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【アドビ決算(2025年2Q)】生成AI収益化と価格改定効果が成長の鍵を握る展開へ(Adobe)
本記事では、アドビ(ADBE)の2025年3月発表2025年度第1四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第2四半期決算の見どころを解説します。生成AI事業への積極的な投資やサブスクリプション価格の引き上げを背景に、収益構造が変化しつつあるAdobeの業績が、市場の予想にどれだけ近づくか注目されています。個人投資家としても、この節目となる決算の内容を正確に把握し、株価への影響を見極めることが重要です。前回決算(2025年度第1四半期)の振り返り前回、2025年3月12日に発表されたAdobeの第1四半期(2024年12月~2025年2月期)決算は、売上高が前年同期比10%増の約57億ドル、調整後のEPS(一株当たり利益)は4.48ドルとなり、市場予想とほぼ一致する内容でした。特にデジタルメディア部門では、生成AI機能を搭載したサービスが好調で、売上高は前年同期比12%増の42億ドルに達しました。さらにデジタルエクスペリエンス部門も前年比9%増の14億ドルと堅調で、将来の収益を示す残存パフォーマンス義務(RPO)が過去最高水準に達するなど、今後の成長継続を示唆する結果となりました。会社側は、第2四半期の売上高予想を57億7千万~58億2千万ドル、調整後EPSを4.95~5.00ドルと発表し、高い収益性を維持する姿勢を強調しています。前回決算以降の主なニュース決算発表以降、Adobeは生成AI事業の強化をさらに進めています。4月下旬には、統合AIプラットフォームの一環として最新モデルである「Firefly Image Model 4」をリリースしました。このモデルは、画像・動画・音声を一元的に生成でき、商用利用時の著作権リスクを抑えた点が評価されています。また、AI技術の活用をさらに進めるために、2月には主力製品の一つであるAcrobatにAIアシスタント機能を導入しました。この機能によって、契約書レビューなどの文書管理業務を大幅に効率化できるようになっています。同時に、個人向けサブスクリプションサービスであるCreative Cloudについては、「Creative Cloud Pro」への名称変更と共に価格改定を発表しました。機能拡充と並行した段階的な値上げが行われることで、売上と利益率への好影響が期待されています。さらに、同社のベンチャーキャピタル部門であるAdobe Venturesを通じて、Synthesiaに非公開の金額を投資しました。一方、2023年に頓挫したデザインツール企業Figmaの買収を巡る違約金10億ドルの支払いを済ませたこともあり、現在は自社開発やパートナーとの提携強化を主軸に据えています。ただし、サブスクリプションサービスの解約手続きに関して米国FTCからの提訴を受けるなど、規制面での懸念が一部残っています。今回の決算における注目点今回の決算における最大の注目点は、生成AI「Firefly」の収益化がどの程度進んでいるかということです。前回決算時点では、約25%の有料プランユーザーがAI機能を利用しているとされていましたが、その割合が増加し、月間利用料(ARPU)の押し上げに繋がっているかが問われます。また、Creative Cloud Proへの名称変更と値上げが、ユーザーの解約率を悪化させることなく、売上と利益に好影響を与えているかも重要なポイントです。さらにAcrobatのAIアシスタント機能の法人導入が、文書クラウド部門の年間経常収益(ARR)を押し上げるかにも市場の関心が向けられています。もう一つの注目ポイントは、AI関連のデータセンターやGPU調達に関する設備投資がキャッシュフローに与える影響です。これらの投資がフリーキャッシュフローの一時的な圧迫を招く可能性があるため、会社側がどのようにキャッシュ生成力を維持しつつ成長投資を行っているか、投資家は注意深く確認する必要があります。株価への影響と個人投資家への示唆Adobe株価は2025年5月27日時点で413.10ドルをつけ、年初来で約6%下落しており、52週高値からは約30%ほど割安な水準に位置しています。しかし、株価収益率(PSR)は約8倍強と、同業他社に比べ依然として高めの水準を維持しており、市場はAdobeの高成長持続性を前提に評価している状況です。今回の決算で生成AI事業の収益寄与が明確に確認されれば、今後の業績ガイダンス引き上げの可能性もあり、株価の回復余地が大きくなるでしょう。一方、価格改定による解約率の悪化やFTCとの係争の影響が拡大すれば、株価には下振れリスクもあります。個人投資家としては、AI活用による収益成長とサブスクリプション事業の安定性という両面をバランスよく評価しつつ、360ドル~380ドル台の価格帯を押し目として段階的な買いを検討するのが現実的な投資戦略と考えられます。今回の決算は、Adobeが推進する生成AI事業とサブスクリプション価格改定の成果を明確に示す機会となるため、決算発表の数字や経営陣のコメントを細かく確認し、中長期的な投資判断に役立てていただきたいところです。
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【オラクル決算(2025年4Q)】AI投資の収益化と大型案件進展で成長継続を占う(Oracle)
本記事では、オラクル(ORCL)の2025年3月発表の2025年度第3四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第4四半期決算の見どころを解説します。Oracleはクラウドサービスの拡充と積極的な設備投資を背景に、業績の成長軌道を維持していますが、今回の決算は今後の成長持続性を占う重要な局面となるでしょう。個人投資家が決算を判断するためには、前回の決算内容、以降の主要な出来事、そして今回の決算での注目すべき点を理解する必要があります。ここでは、これらのポイントを順に詳しく見ていきましょう。前回決算の主な内容2025年度第3四半期(2024年12月~2025年2月期)において、Oracleの売上高は前年同期比6%増の141億ドルでした。主力のクラウドサービスおよびライセンスサポート部門の売上高は110億ドルに達し、前年比10%増となっています。特に、クラウドインフラ(OCI)やソフトウェアサービス(SaaS)は前年同期比で23%という高い成長率を維持しており、堅調な需要を背景にOracleのビジネスの中核となっています。ただし、この期間は為替の影響やデータセンター関連の投資コスト増加などが利益率を若干圧迫しました。一方、Oracleが将来の収益を予測するうえで重要な指標である残存パフォーマンス義務(RPO)は、前年同期比62%増の1,300億ドルと過去最高を記録しています。この数字からも、Oracleが今後数年間の収益源となるAIインフラ関連の受注を順調に積み上げていることが分かります。さらに、四半期配当は1株あたり0.40ドルと安定しており、株主還元姿勢も堅持しています。決算後の主なニュースと動向前回決算以降、OracleはAI分野の投資をさらに拡大しました。3月にはNVIDIAとの包括提携を発表し、OCI上でAI関連のサービスやマイクロサービスを強化することを表明しました。また、4月には米陸軍との契約を拡張し、安全なマルチレベルのクラウド環境構築に取り組むなど、大型案件獲得が続いています。さらに、Google CloudやMicrosoft Azureとの協業を進めることで、マルチクラウド対応を強化しています。特に、Google Cloud上でOracleのデータベースサービスを展開する「Oracle Database@Google Cloud」の地域拡張を進めており、新たな収益機会を創出しています。AIインフラ整備のため、テキサス州アビリーンには大規模なデータセンター投資を計画し、OpenAI向けに40万枚規模のNVIDIA GPUの導入を予定しています。このプロジェクトには最大400億ドルの投資が見込まれており、Oracleの経営陣はこの設備拡張を通じて今後数年でデータセンター容量を倍増させることを目指しています。一方で、2022年に買収した医療IT企業Cernerの統合も進行中です。救急医療分野での実証実験などが進んでおり、医療向けクラウドサービスの収益寄与が徐々に顕在化し始めています。今回決算の注目ポイント今回の決算では、まずAI関連サービスの売上が再び加速できるかが焦点です。アナリストは今期の売上高を150億ドル程度、1株利益(EPS)を1.30ドル程度と予測しています。AI分野での設備投資がキャッシュフローを圧迫する可能性がありますが、それを上回る収益成長が確認できれば投資家の信頼感が高まるでしょう。また、Google Cloudなど他社クラウドと提携したマルチクラウド関連の収益がどの程度寄与するかも注目です。データベースライセンスの契約更新率や、クラウドライセンスの収益安定性に寄与できるかが重要なポイントとなります。さらに、Cerner買収に伴う医療関連SaaS収益の伸びも重要です。医療分野の統合効果が具体的な収益改善につながれば、投資家は買収の正当性を改めて評価するでしょう。最後に、Oracleの経営陣が次年度以降の中期成長目標(年間成長率15~20%)を具体的に提示するかが大きな焦点です。明確で具体的な目標を打ち出すことで、中長期的な株価の上昇を支える材料になる可能性があります。株価への影響と個人投資家への視点Oracle株は2025年5月27日時点で161.91ドルと、年初来で約15%上昇しましたが、昨年末のピーク価格である198ドルからは依然18%ほど低い水準にあります。PERは現在24倍前後と、同業他社のMicrosoft(約32倍)やAmazon(約45倍)に比べると割安に見えますが、データセンターへの大規模投資による短期的なキャッシュフロー圧迫リスクも織り込まれています。今回の決算内容が市場予想を超え、AI関連売上やマルチクラウド、Cerner統合の効果が明確に表れれば、株価は再び180ドル台への回復が期待できるでしょう。しかし、利益率やキャッシュフローが想定を下回れば、140ドル台まで調整する可能性も残っています。個人投資家にとっては、Oracleが描く長期的な成長シナリオと、短期的な投資負担のバランスを見極めながら、150ドル付近を基準に慎重にポジションを構築することが適切です。今回の決算発表は、OracleのAI投資が本格的な収益貢献に転じるかを判断するうえで極めて重要です。決算の数字と経営陣のコメントを丁寧に確認し、今後の投資判断に活かしていただきたいと思います。

