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AI相場の次なる本命は?M7からインフラ銘柄へ
「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれる、米国の大型テクノロジー企業7社(エヌビディア、マイクロソフト、アップル、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、テスラ)は、生成AIの進化を背景に、2023年以降米国株市場の上昇を牽引してきました。しかし2025年に入り、市場のリーダー銘柄は拡大し、AI相場の主役が再定義されつつあります。本記事では、こうした変化の背景と注目される新たな成長銘柄を整理します。M7の収益優位性に変化の兆しM7はスマートフォン、検索、Eコマースなど、消費者接点を強みに成長し、近年はAIモデルの開発を原動力に、クラウド、半導体、デジタル広告などの分野でリーダーシップを強化しています。2025年第2四半期の決算ではM7の合算EPS成長率は約25.3%と、M7を除くS&P 500構成銘柄群の約7.5%に比べて3倍以上の伸びを示しました。一方で、M7内でも成長の二極化が進みつつあり、エヌビディア、マイクロソフト、アルファベット、メタの4社が、AI領域で優位性を維持する一方、テスラやアップルの影響力は低下傾向にあるとの見方も出ています。FactSetの分析によると、M7の成長鈍化に伴い、M7を除くS&P 500の493社との成長率の差はすでに縮小しており、今後1年間でさらに縮まる見通しです。M7のEPS成長率は2026年第1四半期まで約15%で推移し、同時期に他の銘柄群は約11%へ成長。その後2026年第3四半期には約14.6%に到達する見込みです。「AIつるはし銘柄」の急成長2025年は、AIモデルの開発・運用を支える「AIつるはし銘柄」の株価が大きく上昇しています。19世紀のゴールドラッシュで、金を掘る人よりも「つるはしやスコップを売る商人」が儲けたように、生成AIの活用が本格化する時代においては、AIモデルを動かすための半導体やクラウド基盤、電力インフラ企業などが、業界全体の成長を支え、安定的な収益を確保する構図が広がっています。こうした潮流を受け、市場では「AI相場の主役はアプリケーションからインフラ層へと移りつつある」との見方が広がり、M7にブロードコムや台湾積体電路製造を加えた「Elite 8」や「Incredible8」といった新たな分類も提起されています。注目される成長銘柄候補ブロードコム(AVGO)AI向け半導体需要の拡大により、エヌビディアの株価が過去1年間で約44%上昇しているなか、ブロードコムの株価は同期間で約108%上昇しました。2025年10月29日時点で、同社の時価総額は約1.76兆ドルに達し、すでにメタやテスラを上回っています。ブロードコムは、データセンターで重要なコンポーネントとなっているイーサネットスイッチングおよびネットワーク製品のパイオニアであり、公式ブログでは「インターネットトラフィックの99%が何らかの形でブロードコムの技術を経由している」と説明されています。今後の成長を牽引するのは、特定用途向け集積回路(ASIC)です。これらのチップは特定のAIタスクにカスタマイズ可能で、電力コストや処理効率の両面で優位性を持ちます。10月13日にはOpenAIとの間で、今後4年間で10ギガワットのカスタムチップ導入を支援する契約を発表しました。メリウス・リサーチの推計では、1ギガワットあたり200億ドルの追加収益につながり、2026年後半から少なくとも年間400億ドルの収益が上積みされる可能性があるとされています。台湾積体電路製造(TSMC)TSMCは世界最大の半導体ファウンドリーとして、エヌビディアやアップルをはじめとする主要テクノロジー企業の最先端チップを製造しています。生成AI需要による高性能コンピューティング(HPC)向けチップ受注が業績を押し上げており、2025年第3四半期の純利益は前年同期比で39.1%増となり、7四半期連続で増収増益を記録しています。TSMCは、AIチップに不可欠な先端パッケージ技術「CoWoS」を独占的に供給しています。このパッケージ工程は、AIサーバー向けGPU生産のボトルネックとされており、TSMCが供給能力を拡張できるかどうかがAIインフラ全体の生産ペースを左右します。同社は2025年から2026年にかけて大規模な増産投資を進めていますが、2026年前半までは需給のひっ迫が続く見通しです。また、地政学的リスクに対応するため、台湾に集中していた生産拠点を米国、日本、そして欧州へと分散させています。競合するサムスンやインテルも同様に工場の海外展開を進めていますが、歩留まりや顧客基盤、パッケージ技術の成熟度ではTSMCが依然として先を行っています。マイクロン・テクノロジー(MU)マイクロン・テクノロジーは、AI向けメモリ市場におけるリーダー格の一角として存在感を高めており、株価は過去1年間で約120%上昇しました。メモリ産業は本来汎用品が多く価格競争が激しいため、利益率が低く景気変動に左右されやすい循環型の構造を持っています。しかし生成AIの普及によって、AIモデルの規模と演算量が飛躍的に増大し、GPUの演算性能だけでなく「どれだけ速く・大量にデータを供給できるか」というメモリの帯域幅と容量が新たなボトルネックとなり、AIサーバーに不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)の需要が急増しています。こうした背景の中、同社はHBMの次世代品「HBM3E」を量産化を開始。プレスリリースによると、電力効率と処理帯域の両面で競合を上回る性能を実現しており、これによりデータセンター部門の売上は前年比2倍以上に拡大しました。さらに、2023〜2024年に続いていたメモリ業界全体の在庫調整局面が終息し、PCやスマートフォン向けメモリの出荷数量と価格が回復に転じています。これにより、稼働率の改善やコスト構造の最適化が進み、収益のボトルネックとなっていた要因が解消されつつあります。一方、HBM市場では、SKハイニックスやサムスンとの技術競争は激しさを増しており、性能や供給安定性が企業価値を大きく左右する局面にあります。こうした中で、マイクロンが技術革新をどこまで持続できるかが焦点となります。また、2023年には中国サイバー空間管理局(CAC)が同社製品に対して規制的措置を講じた経緯もあり、地政学リスクへの警戒は引き続き必要です。インフラの制約が次の投資テーマに半導体関連銘柄と異なり、実績EPSよりも将来キャッシュフローへの期待が株価を押し上げる銘柄も増えています。AIワークロードに特化したクラウド事業者(ネオクラウド)であるコアウィーブやネビウスなどは、AI推論需要の拡大とGPUの供給制約を背景に、今後3~5年のシェア拡大とマージン改善を株価に織り込んでいます。また、小型モジュール炉などの原子力関連銘柄も、AIデータセンターの電力需要や規制・制度面の後押しを背景に、実績EPSはほぼゼロ〜赤字圏ながら、2030年代におけるキャッシュフロー急成長を想定した投資が進んでいます。グーグルの元CEOのエリック・シュミット氏は、「AIの実現と活用における最大の課題は、十分な電力の確保であって、チップではない」と語っており、インフラの制約こそが次の投資テーマになりつつあります。

【日銀会合プレビュー】10月は据え置き優勢 利上げ時期とオペ縮小の可能性は
10月29〜30日に開催される日銀の金融政策決定会合を前に、市場関係者の間では「12月や来年1月までに利上げがあるものの、10月は据え置き」との見方が強まっています。本記事では、市場動向や日銀高官の発言内容を踏まえ、10月会合での注目ポイントを整理します。政局変化で利上げ観測が後退21日の首相指名選挙で、自民党の高市早苗総裁が日本初の女性首相に選出されました。高市氏は金融緩和的な政策を支持する姿勢を示しており、「金融政策の手段は日銀が決めるべきだが、財政・金融政策の方向性を決める責任は政府にある」との見解を表明しています。こうした発言を受け、市場の10月利上げ観測は後退。9月会合後に70%程度まで高まっていた10月利上げ観測は、22日時点で11%台まで低下しました。もっとも、日銀は新政権の経済政策の方向性を見極める時間が限られているため、市場では「新政権との協調を重視し、日銀は拙速な判断を避ける」との見方が優勢です。利上げタイミングは「時間の問題」一方、前回の9月会合では、9人の政策委員のうち2人(田村審議委員・内田副総裁)が政策金利の据え置きへ反対し、利上げを提案しました。さらに7月会合の議事要旨からは、他の政策委員の一部にも利上げに前向きな姿勢がうかがえることから、利上げの方向性は既定路線であり、タイミングの問題との見方が強まっています。内田副総裁は10月中旬の講演で、「経済・物価見通しが実現していくなら、引き続き利上げを行う」と発言。植田総裁も10月会合に向けて「会合時点での情報やデータをまとめて議論して決定する」と述べ、両者ともに「条件が整えば利上げを継続する」という日銀の基本スタンスを改めて示すものの、利上げ時期について明確な手がかりを与えることは避けています。市場では、10月会合後の記者会見で利上げ時期に関する手掛かりが示されるかどうかに注目が集まっています。オペ手法に変化はあるか日銀は2024年3月、長期金利を事実上コントロールしてきたイールドカーブ・コントロール(YCC)を正式に撤廃しました。これにより、「10年金利を0%程度に誘導する」という目標はなくなり、長期金利は基本的に市場原理に委ねられています。ただし、日銀は依然として急激な金利上昇を抑えるための「指値オペ」や国債買い入れのガイダンスを維持しており、市場金利の過度な変動を抑制する重要な役割を果たしています。こうした措置は、2025年6月会合で決定された「国債買い入れ減額ペースの緩和」とも連動しています。QT(量的引き締め)を緩やかに進める一方で、市場安定策を併存させる構えをとることで、政策正常化と市場安定の両立を図っているのです。今後の焦点は、こうした安定策をどのようなペースで縮小し、完全に市場任せの金利形成へと移行できるかです。仮にオペ縮小とQTが同時並行で進めば、長期金利のボラティリティは高まりやすくなり、金融市場全体への波及も大きくなります。一方、現行のオペ態勢を維持する姿勢を示せば、「慎重な出口」の姿勢がより明確になるとみられます。今後の注目イベント10月27-29日:日米首脳会談10月29-30日:米連邦公開市場委員会(FOMC)10月29-30日:日銀金融政策決定会合

