Library

ライブラリー

【データドッグ決算(2025年3Q)】AI観測需要とクラウドセキュリティで成長持続性を検証(Data Dog)

【データドッグ決算(2025年3Q)】AI観測需要とクラウドセキュリティで成長持続性を検証(Data Dog)

本記事では、データドッグ(DDOG)の2025年8月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、11月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、今回は売上8.47〜8.51億ドル予想の達成、AI・クラウド観測需要の持続性、セキュリティ事業の伸びが焦点で、堅調なフリーキャッシュフローが株価を下支えするとみられます。前回決算のハイライト売上高は8億27百万ドルで前年同期比28%増となりました。10万ドル超のARR顧客数は約3,850社へと拡大し、エンタープライズでの導入深化が確認されました。クラウド利用の最適化が続く環境でも、同社はDASH 2025で125超の新機能を公開し、生成AIの観測やセキュリティ統合など横断的プロダクトの裾野を広げています。キャッシュ創出力も堅調で、営業キャッシュフローは2億ドル、フリーキャッシュフローは1億65百万ドルでした。会社は第3四半期について、売上高8億47〜8億51百万ドル、非GAAP営業利益1億76〜1億80百万ドル、非GAAP EPS0.44〜0.46ドルを見込み、着実な増収・高利益率を示唆しました。決算発表以降の主要ニュース第2四半期後はプロダクトと市場開拓の双方で更新が相次ぎました。10月にはOracle Cloud Infrastructure対応の拡充を発表し、大規模顧客のハイブリッド/マルチクラウド監視を後押しする姿勢を鮮明にしました。同時期に豪州のIRAP Protected認証を取得し、公共分野での信頼性を高めています。さらに「State of Cloud Security 2025」では認証情報窃取の増加を踏まえデータ・ペリメータ採用が拡大していると指摘し、観測×セキュリティ統合の重要性を裏付けました。11月6日(米東部)には第3四半期の結果とカンファレンスコールを予定しており、AI監視、ログ/APM、クラウドセキュリティの各プロダクトでの案件積み上がりが注目されます。今回決算の注目点市場の視線は、第一にプロダクト横断での消費拡大とガイダンス実行力に集まります。Q3の会社見通しは前年超の増収と高い非GAAPマージンを前提としており、ログ/トレース/セキュリティの同時採用やAIワークロードの本番化がどこまで単価・継続率に波及したかが焦点です。第二に大型顧客の動向です。10万ドル超ARR顧客が順調に増加する一方、生成AIユースケースではワークロード最適化による利用量の揺らぎも想定されます。こうした可変需要の中で、契約の粘着性とプラットフォーム統合によるテイクレート維持が論点です。第三にクラウドセキュリティの伸長です。CSPMやアプリ防御などの拡張が順調なら、観測と防御の統合による差別化が一段と強まり、ストック型の拡張余地が広がります。外部環境では、観測・セキュリティ市場の拡大とツール統合の潮流が同社に追い風である一方、ストレージコストやベンダーロックイン忌避の議論が逆風となり得ます。アナリスト間ではQ3売上を約8億47〜8億51百万ドルとみる見解が多く、着地とあわせて通期見通しのアップデートに注目が集まります。株価への影響株価は年初来で観測・セキュリティ一体型プラットフォームへの期待を織り込みつつ、ヘッドラインに敏感な展開が続いています。DASH後には大手証券が「トップピック」に選定するなど強気評価が強まった一方、特定大口顧客の最適化リスクを理由に格下げが出る局面もあり、短期的なボラティリティは避けにくい状況です。今回決算後の評価軸は、第一にQ3ガイダンス対比の着地、第二に大型顧客の利用動向と単価のトレンド、第三にセキュリティ事業の伸びとプロダクト間クロスセルによるLTV拡大です。これらがポジティブに示されれば、高いフリーキャッシュフロー創出力と併せてバリュエーションの下支えとなる可能性があります。反面、AI関連ワークロードの変動やコスト上振れ、クラウドプロバイダー政策・規制面の不確実性が再評価の重石となり得ます。

【アップラビン決算(2025年3Q)】AXON成長の持続性と規制リスクの見極めが焦点(Applovin)

【アップラビン決算(2025年3Q)】AXON成長の持続性と規制リスクの見極めが焦点(Applovin)