【FOMC6月会合プレビュー】FRBが利下げに慎重な理由とは?市場はドットプロットに注目
6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、市場では米金融政策動向に注目が集まっています。本記事では、FRBのスタンスと6月会合での注目ポイントを解説します。FRBは利下げ慎重姿勢を維持米連邦準備制度理事会(FRB)は、昨年12月の利下げ以降、フェデラルファンド(FF)金利を4.25%~4.5%に据え置いています。5月28日に公表された会合の議事録では、経済の先行きが見通しづらくなるなか、FOMC参加者が「インフレと経済の見通しがより明確になるまでは、(利下げを急がずに)慎重なアプローチを取るのが適切との認識で一致した」と記されています。特に、トランプ政権の関税政策によりインフレが想定以上に持続するリスクに対して、警戒感が示されました。また、今後数ヶ月はインフレ再加速や失業率上昇の可能性があり、FRBが掲げる「物価安定」と「最大雇用」という二大目標のバランスが問われる難しい局面になると指摘されています。一方、経済成長は依然として堅調であり、労働市場は弱まるリスクは高まっているものの「おおむね維持されている」との見方が示されました。貿易摩擦緩和で景気後退懸念は和らぐ前回会合以降、米景気に対する悲観的な見方はやや後退しています。トランプ大統領は対中関税の一部を90日間引き下げることに合意し、欧州連合(EU)への新関税も7月9日まで延期されました。こうした貿易摩擦の緩和を受け、急速な景気減速への警戒感が和らぎ、投資家のリスク回避姿勢も落ち着きを見せています。Polymarketなどの予測市場によると、2025年に米国が景気後退に陥る確率は、5月初旬の60%超から現在は40%未満へと低下。S&P500指数も、4月の急落から持ち直し、年初来でわずかながらプラス圏に回復しています。6月会合の焦点:ドットプロットと年後半の利下げ観測現在、FRB高官らは引き続き「財政政策や貿易政策の見通しがより明確になるまでは、追加利下げには慎重」とのスタンスを示しています。この見方に市場も呼応しており、少なくとも9月の会合まで利下げは行われないと見込んでいます。5月29日時点のFedwatchでは、9月と10月会合で0.25%ずつの利下げが実施されるとの見方が優勢です。6月会合では、FOMC参加者それぞれの金利見通しを示す「ドットプロット」が発表され、年後半の金融政策の方向性を理解する上で重要な手がかりとなります。ただし、見通しは会合前の数週間に発表される一連の経済指標にも左右されます。市場コンセンサスのベースケースは、金利据え置きと年内1回の利下げ見通しですが、インフレ指標が強い内容となれば、利下げ観測後退=タカ派サプライズが起こる可能性もあり、ドル高要因となります。6月前半の注目イベント6月6日:雇用統計6月11日:消費者物価指数(CPI)6月12日:生産者物価指数(PPI)6月17日: 小売売上高6月17-18日:FOMC

トラス・ショックとは何か?米国・日本で同様の金融危機は起きるか徹底解説
本記事では、2022年にイギリスで起きた「トラス・ショック」という財政政策起因の金融危機を紹介し、同様の動きが米国・日本で生じるかを分析していきます。比較の観点としては、「通貨・国債の地位」と「中央銀行の独立性」が重要で、結論として米国・日本ともに全く同じ動きが起きる可能性は低いものの、特に日本では長期金利のパスを通じた危機誘発メカニズムが存在し、為替を通じた金融危機のリスクに注意することが必要です。イギリス「トラス・ショック」で何が起きたか2022年9月、当時のリズ・トラス英首相は、大規模な減税策を柱とする「ミニ・バジェット」と呼ばれる一連の財政政策を発表しました。減税の規模は 「過去50年で最大」 と報じられ、その総額は約450億ポンドにのぼりました。具体的には所得税の基本税率を引き下げる時期を前倒しし、高額所得者に適用される45%の最高税率を撤廃(のちに撤回)し、さらに法人税率の引き上げを凍結するなど、大胆な減税が含まれていました。これらの減税策は財源の大半を国債発行によって賄う「財源なき減税」であり、中長期的な財政悪化リスクを伴うものでした。市場はこの発表に即座に反応し、発表直後から英ポンド急落と英国債の利回り急騰という激しい動きが起きました。9月23日、ポンド相場は対ドルで一時1ポンド=1.09ドル台まで下落し、約37年ぶりの安値水準となりました。株式市場も影響を受け、FTSE100株価指数が当日2%下落するなどトリプル安(通貨・債券・株式の同時下落)の様相を呈しました。急激な金利上昇は、イギリスの年金基金にまで波紋を広げました。多くの企業年金基金は将来の給付に備えてLDI(負債主導型投資)戦略と呼ばれる手法で国債を活用しており、金利変動に対するヘッジのためデリバティブ取引を行っていました。ところが金利が急騰すると、これらLDI取引では担保(証拠金)不足が生じ、年金基金は追加の証拠金を差し入れるよう緊急要求(マージンコール)を受けました。資金繰りのため年金基金や運用ファンドが保有国債を次々と売却した結果、市場にさらなる売り圧力がかかり、金利は一段と上昇するという悪循環に陥ったのです。このままでは年金基金が破綻しかねない危機的状況となり、イングランド銀行(英中央銀行)は金融システム安定化のため異例の緊急介入(長期国債の買い入れ)に踏み切りました。中央銀行による「最後の買い手」としての介入でなんとか市場の連鎖的不安は沈静化しましたが、トラス政権も減税策の大部分を撤回せざるを得なくなりました。結局、発表から1か月も経たないうちにトラス首相は辞任に追い込まれ、在任わずか44日という英国史上最短の政権に終わっています。この一連の騒動は、一般に「トラス・ショック」と呼ばれます。市場はなぜここまで過敏に反応したのでしょうか。背景には政府債務と英国政府への信頼低下があります。市場参加者は「減税による景気刺激」そのものよりも、「財政規律を無視した大規模減税がもたらす国債増発リスクとインフレ加速」に強い懸念を示しました。実際、米国のサマーズ元財務長官は当時「英国の振る舞いは新興国が自滅していく様子に似ている」とまで指摘し、政策への市場不信が極度に高まっていたことを物語っています。つまり、政府の経済運営に対する市場の信認が揺らいだことが、ポンド急落・金利急騰という形で表れたのです。(出典) https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202306/202306k.pdfイギリスと米国・日本の共通点と相違点比較ポイントその1:安全資産としての通貨・国債の地位「トラス・ショック」は、政府債務の健全性と通貨・債券市場の信認の関係を浮き彫りにしました。一般に、投資家はある国の財政運営に不安を感じると、その国の通貨や国債を売却します。信用が低下した通貨は売られて下落し(通貨安)、国債も売られて利回りが上昇(債券価格は下落)します。しかし、注目すべきは、平時には債務残高が高水準でも市場の信認が維持されている国も存在することです。そのカギとなるのが、「その国の国債が安全資産とみなされているか」という点です。たとえば米国債は世界的な安全資産と見なされており、基軸通貨ドル建てであることも相まって、海外政府や機関投資家から安定的な需要があります。米国は経常収支赤字が常態化し巨額の政府債務を抱えていますが、それでもドル需要が根強いため通貨安や国債離れが起きにくく、市場の安定性が保たれやすいのです。実際、米国ではたとえ格付け会社が国債を格下げした場合でも一時的な混乱に留まり、むしろ危機時には「世界の最も安全な資産」として資金が流入する傾向すらあります。日本国債もまた、国際的な基軸通貨ではないものの安全資産とみなされる側面があります。日本は競争力ある輸出産業と巨額の対外純資産を背景に経常収支の黒字が続いており、国内の潤沢な貯蓄によって国債が安定的に消化されてきました。このため、日本国債の大部分は国内投資家が保有し(海外保有比率は約1割強)、為替変動リスクを嫌う「ホームバイアス」(自国資産を選好する偏り)が強く働いています。結果として、日本では自国通貨建ての巨額債務があっても国内で資金が循環し、市場の信認が維持されやすい構造になっています。一方で英国債はどうでしょうか。かつて世界の基軸通貨だったポンドは、第二次大戦後にその地位を喪失し、英国債も徐々にグローバルな安全資産としての地位を失ってきました。英国は長年にわたり貿易赤字による経常収支の慢性的な赤字国であり、不足する資金を海外からの投資に頼っています。その結果、英国債の約半分は海外投資家(民間部門)に保有されるまでになり、自国投資家による安定保有の割合が相対的に低下していました。こうした脆弱性の中で、トラス政権の減税によって財政悪化への警戒感が一気に高まったため、外国人投資家を中心に英国資産から資金が引き揚げられやすくなったと考えられます。要するに、政府債務への信認は各国の経常収支構造や国債の保有者構成、通貨の国際的地位によって左右されます。もっとも、その信認も無限ではなく、財政運営があまりに軽率になれば試練を迎える可能性がある点には注意が必要です。比較ポイントその2:中央銀行の独立性「トラス・ショック」を考える上でもう一つ重要なのが、中央銀行と政府(財政当局)の関係です。