量子コンピュータ関連株 IONQ・RGTI・QBTSを徹底解説|技術・成長戦略・投資リスク
近年、量子コンピュータ分野は技術革新の加速とともに、米政府による法整備が進み、投資家による資金流入が加速しています。2025年には、米国エネルギー省による量子研究・実証支援を強化する「Quantum Leadership Act」や、防衛分野に量子技術の統括機関を設ける「Quantum National Security Coordination and Competition Act」が議会に提出され、量子技術を国家戦略分野として位置づける流れが鮮明になっています。また、量子およびポスト量子暗号の導入を促す大統領令の準備も報じられており、量子技術は研究段階から実装段階へと移行しつつあります。本記事では、量子コンピュータの現状の課題を解説しつつ、技術アプローチごとに注目銘柄─IonQ(IONQ)、Rigetti Computing(RGTI)、D-Wave Quantum(QBTS)─の技術的特徴と今後の展望を紹介します。量子コンピュータとは従来のコンピュータは「ビット」という単位で情報を処理し、1ビットは「0」または「1」のいずれかの状態しか持ちません。一方、量子コンピュータは「量子ビット」を使い、0と1の状態を同時に扱うことで並列計算が可能となり、計算能力が飛躍的に高まります。AIと量子技術の相乗効果により、将来的には暗号解読、創薬や材料科学、金融モデリング、サイバーセキュリティ、防衛分野など幅広い産業での活用が期待されています。ボストンコンサルティンググループは、量子コンピューティングが2040年までに世界で4,500億〜8,500億ドルの経済価値を生み出すと予測しています。2025年時点の量子コンピュータ産業は、複数の制約が絡み合った発展途上の段階です。商用機は数十〜数百ビット規模にとどまっており、実用的な大規模計算を実現するには数百万ビット規模への拡張が必要です。しかし、量子ビットは外部ノイズや温度変化に非常に敏感で、量子状態が壊れやすく(デコヒーレンス)、長時間の計算を安定して行うのが難しい状況です。また、古典コンピュータ側の進歩も目覚ましく、量子でなければ解けない問題が限定的であることも実用化の足かせになっています。以下では、3つの主要技術アプローチと注目銘柄を紹介します。1) イオントラップ方式:IonQイオントラップは、原子(イオン)を真空中に浮かせて、レーザーで精密に操作します。イオン同士を任意のペアで接続できる「全結合性」があり、回路設計の自由度と演算精度が高いのが強みです。強み全結合性:多くの量子ビットが直接結合可能で、柔軟な回路設計が可能長いコヒーレンス時間:外部ノイズの影響が少なく、量子状態を長く保ちやすい高いゲート精度:制御精度が非常に高く、誤り率が低い留意点処理速度が遅い:超伝導方式(後述)に比べ、相対的に処理速度が長い装置が複雑:高精度レーザーや真空技術を要し、装置コストが高い代表的なプレイヤーは2015年創業のイオンキュー(IONQ)で、同社は1量子ビット/2量子ビットのゲート精度で世界記録(2量子ビットで99.97%の精度)を保持しています。主要クラウド(Amazon Web Services・Microsoft Azure・Google Cloud)を通じて量子コンピューティングサービスを提供しており、2025年6月末時点の過去12ヶ月間の売上高は前年比68%増の5,200万ドルと急成長中です。強固な資金基盤が支える「包括的な量子プラットフォーム」構想イオンキューは、2021年に量子コンピューティング企業として世界初の上場をし、累計調達資金は2025年7月時点で15億ドル超と業界最大級です。今月、さらに20億ドルの増資を実施し、積極的な研究開発と買収による技術拡充を進めています。2025年9月には、英国を拠点とする量子コンピューティング企業Oxford Ionicsの買収により「オンチップ・イオントラップ技術」を導入し、2027年までに99.99999%の制御精度を持つ1万個の量子ビット、2030年までに200万個の量子ビットを実現できる見込みとしています。また、量子ネットワーク企業であるQuBitekkとID Quantique、量子インターコネクト企業Lightsynq、量子衛星Capella Spaceを買収し、量子ネットワーク市場における優位性を拡大。さらに、量子センシング技術のパイオニアであるVector Atomicの買収を完了し、「量子コンピューティング+ネットワーク+センシング」の総合プラットフォーム戦略を進めています。2) 超伝導方式:Rigetti Computing超伝導方式は、絶対零度に近い環境でジョセフソン接合を利用し、超伝導回路で量子ビットを構築します。ナノ秒オーダーで高速に動作できるため、大手(IBM、Google)も採用する主流技術です。強み処理速度が速い:ナノ秒オーダーでゲート操作が可能半導体技術との親和性:CMOS等の既存技術を活用しやすく、量産の道筋を描きやすい留意点短いコヒーレンス時間:ノイズに弱く、誤り訂正の実装が不可欠極低温環境が必要:冷却設備が必要で、装置・運用コストが高い代表的なプレイヤーは2013年創業のリゲッティ・コンピューティング(RGTI)で、2021年に世界で初めてマルチチップ量子プロセッサを発表し、スケーラビリティ向上の先駆けとなる技術を示しました。また、自社で半導体ファブ(Fab-1)を持ち、チップの設計から製造まで一貫した開発体制を構築しています。一方で、売上は数百万ドル規模とまだ小さく、ターンアラウンド期待銘柄として位置づけられています。2025年8月には、ATM増資で約5.7億ドルの資金を確保しており、短期的な資金ショートリスクを回避し、中期的な技術開発を支える体制を整えています。マルチチップ技術の収益化が進めば、再評価リゲッティのロードマップは、一歩ずつビット数・精度を向上させ実用化段階へ入る戦略で、2026年以降に商用規模の拡大を狙う計画です。2025年8月には36ビット・4チップ(Cepheus-1-36Q)の新プロセッサを発表し、誤り率を半減させる成果を出しました。今後は16チップ接続で144ビットへの拡張を目指しています。製造プロセスでは、米空軍研究所支援の下で新たな「through-silicon vias (TSV)」技術導入による多層配線チップ開発も進めており、歩留まり改善と高密度集積を目指しています。またソフトウェアでは、エラー緩和アルゴリズムや量子古典ハイブリッド手法の開発にも取り組み、金融分野向けの実証実験なども進行中です。3) 量子アニーリング方式:D-Wave Quantum量子アニーリングは、膨大な選択肢から最適解を探索する「組合せ最適化」に特化した方式です。汎用計算には向かないものの、物流・サプライチェーンなど現場の最適化ニーズに刺さりやすいく、現時点でも実用化が進んでいます。強み特定の最適化問題に強い:組合せ最適化などでは古典コンピュータより高速な場合も技術成熟度が高い:特定分野で数千〜万ビット規模を商用化留意点汎用計算は苦手:幅広いアルゴリズムの実行には向かないノイズの影響:実際の性能は問題設定やノイズレベルに強く依存代表的なプレイヤーは、1999年創業のディーウェーブ・クオンタム(QBTS)で、世界で初めて商用アニーラを開発した企業です。現行機の「Advantage2」は約4,400ビットを実装。ハード販売に加えクラウド課金やコンサル契約収入もあり、2025年6月末時点の過去6ヶ月間の売上高は前年比289%増の1,350万ドルと成長基調にあります。ゲート方式との「ハイブリッド」へ戦略転換ディーウェーブ・クオンタムは、ニッチ市場において高い支持と顧客導入実績を誇り、ロードマップ上では量子アニーラが数年内にビット数10万規模へ到達することを目標に掲げています。しかし、量子アニーラ自体が今後も有効なアプローチかについては議論があり、汎用向け量子計算が台頭すると優位性を失うリスクがあります。同社はそのリスクヘッジとしてアニーリング専業からゲート方式とのハイブリッド展開に路線拡大しています。ただし、経営陣はゲート方式製品の提供時期について明確なコミットをしておらず、当面はアニーラで商用ユースケースからフィードバックを得つつ、将来的にゲート汎用機が成熟した段階で両者を組み合わせたハイブリッド計算サービスを展開する道筋が示されています。また、2025年に4億ドルの増資とワラント資金行使により史上最高の現金残高8.19億ドルを確保し、研究開発と国際展開を加速させています。

円安はつづく? 財政拡張期待と政治リスクで揺れる市場
