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【テスラ決算みどころ】ロボタクシー発表を終え、材料出尽くしか(TESLA)
本記事では、テスラの2024年4-6月期の決算を振り返りつつ、10月23日に控える2024年7-9月期決算の見どころを解説します。同社の株価は一時S&P500種構成銘柄の中で最も悪いパフォーマンスでしたが、過去6ヶ月間で約30%上昇と見事V字回復を果たしています。前期の振り返り:純利益大幅減で株価下落7月23日に発表された2024年4-6月期決算では、売上高が前年同期比2%増、純利益は同45%減となりました。投資家から注目されていた自動車部門の粗利益率(規制クレジット除く)についても14.6%と、1-3月期の16.4%から低下し、株価は翌日12%下落しました。売上高:$255.0億(予想:$247.7億)EPS:$0.52(予想:$0.62) セグメント別では、自動車部門の売上が前年同期比7%減の199億ドルでしたが、テスラのエネルギー生成・貯蔵部門の売上が倍増したことにより、全体の売上高の成長に寄与しました。また、7-9月の自動車生産が4-6月期よりも増える見通しを明らかにしたものの、2024年の納車台数の伸び率は前年より「著しく低くなる」見通しをあらためて示しました。テスラは引き続きコスト削減に重点を置くとし、新モデルのサイバートラックは年内に黒字化する方向。低価格車の計画も前進しており、25年前半に生産開始の見込みです。そのほか、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、「ロボタクシー」の発表イベントを10月10日に延期すると明らかにしました。ロボタクシーはヒューマノイドロボット「オプティマス」と同様に、テキサス州オースティンにある工場で製造されます。アナリストからはテスラの株価を押し上げる強力な材料が短期的に不足との指摘もあり、一部アナリストは10月のロボタクシー発表が実質的な内容より願望に近いものになる可能性があると懐疑的に見ています。7-9月期の注目点:利益率とロボタクシーの詳細2024年7-9月期のテスラの「売上高予想は$255.3億、EPS予想は$0.59」、目標株価は$214となっています。販売台数改善も投資家の期待に届かずテスラが10月2日に発表した、2024年7-9月期の販売台数は中国市場で販売促進策を強化したことが功を奏し、前年同期比6%増の46万2890台と3四半期ぶりの増加となりました。しかし、市場予想をわずかに下回り、投資家の期待に届かなかったことから株価は5%下落しました。中国乗用車協会(CPCA)によると、同社の中国製EVの9月販売台数は前年同期比19%増の8万8321台となり、7-9月期の中国製EV販売台数は12%増加しました。テスラは、中国市場で景気減速に伴う消費鈍化や現地企業との競争が激化に直面しており、最長5年の無利子ローン提供などインセンティブを拡大しています。一方、大規模なプロモーションは、同社車両の平均販売価格の重しとなっています。2024年第1四半期、テスラ車両の平均価格は前年同期の約47,000ドルから45,000ドル以下に下がりましたが、第2四半期には平均価格はさらに下がり、約44,500ドルになりました。ロボタクシーの詳細情報は限定的テスラは10月10日「We, Robot」イベントにて、ロボットタクシー「サイバーキャブ」のプロトタイプを公開しました。スケジュールについては、来年テキサス州とカリフォルニア州でモデル3とモデルYの完全自動運転を開始し、2026年までにサイバーキャブの生産が開始される見込みですが、遅くとも2027年になる可能性もあると発表されました。「サイバーキャブ」のイメージ画像テスラは新モデルを発売する際、最初に示したスケジュールから数ヶ月、ときには数年遅れて納車していますが、イベントではマスク氏自身が「スケジュールに関しては楽観的な傾向があり、製品の納品は当初の見積もりよりも遅れることが多い」と述べています。「市場はもっと明確なタイムラインを望んでいたと思う」と指摘する声も上がっており、株価は時間外取引で下落しました。また、完全自動運転車のネットワークは固定費が高いことから、初期費用と非ピーク時の稼働率に関して、採算の点で疑問が生じると一部アナリストは懸念を示しています。決算説明会では、ロボタクシーサービスの仕組みや詳細についてアナリストから質問されることが想定されます。
【JPモルガン・チェース決算みどころ】金利収入の市場予想は楽観的過ぎる?利下げの影響に注目(JPMorgan Chase)
本記事では、米国最大の銀行であるJPモルガン・チェース(JPM)の2024年4-6月期決算を振り返りつつ、10月12日に控える2024年7-9月期決算の見どころを解説します。同行の株価は年初来で約23%上昇し、S&P500指数を上回るパフォーマンスを記録しています。8月の経済指標の結果を受けて米国の景気後退懸念が弱まり、8月30日には上場来高値を記録しました。前期の振り返り:過去最高益を達成、投資銀行部門が堅調7月12日に発表された2024年4-6月期決算では、収入・EPSともに市場予想を上回る結果となりました。しかし、主流の銀行業務の伸びは鈍化しており、決算後にJPモルガン・チェースの株価はおよそ1%下落しています。収入:$502億(予想:$417.2億)EPS:$4.4(予想:$4.14) 同行の利益は前年同期比で25%増加し、4四半期ぶりの過去最高益となる181.5億ドルを計上しました。その内およそ79億ドルはクレジットカード大手ビザの株式交換に伴う一時的な収入で、実質的にはサプライズ決算とはなりませんでした。ただ、株式市場の回復が業績に大きく寄与し、投資銀行部門の収益は25億ドルで、前年同期から46%上昇しました。また、株式取引収益は21%増の30億ドルで、予想を2.3億ドル上回りました。CEOのジェイミー・ダイモンは、株式の評価は比較的良好な経済見通しを反映していると述べました。地政学的な状況は第二次世界大戦以来最も危険であるとも指摘しつつも、グローバル経済にもたらす影響はまだ分からないと述べています。また、同行は四半期中に30.5億ドルの貸倒引当金を計上し、予想の27.8億ドルを上回りました。これは将来の債務不履行が増加することを見越したもので、クレジットカード事業が引当金の増加の主な要因でした。7-9月期の注目点:利下げ動向の金利収入への影響2024年7-9月期のJPモルガンの「売上高予想は$418.2億、EPS予想は$4.02」、平均目標株価は$223.3です。9月のFOMCで4年半ぶりに利下げが実施され、それを踏まえた上での純金利収入(NII)の見通しに注目が集まります。純金利収入の見通しは「楽観的」過ぎるか?9月10日、COOのダニエル・ピントは、5月に示した純金利収入に対するアナリスト予想が楽観的過ぎると指摘しました。「NIIの予想は少し高過ぎる。来年はもう少し厳しい年になる」と述べており、今後の利下げ動向に弱気な姿勢を見せています。ゴールドマン・サックス・グループのソロモンCEOが自社の見通しに対して減益を示唆するなど、各金融機関からも悲観的な見通しが相次いでおり、純金利収入の見通しが株価評価に大きな影響を与えると考えられます。投資銀行部門の業績に期待前回決算で投資銀行部門の収益は、前年同期から46%増加して25億ドルとなりました。JPモルガン・チェースの株価は、2024年4-6月期決算発表後から約2.9%上昇しており、投資銀行部門の好業績を一部織り込んでいると考えられます。9月のFRBによる利下げに伴い、投資銀行業務の業績がどのような結果になるか注目です。前期で好調だった投資銀行業務が今期の決算でもその勢いを保てるかが重要で、予想を下回った場合は期待感とのギャップから株価の下落要因になる可能性があります。
