毎月積立を実践したい方は、つみたて投資枠の10万円と成長投資枠の20万円を合計した30万円までは新NISAで毎月積立投資が可能です(ボーナス月を設定した場合は、年間投資枠の範囲内で追加買付が可能)。ブルーモ証券では、毎月のつみたて投資を設定すると、自動で月々の投資額をつみたて枠と成長投資枠の1:2の比率に分けて買付を行うため、意識せずともNISA枠が効率的に埋まるように投資ができます。ブルーモ証券のかんたんNISAの詳細についてご関心のある方は、以下をご覧ください。