政策の協調または独立性のあり方が、市場の受け止めに大きな影響を与えるからです。まず、英国は中央銀行の独立性が高い状態を維持しています。トラス政権が登場する直前の英国はインフレ率が10%前後に達しており、イングランド銀行(BoE)は利上げによるインフレ抑制(金融引き締め)を進めていました。そこへ政府が突然、大幅減税による財政拡張路線を打ち出したため、金融政策と財政政策が真っ向から衝突する構図となりました。市場は「中央銀行がインフレ抑制のため利上げを加速せざるを得なくなる一方、政府は景気刺激を図るという政策矛盾」に敏感に反応し、英国債売りが加速した面があります。対照的に日本では、金融政策と財政政策の協調性が特に強いと指摘されます。日銀は法律上は独立していますが、デフレ脱却を目的とした2013年以降の異次元緩和や2016年以降のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の下で、事実上政府の巨額国債発行を極めて低い金利で支える形となっています。現在日銀は国債残高の約5割を保有するまでに至っています。このように中央銀行が事実上「政府の銀行」のような役割を果たしてきたことで、日本では政府債務が増大しても金利が急騰する事態が抑えられてきました。米国の連邦準備制度理事会(FRB)もまた高い独立性を持つ中央銀行ですが、そのスタンスは英国と日本の中間に位置すると考えられます。過去にはリーマンショック後や新型コロナ危機時に大規模な国債買入れ(QE)を実施し、結果的に政府の巨額財政出動を支える形となった局面もありましたが、それらは非常時の景気下支え策として位置づけられ、インフレが高進した2021年以降は一転して急速な利上げとQT(量的引き締め)に転じています。つまり、米国では平時において中央銀行と財政当局は基本的に独立した政策運営を行い、必要に応じて危機対応では一時的に協調するというバランスが取られているのです。以上を整理すると、英国と米国は中央銀行の独立性が高く、財政が暴走すれば金融政策がそれを打ち消す方向に働くのに対し、日本は中央銀行が事実上財政を支える協調関係にある点が大きな違いです。英国や米国では「財政出動がインフレや金利上昇を招けば中央銀行がブレーキを踏む」という前提があるのに対して、日本では「財政が積極策を取っても日銀が緩和的態度を崩さない」という前提が浸透してきました。しかし日本のインフレ率が上昇局面に転じた今、その前提が試される局面に差し掛かっています。各国それぞれの中央銀行と政府の関係性が、市場の安定性や政策の信頼性に与える影響は無視できないと言えるでしょう。米国と日本で「トラス・ショック」のような混乱は起こり得るか?最後に、同様の財政政策や市場混乱が米国と日本で生じるリスクについて、英国との比較を意識しながら検討してみます。重要なのは、単純に米国と日本を比較するのではなく、「英国とは何が共通し、何が異なるのか」という視点から分析することです。英国と米国の比較:信認と市場規模がもたらす違い結論から言えば、英国に比べて米国で「トラス・ショック」に類似する事態が起こるリスクは低いと考えられます。その最大の理由は前述した米ドルと米国債の圧倒的な信認です。米国は世界最大の経済規模と基軸通貨を背景に、財政赤字を抱えても国内外から資金を調達しやすい立場にあります。市場規模が桁違いに大きく流動性が高いこともあり、「国債の消化に困る」という状況になりにくいのです。また、米国の場合は政策決定プロセスにおいて議会や機関のチェック(議会審議・独立機関の試算など)が効きやすく、英国のミニ・バジェットのように突然市場を驚かせる“サプライズ要因”が比較的少ないことも安定性に寄与しています。しかし、「リスクが低い」=「リスクがゼロ」ではありません。米国でも財政運営への信頼が揺らげば市場は反応します。その兆候として近年指摘されているのが、米国債の長期金利上昇と国債格下げです。2023年には米国の財政赤字拡大見通しに対する懸念から長期金利が上昇し、主要国の間で米国債が相対的に売られる場面が見られました。また、政治面でもたびたび連邦政府の債務上限問題が浮上し、一時的にデフォルト(債務不履行)リスクが意識される局面があります。これまで債務上限は最終的に引き上げられてきたため実際の債務不履行は起きていませんが、その過程で格付け会社が米国債を格下げして市場が動揺することもありました。米国と英国を比較すると、共通点は中央銀行の独立性が高いため財政政策は金融政策と衝突しやすいという点です。トラス・ショック時の英国も、当時インフレ率10%超でBoEが利上げ中というタイミングで減税を強行したことが事態悪化の一因でした。同様に米国でも、例えばインフレが収まらない状況で減税や歳出拡大が打ち出されれば、市場はインフレ長期化や財政悪化を織り込み金利を押し上げるでしょう。ただし相違点として、米国はその信用力と市場規模によってショックを緩衝しうるため、英国のような急激かつ破滅的なスパイラルに陥る可能性は小さいと考えられます。言い換えれば、「市場の猶予」が米国の方が長いのです。この猶予を政策当局が乱用しない限り、トラス・ショック級の混乱は避けられるでしょう。英国と日本の比較:極端な財政・金融一体運営の功罪日本の場合、トラス・ショックと表面的に似た状況(高債務・大規模財政出動)であっても、危機発現の仕方が英国とは大きく異なると考えられます。日本政府の債務残高対GDP比は英国や米国をはるかに上回る水準(約250%超)ですが、それにもかかわらず長期金利は長らく低い水準に抑え込まれ、国債市場のボラティリティ(変動)は低く保たれてきました。前述の通り、これは日銀の強力な国債買い入れと国内資金で国債が循環している特殊事情によるものです。したがって、日本では英国のような「市場が政策を拒否して急激な売り浴びせに出る」現象は起こりにくい構造にあります。しかし、日本にも別の形のリスクが存在します。それは通貨(円)の下落を通じた市場のシグナルです。日本円は米ドルほどの基軸通貨ではないとはいえ、国際的に信用の高い通貨です。ところが財政・金融の一体運営が行き過ぎたり、インフレ目標を超えても緩和的な政策を続けたりすれば、為替市場で円安が急激に進む可能性があります。実際、2022年以降日米金利差の拡大と日本のインフレ上昇を背景に慢性的な円安が進んでおり、一時1ドル=160円を超えるタイミングもありました。これは英国のポンド急落とは性質が異なりますが、市場が日本の金融政策・財政状況を評価する一つの現れだと言えます。今後もし日本政府が明らかに財政規律を損なう大型減税や歳出を打ち出し、なおかつ日銀が低金利維持を続ければ、国債金利こそ日銀が押さえ込めても、円相場が大きく下落しインフレを輸入するリスクがあります。円安は輸出企業には恩恵でも、国民生活にとっては輸入物価高騰を通じた痛みを伴うため、これも広義の「市場の混乱」と言えるでしょう。また、日本の国債市場自体も完全に安定しきっているわけではありません。近年では、日銀のマイナス金利解除と国債買い入れ減額をきっかけに、長期国債(10年債以上)の利回りが急上昇する場面が散見されています。例えば2023年末から2024年にかけて、次期選挙を見据えた減税・財政支出の観測が強まる中で超長期債の利回りが一時的に急騰し、年金や保険といった長期投資家に追加担保を求める動きが発生しました。これは英国のLDI危機と比べれば秩序だった調整ですが、日銀の支配力が及びにくい市場の部分(長期金利や為替市場)では、やはり財政への懸念が薄くないことを示唆しています。こうした長期金利の上昇局面において、巨額となった政府債務の利払い費増加がさらなる財政悪化をもたらし、国債残高の50%を保有する日銀のバランスシートが毀損することで通貨安を誘発するという、潜在的な危機誘発メカニズムが存在しています。英国と日本を比較すると、共通点は「市場の信認」に対して財政拡張が与える影響は無視できないという点です。その影響が英国ではLDI取引で増幅されましたが、日本は政府の利払い費増大と日銀のバランスシート悪化で増幅される可能性があります。相違点として、日本は自国通貨建て債務かつ自前の中央銀行でコントロール可能という強みがあり、一夜にして国債が暴落するといったリスクは英国より低いでしょう。しかし、その強みに頼りすぎると円の信認や将来のインフレ安定に跳ね返ってくるため、形を変えた「トラス・ショック」的な痛みが起こり得ることは念頭に置くべきです。おわりにイギリスのトラス・ショックは、先進国であっても市場の信頼を損ねれば如何に急激な制裁を受けるかを如実に示しました。日本の個人投資家にとっても他人事ではなく、各国の財政・金融政策が自国資産やマーケットに与える影響を理解する上で貴重な教訓と言えます。米国や日本では英国ほど単純に同じ事態が起こる可能性は低いものの、それぞれ市場の信認を維持する努力が求められている点に変わりはありません。個人投資家としては、こうしたリスク環境を理解した上で、幅広い地域・資産に分散して投資を行うことが重要です。

【ブロードコム決算(2025年2Q)】AI需要の継続性とVMware統合効果が株価の鍵を握る(Broadcom)