【ネットフリックス決算みどころ】広告付きプランで会員増の勢い続くか(NETFLIX)
本記事では、米動画配信サービス大手ネットフリックス(NFLX)の2024年4-6月期の決算を振り返り、10月17日に控える2024年7-9月期決算の見どころを解説します。同社の株価は年初来から約50%上昇し、S&P500指数の上昇率の約2.5倍のパフォーマンスとなっています。前期の振り返り:好業績も見通し予想届かず、株価横ばい7月18日に発表された2024年4-6月期決算では、会員数の伸びが追い風となり、売上高が前年同期比17%増、EPSが同48%増と、ともに市場予想を上回る結果となりました。有料会員数は2億7700万人に達し、前四半期からの純新規会員数の増加は800万人超と、前年同期の590万人を大幅に上回りました。売上高:$95.6億(予想:$95.3億)EPS:$4.88(予想:$4.74) 投資家が注目する広告付きプランの会員数は前四半期比34%増。同プランが提供されている市場では、4-6月期の新規契約の45%以上を占め、経営陣は広告ビジネスが順調に成長し、長期的な収益成長に寄与すると見込んでいます。ただし、株主宛て書簡では「定額料金収入の規模が大きいことも相まって、2024年、25年に広告が収益成長の主要な原動力になるとは考えていない」と広告事業が収益拡大の主要な原動力となるのは2026年以降だろうと述べています。また、2024年通期の売上高と利益率の見通しを引き上げましたが、7-9月期の見通しについては前年同期比14%増と市場予想をわずかに下回りました。7-9月期の注目点:新規会員数動向と広告戦略2024年7-9月期のネットフリックスの「売上高予想は$97.6億、EPS予想は$5.09」、平均目標株価は$716.8です。市場の注目は、新規会員数の動向および同社の広告戦略に集まると想定されています。広告付きプランの収益性はネットフリックスは、2023年半ばから同一世帯以外のアカウント共有の取り締まりを強化し、会員数を大きく押し上げました。しかし、取り締まりによる力強い成長は鈍化し、広告付きの安価プランによる加入者の拡大が続くと見込まれています。競争の激しいストリーミング市場における同社の確固たる地位と広告成長軌道への信頼からアナリスト評価は好意的な見方が多いですが、サード・ブリッジのアナリストは同社の広告事業について「収益の観点からはまだ能力が証明されていない」と指摘し、アマゾンの方が広告市場では大きな成功を収めており、ネットフリックスが同分野で規模を拡大するには一層の取り組みが必要との見方を示しています。スポーツコンテンツで新規会員獲得かネットフリックスは最近、アメフトやレスリングの生中継などライブスポーツ関連の契約を多数発表しており、一部のアナリストはクリスマス当日に放送されるNFLの試合が新規会員を獲得するきっかけになる可能性があると指摘しています。アナリストらは、同社がスポーツ中継に力を入れているのは広告ビジネスを成長させるためだと考えており、ライブスポーツコンテンツの拡充が視聴者と広告主を引きつけ、広告付きプランの成長を促進することを期待しています。また、ネットフリックスは来年からWWE(ワールド・レスリング・エンターテイメント)のプロレスイベントの公式放送局になることが発表されています。
中東情勢は緊迫化するも米雇用統計が期待を大きく上回り、株価回復・円安が進む|米国市場サマリー
先週は、中東情勢の緊迫化から週の前半は株価が下落しましたが、金曜日の雇用統計が予想を大きく上回る好内容だったことから、株価は大きく回復して1週間を終えています。一方、FRBの追加利下げは急がない情勢になったのではないかとの見立ても出ています。為替は、石破首相が日銀の追加利上げに対して否定的な見解を表明したことから、石破政権での利上げ加速を見越していた市場の期待が変化し、円安が進みました。また、米国の雇用統計結果を受けて、FRBの利下げペースが鈍化するとの見通しから、週末にかけてさらに円安が加速しました。米国株式市場:中東情勢は緊迫化するも、雇用統計が期待を大きく上回る9月30日(月) 米国株式市場は、S&P 500が小幅反発し、終値で最高値を更新しました。FRBのパウエル議長が追加利下げを急がない姿勢を示したため、一時下落しましたが、四半期末に向けたモメンタム取引が後押しし、最終的に上昇しました。パウエル議長は、年内にさらに2回の利下げを実施する可能性を示しましたが、市場は慎重に反応しました。個別では、CVS Healthが2.4%上昇し、ヘッジファンドの活動が注目されました。10月1日(火) NASDAQは1%以上下落し、特にハイテク株が売られました。背景には、イランがイスラエルに対してミサイルを発射し、中東情勢の緊迫化がありました。これにより、リスク回避の動きが強まり、防衛関連株が買われました。Northrop Grummanが3%上昇、Lockheed Martinも3.6%上昇するなど、防衛関連銘柄が軒並み上昇しました。原油価格の上昇によりエネルギー株も買われ、ExxonMobilは2.3%高となりましたが、Delta Air Linesは1.6%下落しました。10月2日(水) 米国株式市場はS&P 500が横ばいで終了しました。NVIDIAが1.6%上昇し、半導体株が市場を支えましたが、Teslaは第3四半期の納入台数が予想を下回り、3.5%下落しました。中東情勢の緊張が続く中、バイデン米大統領はイスラエルがイランに対する核施設攻撃を行うことを支持しない意向を表明し、均衡ある対応を促しました。加えて、労働市場の堅調さを示すデータが発表され、9月の全米雇用報告では、民間部門雇用者数が予想を上回りました。10月3日(木) NASDAQは、FRBが注目している雇用統計の発表を控え、慎重なムードが広がり下落しました。新規失業保険申請件数は小幅に増加したものの、FRBが利下げを検討する要因とはならないと見られています。市場では中東情勢の緊迫化が続き、投資家のリスク回避姿勢が強まり、原油価格が高騰したため、エネルギーセクターが1.6%上昇しました。10月4日(金) 米国株式市場は、ダウ工業株30種が過去最高値を更新し、NASDAQも1%以上の上昇を見せました。米労働省が発表した9月の非農業部門雇用者数が25万4000人増と予想を大幅に上回り、これが市場の安心感を後押ししました。これを受けて、FRBが11月の会合で50ベーシスポイントの大幅利下げを行う可能性は低下しました。S&P金融セクターは1.6%上昇し、Russell 2000指数も1.5%上昇するなど、小型株が好調でした。