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「貯蓄から投資へ」「老後2000万円問題」という話を聞くけど、「投資は難しそう」「なんとなく怖い」「なにから学べばいいか分からない」といった人向けに、様々なコンテンツを用意しています。ブルーモと一緒に、投資や金融について学んでいきましょう。

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ヘッジファンド利益番付首位TCIとは?投資戦略と最新ポートフォリオを解説

ヘッジファンド利益番付首位TCIとは?投資戦略と最新ポートフォリオを解説

2023年にヘッジファンド収益ランキングで世界首位となった、The Children's Investment Fund(TCI)は2025年も好調を維持し、7月18日時点で年初来リターンは20%を超え、S&P 500指数の約3倍のパフォーマンスとなっています。本記事では、同社独自の投資戦略や2025年3月末時点のポートフォリオを解説します。The Children's Investment FundとはTCIは、2003年にクリストファー・ホーン卿によってロンドンで設立されたヘッジファンドです。「株主価値を最大化しつつ、その利益で子どもたちの未来を救う」という理念のもと、ファンダメンタル分析、バリュー投資、そしてアクティビズムを融合させながら、毎年利益の多くを世界の子どもたちの支援に還元しています。TCIの収益の多くは「チルドレンズ・インベストメント・ファンド財団(CIFF)」に自動的に寄付され、現在CIFFは資産規模84億ドル(約1.2兆円)を誇る世界最大級の児童支援財団となっています。集中投資と戦略的アクティビスムTCIは2013〜2024年にかけて平均年率リターン17%という実績を誇り、S&P 500のほぼ2倍の成績を維持しています。同社は、持続可能な収益性と競争優位性を備えた少数銘柄に集中投資し、中長期的に保有することで安定したリターンを得ています。WhaleWisdomによると、TCIの平均保有期間は約5.8年と非常に長く、四半期ごとの回転率も低水準となっています。一方で、TCIは企業の経営に対し積極的な関与も辞さず、「物言う株主」としても存在感を示しています。直近では、スペインの通信会社セルネックス・テレコムで取締役会の刷新を求めたほか、グーグルの親会社であるアルファベットに対しても、自社株買いや人員削減を要求した実績があります。また、TCIは株式だけでなく不動産融資ファンドも運用しています。主に北米や欧州の一等地における第一順位抵当権付きシニアローンに投資し、CIFFと連携する形で安定したキャッシュフローと高い担保価値を追求しています。この不動産部門は、TCIの「安全・品質・長期的価値重視」という投資信条を反映しています。TCIのポートフォリオ5月15日に米証券取引委員会(SEC)に提出された報告書「フォーム13F」によると、2025年3月末時点でTCIは434億ドル(約6.5兆円)を10銘柄に集中投資しており、上位5銘柄だけで総額の約76%を占めています。保有銘柄ゼネラル・エレクトリック(GE) : 21.95%マイクロソフト(MSFT) : 14.97%ムーディーズ(MCO): 14.13%ビザ(V) : 13.44%S&P グローバル(SPGI): 12.14%カナディアン パシフィック カンザス シティ(CP): 8.89%カナディアン・ナショナル鉄道(CNI): 6.04%アルファベット クラスC株(GOOG): 4.99%フェロビアル(FER): 1.99%アルファベット クラスA株(GOOGL): 1.46%GE エアロスペースとマイクロソフトのポジションが増加2025年第1四半期に、TCIが購入した銘柄はGE エアロスペースとマイクロソフトのみであり、7月18日時点でGE エアロスペースの株価は年初来54%上昇、マイクロソフトの株価も年初来22%上昇し、この2銘柄のリターンはポートフォリオ全体の成績向上に大きく貢献しました。GE エアロスペースは民間および軍事用のジェットエンジンや電子機器を製造しており、革新的な技術と高い品質から航空機エンジンメーカーとして確固たる地位を築いています。昨年、GEからヘルスケア部門、エネルギー部門が分社化し、スピンオフされました。一方、ムーディーズやビザ、S&Pグローバル、カナディアン・ナショナル鉄道の銘柄では、若干利益確定の売りが見られました。アルファベットは大幅な売りが見られ、リバランスが示唆されています。カナディアン・パシフィックとフェロビアルのポジションは維持されました。著名投資家のポートフォリオを簡単コピー?ブルーモ証券では、2025年3月末時点でのTCIのポートフォリオをもとに、同様の構成銘柄・投資比率で投資を始められるサービスを提供しています。ウォーレン・バフェット氏など他の著名投資家の最新ポートフォリオも閲覧、カスタマイズ可能。気に入った銘柄構成をベースに、自分好みのポートフォリオを簡単に作成できます。

【スリーエム決算(2025年2Q)】分社後の収益力と訴訟対応の進捗を問う四半期(3M)

【スリーエム決算(2025年2Q)】分社後の収益力と訴訟対応の進捗を問う四半期(3M)

本記事では、スリーエム(MMM)の2025年4月発表2025年度第1四半期決算を振り返り、7月に控える2025年度第2四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、長年の重荷であったPFASおよび耳栓訴訟のコスト処理が一巡しつつある一方で、再編に伴うコストや構造改革の進捗、産業需要の底打ちなど、同時多発的に重要テーマを抱える局面です。株価は7月10日に159.47ドルと52週高値を更新したばかりであり、今後の上値余地と下振れリスクを見極めるうえで、今回の決算は個人投資家にとって重要な分岐点となります。前回決算のハイライト2025年4月に発表された第1四半期決算は、総じて良好な内容でした。売上高は約60億ドルと、前年同期比では小幅な減少となりましたが、市場予想をわずかに上回る結果となっています。一方、調整後1株利益(EPS)は1.88ドルと、前年に比べて約10%の増益を達成し、アナリスト予想の1.77ドルをしっかりと上回りました。営業利益率の改善も顕著で、前年より220ベーシスポイントの上昇となり、事業運営の効率性が向上していることが数字に表れました。しかしながら、明るい業績の陰で見過ごせなかったのが、米中貿易摩擦によるコスト増です。この影響を織り込む形で、経営陣は通期のEPS予想を従来よりも引き下げ、7.60〜7.90ドルのレンジに修正しました。このガイダンスの下方修正は、好決算にもかかわらず株価にマイナスの影響を及ぼし、発表後は一時的な下落を招いています。決算後に見られた主要な動き第1四半期決算以降、スリーエムを取り巻く状況にはいくつかの大きな変化がありました。中でも注目すべきは、長年の経営リスクとされてきたPFAS(有機フッ素化合物)問題と耳栓訴訟への対応です。5月には、ニュージャージー州とのPFAS関連訴訟において最大4.5億ドルの和解に至り、同様の訴訟リスクを大幅に圧縮する道筋が示されました。また、2023年に合意された耳栓訴訟の包括和解についても、今年5月時点で60億ドル中の約半額が既に支払われるなど、将来不確実性の解消に向けた取り組みが着実に進んでいます。財務面では、5月の配当発表で1株あたり0.73ドルの四半期配当が維持され、安定的な株主還元姿勢も確認されました。利回りは現在約1.9%で推移しており、長期保有を志向する投資家にとっては一定の魅力を保っています。今回決算の注目ポイント今回の第2四半期決算では、まず売上と利益率の動向が市場の関心を集めています。引き続き関税コストの増加が懸念される中で、オーガニックな売上成長を維持できるかが焦点です。現在の市場予想ではEPSは1.77ドル前後と見込まれており、この水準を達成できるかが株価の初動に影響を及ぼすと考えられます。さらに注目されるのが、前回引き下げられた通期ガイダンスの再修正が行われるかどうかという点です。PFASや耳栓関連での和解金の支払いが一巡した後も、訴訟に伴う支出が継続する可能性はあり、それがフリーキャッシュフローや将来の配当政策にどう響くかを見極める必要があります。また、昨年のSolventumのスピンオフによって収益構造が変化した現在、残された事業セグメント(特にセーフティ&インダストリアル部門など)がどのような成長戦略を打ち出してくるのかも重要なポイントです。経営陣が示す方向性と、その実現に向けた具体的な取り組みの内容次第では、企業価値の再評価につながる可能性もあります。株価への影響と投資家への示唆スリーエムの株価は、年初からの法的リスクの軽減と事業再編の進展を背景に一時回復基調を見せましたが、足元では160ドル前後での推移が続いています。今回の決算で収益性が予想以上に維持され、かつ通期ガイダンスにポジティブな見通しが示されれば、市場は一段の上昇余地を意識することになるでしょう。株価収益率(PER)で見た場合も、現在の水準はディフェンシブ銘柄としてはやや割安感があると評価されています。一方で、売上の鈍化や関税コストの増加が利益を圧迫し、通期見通しのさらなる下方修正に繋がるようであれば、株価は150ドルを割り込む展開もあり得ます。個人投資家としては、決算発表直後の株価の動きに加え、機関投資家の売買動向にも注目しつつ、戦略的なポジション調整を考えるタイミングと言えるでしょう。

【アメリカン・エキスプレス決算(2025年2Q)】富裕層消費と信用リスクの均衡を問う決算(American Express)

【アメリカン・エキスプレス決算(2025年2Q)】富裕層消費と信用リスクの均衡を問う決算(American Express)