本記事では、ブロードコム(AVGO)の2025年3月発表2025年度第1四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第2四半期決算の見どころを解説します。半導体事業の強さに加え、昨年完了したVMwareの買収効果が本格的に現れる中、今回の決算には市場の大きな注目が集まっています。個人投資家としても、この決算が今後の株価に与える影響を慎重に見極める必要があります。前回(第1四半期)の決算ハイライト2025年度第1四半期(2024年11月~2025年1月期)、Broadcomは前年同期比25%増の149.16億ドルという過去最高の売上高を記録しました。GAAP純利益も55.03億ドルと高水準を維持し、調整後EBITDAは101億ドル(前年比41%増)、営業利益率も過去最高の67%となりました。これは主に生成AI向けの半導体製品の旺盛な需要と、VMwareの統合効果によるものです。同社のAI関連半導体製品(AI向けプロセッサやネットワークチップなど)の需要が急速に伸び、前四半期はAI向け製品の売上が前年同期比63%増加し、全体の成長を強力に牽引しました。経営陣は今後数年間にわたりこの好調な需要が続くとし、今回の第2四半期売上予想を145~151億ドルの高水準に設定しました。また、1株当たり四半期配当を5.91ドルに維持すると発表し、引き続き高い株主還元姿勢をアピールしました。前回決算後の主な動き:AI製品拡充とVMware統合への課題前回の決算以降、BroadcomはAI市場への製品ラインアップ拡充を一段と進めました。3月には次世代の光トランシーバ向けチップ「Sian3」「Sian2M」を発表し、省電力性能の高さを打ち出して、データセンターの電力コスト削減ニーズに対応しました。業界イベントのOFC2025では、最新のイーサネットソリューションを披露し、AIインフラ市場での競争力強化を積極的にアピールしました。一方、VMware統合に関しては課題も見えてきています。Broadcomは買収後、VMware製品の体系を簡素化し価格改定を実施しましたが、一部の顧客が契約見直しを求めるなど短期的な売上への影響が懸念されています。ただ、ソフトウェア製品の高い粗利益率と、当初の予想を大きく上回る利益増加が見込まれるというの経営陣の見通しは変わっていません。財務面では、信用格付け機関のFitchが今年2月にBroadcomの格付けをBBBに引き上げ、資金調達コストが低下しました。これは今後のM&Aや株主還元施策の柔軟性をさらに高める材料として評価されています。今回決算の注目ポイントまず注目されるのは、AI関連事業が引き続き高成長を維持できるかという点です。前四半期に急成長を遂げたAIプロセッサやネットワークチップの売上が再び2桁成長を達成できるか、投資家にとって大きな関心事となるでしょう。次に、VMware事業の利益率や顧客維持動向も重要です。製品の価格改定に伴い、一部顧客が離脱する懸念があります。これが業績にどの程度の影響を及ぼすのか、また製品体系の簡素化に伴うコスト削減効果がどれほどのものになるかが問われます。また、フリーキャッシュフロー(FCF)の推移も無視できません。前回44%と高いマージンを示したFCFですが、今期はAI関連の設備投資やVMware統合コストで若干低下すると予測されています。配当や自社株買いを維持しつつ、これらの投資コストを効率的に管理できるかに注目です。加えて、為替動向や金利環境も業績を左右する要因です。ドル高の影響が売上の約60%を海外で稼ぐ同社には逆風となりますが、格上げによる社債の利払いコスト低下は、全体の財務ポジション改善につながる可能性があります。株価への影響と投資家への示唆Broadcomの株価は今年に入って堅調で、年初来25%程度上昇し、5月27日時点で235.65ドル付近と過去最高値に近い水準で推移しています。AI需要拡大や財務の安定性、割安感(予想PSRは約12倍で、競合のエヌビディアに比べ半分以下)などが株価を支えています。今期の決算では、AI分野の成長継続やVMware統合効果が期待通りならば、株価にはさらなる上昇余地があります。一方で、VMware部門の売上減少やAI投資の一巡感などが出てくると、市場の失望を誘い株価が調整する可能性もあります。こうした状況を踏まえると、個人投資家は中長期の業績見通しを慎重に確認しつつ、180ドル台から200ドル台前半程度の調整局面を待って段階的に買い増しする戦略が適切と考えられます。特に今回の決算で示されるAI関連の受注状況やVMware部門の利益率など、具体的な数値や経営陣のコメントを注意深く確認することが、投資判断を下す上で非常に重要になります。Broadcomの今後を占う上で、今回の決算発表は重要な分岐点になる可能性があり、市場の関心は非常に高まっています。
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【ヒューレット・パッカード・エンタープライズ決算(2025年2Q)】AI事業の展開力と買収訴訟の影響を見極める(Hewlett Packard Enterprise)
本記事では、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)の2025年3月発表2025年度第1四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第2四半期決算の見どころを解説します。AIサーバー事業の急成長が続く一方で、ネットワーク事業の先行き不透明感や米司法省によるジュニパーネットワークス(Juniper Networks)買収差し止め訴訟など、注目すべき要素が多くあります。個人投資家として、今回の決算でどの点に注目すべきかを整理しました。前回決算の振り返りAIサーバーが牽引するも、利益率に課題HPEの2025年度第1四半期(11~1月期)決算では、売上高が前年同期比16%増の79億ドルとなり、4四半期連続で増収を達成しました。特にサーバー部門は、生成AI向けGPUサーバーの需要増加により29%増の43億ドルと大きく伸びました。しかし、粗利益率は29.2%と前年同期の31.4%から低下し、利益率の圧迫が課題となっています。この状況を受け、HPEは最大3,000人の人員削減を含むコスト削減策を発表しました。また、インテリジェント・エッジ部門の売上高は前年同期比5%減の11億ドルとなり、ネットワーク事業の立て直しが急務となっています。通期の売上高成長率は7~11%と予想されていますが、非GAAPベースの営業利益は最大10%減少する可能性が示唆されています。決算後の主な動向ジュニパー買収とAI戦略の進展HPEは、ジュニパーネットワークスの買収を進めていますが、米司法省はこの140億ドルの買収が競争を阻害するとして訴訟を提起しました。両社は買収が市場競争を促進すると主張し、裁判で争う姿勢を示しています。一方で、HPEはNVIDIAと提携し、AIファクトリー向けのハードウェアとクラウドの統合を強化しています。新型のProLiant DL380a Gen12サーバーの受注を開始し、AI関連の製品ラインアップを拡充しています。また、HPE Discoverイベントではパートナー戦略を発表し、チャネル経由の売上拡大を目指しています。株式市場では、Evercore ISIがHPEの投資判断を「アウトパフォーム」に引き上げ、目標株価を22ドルに設定したことが好感され、株価は反発基調にあります。5月27日の終値は17.94ドルとなり、約3%の上昇を記録しました。今回決算の注目ポイント成長の持続性と利益率の改善今回の決算で注目すべきは、まず売上高のガイダンス達成度です。HPEは第2四半期の売上高を72~76億ドルと予想しており、AIサーバー需要の持続性が焦点となります。次に、粗利益率の改善が見られるかが重要です。前四半期の粗利益率低下は、部材コストの上昇や製品構成の変化が要因とされており、コスト削減策の効果が今期から現れるかが注目されます。また、インテリジェント・エッジ部門の業績回復も注目点です。ジュニパー買収の進展が遅れる場合、Arubaネットワーキングの成長鈍化が続く可能性があります。さらに、サービス型事業の年間経常収益(ARR)が前年同期比45%増の高成長を維持できるか、GreenLakeの契約獲得ペースが注目されます。最後に、通期の1株当たり純利益(EPS)ガイダンス(1.70~1.90ドル)が据え置かれるのか、AIサーバーの好調を受けて引き上げられるのかもポイントです。投資家への視点割安感と成長期待のバランスHPEの予想PERは約9倍と、デル(16.5倍)やスーパー・マイクロ(23倍)と比較して割安感があります。ジュニパー買収が成立すれば、EPSは1株当たり2.4ドル近くまで押し上げられるとの試算もあり、シナジー効果への期待が高まります。一方、買収が不成立となった場合でも、増配や自社株買いの強化による株主還元の加速が見込まれています。AIサーバーへの依存による利益率の圧迫や、司法省の訴訟の行方が短期的なリスク要因となりますが、長期的にはAIとクラウド消費モデルの拡大が追い風となる可能性が高いです。現在の株価レンジ(年初来安値15ドル台~18ドル台)を考慮すると、個人投資家は15ドルを下回る水準での段階的な買い下がり戦略が有効と考えられます。
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【クラウドストライク決算(2026年1Q)】AI戦略の成果と収益性維持の実現性を検証する局面へ(CrowdStrike)