本記事では、アップラビン(APP)の2025年8月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、11月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、売上13.2〜13.4億ドル予想の達成可否と高利益率維持、SEC調査への対応が焦点で、AXONの成長持続性が株価評価の鍵となります。前回決算のハイライト売上高は12.59億ドルで前年同期比77%増、調整後EBITDAは10.18億ドルと前年の約2倍に拡大しました。純利益は8.20億ドル、営業キャッシュフローは7.72億ドル、フリーキャッシュフローは7.68億ドルと資金創出力の高さも際立ちました。AXONエンジンを核にした広告プラットフォームの拡大が牽引し、ゲーム開発事業は売却完了に伴い「非継続事業」に区分されています。会社はあわせて2025年7〜9月期(Q3)のガイダンスとして、売上高13.20〜13.40億ドル、調整後EBITDA10.70〜10.90億ドル、調整後EBITDAマージン81%を提示し、高水準の収益性維持を見込む姿勢を示しました。決算発表以降の主要ニュース事業ポートフォリオの純化では、モバイルゲーム事業のTripledot Studiosへの売却が6月30日にクローズし、現金4億ドルに加えて約20%の持分を取得する構成があらためて示されました。広告テクノロジーに経営資源を集中する方針が明確化しています。 一方、10月初旬にはデータ収集慣行をめぐるSEC調査の報道が広がり、同社株は一時14%下落しました。会社は規制当局との適切な対話を継続し、必要に応じて開示すると述べています。短期的にはヘッドラインによるボラティリティが意識されやすい地合いです。 今回決算の注目点最大の焦点は、AXONの成長持続性です。Q2時点での高いテイクレートとマージンの維持が確認されれば、AI駆動の最適化による構造的な収益性改善が裏づけられます。広告主のオンボーディング状況、eコマース系の出稿増、セルフサーブ化の進捗など、量・質の双方からの成長がどこまで可視化されるかが注目されます。次に、ポートフォリオ純化の効果です。ゲーム事業売却により売上構成は広告へ一段と傾斜しており、資本効率や運転資本の改善がどの程度数値に現れるかを見極めたいところです。加えて、規制・プラットフォーム環境の変化に対するレジリエンスも論点です。短期的にはSEC報道への説明、長期的には大手アプリストア・IDポリシーの変化に対する技術的対応力が問われます。会社ガイダンスの13.20〜13.40億ドルと調整後EBITDA10.70〜10.90億ドルのレンジに対し、需給の季節性や為替の影響、主要広告主の支出意欲が上振れ・下振れの分岐となります。株価への影響株価は年初来大幅上昇の後、10月のSEC報道で急反落するなどニュースに敏感な展開が続いています。今次決算で注目されるのは、第一にガイダンスに対する着地と来期見通しのトーン、第二にAXONの顧客基盤拡大と単価・稼働の実績、第三に規制面の不確実性への対応方針です。これらがポジティブに示されれば、利益成長の持続に対する信認が回復し、バリュエーションの再上昇余地が生まれます。他方、規制リスクの長期化やプラットフォーム政策変更、マクロ環境に伴う広告費の伸び悩みは下振れ要因です。中期的には、ゲーム事業売却で得た柔軟性と高いフリーキャッシュフロー創出力を財務規律と追加投資の両立にどう振り向けるかが、株価の持続的評価を左右すると見ています。

【イオンキュー決算(2025年3Q)】買収攻勢と資金力で量子×ネットワークの商用化を加速(ionQ)

【イオンキュー決算(2025年3Q)】買収攻勢と資金力で量子×ネットワークの商用化を加速(ionQ)

本記事では、イオンキュー(IONQ)の2025年8月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、11月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。前回は売上2,070万ドルと好調で、手元資金は約16億ドルに拡大しました。Oxford IonicsやLightsynqなどの買収で量子計算・通信・センシングを統合し、商用化を加速しています。前回決算のハイライトIonQは8月6日に2025年4〜6月期(第2四半期)を公表し、売上高は2,070万ドルとガイダンス上限を15%上回りました。純損失は1億7,750万ドル、Adjusted EBITDAは3,650万ドルの赤字でした。6月末の現金等は6.57億ドル、7月9日時点のプロフォーマでは10億ドルのエクイティ調達を経て約16億ドルまで積み増し、成長投資余力を確保しています。通期売上見通しは8,200万〜1億ドル、Q3は2,500万〜2,900万ドルを見込みます。事業面では、英国の量子計算スタートアップOxford Ionicsの約10.75億ドルでの買収提案を発表し、さらに光接続技術を持つLightsynqと衛星基盤のCapellaの買収を完了しました。AstraZeneca・AWS・NVIDIAとの共同で創薬シミュレーションの20倍高速化を示すなど、ユースケースの可視化も進みました。決算発表以降の主要ニュースQ2後はM&Aと量子ネットワーク領域の布石が相次ぎました。9月には米量子センシング企業Vector Atomicの買収意向を発表し、原子時計やナビゲーション等の国家安全保障用途で実績のある同社の技術を取り込む計画です。これにより、計算に加えてセンシングまで含むフルスタック展開が加速します。 英国拠点の獲得を伴うOxford Ionics買収は、イオントラップ・オン・チップの実装力を取り込みつつ、27年に800論理キュービット、30年に8万論理キュービットという長期ロードマップの実現性を高める狙いが示されています。 さらに、量子ネットワークに関しては合成ダイヤモンド材料のブレークスルーやQKD構想の進展が報じられ、量子通信・防諜領域での訴求点が明確になりつつあります。今回決算の注目点今回のQ3では、第一に売上レンジ2,500万〜2,900万ドルの達成可否と、受注・バックログの質が焦点です。学術・政府系に偏りがちな量子需要の中で、物流最適化、創薬、電力系統といった商用ユースケースがどこまで継続的収益に転化しているかを確認したいところです。第二に損益面では、研究開発や買収後の統合費用が嵩む中でのキャッシュバーンの軌道が問われます。潤沢な手元資金は攻勢の原資となる一方、赤字幅の縮小とグロスマージンの改善トレンドが投資家の安心感につながります。第三に技術・製品ロードマップのアップデートです。#AQ64近傍の性能指標やフォトニック相互接続の量産化、さらには量子ネットワークおよびセンシング領域の製品化タイムラインが示されれば、中期の収益ストーリーが一段と明確になります。業界全体では、各国の量子国家戦略と民間クラウド経由の利用増が追い風で、IonQは買収連発により計算・通信・センシングを束ねる稀有なポジションを確立しつつあります。株価への影響株価はM&Aヘッドラインや国家プロジェクト関連ニュースに敏感で、Oxford IonicsやVector Atomicの案件公表時には量子分野のプラットフォーム化期待が意識されました。他方、巨額の希薄化を伴うエクイティ調達や研究開発費の増勢は短期のバリュエーション圧力となり得ます。商用案件の立ち上がりが着実に進み、QKDや量子センシングを含むストック型収益の比率が高まれば、ボラティリティの低減に寄与しますが、技術不確実性、政府予算の時期偏重、統合コストや人材獲得競争、サイバー・輸出管理などの規制対応はリスクです。決算後の株価モメンタムは、ガイダンスの維持・上振れの有無、キャッシュ消費の管理、そして買収資産のシナジー具体化に関する経営陣の説明力に左右されると考えます。