本記事では、アメリカン・エキスプレス(AXP)の2025年4月発表2025年度第1四半期決算を振り返り、7月に控える2025年度第2四半期決算の見どころを解説します。過去1年で株価は40%以上上昇しており、富裕層や若年層の旅行・エンタメ支出の恩恵を強く受けてきました。前回決算では過去最高水準の純利益を記録し、今期もその勢いを保てるかが問われる局面です。一方で、金利高止まりや米国内経済の減速観測が強まるなか、カード利用の鈍化や与信費用の増加といったリスク要因も市場は慎重に見ています。前回決算の振り返りアメリカン・エキスプレスが発表した2025年第1四半期(1〜3月期)決算では、売上高が約170億ドルと前年同期比で8%の増加となり、純利益は26億ドル、1株当たり利益(EPS)は3.64ドルと、前年を上回る水準でした。特に旅行やエンタメ関連の支出が活発だったことで、総取扱高は前年同期比で8%増加しました。ミレニアル世代や富裕層を中心とするカード会員の利用が堅調で、高単価な支出が全体を押し上げた格好です。信用リスクの面でも安定感がありました。30日超の延滞率は1.3%、ネットチャージオフ率は2.1%と前四半期とほぼ変わらず、貸倒引当金も前年を下回る水準で済んでいます。経営陣は2025年通期のガイダンスを据え置き、売上成長8〜10%、EPS15〜15.5ドルを達成可能とする強気な見通しを維持しました。決算後の動きと注目材料第1四半期決算以降、アメリカン・エキスプレスは株主還元をさらに強化しています。5月支払い分から四半期配当を1株あたり0.70ドルから0.82ドルに引き上げ、年間ベースで約17%の増配となりました。さらに、4月以降の自社株買いはすでに15億ドルを超えており、潤沢なフリーキャッシュフローを背景にした資本政策が継続されています。カード利用の実勢も堅調です。特に海外旅行や高額な体験型消費が引き続き活発で、第2四半期における総取扱高も前年同期比で8〜10%程度の伸びが予想されます。一方で、件数ベースでの伸びが鈍化している兆しもあり、価格ベースの増加が支出全体を押し上げている構図も見られます。サービスの拡充も進められており、アメリカン・エキスプレスは中小企業(SMB)向けのビジネス・チェック口座の提供範囲を広げています。さらに、デルタ航空との提携を強化し、提携カード会員に対して新しい予約システム(NDC)を導入予定で、航空関連の利用をいっそう促進する施策にも取り組んでいます。今回決算の注目点今回発表される第2四半期決算では、EPSが3.85~3.87ドル、売上高は177億ドル前後とする市場予想が中心です。中でも最も注目されるのは、旅行旺盛期である第2四半期において、アメリカン・エキスプレスの取扱高がどの程度伸びたかという点です。もし前年比で2桁増が維持できれば、通期ガイダンスの上方修正が現実味を帯びてくる可能性があります。また、信用リスクの推移にも目を光らせる必要があります。現在のところ、延滞率や貸倒率は安定していますが、S&Pなどの格付機関は2025年後半にかけて米国のクレジットカード損失がじわじわと上昇すると見ています。アメリカン・エキスプレスがこの傾向からどの程度影響を受けるかは、今後のプロビジョン(引当金)動向に表れます。加えて、営業費用の動きも業績を左右します。前期はマーケティング支出やIT投資が増加し、営業費用率がやや上昇しました。今期も中小企業向けサービスやデジタル基盤の強化にともなう費用増が予想されており、収益性への影響が注視されます。さらに、経営陣が2025年通期のガイダンスを維持または引き上げるかどうかが、株価の方向性を決定づける材料となるでしょう。フリーキャッシュフローが堅調であれば、今後の増配や追加の自社株買いといった株主還元余地もさらに広がります。株価の現状と投資判断の視点アメリカン・エキスプレスの株価は7月10日時点で320ドル台となっており、年初来高値である329ドル台に迫る水準で推移しています。PERはおよそ22倍と、過去5年平均に近い水準です。これまでの上昇が業績好調を織り込んできたことを考えると、今回の決算が市場予想を上回れば340ドル超えも視野に入ります。一方で、カード利用の伸びが頭打ちとなった場合や、信用費用の想定以上の増加が確認された場合には、短期的な調整リスクも否定できません。まとめ2025年7月のアメリカン・エキスプレス決算は、旺盛な富裕層消費が続くなかで収益拡大と信用リスク管理の両立ができているかを確認する重要なタイミングとなります。取扱高が前年を上回り、信用指標が安定していれば、通期見通しの上振れ期待が強まり、株価の一段高につながる可能性もあります。逆に、取扱件数の鈍化や引当金の増加といった弱材料が出た場合は、利益確定売りのきっかけとなる可能性もあります。個人投資家としては、アメリカン・エキスプレスの成長性とリスク管理のバランス、特に高所得層を対象にしたビジネスモデルの強みがどこまで利益の安定性を支えているかを慎重に見極める必要があります。また、配当や自社株買いといった還元政策が持続可能かどうかも、中長期投資の判断材料として重要な視点となるでしょう。

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ヘッジファンド利益番付首位TCIとは?投資戦略と最新ポートフォリオを解説

ヘッジファンド利益番付首位TCIとは?投資戦略と最新ポートフォリオを解説

2023年にヘッジファンド収益ランキングで世界首位となった、The Children's Investment Fund(TCI)は2025年も好調を維持し、7月18日時点で年初来リターンは20%を超え、S&P 500指数の約3倍のパフォーマンスとなっています。本記事では、同社独自の投資戦略や2025年3月末時点のポートフォリオを解説します。The Children's Investment FundとはTCIは、2003年にクリストファー・ホーン卿によってロンドンで設立されたヘッジファンドです。「株主価値を最大化しつつ、その利益で子どもたちの未来を救う」という理念のもと、ファンダメンタル分析、バリュー投資、そしてアクティビズムを融合させながら、毎年利益の多くを世界の子どもたちの支援に還元しています。TCIの収益の多くは「チルドレンズ・インベストメント・ファンド財団(CIFF)」に自動的に寄付され、現在CIFFは資産規模84億ドル(約1.2兆円)を誇る世界最大級の児童支援財団となっています。集中投資と戦略的アクティビスムTCIは2013〜2024年にかけて平均年率リターン17%という実績を誇り、S&P 500のほぼ2倍の成績を維持しています。同社は、持続可能な収益性と競争優位性を備えた少数銘柄に集中投資し、中長期的に保有することで安定したリターンを得ています。WhaleWisdomによると、TCIの平均保有期間は約5.8年と非常に長く、四半期ごとの回転率も低水準となっています。一方で、TCIは企業の経営に対し積極的な関与も辞さず、「物言う株主」としても存在感を示しています。直近では、スペインの通信会社セルネックス・テレコムで取締役会の刷新を求めたほか、グーグルの親会社であるアルファベットに対しても、自社株買いや人員削減を要求した実績があります。また、TCIは株式だけでなく不動産融資ファンドも運用しています。主に北米や欧州の一等地における第一順位抵当権付きシニアローンに投資し、CIFFと連携する形で安定したキャッシュフローと高い担保価値を追求しています。この不動産部門は、TCIの「安全・品質・長期的価値重視」という投資信条を反映しています。TCIのポートフォリオ5月15日に米証券取引委員会(SEC)に提出された報告書「フォーム13F」によると、2025年3月末時点でTCIは434億ドル(約6.5兆円)を10銘柄に集中投資しており、上位5銘柄だけで総額の約76%を占めています。保有銘柄ゼネラル・エレクトリック(GE) : 21.95%マイクロソフト(MSFT) : 14.97%ムーディーズ(MCO): 14.13%ビザ(V) : 13.44%S&P グローバル(SPGI): 12.14%カナディアン パシフィック カンザス シティ(CP): 8.89%カナディアン・ナショナル鉄道(CNI): 6.04%アルファベット クラスC株(GOOG): 4.99%フェロビアル(FER): 1.99%アルファベット クラスA株(GOOGL): 1.46%GE エアロスペースとマイクロソフトのポジションが増加2025年第1四半期に、TCIが購入した銘柄はGE エアロスペースとマイクロソフトのみであり、7月18日時点でGE エアロスペースの株価は年初来54%上昇、マイクロソフトの株価も年初来22%上昇し、この2銘柄のリターンはポートフォリオ全体の成績向上に大きく貢献しました。GE エアロスペースは民間および軍事用のジェットエンジンや電子機器を製造しており、革新的な技術と高い品質から航空機エンジンメーカーとして確固たる地位を築いています。昨年、GEからヘルスケア部門、エネルギー部門が分社化し、スピンオフされました。一方、ムーディーズやビザ、S&Pグローバル、カナディアン・ナショナル鉄道の銘柄では、若干利益確定の売りが見られました。アルファベットは大幅な売りが見られ、リバランスが示唆されています。カナディアン・パシフィックとフェロビアルのポジションは維持されました。著名投資家のポートフォリオを簡単コピー?ブルーモ証券では、2025年3月末時点でのTCIのポートフォリオをもとに、同様の構成銘柄・投資比率で投資を始められるサービスを提供しています。ウォーレン・バフェット氏など他の著名投資家の最新ポートフォリオも閲覧、カスタマイズ可能。気に入った銘柄構成をベースに、自分好みのポートフォリオを簡単に作成できます。