今週前半は中東情勢の緊迫化からリスクオフの流れとなり、株式市場は下落しましたが、金曜日の雇用統計が予想を大幅に上回る堅調なものだったので、米経済に対する安心感を醸成し、週間で見ると株価は横ばいで終えています。中東情勢が緊迫化する中でも、軍需の拡大を見越した防衛関連株の上昇や、原油価格上昇の恩恵を受けるエネルギー企業の株価は上昇し、市場の反応は一律ではありませんでした。為替市場:石破首相発言と強い米雇用統計で日米金利差の維持が意識され、大きく円安が進む為替は、先週の自民党総裁に石破氏が選出されたことで利上げ期待から円高に触れていましたが、今週は首相に選出された石破氏から「追加の利上げをするような環境に現在はない」との発言を受け、円安が進みました。また、米国の雇用統計が予想を大きく上回る内容だったことから、FRBの利下げペースも緩まるとの観測から、さらに日米金利差の維持が意識されて円安が進みました。今週のマーケット:景気指数と雇用統計に注目今週(2024/10/7-10/11)は、第4四半期の決算発表が始まり、消費財と金融の大手企業決算があります。さらに次の利下げ動向に大きく影響するCPIの発表があるので注目です。ブルーモの公式Xでも決算や指標の速報をお届けするので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest
【米国株見通し】S&P500は年末6000突破なるか
2024年第3四半期、公益から資本財、金融に至るまで幅広い銘柄が上昇したことにより、S&P500指数は5.5%上昇し、年初来の上昇率は21%に達しました。四半期ベースでは4四半期連続高で2021年以来の長期上昇局面。1-9月の上昇率としては1997年以来の大きさとなります。本記事では、2024年第4四半期の米国株の見通しを紹介し、個人投資家が注目すべき動向を考察します。S&P500、年末6000超えの予想も企業業績が力強く、米経済が十分健全に見えることから、多くの投資家は強気相場が少なくとも年末まで続く可能性が高いと考え、10-12月(第4四半期)は第3四半期と同様にボラティリティーは高いものの、好調さを維持したまま年末を迎えることが予想されています。ゴールドマン・サックス・グループのスコット・ルブナー氏は顧客向けレポートで「年末の米国株の上げは10月28日に開始すると強気にみている。目標の6000が低過ぎるのではないかと懸念している」と述べています。ルブナー氏の算出によると、1928年以降、S&P500は10月27日から平均で約4%上昇する傾向にあり、米大統領選後は株高になりやすいです。また、ブラックロックは顧客向けレポートにおいて「第3四半期のボラティリティは、部分的には景気減速への懸念と連邦準備制度理事会 (FRB) が対応に遅れを取っているのではないかという懸念に起因しており、株式市場の基盤となるファンダメンタルズとはほとんど関係がないと私たちは考えている」と述べています。 ボラティリティが予想される第4四半期足元の米国株に対して慎重な姿勢については、金融政策の不透明感のほか米大統領選挙や中東地域の緊張等、金融市場を取り巻く不確実性を反映しています。恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所のボラティリティー指数(VIX)は10月1日、一時20.7まで上昇しましたが、投資調査会社CFRAによると、10月の平均ボラティリティーは1945年以降、他の11カ月の平均を34%上回っています。ボラティリティには株価の上昇と下降の両方が伴い、不安をかき立てるものですが、珍しいことではなく、健全な株式をセール価格で買い増す機会となることもあります。ブラックロックの分析によると、VIXが12以下の場合、6か月後のS&P500のリターンは約5%、VIXが29以上に達した場合の6か月後のリターンは16%と、1990年までさかのぼるデータではボラティリティが高いほど短期リターンが高くなることが示されています。試される「ソフトランディング」特に市場心理に影響を与える可能性が高いのは、FRBの利下げ動向です。アナリストらは「ソフトランディングのシナリオや金融緩和継続への期待を後押ししないデータには過敏に反応するだろう」と指摘しており、雇用統計やFRB高官の発言に注目が集まります。10月3日時点のFedWatchでは、11月会合で0.25%の利下げ、12月会合で0.5%の利下げ予想と引き続き積極的な利下げ期待が反映されています。第4四半期注目のイベント10月4日 雇用統計11月1日 雇用統計11月5日 大統領選挙11月6〜7日 連邦公開市場委員会(FOMC)会合11月14日 エヌビディア(NVDA)決算12月6日 雇用統計12月17〜18日 連邦公開市場委員会(FOMC)会合
移管してもなくならない?意外と知られていない「NISA口座移管」の真実
本記事では、意外と知られていない「NISA口座移管」の仕組みを徹底解説していきたいと思います。NISA口座移管のポイントは、①NISA口座はニーズに合わせて毎年異なる金融機関で開設できる、②一度NISA口座で投資した資産は口座移管してもずっと非課税(実は「移管」してもNISA口座はなくならない)、③政府が金融機関横断でNISA残高を把握するので複数開設しても安心、という3点になります。NISA口座移管のポイントNISA口座はニーズに合わせて毎年異なる金融機関で開設できる「NISA口座は1人1口座」というイメージが強いかも知れませんが、実は「1年間でNISA口座で取引できる金融機関は1つだけ」が制度の正しい説明になります。「NISA口座は1年に1金融機関」なので、毎年NISA口座を移管して、異なる金融機関でNISA口座をいくつも開いていくことも制度上は可能です。NISA口座を利用する金融機関を移管(変更)する理由としては、①「A証券会社で口座開設したが何を買って良いか分からなかったので、もっと分かりやすいB証券会社に移管する」②「C証券会社でおまかせ運用にNISAを使っていたが、個別株も取引したくなったのでD証券会社に移管する」③「E証券会社ではいま投資したい商品がないので、F証券会社に移管する」といったものが考えられます。一度NISA口座で投資した資産は口座移管してもずっと非課税NISA口座は自由に移管できるとして、次に出てくる疑問は「NISA口座を移管した場合、既に投資した資産はどうなるのか?」だと思います。結論から言うと、NISA口座で一度投資した資産は生涯ずっと非課税です(2024年からの新NISAの場合)。つまり、投資した資産から支払われる配当も非課税ですし、売却した際に出てくる利益も非課税です。NISA口座を移管するためには、現在投資しているNISA口座を「廃止」する必要がありますが、これには「勘定廃止」と「口座廃止」の2パターンがあります。「勘定廃止」はNISA口座と残高を残したまま、現在利用中の金融機関でのNISA投資をやめる(=別の金融機関に移管する)もので、この場合だとNISAで投資した資産は引き続き非課税のままとなります。「口座廃止」はNISA口座そのものを廃止するので、現在利用中の金融機関にNISA口座と資産は残りません。「口座廃止」をしたい場合、基本的にはご自身でNISA口座にある資産を売却いただく必要があります。上記から、NISA口座移管の際に「勘定廃止」を選べば、既にNISA口座で投資した資産は非課税のまま以前の金融機関で保有できます。