【ファイザー決算(2025年3Q)】肥満症ポートフォリオ拡充と費用規律で成長再加速を探る(Pfizer)

【ファイザー決算(2025年3Q)】肥満症ポートフォリオ拡充と費用規律で成長再加速を探る(Pfizer)

本記事では、ファイザー(PFE)の2025年8月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、11月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回決算ではVyndaqelやEliquisの成長維持、COVID関連需要の季節変動、そして肥満症ポートフォリオ戦略の進捗が注目点となります。前回決算のハイライトPfizerは8月5日に2025年4〜6月期(第2四半期)の業績を公表し、売上高は146億53百万ドルと前年同期比10%増、為替影響を除く実質でも10%増と堅調でした。報告ベース希薄化後EPSは0.51ドル、調整後希薄化後EPSは0.78ドルと前年同期比30%増となり、商用執行の強化と費用最適化が奏功しました。製品別ではトランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬Vyndaqelファミリーが実質21%増、抗凝固薬Eliquisは6%増と基盤品が伸長したほか、COVID-19関連ではワクチンComirnatyが実質95%増、抗ウイルス薬Paxlovidが71%増と前年の反動をこなしつつ収益に寄与しました。呼吸器領域ではRSVワクチンAbrysvoが155%増、がん領域ではLorbrenaが48%増とパイプラインの厚みも確認されました。会社は通期売上高ガイダンス(610〜640億ドル)を据え置く一方、費用効率や為替追い風を踏まえ、通期調整後EPS見通しを2.90〜3.10ドルへ上方修正し、2027年までに約72億ドルの純コスト削減達成に向けた進捗も示しました。決算発表以降の主要ニュース第2四半期後の最大トピックは、肥満症領域での戦略ピボットです。9月22日に臨床段階のMetsera買収(初期企業価値49億ドル、条件付き追加対価含む)が発表され、GLP-1やアミリンなど4つの臨床開発プログラムを獲得する見込みとなりました。自社の経口肥満症薬の開発難航を経て、成長市場へ再参入する布石であり、2026年以降の読み筋を左右する材料です。同日付のリリースでは、EASDでの初期データや買収条件の詳細も公表されています。資本政策では10月9日に四半期配当0.43ドルの継続支払いを決定し、株主還元の安定性を確認しました。さらに9月23日には、11月4日(米東部時間)に第3四半期パフォーマンスレポートを公表し、同日カンファレンスコールを実施する旨を案内しています。加えて、8月末にはComirnatyの一部適応での米FDA承認取得を発表しており、COVID関連の需要底上げも図られています。今回決算の注目点今回のQ3では、まず基盤ポートフォリオの持続的な伸びが問われます。VyndaqelやEliquisなど慢性疾患向け製品の需要は底堅く、IRA(メディケア薬価枠組み)による割引拡大を吸収しながら数量増で伸びを確保できるかが焦点です。第2四半期で示された費用規律の強化がQ3でも継続するか、販管費・研究開発費のレンジコントロールも注目されます。次にCOVID関連の季節性です。ワクチンとPaxlovidは通期では縮小均衡にある一方、米国での接種・在庫動向や価格設定見直しによりQ3の変動幅が出やすく、前年の反動や補助的な納入がどの程度入るかが見どころです。最後に成長オプションとしての肥満症フランチャイズの位置づけです。Metsera買収により、2026年以降の中期ロードマップで新たな成長曲線が可視化される余地があり、同領域で先行するNovo NordiskやEli Lillyに対する差別化(投与性、忍容性、製造優位)をどう語るかが投資家の関心を集めます。会社は通期売上610〜640億ドルのレンジを維持しつつ、調整後EPS2.90〜3.10ドルを掲げていますが、Q3でその上側に寄せるシグナルを出せるかがポイントです。株価への影響足元の株価はパンデミック期ピークから大きく調整した水準で推移しており、10月下旬も24ドル台中心のレンジ形成が続いています。市場は、COVID関連の縮小影響と特許切れ接近への警戒を織り込みつつ、費用最適化の進捗や基盤品の粘着的需要、そして肥満症ポートフォリオの将来性を評価軸にしています。Q3後にガイダンスレンジの上方バイアスや費用項目のさらなる引き締めが示されれば、ディフェンシブかつ配当利回りを伴う再評価の余地が生まれます。他方、薬価交渉の影響拡大、関税・為替の逆風、開発停滞や安全性イベント、買収プロジェクトの統合作業に伴う一時費用の顕在化は短期のボラティリティ要因です。外部環境として米金利や医療政策ヘッドラインへの感応度は依然高く、決算コメントでのキャッシュフロー創出力や資本配分方針、株主還元の持続性が株価モメンタムを左右すると考えます。

【AMD決算(2025年3Q)】AI大型契約とラック規模戦略で加速の正念場(Advanced Micro Devices)

【AMD決算(2025年3Q)】AI大型契約とラック規模戦略で加速の正念場(Advanced Micro Devices)