日銀利上げ観測後退、円安進行──「対日関税25%」が市場に与える影響とは

日銀利上げ観測後退、円安進行──「対日関税25%」が市場に与える影響とは

7月7日(米東部時間)、トランプ米大統領は日本からの輸入品に対し、8月1日から25%の関税を課すと表明しました。ただし、市場開放や非関税障壁の撤廃などに応じれば「課税措置を修正する可能性もある」と譲歩の余地を残しています。本記事では、対日関税が市場に与える影響と今後の焦点を解説いたします。3週間の「猶予延長」も楽観できずかつてトランプ氏が日本に対して「30%〜35%の関税」を示唆していたことを考えると、25%という水準は最悪の事態は回避できた内容とも言えます。しかし、8月1日という関税発効日は、7月20日に参院選を控える日本にとっては、交渉材料を提示しづらいタイミングであり、実質的な交渉期間は限られています。仮に参院選後に政権の枠組みが変化すれば、関税協議の行方にも不透明感が増す可能性があります。日銀の利上げ観測が後退、長期金利は上昇今回の発表は、日銀の金融政策スタンスにも影響を与えています。次回の日銀会合(7月30〜31日)は関税猶予期間中となるため、新たな判断を下すことは難しくなりました。このため、市場では「早ければ10月にも利上げ」との観測が後退し、一部では利上げが2026年1月にずれ込むとの見方も浮上しています。一方で、財政悪化懸念から、超長期金利には上昇圧力がかかっています。7月8日の債券市場では、30年国債利回りが一時3.09%と、前日比12.5ベーシスポイント急上昇しました。みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは「もはや理由のいかんを問わず、損失を抱えたポジションを解消しようとする投げ売りが加速している状況だ」と指摘。超長期債の脆弱性が再び浮かび上がりました。円安圧力の高まり為替市場でも影響が顕在化し、円は一時1ドル=146円台まで下落。円安を後押しする背景には以下のような構造的な要因があり、対日関税は円安を連想させる要素が多いというのが市場の共通認識です。高関税による輸出減少 → 貿易収支悪化日本企業の米国生産移管 → 対外直接投資の増加企業収益の圧迫 → 賃上げの鈍化 → 日銀利上げ後退利上げ観測の後退は円売りの地合いを強め、さらにしばらく円高方向に向かう材料は見当たらないとの見方が広がっています。今後の注目は、相互関税が米国内インフレを招く可能性に対する市場の反応です。仮に批判が高まれば、トランプ政権としても内容の見直しに動く可能性も否定できません。ただし、関税引き下げに代わって利下げやドル安誘導政策に軸足を移すとの見方も根強くあります。

2025年夏、米国株はサマーラリーか夏枯れか?今後の市場はどちらへ動く

2025年夏、米国株はサマーラリーか夏枯れか?今後の市場はどちらへ動く

7月末に大型ハイテク銘柄の決算報告やFOMC(米連邦公開市場委員会)といった重要イベントが控えるなか、市場では「サマーラリー」と「夏枯れ相場」という対照的なアノマリー(規則性や傾向)に注目が集まっています。本記事では両者の特徴を解説しつつ、2025年夏の米国株市場を展望していきます。 2025年後半の米国株見通しについては過去の記事にて取り上げていますので、ご関心のある方はあわせてご覧ください。2025年はサマーラリーか夏枯れ相場か「サマーラリー(Summer Rally)」は、夏季に株式市場が上昇する傾向を指し、米国では独立記念日(7月4日)からレイバーデー(9月第1月曜日)までの期間に見られます。機関投資家が夏季休暇の前に買いを入れる動きや、需給の偏りが要因とされています。なかでも、2025年のような大統領選挙翌年の7月は好調なパフォーマンスとなる傾向があり、1950年以降、7月のS&P500指数平均リターンは2.2%となっています。一方で「夏枯れ相場」とは、機関投資家の不在により株式市場の取引高が減少し、相場が上がりにくく、悪材料に反応して株価が下振れしやすい相場を指します。一般的には一時的な調整とされ、長期的な市場の健全性を損なうものではありません。株高の勢いは夏に持ち越されるか足元では、6月までの上昇を受けて、7月相場にも強気な見方が広がっています。Carson Groupチーフ・ストラテジストのライアン・デトリック氏は「5月・6月に株式市場が好調であると、その勢いは7月以降にも引き継がれる傾向がある。過去16回の類似ケースでは15回で下半期も上昇した」と指摘します。また、米ドル安(3年ぶりの安値水準)や中東の地政学リスク後退も米国株への買い意欲を後押ししています。センチメントにも変化が見られます。今後6ヶ月間の市場の方向性に関する個人投資家の意見を測定するAAIIセンチメント調査では、6月25日時点の調査では弱気派(40.3%)が強気派(35.1%)を上回っていたものの、7月2日には強気派(45.0%)が弱気派(33.1%)を逆転。投資家心理は改善傾向にあり、サウンドハウンドAI(SOUN)、ソーファイ・テクノロジーズ(SOFI)といったモメンタム株の物色も、投資家のリスク選好姿勢を裏付けています。株高は一部銘柄に依存、ハイテク決算が市場の方向性を左右か現在S&P500の予想PERは約22倍程度と高水準ですが、生成AIブームの追い風を受けた成長株への選好は根強く、特にエヌビディア(NVDA)は再び過去最高値を更新し、指数に対する影響力を強めています。ただし、株高は一部のハイテク銘柄に偏っており、S&P500構成銘柄の約30%は50日移動平均線を下回る状況となっています。中小型株を中心としたラッセル2000指数や、ダウ平均株価の軟調さもこの構造を裏付けており、テクノロジー株、特に「マグニフィセント・セブン」の決算結果は、市場全体の方向性を左右する重要イベントとなるでしょう。米関税や金融政策を巡るリスク要因は依然存在一方、投資家心理の重石となっているのが、米関税政策と金融政策の不確実性です。直近では、トランプ大統領が8月1日の相互関税発動日は確定しているとしつつ、各国から提案があれば延期も検討する用意があると述べましたが、アナリストらは、関税発動期限を緊張の大幅な高まりなく乗り越えることができれば、短期的には懸念事項が一つ減ると指摘しています。金融政策では、7月29〜30日のFOMCでFRB(米連邦準備制度理事会)が9月の利下げに含みを持たせるかが注目されます。現在FedWatchの9月利下げの織り込みは50%を超えていますが、パウエル議長は利下げについては引き続き「データ次第」と様子見の姿勢を崩しておらず、FOMCで引き続き慎重な姿勢が示された場合は、株価の調整リスクも残ります。今後の注目イベント7月15日:消費者物価指数(CPI)7月16日:生産者物価指数(PPI)7月17日: 小売売上高7月29-30日:FOMC8月1日:相互関税発動日

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トランプ関税で相場は揺れ、一時的に下落するも回復。NVIDIAは4兆ドル企業へ|米国市場サマリー

トランプ関税で相場は揺れ、一時的に下落するも回復。NVIDIAは4兆ドル企業へ|米国市場サマリー

先週は、トランプ政権による追加関税措置を巡る動きに振り回され、全体として不安定な展開となりました。週初に日本、韓国、欧州への25%追加関税が正式に発表されたことで、市場心理が急速に冷え込み、ダウ平均が400ドルを超える下落となるなど、大幅に反落しました。その後も、対象国拡大の懸念が相場の重石となる場面がありましたが、トランプ政権が関税措置の再協議を示唆したことで一時的に市場は反発。NVIDIAが時価総額4兆ドルを突破するなど、一部のテクノロジー株や航空株、製薬企業が好材料を背景に大きく上昇しました。しかし、週末にかけて再びトランプ大統領がカナダへの35%関税導入を検討していると発言したことで投資家心理が再度悪化。素材や資本財株が売られ、主要指数は再び下落に転じました。週を通じて追加関税措置を巡る報道が市場を揺さぶり、主要指数はボラティリティの高い推移を強いられる一週間となりました。為替は、トランプ政権が日本・韓国などへの追加関税を発表したことで週明けは144円台前半へ円高方向に動きました。しかし、その後関税措置の再協議が示唆されたことでリスク回避が和らぎ、米経済指標の堅調さも支援材料となってドルが反発。テクニカル的にも上値を追う展開となり、週末には147円台半ばへ急伸しました。米国株式市場:トランプ関税で一時相場は下がるも再協議で回復、NVIDIAは時価総額4兆ドルへ7月7日(月) 米国株式市場は大幅に反落し、ダウ工業株30種平均が422ドル(-0.9%)下落しました。トランプ政権が日本、韓国、欧州などに対し25%の追加関税を発表したことで、投資家心理が悪化しました。特にTeslaがトランプ大統領との対立報道を受け7%以上下落し、他のテクノロジー株も大きく売られました。S&P500とNASDAQも0.9%程度の下落となり、原油価格の下落を背景にエネルギー株も軟調でした。7月8日(火) 前日の急落後、市場は方向感を欠く展開となりました。ダウ平均は137ドル(-0.4%)下落しましたが、NASDAQはわずかにプラス(+0.03%)を維持しました。トランプ政権がさらに多くの国々への追加関税を検討しているとの報道を受け、素材株が売られる一方、小型株のRussell 2000指数は0.7%上昇し、相場の底堅さを示しました。公益セクターやヘルスケア株も比較的堅調でした。7月9日(水) 米国株は再び反発し、NASDAQは0.9%上昇して史上最高値を更新しました。トランプ政権が追加関税措置について再協議に前向きな姿勢を示したことが市場に安心感をもたらしました。S&P500は0.6%、ダウは0.5%の上昇となりました。個別では、AI需要を背景にNVIDIAが約4%上昇し、時価総額が4兆ドルを突破しました。また、製薬大手Merckが英国企業のVerona Pharmaの買収を発表したことを受けて株価が堅調でした。7月10日(木) 市場は引き続き上昇基調を維持し、S&P500とNASDAQが連日で史上最高値を更新しました。Delta Air Linesが業績見通しを引き上げたことを受けて12%の急騰、United Airlinesも14%上昇と、航空株が市場を牽引しました。また、イタリアFerreroによる買収報道で食品メーカーのWK Kelloggが31%急伸するなど、M&A関連銘柄も活況でした。一方、前日に史上最高を更新したNVIDIAは一時的に利益確定売りに押されましたが、引き続き高値圏を維持しました。7月11日(金) 市場は再び下落し、ダウ平均が300ドル(-0.6%)下落しました。トランプ大統領が新たにカナダ製品への35%関税導入を検討していると表明したことで貿易摩擦への懸念が再燃しました。S&P500は0.3%、NASDAQは0.2%下落しました。関税懸念が広がった素材・資本財株が売られ、化学メーカーのAlbemarleはUBSの投資判断引き下げを受けて大きく下落しました。一方で、好調な四半期決算を発表したLevi Straussは11%上昇し、ビットコイン価格の上昇を背景にMicroStrategyやRiot Platformsといった暗号資産関連銘柄が大幅高となりました。為替市場:雇用統計でドル高になるも、税制・通商政策の不透明感から大きく動かず為替は米国の通商政策リスクと堅調な経済指標に振らされつつ、144~147円台のレンジ内で推移しました。週明け7日、トランプ政権による追加関税(日本・韓国など対象)報道を受け、ドルはリスク回避傾向の円に対し下落し、144.38円前後でスタート(週安値は144.37円) 。一方、米ドルはユーロやカナダドルに対しても軟調となり、全般的に弱含みとなりました。週の中頃(8~9日)はやや反発。通商摩擦懸念が和らぎつつ、米経済指標やテクニカル要因が下支えの役割を果たしました。特に9日は追加関税見直しの可能性により、ドル/円は146円台へ回復し、終値は146.32円前後に達しました。週後半(10~11日)は再び上昇トレンド加速。11日には一時147.44円を付けて週高値を更新、終値は147.39円で終了し、週間では+3.3%(約3円)のドル高圧力となりました。週を通して、ドル/円は通商政策の不透明感と米指標・テクニカル要因の両方に反応しつつ、144~147円のレンジ内で荒い値動きを演じました。特に追加関税懸念が発生すると円高に振れ、逆に見直しや強い経済指標が確認されるとドル高一途でした。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

