ライブラリー
FANG+とは?構成銘柄の選定基準や過去リターンを徹底解説
本記事では、「FANG+」指数の構成銘柄や比率、銘柄の入れ替え基準と入れ替え時期、過去のパフォーマンスについて詳しく解説します。FANG+とは「FANG(ファング)」とは、もともと2015年に株式評論家ジム・クレイマー氏によって作られた造語でFacebook(現Meta Platforms)AmazonNetflixGoogle(Alphabet傘下)の4銘柄の頭文字を意味します。これらの銘柄に、世界の時価総額上位2銘柄であるアップル、マイクロソフトを含む6銘柄を加えた大型テクノロジー10銘柄に10%ずつ等配分投資をする株価指数がFANG+指数で、米インターコンチネンタル取引所(ICE)が2017年9月26日から提供を開始しました。構成銘柄と入れ替え基準構成銘柄の入れ替えは四半期ごとに行われ、3月、6月、9月、12月の第3金曜日の後に変更が適用されます。銘柄はFANG(メタ、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット)、アップル、マイクロソフトの6銘柄を主軸とし、残り4銘柄は以下の要素に基づいてランク付して抽出され、現在は半導体大手のエヌビディアとブロードコム、サイバーセキュリティのクラウドストライク、業務SaaSのサービスナウが選出されています。時価総額(35%の重み)平均日次取引高(35%の重み)売上高対株価比率(15%の重み)1年の売上成長率(15%の重み)2024年9月にちょうど変動4銘柄の組み替えがあり、電気自動車のテスラ、データプラットフォームのスノーフレークが落とされ、クラウドストライクとサービスナウが新たに組み込まれました。過去には、中国のアリババやバイドゥ、Twitter(現X)、 アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)なども選出されていました。過去のパフォーマンスICEの分析によると、NYSE FANG+指数は2014年9月19日から 2024年8月30日までの期間に年率27.62%のリターンを上げています。一方、同期間のNASDAQ-100は18.18%、S&P 500は12.99%、S&P 500情報技術セクターは22.06%のリターンとなっており、他の主要な米国指数を一貫して上回っています。出所:ICEFANG+にワンタップで簡単投資?ブルーモ証券の提供する投資アプリ「Bloomo」では、米国株・ETFを組み合わせたオリジナルなポートフォリオで簡単に投資することが可能です。今回紹介したFANG+のポートフォリオをワンタップでコピーし投資を始めることができ、そこから変更を加えてオリジナルのポートフォリオの作成も可能です。投資信託と同様に日本円を入金するだけで分散投資できて、自分でやると面倒なリバランスもワンタップで実行できるので、テクノロジー銘柄インデックスに興味がありつつ、自分でも中身をいじりたい方にはおすすめできます。その他のテクノロジー銘柄インデックス(Magnificent 7やUS Tech Top20)とのパフォーマンス比較や、FANG+に投資する場合のオプションについてご関心のある方は、以下の記事もぜひご覧下さい。
【アドビ決算みどころ】AI製品好調で、株価続伸なるか(Adobe)
本記事では、アドビ(ADBE)の2024年3-5月期の決算を振り返り、9月12日に控える2024年6-8月期決算の見どころを解説します。同社の株価は年初来約3%の下落となっていますが、6月上旬の安値から過去3か月で30%以上上昇しています。オプション市場は決算発表後に約±4%の変動を織り込んでいます。前期の振り返り:通期見通し上方修正で株価大幅上昇6月13日に発表された2024年3-5月期決算では、売上高が前年同期比10%増、EPSは同15%増と市場予想を上回る結果となりました。また、2024年度通期の売上高見通しも上方修正したことを受けて、時間外取引で株価が16%超の上昇となりました。売上高:$53.1億(予想:$52.9億)EPS:$4.48(予想:$4.39) 全体の約75%を占める主要事業セグメントである、デジタルメディア部門の収益は前年同期比11%の成長を遂げ、アナリストらが注目する6-8月期の新規年間経常収益(ARR)は4.6億ドルと、市場予想の4.35億ドルを上回りました。ARRはサブスクリプション(継続課金型)サービスの成長指標とみなされています。アドビは近年、より手頃な価格で同様のサービスを提供するCanvaやFigma、AI に重点を置いた新興スタートアップなどとの競争に直面しており、一部のアナリストから「アドビはこれまで企業としての高い競争優位性を維持してきたが、AI はこうした競争障壁の多くを崩し、時間の経過とともに競争圧力が高まっている」と指摘されていました。しかし、今回の決算ではAI 搭載製品を拡充しユーザーエクスペリエンスを向上させることに注力する同社の取り組みが、顧客の支持を集めていることを示唆する結果となりました。ダン・ダーン最高財務責任者(CFO)は、「市場をリードする当社の製品、強力な実行力、そして世界クラスの財務規律により、2024年後半以降も当社は好調な状態にあります」と声明文で述べています。6-8月期の注目点:デジタルメディア部門のARRの成長見通し2024年6-8月期のアドビの「売上高予想は$53.7億、EPS予想は$4.53」、平均目標株価は$610です。デジタルメディア部門の好調な成長が予想されることから、市場関係者は同社の見通しに強気です。下半期は価格設定が追い風になる予想注目は引き続き、デジタルメディア部門の新規ARRの成長見通しです。下半期は、過去2年間におけるCreative Cloudの値上げ実施の成果に加えて、現在ベータ版であるさまざまなAI搭載製品がリリースされることで収益化が開始し、ARRの成長に貢献すると想定されています。特に、アドビの最近の成長は「Acrobat AI Assistant」と同社の画像生成AI「Adobe Firefly」の貢献が大きく、Firefly AIは発売以来90億枚を超える画像を生成しています。また、決算後の10月14日-16日には、毎年恒例の 「MAX Creativity Conference」 がマイアミでの開催を予定しており、大きく注目を集めています。
弱い経済指標とアノマリー警戒で株式市場は大きく下落。9月利下げ期待で円高も進む|米国市場サマリー