10月5日、自民党の新総裁に高市早苗氏が選出されたことを受けて、為替市場では円安が加速。ドル円相場は就任前から約5円円安が進行し、一時1ドル=153円台に達した場面もありました。その後、公明党との連立解消や米中貿易摩擦再燃への警戒感から、円高方向への反動も見られています。本記事では、高市総裁就任が金融市場に及ぼした影響と、変動する政治情勢を踏まえた今後のドル円見通しを整理します。財政拡張への期待と政治リスクが交錯高市氏は、財政健全化は重要とする一方で、「責任ある拡張的財政政策」を公約に掲げ、経済成長を優先し「成長投資で強い経済を実現する」としています。減税・給付拡大の財源確保には赤字国債の発行も容認する姿勢を示しており、財政拡張への期待と警戒から長期金利の上昇・円安・日本株高が進行していました。また、高市氏は「金融政策の手段は日銀が決めるべきだが、財政・金融政策の方向性を決める責任は政府にある」との見解を示しました。この発言は、日銀の10月利上げ観測を後退させる要因となり、円安圧力が増幅しました。政治リスクが高まる中では、日銀が利上げに踏み切りづらいとの見方も根強くあり、16日・17日に予定される、田村直樹審議委員や内田副総裁の発言では、利上げ観測に変化があるか注目が集まります。「サナエノミクス」の市場評価高市氏は、安倍晋三元首相の「アベノミクス」になぞらえて、自身の政策を「サナエノミクス」と称していますが、市場参加者の間には、高市氏の政策スタンスが必ずしもアベノミクスの再来とみなせるわけではないという見方も多くあります。2012年の第2次安倍政権発足時とは、経済環境が大きく異なっており、当時は円高とデフレ脱却が主な課題でしたが、現在は円安傾向と物価高対策が焦点となっています。物価安定を重視する声も強まっており、過度な金融緩和政策は支持を得にくい情勢です。さらに、減税・給付拡大による物価高対策が、物価上昇リスクを高める可能性も指摘されています。一方、麻生太郎氏や財務大臣経験者である鈴木俊一氏を党の要職に起用したことに対して、財政規律を意識させるという安心感を示す声もあります。首相指名の不透明感と高市トレードの揺らぎ10月10日、自公連立解消という政治の大きな動きがあり、首相指名の行方に不透明感が高まりました。立憲民主党の野田代表は、野党候補の一本化に向け、国民民主党と日本維新の会に党首会談を呼び掛ける考えを表明しており、公明党は首相指名で野党へ協力する可能性を否定しない立場を示しています。政治の混乱にもかかわらず、為替市場では依然として野党一本化や政権交代の可能性は織り込まれていないとの指摘もあります。ただし、高市氏が首相となった場合でも、政治基盤が不安定であれば政策運営のスピード低下リスクが相応に見込まれ、円安余地には制約がかかる可能性があります。また、一部報道では、高市氏が国民民主党の玉木雄一郎氏に対して、連立構想を打診する可能性も取り沙汰されています。現時点では可能性が高いわけではないですが、仮に国民民主党と連携を深めるのであれば、円安圧力が強まる可能性もあります。こうした不確実性のもと、臨時国会での補正予算編成や新規国債発行の動向も大きな焦点となります。政府は2025〜26年度に基礎的財政収支(プライマリーバラン)の黒字化目標を掲げていますが、この方針がどこまで尊重されるかは政策スタンスの試金石となるでしょう。今後の注目イベント10月16日:田村日銀審議委員講演10月17日:内田日銀副総裁講演10月20日:高田日銀審議委員講演10月20日:首相指名選挙 見込10月27-29日:日米首脳会談10月29-30日:米連邦公開市場委員会(FOMC)10月30-31日:日銀金融政策決定会合

米政府閉鎖いつまで続く?見通しと市場リスクを解説
10月1日に米国の2026年度会計年度が始まりましたが、つなぎ予算案をめぐる審議が難航し、政府は6年ぶりに閉鎖に突入しました。本記事では、政府閉鎖の見通しと市場リスクについて整理します。なお、政府閉鎖の仕組みや一般的な市場への影響については過去の記事で解説していますので、ご関心のある方はあわせてご覧ください。閉鎖は10月15日まで継続か10月6日、上院は政府閉鎖終了に向けたつなぎ予算案を再び否決しました。一方、下院は現在休会中で、14日までワシントンに戻る予定はありません。15日が多くの公務員の給与支給日であることから、一部の共和党議員は給与支払いの遅れを避けるために「10月15日を適切な期限」とみなしていると報じられています。これまでの政府閉鎖では、両党が政府業務の再開を目指して協議を重ねる姿が見られました。しかし、今回は党首間の協議の兆候は確認されていません。トランプ大統領が民主党と協議を行っているとの報道も出ましたが、民主党最高幹部の一人であるチャック・シューマー上院議員は、こうした報道を「真実でない」とX(旧Twitter)上で直ちに否定しました。THIS ISN'T TRUE.For months, Democrats have been demanding Trump and Republicans come to the table and work with us to deliver lower costs and better healthcare for the American people.If Republicans are finally ready to sit down and get something done on health care for… https://t.co/dvm4kGVJwq— Chuck Schumer (@SenSchumer) October 6, 2025 交渉の停滞が続く中、市場参加者も短期合意への期待を後退させています。オンライン予測市場のポリマーケットでは、トレーダーの95%が「閉鎖は2週間以上続く」と予想しており、約220万ドルの資金がこの予想に賭けられています。閉鎖期間がカギにStandard Charteredは、共和党が医療保険制度改革法(オバマケア)の補助金延長に同意するとの前提で、閉鎖は2~3週間に収まるとのベースシナリオを示しています。この場合、市場への影響は限定的とみられます。これは投資家が一般的に、短期的な財政混乱よりも企業収益や長期的なマクロ経済の方向性を優先する傾向があるためです。実際、2013年以降の4回の政府閉鎖時の際もS&P500はプラスのパフォーマンスを記録してきました。また、FRBの利下げ観測も金融環境を下支えしており、投資家は2026年の成長見通しに楽観的です。政府閉鎖開始後も株価の上昇はつづき、10月8日にS&P500とナスダック総合指数は過去最高値を記録しました。ただし、閉鎖期間が2~3週間を超える場合には、リスク資産が短期的に調整局面を迎える可能性もあります。2018年から2019年にかけては、トランプ大統領の国境の壁建設費用をめぐる対立で34日間の閉鎖が続き、史上最長を記録しました。今回も同様のリスクを無視することはできません。ヘッジファンドのポジショニングデータを見ると、株価は上昇している一方でネットロングは減少しており、機関投資家が慎重な姿勢を強めていることがうかがえます。VIX指数は依然として低水準にありますが、個別株やセクターレベルではボラティリティが上昇傾向にあります。もっとも、Standard Charteredは、閉鎖による株価下落を「追加投資の好機」と位置付けています。特にAI主導の構造的成長を背景に利益見通しが上方修正されている米国テクノロジーセクターは、中長期的に強い成長が続くと見込まれます。同セクターの第3四半期利益成長率は、当初予想の8%から8.8%に上方修正されています。また、ヘルスケアセクターも、主要企業と政権との間で合意が進み、関税をめぐる懸念が緩和されたことで追い風を受けています。政府職員の大量解雇リスク今回の閉鎖では、通常の一時帰休を超えて、政府職員の大量解雇が現実化する懸念も浮上しています。トランプ大統領は「民主党との交渉が完全に行き詰まった場合、数千人規模の解雇に踏み切る」と警告しました。すでに推定75万人の連邦職員が一時的な無給休暇を余儀なくされており、さらに休業補填が支払われない可能性も指摘されています。こうした展開は、消費や景気全般に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。

ネオクラウドとは?AI需要が生む新市場、成長背景と注目銘柄を解説
2025年、AIインフラ需要の拡大を背景に、「ネオクラウド」市場が急成長しています。関連企業の株価は主要株価指数を大きく上回るパフォーマンスを見せており、投資家の注目を集めています。本記事では、ネオクラウドの特徴と成長背景、そして主要関連銘柄のコアウィーブ、ネビウス、オラクルを紹介します。ネオクラウドとは?ネオクラウドとは、AIワークロードに特化したコンピューティングパワーを提供するクラウド事業者です。これらの企業は、AIモデルのトレーニングやAIアプリケーションの開発などを効率的に処理するために、電力最適化されたデータセンターにエヌビディアの最新グラフィック処理装置(GPU)を搭載したラックを展開しています。マイクロソフトなどのハイパースケーラーは自社でデータセンターを運営していますが、急増するAI需要に対応するため十分な演算能力を確保するのに苦戦しています。そのため、ネオクラウドから計算リソースをレンタルすることで、電力や半導体チップの調達難といった課題を解消できるほか、データセンター関連のコストを設備投資ではなくオペレーション費用として計上できるため、キャッシュフローや税務面においても柔軟性を高められる利点があります。Coatueのデータによると、2025年にクラウド収益シェアはAWS、Azure、Google Cloudの3社で93%を占める見込みですが、エヌビディアGPUの調達シェアは70%にとどまりました。一方で、Oracleやコアウィーブといった新興勢力は収益シェアが7%未満ながら、GPU調達では30%を確保するなど、存在感を急速に高めています。マイクロソフトはすでに、コアウィーブ、ネビウス、エヌスケールといったネオクラウド事業者と総額330億ドル以上の契約を締結しており、ハイパースケーラーが重要インフラを新興企業に委ねる構造変化が進んでいます。ネオクラウド市場は2021〜2025年で年率82%という驚異的な成長を遂げ、S&P Globalによると昨年だけで100億ドル超の資金がこの分野に投じられました。ネオクラウド関連銘柄1. CoreWeave(CRWV)コアウィーブは2017年に仮想通貨マイニング会社として創業しましたが、2018年に暗号資産市況の低迷を受けてネオクラウドへ事業転換しました。