政府が金融機関横断でNISA残高を把握するので複数開設しても安心NISA口座は毎年移管できて、移管することで既に投資した分の節税メリットが失われることがないことまでは分かった上で気になるのが、色々な金融機関でNISA口座を作って投資して、それを忘れてしまうことがないかという点かと思います。前提として、NISA制度の重複利用を防止するため、政府は個人をマイナンバーで紐付けて非課税適用を把握しているので、税務署(国税庁)には誰がどこでNISA口座を開設しているかという情報があります(なので、仮にどこでNISA口座を開いたか忘れても税務署に聞けば教えてくれます)。さらに、新NISA制度では個人の生涯を通じた上限となる買付残高が存在するため、個人の保有残高を政府がクラウドで把握・管理することになります。NISAの生涯残高が上限に達するのは早くても2028年末のため、まだ政府による残高管理は始まっていませんが、2026年を目処に政府のクラウドによる把握・管理が始まるとされています。なので、仮に複数の金融機関でNISA口座を開設・投資して、過去にどこで投資したか忘れてしまった場合でも、政府のクラウドで情報は把握できるので、資産にアクセスできなくなることはないようになっています。NISA口座移管の方法具体的にどのようにしてNISA口座を移管できるかを以下解説します。現在NISA口座を開いている金融機関で「廃止通知書」をもらうまず、現在NISA口座を開いている金融機関にNISA口座を廃止したい旨を伝えて、「廃止通知書」をもらいます。この際、上述したように、既にNISA口座で投資している資産がある場合、資産を維持しつつ「勘定廃止通知書」を貰い、NISA口座を開設したが投資しないでいた場合は「口座廃止通知書」を貰うのがお勧めです。「廃止通知書」は郵送で送られることが多いので、ご自宅で受け取る必要があります。移管する先の金融機関に「廃止通知書」を提出する次に、NISA口座を移管して新たに開設したい金融機関でNISA口座開設の申込みをして、先ほどの「廃止通知書」を提出します。「廃止通知書」が提出できたら、税務署の審査を待って(2週間ほどかかります)、NISA口座の開設が完了します。「廃止通知書」の提出方法は、制度改正があり、2024年からオンラインでも可能になっています。しかし、一部の金融機関では郵送手続きを求められることがあるので、その場合はご自身で送付いただく必要があります。ブルーモ証券では、スマホで「廃止通知書」の写真を撮り、アップロードするだけで提出が完了するようになっています。移管する場合は前年中に作業を終えるように注意「NISA口座は1年に1金融機関」なので、仮にNISA口座を移管しようと思っても、既に元の金融機関でNISA口座を利用していると、その年の間はNISA口座を移管できません。例えば、NISA口座で積立投資を設定していると、1月に元の金融機関のNISA口座にて投資がされた時点でその年はNISA口座が移管できないことになります。NISA制度は、口座移管をスムーズにするため、NISA口座の移管手続きを前年の10月から開始できるようにしています。つまり、移管したい年の1月から積立投資が行われてNISA口座を移管できなくならないように、前年のうちから移管手続きができます。NISA口座を移管される際は、自由に手続きができる「10月〜12月」をひとつのタイミングとして検討されることをお勧めします。ブルーモ証券でも「かんたんNISA」機能を提供ブルーモ証券では、簡単にNISA口座を活用して投資できる「かんたんNISA」機能を提供しており、著名投資家のポートフォリオをコピーしたり、自分の好きな銘柄で組んだポートフォリオで、NISA制度をフル活用することができます。ご関心ある方は、是非以下サイトをご覧ください。
米経済は堅調で株価は上昇。自民党総裁に石破氏選出で為替は円高が進行する|米国市場サマリー
先週は、堅調な経済指標を受けて株価が上昇し、S&P500とダウ平均は最高値を更新しています。PCE価格指数でインフレの沈静化が意識されたことから、11月の0.5%利下げも期待され始めています。中国の大型景気刺激策の公表により、素材関連株の上昇も見られました。為替は、週半ばまでは米経済の堅調さからFRBの利下げペースが緩まる期待から円安傾向でしたが、27日の自民党総裁戦で石破氏が総裁に選出されたことで、円高が進みました。米国株式市場:堅調な経済指標でS&P500は最高値を更新9月23日(月) 米国株式市場は、ダウ工業株30種が最高値を更新し、全体的に小幅な上昇となりました。FRBが先週の会合で大幅な0.5%の利下げを実施したことを背景に、投資家は今後の動向を見極める姿勢を示していました。市場では、FRBのさらなる利下げが議論されており、アトランタ連銀のボスティック総裁も利下げを支持しています。個別銘柄では、Metaが0.6%上昇し、Intelが投資提案の報道を受け3.05%上昇しました。9月24日(火) S&P 500とダウはともに最高値を更新しました。中国政府による大型景気刺激策の発表を受け、素材株が大幅に上昇し、特に非鉄金属や資源関連企業が好調でした。Visaは独占禁止法違反の訴訟を受けて5.49%下落するなどの動きもありました。9月25日(水) 米国株式市場は反落し、ダウとS&P 500がそれぞれ下落しました。今後の経済指標やFRBによる追加利下げの期待を見極めるため、投資家は様子見の姿勢を取りました。エネルギーセクターは1.9%下落し、Amgenが治療薬に関するデータのばらつきで軟調となり、指数を押し下げました。一方で、NVIDIAは2.14%上昇し、S&P 500の下落を一部相殺しました。9月26日(木) 米国株式市場は主要3指数が上昇し、S&P 500は過去最高値を更新しました。Micron Technologyが好調な業績見通しを発表し、同社株は14.7%急騰しました。また、週間新規失業保険申請件数が4カ月ぶりに低水準を記録したことが、市場に安心感を与えました。他の半導体株も軒並み上昇し、フィラデルフィア半導体指数(SOX)は3.47%の上昇を見せました。9月27日(金) PCE価格指数の伸び鈍化が発表され、米国株式市場は小型株を中心に上昇し、ダウは過去最高値を更新しました。ラッセル2000指数は0.67%上昇し、低金利の恩恵を受ける企業が多い小型株のパフォーマンスが顕著でした。市場はFRBが次回会合で0.5%の利下げを実施する可能性を織り込み、PCEデータを背景にその確率が上昇しています。FRBの利下げ後で様子見の1週間でしたが、米国の経済指標がポジティブなものだったことから、S&P500は最高値を更新しています。特にPCE価格指数の鈍化から、次回11月のFOMCでFRBが0.5%の追加利下げをする可能性も期待され始めています。中国の大型景気刺激策により、素材株も上昇しました。為替市場:自民党総裁に石破氏が選出され、円高が進む為替は、堅調な米国経済の指標から米国の利下げペースが緩やかになるとの観測から円安が進んでいましたが、27日の自民党総裁戦で石破氏が新総裁に選出されると、大きく円高が進みました。金融緩和継続に前向きな高市氏が総裁に選出されなかったことで、日銀の利上げを見越しての動きと見られます。一方、市場関係者からは、日本の政治要因でここからさらに大きく円高が進むとは思えないとのコメントも出ています。今週のマーケット:景気指数と雇用統計に注目今週(2024/9/30-10/4)は、景気指数と雇用統計の発表があります。現在、11月のFRB利下げも控える中なので、景気指数が弱くても利下げ期待の強化として株高材料になる可能性もあり、大きなサプライズがない限り、株価に対する方向性は見通しにくい状況です。ブルーモの公式Xでも決算や指標の速報をお届けするので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest
【ナイキ決算みどころ】逆風下で回復の兆しを見せるか、CEO交代の影響は(NIKE)
本記事では、ナイキ(NKE)の2024年3-5月期決算を振り返り、10月1日に控える2024年6-8月期決算の見どころを解説します。同社の株価は年初来約16%下落していますが、著名なバリュー投資家のビル・アックマン氏がナイキ株約300万株に2.29億ドルを投じたことが明らかとなり、8月に株価は11%以上上昇しました。前期の振り返り:通期見通し引き下げで株価急落6月27日に発表された2024年3-5月期決算では、売上高が前年同期比1.7%減と市場予想を下回る結果となりました。また、消費者需要の減速により売上高が1桁台半ばの割合で減少すると、2025年度通期の見通しを引き下げたことから、株価は翌日20%下落しました。総収入:$126億(予想:$129億)EPS:$1.01(予想:$0.84) ブランド別では、「ナイキ」ブランドの売上高が前年同期比1%減の121億ドル。「コンバース(CONVERSE)」ブランドは北米と西欧で販売が振るわず、売上高が同18%減の4.8億ドルとなりました。地域別の売上高では、北米が前年同期比1%減の55億ドル、EMEA(欧州・中東・アフリカ)は同2%減の33億ドル、中国は同3%増の19億ドル、APLA(中国を除くアジア太平洋地域と中南米)は同1%増の17億ドルと、アジア太平洋地域と中南米で業績をわずかに伸ばしたものの、主要地域での販売不調が示されました。マット・フレンド最高財務責任者(CFO)は電話会見で「この規模での復活には時間がかかる」と述べ、ライフスタイル商品の需要が鈍化していることを受けて、製品ラインナップの再編を進めていると説明しました。6-8月期の注目点:業績見通しとCEO交代の影響2024年6-8月期のナイキの「総収入予想は$116.4億、EPS予想は$0.52」、平均目標株価は$91.9です。アナリストらは業績見通しに慎重姿勢複数のアナリストは、ナイキが2024年後半の業績見通しを引き下げる可能性を予想していますが、これは買い手側が予想していることであるため、株価に悪影響を与えない可能性があるとしています。JPモルガンの分析では、同社の苦戦の主な要因として主要地域における逆風であると指摘しており、短期的には財務上の課題が続くと予想しています。アナリストはナイキの回復軌道にとって、同社のデジタル販売、卸売業績、主要地域での消費者需要が重要になると考えています。決算後の投資家向け説明会にも注目ナイキは9月19日、ジョン・ドナホー最高経営責任者(CEO)の後任としてエリオット・ヒル氏が10月14日付けで新CEOに就任すると発表しました。ヒル氏は同社のこれまでの成功の多くに貢献した人物で、1988年にインターンとしてナイキでキャリアをスタートし、2020年に退職するまで欧州や北米で上級管理職を歴任し、最終的にはナイキとジョーダンブランドの商業・マーケティング業務を指揮していました。アナリストらはナイキというブランドを熟知しているヒル氏のCEO就任を歓迎しており、中期的にポジティブな成長を達成可能であると予測しています。CEOの交代は決算発表の2週間後となるため、ヒル氏から具体的な同社のビジョンを聞くのは11月19日の投資家向け説明会等になることが予想されますが、投資家はヒル氏の就任がナイキに与える影響を測るため、今後の業績見通しや具体的な戦略についての報告を待ち望んでいます。
ブルーモで始める、かんたんNISA
本記事では、ブルーモのかんたんNISA機能(2024年10月リリース)の使い方を徹底解説します。かんたんNISA機能を使うと、税金がお得にかんたんNISA機能は、これまで通りブルーモで投資をしながら、自動でNISA口座を活用でき、投資リターンにかかる税金を節約できるお得な機能です。そもそもNISA制度とは?NISAとは、証券会社に通常の口座に加えて特別な非課税口座を開設できる制度で、通常の口座でかかる投資リターンに対する税金を一定の範囲で免除(非課税)してくれます。政府が個人の資産運用を促進するために設けた制度で、非課税になることで何かペナルティが発生するわけではないので、積極的に活用したい制度です。2014年から存在した制度ですが、2024年から非課税期間が無期限化して、非課税枠も広がり、さらに有利な制度となりました。新しいNISA制度の詳細は以下からご覧ください。ブルーモのかんたんNISAの特徴ブルーモのかんたんNISAは、ブルーモでNISA口座を開いていると、自動で投資する際にNISA口座を活用してくれます。自分で選んだ銘柄がNISAの対象外だった場合、目標ポートフォリオ編集画面で分かるので、アプリ内の指示に従って編集を進めれば、NISAに最適なポートフォリオを作ることも可能です。また、NISA口座開設の申込みもオンライン完結ですぐ終わるので、気軽にNISA口座を開くことができます(他の証券会社からNISA口座を移管する場合も全てオンライン)。かんたんNISAの完全活用法まずはアプリから口座開設新規に利用される方は通常の口座開設と同時にNISA口座も申込めます。既にブルーモを利用されている方は、アプリ内のNISAボタンをタップするとNISA口座開設に進めます。口座開設申込みには本人確認書類が必要です。口座開設を申込むと税務署の審査を経て、およそ2週間ほどで口座が開設されますので、しばしお待ちください。NISA口座を他社から移管する場合は、事前手続きが必要なのでこちらをご覧ください。目標ポートフォリオをNISAに最適化次に目標ポートフォリオをNISA最適なものにします。NISA口座の開設完了後に目標ポートフォリオを開いていただくと、NISAに最適化できる場合は表示が出るようになります。アプリの指示に従ってポートフォリオを組み替えると、NISA制度をフルに活用できるNISA最適なポートフォリオが完成します。公式ポートフォリオにもNISA最適ポートフォリオをいくつか用意しているので、そちらをコピーして始めることも可能です。つみたて投資設定をしてNISAをフル活用NISA制度の投資枠を有効活用するには、定期入金・投資が必要になります(つみたて投資枠が定期的な投資のみを対象にするため)。NISA口座を開設して、ポートフォリオをNISAに最適化したら、つみたて投資を設定して、定期的にNISAポートフォリオで投資するようにしましょう。既にブルーモを使っている場合は?新しく投資する分はNISA優先にNISA口座の開設が完了すると(2週間ほどかかります)、新たに入金やリバランスで買付する際、NISA口座を優先して割り付けるようになります。特に追加での設定は不要なので、これまでの投資を継続するだけでNISA口座が使われます。既に投資している分はリバランスの際にNISA口座で買い直します既に投資されている分は通常口座での保管のままですので、そのままではNISA口座が適用されません。銘柄を入れ替えてリバランスすると、新規に買付が発生するので、その取引については通常口座の投資分を売って、NISA口座で買い直すことになります。おすすめはNISA最適化の際のリバランスと、つみたて投資設定既にブルーモご利用中の方におすすめなのは、ポートフォリオをNISA最適化する際に一度リバランスをして、それからはつみたて投資設定で投資いただくことです。既に投資されている金額とポートフォリオによっては、完全にNISA口座での買い直しにならないかも知れませんが、徐々にNISA枠をつみたてと合わせて徐々にNISA枠を埋めていきましょう。今後、既に通常の口座で保有している投資分をNISA口座で買い直す機能も検討中なので、アプリのフィードバックボタンから、是非皆さんご意見を聞かせてください。