先週は、米国の製造業指数と雇用統計の結果が弱かったことから米経済の景気後退が再び懸念される中、歴史的に9月に株価が下がりやすいアノマリーも警戒され、大幅に株価の下がった1週間でした。特にNVIDIAをはじめとするグロース株の下落が顕著となりました。為替は、経済指標の結果により、FRBの9月利下げが大幅になるとの期待も生まれ、円高が大きく進んだ1週間でした。米国株式市場:経済指標の弱さと9月アノマリー警戒で株式は大幅下落9月2日(月) レイバー・デーの祝日で株式市場は休場9月3日(火) 米国株式市場は、主要3指数が大幅に下落しました。特にNVIDIAは約10%の急落を記録し、同社の時価総額は2,790億ドル減少しました。フィラデルフィア半導体指数(SOX)は7.8%安と、米製造業の活動低迷を示す指標が市場心理に悪影響を与えました。Alphabetは3.6%、Appleは2.7%、Microsoftは1.8%下落するなど、ハイテク株も軒並み下落しました。市場全体では、不安心理を示すVIX指数が急上昇しました。9月4日(水) 市場は不安定な取引を経て、S&P 500とNASDAQは小幅に下落し、ダウ工業株30種はわずかに上昇しました。NVIDIAは引き続き1.7%の下落を見せ、AppleやMicrosoftも弱含みました。JOLTS(雇用動態調査)では求人件数が低下し、労働市場の緩和が続いていることが示され、FRBが9月の会合で利下げを行う可能性が高まっています。公益事業株や主要消費財が堅調でした。9月5日(木) 市場では、S&P 500とダウがマイナス圏で引け、NASDAQは小幅高でした。Teslaは約5%上昇し、S&Pの一般消費財セクターを牽引しました。FRBの金融政策への注目が続く中、テクノロジーセクターは約4.8%の下落となりました。9月6日(金) 米8月雇用統計の発表後、労働市場の減速が確認される一方で、FRBの利下げ幅に対する市場の不透明感が続き、主要3指数が下落しました。特に、NVIDIA、Tesla、Alphabet、Amazonといった大型グロース株が大きく下落し、フィラデルフィア半導体指数は4.5%の下落を記録しました。各種経済指標が弱かったことに、9月は歴史的に株式パフォーマンスが低いことを警戒する市場心理が重なり、市場全体が大きく下落した1週間でした。指標によってFRBの9月利下げ幅が広がるかは不透明な中、景気後退懸念の方が相場をリードした形になります。為替市場:弱い経済指標で9月利下げへの期待が高まり大幅な円高進行為替は、製造業指数と雇用統計の弱さから、米国における利下げが想定よりも早いペースで進むとの期待が形成され、大きく円高に進みました。一方、日銀は年内に追加利上げに踏み切る期待は継続しており、円高進行の下支えになっています。今週のマーケット:FOMC直前のCPI公表に注目今週(2024/9/9-9/13)は、9月利下げを決めるFOMC直前の重要経済指標であるCPIが公表されます。ここでCPIの沈静化が明確になれば、9月利下げが大幅になる期待が形成され、株高に振れる可能性があるので要注目です。ブルーモの公式Xでも決算や指標の速報をお届けするので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest
【マグニフィセント7決算解説】AI需要に懸念、株価調整局面入りか
本記事では、米大型テクノロジー企業7社で構成される、Magnificent 7(マグニフィセント・セブン)の2024年第2四半期決算の振り返りをお届けします。テスラ(Tesla): 純利益大幅減で株価下落7月23日に発表された2024年4-6月期決算では、売上高が前年同期比2%増、純利益は同45%減となりました。投資家から注目されていた自動車部門の粗利益率(規制クレジット除く)についても14.6%と、1-3月期の16.4%から低下し、株価は翌日12%下落しました。売上高:$255.0億(予想:$247.7億)EPS:$0.52(予想:$0.62) セグメント別では、自動車部門の売上が前年同期比7%減の199億ドルでしたが、テスラのエネルギー生成・貯蔵部門の売上が倍増したことにより、全体の売上高の成長に寄与しました。また、7-9月の自動車生産が4-6月期よりも増える見通しを明らかにしたものの、2024年の納車台数の伸び率は前年より「著しく低くなる」見通しをあらためて示しました。テスラは引き続きコスト削減に重点を置くとし、新モデルのサイバートラックは年内に黒字化する方向。低価格車の計画も前進しており、25年前半に生産開始の見込みです。そのほか、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、「ロボタクシー」の発表イベントを10月10日に延期すると明らかにしました。ロボタクシーはヒューマノイドロボット「オプティマス」と同様に、テキサス州オースティンにある工場で製造されます。アナリストからはテスラの株価を押し上げる強力な材料が短期的に不足との指摘もあり、一部アナリストは10月のロボタクシー発表が実質的な内容より願望に近いものになる可能性があると懐疑的に見ています。アルファベット(Alphabet): 好業績も設備投資見通し高止まりで、株価下落7月23日に発表された2024年4-6月期決算では検索とクラウドが成長を牽引し、売上高が前年同期比14%増、純利益が同28.6%増と市場予想を上回る堅調な結果でした。しかし、YouTubeの広告収入が予想に届かず、年間を通じて設備投資額が高止まりするとの見通しを示したことから、時間外取引で株価は2%下落となりました。売上高:$847.4億(予想:$841.9億)EPS:$1.89(予想:$1.84) セグメント別では、主力の広告事業の売上高は前年同期比11%増の646億ドル。うち、Youtube広告が同13%増の87億ドルでした。グーグルクラウドの売上高は同29%増の103.5億ドルと、四半期で初めて100億ドルを超え、営業利益も10億ドルに達しました。「その他の事業」の売上高は、自動運転車会社Waymoを含め、前年同期比28%増の3.65億ドルとなりました。Waymoは、第2四半期中にサンフランシスコ全域のユーザー向けにサービスを拡大し、2020年にフェニックス都市圏でのサービス開始に続く2つ目の都市全域展開を実現しました。また、アルファベットはWaymoに対する新たな50億ドルの複数年投資計画を発表しました。四半期設備投資額は130億ドルとなり、年内の四半期設備投資額は120億ドル以上になる見通しを明らかにしました。スンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は「AIスタックのあらゆる層で革新を進めている」と述べた上で、「過小投資のリスクは、過剰投資のリスクよりはるかに大きい」との考えを示しました。一部アナリストは、グーグルのAIへの巨額投資について、一部投資家が「AIによってどのぐらいの売り上げを得ているか」明確な証拠を求めている段階に入り、これが懐疑的な見方や株価の不安定な動きにつながっていると指摘しています。マイクロソフト(Microsoft): クラウド事業が成長鈍化で、株価下落7月29日に発表された2024年4-6月期では、売上高が前年同期比15%増、純利益は同10%増と市場予想を上回る結果となりました。しかし、同社で最も成長しているセグメントであるクラウド事業の成長が減速したため、時間外取引で株価が一時9%下落しました。売上高:$647.3億(予想:$643.8億)EPS:$2.95(予想:$2.94) セグメント別では、インテリジェント・クラウド部門の売上高は前年同期比21%増の368億ドルで、うちAzureの売上高が同29%増と市場予想の31%を下回る結果となりました。