本記事では、クラウドストライク(CRWD)の2025年3月発表2025年度第4四半期決算を振り返り、6月に控える2026年度第1四半期決算の見どころを解説します。同社は近年、AI技術を積極的に活用した製品開発を進め、収益基盤の強化に取り組んでいます。投資家にとって今回の決算は、こうした戦略の進展や収益力の維持状況を確認する絶好の機会となります。前回決算のハイライトクラウドストライクが2025年3月上旬に発表した2025年度第4四半期(2024年11月〜2025年1月期)決算では、売上高が前年同期比で約25%増の10億6,000万ドルを記録しました。非GAAPベースの1株当たりの純利益(EPS)は1.03ドルで市場予想を上回り、好調な業績を示しました。特に注目されたのが年間経常収益(ARR)で、前年同期比23%増の42億4,000万ドルに達しました。ARRの純増額も2億2,400万ドルと市場予想を超える水準で、安定した収益基盤の拡大を裏付けました。ただし、GAAPベースでは8,530万ドルの営業損失となり、前年同期の黒字から赤字転落となりました。この背景には、AI分野への積極的な研究開発投資や新たな販路開拓に伴うコスト増が影響しています。また、同社は通期業績ガイダンスを慎重な姿勢で据え置きましたが、これは中国市場における規制強化などの外部環境を考慮した対応と見られています。前回決算以降の主要ニュース前回決算以降、クラウドストライクはAI技術を活用した製品ラインナップの強化を積極的に進めています。2025年4月には主力プラットフォーム「Falcon」にAIベースの高度なクラウドリスク管理機能を追加しました。これは企業がAIを用いたアプリケーションやサービスをより安全に利用できるよう支援するもので、市場からの関心も高まっています。さらに欧州市場における販売チャネルの拡充にも取り組んでおり、地域的な売上基盤を強化しています。また、コスト管理策として2025年5月には全従業員の約5%に相当する500名規模の人員削減を発表しました。これはAI技術を活用した業務効率化を進める中での戦略的な措置であり、市場ではポジティブに評価されています。株価はこれらの動きを受けて年初来で約25%上昇し、時価総額は5月下旬時点で1,140億ドルを超える水準となっています。ただし、株価売上高倍率(PSR)が約28.9倍と非常に高く、市場が将来的な高成長を強く織り込んでいる状況でもあります。今回決算の注目点今回の決算でまず注目すべきは、AI関連製品がARRの拡大にどの程度寄与しているかという点です。クラウドストライクはAIを活用した新製品を通じて高単価のライセンス販売を目指しています。特にNVIDIAとの連携による高度なAI機能が顧客に広く浸透しているかどうかが、成長持続性を占う上での重要なポイントです。次に、営業利益率の維持状況も確認すべき要素となります。研究開発や販路拡大に伴うコストが増加傾向にある中、非GAAPベースの営業利益率が20%台半ばの水準を維持できているかどうかが、投資家にとって大きな判断材料となるでしょう。また、地域別の収益動向も重要です。前回決算では中国市場での売上鈍化を欧米市場の成長でカバーしましたが、引き続き中国市場での地政学的リスクが懸念されています。欧州などその他の地域での販売拡大が順調に進み、全体として売上減少の影響を抑え込めているか注目されます。株価評価と投資家への視点クラウドストライクの現在の株価水準は、売上成長や利益率の高さを背景に、市場が将来の成長性を高く評価していることを示しています。今回の決算でARRや利益率が市場予想を上回ることができれば、さらに株価が上昇する可能性が高まります。しかし、逆にこれらの指標が期待を下回る場合は、高いバリュエーションの反動から短期的な株価調整が発生する可能性もあります。投資家としては、決算発表後の経営陣によるカンファレンスコールを通じて、AIライセンスの販売状況、地域ごとのARRの推移、通期の業績見通しの修正があるかをしっかりと確認することが必要です。これらの情報を踏まえ、各自のリスク許容度や投資戦略に照らし合わせて適切な判断を行うことが重要になります。

【解説】なぜ日本の長期金利が急騰?日銀のジレンマと6月会合で問われるQTの今後
6月16〜17日に開催される日銀の金融政策決定会合を前に、日本の国債市場は異例の需要低迷に直面しており、世界の金融市場への波及が懸念されています。本記事では、その背景と日銀金融政策決定会合の注目ポイントを整理しつつ、今後の金融市場への影響について解説します。歴史的需給悪化で超長期金利が上昇日銀利上げ観測の後退や日本の財政健全性への懸念から、5月20日に実施された20年国債の入札は、1987年以来の低調な需要を記録し、超長期国債が売られ、利回りが急上昇しました。翌21日には、30年債の利回りが3.185%、40年債は3.635%と過去最高を更新。日本国債のイールドカーブ(利回り曲線)は、長期金利が短期金利よりも上昇する「スティープ化」が進行し、長年続いた日銀の緩和政策下で見られたフラット化傾向とは対照的な展開となっています。超長期債の主要な買い手であった生命保険各社は、2025年度の国債保有を横ばいまたは減少させる計画を示しており、需要の縮小が一段と明確になってきました。また、都市銀行なども直近2か月間で超長期債を売却する動きを強め、国内投資家の売却が長期金利上昇に拍車をかけています。日銀は市場の安定化と経済成長支援の板挟み利回りの上昇は債務返済コストの増加を意味します。日本政府の債務残高はGDP比で250%を超え、主要先進国の中で最も高い水準にあります。長年続いた低金利環境のもと、金利の変動幅も極めて小さく抑えられてきましたが、足元の急激な金利上昇は、日銀が保有する国債の評価損拡大や債務超過リスクをもたらし、将来的な歳出削減や増税といった厳しい政策選択を迫る要因にもなり得ます。一部市場関係者からは「債券市場の混乱を放置すれば、信用格下げや追加財政対応を引き金に超長期債ショックを引き起こしかねない」として、日銀や財務省による公的支援の必要性を指摘する声も出ています。もっとも、日本経済は数十年にわたるデフレから脱却し、ようやく2%のインフレ目標に近づきましたが、経済成長は依然として力強さを欠いています。そうした中、日銀はマイナス金利を解除し、国債買い入れの縮小に着手しましたが、金融引き締めを急げば、景気の腰折れを招くリスクがあります。6月会合の焦点:来年4月以降の国債買い入れ方針6月会合では、日銀の今後のQT(量的引き締め)の進め方、とくに2026年3月までの国債買い入れ減額計画の中間評価と同4月以降の計画の議論が本格化する見通しです。植田総裁は5月1日の記者会見で、市場の意見も踏まえて「国債市場の動向、機能度をしっかり点検しつつ、2026年4月以降の姿も提示する」と述べており、市場安定と機能改善のバランスを今後の国債買い入れ減額方針にどのように反映させるかが焦点となります。現行計画は維持の見通し、オペ手法に変更あるか現時点では、2026年3月までの国債買い入れ計画を維持する方針に変わりはないと見られ、日銀は段階的に国債買い入れを減らして行く意向です。一方で、2026年4月以降の減額ペースは市場参加者の意見を聞いてから考えたいとの声が日銀内では出ており、急速な超長期金利の急上昇を受け、超長期債の扱いについても関心が向かっています。モルガン・スタンレーMUFG証券のストラテジストは、「超長期ゾーンの需給悪化が構造的に続いており、買い入れ減額の停止や、10年超の買い入れ拡大を求める声が出る可能性がある」と指摘。ただし、イールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃後、超長期金利の誘導余地は限られており、減額計画自体の変更は見込まれていません。日銀はこれまで、国債発行額に対する買い入れ比率を踏まえて、残存10年以下の国債を優先的に減額してきましたが、4月には初めて10〜25年債の買い入れも減額しており、足元の対応変化が注目されます。政策金利は据え置きがメインシナリオ5月のロイター調査では、年内にもう1回の利上げ(25bp)を予想する声が多数派となっていますが、エコノミストの約7割が9月までの利上げ見送りを予想。直近の4月30日–5月1日会合では、政策金利(無担保コール翌日物)は0.50%程度に据え置いています。利回り上昇が続いた場合は、世界の金融市場への波及リスクも5月22日、日銀の野口審議委員は超長期国債の利回りの急上昇は「急激だが異常ではない」と述べ、日銀によるむやみな市場介入は適切でないとの見解を示しました。一方、市場は日銀の対応を警戒しており、今後の展開には複数のシナリオが想定されます。望ましいシナリオとしては、日銀が的を絞った一時的な介入を通じて、市場を安定化させる展開が考えられます。より懸念されるシナリオとしては、国債市場の混乱が金融不安に発展し、円キャリートレードの巻き戻しや為替市場のボラティリティ上昇を招く可能性があります。バンク・オブ・アメリカは、政治リスクや財政への不信感を背景に、円安が今夏にかけて進む可能性を指摘しています。
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【コストコホールセール決算(2025年3Q)】会員収入の伸びとデジタル事業の加速が株価を動かすポイントに(Costco Wholesale)
本記事では、コストコホールセール(COST)の2025年2月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、5月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。コストコは、堅調な会員基盤と安定した収益モデルが評価され、景気変動の影響を受けにくい企業として投資家の注目を集めています。この記事では、前回の決算内容の振り返り、以降の主要な動向、そして今回決算の注目点について詳しく解説します。また、それらが今後の株価にどのように影響するかも合わせて検討します。前回決算(2025年度第2四半期)の振り返り前回(2024年11月〜2025年1月)の決算発表は2025年3月6日に行われました。売上高は637億2,000万ドルで前年同期比6.1%増加し、純利益は17億9,000万ドル(一株当たり利益4.02ドル)となりました。この結果は、前年に計上された特別税効果がなくなったにもかかわらず、堅調な収益成長を示しています。特に、既存店売上高(ガソリン価格・為替変動を除く)は全社で5.6%増加し、米国国内では6.1%、Eコマース部門は16.9%と非常に好調でした。コストコの収益性を支える柱となっている会員収入についても、前年9月に実施した会費の値上げが奏功し、引き続き高い会員継続率を維持しています。これらの良好な決算内容は、市場の期待に応えるものであり、投資家から高い評価を受けました。第2四半期以降の主要な動向前回の決算発表以降、コストコは戦略的な取り組みを積極的に進めています。まず、4月に発表された直近4週間(4月8日〜5月4日)の売上速報では、全社既存店売上高が4.4%増加し、米国では5.2%の増加となりました。高金利環境にもかかわらず消費者の購買意欲が依然として底堅く、Eコマースも12.6%増と好調が続いています。さらに、海外市場の拡大にも力を入れており、2025年4月から7月にかけて米国、日本、オーストラリアを含む世界6拠点で新たな倉庫店の開業を計画しています。このグローバル展開が売上のさらなる拡大に貢献すると見込まれます。