本記事では、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の2025年8月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、11月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。前回は売上77億ドルと過去最高を更新し、データセンター事業が牽引しました。10月にはOpenAIと最大6GW規模のGPU供給契約を締結し、MetaやOracleとの提携も発表。AI需要拡大を背景に、ラック規模システム「Helios」やMI350の量産が焦点となります。前回決算のハイライトAMDは8月5日に2025年4〜6月期(Q2)を発表し、売上高は過去最高の77.0億ドル、GAAP粗利率は40%、営業損失は1.34億ドル、純利益は8.72億ドル、1株当たり利益は0.54ドルでした。非GAAPでは粗利率43%、営業利益8.97億ドル、純利益7.81億ドル、EPS0.48ドルとしています。データセンターは32億ドルで堅調、クライアントとゲーミングを合わせた売上は36億ドルと前年同期比で大幅増となり、Ryzenのミックス改善とセミカスタムの伸長が寄与しました。一方、米国の対中輸出規制に伴うMI308関連の在庫・関連費用として約8億ドルを計上し、粗利率を圧迫しました。会社はQ3売上を約87億ドル(±3億ドル)、非GAAP粗利率約54%とガイダンスし、下期はInstinct MI350シリーズの立ち上がりとEPYC・Ryzenのシェア拡大での成長を見込みました。決算発表以降の主要ニュースQ2後はAIインフラを巡る大型提携が相次ぎました。10月6日にOpenAIと最大6ギガワット相当のGPU供給で戦略的提携を締結し、まず2026年下期にMI450を1ギガワット規模で導入開始する計画です。マイルストーン連動の新株予約権(最大1.6億株)も含み、複数世代にわたる供給で「数百億ドル規模」の収益機会をうたっています。 10月14日にはMetaが紹介したOCPのOpen Rackに対応するラック規模ソリューション「Helios」を披露し、GPU・CPU・NICを束ねたシステム供給力を前面に出しました。 さらにOracleのクラウドで次世代MI450採用を拡大する提携が報じられ、26年以降のクラウド向け需要取り込みが意識されました。 10月27日にはZT Systemsのデータセンター製造事業をSanminaへ譲渡し、自社は設計・顧客イネーブルメントに注力、米国内製造パートナー網を強化しました。同日、米政府と共にORNL向けの「Lux」「Discovery」両スーパーコンピュータ計画も発表し、ソブリンAIの文脈で存在感を高めています。今回決算の注目点今回のQ3では、第一にデータセンターの伸長度合いと粗利率の回復が焦点です。会社計画は売上約87億ドルで前年同期比+28%・前期比+13%相当、非GAAP粗利率54%を示しており、MI350のランプとEPYCの増勢がどこまで数値に表れるかが見どころです。中国向けMI308のライセンス未反映という前提も開示済みで、規制影響を除いた基礎収益力の確認がポイントになります。 第二にシステムアプローチの収益化です。HeliosやSanminaとのNPI連携により、GPU単体からラック/クラスター供給へとバリューチェーン上での取り分拡大が狙えます。大口顧客のAI投資は依然旺盛で、MetaやMicrosoftなどの設備投資拡大は追い風です。 第三に大型案件の可視化です。OpenAI・Oracleの案件は26年以降の寄与が中心ですが、Q3ではバックログ、キャパ確保、ソフトウェア(ROCm 7)とサプライの積み上げに関する定性情報が注目されます。株価への影響株価は10月6日のOpenAI提携発表を契機に急騰し、AI大型受注の思惑がバリュエーションを押し上げました。足元でもAI関連ヘッドラインへの感応度は高く、クラウド各社の設備投資や受注ニュースがモメンタムを左右しています。 一方で、対中輸出規制に伴う在庫関連費用やライセンス審査の不確実性は引き続きボラティリティ要因です。Q3発表直後は、ガイダンスに対する上振れ・非GAAP粗利率の回復度・データセンターの単価/ミックス改善の程度が評価軸となるでしょう。システム供給への転換が順調であればマルチプルの下支え要因となりますが、供給制約、製造立ち上げの遅延、競合の価格・性能攻勢、為替や金利などのマクロ変動は下振れリスクです。投資家は、26年以降の大型案件の進捗と同時に、25年後半の現金創出力や在庫運転の健全性、パートナーとの収益配分の見通しに注目しています。

【パランティアテクノロジーズ決算(2025年3Q)】AI需要と国防大型契約が成長ドライバーに(Palantir Technologies)

【パランティアテクノロジーズ決算(2025年3Q)】AI需要と国防大型契約が成長ドライバーに(Palantir Technologies)

本記事では、パランティアテクノロジーズ(PLTR)の2025年8月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、11月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。前回は売上高10億ドルと前年同期比48%増、商用部門は93%増とAIプラットフォーム(AIP)の拡大が牽引しました。政府契約も堅調で、米陸軍との大型契約やボーイングとの提携が注目されます。前回決算のハイライトPalantir Technologiesは8月に2025年4–6月期(Q2)を公表し、売上高は10億ドルと前年同期比48%増と大幅な伸びを示しました。米国政府向けは53%増の4.26億ドル、米国商用も93%増の3.06億ドルと両輪で拡大し、AIプラットフォーム(AIP)の案件獲得が牽引しました。純利益は3.27億ドルと前年から大幅に増加し、GAAPベースの黒字体質を維持しています。通期ガイダンスは売上高を41.42~41.50億ドルドルへ上方修正し、調整後営業利益とフリーキャッシュフロー見通しも引き上げるなど、需要の強さを背景に強気のトーンが際立ちました。長期の大型政府契約や、商用領域でのAIP導入の加速が示されたことで、中期の高成長持続に対する投資家の信頼感が高まった四半期だったといえます。なお、詳細値はプレスリリースおよびSEC提出の資料でも確認されています。決算発表以降の主要ニュースQ2後の注目材料は、米陸軍が7月末に発表したエンタープライズ契約です。同契約は今後のデータ・AIニーズを包括的にカバーする枠組みで、既存のソフトウェア導入を統合し、調達の迅速化と運用効率化を狙うものです。国防領域でのプレゼンス強化が明確になり、政府需要の視認性が一段と高まりました。商用側では、ボーイングの防衛・宇宙部門がPalantirとデータ分析・AIの標準化で提携したと報じられ、製造ラインや機密プロジェクトを含む広範な適用が示唆されました。国防航空分野での実装が進むことは、商用アカウントの拡大や高付加価値案件の獲得に追い風となります。今回決算の注目点今回のQ3では、第一にAIPの商用パイプラインがどの程度定着し、Q2で示した米国商用93%増という高成長が持続しているかが焦点です。PoCから本番展開への転換率、客単価の上昇、パートナー経由の販売寄与など、営業生産性の定量化が投資家に重視されます。第二に政府部門では、米陸軍のエンタープライズ契約を含む大型枠組みの収益化タイムラインと、国際機関・同盟国向けのAI防衛ソリューションの広がりが注目されます。加えて、通期ガイダンスはQ2で上方修正済みであり、Q3時点での上振れ余地や費用計画の更新が関心事です。業界全体では生成AI投資が持続し、製造・防衛・公共分野でのミッションクリティカルな実装が増えています。Palantirは同潮流の中心に位置しており、顧客の意思決定速度向上やコンプライアンス要件を満たす形での導入事例が株式の再評価を支えています。これらの要素は、Q3発表と併せて提示される可能性が高く、通期の売上高41.42~41.50億ドルというレンジに対する上側バイアスの有無が見極めどころです。株価への影響株価はAI関連ヘッドラインへの感応度が高く、Q2では強い決算と上方修正を受けて時間外で約4%上昇するなど、成長持続への期待が価格に反映されました。今後は、商用での本番化率の進展、政府の大型契約の収益認識ペース、さらにはマクロ要因として米国の財政政策や防衛予算、IT投資環境が評価を左右します。ポジティブ要因は、AIPの導入拡大に伴う高粗利の継続と、国防・航空宇宙での象徴的な案件の積み上がりです。一方のリスクは、売上の一部が大型案件に依存することによる四半期の変動、導入プロジェクトのスリップ、地政学や規制による調達の遅延、さらに生成AIの安全性やデータガバナンスに関する社会的議論の高まりです。Q3発表では、契約から売上への転換効率、コスト規律、キャッシュフロー創出力が明確に示されれば、評価の安定化につながるとみられます。逆に前倒し投資が先行して利益率が鈍れば、短期のバリュエーション調整は避けにくいでしょう。