雇用統計が予想を上回り、米国経済の堅調さから株価は最高値を更新|米国市場サマリー

雇用統計が予想を上回り、米国経済の堅調さから株価は最高値を更新|米国市場サマリー

先週は、米雇用統計の好調、FRBによる利下げ慎重姿勢、米中を含む通商問題の進展を受け、全体として堅調な展開となりました。週前半はOracleの好決算や銀行株への規制緩和期待から投資家心理が改善し、主要指数が揃って上昇しました。一方、パウエルFRB議長が議会証言で利下げに慎重な姿勢を示したことで一時的に上値が抑えられる場面も見られました。しかし、週半ば以降、ベトナムとの貿易合意やNVIDIAをはじめとする半導体株の好調さを背景に市場は再び上昇基調を強めました。週末に発表された6月の米雇用統計が市場予想を上回る強い内容となり、景気懸念が後退。S&P500とNASDAQは連日のように史上最高値を更新し、四半期の節目を好調に締めくくりました。なお、7月4日は独立記念日のため休場でした。全体的には、好調な企業決算と底堅い経済指標に支えられ、主要指数は週間ベースで上昇して取引を終えました。為替は、強い米雇用統計で一時145円台までドル高・円安が進みましたが、米財政・通商政策の不透明感が上値を抑え、週を通じて144円台を中心に上下動。終値は144.47円前後と、週初比では小幅なドル高で終了しました。米国株式市場:予想を上回る雇用統計で米経済の堅調さが示され、株価は最高値を更新6月30日(月) 米国株式市場は主要3指数がそろって上昇し、第2四半期を好調に締めくくりました。ダウ工業株30種平均は0.5%、S&P500は0.6%、NASDAQは0.5%上昇しました。Oracleの決算が市場予想を上回ったことが好感され、株価が4%上昇したほか、銀行株もFRBの規制緩和期待から堅調でした。一方、原油価格の軟調さを受け、エネルギー株は売られる展開となりました。7月1日(火) 市場は小動きで、S&P500とNASDAQは僅かに下落し、ダウは小幅に上昇しました。パウエルFRB議長が議会証言で利下げに慎重な姿勢を示したことが市場の上値を抑える要因となりました。また、トランプ政権の税制改革法案への注目が再燃し、利益確定の動きが見られました。Teslaは中国販売の伸び悩みが指摘され、株価が2.1%下落しました。7月2日(水) 市場は再び反発し、S&P500とNASDAQが史上最高値を更新しました。ベトナムとの貿易合意や半導体株の好調さが相場を支援しました。特にNVIDIAがAI需要の拡大を背景に時価総額4兆ドルに迫る勢いで株価が3.8%上昇しました。また、ADP雇用統計が市場予想を下回ったことで利下げ期待がやや高まり、株式市場への資金流入を後押ししました。7月3日(木) 強い米雇用統計が好感され、市場は続伸しました。ダウは0.8%、S&P500は0.8%、NASDAQは1.0%上昇し、いずれも史上最高値を更新しました。6月の非農業部門雇用者数が予想を上回ったことで、経済の強さが改めて意識されました。Nikeは四半期決算が予想を大きく上回り、株価が9.5%急伸しました。一方、利下げ観測後退で一部の高成長株が利益確定売りに押されました。7月4日(金) 独立記念日のため米国株式市場は休場となりました。為替市場:雇用統計でドル高になるも、税制・通商政策の不透明感から大きく動かず為替は中東情勢や米雇用統計、米財政・通商リスクを背景に144~145円台を中心とした上下動が続きました。週初はドルがやや弱く、月曜30日には約143.90円で始まりました。7月1日はドルが下落し143.41円まで円高が進んだ一方、米雇用統計の予想超えによって再び144円台半ばへ戻りました。週末にかけては、税制・通商政策における不透明感がドルの重しとなり、円が若干買い戻されながらも相場は144~145円のレンジで収まりました。結果として、週末終値は144.47円付近で終えました。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

中東情勢の安定化とFRB利下げ見通しで株価は最高値へ|米国市場サマリー

中東情勢の安定化とFRB利下げ見通しで株価は最高値へ|米国市場サマリー

先週は、イスラエルとイランの停戦報道による地政学リスクの後退や、FRBによる早期利下げ期待の高まりを背景に、全体として堅調な展開となりました。原油価格が急落したことでインフレ懸念が和らぎ、市場心理が改善。また、パウエルFRB議長が議会証言で慎重な姿勢を示したことで利下げ観測が一段と強まり、株式市場への資金流入を後押ししました。特にTeslaやBroadcom、Nikeなどが好材料で大きく上昇したほか、FRBが銀行のレバレッジ規制緩和を示唆したことで金融株も買われました。米中間でレアアース供給に関する合意が成立したことも投資家心理を支援し、週末にはNASDAQとS&P500が過去最高値を更新。NASDAQは4月の安値から20%超の回復を見せ、「強気相場」入りを明確にしました。結果として、主要指数は週間を通じて強い上昇基調を維持しました。為替は、中東情勢の緊張再燃で週初に146円台へ上昇しましたが、その後は地政学リスクの後退と米利下げ期待が強まったことで円高方向へ戻し、週末は144円台半ばで終了。週間では上下に振れる展開でした。米国株式市場:中東情勢の沈静化と米中協議進展でリスクオン、株価は最高値へ6月23日(月) 原油先物が一時+6%高から-7%安へ急反落し、インフレ懸念が後退したことで買いが優勢となり、ダウは+0.9%(+375ドル)、S&P500は+1.0%、NASDAQは+0.9%で反発しました。FRBボウマン副議長が「7月会合での利下げも排除せず」と発言し、金利先安観が強まったことも追い風でした。個別では Tesla がロボタクシー実証開始を受けて8%超急伸し指数をけん引、エネルギー株は原油安で軟調でした。6月24日(火) イスラエル‐イラン停戦報道で地政学リスクが緩和し、原油続落とともに金利低下期待が高まり、ダウ+1.19%、S&P500+1.11%、NASDAQ+1.43%と続伸しました。Broadcom がHSBCによる格上げで過去最高値を更新し、半導体株が全面高。FRBパウエル議長の議会証言は「当面様子見」の姿勢にとどまり、利下げ観測を裏付ける形となりました。引け後には FedEx が決算を発表し、時間外で売られました。6月25日(水) パウエル議長2日目証言を控え様子見が強まり、ダウ-0.25%、S&P500横ばい、NASDAQ+0.31%とまちまち。Tesla は欧州販売不振報道で下落し、FedEx と General Mills も弱い業績見通しで売られました。一方、引け後の決算で Micron Technology が予想を上回るガイダンスを示し、時間外で急伸。中東情勢が小康状態を保つなか、指数は高値圏で足踏みしました。6月26日(木) 好調な米耐久財受注・新規失業保険申請の減少を背景に景気懸念が後退し、ダウ+0.9%(+404ドル)、S&P500+0.8%、NASDAQ+1.0%へ上昇。FRBが大手銀行のレバレッジ規制(eSLR)緩和案を公表し、JPMorgan Chase や Goldman Sachs など金融株が全面高となりました。また、銅高を受け Freeport-McMoRan や Southern Copper が買われ、景気敏感株に資金が循環しました。6月27日(金) 米中レアアース供給加速の合意と利下げ期待を背景に、S&P500とNASDAQが終値ベースで史上最高値を更新し、それぞれ+0.52%、NASDAQも+0.52%、ダウは+1.00%で締めくくりました。好決算と関税対策を示した Nike が15%急伸し、消費関連を押し上げた一方、中国向け売り上げ懸念で MP Materials などレアアース関連が下落。トリプルウィッチング(株価指数・個別株先物・オプション同時清算)による出来高急増も相場を活性化させました。主要3指数はいずれも週間で上昇し、NASDAQは年初来高値を更新しました。為替市場:中東情勢安定化からドル高になるも、FRBの利下げ観測が出て円高に戻す為替は中東情勢と米金融政策の見通しを背景に上下に揺れ動きました。週明けの23日は、中東の軍事緊張が高まる中で安全通貨としてのドル需要が強まり、ドル/円は145円台後半から146円台へと急伸。原油価格の上昇により対円で約2.4%の急落となりました。24日以降はリスク環境がやや落ち着きを見せ、米連邦公開市場委員会(FOMC)への思惑からドルが若干軟化。テクニカル的には145円~146円のレンジ内で推移しました。米中の地政学リスク後退とも呼応し、27日には一時144.38円まで下押しされ、週末には144.6円で取引を終えました。全体として、週前半の地政学ショックによるドル高が中心となる一方、週後半にはやや落ち着いた動きに。これは、地政学リスクだけでなく米金利政策への思惑が両通貨の行方を左右したことを示しています。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