既存のデータセンター基盤とエヌビディアとの強固な関係を活かし、同分野の先駆者となりました。同社の顧客にはOpenAI、メタ、マイクロソフトが名を連ね、OpenAIとの提携総額は224億ドル(3.35兆円)、メタとの契約は最大142億ドル(2.1兆円)に達します。株価は今年3月の新規株式公開(IPO)以降、3倍以上に上昇しました。一方で、大口顧客への依存度が高いことや資本構成のリスクが指摘されています。コアウィーブの負債の多くは9~15%の高金利で調達されており、利払い負担が大きいのに対し、2025年第2四半期の営業利益率は2%にとどまっています。2. Nebius Group(NBIS)オランダを拠点とするネビウスは、コアウィーブ最大の競合であり、ロシアの検索大手Yandexから2024年にスピンアウトした企業です。英国、フランス、フィンランド米国など、世界各地にデータセンターを展開し、地政学的な安定性と技術力を背景に存在感を強めています。9月にマイクロソフトと最大194億ドル(2.8兆円)の5年間契約を発表し、米株式市場引け後の時間外取引で株価が一時約50%急騰。同社の株価は2025年で4倍以上、過去12ヶ月間では約6.4倍と急伸しています。ネビウスは、コアウィーブよりも設備投資額が少なく、資本調達手法が柔軟です。具体的には、非中核事業の株式を売却して資金調達を行うことができ、教育テクノロジープラットフォームの「TripleTen」や、自動運転用ソフトウェアを開発する「Avride」の株式を保有しています。また、直近では10億ドルの転換社債を発行し、今後の事業拡大に備えています。3. Oracle(ORCL)オラクルはクラウド参入で後発ながら、ネオクラウドに近い戦略を取っています。2024年にはエヌビディアのBlackwell GPUを400億ドルで一括発注し、業界最大級の調達を実現しました。9月にOpenAIと3000億ドル(44兆円)の5年間契約を発表し、株価は1日で36%急騰。同社の株価は2025年に72%成長しています。スコシアバンクは、今後開設予定のアビリーン・データセンターを通じた事業拡大により、2026年度までにGPUインフラの収益が4倍の約100億ドルに増加する可能性があると予想しています。しかし、コアウィーブ同様に資本構成のリスクが指摘されており、アナリストらは同社の負債はEBITDAよりも速いペースで増加し、損益分岐点に達するまで、フリーキャッシュフローも長期間マイナスになる可能性が高いと予想しています。

利下げ局面でREITは強い?米国住宅市場動向と主要ETFの特徴を解説
過去4回の金融緩和局面において、米国REIT(不動産投資信託)は利上げサイクル停止から16ヶ月以内に平均30%上昇し、同期間のS&P500の上昇率(+20%前後)を上回ってきました。こうした歴史的傾向から、「利上げ局面から転換した後はREITがアウトパフォームしやすい」と指摘されています。足元の金融市場では、不動産開発やオフィス不動産、住宅購入プラットフォームなどで投資家の信頼が回復しつつあり、REITセクターは8月に月間リターンがプラスに転じました。9月にかけても利下げ期待が追い風となっています。本記事では、利下げが住宅市場に与える影響と米国の主要REIT ETFの特徴を整理します。住宅ローン金利高止まりも、住宅販売は回復の兆し住宅購入希望者にとっては依然として厳しい環境が続いています。米国で最も利用されている30年固定住宅ローン金利は、一時的に昨年10月以来の低水準に下がったものの、9月下旬時点で約6.3%に再び上昇し、過去10年間の平均を大きく上回っています。出所:Freddie Mac, Primary Mortgage Market Survey住宅ローン金利は10年国債利回りに強く連動するため、FRB(連邦準備制度理事会)が政策金利を下げても、財政赤字拡大や国債発行増加によって長期金利が高止まりすれば、住宅ローン金利の大幅な低下は期待できません。ファニー・メイ元取締役のサイモン・ジョンソン氏も、利下げへの政治的圧力がむしろ長期金利を押し上げ、住宅購入コストを増大させる可能性があると指摘しています。さらに、2023年のレッドフィンの調査では、米国住宅所有者の90%超が6%未満で住宅ローンを借り入れており、低金利で固定された「レートロック」が中古住宅の供給を制約しています。住宅ローン金利の高止まりと供給不足により住宅販売は過去数年低迷していましたが、米住宅市場が夏後半に回復に転じた兆候を指摘する声が出てきています。全米不動産業者協会(NAR)のローレンス・ユン氏は「住宅ローン金利は低下しており、市場に出回る物件も増えている。今後数カ月に販売を押し上げる」と予想しています。8月の既存住宅販売は前月比0.2%減の年率約400万戸で横ばいにとどまり、住宅市場の崩壊が引き起こしたリーマン・ショック時を下回る水準となっています。一方、8月の新築住宅販売は前月比20.5%増の80万戸と急増し、2022年初め以来の高水準となりました。住宅建設業者による、値引きや販売インセンティブが購入意欲を後押ししたとみられますが、全米ホームビルダー協会(NAHB)の9月の調査によると、39%の住宅建設業者が値下げを実施しており、新型コロナ禍後の最高を更新しました。米国主要REIT ETFの特徴利下げ期待の高まりはREITにとって大きな追い風ですが、住宅ローン金利と住宅価格が高止まする環境下では、REIT全体が一律に良化するとは限らず、セクターごとに明暗が大きく分かれる可能性があります。実際、ヘルスケアや産業用不動産に特化したREITは年初来で堅調なリターンを上げている一方、ホテルやオフィスREITは供給過剰と稼働率の低下に苦しんでいます。こうした環境では、個別銘柄のリスクを回避しつつ不動産市場全体にエクスポージャーを持てるETFはREIT投資の代表的な選択肢となっています。以下は、主要な米国不動産ETFであるIYR、RWR、XLREの特徴を紹介します(データは2025年9月30日時点)。Real Estate Select Sector SPDR Fund(RWR)State Street社が運用する、不動産REITのみで構成されたETFです。インフラのREITやモーゲージREITなどは含まれず、純REIT構成なので利回りが厚く、 REITに幅広く分散投資したい人向けの商品となっています。ベンチマーク:Dow Jones U.S. Select REIT Index組み込み銘柄数:106分配金利回り:3.99%経費率:0.25%資産残高:18億ドル設定:2001年Real Estate Select Sector SPDR Fund(XLRE)State Street社が運用する、S&P500の不動産セクターに投資するETFです。大型REITを中心に集中投資するため、流動性に優れ、経費率も低く(RWRの1/3程度)なっています。ベンチマーク:Real Estate Select Sector Index組み込み銘柄数:34分配金利回り:3.01%経費率:0.08%資産残高:78億ドル設定:2015年iShares U.S. Real Estate ETF(IYR)BlackRock社が運営する、米国不動産セクターに投資する代表的ETFです。REITだけでなく不動産関連企業も対象とし、分散度が高く、全米不動産セクター全体の動きを取り込めます。ベンチマーク:Dow Jones U.S. Real Estate Index組み込み銘柄数:65分配金利回り:2.54%経費率:0.38%資産残高:36億ドル設定:2000年

米政府閉鎖によって何が起こる?株式市場へ与える影響と投資家が注目すべき点
2025年度の米政府予算が9月30日に期限切れを迎える中、11月21日までの財政資金を提供し、2026年度の歳出法案について合意に達するための猶予を与えるつなぎ予算案審議が難航しています。下院では、共和党が多数派を占めるなかで先週この予算案を可決し、政府閉鎖回避に向けた動きが見られました。しかし、上院では医療予算の増額を求める民主党議員らがほぼ全面的に反対し、否決されました。政治的な不透明感が強まるなか、トランプ大統領は自身のソーシャルメディアで「民主党の不誠実でばかげた要求の詳細を検討した結果、民主党議会指導者との会合は生産的でないと判断した」と投稿。つなぎ予算案を協議するための民主党議会有力議員との会合を中止し、10月1日以降に政府機関の一部が閉鎖されるリスクが高まっています。本記事では、政府閉鎖の仕組みと市場への影響、さらに投資家が注視すべきポイントを解説します。政府閉鎖によって何が起こるのか政府閉鎖とは、議会が政府予算やつなぎ予算を承認できず、資金不足に陥ることで不要不急の政府業務が停止する事態を指します。1976年に近代的な予算編成プロセスが導入されて以降、米国では22回の閉鎖が発生しています。最長はトランプ政権下の2018年12月から2019年1月にかけての34日間でした。閉鎖中であっても、航空管制、国境警備、刑務所運営、電力網、郵便配達、災害救援、食品安全検査、軍事活動、税金徴収といった重要な政府機能は継続されます。株式市場への影響は限定的歴史的に見ると、政府閉鎖により市場のボラティリティが高まった例はありますが、株式市場に大きな打撃を与えてはいません。カーソン・グループのデータによると、過去21回の政府閉鎖のうちS&P 500指数は12回でプラスのリターンを記録しており、閉鎖期間中の平均リターンは0.3%でした。さらに、閉鎖終了から12か月後のS&P 500指数は86%のケースで上昇し、平均リターンは12.7%とされています。出所:カーソングループ信用格付けと経済への波及が焦点か投資家にとってより重要なのは、政府閉鎖が信用格付けや経済に与える波及効果です。ワシントンで政治的な対立が続けば、格付け機関が米国債の信用力に懸念を強める可能性があります。ムーディーズは5月に連邦政府の信用格付けを引き下げており、主要3社すべてが追加の格下げを行うリスクも否定できません。格下げが現実となれば、政府の借入コスト上昇を通じて金利水準や金融市場全体のボラティリティに影響が及ぶ可能性があります。また、政府閉鎖が長期化すれば経済活動への悪影響も避けられません。議会予算局(CBO)は、2018年から2019年の政府閉鎖によって国内総生産(GDP)が約110億ドル減少しし、そのうち30億ドルは恒久的に失われたと試算し、閉鎖期間が長引くと、企業が連邦政府の許可や認証を取得できず、連邦政府からの融資も受けられなくなるため、民間部門の投資や雇用決定に悪影響を与えると指摘しています。さらに、上院の2019年報告書では、2013年、2018年、2019年の3度の閉鎖で約40億ドルの納税者資金が浪費されたとも指摘されました。