【サイファー・マイニング決算(2025年3Q)】HPC事業転換で収益構造の転換期へ(Cipher Mining)

【サイファー・マイニング決算(2025年3Q)】HPC事業転換で収益構造の転換期へ(Cipher Mining)

本記事では、サイファー・マイニング(CIFR)の2025年8月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、11月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算ではマイニング収益の改善とHPC事業の進捗が焦点となり、収益安定化への道筋が株価を左右する見通しです。前回決算のハイライト売上高は4,357万ドルで前年同期を上回った一方、純損益は4,578万ドルの赤字と拡大しました。マイニング難易度上昇や電力価格の変動に加え、設備投資の先行や減価償却の増加が重荷となった構図です。他方でオペレーション面では、テキサス州Black PearlのPhase Iが予定より早く稼働入りし、期末の自社運用ハッシュレートは約16.8EH/sに達しました。会社は引き続き高効率機の導入を進め、今後の増強計画を示しています。これらは短期的に費用を押し上げつつも、中期の生産性向上に資する施策とみられます。決算発表以降の主要ニュース前回決算後の最大のトピックは、9月25日に発表されたFluidstackとの10年契約です。テキサスのBarber Lakeサイトで168MWのHPCコロケーションを提供し、初期10年で約30億ドルの契約収入を確保する内容で、2回の5年延長が行使されれば総額は70億ドル規模に達する可能性があります。加えてGoogleがFluidstackのリース債務14億ドルをバックストップする代わりに、Cipherの普通株約2,400万株に相当するワラント(プロフォーマ持分約5.4%)を受け取る枠組みが示され、HPC分野への本格進出に外部の信用力が付く形となりました。月次では10月7日に9月実績を公表し、Black Pearl Phase Iのフル完成と最新世代機の全面展開を報告しました。月末時点の自社運用ハッシュレートは約23.6EH/s、フリート効率は16.8J/THまで改善し、9月ビットコイン生産は約251BTC、期末保有は約1,500BTCでした。計画されたマイニング能力の拡張は一巡し、同社は経営資源をHPC側へシフトするとしています。さらに10月20日には、2025年7-9月期(第3四半期)決算を米市場開場前の11月3日に発表し、同日にカンファレンスコールを実施する旨を告知しました。四半期の業績と並行してHPC戦略の進捗が更新される見通しです。今回決算の注目点今回のQ3決算では、第一にマイニング事業の稼働効率と収益性の回復度合いが注目されます。9月時点で23.6EH/sまで増強し効率も16.8J/THへ改善したことから、同期間のビットコイン生産量・電力売電の寄与・運転コストの伸長バランスが焦点です。難易度は高止まりする一方、最新機への入替で単位当たり電力消費が低減しており、粗利率の底打ちが示されるかがポイントです。第二にHPC転換の進捗です。Fluidstackとの長期契約により、暗号資産相場に依存しないストック型の収益の柱が立ち上がります。2026年9月までに168MWのITロード提供を見込む計画で、資金調達・建設工程・電力調達の具体化が投資家の関心事となります。Googleのバックストップは信用補完として評価されやすい反面、建設・設備の前倒し投資によるキャッシュアウトが短期収益を圧迫する可能性は織り込みが必要です。第三に市場コンテクストです。ビットコイン価格との連動性は依然として高く、暗号資産相場のボラティリティが採掘収入と機器減損リスクに影響します。他方、AI向けデータセンター需要の拡大観測は、暗号資産マイナー株のリカバリー要因となっており、直近でも「AIデータセンター×マイナー」関連銘柄が相対的に強含む局面が見られました。今回の決算では、HPCパイプラインの可視化とキャピタルアロケーションの方針がガイダンスに反映されるかが見どころです。株価への影響株価はニュースフローに敏感に反応しています。9月のHPC大型契約発表時には、ビットコインの下落と重なり短期的な調整も見られましたが、AI関連需要の追い風が意識される場面では反発も早い展開となりました。直近は業界全体のセンチメント改善に連動して上昇する日がある一方、暗号資産市況や長期金利の変動で値動きが振れやすい地合いです。Q3決算後は、マイニング部門のコスト曲線の実績値、電力ヘッジや需給応答による収益安定化の示し方、そしてHPC案件の資金調達・建設マイルストーンの見通しが株価の評価軸となるでしょう。ストック型収益の積み上げはバリュエーションの下支え要因ですが、建設遅延や資材・電力コスト高、規制や系統制約、さらにはビットコイン価格の急変は下振れリスクです。投資家は、Googleの関与を含む信用補完の効果と、実需に裏付けられたキャッシュフロー創出までのタイムラインを見極める局面にあります。