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【スリーエム決算(2025年2Q)】分社後の収益力と訴訟対応の進捗を問う四半期(3M)

【スリーエム決算(2025年2Q)】分社後の収益力と訴訟対応の進捗を問う四半期(3M)

本記事では、スリーエム(MMM)の2025年4月発表2025年度第1四半期決算を振り返り、7月に控える2025年度第2四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、長年の重荷であったPFASおよび耳栓訴訟のコスト処理が一巡しつつある一方で、再編に伴うコストや構造改革の進捗、産業需要の底打ちなど、同時多発的に重要テーマを抱える局面です。株価は7月10日に159.47ドルと52週高値を更新したばかりであり、今後の上値余地と下振れリスクを見極めるうえで、今回の決算は個人投資家にとって重要な分岐点となります。前回決算のハイライト2025年4月に発表された第1四半期決算は、総じて良好な内容でした。売上高は約60億ドルと、前年同期比では小幅な減少となりましたが、市場予想をわずかに上回る結果となっています。一方、調整後1株利益(EPS)は1.88ドルと、前年に比べて約10%の増益を達成し、アナリスト予想の1.77ドルをしっかりと上回りました。営業利益率の改善も顕著で、前年より220ベーシスポイントの上昇となり、事業運営の効率性が向上していることが数字に表れました。しかしながら、明るい業績の陰で見過ごせなかったのが、米中貿易摩擦によるコスト増です。この影響を織り込む形で、経営陣は通期のEPS予想を従来よりも引き下げ、7.60〜7.90ドルのレンジに修正しました。このガイダンスの下方修正は、好決算にもかかわらず株価にマイナスの影響を及ぼし、発表後は一時的な下落を招いています。決算後に見られた主要な動き第1四半期決算以降、スリーエムを取り巻く状況にはいくつかの大きな変化がありました。中でも注目すべきは、長年の経営リスクとされてきたPFAS(有機フッ素化合物)問題と耳栓訴訟への対応です。5月には、ニュージャージー州とのPFAS関連訴訟において最大4.5億ドルの和解に至り、同様の訴訟リスクを大幅に圧縮する道筋が示されました。また、2023年に合意された耳栓訴訟の包括和解についても、今年5月時点で60億ドル中の約半額が既に支払われるなど、将来不確実性の解消に向けた取り組みが着実に進んでいます。財務面では、5月の配当発表で1株あたり0.73ドルの四半期配当が維持され、安定的な株主還元姿勢も確認されました。利回りは現在約1.9%で推移しており、長期保有を志向する投資家にとっては一定の魅力を保っています。今回決算の注目ポイント今回の第2四半期決算では、まず売上と利益率の動向が市場の関心を集めています。引き続き関税コストの増加が懸念される中で、オーガニックな売上成長を維持できるかが焦点です。現在の市場予想ではEPSは1.77ドル前後と見込まれており、この水準を達成できるかが株価の初動に影響を及ぼすと考えられます。さらに注目されるのが、前回引き下げられた通期ガイダンスの再修正が行われるかどうかという点です。PFASや耳栓関連での和解金の支払いが一巡した後も、訴訟に伴う支出が継続する可能性はあり、それがフリーキャッシュフローや将来の配当政策にどう響くかを見極める必要があります。また、昨年のSolventumのスピンオフによって収益構造が変化した現在、残された事業セグメント(特にセーフティ&インダストリアル部門など)がどのような成長戦略を打ち出してくるのかも重要なポイントです。経営陣が示す方向性と、その実現に向けた具体的な取り組みの内容次第では、企業価値の再評価につながる可能性もあります。株価への影響と投資家への示唆スリーエムの株価は、年初からの法的リスクの軽減と事業再編の進展を背景に一時回復基調を見せましたが、足元では160ドル前後での推移が続いています。今回の決算で収益性が予想以上に維持され、かつ通期ガイダンスにポジティブな見通しが示されれば、市場は一段の上昇余地を意識することになるでしょう。株価収益率(PER)で見た場合も、現在の水準はディフェンシブ銘柄としてはやや割安感があると評価されています。一方で、売上の鈍化や関税コストの増加が利益を圧迫し、通期見通しのさらなる下方修正に繋がるようであれば、株価は150ドルを割り込む展開もあり得ます。個人投資家としては、決算発表直後の株価の動きに加え、機関投資家の売買動向にも注目しつつ、戦略的なポジション調整を考えるタイミングと言えるでしょう。

【アメリカン・エキスプレス決算(2025年2Q)】富裕層消費と信用リスクの均衡を問う決算(American Express)

【アメリカン・エキスプレス決算(2025年2Q)】富裕層消費と信用リスクの均衡を問う決算(American Express)

本記事では、アメリカン・エキスプレス(AXP)の2025年4月発表2025年度第1四半期決算を振り返り、7月に控える2025年度第2四半期決算の見どころを解説します。過去1年で株価は40%以上上昇しており、富裕層や若年層の旅行・エンタメ支出の恩恵を強く受けてきました。前回決算では過去最高水準の純利益を記録し、今期もその勢いを保てるかが問われる局面です。一方で、金利高止まりや米国内経済の減速観測が強まるなか、カード利用の鈍化や与信費用の増加といったリスク要因も市場は慎重に見ています。前回決算の振り返りアメリカン・エキスプレスが発表した2025年第1四半期(1〜3月期)決算では、売上高が約170億ドルと前年同期比で8%の増加となり、純利益は26億ドル、1株当たり利益(EPS)は3.64ドルと、前年を上回る水準でした。特に旅行やエンタメ関連の支出が活発だったことで、総取扱高は前年同期比で8%増加しました。ミレニアル世代や富裕層を中心とするカード会員の利用が堅調で、高単価な支出が全体を押し上げた格好です。信用リスクの面でも安定感がありました。30日超の延滞率は1.3%、ネットチャージオフ率は2.1%と前四半期とほぼ変わらず、貸倒引当金も前年を下回る水準で済んでいます。経営陣は2025年通期のガイダンスを据え置き、売上成長8〜10%、EPS15〜15.5ドルを達成可能とする強気な見通しを維持しました。決算後の動きと注目材料第1四半期決算以降、アメリカン・エキスプレスは株主還元をさらに強化しています。5月支払い分から四半期配当を1株あたり0.70ドルから0.82ドルに引き上げ、年間ベースで約17%の増配となりました。さらに、4月以降の自社株買いはすでに15億ドルを超えており、潤沢なフリーキャッシュフローを背景にした資本政策が継続されています。カード利用の実勢も堅調です。特に海外旅行や高額な体験型消費が引き続き活発で、第2四半期における総取扱高も前年同期比で8〜10%程度の伸びが予想されます。一方で、件数ベースでの伸びが鈍化している兆しもあり、価格ベースの増加が支出全体を押し上げている構図も見られます。サービスの拡充も進められており、アメリカン・エキスプレスは中小企業(SMB)向けのビジネス・チェック口座の提供範囲を広げています。さらに、デルタ航空との提携を強化し、提携カード会員に対して新しい予約システム(NDC)を導入予定で、航空関連の利用をいっそう促進する施策にも取り組んでいます。今回決算の注目点今回発表される第2四半期決算では、EPSが3.85~3.87ドル、売上高は177億ドル前後とする市場予想が中心です。中でも最も注目されるのは、旅行旺盛期である第2四半期において、アメリカン・エキスプレスの取扱高がどの程度伸びたかという点です。もし前年比で2桁増が維持できれば、通期ガイダンスの上方修正が現実味を帯びてくる可能性があります。また、信用リスクの推移にも目を光らせる必要があります。現在のところ、延滞率や貸倒率は安定していますが、S&Pなどの格付機関は2025年後半にかけて米国のクレジットカード損失がじわじわと上昇すると見ています。アメリカン・エキスプレスがこの傾向からどの程度影響を受けるかは、今後のプロビジョン(引当金)動向に表れます。加えて、営業費用の動きも業績を左右します。前期はマーケティング支出やIT投資が増加し、営業費用率がやや上昇しました。今期も中小企業向けサービスやデジタル基盤の強化にともなう費用増が予想されており、収益性への影響が注視されます。さらに、経営陣が2025年通期のガイダンスを維持または引き上げるかどうかが、株価の方向性を決定づける材料となるでしょう。フリーキャッシュフローが堅調であれば、今後の増配や追加の自社株買いといった株主還元余地もさらに広がります。株価の現状と投資判断の視点アメリカン・エキスプレスの株価は7月10日時点で320ドル台となっており、年初来高値である329ドル台に迫る水準で推移しています。PERはおよそ22倍と、過去5年平均に近い水準です。これまでの上昇が業績好調を織り込んできたことを考えると、今回の決算が市場予想を上回れば340ドル超えも視野に入ります。一方で、カード利用の伸びが頭打ちとなった場合や、信用費用の想定以上の増加が確認された場合には、短期的な調整リスクも否定できません。まとめ2025年7月のアメリカン・エキスプレス決算は、旺盛な富裕層消費が続くなかで収益拡大と信用リスク管理の両立ができているかを確認する重要なタイミングとなります。取扱高が前年を上回り、信用指標が安定していれば、通期見通しの上振れ期待が強まり、株価の一段高につながる可能性もあります。逆に、取扱件数の鈍化や引当金の増加といった弱材料が出た場合は、利益確定売りのきっかけとなる可能性もあります。個人投資家としては、アメリカン・エキスプレスの成長性とリスク管理のバランス、特に高所得層を対象にしたビジネスモデルの強みがどこまで利益の安定性を支えているかを慎重に見極める必要があります。また、配当や自社株買いといった還元政策が持続可能かどうかも、中長期投資の判断材料として重要な視点となるでしょう。

【ペプシコ決算(2025年2Q)】値上げ頼みから需要回復への転換点を探る(PepsiCo)

【ペプシコ決算(2025年2Q)】値上げ頼みから需要回復への転換点を探る(PepsiCo)