自民党総裁選はドル円相場にどう影響?高市・小泉両氏の政策と市場シナリオ
9月7日、石破茂首相が辞任を表明し、自民党総裁選は9月22日に告示、10月4日に議員投票・開票が行われる見通しです。現段階では、小泉進次郎農林水産大臣、小林鷹之元経済安全保障担当大臣、高市早苗前経済安全保障担当大臣、林芳正官房長官、茂木敏充前幹事長の5氏による選挙戦が想定されています。本記事では、総裁選が為替市場に与える影響を整理します。高市、小泉両氏の政策が焦点に足元のドル円相場は、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ再開と日銀の金利据え置きを背景に、148円付近で推移しています。金融市場では、昨年の総裁選で上位につけた高市氏と小泉氏を中心に、市場参加者が政策シナリオを織り込み始めています。高市氏優位は円安要因との見方高市氏は安倍晋三元首相の後継と見なされ、積極財政と金融緩和の組み合わせによる「アベノミクス的」政策運営が期待され、財政拡大観測から長期金利が上昇し、円安につながるとの見方が広がっています。日本株高と円安進行のシナリオを想定する向きが多い状況です。昨年の総裁選の過程では、高市氏が「金利を今、上げるのはあほやと思う」と発言し、一時円安が進行しました。ただし、現在は物価安定や消費回復を重視する声が強まっており、過度なハト派的姿勢が市場の支持を得にくい環境にあります。19日の自民党総裁選の出馬会見では、日銀政策に言及することはなく、財政健全化は重要とする一方、経済成長を優先し「成長投資で強い経済を実現する」と語りました。小泉氏優位なら円相場の下支えに一方、小泉氏については、高市氏ほど金融緩和色が強くないと受け止められています。特に、小泉陣営の選対本部長に財政規律を重視する加藤財務相が就任する見通しと伝わったことから、市場では一定の円相場の下支え要因になると見られています。また、小泉氏は日銀の政策正常化を継続する姿勢を示しています。日米共同声明は円安けん制かまた、9月12日に発表された日米財務相の共同声明について、自民党総裁選を控えた円安加速をけん制する意図があったのではないか、ドル高円安をけん制する意図があったのではないかと深読みする声が出ています。声明には「為替レートは市場において決定されるべきこと」や「介入は過度または無秩序な変動への対応時のみ」といった従来の合意が並び、初めて「外貨準備の通貨構成を年次で開示する」との文言が盛り込まれました。今後の注目イベント9月22日:自民党総裁選 告示9月23日 自民総裁選立候補者 共同記者会見9月25日 日銀金融政策決定会合議事要旨(7月分)10月4日 議員投票・開票

テスラ株価急騰の背景は? エネルギー事業拡大とEV事業からの転換
米電気自動車(EV)大手テスラの株価は9月に約20%上昇し、堅調な推移が投資家の注目を集めています。本記事では、その背景と今後の注目点について整理します。エネルギー貯蔵事業の拡大が追い風に9月8日、テスラは北米最大の再生可能エネルギーサミット「RE+25」において、新型蓄電池「Megapack 3」と電力貯蔵システム「Megablock」の2つの新製品を発表しました。Megapackは、リチウムイオン電池を大型コンテナ内に組み込んだもので、風力や太陽光といった変動の大きい再生可能エネルギーを安定的な送配電を支援する役割を担います。テスラはこれを「持続可能なエネルギーによる持続可能な豊かさ」を実現する中核製品と位置づけており、最新モデルのMegapack 3ではバッテリーセルや電子技術を改良し、性能を向上させました。一方、Megablockは4つのMegapackに変圧器とスイッチギアをパッケージ化した電力貯蔵システムで、マイナス40度から60度までの温度範囲で稼働し、25年の耐用年数を持ちます。従来製品と比べて、設置時間を約23%短縮し、建設コストを最大40%削減できるといわれています。すでに受注を開始しており、2026年後半からヒューストンの新工場で生産が開始される計画です。こうした発表は、生成AIの普及に伴い電力需要が急増しているタイミングで行われ、電力網にとって「ゲームチェンジャー」との評価も出ています。実際、テスラのエネルギー事業は直近12か月で売上高110億ドルを計上し、前年比43%増を達成しました。蓄電容量も前年比83%増の37.9GWhに達しており、米国の約4,000世帯が1年間利用できる規模に相当します。エネルギー貯蔵は総売上高の12%を占め、同社にとって重要な収益源となりつつあります。EV事業から次の成長領域へ主力事業であるEV販売は成長鈍化に直面し、かつて米国EV市場でテスラは8割超のシェアを誇りましたが、2025年8月にはシェアが40%を下回ったと報じられました。他社が新型EVを相次ぎ投入するなか、テスラは低価格モデルの計画を遅らせる一方で、ロボタクシーやヒューマノイドロボット「Optimus」への投資を強めています。9月1日に発表された「マスタープラン パートIV」では、EVを「技術的ルネサンスの基盤」と位置づけつつも、今後の成長戦略の中心にAIとロボティクスを据えています。Optimusを「人間に好きなことをする時間を返す存在」と定義し、輸送・エネルギー・労働の在り方を再構築する構想を打ち出しました。さらに、取締役会が承認したマスク氏の新たな報酬案も、ロボタクシーやヒューマノイドロボットの量産をマイルストーンとする成果連動型のストックオプションとなっています。今後の焦点:第3四半期の納車動向と決算発表株価の次の変動要因として注目されるのが、10月2日に予定される第3四半期の納車報告です。ファクトセットによると、市場コンセンサスは43万2,000台と、第2四半期比で13%増加する一方、前年同期比では6%以上減少する見通しです。一部では、米国のEV税額控除が9月末で期限切れとなるため、駆け込み需要が納車台数を押し上げる可能性も指摘されています。予想を上回る結果となれば株価のさらなる上昇につながりますが、その反動で第4四半期の販売が落ち込むリスクもあります。さらに、10月までには飛躍的に安全性が増したFSD(Full Self-Driving:完全自動運転)ソフトウェアのv14アップデートをリリース予定とされていますが、リリース内容の期待とのギャップが株価の重しになる懸念も残ります。10月21日の決算発表は、投資家にとって同社の成長戦略を見極める重要なイベントとなるでしょう。

【FOMC9月会合プレビュー】利下げは確実?市場の織り込みが株価へ与える影響を解説
8月の米雇用者数の伸びが急激に鈍化し、同月の消費者物価指数(CPI)が概ね市場予想通りとなったことから、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが間近と見込まれています。本記事では、9月に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)の注目ポイントを解説します。労働市場の鈍化と利下げ観測FRBは昨年12月の利下げ以降、フェデラルファンド(FF)金利を4.25%~4.5%に据え置いてきましたが、9月会合は緩和サイクル再開の重要な節目となる可能性があります。直近では労働市場の悪化が顕在化しており、加えて関税による物価上昇は中期的なリスクではないとの見方から、FRBの焦点はインフレ警戒から再び雇用情勢へと移っています。こうした背景に加え、8月下旬のジャクソンホール会議でパウエル議長が示したハト派寄りの姿勢もあり、市場では0.25%の利下げが確実視されています。昨年9月のような0.5%の大幅利下げの可能性もわずかに残されており、大幅利下げを支持する可能性があるのは、7月会合の金利据え置きに反対したミシェル・ボウマン理事やクリストファー・ウォーラー理事、さらに新たに承認される可能性があるミラン理事とみられます。ただし、6月時点でFOMCは失業率が年内に4.5%へ上昇すると見込んでおり、今回の雇用の弱さは想定の範囲内といえる点は留意が必要です。また、来年以降も利下げが続くとの期待が高まっており、CMEのFedwatchによれば、9月12日時点で市場は2026年末までに6回の利下げを織り込んでいます。9月会合では、参加者による金利見通しを示す「ドットプロット」が公表され、FRBが想定する利下げペースと市場の期待が一致するのか、それとも乖離するのかが一つの注目点となります。市場は利下げを織り込み過ぎているのか一方で、こうした市場の期待が行き過ぎではないかとの指摘もあります。クリーブランド連銀の最新の推計では、中立金利は3.7%とされ、市場が想定する来年の金利水準はこれを下回っています。「中立金利」とは、景気を加熱も冷却もしない金利水準であり、推定にはモデル差があります。政策金利が中立金利を大幅に下回る状況が続けば、短期的には株式市場が急騰(メルトアップ)する可能性がありますが、長期的には不安定要因となり得ます。また、利下げが株価に常にプラスに作用するとは限りません。JPモルガンは、今回の会合が事実で売る(Buy the rumor, sell the fact)展開になる可能性を指摘しています。ゴールドマン・サックスも、S&P 500企業による自社株買いが今年上半期に過去最高を記録したものの、直近は勢いを欠いていると指摘しました。ただし、両社とも今後数四半期の株式市場に対する基本姿勢は強気であり、調整局面は買いの好機となる可能性があります。パウエル議長はデータ次第姿勢を維持か会合後の記者会見では、パウエル議長の発言のニュアンスが投資家心理を大きく左右するとみられます。労働市場の下振れリスクを認めつつも、FRBの二大目標である「物価安定」と「最大雇用」が相反する局面にあることを強調する可能性が高いです。また、ジャクソンホールでの発言を踏襲し、関税導入については「物価水準の一時的な変化」にとどまるとの見解を改めて示すと予想されます。全体を通しては、利下げの規模や時期についての明言を避けつつ、今後数カ月間における追加利下げは経済データに基づき柔軟に判断する姿勢を示すでしょう。