【アッヴィ決算(2025年3Q)】新薬成長と買収戦略で再加速できるか(AbbVie)

【アッヴィ決算(2025年3Q)】新薬成長と買収戦略で再加速できるか(AbbVie)

本記事では、アッヴィ(ABBV)の2025年7月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、10月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、スキリージ(Skyrizi)とリンヴォック(Rinvoq)の高成長が継続できるかが最大の注目点です。前回決算では両薬剤が売上の主力となり、ヒュミラ(Humira)減少分を十分に補いました。今回は新適応(巨細胞性動脈炎)効果や地域拡大が成長を支えるかが焦点です。前回決算のハイライト4–6月期は売上高154.23億ドル(前年比+6.6%、為替中立+6.5%)と堅調に拡大し、調整後EPSは2.97ドルで2桁成長を確保しました。免疫領域が全社を牽引し、スキリージ(Skyrizi)が44.23億ドル、リンヴォック(Rinvoq)が20.28億ドルといずれも高成長を示しました。ヒュミラ(Humira)は11.80億ドルへ縮小しましたが、主力2剤の伸びで“ポスト・ヒュミラ”の構図がさらに鮮明になりました。ニューロサイエンスはバイラ―(Vraylar)と片頭痛(ウブレルビ/クリプタ)で+24%、一方で審美(Aesthetics)は-8%と足踏みでした。会社は通期調整後EPSレンジを11.88–12.08ドルへ上方修正し、成長路線を再確認しています。決算発表以降の主要ニュースパイプラインでは、リンヴォックが4月に巨細胞性動脈炎(GCA)でEU承認を取得し、適応拡大の裾野がさらに広がりました。炎症・自己免疫の高齢患者領域での存在感拡大は、売上のボラティリティ緩和に資する論点です。M&A・提携面では、8月にギルガメシュ・ファーマシューティカルズから5-HT2A作動薬系の難治性うつ病候補(bretisilocin)を最大12億ドル規模で導入する契約を発表しました。精神科領域の拡張と差別化を狙う動きで、2023年以降のイミュノジェンやセレヴェルなど一連の大型取引に連なる“ポートフォリオ再編”の一手です。短期EPSには費用増が出やすいものの、中期の成長力と選択肢を厚くする戦略と評価できます。一方で、米国ではヒュミラに対するバイオシミラー浸透が徐々に進み、薬局フォーミュラリの再編も相まってシェアダウンの圧力が続いています。もっとも、医師の切り替え先として自社のSkyrizi/Rinvoqが受け皿になっているとの経営側コメントもあり、同社内での“キャニバリゼーションによる防波堤”が機能している点は引き続き確認事項です。今回決算の注目ポイント第一に、免疫2剤の成長率の持続です。Skyrizi/Rinvoqは前四半期で合計64億ドル超まで拡大しました。Q3でも二桁成長を維持し、ヒュミラ減少分を余裕を持って吸収できているか、適応拡大(GCAなど)の初期寄与や地域別の伸びが語られるかが焦点です。ここで勢いが確認できれば、投資家は“ピーク・ヒュミラ依存”からの脱却をより強固に織り込めます。第二に、ニューロサイエンスと腫瘍のモメンタムです。Vraylar、ボトックス治療、Qulipta/Ubrelvyのトリプルで伸びた前四半期がベース。Elahere(イミュノジェン由来ADC)の売上進捗と適応拡大戦略、イムブルビカ/ベネクレクスタの成熟後トレンドなど、ポートフォリオの“次の柱”候補がどこまで積み上がるかが鍵となります。ここがコンセンサスを上回れば、2026年以降の増益確度に対する信認が高まります。第三に、審美領域の底打ちです。前四半期はAestheticsがマイナス成長でした。価格調整やプロモーションの質、在庫の正常化、地域ミックスの変化といったオペレーション要素がQ3でどう反映されたかを確認したいところです。審美は景況感の振れを受けやすい一方、粗利率の高い収益源でもあり、回復サインが出れば全社マージンの防御力につながります。第四に、M&A・提携に伴う費用とガイダンスの整合性です。年初からの獲得案件に係るマイルストンや取得R&Dは短期EPSのボラティリティ源です。8月のギルガメシュ契約に関する一時費用の計上有無、通期EPSレンジの再調整の必要性、キャッシュ・アロケーションの優先順位(負債返済・配当・自己株買い)の説明が明確であれば、不確実性ディスカウントは剥落しやすくなります。株価インパクトの見立て株価が最も素直に反応しやすいシナリオは、Skyrizi/Rinvoqの強い成長+審美の底打ち兆し+ガイダンス据え置き〜小幅上方が同時に確認できるケースです。ヒュミラの減少を十分に吸収しつつ、ニューロ・腫瘍で“次の柱”が積み上がる形が示されれば、マルチプルの上値余地は広がります。反面、免疫2剤の伸びが想定未達で審美の弱さが長引き、さらにM&A関連費用で通期レンジを下方に触る場合は、短期の評価は中立〜弱含みに傾きやすいでしょう。今期は案件導入の前向きなニュースが多いだけに、IRが投資→回収のタイムラインをどれだけ具体的に語れるかが分水嶺になります。まとめ今回決算は、①Skyrizi/Rinvoqの“二本柱”の持続力、②ニューロ・腫瘍・審美のバランス改善、③M&A・導入費用とガイダンスの整合性、の三点を軸に一次情報でチェックするのが有効です。特に前者はヒュミラ後の収益モデルを規定する核心であり、Q3の増勢と来期示唆が期待線を上回るかが最大の注目です。コールでは適応拡大の定量、地域別の手応え、費用計上のタイミングに関する発言を確認し、短期のボラティリティに流されず中期ストーリー(免疫中核+多角化)の毀損がないかを見極めていきましょう。