エイミー・フッド最高財務責任者(CFO)は「Azureの成長は7-9月も減速が続く」述べましたが、データセンターとサーバーへの投資が需要の取り込みにつながり、2025年度後半にAzureの成長を加速できるとの見通しも示しました。生産性とビジネスプロセス部門は11%増の203億ドル、個人向けコンピューティング部門は14%増の159億ドルの売上を上げました。メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms): AI活用で堅調な収益、株価急伸7月31日に発表された2024年4-6月期決算では、堅調な広告収益と大規模リストラが功を奏し、売上高が前年同期比22%増、純利益は同73%増と市場予想を上回りました。また、第3四半期の売上高についても明るい見通しを示したことから、株価は時間外取引で7%上昇となりました。売上高:$390.7億(予想:$383.1億)EPS:$5.16(予想:$4.73) メタの収益は98%以上を広告事業で稼ぎ出していますが、2024年4-6月期にメタのサービス全体で配信された広告インプレッションは前年同期比10%増加し、広告あたりの平均価格は同10%増加しました。スーザン・リー最高財務責任者(CFO)は「健全な広告需要が世界的に続いている」とし、同社のAIを活用したデジタル広告事業の効率性を改善するプロジェクトの成果も出ていると説明しました。また、第2四半期のコストは7%増加しましたが、営業利益率は29%から38%に上昇し、収益の伸びがコストの伸びを大幅に上回りました。アナリストは、メタの利益率が健全なことから、同社の積極的なAIとメタバースへの支出について投資家が抱いていた収益性への懸念は和らぐ可能性があると指摘しています。2024年の設備投資は370億ー400億ドルになるとの見通しが示されています。アップル(Apple): 新型iPad好調も中国販売不振で、株価横ばい8月1日に発表された2024年4-6月期決算では、「iPad」の新モデルの販売好調などで売上高が前年同期比5%増と市場予想を上回りました。一方で投資家の懸念材料である中国市場の売上高は6.5%減の147億ドルと市場予想を下回り、時間外取引で株価は横ばいとなりました。売上高:$857.8億(予想:$845.3億)EPS:$1.40(予想:$1.35) 事業別売上高は、総売上の約46%を占めるiPhoneが前年同期比1%減の393億ドル。四半期中に最も成長したiPadの売上高は、同24%増の72億ドルとなりました。一方、アップルにとって重要な成長カテゴリーである、アプリ・音楽・動画配信などのサービス部門の売上高は同14%増の242億ドルとなりました。また、iPhoneやMac、iPad、Apple Watchなどアップル社製のアクティブデバイス数は、すべての製品セグメントと地域セグメントにおいて過去最高を更新しました。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は電話会見で、iPhoneやMac、iPadに搭載予定のAI新機能「Apple Intelligence」が新機種購入の新たな理由になると指摘し、「人を強く引きつけるアップグレードサイクルの極めて重要な時期になるだろう」と語りました。新型デバイスの需要について同社は自信を深めており、9月に発売が予想されている「iPhone 16」は少なくとも9000万台の出荷を目指しています。一部のアナリストは近い将来に新たなiPhoneアップグレードサイクルを迎え、アップルが時価総額4兆ドルに到達する軌道に乗っている可能性があると指摘します。ただし、サービス部門についてはアップストアの変更を求める規制当局からの圧力にさらされているため、サブスクリプションプランやアプリのダウンロードからの収入が抑制される恐れがあります。アマゾン(Amazon): 営業利益見通しが予想を下回り、株価下落8月1日に発表された2024年4-6月期決算ではクラウド事業が成長を牽引し、売上高が前年同期比10%増となりましたが市場予想を下回りました。7-9月期の営業利益見通しについても市場予想を下回り、株価は時間外取引で6%下落しました。売上高:$1480億(予想:$1486億)EPS:$1.26(予想:$1.03) 事業別売上高は、営業利益の60%以上を稼ぐ「クラウド事業」の売上高が前年同期比19%増と市場予想を上回りました。しかし、競合のマイクロソフトやグーグルのクラウド事業と比較すると成長率は遅れ、「アマゾンのクラウド事業の成長が相対的に緩やかなため、首位の座を維持できるか疑問が残る」という懸念の声を払拭しきれていません。オンラインストア部門の売上高は、TemuやSheinなどの割引サイトからの競争激化に直面し、前年同期比5%増。サードパーティ販売者サービスの売上は同12%増となりました。広告事業は同社で最も急成長しているセグメントであり、売上高は前年同期比20%増でしたが、市場予想をわずかに下回りました。アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は記者会見で、2024年上期にクラウド部門アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のデータセンターなどの設備投資に305億ドルを投じたとし、下期には投資額を増やす予定と述べています。エヌビディア(NVIDIA): 売上高見通しが期待に届かず、株価急落8月28日に発表された2024年5-7月期決算では、売上高が前年同期比2.2倍、純利益は同2.7倍と市場予想を上回り、500億ドルの自社株買いも発表されました。しかし、8-10月期の売上高見通しが市場予想のレンジ内に留まり、株価は決算発表後の3営業日で14%下落下落しました。売上高:$300億(予想:$287億)EPS:$0.68(予想:$0.65) 売上の8割以上を占めるデータセンター部門が売上高前年同期比154%増の263億ドルとなりました。一方、8月3日に報道された次世代AI半導体「Blackwell」の発売の遅れについては、出荷遅延は生産効率を向上させるための仕様変更によるものであり、11-1月期に数十億ドルの売上高を達成するを見込みと述べるにとどまり、それ以上詳しく説明しなかったことから、投資家の失望を誘いました。ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は電話会見で、「世界のデータセンターに設置されている時代遅れの機器を置き換えるには、1兆ドル規模の機器が必要になる。その交換作業は始まったばかり」と述べています。また決算後、9月3日に企業のAI支出に警戒感を示す調査レポートが2つ発表され、投資家の動揺を誘いました。一部アナリストは、長期的にはエヌビディア株に引き続き前向きであるものの、「問題なのは明るい材料が提供されそうな予定が当面は見当たらないこと」と指摘しています。
9月初日は大きな下落。過去データから予測する年末までの動き