会員収入については、2024年9月に実施した会費の値上げが順調に浸透しており、会員継続率は90%台後半を維持しています。この高い継続率は、今後さらなる会費値上げ余地を示唆する材料として市場で注目されています。一方で、市場の専門家もコストコの業績予測を次々と引き上げています。タルシー・アドバイザリーは、第3四半期の一株当たり利益(EPS)予想を従来の4.11ドルから4.18ドルに引き上げました。このようなアナリストの評価は、同社の業績に対する市場の期待感を反映したものと言えるでしょう。今回決算(2025年度第3四半期)の注目点今回の決算で投資家がまず注目するのは、既存店売上高と会員収入の動向です。直近の速報値で見られた売上の堅調な推移が続いているかどうかが焦点です。特に会費の値上げ効果により、会員収入が前年比で10%程度増えるとの見方が市場では優勢です。この点が実際に数字として示されれば、コストコの収益構造の強固さが改めて評価されるでしょう。次に、利益率を左右する商品ミックスの動向にも注目です。これまで収益性を圧迫していたガソリン価格が安定化したことで、食品や日用品など高マージン商品の比率が高まっている可能性があります。この状況下で、粗利益率が前年同期比で改善しているかどうかが、投資家にとって重要な確認事項です。また、Eコマース事業の成長も引き続き重要なポイントです。オンライン売上はまだ全社売上の一割に満たない水準ですが、デジタル戦略の進展や店舗受取サービスの拡充により、売上の伸び率や客単価がどれほど改善しているかが焦点となります。さらに、海外市場の成長と為替動向も見逃せません。アジアやカナダ市場の売上成長率はやや減速傾向にあり、新店舗効果を含め、通期での成長見通しにどのような影響を与えるのかを確認する必要があります。特にドル高環境下では、為替が収益を圧迫する可能性があり、注意深く見ていく必要があります。株価への影響と投資家への示唆2025年5月22日時点のコストコの株価は1,018ドル前後で推移しており、年初来高値圏にあります。株価指標としてのPERは約35倍と、決して安価ではない水準ですが、安定した成長が確認されれば、さらなる上昇余地があります。一方、決算が市場予想を下回ったり、既存店売上や利益率の改善が鈍化したりする場合、短期的には950ドル程度までの調整も考慮する必要があります。投資家にとっては、今回の決算内容とその後の経営陣による業績見通し説明に注意を払い、特に会員収入の推移、粗利益率、海外市場の状況といった要素を慎重に分析することが求められます。これらを通じて、自身の投資方針に沿った冷静な判断が重要となります。
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【ページャーデューティー決算(2025年1Q)】AI新製品の収益貢献と中国リスクの行方に注目(PagerDuty)
本記事では、ページャーデューティー(PD)の2025年3月発表2024年度第4四半期決算を振り返り、5月に控える2025年度第1四半期決算の見どころを解説します。今回の決算では、AI関連の新製品が業績にどのような影響を与えているのか、また資本還元策を維持できるかが投資家の関心を集めています。本稿では、前回決算の振り返り、最近の主な動向、そして今回決算の注目すべきポイントを整理しながら、株価への影響を考察していきます。前回決算(2024年度第4四半期)の振り返りページャーデューティーは3月13日に発表した2025年度第4四半期(2024年11月〜2025年1月期)の決算で、売上高が1億2100万ドルと前年同期比で約9.3%の増加を達成しました。これは四半期ベースで過去最高の売上であり、市場から高評価を得ました。また、調整後の営業利益も2230万ドルを計上して黒字転換を果たし、1株当たりの調整後利益(EPS)は市場予想の0.16ドルを上回る0.22ドルとなりました。経営陣は同時に1億5000万ドル規模の自社株買いプログラムを新たに設定し、投資家に対する資本還元姿勢を明確にしました。製品面では、AI機能を活用した新機能「Agentic AI」を追加しました。この機能は企業のインシデント管理を自律的に最適化するものであり、企業の運用効率を改善できるとして注目を浴びています。前回決算後の主なニュース前回決算発表以降、同社はAIを活用した製品ラインナップをさらに拡充しています。4月にはAI運用機能を大幅に強化した新製品群を発表し、特に開発者や運用チームが従来行っていた手作業をAIによって自動化し、生産性を高めることを強調しています。これらの新製品は、SRE(サイト信頼性エンジニアリング)向けの詳細な分析機能や自動化された当番表作成機能など、現場の実務に役立つ具体的な機能を備えており、2025年内の本格導入が予定されています。しかし、一方で企業の経費削減が進む中、IT運用ツールへの投資が見直される動きも見受けられます。このような環境の中、ページャーデューティーの株価は5月19日時点で16ドル台前半で推移しており、年初からは横ばいで推移しています。アナリストの予想では、第1四半期の売上高は約1億1500万ドル前後、EPSは0.16ドル前後とみられており、実際の業績がこれらの予測を上回るかどうかが注目されています。今回決算での注目ポイント今回の決算で特に注目すべきは、まずAI関連製品の売上貢献度です。ページャーデューティーはNVIDIAやAWSなど大手テクノロジー企業との連携を進めており、AIを活用した新しい運用ツールがどの程度収益に寄与しているかが重要なポイントです。AIエージェントは既存製品よりも高価格帯に設定されており、売上の中で占める割合が二桁に達すれば、成長が再加速していると市場に受け止められるでしょう。次に、地域別の売上動向も重要です。特に中国市場向けライセンスが前回決算時に鈍化傾向を示したため、この市場が引き続き弱含んでいるか、それとも他地域で補完されているかを確認する必要があります。特に北米や欧州の大手顧客からの受注が中国市場の減少をカバーできているかどうかが重要な評価基準となります。さらに、営業利益率とキャッシュフローの状況も注目点です。AI関連製品の開発やマーケティングに伴うコストが増加する中、非GAAPベースの営業利益率が前回の18%水準を維持できるかが、同社の収益性を測るうえで重要な指標です。同時に、自社株買いを続けるだけの十分なフリーキャッシュフローを創出できているかという点も投資家の関心を引きます。また、通期の業績ガイダンスが維持されるのか、それとも引き上げられるのかについても注視する必要があります。特にAI関連製品の初動が好調であれば、経営陣は通期見通しを引き上げる可能性が高く、その場合株価にもポジティブな影響が期待されます。逆に、ガイダンスが据え置きまたは引き下げとなれば、短期的な株価下落リスクも意識する必要があります。株価への影響と投資家への示唆ページャーデューティーの株価評価は、現在SaaS企業の平均よりやや割安な水準に位置しています。今回の決算でAI関連製品の受注と売上が期待通りかそれ以上に推移すれば、株価は再評価され上昇余地が拡大すると考えられます。しかし、AI製品の販売状況が市場の期待を下回る結果に終われば、短期的には14ドル台までの調整リスクも考慮する必要があります。個人投資家としては、今回の決算後の経営陣による説明をよく確認し、AI関連売上の動向、地域別の売上状況、利益率の維持状況をしっかりと把握することが重要です。これらの要素を注意深く分析することで、同社の成長ストーリーが実際にどの程度実現されているかを的確に評価できるでしょう。
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【デル・テクノロジーズ決算(2026年1Q)】AIサーバーの収益化とPC市場回復の行方に注目(Dell Technologies)
本記事では、デル・テクノロジーズ(DELL)の2025年2月発表2025年度第4四半期決算を振り返り、5月に控える2026年度第1四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、AIサーバー需要の拡大による成長力と、低迷が続くPC市場の回復状況を見極める重要な節目となります。本稿では、前回決算の概要、その後の主要な動向、そして今回の決算で個人投資家が特に注目すべきポイントを整理し、株価への影響について考察します。前回決算の振り返り2025年2月に発表された2025年度第4四半期(2024年11月〜2025年1月)の決算では、売上高が239億ドルとなり、前年同期比で7%増加しました。特に注目されたのは、インフラストラクチャ事業(ISG)の好調さで、売上は114億ドルと前年同期から22%の大幅増加を達成しました。中でもサーバーとネットワーキング分野の伸びが顕著で、AI関連の受注が大幅に伸びたことが要因でした。一方でPC事業(CSG)は法人向けこそ堅調でしたが、個人消費者向けが弱含んだことで、全体としては1%の小幅な増収にとどまりました。また、調整後1株利益(EPS)は2.68ドルを記録し、市場予想を上回るとともに過去最高を更新しました。年間では売上高が955億ドル、営業キャッシュフローは45億ドルを確保しました。自社株買いについても50億ドル規模で実施され、資本還元の姿勢を積極的に示しました。2月以降の主な動向前回決算以降の大きな話題は、デルがAI市場にさらに積極的に踏み込んだことです。5月初旬に開催されたイベント「Dell Technologies World 2025」では、NVIDIAと協力して新たなAI基盤である「Dell AI Factory」を発表しました。これは企業が効率よくAIを導入し、運用できるようにする取り組みで、デルのAI市場に対する本気度が明確に示されました。さらに、新型の「PowerEdge XE9シリーズ」を投入し、NVIDIAの最新GPUを最大限搭載することで、AIモデルのトレーニング速度を従来の4倍に引き上げることに成功しました。これに加えてAMDやクアルコムとの協力も進んでおり、デルは多様なAI製品ラインナップを拡充しています。