【エクソンモービル決算(2025年3Q)】ガイアナ前倒し稼働と投資配分の最適化を読む(Exxon Mobil)

【エクソンモービル決算(2025年3Q)】ガイアナ前倒し稼働と投資配分の最適化を読む(Exxon Mobil)

本記事では、エクソンモービル(XOM)の2025年7月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、10月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、ガイアナ増産と還元方針の維持が最大の焦点です。前回決算では増益こそ限定的ながら、生産量は堅調で財務基盤も強固でした。今期は4隻目FPSOの早期稼働による出油増加が期待され、パーミアンの効率改善も寄与が見込まれます。前回決算のハイライト4–6月期は、営業環境が落ち着く中でも底堅い決算でした。純利益は71億ドル(希薄化後EPS 1.64ドル)、営業キャッシュフローは115億ドル、フリーキャッシュフローは54億ドルを確保。配当は四半期0.99ドルとし、自己株買いと併せた株主還元の継続姿勢を示しました。バランスシートの純有利子負債比率は一桁台を維持し、財務耐久力も確認されています。セグメントでは、パーミアンやガイアナの増産効果で上流のボリュームが堅調に推移しました。通期の資本支出レンジは2025–27年で年220〜270億ドルの方針を再確認し、還元と投資の両立という従来の配分を維持しています。決算発表以降の主要ニュース最大のヘッドラインはガイアナの増産です。8月、スタブローク鉱区の4隻目FPSO「One Guyana」が予定より4か月早く稼働を開始しました。コンソーシアムの石油生産能力は90万bpd超を目指しており、年末に向けさらに高水準へのランプアップが見込まれます。9月の平均生産は約74万bpdとの現地報道もあり、年内90万bpd台の到達観測が強まっています。同鉱区を巡る係争では7月、国際商業会議所(ICC)の仲裁判断が出て、シェブロンによるヘス買収に対するエクソンの優先購入権主張は退けられました。これにより、ガイアナJVのパートナーはエクソン(45%)・シェブロン(ヘス30%を承継)・CNOOC(25%)の組成で固まり、プロジェクト推進の不確実性は後退しました。資本配分では、エクソンは2025–26年に年200億ドルの自己株買いペースを見込むとの方針を昨年末に示しており、Q2公表資料でも配当0.99ドルの維持と買い戻しの継続が確認されています。原油価格がレンジで推移する局面でも、安定的な還元ストーリーが株価の下支えとなっています。今回決算の注目ポイント第一に「量×原価」の改善トレンドです。ガイアナ4隻体制とパーミアンの連続増産が同時進行するなか、1バレル当たりキャッシュマージンの上振れ余地がどこまで見込めるかがカギになります。FPSO稼働の前倒し効果で、販売数量・操業率・フレアリング抑制の進捗が示されれば、来期FCFの感応度は一段と改善します。第二に、資本支出と株主還元の両立です。エクソンは25–27年のCAPEXレンジ(年220〜270億ドル)を掲げる一方、年200億ドルの買い戻しペースを想定しています。油価レンジが続く場合でもこの配分が維持できるのか、投資回収の道筋(ガイアナ追加案件、パーミアンの炭化水素回収最適化、低炭素ソリューションの商用化)に踏み込んだ説明があるかに注目したいです。第三に、合従連衡後のガバナンスとJV運営です。仲裁決着でガイアナJVの株主構成は固まりましたが、開発テンポ、オフテイクや販売体制、次フェーズ(最大日量170万バレル構想)の実行計画がどう最適化されるかは、コスト曲線と耐久的収益性に直結します。10月期のコールで、増産ロードマップと設備のデボトルネッキング方針への言及があるかを確認したいところです。第四に、下流・化学の循環です。製品スプレッドの回復が始まれば、上流主導の収益にレバレッジがかかります。特に米湾岸の軽質原料優位や、ベイタウンの化学拡張効果がどこまで出ているかは短期のEPSのブレに影響します。会社は“高リターン案件に集中”の方針を続けており、製品ミックスと操業率の定性コメントにも目配りが必要です。株価インパクトの見立て市場が最も反応しやすいのは、「上流の量的上振れ」と「配分のブレなさ」が同時に確認できるパターンです。具体的には、ガイアナの前倒し立ち上がりとパーミアンの効率改善が販売数量・マージンの押し上げとなり、同時に年200億ドルの買い戻しと0.99ドル配の継続が再確認されれば、決算後は素直に上方向を試しやすい展開になります。一方、油価のボラティリティに加え、化学スプレッドの弱さや操業トラブルで数量が想定未達となると、短期のEPSは重く、ガイアナ期待の一部巻き戻しもあり得ます。ただし仲裁決着でプロジェクトガバナンスの不確実性は後退しており、中期の増産ストーリー自体は維持される可能性が高いと見ます。まとめ今回決算は、①ガイアナの前倒し増産とパーミアンの継続増産による「量×原価」の改善、②CAPEXレンジと年200億ドル規模の還元継続の整合性、③化学・下流の循環的回復、④JVガバナンスの安定化、という四点でチェックすると全体像が把握しやすくなります。特にガイアナの稼働率・出荷・追加案件の示唆は来期のFCF見通しに直結します。決算当日はヘッドライン数値だけでなく、コールの定性コメント(増産ロードマップ、投資回収、還元方針)を一次情報で確認し、短期の値動きに振らされず中期のストーリーが毀損していないかを丁寧に見極めていきましょう。