本記事では、厳しいスタートになった9月初日の米国市場を振り返り、過去データも踏まえて今後投資家が注目すべきポイントをまとめます。要約すると、①9月初日の下落は弱い製造業指数と9月アノマリーへの警戒が原因、②今月中の相場回復はFRB利下げと経済指標のサプライズ次第、③年末に向けては好材料が多い見通し、となります。弱い製造業指数を受けて9月初日は大幅下落9月3日の米国市場は、S&P500が2.1%下落、NASDAQ総合が3.3%下落し、月初の取引日での下落幅としては2020年以来の大幅下落となりました。特にNVIDIAは10%近い下落で、時価総額が2790億ドル減少し、米国企業の1日の時価総額減少としては最大記録を更新しました。市場のボラティリティ(変動性)を示すVIX指数も、33%上昇して20程度まで上がっています。この動きの背景には、昨日発表されたISM製造業指数が7月よりも上がったものの低い水準となり、新規受注の減少や在庫増から、製造業の低迷がしばらく続くことが予測され、市場全体に不安心理が広がったことがあります。また、9月は歴史的に株価パフォーマンスが悪いというアノマリー(規則性)が存在し、9月に入って投資家がこの動きを警戒したとも見られています。出所:Marketwatch9月の相場は利下げ動向と経済指標次第か歴史的にパフォーマンスの悪い傾向にある9月ですが、過去平均で見ると1%下落くらいが平均であり、初日の大幅下落から回復する可能性は十分にあると言えます。8月にも大きな相場下落があり、一時的に市場は恐慌状態に陥りましたが、その後懸念が晴れると株価は元の水準に戻っていきました(日本の個人投資家は円高がかなり進んだので、それでもマイナスとなりましたが)今年の9月は17−18日にFOMCが予定され、FRBがここで長らく期待されていた利下げを発表する見込みなので、利下げ決定とその後の見通しに対するFRB高官からのコメント次第で、株価が上昇する材料となります。一方、今後出てくる経済指標次第では、景気後退懸念が再燃するため、株価のリバウンド上昇は限定的になる恐れもあります。9月3日のISM製造業指数で雇用は改善していたことから、今のところ経済全体での景気後退懸念を示唆する内容ではありませんが、今後の指標には注意が必要です。足下は厳しいが年末に向けては好材料以前に米国市場のアノマリー記事で解説したように、大統領選のある年の米国市場は選挙前の9−10月は様子見の相場が続きますが、選挙が終わって大統領が決定した後から年末にかけて株価が再び上昇に転じる傾向にあります。大統領選後の情勢安定化・上昇トレンドを抜きにしても、Labor day(9月2日の米国祝日・市場休場日)から年末までの株価パフォーマンスを見ると、過去50年の平均では3%程度の上昇が観測されています。出所:Marketwatchまた、ほぼ確定となっているFRBの9月利下げに続き、さらに年内1−2回の追加利下げの可能性もあることから、年末に向けては好材料が出る余地はまだまだある状況です。足下の急激な株価下落で不安になるかも知れませんが、歴史的な8月暴落後に株価が復調した動きも思い出し、是非皆さんには長期目線での資産運用を継続いただければと思います。
NVIDIA決算は無事通過。リセッション懸念も後退し、市場は安定化へ|米国市場サマリー
先週は、NVIDIA決算の前後でテクノロジー株が売られてNASDAQは下落しましたが、強い経済指標からリセッション懸念が和らぎ、ダウ平均は最高値を更新するなど、株式市場全体は堅調でした。S&P500は横ばいで終えており、市場全体としてはリスクが下がった1週間でした。為替は、強い経済指標を受けて9月のFRB利下げ幅は0.25%に留まるとの見方が強まり、円安の進んだ1週間でした。米国株式市場:NVIDIA決算前後でテクノロジー株は下げるも、リセッション懸念は遠ざかる8月26日(月) S&P 500とNASDAQが下落して終了しました。半導体大手NVIDIAの28日の四半期決算発表を控え、売られたことが影響しました。ダウ工業株30種はプラス圏で終了し、CaterpillarやAmerican Expressの買いが押し上げ要因となりました。市場は、30日に発表される7月の個人消費支出(PCE)に注目しました。NVIDIAは2.25%下落し、決算がAI関連銘柄全体に影響を与える懸念が広がりました。8月27日(火) 主要株価指数が上昇し、ダウ工業株30種は終値で最高値を更新しました。NVIDIAの四半期決算発表が注目される中、大型ハイテク株の動きはまちまちでした。NVIDIAは1.5%上昇しましたが、Amazonは1.4%下落しました。S&P 500の情報技術や金融セクターが上昇を主導しました。8月28日(水) NVIDIAの四半期決算発表を控え、下落して終了しました。NVIDIAは2.1%下落し、同社の成長が永続しない可能性が懸念されました。また、他の半導体銘柄も売られ、BroadcomとAMDはそれぞれ約2%、2.75%下落しました。S&P 500の主要11セクターのうち8セクターがマイナス圏で取引を終えました。8月29日(木) ダウ工業株30種は最高値を更新しましたが、NVIDIAは決算発表後に6%超下落しました。米商務省が発表した第2四半期のGDP改定値が上方修正され、米経済がリセッションを回避できるとの観測が強まりました。AI関連株はまちまちで、Microsoftは0.6%上昇した一方、Alphabetは0.7%安となりました。Appleは1.5%上昇し、投資家の関心を集めました。8月30日(金) 株式市場は上昇し、ダウ工業株30種は再び終値ベースで最高値を更新しました。米個人消費支出(PCE)価格指数が発表され、大幅な利下げ観測が後退したことで、AmazonやTeslaなどに買いが入りました。この日はS&P 500の全11セクターが上昇し、特にAI関連銘柄として注目されるDellやIntelもそれぞれ4.3%、約10%高となりました。注目のNVIDIA決算を控えたリスクオフと、NVIDIA決算が期待を大きく超える内容ではなかったことから、テクノロジーセクターの下落した1週間でした。一方、経済全体はリセッション懸念が後退したため、S&P500は横ばいでダウ平均は最高値を更新しました。為替市場:9月のFRB利下げ幅は小幅との期待形成から円安が進む為替は、強い経済指標を受けて円安の進んだ1週間でした。米国GDPが上方改定され、PCE価格指数もインフラ鎮静化を示すほどの内容ではなかったことから、9月のFRB利下げ幅は0.25%に留まるとの見方が強まり、円安方向に振れました。今週のマーケット:9月利下げ前の経済指標に注目が集まる今週(2024/9/2-9/6)は、NVIDIA決算を終えて市場は落ち着きを取り戻しているので、景気指数や失業率が9月のFRB利下げ幅への期待にどう影響するかがポイントになります。現在は0.25%が優勢となりつつあるので、経済指標が弱いと更なる利下げを市場が期待しやすい環境にあります。ブルーモの公式Xでも決算や指標の速報をお届けするので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest
ラッセル2000とは?米小型株に資金がシフトする理由
本記事では「ラッセル2000」について解説のうえ、米小型株の今後の見通しについて紹介いたします。ラッセル2000とはラッセル2000(Russell 2000)とは、米国株式市場において小型株のパフォーマンスを反映する株価指数で、米国証券取引所に上場している銘柄のうち時価総額上位1001位から3000位の銘柄で構成されています。小型株は経済動向に対して敏感であり、大型株よりもリスクが高いと考えられていることから、ラッセル2000は米国経済の健全性やリスク許容度を測る手段ともなっています。米小型株に資金がシフトする理由?足元では、米連邦準備理事会(FRB)の9月利下げ観測と米経済の底堅さを示す経済指標の発表をきっかけに、大型テック株から中小型株への資金シフトしつつあり、ラッセル2000は8月5日の安値から約9%上昇しています。利下げの恩恵を受けやすいアナリストの中には、今が中小型株のポジションを増やすのに好機であり、FRBの政策転換によりラッセル2000指数は40%上昇する可能性があると考える人もいます。ラッセル2000を構成する企業の約4割は赤字であり、変動金利の負債を抱えています。短期金利の低下は借入コストの低下につながり、こうした企業にとって有利に働く経済状況といえます。8月23日のジャクソンホール会議にて、パウエル議長はインフレ鈍化の面に進展が見られるとの認識を示し「政策を調整する時が来た」と述べ、早くて9月に利下げを開始するとの見通しを裏付けました。一方、雇用市場のリスクが指摘されており、9月6日に発表が予定されている雇用統計が、利下げのタイミングとペースを見通す判断材料として大きく注目を集めています。出遅れ感あり、相対的に割安歴史的に、大型株に対して小型株の相対評価が現在ほど低いのは、1999~2000年のドットコムバブルと2007年の金融危機の2回のみで、長期投資家にとって潜在的な機会となっています。ラッセル2000の株価収益率は15倍程度で取引され、S&P500の26倍、ナスダックの33倍と比べて魅力的な水準となっています。
【ブロードコム決算みどころ】AI半導体需要とソフトウェアの業績に高まる期待(Broadcom)
本記事では、半導体大手ブロードコム(AVGO)の2024年2-4月期の決算を振り返り、9月5日に控える2024年5-7月期決算の見どころを解説します。同社の株価は年初来から約50%弱上昇し、S&P500指数の上昇率の約2.5倍のパフォーマンスとなっています。前期の振り返り:予想を上回る収益と見通し上方修正で株価上昇6月12日に発表された2024年2-4月期決算では、売上高が前年同期比43%増と市場予想を上回りました。通期の売上高見通しも市場予想を上回り、時間外取引で株価が一時13%上昇しました。売上高:$124.9億(予想:$120.6億)EPS:$10.96(予想:$10.85) セグメント別では、ソフトウェア部門が2023年11月に買収したソフトウェアプロバイダーVMwareの売上が寄与し、売上高前年比2倍と成長を大きく牽引しました。半導体部門は同6%増の72億ドルとなりました。そのほか、2024年7月15日付で1株を10株にする株式分割が発表されました。5-7月期の注目点:半導体部門の成長続くか2024年5-7月期のブロードコムの「売上高予想は$129.7億、EPS予想は$1.21」、平均目標株価は$193.4です。OpenAIの顧客獲得でAIチップの地位を固める直近の決算において、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフトなどのブロードコムの大口顧客が軒並み設備投資額が過去最高に達したと発表されたため、半導体部門の売上成長への関心が高まっています。また、JPモルガンは顧客向けメモの中で、ブロードコムは最近AIチップの新規顧客としてOpenAIを含む2社獲得し、「経営陣は今後5年間でAI半導体は1500億ドル以上のビジネスチャンスがあると語っている」と述べています。市場はこの協業について好意的な反応を示しており、ウェルズ・ファーゴのアナリストは、OpenAIの最高経営責任者(CEO)であるサム・アルトマンが最大7兆ドルの資金を確保し、チップ生産能力を増強する計画を持っていることを指摘しています。今年のブロードコムのAIチップの収益は、すでにグーグルとメタ・プラットフォームズの2社だけで、90億ドル以上の増加が予想されており、TikTokの親会社バイトダンスからの需要の増加も予想されています。
決算結果が予想を上回るも株価は下落?24/8のNVIDIA決算の市場への影響
こんにちは。ブルーモ証券代表の中村です。米国時間8/28の市場閉場後に、注目されていたNVIDIAの24年5-7月期決算が発表されました。結果は市場予想を上回ったものの、NVIDIAの株価は閉場後の時間外取引で6%程度下落しています。本記事では決算結果の紹介と、今後の市場に与える影響について分析していきたいと思います。NVIDIA決算の結果今期決算内容のサマリー売上:300億ドル(予想は287億ドル)EPS:68セント(予想は65セント)現四半期の見通し:中間値で325億ドル(予想は317億ドル)自社株買い:500億ドル分を追加NVIDIAの売上は過去1年間で2倍以上になっており(+122%)、業績に関しては引き続き強い内容でした。NVIDIAの四半期売上推移グラフ出所:Barron's決算後の会見での発言決算後の会見で事業に関するポイントをまとめます。データセンター売上成長の鈍化:売上の8割以上を占めるデータセンター事業で、四半期成長が+16.4%で、前四半期の+22.6%に比べて鈍化した。大きな取引先である中国市場が、輸出規制もあり厳しい状況にあると発言。新商品Blackwellの見通し進展:新しいAI半導体チップBlackwellの出荷遅延は生産効率を向上させるための仕様変更によるものだったと発表。第4四半期から本格的な出荷・売上計上が始まり、来年にかけて広がっていくと発言。営業利益率は高水準を維持:NVIDIAの営業利益率は62%と高い水準で、S&P500の情報技術セクターの67社中では2番目に高い。1年前の50%からは大幅に上がっているが、前四半期の64%からは僅かに下がった。今後の株式市場への影響NVIDIAに対する過剰期待の落ち着き2024年の株式相場はNVIDIAの急成長に牽引されていましたが、どんな事業でも永続的に指数関数的な成長を続けることは不可能で、どこかで成長は鈍化していくと考えるのが合理的です。NVIDIAの場合、業績は好調なものの、高すぎる期待に対する調整が入ったのが今回決算だったと言えます。市場全体への影響はどうかというと、決算後のNVIDIA株価変動の方向とS&P500指数の変動の方向が一致したのは、過去8回の決算中4回だけです。NVIDIA株価とS&P500指数の相関係数は0.65(1が完全に同じように動き、-1が完全に逆に動く)なので、連動はしているもののそこまで一致はしていません。なので、NVIDIAをはじめとするとMagnificent7の株価が急上昇した近年の相場環境では市場全体への影響は大きかったですが、今回のNVIDIA決算と株価下落によって市場全体が大きく下落していくとまでは言えないと考えます(仮に決算が予想を下回っていたら、AIエコシステムや経済全体への懸念から、市場全体への下落圧力になりましたが、決算自体は予想以上の内容でした)。市場は利下げによる全体底上げ型の上昇相場に入れるか次第Magnificent7の株価急上昇という上昇ファクターは薄れつつある米国市場ですが、9月の利下げに伴う市場全体底上げ型の成長余地は残されていると考えられます。そして、利下げに伴う上昇相場が来る場合、小型株や半導体以外のセクターでも成長が期待できると考えられます。その意味で、今回の決算結果はNVIDIAに頼った成長からの調整・転機であり、投資家としては広範な市場の成長に期待しつつ、FRBの金融政策により注目すべき環境になったと言えます。