FRBが0.5%の利下げを決定し、株価上昇でS&P500は最高値。日銀は政策金利維持で円安へ|米国市場サマリー
先週は、FRBが0.5%の大幅利下げを決定したことから、米国経済のソフトランディング見込みが高まり、株価は全体的に上昇してS&P500は最高値を更新しています。また、FANG+構成銘柄が変更され、TeslaとSnowflakeが外れました。為替は、日銀が政策金利を維持したことと、FRBが今後の緩和を急がないとの見通しを示したことで、日米金利差縮小の見通しが弱まり、円安が進行しました。米国株式市場:FRBが0.5%の大幅利上げを決定し、ソフトランディング見込みが強まる9月16日(月) 米国株式市場は、ハイテク株の売りが影響し、NASDAQが下落しました。特にAppleが2.78%下落し、新型iPhoneの需要低迷の懸念が響きました。半導体株も下げ、NVIDIAが1.95%、Broadcomが2.19%下落しました。市場は、17-18日のFOMC会合でのFRBによる0.5%の利下げへの期待が高まりました。Intelは国防総省の支援を受けて6.36%上昇しました。一方、エネルギーや金融セクターはそれぞれ1%以上上昇し、市場全体を支えました。9月17日(火) S&P 500は一時上昇し、取引中に最高値を付けましたが、終値はほぼ横ばいとなりました。8月の小売売上高が市場予想を上回り、経済の堅調さを示しました。市場はFOMC会合での0.5%利下げを約65%織り込みました。Microsoftは自社株買いを発表し、0.88%上昇しました。エネルギーセクターは原油価格の上昇を背景に1.41%上昇し、S&P主要セクター中最大の上昇となりました。小型株のRussell 2000は0.74%上昇しました。9月18日(水) 米国株式市場は小幅安で終了しました。FRBが17-18日のFOMCで4年半ぶりの0.5%の利下げを決定し、政策金利を4.75%-5.00%に引き下げました。パウエル議長は、インフレ率が目標の2%に向かっていると述べつつ、年内に追加利下げの可能性を示唆しました。市場は一時1%近く上昇しましたが、その後は下落に転じました。ラッセル2000指数は小幅上昇し、地方銀行株も堅調に推移しました。9月19日(木) ダウ工業株30種とS&P 500は最高値を更新しました。FRBが0.5%の利下げを行ったことが市場に好意的に受け止められ、投資家心理が改善しました。新規失業保険申請件数が予想外に減少し、労働市場の強さを示しました。ハイテク株では、Teslaが7%超、AppleとMetaが約4%上昇し、NVIDIAも4%上昇しました。これにより、フィラデルフィア半導体指数が4.3%上昇しました。小型株や地方銀行株も上昇し、市場全体に好調な流れが続きました。9月20日(金) 市場は横ばいで取引を終えましたが、ダウは再び最高値を更新しました。スポーツ用品大手Nikeが新しいCEOを発表し、6.84%上昇しました。S&P 500の他のセクターは控えめな動きでしたが、公益事業セクターが2.69%上昇しました。Intelは買収報道を背景に3.31%上昇し、ダウ平均を支えました。また、この日は「トリプルウィッチング」と呼ばれる先物・オプション取引の期限日で、出来高が増加し、ボラティリティが高まりました。FRBの利下げが0.5%と大幅だったことと、各種経済指標も経済の堅調さを示す内容だったことから、週間を通して株価は上昇しました。FRBの0.5%利下げは事前にかなり織り込まれていたものの、市場が消化したタイミングで大きな株価上昇の後押しになりました。また、FANG+の構成銘柄が9月のリバランスで変更となり、TeslaとSnowflakeが外れ、新たにCrowdStrikeとServiceNowが追加されました。為替市場:日銀は政策金利維持を決定し、円安が進む為替は、FRBのパウエル議長が今後の緩和を急がないメッセージを出したことに加え、日銀が金融政策決定会合で政策金利維持を決定したことで、日米金利差縮小に対する見通しが弱まり、円安が進行しました。今週のマーケット:利上げ後の株価推移に注目今週(2024/9/23-9/27)は、実体経済関連の指標が公表され、FRBの利上げで確度が高まったとされる米国経済のソフトランディングに対する見通しがどう変化するかに注目です。ブルーモの公式Xでも決算や指標の速報をお届けするので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest
なぜ大幅利下げも円安・株価下落?先行き不透明も米国株は緩やかな上昇期待
FRB(連邦準備制度理事会)は9月17-18日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を0.5%引き下げ、4.75-5%にすることを決定しました。18日の米金融市場では一時株高や円高・ドル安が進む場面がありましたが、米株相場は下落して終え、為替も142円台に反発しました。本記事では、大幅利下げも株安・円安となった背景を解説します。0.5ポイントの利下げも、見通しは市場期待とずれ会合後に公表された経済見通し資料では、年内の利下げ幅見通しについて19名のFOMC参加者のうち10名が少なくとも0.5%の追加利下げを支持していることが示されたものの、0.25%以内でも十分という参加者も9名おり、意見の相違が見られました。9月会合で発表されたドットチャート(出典: SEP)一方、市場の一部では2025年末にかけてより積極的な利下げ予想があり、市場予想よりも控えめな利下げ見通しを受けて、投機勢による円買いポジションの解消や利確が生じ、為替や株の変動が大きくなったと考えられています。パウエルFRB議長は、今回の0.5%の引き下げについては労働市場の冷え込みを回避するためのリスク管理であり、先行き同様のペースで緩和を進めるわけではないとの旨の発言もしており、今後のデータ次第で利下げペースを速める方向・落とす方向のいずれにも柔軟に対応する姿勢を示しました。9月19日時点のFedWatchでは、11月会合で0.25%の利下げ、12月会合で0.5%の利下げ予想と積極的な利下げ期待が反映されています。一部アナリストは「今後は市場の期待とFRBのせめぎ合いとなり、どちらが正しいかを決めるのはインフレデータではなく雇用データとなるだろう」と指摘。次回11月会合までに雇用統計の発表は2ヶ月分控えています。米国株は緩やかな上昇が期待また、9月会合の結果発表後に実施した「マーケッツ・ライブ(MLIV)パルス」調査では、今回の利下げによりソフトランディングの可能性が高まり、米国株は年内に緩やかに上昇するとの見方が示されました。調査回答者のうち、44%が18日の終値から6%未満の上昇、37%は6%を超える上昇を予測。6%の上昇は、S&P500指数の今年これまでの上昇ペースとほぼ一致します。残りの19%は下落の見通しを示しました。株価上昇に対する慎重な期待は、金融政策の不透明感のほか米大統領選挙や地政学リスク等、金融市場を取り巻く不確実性を反映しています。