本記事では、ペプシコ(PEP)の2025年4月発表2025年度第1四半期決算を振り返り、7月に控える2025年度第2四半期決算の見どころを解説します。株価は年初来で軟調な推移を続けるなか、今回の決算は「値上げ頼み」から「数量回復」へと局面が移行できるかを占う重要な節目となります。前回決算の振り返りペプシコが発表した2025年1~3月期決算では、売上高が179億ドル、調整後1株利益(EPS)が1.48ドルとなり、いずれも市場予想を上回る結果でした。特に価格改定が利益を押し上げたことが大きく、北米飲料部門では価格が8%上昇し、全体の収益に寄与しました。しかし、北米飲料の出荷数量が3%減、食品部門が1%減となり、数量面の弱さが明らかになりました。スナック分野においても、フリトレー北米の成長率はわずか1%にとどまり、同社CEOのラグアルタ氏は「消費者のスナック需要が想定よりも早く鈍化している」と語っています。営業利益率はコスト削減策の効果で前年同期から70ベーシスポイント改善したものの、為替の逆風や価格弾力性の低下を考慮して通期のEPSガイダンスは7.86ドルへ引き下げられました。4月以降の主な動き決算後、ペプシコは株主還元姿勢を一段と強めました。2月には四半期配当を1株あたり1.355ドルへと約7%増配し、連続増配年数を53年に更新しました。3月には1億8,300万ドル規模の自社株買いも実施し、年間の買い戻し総額は20億ドルを超える規模に拡大しています。また、近年市場で話題となっているGLP-1系の減量薬(例:オゼンピックなど)による食品・飲料需要の減退懸念について、同社は「現時点で業績への影響は見られない」としています。ただし、リテールデータ上では小容量パッケージの売上比率が上昇しており、健康志向に応じた「ポーションコントロール」への戦略転換が始まっていることも確認されています。一方で、飲料・スナックの価格は年初に再び引き上げられており、特に北米では平均価格の上昇が継続しています。この価格戦略がどこまで消費者に受け入れられるかは、今後の需要回復に直結するため、重要な判断材料となります。今回の決算で見ておくべきポイント今回発表される第2四半期決算では、アナリストの予想として売上高が222~224億ドル、調整後EPSは2.03~2.04ドルが想定されています。市場の関心はまず、米国における飲料・スナックの販売数量が底入れしたかどうかに向けられています。年初から展開している広告キャンペーンや新商品の投入が奏功し、数量が回復傾向を示せば、投資家心理にプラス材料となるでしょう。また、ARPU(1人あたり平均売上)の動向にも注目です。年初の価格引き上げの効果が持続していれば、数量が横ばいでも収益が伸びる可能性がありますが、仮に価格が限界に達して消費者離れが進んでいるようであれば、今後の成長シナリオに不安が生じます。原材料コストや物流費の動向も利益率に大きく影響します。昨年高騰したPET樹脂や燃料価格は現在落ち着きを取り戻しており、これらのコストが下がっている場合、粗利益の改善要因として働く可能性があります。経営陣がどのようなコスト見通しを示すかにも注目が集まります。さらに、株主還元の原資となるフリーキャッシュフロー(FCF)の見通しが修正されるかどうかも評価材料となります。第1四半期の時点でFCFは35億ドルを超えており、もし通期の見通しが引き上げられるようであれば、配当や自社株買いの強化が期待され、株価の支援材料となるでしょう。株価動向と投資判断の視点株価は7月10日時点で136.08ドルとなっており、年初来の高値からはおよそ24%下落した水準にありますが、同業のコカ・コーラに比べるとやや優位なパフォーマンスとなっています。現在のPERは約22倍で、過去5年平均の25倍を下回っており、業績の持ち直しが確認できれば再評価される余地は残っています。逆に、今回の決算で数量回復の兆しが見られなかった場合や、価格弾力性の限界が露呈した場合には、120ドル台前半まで調整する可能性も考えられます。個人投資家としては、今後の投資スタンスを「インカム重視(配当)」とするか、「キャピタルゲイン狙い(株価上昇)」とするかを明確にしたうえで、数量・価格・コスト・キャッシュフローのバランスを冷静に見極める必要があります。まとめペプシコの今期決算は、ここ数年続いてきた価格主導の成長が一巡し、実需ベースでの回復に転じるきっかけとなるかを見極めるうえで非常に重要です。販売数量の底打ち、原材料コストの減少、株主還元の持続性が確認できれば、株価は再び150ドルを目指す動きが見込めます。一方で、数量が戻らず値上げの余地も限られる場合は、しばらくもみ合いの展開が続く可能性もあります。個人投資家としては、業績が景気動向に左右されにくい消費財株であるペプシコの安定感を評価しつつも、足元の需要環境やコスト構造、成長投資の配分に目を配りながら、自身の投資目的に合ったスタンスで臨むことが求められます。

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【米国株見通し】S&P500相次ぐ年末目標上方修正、強気相場継続なるか

【米国株見通し】S&P500相次ぐ年末目標上方修正、強気相場継続なるか

2025年第2四半期、S&P500は2023年以来、ナスダック総合指数は2020年以来の大幅上昇となり、米国株は過去最高値で四半期を終えました。 本記事では、市場関係者による2025年後半の米国株見通しを紹介します。S&P500、相次ぐ年末目標の上方修正足元では、米国株の好調を受けて、ウォール街でS&P500の年末目標の引き上げが相次いでいます。主要金融機関・調査会社による2025年末のS&P 500の目標値ファンドストラット: 6600モルガン・スタンレー:6500ヤルデニ・リサーチ:6500ドイツ銀行:6550シティ:6300UBS:6200ゴールドマン・サックス:6100バークレイズ:6050JPモルガン:6000ファンドストラット:年末6600予想ファンドストラット・グローバルアドバイザーズのトム・リー氏は、AI関連企業を中心に企業業績が堅調で、関税問題の影響も予想より小さく、インフレ圧力も抑えられていることから、S&P500指数の年末目標を6600に設定しています。同氏は、関税懸念に敏感に反応していた市場が、現在むしろ企業業績や経済指標、そしてAI関連の投資動向に注目しており、楽観的なムードが広がりつつあると指摘。また、ISM製造業指数が50を下回る「景気後退圏」で推移していることから、まだ景気の谷にある可能性が示されており、指数が50を超えれば新たな強気相場への転換するとの見通しを示しました。懸念点としては、ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法案(税制改正草案)が米国債務の持続可能性に与える影響があるものの、ここ数週間の市場の反応を見ると、投資家は「単なる予算の問題」として捉えていないようだと述べています。モルガン・スタンレー:年末6500予想モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、年内2回の利下げが実施される可能性があることから、S&P500指数の年末目標を6500と予想しています。同氏は、4月に市場が一時的に下落したものの、すでに底を打ち、現在の反発局面はより持続的な上昇トレンドの始まりであると見ています。関税問題についても、市場はトランプ前大統領の姿勢が今後軟化する可能性を織り込み始めており、過度な懸念は不要だと指摘。企業業績も予想以上に底堅く、収益の上方修正が相次いでいることが強気の背景にあります。また、中東の地政学リスクや原油価格の動向が落ち着きを見せていることから、経済全体としての不透明感は後退しつつあると判断しています。ヤルデニ・リサーチ:年末6500予想ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏は、S&P500指数の年末目標を6500に設定し、「現在は明確なブルマーケットであり、1960年代半ば以降の最も優れた強気相場のリターンに匹敵する可能性がある」と述べています。同氏は、地政学リスクや関税圧力等の逆風にもかかわらず、関税不安の緩和やAI関連企業への投資増加、今後の利下げ見通しなどを根拠にリバウンドを強調。S&P 500は2030年までに10000まで上昇しうると楽観的なシナリオを示しています。一方で、現状は「マイルドなバブル(melt‑up)」に近い状態であり、実際にバブルへと発展する可能性をリスクとして提示。特に市場心理が過熱しすぎるタイミングには「急落リスク」も視野に入れるべきだと警鐘を鳴らしています 。ドイツ銀行:年末6550予想6月2日、ドイツ銀行は関税の影響緩和や好調な経済見通しを理由に、S&P500指数の年末目標を6150から6550に引き上げました。過去2年間の株高をけん引した多額の資金流入と強力な自社株買いが2025年も続き、S&P500構成銘柄の1株利益は282ドルと見通しました。シティ:年末6300予想シティグループは、これまでの予想を上回るAI関連銘柄の強さや企業の業績改善、インフレの落ち着きなどを背景に、S&P500指数の年末目標値を5800から6300に引き上げました。同社は「金利がピークを打ち、関税に対する過度な懸念も後退している」と分析しており、テックセクターを中心とした投資家のリスク選好が継続していることから、中期的には6500も視野に入ると述べています。UBS: 年末6200予想6月26日、UBSグローバル・ウェルス・マネジメントは、貿易摩擦の緩和や底堅い四半期の企業利益見通しを踏まえ、2025年末のS&P500指数の目標を従来の6000から6200に引き上げました。また、「経済が関税の一時的な影響に適応すれば、2025年後半には成長とインフレが改善し始めるだろう」という見通しを示し、2026年の年末目標についても6400から6500に上方修正しました。ゴールドマン・サックス:年末6100予想ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・コスティン氏は、関税率の低下、経済成長の改善、景気後退リスクの減少を織り込み、6ヶ月後(2025年末)の目標株価を5900から6100に引き上げ、12ヶ月後の目標株価を6500としました。同行は、S&P 500企業の1株当たり利益が2025年に前年比7%増の262ドル、2026年には同じく7%増の280ドルになると予想し、これらの予想は「2025年第1四半期の業績が予想を上回り、今後数四半期における米国経済の成長見通しが力強いことを反映している」と述べています。バークレイズ:年末6050予想6月4日、バークレイズは関税不安の収束や企業業績の回復を材料に、S&P500指数の年末目標を5900から6050に引き上げました。同社は関税について、来年は今年と比較して追加の直接的な影響はないと予想されるが、成長とインフレへの二次的な影響は来年まで及ぶ可能性があると述べました。また、来年末のS&P500種指数の目標を6700ドル、構成銘柄の1株利益285ドルと見通しています。JPモルガン:2025年末までに6000予想6月5日、JPモルガンのストラテジスト、ドゥブラヴコ・ラコスブジャス氏は、S&P500指数の年末目標を5200から6000に引き上げました。同氏は「上昇余地はほとんど残されていない」と述べ、現在の株価水準は多くのポジティブ材料をすでに織り込んでいると指摘。AIブームや関税リスクの後退を認めつつも、今後のリスク管理の重要性を強調しました。また、相場の主導役が、これまでの強気相場をけん引してきた大型テクノロジー企業に再び戻ると予想。最も確信度の高い取引としてモメンタム株、特にハイテク7社「マグニフィセント・セブン」や半導体、その他AI関連の銘柄を挙げています。