ジャクソンホール会議で 9月利下げを強く示唆。株価は上昇し、円高が進む|米国市場サマリー
先週は、景気後退懸念からの回復と利下げ期待で株価は上昇しました。ジャクソンホール会議を控えて、一時的にリスクオフによる株価下落もありましたが、パウエル議長から9月利下げを強く示唆する声明が出たことで、市場は反発上昇して終えました。為替は、日銀植田総裁の国会答弁とFRBパウエル議長のジャクソンホール会議声明により、日米金利差の縮小が想定され、円高の進んだ1週間でした。米国株式市場:9月利下げ期待で株価上昇、ジャクソンホール会議も好感触で終える8月19日(月) 米国株式市場は続伸し、NVIDIA、Microsoft、Alphabetが買われ、NASDAQが目立って上昇しました。S&P 500とNASDAQは8営業日連続で上昇し、景気後退懸念からの回復が続いています。FRBが9月に利下げを行う可能性が高まっており、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言が注目されています。8月20日(火) 市場は小反落し、連続上昇がストップ。ジャクソンホール会議を控え、材料不足の中で一服感が広がりました。S&P 500とNASDAQは8営業日連続の上昇を終え、エネルギーセクターが最大の下落率を記録しました。8月21日(水) 市場は小反発。米雇用統計の下方改定とFOMC議事要旨が9月の利下げ観測を支え、半導体株の上昇がNASDAQを押し上げました。FOMC議事要旨では、9月の会合で金融政策の緩和が適切であるとの見解が示されました。8月22日(木) 市場は反落。ハイテク株が売られ、NASDAQが下落しました。ジャクソンホール会議を前に、NVIDIAの決算やパウエル議長の講演を控えてリスク回避の動きが見られました。8月23日(金) 市場は急反発。パウエル議長が9月の利下げを示唆したことを受け、NVIDIAやApple、Teslaなどの大型株が上昇。金融株や小型株も上昇し、S&P 500の全11セクターがプラス圏で終了しました。先週から続く連続上昇は火曜でストップしましたが、その後も利下げ期待で相場は揺れつつも上昇していきました。ジャクソンホール会議でFRBのパウエル議長から9月利下げを強く示す声明が出たことで、利下げを先取りしての株価上昇で1週間を終えています。雇用統計の下方改定もありましたが、景気後退懸念にはつながらず、逆に利下げを期待させて相場が上昇するという、7月以前の関係性が復活しています。為替市場:植田総裁発言とジャクソンホール会議で円高が進む為替は、日銀植田総裁が国会答弁で経済・物価見通し次第での金融引き締めを示唆したこと、ジャクソンホール会議でFRBパウエル議長が9月利下げを強く示したことで、日米金利差の縮小が想定され、円高が進んだ1週間でした。今週のマーケット:NVIDA決算は再度期待を超えてくるか、株価全体への影響に注目今週(2024/8/26-8/30)は、今年のマーケット急上昇をもたらしてきたNVIDIAの決算が控えています。前2期はどちらも予想を上回る結果でしたが、今回も同様に市場全体を牽引するのか、注目です。週後半には実体経済寄りの経済指標も控えています。ブルーモの公式Xでも決算や指標の速報をお届けするので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest
債券の黄金時代?債券ETFへ注目が集まる理由
2024年、米国の債券ETF(上場投資信託)には年初から7月下旬までに約1500億ドル(約23兆円)が流入し、過去最高を記録しました。2年間の純流出から一転、高利回りと利下げ見込みが投資家に好機をもたらしています。本記事では「債券投資に注目が集まる理由」を解説します。利下げ見込みで債券ETFに資金流入足元では利下げに伴う債券価格の上昇を見込んで、債券ETFが人気化しています。債券価格の変動要因として、短期金利に対する投資家の見通しが大きな役割を果たします。連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げに踏み切ることはほぼ確実との見方が市場で広がる中、投資家は利回りが高水準のうちに債券を確保しようとしています。現在、債券の利回りとパフォーマンスは約20年ぶりの高水準にあります。8月23日時点のS&P 米国債 7-10年指数で測定される米国債(満期が7年以上、10年未満)の1年リターンは約8.7%、S&P グローバル先進国社債指数で測定される投資適格社債の1年リターンが約10.8%と、どちらも全世界株式(オール・カントリー)の米ドルベースでの10年平均利回り9%と同等の水準にあります。 安全性の高い金融商品でも十分なリターンを狙えることが示されていることから、格付け最高位の債券から得られるトータルリターンに焦点を当てた金融商品を購入する投資家も多くなっています。米資産運用大手ブラックロックの債券部門最高投資責任者(CIO)であるリック・リーダー氏は「現在、債券で得られる利回りと収益率は非常に魅力的であり、債券にもっと資金が流入すると予想する」と語ります。景気後退リスクをヘッジする手段にもまた、米国市場の懸念がインフレから景気後退に変わったため、債券は株式市場の混乱に対するヘッジとしての価値を増しています。8月初旬には景気後退懸念を受け、2023年3月に銀行危機への不安が台頭して以来の債券相場上昇となりました。ただし、8月2日以降に発表された米指標では、リセッション(景気後退)の兆候は示されず、ゴールドマン・サックスは今後1年以内に米国が景気後退に陥る確率を20%に引き下げています。債券投資大手ピムコは「株式のバリュエーションに無理が生じている可能性があることは、債券にとって好都合」であり、「長期的に見渡せる範囲でリセッションがなければ、アクティブ債券投資は良好な成績を残せるだろう。リセッションがあれば、さらに成績は良くなる」と説明しています。債券ETFであれば、債券投資が簡単に債券ETFはすでに複数の商品が含まれているため、1回の取引で分散効果が得られ、また最低投資額が1万円代と小口のものが多くなっています。一方で、直接投資の場合は債券の取引単位は大きく、個人では取引できる銘柄が限られます。さらに、ETFは「Exchange-Traded Fund(上場投資信託)」の名前にもある通り上場しているため、取引所が空いている間リアルタイムで取引を行うことができ、債券に直接投資するときには得られない流動性も提供します。運用管理においても、債券ETFであれば株式と一体に証券口座内で管理できるため、損益状況やポートフォリオが把握がしやすいというメリットが挙げられます。