キャシー・ウッドのARK Investとは?投資戦略と6つのアクティブETFを解説
キャシー・ウッド氏のARK Innovation ETF(ARKK)は2025年4月の安値から約3ヶ月で2倍弱に上昇し、市場の注目を集めています。8月12日には1日で約14億ドルの資金流入を記録し、2021年以来最大の流入規模となりました。本記事では、ARK Investの投資戦略と6本のアクティブ運用上場投資信託(ETF)について紹介します。「破壊的イノベーション」へのアクティブ投資資産運用会社ARK Investはフロリダ州に拠点を置く資産運用会社で、2014年にキャシー・ウッド氏により設立されました。同社は、世界の仕組みを変える可能性のある、技術的に実現可能な新製品または新サービスを「破壊的イノベーション」と定義し、フィンテック、ロボット工学、バイオテクノロジーなどの破壊的イノベーションに関連する企業に特化して投資することにより、長期的な資本の成長を目指しています。ARKのETFはアクティブ運用が中心で、指数に連動するのではなく、独自の調査に基づいて投資対象となる銘柄を厳選します。最低7年間の投資期間を推奨し、長期投資を通じて市場のボラティリティを乗り越えながら、広範なベンチマークを上回るリターンを追求する運用方針です。また、各ファンドの保有状況は日次で開示され、売買動向もメール配信するなど高い透明性が特徴となっています。2020年には、S&P 500指数の上昇率が16%にとどまる中で、ARKのアクティブ運用ETFは全てが100%を超えるリターンを記録し、ウッド氏とARKの名を一躍高めました。ARK investの6つのアクティブ運用ファンドARKのETFは全部で8本あり、うち2本はインデックスファンドで、6本がアクティブ運用ファンドです。以下では、アクティブ運用ETFに焦点を当てて、それぞれの特徴と主要構成銘柄を整理します。(データは2025年8月25日時点)。1. ARK Innovation ETF(ARKK)ARKの旗艦ファンドARK innovation ETF は80億ドル以上の運用資産を保有し、「破壊的イノベーション」に関連する企業全般に投資を行います。AI、自動運転、フィンテック、ゲノム編集、宇宙開発など、ARKの掲げる主要テーマを横断的にカバーし、ARKの「コア投資」に最も近い構成となっています。構成銘柄は44銘柄。上位保有銘柄テスラ(TSLA): 10.65%ロク(ROKU): 7.00%コインベース(COIN): 6.32%テンパスAI(TEM): 5.78%ロブロックス(RBLX): 5.21%ショッピファイ(SHOP): 5.01%クリスパー・セラピューティクス(CRSP): 4.44%ロビンフッド(HOOD): 4.35%パランティア(PLTR): 4.19%アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD): 3.65%2. ARK Next Generation Internet ETF(ARKW)ARK Next Generation Internet ETFは、クラウド、デジタル消費、ブロックチェーンといった次世代インターネットの構造転換で恩恵を受ける企業に焦点を当てており、ARKの中で「デジタル経済・Web3.0」に寄った構成となっています。運用資産は25億ドルを超え、アークの中で2番目に大きなETFとなります。デジタル経済のプラットフォーム企業を中心に37銘柄で構成され、ビットコインへの間接的エクスポージャーを認めているのも特徴です。上位保有銘柄テスラ(TSLA): 8.20%ARK ビットコイン ETF:6.50%ロク(ROKU): 5.79%コインベース(COIN): 5.58%ショッピファイ(SHOP): 5.19%アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD): 5.10%ロブロックス(RBLX): 5.07%ロビンフッド(HOOD): 4.82%パランティア(PLTR): 4.24%サークル・インターネット(CRCL): 3.81%3. ARK Fintech Innovation ETF(ARKF)ARK Fintech Innovation ETFは、13億ドル以上の運用資産を保有し、デジタルウォレットやP2P送金、暗号資産などフィンテック分野に関連する企業に投資をしています。構成銘柄は43銘柄で、金融のUI/UXと裏側のインフラ設計の両方を取りにいく組成となっています。規制・金利動向・暗号資産市況と連動しやすい一方、決済データのネットワーク効果を重視するのがARKFの特徴となっています。上位保有銘柄ショッピファイ(SHOP): 9.61%ロビンフッド(HOOD): 7.36%コインベース(COIN): 6.49%ARK ビットコイン ETF : 4.85%トースト(TOST): 4.45%ソーファイ・テクノロジーズ(SOFI): 4.02%ロブロックス(RBLX): 4.02%パランティア(PLTR): 3.98%サークル・インターネット(CRCL): 3.81%ブロック(XYZ): 3.15%4. ARK Autonomous Technology & Robotics ETF(ARKQ)ARK Autonomous Technology & Robotics ETFは、自動運転やロボット工学など「フィジカル×AI」のテーマに焦点を当てており、運用資産は12億ドルを超えています。構成銘柄は36銘柄で、オートメーションやロボティクスの強みが明確な銘柄(産業用オートメーション、ドローン、衛星地上装置など)を選好しています。指数型のロボティクスETFに比べ、テーマの横断性と裁量の広さが差別化要因となっています。上位保有銘柄テスラ(TSLA): 10.95%クラトス・ディフェンス(KTOS): 9.49%テラダイン(TER): 7.49%パランティア(PLTR): 6.22%アーチャー・アビエーション(ACHR): 5.31%ロケット・ラボ(RKLB): 5.10%エアロバイロメント(AVAV): 4.30%アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD): 4.06%トリンブル(TRMB): 3.82%イリジウム・コミュニケーションズ(IRDM): 3.78%5. ARK Genomic Revolution ETF(ARKG)ARK Genomic Revolution ETFは、ゲノム医療・バイオ分野の発展に関連する企業に投資をしています。一般的なヘルスケアの指数連動よりも、CRISPR/遺伝子編集、マルチオミクス解析、AI創薬など次世代技術への特化で差別化しています。ARKは「ベンチャーキャピタルに近い野心的な投資をパブリック市場で提供する」点が特徴であると説明しており、規制や治験ニュースに伴う銘柄のボラティリティは大きく、長期視点での投資が前提となっています。総資産約10億ドルで、構成銘柄は37銘柄。上位保有銘柄テンパスAI(TEM): 11.87%クリスパー・セラピューティクス(CRSP): 9.46%ツイスト・バイオサイエンス(TWST): 5.83%リカージョン・ファーマシューティカルズ(RXRX): 5.33%ガーダント・ヘルス(GH): 4.73%ナテラ(NTRA): 4.46%テンエックス・ゲノミクス(TXG): 4.35%アダプティブ・バイオテクノロジーズ(ADPT): 3.97%パーソナリス(PSNL): 3.68%シュレーディンガー(SDGR): 3.67%6. ARK Space Exploration & Innovation ETF(ARKX)ARK Space Exploration & Innovation ETFは、「宇宙」分野におけるイノベーションに注力しています。アクティブ運用のため、宇宙株だけでなくサプライチェーン全体へ投資できる裁量があり、宇宙探査・衛星通信・再使用ロケットなどに加え、3Dプリンティング、ロボティクス、バッテリー等の基盤技術、さらにはGPS・農業・建設・リモートセンシングなど宇宙産業の波及効果を享受する地上企業まで幅広く投資するのが特徴となっています。運用資産は4億ドル程度で、構成銘柄は32銘柄。上位保有銘柄クラトス・ディフェンス(KTOS): 10.04%ロケット・ラボ(RKLB): 8.83%エアロバイロメント(AVAV): 6.63%イリジウム・コミュニケーションズ(IRDM): 6.52%エルスリー・ハリス・テクノロジーズ(LHK): 6.22%アーチャー・アビエーション(ACHR): 5.92%テラダイン(TER): 5.80%パランティア(PLTR): 5.39%トリンブル(TRMB): 4.80%アマゾン(AMZN): 3.70%ARK Investのポートフォリオを簡単コピー?現在ARK InvestのETFは日本国内では取引されていませんが、ブルーモ証券では、今回ご紹介したETFについて、それぞれ日本から取引可能な構成割合上位20銘柄をもとにしたポートフォリオを提供しており、同様の構成銘柄・投資比率で投資を始めることが可能となっています。また、ウォーレン・バフェット氏など他の著名投資家の最新ポートフォリオも閲覧、コピー可能となっており、気に入ったポートフォリオをもとに、自分好みにカスタマイズできます。