証券アナリストの評価も高まっています。例えばモルガン・スタンレーは、AI関連サーバー市場が年間で約200億ドル規模の事業機会となるとの見通しから、デルの目標株価を従来の89ドルから126ドルへと大幅に引き上げました。今回決算で注目するポイント今回の決算発表ではまず、AIサーバー関連の受注残高が実際にどの程度売上として計上されているかに注目です。前回発表された受注残は約90億ドルでしたが、これが順調に売上として反映されているかどうかが成長継続の指標となります。また、PC市場の動向も重要なポイントです。法人向け需要は底堅いものの、個人消費者向けPC市場の回復が進んでいるかどうかが注目されます。特に、新たに投入されるAI機能を搭載したノートPCがどの程度売上に寄与し、平均販売単価の改善に役立っているかを確認する必要があります。さらに、利益率とキャッシュフローの推移にも注意が必要です。新製品の初期投資コストが発生している中で、前回同様の高い営業利益率(9%前後)が維持されているか、フリーキャッシュフローが年間目標の半分程度を順調に達成しているかを確認することが、投資家の信頼を得る重要な要素となります。最後に、資本還元策の進展や、通期の売上見通しに対する経営陣のガイダンスにも注目が必要です。特に、自社株買いを継続的に実施する余力が示されるか、そして年間ガイダンスを引き上げるのか、それとも慎重な姿勢を維持するのかで株価の動きが大きく左右される可能性があります。株価動向と投資家への示唆2025年5月22日時点のデルの株価は114ドル台で推移しており、年初来の上昇率は約80%と、市場平均を大幅に上回っています。AIインフラ需要を反映した成長期待が株価を押し上げている一方で、株価売上高倍率(PSR)は約1.2倍程度と、競合企業に比べ割安感も残ります。AI関連の受注が順調に売上に転換され、利益率が維持されれば、株価はさらに高値を目指す展開が期待できます。しかし、AI関連サーバーの受注消化が想定を下回る場合や、PC市場の回復が遅れる場合には、短期的な株価調整リスクも意識する必要があります。その際は、100ドル付近までの調整も考えられますので、投資家は決算後の経営陣の説明を慎重に確認する必要があります。デル・テクノロジーズは現在、AI分野への積極的な投資と既存事業の回復という2つの重要課題に取り組んでいます。個人投資家の皆さまにとっては、AIサーバーの売上寄与度、PC市場の回復状況、キャッシュフローや利益率の動向を慎重に確認し、ご自身の投資戦略に照らして適切な判断を下すことが大切です。
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【シノプシス決算(2025年2Q)】AI需要取り込みと大型買収の進展が株価を左右へ(Synopsys)
本記事では、シノプシス(SNPS)の2025年2月発表2025年度第1四半期決算を振り返り、5月に控える2025年度第2四半期決算の見どころを解説します。個人投資家にとって、米半導体設計ソフトウェア大手のシノプシスの今回の決算は、同社がAI関連需要を取り込みながら、進行中の大型買収を円滑に進められるかどうかを見極める重要な機会となります。本稿では前回決算のポイントとその後の主なニュースを踏まえ、今回決算の注目すべき要素を整理し、株価への影響を考察します。前回決算(2025年度第1四半期)の振り返りシノプシスが2月に発表した2025年度第1四半期決算は、売上高が14億6,000万ドルで、前年同期と比べ約4%の減収となりました。ただし、調整後EPS(一株あたり利益)は3.12ドルを記録し、市場予想を上回る結果でした。この背景には、次世代AI向けの半導体設計案件が順調に拡大していることが挙げられます。特に注目されたのは、経営陣が示した第2四半期の見通しでした。次世代AIサーバー向けチップ設計などの受注が想定以上に好調であるとして、第2四半期の売上予測を15億9,000万~16億2,000万ドルに引き上げました。ただし、中国市場向けライセンスの伸びが鈍化している影響で、通期売上高予想は67億5,000万~68億ドルと慎重な姿勢を維持しました。この結果を受け、株価は決算発表後に約2%の上昇に留まりました。前回決算以降の主な動向第1四半期決算以降、シノプシスは積極的にAI分野での競争力強化を図っています。3月中旬にはNVIDIAとの協業を拡大し、設計プロセスを従来比で最大30倍高速化できるAI対応の新フローを発表しました。これにより、半導体設計の効率化と高付加価値化が一層進むことが期待されます。また、同社独自のAIベースの設計支援技術である「AgentEngineer」構想を打ち出しました。これにより、回路検証プロセスをAIエージェントが補完し、設計人員を増やすことなく開発期間の短縮を実現するとしています。さらに、4月には世界最大手の半導体受託製造企業TSMCの最先端プロセス技術向けEDA(電子設計自動化)フローの認証を取得し、微細化が進む半導体製造への対応力も強化しました。もう一つの大きな話題は、約350億ドル規模のAnsys買収の進展です。英国の競争当局であるCMAが3月に第一段階の審査を条件付きで通過させたことを皮切りに、日本やトルコなど複数の国の当局からも続々と承認を得ています。シノプシスの経営陣は、2025年上半期中に買収を完了できるとの見通しを示しています。今回決算(2025年度第2四半期)の注目ポイント今回の決算において個人投資家がまず注目したいのは、AI関連ライセンスの成長率です。NVIDIAやTSMCといった大手企業との協業を通じて、次世代AIチップ設計向けのライセンス販売が増加しているとされます。この部門の成長率が前年を上回る水準を維持できるかどうかが、成長持続性を占ううえで重要になります。次に、Ansys買収に関連する費用を吸収した上での営業利益率の推移です。第1四半期の非GAAPベースの営業利益率は32%程度でしたが、大型買収に伴う追加コストが重なっても30%以上を確保できるかどうかが焦点です。コスト管理が上手くいけば、投資家の間で収益力に対する信頼感が高まるでしょう。さらに、中国市場への依存度が下がる中で、代替となる米国や台湾市場の売上拡大が確認されるかどうかにも注目です。地域別売上の動向を慎重に確認することが、今後のリスク評価に役立つはずです。株価への影響と投資家への示唆5月下旬時点のシノプシスの株価は約503ドル前後で、年初来で約18%上昇しており、市場全体を上回るパフォーマンスを示しています。足元の株価売上高倍率(PSR)は約11倍と、過去平均をやや上回る水準にありますが、AI関連需要の強さと買収の進展が明確に確認されれば、さらなる株価の上昇余地があります。逆に、営業利益率の低下や中国市場の影響が想定以上に大きければ、短期的な調整リスクもあり得るでしょう。個人投資家にとっては、決算発表後の経営陣のガイダンスやカンファレンスコールで示されるAnsys買収スケジュール、AI製品の導入状況、地域別売上見通しなどを詳しくチェックし、中期的な投資判断に役立てることが重要です。シノプシスは半導体設計市場において独自のポジションを確立しつつあり、AI関連の需要拡大やAnsysとの統合シナジーなどの材料もありますが、同時に大規模な買収に伴うリスクも伴います。投資家は慎重に情報を精査し、冷静な判断を行うよう心掛けてください。
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【ヒューレット・パッカード決算(2025年2Q)】AI対応PCと印刷事業の収益改善が株価の鍵を握る(HP)
本記事では、ヒューレット・パッカード(HPQ)の2025年2月発表2025年度第1四半期決算を振り返り、5月に控える2025会計年度第2四半期決算の見どころを解説します。米国の大手テクノロジー企業、ヒューレット・パッカードは、2025年5月28日(米国時間)に2025年度第2四半期(2〜4月期)の決算発表を予定しています。今回の決算は、個人投資家にとって同社の今後の成長性や収益力を測る重要な機会となります。ここでは前回決算の振り返り、以降の主要なニュース、そして今回の決算で確認すべき注目点を整理し、株価への影響を分析していきます。前回(2025年度第1四半期)決算の振り返りヒューレット・パッカードは、2025年2月27日に第1四半期(2024年11月〜2025年1月期)の決算を発表しました。売上高は135億ドルで前年同期比2.4%の増収となり、久々のプラス成長を示しました。特にパーソナルシステムズ部門(PC事業)が好調で、法人向けモデルの販売単価上昇を背景に部門売上は前年同期比で3%増加し、営業利益率も6.6%に改善しました。一方、印刷事業は消耗品需要の低迷などから売上が前年比で9%減少し、営業利益率も16%まで低下しました。しかし、全社的な調整後1株利益(EPS)は0.81ドルとなり、市場予想をわずかに上回る内容でした。同社経営陣は、通期のフリーキャッシュフロー目標を40億ドル付近に据え置き、年間5%超の自社株買いを継続すると表明しました。ただし、第2四半期のEPSガイダンスを0.75〜0.85ドルと市場予想の0.86ドルより控えめに設定したことから、決算後の株価はやや下落する場面もありました。2月以降の主なニュースと動向決算発表後のヒューレット・パッカードは、新たな製品戦略や事業構造改革を進めています。3月の世界的な展示会「CES 2025」において、同社はAI機能を搭載した新型PCを発表しました。このAI対応PCは、インテルの最新プロセッサやNVIDIA製GPUを搭載し、端末内で小規模なAIモデルを稼働させ、ユーザーの利便性とセキュリティを向上させることが特徴です。同社は、この新製品を通じて法人顧客の買い替え需要を喚起し、市場シェア拡大を目指しています。また、構造改革として新たに1,000〜2,000名規模の人員削減を実施し、年間約3億ドルのコスト削減を図ることも発表しました。さらに、環境問題への取り組みとして、欧州市場を中心にリサイクル材を利用したインクカートリッジの割合を2026年までに30%に引き上げるという目標を掲げ、環境配慮型製品の拡充も進めています。