【クラウドストライク決算みどころ】システム障害による通期ガイダンスへの影響は(CrowdStrike)
本記事では、米サイバーセキュリティ企業クラウドストライク(CRWD)の2024年2-4月期の決算を振り返り、8月28日に控える2024年5-7月期決算の見どころを解説します。同社の株価は、7月19日に発生した大規模システム障害で急落しましたが、8月2日の安値から約25%上昇し、現在は年初来で約10%上昇しています。前期の振り返り:通期見通しを上方修正で株価上昇6月4日に発表された2024年2-4月期決算では、売上高が前年同期比33%増と市場予想を上回る結果となりました。2025年度通期の収益見通しも上方修正し、株価は時間外取引で大幅上昇しました。売上高:$9.21億(予想:$9.05億)EPS:$0.93(予想:$0.89) 年間経常収益(ARR)は前年同期比33%の36億5000万ドル、そのうち2億1200万ドルは四半期中に追加された新規ARRです。ARRはサブスクリプション(継続課金型)サービスの成長指標とみなされています。バート・ポドベレ最高財務責任者(CFO)は「好調なトップライン業績に加えて、記録的な粗利益や売上高の35%にあたるフリー・キャッシュ・フローなどは、ARR100億ドルに向けた収益性の高い事業拡大に焦点を当てていることを示しています」と述べています。5-7月期の注目点:システム障害による通期ガイダンスへの影響2024年5-7月期のクラウドストライクの「売上高予想9.58億、EPS予想は$0.97」、平均目標株価は$342です。システム障害が発生して以来初の決算報告であり、売上に与える短期的な影響について投資家に最新情報を提供するとみられます。システム障害の影響はシステム障害は四半期終了の10日前に発生したもので、5-7月期の業績への影響は限定的であると想定されています。一方、障害の影響を受けた顧客が契約条件を再交渉することで割引率や解約率に影響する可能性が高く、経営陣が通期のガイダンスをどのように扱うかが重要になります。一部アナリストは、クラウドストライクの顧客が同社に最大40%の値引きを迫る可能性があり、さらに今四半期に交渉される取引のほぼ半数が延期となる可能性があると述べています。また、クラウドストライクは障害の影響を受けた顧客から法的措置を受ける可能性があり、決算報告において潜在的な訴訟費用の見通しに関しても情報を提供する可能性があります。直近では、デルタ航空が5億ドル以上の損害賠償を請求したことが報じられています。
【エヌビディア決算みどころ】株価最高値更新なるか、Blackwell情報にも注目(NVIDIA)
本記事では、半導体大手エヌビディア(NVDA)の2024年2-4月期の決算を振り返り、8月28日に控える2024年5-7月期決算の見どころを解説します。同社の株価は年初来で約164%上昇しており、S&P500のなかでもトップパフォーマンスの銘柄となっています。前期の振り返り:AI 需要持続で過去最高収益を達成5月22日に発表された2024年2-4月期決算では、売上高が前年同期比3.6倍と市場予想を上回る結果となりました。5-7月期の売上高見通しも市場予想を上回り、株価は翌日に9.3%上昇しました。売上高:$260.4億(予想:$246.5億)EPS:$6.12(予想:$5.59) セグメント別では、主力のデータセンター部門が生成AIのトレーニングおよび推論に対する力強い需要から、売上高前年同期比5.3倍と成長を大きく牽引しました。ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、「生成AIがクラウド サービスプロバイダーにとどまらず、さまざまな産業へ拡大しており、数十億ドル規模の市場をいくつも生み出している」と説明し、最新GPUアーキテクチャ「Blackwell」プラットフォームがフル生産中であり、「エヌビディアは次の成長の波の準備ができている」と述べています。そのほか、2024年6月7日を効力発生日とした10対1の株式分割を実施と、四半期配当を1株当たり10セントに引き上げることが発表されました。5-7月期の注目点:Blackwellの最新情報と8-10月期の見通し2024年5-7月期のエヌビディアの「売上高予想は$286.4億、EPS予想は$0.64」、平均目標株価は$140です。アナリストらは堅調な業績を予想していますが、決算発表前に株価が大きく上昇した場合、良好な決算内容であっても株価上昇が鈍いものとなる可能性があります。エヌビディアの需要に、アナリストは楽観エヌビディアの成長を示す指標として「ハイパースケーラーの設備投資支出」が挙げられますが、第二四半期の決算発表では主要ハイパースケーラー全てが設備投資の見通しを引き上げ、同社の主要顧客が設備投資を減速する懸念が払拭され、力強い需要が示されました。エヌビディアの最大の顧客であるマイクロソフトは、今後12か月間の設備投資額がさらに高くなると予想しており、メタは設備投資額のガイダンスの中央値を10億ドル引き上げました。アマゾンもAWSインフラの需要増加に対応するため、今年後半からAIへの支出を増やすと予想しています。Blackwell投入の具体的なタイムラインはまた、8月3日にBlackwellの発売が遅れる可能性があると報道されましたが、エヌビディアは「下半期には生産が拡大する見込みである」とコメントしています。BlackwellチップはHopperモデルよりも約2倍高速でありながら、エネルギー消費を著しく抑え、数兆パラメータのLLMによるリアルタイム生成AIの構築および実行を可能にします。この製品のリリースにより、NVIDIAは2025年および 2026年度も2桁成長を達成する期待が高まっており、投資家は決算発表でBlackwell製品拡大のより具体的なタイムラインが発表されることを期待しています。ただし、アナリストは発売の遅延が発生した場合も、旧型製品の売上がギャップを埋めるのに役立ち、収益や需要に大きな影響が及ぶことはないとの見方を示しています。
好調な経済指標で景気後退懸念はさらに和らぐ。株価は大幅上昇|米国市場サマリー