【バフェットのポートフォリオ解説】ユナイテッドヘルスほか複数の新規保有を明らかに、バリュー投資の原則を反映か
ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の2025年6月末時点でのポートフォリオが、8月14日に米証券取引委員会(SEC)に提出された報告書「フォーム13F」にて明らかになりました。本記事では、バフェット氏のポートフォリオについて解説します。バフェットポートフォリオの中身バフェット氏は集中度の高いポートフォリオを運用していることで知られ、上場ポートフォリオは上位5銘柄で約70%、上位10銘柄で約90%弱を占めています。上位保有銘柄アップル(AAPL) : 22.3%アメリカン・エキスプレス(AXP) : 18.8%バンク・オブ・アメリカ(BAC) : 11.1%コカコーラ(KO): 11.0%シェブロン(CVX): 6.8%ムーディーズ(MCO): 4.8%オキシデンタル・ペトロリアム (OXY): 4.3%クラフト・ハインツ(KHC): 3.3%チャブ(CB): 3.0%ダビータ(DVA): 1.9%昨年に続いて、2025年4-6月期もアップル株6.7%とバンク・オブ・アメリカ株4.2%を売却。このほか上位保有銘柄では、シェブロン株を2.9%追加購入し、ダビータ株を3.8%売却していますが、ポートフォリオ全体への影響は軽微となっています。ユナイテッドヘルス株へ16億ドルの新規投資今回の報告で最も注目を集めたのは、医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)への新規投資です。同社は、今年5月にアンドリュー・ウィッティ元最高経営責任者(CEO)が突然辞任し、2025年通期の業績見通しを撤回。その後、7月末に新たな2025年通期業績見通しを発表しましたが、医療コストの急騰から市場予想および同社が今年4月に示した見通しを大きく下回り、株価は一時年初来で約50%の下落となっていました。バークシャーのユナイテッドヘルスへの投資は16億ドル(約2360億円)に相当し、上場ポートフォリオのうち約0.61%を占めるポジションとなります。また、バクシャーのほかにも、2008年の金融危機を予測したことで知られるマイケル・バリー氏やアパルーサ・マネジメントのデビッド・テッパー氏を含む著名機関投資家の買いを獲得したことから、ユナイテッドヘルスの株価は保有の伝わった14日の時間外取引で8.5%上昇しました。非公開保有の3銘柄が明らかに?バークシャーは2025年3月末時点でのポートフォリオをSECに報告する際、一部の株式投資の開示を非公開とする「秘密保持請求」を行っていため、市場ではこの機密扱いの銘柄について憶測が飛び交っていました。今回の提出書類では、この機密銘柄が米鉄鋼最大手のニューコア(NUE)、米大手住宅建設会社のレナー(LEN)とDRホートン(DHI)の3銘柄であることが公表されました。米国の住宅セクターは、現在深刻な住宅不足に直面しており、住宅ローン金利が高止まりしているにもかかわらず、住宅購入者は新築住宅への投資を余儀なくされています。バークシャーは、以前にもDRホートンの株式を保持しており、また米国最大のプレハブ住宅建設会社クレイトン・ホームズを所有しているため、住宅建設事業については詳しく、住宅セクターへの投資回帰は住宅市場のファンダメンタルズの回復を確信している可能性を示唆しています。レナーとDRホートンの両社は業界最大手であり、財務状況も健全な2社となっています。バークシャーが公開した6つの新規保有銘柄と投資額ユナイテッドヘルス・グループ(UNH) : 15.7億ドルニューコア(NUE) : 8.6億ドルレナー(LEN) : 7.8億ドルDRホートン(DHI): 1.9億ドルラマー・アドバタイジング(LAMR): 1.4億ドルアレジオン(ALLE): 1.1億ドル(各ポジションの市場価値は2025年8月15日時点)また、屋外広告のラマー・アドバタイジング(LAMR)とセキュリティ製品プロバイダーのアレジオン(ALLE)への新規投資を公表したほか、昨年に新規投資を開始した消費者向け事業へも引き続き投資を強化し、ポートフォリオの再編を進めています。2024年10-12月期に新規投資を開始した、米国最大のビール輸入会社のコンステレーション・ブランズ(STZ)の株式は11.6%追加購入。2024年7-9月期に新規投資が明らかになった、プール(POOL)の株式は136%追加購入し、2025年4-6月期において既存ポジションへの追加投資額が最も大きな銘柄の一つとなりました。ドミノ・ピザ(DPZ)への投資は0.5%増加。2024年3-6月期に新規投資を開始したハイコ(HEI.A)への投資は11.4%増加しました。手元資金は約50兆円、バフェット氏は年末退任多数の新規投資にもかかわらず、バークシャーは11四半期連続で株式を売り越しを記録しました。現金と米短期債保有額を合計した広義の手元資金は6月末時点で3441億ドル(約50兆円)とコカ・コーラの時価総額を上回る額となっています。バフェット氏は年末にCEOを退任し、後任としてグレッグ・エイベル副会長が就任する予定です。バフェットポートフォリオを簡単コピー?ブルーモ証券では、2025年6月末時点でのバークシャーのポートフォリオをワンタップでコピーし、投資を始めることができます。株式のみで構成されるポートフォリオのほか、米短期債を含む手元資金を反映したポートフォリオのコピーもできますし、そこから変更を加えてオリジナルのポートフォリオの作成も可能です。

日米関税合意は成功だったか?80兆円投資枠の実現性と今後の日本経済への示唆
ブルーモ証券代表の中村です。本記事では、2025年7月の日米関税交渉のまとめと、そこでされた「80兆円投資合意」の実現可能性、さらにそこから今後の日本経済へのリスクについて分析しています。まとめると、15%相互関税は外交的成果であるものの、関税負担はやはり重く、さらに実現可能性の乏しい「80兆円投資合意」が今後の日米貿易紛争再燃のきっかけとなる可能性があります。今後の日本経済や株式市場に一定の影響は避けられず、リスク顕在化のシグナルに個人投資家としては注意すべきでしょう。日米関税合意と15%誤解の顛末2025年7月下旬、日米両政府は難航していた関税交渉で電撃的な合意に達しました。最大の焦点だった日本から米国への追加関税について、当初米国側が要求した24%から15%に引き下げられましたが、この「15%」という数字をめぐり、日本国内と米国側で受け止め方に食い違いが生じ、一部で誤解や混乱も広がりました。合意内容のポイントは次の4点です :相互関税率:日米双方が関税率を一律15%に揃える(ただし従来から15%以上の品目は現行税率を維持)。自動車・部品:米国の日本車関税は従来2.5%に追加12.5%を上乗せし計15%に設定(発動済みだった25%から引き下げ) 。コメ輸入:日本は無関税枠(ミニマムアクセス)内で米国産コメの輸入を直ちに約75%増加。対米投資枠:日本政府系金融機関の出資や融資保証を通じ、最大5,500億ドル(約80兆円)の対米投資プログラムを創設。この合意は日本側から見ると「外交的勝利」とも評価されました。交渉の土壇場で自動車関税を25%から15%へ引き下げさせたことは、石破政権(日本側政権)にとって大きな成果であり、日本の製造業にも恩恵となると報じられています 。実際、妥結のニュースを受け東京株式市場では自動車株が急騰し、トヨタ自動車が前日比+14.3%、ホンダ+11.2%、日産自動車+8.3%と軒並み大幅高となりました 。業界内でも「サプライズでポジティブ」と歓迎する声が上がり 、ひとまず最悪シナリオが回避されたとの安心感が広がりました。しかし、実際に相互関税が発動されると、実際には「追加15%」の関税があらゆる品目に課されることになり、市場は混乱します。誤解の核心は、「15%が既存の関税に上乗せされるのか、それとも既存の高関税に置き換わる(上限として機能する)のか」という運用解釈の食い違いでした。日本側は欧州に適用された例外措置の横展開を前提に“付け替え型”の運用を想定していた一方、米側の初期説明は「現行の高関税にさらに15%を重ねる」かのように受け取られ、市場にも二重課税の懸念が広がりました。背景には、共同文書の詰めが不十分だったことや、日米双方の説明が統一されていなかったことがあります。その後の再調整で、米国は7月31日付の大統領令を修正し、「15%は既に課している高率関税に重ねない」という運用を明文化しました。加えて、日本車に予定されていた25%の関税は15%へ早期引き下げを再確認するかたちとなり、二重取りを避ける整理が進みました。結果として、市場は上乗せリスクの後退を織り込み、不透明感は一定程度和らぎました。トランプ政権前からの米国の対日関税推移トランプ政権以前、米国は日本を含む同盟国に対して比較的低い関税率を適用してきました。例えば乗用車の対日関税は長年2.5%(ピックアップトラックには25%)に据え置かれ、電機製品や産業機械など多くの工業品は関税ゼロ~数%程度でした。状況が変わったのは2017年以降のトランプ前大統領の登場です。トランプ氏は2018年には安全保障を理由に鉄鋼に25%・アルミに10%の関税を課しました。日本の鉄鋼メーカーも米向け輸出減を余儀なくされました。さらに自動車にも最大25%の関税発動をちらつかせ、日本や欧州に譲歩を迫ります。最終的に第一次トランプ政権期には自動車関税の発動は回避され、2019年に日本は農産品市場の追加開放などを含む日米貿易協定(ミニ合意)を結んで米側の矛を収めました。