こうした取り組みは、今後の競争力向上とコスト削減効果が期待されるため、市場でも一定の評価を得ています。今回決算(2025年度第2四半期)の注目ポイント今回の決算で個人投資家が注目すべき最初のポイントは、パーソナルシステムズ部門(PC事業)におけるAI対応PCの初期の販売状況です。特に、法人向けモデルの平均販売価格の上昇やサービス契約の付帯率が順調に伸びているかが重要です。この数値が良好であれば、同社のAIを活用した付加価値戦略が市場に評価され、株価の上昇材料となる可能性があります。2つ目の注目点は、印刷事業の利益率回復です。前回は16%まで低下した営業利益率が、価格改定やコスト削減施策によって改善しているかが焦点となります。印刷事業は安定的なキャッシュフロー源として重要な役割を担っているため、利益率が17%以上に回復していれば、通期目標達成への期待感が高まります。最後の注目点は、フリーキャッシュフローの進捗と自社株買いの状況です。同社は通期で約40億ドルのフリーキャッシュフローを目指していますが、上半期の実績がこの目標の半分以上を確保できているかが確認ポイントです。キャッシュフローが順調であれば、自社株買いのペースを維持もしくは加速することが可能であり、株価の下支え要因となります。株価への影響と投資家への示唆5月22日時点でのヒューレット・パッカードの株価は34.5ドル前後で推移しています。株価水準は過去の平均と比較して割安な水準にあり、今回の決算がポジティブであれば、直近高値の38ドル台への上昇が見込まれます。一方、PCや印刷事業で予想を下回る結果が示された場合、株価は30ドル前後まで調整されるリスクもあります。個人投資家としては、AI対応PCの販売状況、印刷事業の利益率改善、キャッシュフローの進捗といった具体的な指標を重視することが重要です。これらの数値を丁寧に確認し、投資判断に役立てることで、短期的な株価動向に惑わされず、冷静な判断が可能となるでしょう。ヒューレット・パッカードは、成熟市場においてもAI活用などの付加価値を高める戦略で競争力を維持しようとしています。今回の決算発表は、その成果を具体的に評価する絶好の機会です。ぜひ、今回の記事を参考に、ご自身の投資方針に合わせて判断を進めてください。
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【セールスフォース決算(2026年1Q)】生成AI戦略の進捗と利益率維持が株価の鍵(Salesforce)
本記事では、セールスフォース(CRM)の2025年2月発表2025年度第4四半期決算を振り返り、5月に控える2026会計年度第1四半期決算の見どころを解説します。今回の決算発表は、同社のAI戦略の進捗と収益性の持続性を評価する重要な機会となります。前回の決算では、売上高、営業利益率、キャッシュフローで過去最高を更新しましたが、生成AIへの投資や構造改革によるコスト増加が課題となっています。今回の決算では、生成AI関連製品の初期売上、利益率の維持、拡大した自社株買い枠の進捗が注目されます。前回決算のハイライト2025年2月26日に発表された2025会計年度第4四半期(2024年11月〜2025年1月)の決算では、売上高が100億ドル(前年同期比8%増)、調整後EPSが2.78ドルと市場予想を上回りました。営業キャッシュフローは131億ドルで前年同期比28%増加し、フリーキャッシュフローは124億ドルで31%増となりました。また、Data CloudおよびAI関連の年間経常収益(ARR)は9億ドルに達し、前年同期比で120%増加しました。Agentforceは、リリースから90日間で3,000件以上の有料契約を獲得し、企業のAI導入を加速させています。以降の主要な動向前四半期以降、SalesforceはAI戦略をさらに強化しています。Agentforceの導入が進み、企業のデジタル変革を支援しています。また、Data Cloudの利用が拡大し、企業のデータ活用を促進しています。これらの取り組みにより、SalesforceはAIとデータの統合による新たな価値提供を目指しています。今回決算の注目ポイント生成AI製品の立ち上がりAgentforceの導入状況とData Cloudの収益貢献度が注目されます。これらの製品が売上成長にどの程度寄与するかが、今後の成長戦略の鍵となります。利益率とコスト構造AI関連投資や構造改革によるコスト増加が利益率に与える影響が注目されます。前四半期の非GAAP営業利益率33%を維持できるかが、収益性の持続性を評価する上で重要です。株主還元と現金創出力拡大した自社株買い枠の進捗と、キャッシュフローの成長が注目されます。これらの要素が株主価値の向上にどのように寄与するかが、投資家の関心を集めています。株価動向と投資家への示唆2025年5月22日時点でSalesforceの株価は283.42ドルと年初来で約18.2%下落しており、S&P 500指数(約-0.7%)を大きく下回るパフォーマンスとなっています。また、現在の株価水準は過去10年の株価売上高倍率(PSR)のレンジ上限付近で推移しているため、決算内容次第ではバリュエーションが調整される可能性もあります。ガイダンスの据え置きや利益率低下が示されると、260ドル前後まで調整が進む可能性もあるため、注意が必要です。ただ、アナリストの多くはAIを中心とした長期的な収益成長に期待しており、今後の製品戦略がうまく展開されれば株価が再評価される余地も大きいとみています。売上成長が加速し、高い利益率を維持しつつ株主還元策が拡充されることが確認されれば、短期的にも株価が再び320ドルを目指す展開になる可能性が高まります。まとめSalesforceは、AIとデータの統合による新たな価値提供を目指し、生成AI製品の導入やData Cloudの拡大に注力しています。今回の決算では、これらの取り組みが業績にどのように反映されるかが注目されます。個人投資家は、生成AI製品の売上寄与度、営業利益率のトレンド、自社株買いの進捗といった指標を注視し、今後の投資判断に活用することが重要です。

【オクタ決算(2026年1Q)】AI投資の効果と成長持続力が株価浮上の分岐点に(Okta)
本記事では、オクタ(OKTA)の2025年3月発表第4四半期決算を振り返り、5月に控える2026会計年度第1四半期決算の見どころを解説します。2025年5月27日(米国時間)に予定されているオクタの2026会計年度第1四半期決算は、同社のAI戦略と収益性の持続性を評価する重要な機会となります。前回の決算では、売上高が6億8,200万ドル、調整後EPSが0.78ドルと市場予想を上回り、株価は急伸しました。しかし、通期ガイダンスの据え置きにより、投資家の間には慎重な見方も残っています。本稿では、前回決算の要点、以降の主要な動向、そして今回の決算で注目すべきポイントを整理し、株価への影響を考察します。前回決算のハイライト2025年3月に発表された第4四半期決算では、売上高が前年同期比13%増の6億8,200万ドル、調整後EPSが0.78ドルと、いずれも市場予想を上回る結果となりました。特に、サブスクリプション収益が6億7,000万ドルと全体の大部分を占め、前年同期比13%の成長を示しました。残存パフォーマンス義務(RPO)は42億1,500万ドルで前年同期比25%増、12カ月以内に計上されるcRPOも15%増と、将来の収益見通しも堅調でした。調整後営業利益率は17%に改善し、EPSは0.78ドルに到達しました。これらの好調な業績を受けて、発表直後に株価は19%上昇しました。以降の主要な動向第4四半期決算以降、オクタはAI時代に対応した製品戦略を加速させています。4月には、AIエージェントやAPIキーなどの非人間アイデンティティを可視化・制御する新たなプラットフォーム機能を発表し、企業が人間と同様にこれらのアイデンティティを管理できるようにする取り組みを強化しました。また、開発者向けには「Auth for GenAI」を公開し、生成AIアプリケーションにネイティブで認証・認可を組み込むことが可能となりました。これらの新機能は、AIエージェントのセキュリティ強化と企業のゼロトラスト戦略の推進に寄与すると期待されています。今回決算の注目ポイントRPOとcRPOの成長率アナリストの予想では、第1四半期の売上高は6億7,800万〜6億8,000万ドル、調整後EPSは0.78〜0.80ドルと見込まれています。特に注目されるのは、RPOとcRPOの成長率です。前四半期のRPOは42億1,500万ドル、cRPOは15%増でしたが、今回も同様の成長を維持できるかが焦点となります。AI関連投資と営業利益率AIエージェントや非人間アイデンティティ管理に関する新製品の投入により、研究開発費の増加が予想されます。その中で、前四半期に達成した17%の営業利益率を維持できるかが、収益性の持続性を評価する上で重要です。通期ガイダンスの見直し現在の通期売上見通しは28億5,000万〜28億6,000万ドルとされていますが、新製品の市場での反応や受注状況によっては、ガイダンスの上方修正があるかもしれません。反対に、据え置きや慎重なコメントが続けば、株価に対する圧力となる可能性もあります。株価動向と評価2025年5月22日時点でのオクタの株価は約124ドルで、年初来約14%の上昇となっています。株価売上高倍率(PSR)は約4.3倍と、同業他社と比較して割高感はなく、好決算が発表されれば、さらなる上昇余地があると見られます。一方で、予想を下回る結果となれば、株価の調整も考えられます。投資家への示唆個人投資家が注視すべきは、RPOとcRPOの成長率が二桁を維持できるか、そしてAI関連投資が営業利益率に与える影響を吸収できるかという点です。これらが確認できれば、オクタのAI時代におけるアイデンティティ管理のリーダーシップが裏付けられ、長期的な成長が期待されます。決算説明会では、新製品の商談状況やパートナー経由の売上比率など、今後の成長を占う重要な情報が開示される可能性が高く、注目されます。