先週は、各種経済指標で景気の底堅さとインフレ沈静化を示す好調な結果が出たため、米国の景気後退懸念は一層後退し、週間の株価上昇率は今年最大となりました。結果、米国市場は8月に入ってからの株価下落分を完全に取り戻した形になりました。為替は、米国小売売上高の好調を受けて一時的に円安に振れるも、すぐに円高に戻し、週間ではやや円高で終わっています。米国株式市場:好調な経済指標で景気後退懸念は収まり、株価は大幅上昇8月12日(月) 米国株式市場はまちまちで終了。投資家は今後発表される消費者物価指数(CPI)などの経済指標に注目し、FRBの金融政策の見通しを見極めようとしました。ダウは反落したが、S&P 500とNASDAQは小幅に続伸しました。8月13日(火) 市場は上昇し、PPI(卸売物価指数)の伸び鈍化を受けて、FRBが9月に利下げを行うとの期待が強まりました。スターバックスの株価がCEO交代で大幅に上昇した一方で、エネルギーセクターは原油価格の下落で軟調でした。8月14日(水) S&P 500は5日連続で上昇し、NASDAQも続伸。7月のCPIの結果が市場予想を下回り、FRBの9月利下げ観測が高まりました。アルファベットは米司法省による分割検討報道を受けて下落しました。8月15日(木) 市場は大幅に続伸し、NASDAQは2%以上上昇しました。7月の小売売上高が予想を上回り、消費の堅調さが確認され、景気後退への懸念が和らぎました。ウォルマートが好調な決算を発表し、株価が大幅に上昇しました。8月16日(金) 市場は続伸し、NASDAQは7日連続で上昇しました。週間上昇率としては今年最大を記録し、ジャクソンホール会議に向けて投資家の注目が集まっています。景気後退の懸念が和らぎ、FRBの9月利下げ開始観測がさらに強まりました。CPIとPPIの結果が予想を下回ったことで、9月利下げ観測が強まる一方、小売売上高は予想を上回って景気後退懸念が緩和されたので、全体的に市場は上昇して1週間を終えました。為替市場:米国の小売売上高で円安に触れるが、すぐに戻す為替は、米国の小売売上高が好調だったことで、FRBが9月に大幅利下げをする可能性が低くなったと見られ、一時的に円安方向に動いて149円台までいきました。しかし、その後円高に戻しており、週間で見るとやや円安という水準で終わっています。こうした中、円高ショックで解消された円キャリー取引が、再度動き出す気配も見えています。今週のマーケット:ジャクソンホール会議から金融政策の見通しが出るか今週(2024/8/19-8/23)は、失業保険申請件数以外は大きな指標の発表はありませんが、22日からジャクソンホール会議があるので、そこでFRB高官から今後の金融政策に関する発言が出るかに注目です。また、最近調子の悪いFANG+銘柄のSnowflake決算も控えています。ブルーモの公式Xでも決算や指標の速報をお届けするので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest
【バフェットのポートフォリオ解説】アップル株なぜ半減?2銘柄への新規投資も明らかに
ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の2024年6月末時点でのポートフォリオが、8月14日に米証券取引委員会(SEC)に提出された報告書「フォーム13F」にて明らかになりました。本記事では、バフェット氏の最新ポートフォリオを紹介の上、今回新たに投資が明らかになったアルタ・ビューティーとハイコについて解説します。バフェットポートフォリオの中身上位10銘柄で90%以上、アップル株は半減も引き続き1位バフェット氏は集中度の高いポートフォリオを運用していることで知られ、上場ポートフォリオは41社で構成されているにもかかわらず、上位5銘柄で70%以上、上位10銘柄は90%以上占めています。上位保有銘柄アップル(AAPL) : 30.1%バンク・オブ・アメリカ(BAC) : 14.7%アメリカン・エキスプレス(AXP) : 12.5%コカコーラ(KO): 9.1%シェブロン(CVX): 6.6%オキシデンタル・ペトロリアム (OXY): 5.8%クラフト・ハインツ(KHC): 3.8%ムーディーズ(MCO): 3.7%チャブ(CB): 2.5%ダビータ(DVA): 1.8%特筆すべきは、4-6月にアップル株の保有を50%近く削減したことでしょう。一部のアナリストは、アップルの長期的な成長能力に少しでも懸念があれば、バフェット氏は全ポジションを手じまいしていた可能性が高いとし、アップル株の保有削減は「単なるリスク管理」または「経済情勢の悪化への備え」であるとの考えを示しています。5月15日に開示された、バークシャーの2024年3月末時点のポートフォリオでは、アップル株は4割近くを占めていましたが、今回の株式売却により保有比率は3割へ低下しました。バフェット氏は、7月以降にアップル株をさらに売却したかどうかを明らかにしていませんが、5月時点では「アップルが年末までバークシャーにとって最大の保有株であり続けると予想している」と述べています。また、ポートフォリオの中で2番目に大きなポジションを占める、バンク・オブ・アメリカ株も7月中旬以降にポジションを8.8%削減していますが、開示されているのは6月末時点でのポートフォリオのため、古い保有状況が示されています。投資縮小の理由や意図について、バフェット氏はこれまでのところ明らかにしていません。化粧品小売と航空機器部品メーカーへのへの新規投資が明らかにそのほか、注目を集めたのはアルタ・ビューティー(ULTA)とハイコ(HEI.A)への新規投資です。アルタ・ビューティーは年商が1兆円を超える米国最大の美容小売チェーンで、米国全50州に約1,395店舗を展開しています。百貨店コスメを自宅近くで試せるのが魅力であり、ポイント獲得プログラムには4,300 万人以上の会員がいます。アルタの株価は、同社が成長鈍化の可能性を警告したことから低迷しており、予想株価収益率 (PER)は12.8倍と非常に割安で取引されていました。アルタのポジションは約2億6000万ドルに相当し、バークシャーにとっては少額の保有となります。ハイコは、民間航空機の交換部品や防衛製品の部品製造するほか、世界の主要航空会社を顧客とする保守サービスを提供しています。航空機部品の製造は当局の認証が必要なため参入障壁が高く、製造業に珍しく営業利益率が20%を超えています。ハイコの株価は、同社製品に対する高い需要と市場でのプレゼンス拡大から年初来約35%上昇しています。バークシャーは、2016年に航空機部品メーカーのプレシジョン・キャストパーツを321億ドルで買収しており、航空宇宙分野にも精通しています。手元資金は2005年6月以来の最大にバークシャーは2024年4-6月期に755億ドル相当の株式を売り越したため、現金と米短期債保有額を合計した広義の手元資金は6月末時点で2769億ドル(約40兆5700億円)に達し、過去最高値を更新しました。バークシャーは最低300億ドルの現金を保有することを約束していますが、適正価格で購入できる企業全体や個別株が見つからない場合には、現金を蓄積させることが多くなっています。バフェットポートフォリオを簡単コピー?ブルーモ証券では、2024年6月末時点でのバークシャーのポートフォリオをワンタップでコピーし、投資を始めることができます。株式のみで構成されるポートフォリオのほか、米短期債を含む手元資金を反映したポートフォリオのコピーもできますし、そこから変更を加えてオリジナルのポートフォリオの作成も可能です。