【コストコ決算みどころ】好業績期待も株価に割高感か(Costco Wholesale)
本記事では、会員制量販店のコストコ・ホールセール(COST)の2024年第3四半期決算を振り返り、9月26日に控える2024年第4四半期決算の見どころを解説します。同社の株価は年初来約37.9%上昇し、S&P500指数の上昇率の約2倍のパフォーマンスとなっています。前期の振り返り:予想を上回る好業績5月30日に発表された2024年第3四半期決算では、売上高が前年同期比9.1%増、純利益が同29%増と市場予想を上回る結果となりました。ガソリン価格と為替調整後の既存店売上高は6.5%増加し、Eコマースも20.7%増加しました。会員費を含む総収入:$585.2億(予想:$581.3億)EPS:$3.78(予想:$3.71) 好調をけん引するのは、2023年から販売を開始した「金の延べ棒や銀貨」や世界中から集めた輸入品など、コストコならではユニークな商品であり、同社は毎月2億ドル(305億円)相当の金の延べ棒と銀貨を販売しています。ロン・ヴァクリス最高経営責任者(CEO)は、「スポーツ用品、玩具、家具、家庭用品、これらすべての分野が現在非常に好調」、「商品の継続的イノベーションがコストコの顧客たちをワクワクさせ続けている」と述べています。第3四半期末の有料会員数は前年比8%増の7,450万人。昨年の会員更新率は米国とカナダで93%と好調で、世界全体でも90%を超え、会員の満足度を維持しています。また会員制モデルで顧客が比較的な裕福なコストコは、消費支出の後退の影響をさほど受けておらず、競合のターゲットやウォルマートのような広範な値下げを行わずに競争力を維持するとしています。第4四半期の注目点:好業績期待も株価に割高感か2024年第4四半期のコストコの「総収入予想は$801.5億、EPS予想は$5.07」、平均目標株価は$897です。投資家の懸念は株価収益率の高さコストコは1998年以来、ほぼ毎年10%を超えるROIC(投資資本利益率)を達成している、歴史上最も好成績を収める銘柄のひとつです。一方、同社の株価収益率(PER)は約56倍とS&P500の中で最も高価な小売株であり、業界平均より約60%高く、2位のアマゾンより29%高くなっています。割高な株価に対する懸念にもかかわらず、同社の8月の世界売上高が7.1%増、米国売上高が6.7%増となったことを受けて、アナリストらは売上高の勢いが強く、食品以外の分野でも前向きな傾向にあるとして、目標株価を相次いで引き上げました。エバーコアISIのアナリストは、コストコの米国売上高は「米国全体の小売売上高の2倍の伸び」であると指摘しています。モルガン・スタンレーのアナリストはコストコの目標株価を855ドルから950ドルに引き上げ、現在の株価収益率は高いが、同社の成長原動力は持続可能であるため、目標株価は達成可能な水準であるとの考えを示しています。7年ぶりの年会費引き上げまた、コストコは米国とカナダの顧客を対象に9月1日から年会費を7年ぶりに引き上げました。ゴールドスター会員とビジネス会員は年間60ドルから65ドルに、エグゼクティブ会員は年間120ドルから130ドルとなります。会費の引き上げは約5200万人の会員に影響し、その半数強がエグゼクティブ会員です。コストコは小売売上高が好調であることを強調していますが、同社の粗利益率は12~13%とウォルマートの約半分の低い利幅で販売しているため、会費は利益成長の鍵となっています。
物価水準は概ね予想通りでFRBの9月利下げが確実視。米国株は反発もあり大幅上昇|米国市場サマリー
先週は、前週の大幅下落に対する反発上昇から始まり、CPIとPPIが概ね予想通りの水準だったことから、今週のFOMCでのFRBの利下げが確実視され、株価は大幅上昇して1週間を終えました。NVIDIA株も急回復しました。為替は、日銀追加利上げとFRBの利下げ幅拡大が意識され、円高が進んでドル円は140円台になった1週間でした。米国株式市場:CPIが予想通りの水準で9月利下げが固まり、株価は大幅上昇9月9日(月) 米国株式市場は主要3指数が1%以上反発しました。前週の大幅な売りに対し、投資家の安値拾いの買いが広がりました。特に、前週15.3%下落したNVIDIAが3.5%上昇しました。市場は、11日に発表される消費者物価指数(CPI)や来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を注視していました。S&P 500の11セクターすべてが上昇し、特に一般消費財セクターが1.63%の上昇で市場をリードしました。9月10日(火) S&P 500は小幅に上昇し、ダウ工業株30種は下落しました。エネルギーセクターが1.9%の大幅下落となり、OPECが2024年と2025年の石油需要見通しを下方修正したことが影響しました。また、Goldman SachsとJPMorgan Chaseは業績見通しの悪化を発表し、金融セクター全体が下落しました。9月11日(水) 米消費者物価指数(CPI)が予想通りの結果となり、NVIDIAが8%急伸しました。米政府がNVIDIAに対してサウジアラビアへの先端チップ輸出を許可する検討をしているという報道が材料視されました。S&P 500の主要セクターでは、情報技術セクターが3.3%上昇し、一般消費財も1.3%上昇しました。9月12日(木) 8月の卸売物価指数(PPI)が予想を上回ったことで、FRBが25ベーシスポイントの利下げを実施するとの見通しが強まりました。この日の市場では、より景気に敏感な小型株が優位に立ち、Warner Bros. Discoveryが10.4%上昇するなど、通信サービスセクターが2%の上昇率を記録しました。一方、Modernaは売上見通しの下振れにより12.4%急落しました。9月13日(金) 主要3指数が続伸し、投資家はFRBの大幅利下げの可能性に注目しています。Uberは自動運転車の導入計画を発表し、6.4%上昇しましたが、Adobeは業績予想の下振れにより8.5%下落しました。先週の大幅下落の反動から、今週は反発上昇からスタートし、さらにCPIが予想通りの結果だったことからFRBの利下げが確実視されたことで株価はさらに上昇しました。先週大幅下落したNVIDIAの株価も急回復を見せました。為替市場:FRBの利下げ幅拡大を意識して今週も円高が進む為替は、日銀の追加利上げ観測とFRBの利下げ幅が広がる可能性を市場が意識したことから、今週も円高が進み、ドル円は140円台まで進みました。株式市場と比べても、為替市場は日米金利水準の縮小を意識しやすい動きが続いています。今週のマーケット:FOMCでついに利下げ決定されるか今週(2024/9/16-9/20)は、FOMCが開催され、FRBから利下げ発表がされる見通しです。市場は既に0.25%の利下げを織り込んでいると見られますが、コロナショック以来の利下げにどう反応するか要注目です。ブルーモの公式Xでも決算や指標の速報をお届けするので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest
景気動向が鍵?利下げが株価に与える影響
FRB(連邦準備制度理事会)が9月のFOMC(連邦公開市場委員会)にて利下げ転換に踏み切ることが市場で広く予想されています。本記事では「利下げが米国株に与える影響」について解説します。ソフトランディングか景気後退か短期金利の引き下げにより企業や消費者の借り入れコストが下がり、理論的には利下げ後は株価が好調になるとされています。しかし、過去の主要な利下げサイクルを振り返ると市場の反応は様々であり、今後の株価動向を理解するにはFRBが金利を引き下げた背景を考察する必要があります。FRBが経済をコントロールし、ソフトランディングを実現したと市場が認識した場合、株価は堅調に推移することが期待されます。しかし、FRBが景気後退のリスクを受けて反動的に金利を引き下げていると捉えられた場合、株価は調整局面に入ることが考えられます。直近の経済指標のほとんどが米経済の底堅さを示していることから、多くのアナリストやエコノミストにとってソフトランディングは基本シナリオとなっています。7月・8月と予想を下回る雇用統計が発表されたことから景気後退懸念も再燃していますが、ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは、今後1年間に米国が景気後退に陥る可能性は20%と予想しています。市場の関心は「FRBがどの程度利下げを進めていくか、景気がどの程度のペースで減速するか」であり、ソフトランディングになるのかハードランディングになるのかになるのか見極めている状況にあります。大幅利下げにはリスク懸念の声も9月13日時点のFedWatchでは、9月会合で0.25ポイントの利下げを織り込んでいるほか、11月と12月会合の両方で0.5ポイントの利下げを予想しています。一部アナリストは、9月会合で0.5ポイントの利下げに踏み切った場合、米経済の健全性について懸念を生み出す可能性があると指摘します。これは1990年以降のFRBの5回の利下げサイクルのうち、0.5ポイントの利下げでサイクルを開始した2回(2001年と2007年) はいずれも景気後退が続いたためです。またFRB高官の一部は、早計な金融緩和によるインフレ上振れリスクへの懸念を示しています。企業収益や経済動向にも注目一方、2024年のFRBの利下げ幅が市場予想を下回ったとしても、必ずしも株価にとって悪いことではないとの声もあります。ヤルデニ・リサーチのストラテジストは、金利変化よりも企業利益の方が将来の株式市場のリターンを予測する上で信頼できる指標であり、経済成長が予想以上に強く、労働市場の指標もそれほど悪くなく、消費者支出も引き続き増加している環境では、利益が伸び続ける中で株価の上昇余地が広がると述べています。
米大統領選挙で株価上昇が期待されるセクターは?
本記事では、ハリス氏対トランプ氏の接戦が予想される大統領選動向について解説のうえ、過去の選挙結果とセクター別パフォーマンスの関係について紹介いたします。大統領選のアノマリー(規則性や傾向)については過去の記事で解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。討論会後、支持率は再び横並びに9月10日夜に行われた、カマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領による第1回大統領候補討論会を受けて、大統領選動向への注目が高まっています。討論会はハリス氏が勝利したという見方が多く、市場は討論後ハリス氏に有利な兆候を示しました。しかし、世界最大の予想賭博市場である「Polymarket」によると、現在ハリス氏の支持率は50%、トランプ氏は49%と引き続き1ポイント差の接戦となっており、選挙情勢や市場への大きな影響は生じていません。ストラテジストによると、討論会前後のオプション市場ではS&P500は±1.1%の変動しか織り込まれておらず、今回の結果は比較的低いボラティリティーが見込まれていたことと一致しています。税金や関税についての議論は限定的また、株式投資家にとって最大の関心事である税金や関税に関する方針について討論会ではあまり言及がなかったことも指摘されています。ゴールドマン・サックス・グループによると、法人税率を現在の21%から15%に引き下げるトランプ氏の税制案ではS&P500構成企業の利益が約4%押し上げられ、一方法人税率を28%に引き上げるハリス氏の案ではS&P500構成企業の利益を約8%減少させる可能性があると試算しています。関税については、トランプ氏は全ての貿易相手国に一律10%の関税と中国からの輸入には60%超える対中関税を導入する方針を打ち出しています。2回目の討論会は開催されない可能性もハリス陣営は、10月に2回目のテレビ討論会を希望していますが、トランプ氏は11日朝、FOXニュースの番組にて討論会の司会者は不公平と述べ、討論会をもう一回行う気はあまりないと示唆しています。選挙結果とセクター別パフォーマンスネッド・デービス・リサーチ(Ned Davis Research)の調査によると、1972年からの大統領任期全体のデータを見ると、民主党の大統領候補が勝利した後の最初の数ヶ月間は景気循環株が他のセクターを上回り、共和党の勝利後はディフェンシブ株が最も好調でした。景気循環株とは、景気動向によって業績が大きく変動する銘柄を指し、ディフェンシブ株とは、ヘルスケアや生活必需品といった経済全体の状況に関係なく一定の需要と安定した収益がある銘柄を指します。民主党政権下では情報技術と工業セクターが優れたパフォーマンスを誇り、ダウ工業株30種平均を83%上回りました。一方、共和党政権下ではヘルスケアセクターのパフォーマンスが良く、ダウ平均を75%上回りました。ただし、ネッド・デイビス・リサーチは、今年はハリス氏・トランプ氏の両候補とも薬価の抑制に取り組んでおり、選挙結果にかかわらずヘルスケア業界は苦戦する可能性があると指摘しています。大統領選は、考慮すべきリスクの一つアナリストらは、政治ニュースで市場は変動するものの、常に多くの変数が相互作用しており、大統領選はあくまで考慮すべき多くの事柄のうちの1つと捉えています。特に今年は、米経済の不確実性やFRB(米連邦準備理事会)の政策変更に直面し、株式市場のリスクが高まっています。相場が不安定となっても、資産運用の王道である「長期・積立・分散」の原則に従うことが資産運用を成功させるためのコツとなります。「トランプトレード」やトランプ氏再選が米国株市場に与える影響についても過去の記事で解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。