米半導体株が急反発、中東AI投資と米中規制緩和が追い風に

米半導体株が急反発、中東AI投資と米中規制緩和が追い風に

4月下旬以降、米国株市場では半導体セクターの主力銘柄が急速に反発し、底値圏からの戻りが鮮明になっています。空売りの買い戻しが相場を押し上げ、米中関税引き下げに加え、中東でのAI投資拡大を追い風に、半導体大手エヌビディア(NVDA)は約40%高の上昇パフォーマンスを記録しました。本記事では、半導体株の見通しを左右する中東のAIインフラ投資や主要半導体企業の決算、そして米中関係を巡る貿易・輸出規制動向を解説します。オイルマネーが半導体需要を下支え米半導体大手、サウジAI企業と相次ぎ提携5月13日、トランプ大統領によるサウジアラビア訪問に合わせて、エヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、クアルコム(QCOM)などが、サウジ政府系ファンド傘下のAIスタートアップ企業「ヒュメイン」との業務提携を発表しました。さらに翌5月14日には、スーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)が、サウジ拠点のデータセンター事業者「DataVolt」 と総額200 億ドルにのぼる提携を発表し、同社の株価は時間外取引で15%急騰しました。トランプ政権は、サウジへの米国製AI向け半導体のアクセス拡大を認める方向で調整をしています。合意が実現すれば、サウジは最先端半導体を一段と購入できる環境が整います。アナリストらは「サウジアラビアの市場機会は、今後数年間で世界のAI市場全体に1兆ドルの付加価値をもたらす可能性がある」と想定しており、こうした動きは市場やハイテク銘柄に織り込まれていない述べています。ただし、両国政府は初期段階の合意に至ったものの、重要な詳細の数字についてはまだ調整が続いています。UEAでは大規模AIインフラ投資が始動5月15日には、トランプ大統領とムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンアラブ首長国連邦(UAE)大統領との会談で、UAEが米国のAIインフラ共同事業「スターゲート・プロジェクト」に出資を行い、両国のAIインフラを整備するというパートナーシップが発表されました。UAE政府系企業G42、オープンAI、オラクル(ORCL)、エヌビディア、シスコシステムズ(CSCO)、ソフトバンクグループが連携し、UAEに大規模次世代AIインフラ「スターゲートUAE」を建設。第一弾として、2026年には200メガワット(MW)分のデータセンターが稼働する見通しです。オープンAIによると、スターゲートUAEは半径2,000マイル圏内、最大で世界人口の半数にAIインフラを提供できるとされています。AI向け半導体企業の決算は好調また足元の決算では、AI投資需要の鈍化を懸念する声がやや先行していたものの、実際には堅調な業績が確認されました。ハイテク大手のAI需要は続く見込みAI向け半導体の主要顧客である、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズの4社による直近数四半期の設備投資は計500億ドルに達しています。1~3月期決算においても設備投資の意欲は衰えておらず、データセンターなどAI向け半導体需要が引き続き強いことが確認できました。中でも、クラウド大手はAIインフラの拡充が収益の成長に直結し、マイクロソフトとアルファベットはクラウド部門の売上高伸び悩み要因として、「AI計算能力の制約」を挙げています。半導体大手は好決算だが、投資家の期待も高いAI用半導体を供給している、エヌビディアの2~4月期売上高は前年同期比69%増の441億ドル。アドバンスト・マイクロ・デバイセズの売上高は前年同期比36%増の74.4億ドルと、大幅な増収で市場予想を上回り、株価上昇となりました。一方、ブロードコム(AVGO)の決算発表では、5~7月期の売上高見通しが予想をわずかに上回ったものの物足りないと受け止められ、株価は下落。AI半導体需要は一部の投資家の期待ほど強くないとの見方も出て、関連銘柄に売りが広がりました。 アナリストは、力強いAI見通しがあるにもかかわらず、ブロードコムの売上高見通しが冴えないのは非AI分野の半導体の回復が鈍く、その分が売上高の成長率を相殺している可能性があると分析しています。対中輸出規制は緩和の兆しも、輸入関税に警戒感こうした中、半導体セクターにとって懸念として残るのは、米国の対中貿易規制です。5月13日、トランプ大統領はバイデン政権下で発表されたAI向け半導体の輸出規制案の撤回を表明。現在、新たな枠組みの策定が進められています。市場では、米中間で歩み寄りの姿勢が見え始めるなか、「想定よりも規制は緩やかになる」との見方が台頭しています。これまで半導体は相互関税の対象外でしたが、今後相互関税とは別の枠組で米国外からの半導体輸入に関税が導入される見込みです。トランプ大統領は過去に、半導体チップに税率25%以上の輸入関税を課す可能性があると発言しており、リスク要因として注視が必要です。

【中国株見通し】米中関税一時緩和で中国株に再評価の動き

【中国株見通し】米中関税一時緩和で中国株に再評価の動き

米国と中国が相互に発動していた関税を90日間大幅に引き下げることで合意したことを受け、主要金融機関は中国経済の成長見通しを上方修正し、中国株への投資スタンスを見直す動きが広がっています。本記事では、市場関係者による中国株の今後の展望を紹介します。米ヘッジファンドが中国株への投資を拡大関税問題で下落していた中国株は、米中交渉の進展を受けて反発。上海総合指数や香港ハンセン指数はいずれも50日移動平均線を上抜け、テクニカル的にも上昇トレンド入りの兆しを見せています。モルガン・スタンレーによると、特に米国拠点のヘッジファンドが中国株への投資を拡大。米国で取引される中国株(ADR)や中国市場のA株(人民元建て株)に資金を振り向け、タイ、インド、オーストラリアなど他のアジア資産の保有を減らす動きが出ています。ただし、中国株へのエクスポージャーは依然として過去のピークを大きく下回っています。M&Gインベストメンツの投資ディレクターは、極端に軽くなった投資家のポジションや割安なバリュエーションにより、中国株はリスク・リターンの面で非常に魅力的となる可能性があると述べています。見通しの上方修正が株式回復を後押しUBSは直近のレポートで、貿易摩擦の緩和が経済成長へのショックを和らげるとし、2025年の中国GDP成長率予想を従来の3.4%から3.7〜4.0%に引き上げました。モルガン・スタンレーも、関税の一時停止措置が輸出や生産の前倒しを促すと見て、短期四半期GDP成長率予想を上方修正。第3四半期には一時的に4%を超える成長になる可能性があると述べています。野村証券は中国株の投資判断を「戦術的オーバーウェイト」に引き上げ、一部ファンドをインドから中国へとシフト。シティは、ハンセン指数の年末目標値を2%引き上げて2万5000とし、2026年上半期には2万6000に達すると予測しています。一時的な反発も、残る不透明感一方で、一部の市場関係者は「今回の合意は一時的な停戦に過ぎず、根本的な突破口とは言えない」と慎重姿勢を保っています。UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのエバ・リー氏は「企業業績の改善や政策支援が見られない限り、株価の上値は限定的」と指摘し、既に多くの好材料は市場に織り込まれており、米中交渉の長期化や中国の有効な経済対策の欠如がリスク要因として残るとしています。また、中国人民元はドルに対して緩やかな上昇基調にあり、デフレ圧力の継続を背景に中国国債の利回りが一段と低下する可能性もあります。

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【投資信託の基礎】人気・実績の高いファンドは?分配金型と再投資型の違いや売却タイミングも解説