しかし、この時点でも日本車への2.5%関税は残されたままで、将来的な関税リスクは燻った状態でした。2021年に就任したバイデン大統領の下では、対日関税政策は比較的安定していました。バイデン政権は前政権の対中関税や鉄鋼関税を維持しつつ、同盟国との関係修復を図り、2022年には日本産鉄鋼に対する関税を一定枠まで免除する措置も取られています。一方でトランプ氏が2024年米大統領選で再登場すると、通商政策は再び保護主義色を強めました。2025年にトランプ政権が復帰すると、まず4月に日本などからの輸入自動車に一律25%の追加関税を発動 。続いて6月には鉄鋼・アルミ関税を50%へ倍増させる強硬策を次々と打ち出しました 。これに対し日本政府はWTO提訴も辞さない構えを見せつつ、外交ルートでの解決を模索し、迎えたのが前述の7月協議妥結です。今回の合意により、米側は自動車の追加関税を25%から15%へ引き下げました。もっとも今回設定された15%という関税率は依然高水準で、従来2.5%だった乗用車関税が一気に6倍にも跳ね上がった計算になります。さらに米国はピックアップトラックの25%関税や日本産鉄鋼への50%関税など、一部例外的に高い税率を維持しています。つまり、合意後も米国の対日関税は従来に比べ総じて非常に高いというのが実情です。日本企業にとってコスト増は避けられず、輸出採算悪化や価格競争力低下といった課題に直面しています。今後の米政権動向次第で政策が再度変化する可能性もあり、通商面の不透明感は依然残っています。80兆円合意は実現可能なのか?今回の合意の目玉である「80兆円規模の対米投資」は、政府機関による支援枠とされていますが、こうした政府間の国際協力や経済対策の裏側で資金パッケージを作成していた経験者からすると、全く現実味のないものに見えています。私は2015年から2017年の2年間、財務省国際局開発政策課という部署で、政府系金融機関による国際協力や経済対策の策定を担当していました。当時は安倍政権の下で「海外インフラ投資」の推進が大きな政策イニシアティブになっており、政府系金融機関による踏み込んだ支援体制の確立のため、法改正なども実施していました。政府系金融機関による支援は、主に国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)という2組織による出融資と保証で実行されます。税金や国債発行で賄う通常の予算措置に比べると、政策金融は金額規模は大きく見せられる割に財政への影響は小さいので、大きな数字を示したい国際協力や経済対策の現場ではよく使われる政策ツールになっています。ただ、それも限度があります。JBICの年間出融資額は全世界を合わせて2兆円程度、NEXIが投資に使える海外投資保険は同じく全世界で年間1兆円となっており、「80兆円」という数字とは程遠いものになっています。仮にトランプ大統領任期の4年間で80兆円を実現する場合、JBIC/NEXIの全世界向け政策金融を年間で7倍しないと達成できず、事実上不可能と言って良いでしょう。また、JBICやNEXIが政策金融を実行するためには、日本企業(JVであれば進出先の米国企業も)の関与が当然ながら必要で、さらにJBICが融資をする場合は全体融資額の原則半分までに総量が規制されているので、民間銀行による金融支援も実現には不可欠です。仮に政府側の資金準備ができたとしても、日本企業が年間20兆円分の案件組成をすぐにできるとも考えにくいです。日本からの対米直接投資は現在だと年間4兆円程度になっており、こちらも80兆円をトランプ政権で実現するためには5倍にする必要があり、現実味のない数字となっています。実際ホワイトハウス発表以外に公式の文書は存在せず、この投資合意について各論の詰めはこれからです。米政府内でも「恐らくこんな金額は実現しない」と冷ややかな見方が出ており 、日本側が本当に5,500億ドルもの投資をコミットできるのか懐疑的に見られています。仮に80兆円合意が全く実現不可能だとして、それが何か米国内そしてトランプ政権で問題になり、再度日米貿易摩擦を再燃させる契機になるかが今後の論点になります。トランプ政権期間に再度関税引き上げはあるか?その日本経済にもたらすリスクとは?今回の日米合意により、ひとまず最悪の事態は避けられました。しかしトランプ政権の残り任期中に再び関税が引き上げられる可能性は否定できません。トランプ大統領はこれまでも突発的に関税率の変更を表明しており、まだまだ多くの国に対して強硬姿勢を崩していません 。日本との合意についても、今後の履行状況によっては「約束した投資が実行されない」等の理由で不満を唱え、一方的に再交渉や追加措置を求めてくるリスクがあります。特に懸念されるのは自動車関税の再引き上げです。日本から米国への自動車輸出は年約7兆円規模に達し、日本の輸出全体の約3割を占める基幹産業です 。今回15%で決着したとはいえ、従来2.5%から大幅上昇した15%関税は各社に重くのしかかります。実際、日本の自動車メーカー各社は「15%は痛手だが50%という最悪が避けられただけマシ」と受け止めつつ 、価格引き上げやコスト削減、現地生産の拡大などで何とか負担を吸収しようと努めています 。それでも15%では利益圧迫は避けられず、もし再び25%や50%へ引き上げられるような事態になれば、国内生産縮小や収益急減など日本経済への打撃は計り知れません。同様に、鉄鋼など他の産業も高関税の長期化は痛手です。50%関税の下では日本製鉄やJFEといった大手でも米市場で価格競争力を失い、輸出は細るでしょう。追加関税の拡大は日本のGDPを押し下げ、景気を下振れさせる可能性もあります。さらに政策の不透明さ自体が経済に悪影響を及ぼします。企業は将来の関税コストが読めないと設備投資をためらい、投資家もリスクを警戒して株への投資を手控えるでしょう。貿易摩擦への懸念が高まれば市場がリスクオフに傾き、日本株全般の上値を抑える要因となり得ます。トランプ政権の綱渡り的な国際交渉の中、相互関税15%という外交成果を持ち帰った日本政府の動きは賞賛に値しますが、既に引き上げられた関税の重みと、危うい80兆円合意のリスクとしての関税再引き上げリスクが、日本経済に暗い影を落としてしまうという現実は認めざるをえないでしょう。個人投資家としては、今後も日米交渉のニュースには目を通して、80兆円合意のかけ違いなどから貿易摩擦が再燃するタイミングを早めに注意できるようになっておくことが大事です。

利下げで注目すべき米国株は?小型株と景気敏感セクターに期待
金融市場では、FRB(連邦準備制度理事会)が年内9月と12月の2会合で0.25ポイントの利下げに踏み切ることが予想されています。本記事では「利下げが株式市場に与える影響」と「利下げによって恩恵を受ける株」について解説します。ソフトランディングへの期待短期金利の引き下げにより企業や消費者の借り入れコストが下がることから、理論的には利下げは株価の追い風になるとされています。しかし、過去の利下げ局面を振り返ると市場の反応は様々であり、株価の動向を理解するにはFRBが金利を引き下げた背景を考察する必要があります。FRBが急激な景気の悪化を引き起こすことなく、インフレを抑制し、適度な景気減速を実現(ソフトランディング)したと市場が認識した場合、株価は堅調に推移することが期待されます。一方、景気後退リスクを受けて反動的に金利を引き下げていると捉えられた場合、株価は調整局面に陥ることもあります。エコノミストらによると、今後12ヶ月以内に米国が景気後退に陥る確率の予測は33%とされ、4月の45%からは改善傾向にあります。依然として見通しに慎重姿勢が残るものの、FRBの政治的独立性が維持される限り、ソフトランディングは達成可能との見方が主流となっています。景気敏感株や小型株への資金シフトの可能性ソフトランディングへの期待に伴い、市場では景気敏感株や小型株への資金流入が顕著になる可能性があります。セクター別では、工業・一般消費財・素材セクターなどの景気敏感株は利下げと景気安定期待の恩恵を受けやすく、金融株も貸出利ざやの改善期待から強気セクターとして注目されます。特に、S&P 500の工業セクターは、7月に6.03%の上昇を記録し、情報技術セクターに次ぐ好調なパフォーマンスを示しました。一般消費財セクターも4.68%上昇し、全11セクター中3番目のパフォーマンスとなっています。利下げ局面で小型株は大型株をアウトパフォーム小型株は金利感応度が高く、借入コストの低下により利益率が改善しやすいため、利下げ局面でより恩恵を受けやすい特性があります。ジェフリーズの分析では、1950年以降、最初の利下げ後の12カ月間で小型株が28%上昇したのに対して、大型株は15%上昇と、小型株のアウトパフォーマンスが顕著となっています。米国市場においては、ラッセル2000(Russell 2000)が小型株のパフォーマンスを反映する株価指数で、米国証券取引所に上場している銘柄のうち時価総額上位1001位から3000位の銘柄で構成されています。ラッセル2000は、今月に入ってからは3.76%上昇しており、同時期のS&P500指数の3.09%の上昇率をアウトパフォームしています。この上昇により、約1年半ぶりにゴールデンクロス(50日移動平均線が200日を上回る)に突入しようとしており、小型株市場の反転兆候として注目されています。利下げ時期は、引き続き経済指標次第ただし、景気敏感株や小型株の上昇が持続するかどうかは、2025年末までに実際に何回の利下げを実施できるか、そしてそれが中小企業にどの程度の影響をもたらすかにかかっています。現在、FOMC(連邦公開市場委員会)のメンバー内では、利下げ時期をめぐって意見が分かれています。6月会合で発表された「ドットプロット」では、政策担当者19人中10人が2025年末までに少なくとも2回の利下げを予測した一方、7人は年内の利下げを見送りの立場でした。引き続き、金融市場の反応は、雇用統計やインフレ動向など経済指標に大きく左右されると見られています。