【投資信託の基礎】人気・実績の高いファンドは?分配金型と再投資型の違いや売却タイミングも解説

本記事では、投資信託の基礎知識から、資金流入や運用実績上位のファンドの特徴、分配型と再投資型の違い、売却タイミングの考え方をわかりやすく解説します。目次知っておきたい投資信託の基礎資金流入が多いファンド、運用実績の良いファンドは?テーマ型投資信託の「旬」と選び方「分配金型 vs 再投資型」どちらを選べば良いか?投資信託はいつ売る?知っておきたい投資信託の基礎投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、専門家が株式や債券などに分散投資を行い、その運用成果を投資家に分配する金融商品です。少額から始められ、リスク分散が図れる点が特徴です。2025年5月の追加型株式投信(ETF除く)への資金流入額は約9,000億円と、24カ月連続の流入超過が続いています。資金流入が多いファンド、運用実績の良いファンドは?個別ファンドを見ていくと、上位3ファンドが資金流入額の約45%を占めており、国際分散型・米国株型の根強い人気が際立ちます。過去1カ月で資金流入が多かったファンド(2025年5月末時点)eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):+1620億円eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):+1420億円インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし> 毎月決算型:+1029億円「世界中に分散して投資したい」という投資家心理は根強く、全世界株式型(オルカン)は地政学リスクや特定国への依存を避けられる点が特に評価されています。一方、米国の株式市場が長期的に堅調であるとの見方は崩れておらず、S&P500連動も依然として強い支持を得ています。過去3年の運用実績が良かったファンド(2025年5月末時点)iFreeNEXT FANG+インデックス:年率+42.9%FANG+インデックス・オープン:年率+42.9%野村世界業種別投資シリーズ (世界半導体株投資):年率+38.1%過去の運用実績に注目すると、FANG+(米メガテック10選)や半導体ファンドが上位に並びます。オルカンやS&P500などに比べ、これらのファンドは構成銘柄が絞られており、成長企業への集中投資となっているのが特徴です。リスクは高まるものの、相場環境が追い風になる局面では一気にリターンが伸びやすい構造となっています。FANG+や半導体企業は、生成AIの普及により「業績を伴った株価上昇」が続いているため、過去3年で他のファンドを大きく上回るリターンを記録しています。テーマ型投資信託の「旬」と選び方AIや半導体、宇宙、脱炭素など、特定の産業や社会課題に焦点を当てた「テーマ型ファンド」は、将来性の高い分野に乗れるという魅力がありますが、市場のブームに合わせて値下がりリスクも高く、「投資先の中身」と「投資のタイミング」の見極めが重要になります。テーマ型ファンドのよくある落とし穴としては、投資先の中身がテーマに沿っていないことがあります。例えば、ロボット関連をテーマとしながら、実際には大手IT企業に広く分散しているというケースもあります。また、テーマ型ファンドは話題になった直後に登場しやすく、既にテーマが株価に織り込まれている状態の可能性もあります。銘柄がメディアで頻繁に取り上げられていたり、同じテーマの類似ファンドが増えはじめている状況は、過熱感が出ているサインといえます。堅実な運用を望む方は、ポートフォリオに補助的に加えるのが失敗しにくい運用法です。「分配金型 vs 再投資型」どちらを選べば良いか?また、投資信託を選ぶうえで迷いやすいのが、分配金が出る「受取型」と分配金を再投資する「再投資型」の選択です。✅ 「受取」型は現金収入が定期的に得られる一方で、非NISA口座では分配金に課税✅ 「再投資」型は分配金を自動的に再投資し、資産が複利で成長投資目的が資産形成の場合は「再投資」型、生活費の補填を意識するなら「受取」型が向いています。投資信託はいつ売る?最後に、投資信託をいつ売れば良いか分からない──これは多くの投資家が抱える悩みです。投資信託を売却する際に重要なのは「なぜ売るのか?」という目的の明確化です。✅ 利益が十分出ている→「利益確定」して次の機会へ✅ 長期間パフォーマンスが悪い→ 構造的な弱さがある場合、「損切り」も検討✅ ファンドの方針変更・組入銘柄の入れ替え → 元の想定と違うなら一部売却も視野に投資信託は基本的に長期保有が前提ですが、売ることも投資の重要な戦略です。定期的な見直しと冷静な判断が、投資信託で資産形成を成功させる鍵となります。

【新NISA】一括投資と毎月積立どちらがいい?メリットとデメリットを解説

【新NISA】一括投資と毎月積立どちらがいい?メリットとデメリットを解説

本記事では、一括投資と毎月積立のメリットとデメリットを紹介し、新NISAでの実践方法を解説します。新NISA制度(少額投資非課税制度)の概要については、以下の解説記事をご覧ください。一括投資と毎月積立のメリットとデメリット一括投資は早期投資でリターンを最大化特徴投資資金を一度に全額投入運用成果が短期的には投資タイミングに依存メリット市場上昇時の利益最大化: 相場上昇する局面では高いリターンを得やすいデメリットタイミングリスク: 投資時期が市場のピーク付近の場合、大きな損失を被る可能性がある資金拘束: 一度に大きな資金を投資するため、流動性が低下一括投資は、リスクを許容しながら、将来の市場上昇を見越して積極的にリターンを追求したいと考える投資家に適しています。世界最大級の資産運用会社Vanguardによると、1976年から2022年にかけて一括投資は積立投資(ドルコスト平均法)と比べて約68%の確率で高い年間リターンを達成しています。これは市場が上昇傾向にある場合、より早く投資資金を市場に投入することでリターンを最大化できるためです。また、ポートフォリオに占める株式の比率が高いほど一括投資の優位性は大きくなります。毎月積立は投資のリスクを分散特徴一定額を定期的に投資投資タイミングが分散され、購入単価が平準化メリットリスク分散: 株価に関係なく投資するため、価格変動リスクを軽減デメリット上昇相場でのリターン低下: 一括投資と比べて、市場が継続的に上昇している場合はリターンが低くなる資産形成に時間がかかる: 投資額を積み上げるのに長期間を要する一方で積立投資は、投資タイミングを分割することで短期間の市場変動リスクを軽減し、特に市場が急落した場合に、一括投資よりもリターンが良いことがあります。そのため、市場の変動に対して冷静でいたい人や、短期損失やリスクを抑えつつ長期的に安定した資産形成を目指す投資家に向いています。新NISAでの一括投資と毎月積立の実践方法年間投資枠は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」で計360万円新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります。つみたて投資枠は、金融庁の基準を満たした投資信託について購入できる枠で、年間投資枠は「120万円」までです。一方、成長投資枠は、投資信託のほか個別株等も購入できる枠で、年間投資枠は「240万円」までです。新NISAで一括投資できるのは、成長投資枠のみつみたて投資枠は積立での投資を前提とされており、原則毎月10万円が上限となっています。そのため、年間投資枠を一括投資することはできません。成長投資枠については、一括投資と積立投資どちらも利用可能なため、年間投資枠の240万円までは一括投資できます。毎月積立する場合は月額30万円まで毎月積立を実践したい方は、つみたて投資枠の10万円と成長投資枠の20万円を合計した30万円までは新NISAで毎月積立投資が可能です(ボーナス月を設定した場合は、年間投資枠の範囲内で追加買付が可能)。ブルーモ証券では、毎月のつみたて投資を設定すると、自動で月々の投資額をつみたて枠と成長投資枠の1:2の比率に分けて買付を行うため、意識せずともNISA枠が効率的に埋まるように投資ができます。ブルーモ証券のかんたんNISAの詳細についてご関心のある方は、以下をご覧ください。

出金はいつしたら良い?長期資産形成を成功させるためのコツ

出金はいつしたら良い?長期資産形成を成功させるためのコツ

資産運用で利益が出ると、「利益を確保して出金したい」「損失が出る前に売ってしまいたい」と感じる方も多いかもしれません。しかし、長期的に資産を増やす観点から考えると、短期的な利益確定には慎重な判断が必要です。以下に、出金を検討するときに思い出したい、資産運用を成功させるための3つの重要なポイントを詳しく説明します。1. 利益確定によるデメリットを理解する資産がプラスに転じると、売却してその利益を確定したくなるものですが、長期的に資産を成長させるためには、短期の利益確定にはいくつかのリスクとデメリットがあります。税金が発生する資産を売却して利益が出た場合、約20%の税金が利益から差し引かれます。その結果、再投資する際の元本が減り、資産を成長させるための複利効果も小さくなります。長期的な運用を目指すのであれば、売却せずに資産を保有し続けることで、税金の支払いを先送りし、資産が複利で成長する恩恵を最大限に受けることができます。タイミングの見極めが難しい短期的な利益確定では、相場の上昇・下落を予測して適切なタイミングを見極める必要があり、これはプロであっても容易ではありません。売却した後に相場がさらに上昇することも多く、保有し続けていれば得られたはずのリターンを逃してしまう可能性が高くなります。こうした理由から、長期的な視点で持ち続けるほうが、安定した成長を期待できます。複利効果を失う複利の力は、長期的に資産運用を続けることで最大限に発揮されます。利益確定によって出金を繰り返すと、その都度複利効果が断たれ、最終的なリターンが小さくなりがちです。資産を保有し続け、再投資することで「利益が利益を生む」サイクルを活かすことができ、長期的に安定した資産成長が期待できます。たとえば、10年間5%の複利で運用した場合、元本は1.63倍になりますが、毎年の利益確定があるとこの成長は抑えられます。出金の判断は慎重に行い、複利の力が長期的に働くことで資産を着実に増やしていくことを意識しましょう。2. 出金は「本当に必要なときに、必要な分だけ」に留める資産運用の基本方針として、出金のタイミングを「資金が本当に必要なとき」に限定するのが賢明です。急な出費や緊急の資金が必要な場合には、必要な額だけを引き出し、残りの資産はそのまま運用を続けることが、資産成長を最大化する上で大切です。出金をこのように「必要最小限」に留めることで、資産が運用される時間を長く保ち、最終的なリターンを大きくすることができます。3. 短期の相場変動を気にしすぎない資産運用をしていると、短期的な相場変動によって一喜一憂しがちですが、こうした変動に過剰に反応することは、長期的な成長の妨げになりがちです。人間は、「利益があるうちに確保したい」「損失をできるだけ避けたい」という心理が強く働くため、少しでも相場が上昇すると利益確定したくなり、逆に下落すると早めに売却したくなる傾向にあります。しかし、こうした感情的な反応が続くと、資産運用の本来の目標である「長期的な資産成長」に悪影響を及ぼす可能性が高まります。たとえば、過去30年間で米国株(S&P500指数)は平均年率8%で成長してきましたが、年ごとのリターンはプラスとマイナスの変動がありました。長期的に見れば、リーマンショックやコロナショックのような大きな下落も、運用を続けることで回復し、その後の成長を享受することができたケースが多くあります。まとめ:出金は生活の必要ベースにして、長期目線の運用を続ける資産運用で利益が出たときに出金したくなる気持ちは自然なものですが、長期的な資産成長を目指すなら、短期的な利益確定は慎重に検討すべきです。「本当に必要なときに必要な分だけ出金し、それ以外は淡々と運用を続ける」ことで、資産が複利の恩恵を最大限に活かして成長しやすくなります。短期の変動に囚われず、計画に沿った運用を続けることで、最終的な資産成長が期待できるでしょう。

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