【シェブロン決算(2025年3Q)】Hess統合と増配維持で試されるシェブロンの底力(Chevron)

【シェブロン決算(2025年3Q)】Hess統合と増配維持で試されるシェブロンの底力(Chevron)

本記事では、シェブロン(CVX)の2025年7月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、10月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、Hess買収効果と増産プロジェクトの成果が焦点となります。前回決算では減益ながら堅調な生産を維持し、テンギス油田やガイアナ鉱区の進展が成長ドライバーとして注目されました。Hess統合でガイアナ資産が加わり、原価低下とキャッシュフロー拡大への期待が高まっています。前回決算のハイライト4–6月期は調整後EPS1.77ドル、調整後利益31億ドルと、前年同期の高水準からは減益ながら想定線の着地でした。為替差損が3.48億ドルの逆風となった一方、米国内・世界全体とも生産は過去最高圏で、ポートフォリオの厚みが再確認されています。特殊要因では、Hess株式の公正価値評価や年金関連で2.15億ドルの純損失を計上しています。足元の原油レンジが落ち着くなかでも、基盤事業の稼ぐ力は維持された四半期でした。決算発表以降の主要ニュース整理最大のトピックは、Hessの買収完了です。7月18日に全ての前提条件を充足しクローズ、係争となっていたガイアナ・スタブローク鉱区の権利を巡る国際仲裁でもシェブロン側に有利な判断が示されました。これにより、同鉱区の30%権益を取り込み、世界有数の成長原資をポートフォリオに加えた格好です。買収確定は株価の不透明感を後退させる材料となり、対外的評価も改善しました。成長案件では、カザフスタン・テンギス油田の大規模増強(FGP/WPMP)が2025年1月に「初出油」に到達し、年央までの増産立ち上がりを会社が示しています。フル稼働時には日量26万バレル相当の上積みが想定され、キャッシュフロー拡大への寄与が意識されます。大型プロジェクトの進展は、中期の生産・原価曲線を押し下げる要素です。資本配分では、2025年のCAPEXレンジを145〜155億ドル(関連会社分17〜20億ドル)とし、前年から約20億ドルの削減方針を維持。原油価格の変動性を踏まえ、フリーキャッシュフロー(FCF)の安定確保を優先するメッセージです。買戻しは年100〜200億ドルのレンジガイダンスを継続しつつ、原油相場の局面に応じて四半期執行額を調整しています。増配は2025年に四半期1.71ドルへ5%引き上げ済みで、連続増配の伝統も堅持しています。今回決算の注目ポイント第一に、「ガイアナ×米中遊離原油(Permian・Gulf of Mexico)」の生産ミックスです。Hess連結によるガイアナ寄与がどの程度の出油・原価改善をもたらすか、同時にパーミアンやメキシコ湾の増産が全社のバレル当たりキャッシュマージンをどう押し上げるのかが焦点になります。会社は2025年のパーミアン生産100万BOE/D到達を示唆しており、域内の生産性向上と設備最適化が継続すれば、上流の利益弾力性は一段と増す見通しです。第二に、テンギスFGPの立上げ弾力です。初出油からのランプ曲線、ボトルネック対処の進捗、OPEX/メンテの実績が開示されれば、2026年に向けたFCFの見積り精度が高まります。原油価格がレンジ内でも、構造的な増産と原価低下が同時に進む局面は、収益の下方耐性を高めます。第三に、資本配分の「守りと攻め」のバランスです。CAPEX縮減はFCFの安定に資する一方、短期の成長率には抑制的に映る可能性があります。四半期の買戻しペース、原油価格前提に対する還元レンジの維持、増配方針の継続性が示されるかがポイントです。市況悪化時にレンジ下限へスライドしても、長期コミットメント(年100〜200億ドル)は維持、という整理ができれば、配当+買戻しの合計株主還元利回りへの信認は保たれやすいでしょう。第四に、費用・税・為替の外部要因です。Q2は為替で3.5億ドル規模の減益要因が発生しました。Q3でもドル高基調や地域税制に伴う効果は注意点です。Hess連結に伴うPPA(取得原価配分)や償却、のれんの扱いも、短期のEPSを左右し得る科目として確認が必要です。株価インパクトの見立て市場が最も反応しやすいのは、①Hess連結とテンギス増産で“量×原価”の改善がはっきり確認できるか、②CAPEX縮減下でも買戻しレンジと増配方針がぶれないか、の二点です。前者が裏付けられれば、ブレントがレンジ内でも来期のFCF見通しは上振れ余地が生まれ、バリュエーションのディスカウントは縮小しやすくなります。後者で「市況に連動して柔軟に執行、ただしレンジは堅持」というスタンスが再確認されれば、配当と買戻しの合算リターンが下支えとなり、決算後の上値追いを後押しする可能性があります。逆に、テンギスの立上げ遅延やガイアナの寄与鈍化、為替・税要因の逆風が重なると、短期のEPSは伸び悩み、原油相場の波に対して株価がやや脆弱に反応するリスクも残ります。まとめ今回決算は、①ガイアナ・パーミアン・メキシコ湾・テンギスという四本柱の生産ミックス、②CAPEX縮減と還元レンジ維持の整合性、③為替・税・PPA等の一過性要因、の三層で読み解くと全体像が整理しやすくなります。ヘッドラインの売上・EPSだけでなく、1バレル当たりキャッシュマージンやFCFの質、増産プロジェクトのマイルストーンに目を凝らすことで、短期のボラティリティに左右されにくい判断が可能になります。なお、カンファレンスコールは10月31日(米東部)に予定され、日本時間では11月1日未明から早朝にかけて一次情報が出そろいます。スライド・トランスクリプトで、Hess統合のKPIとテンギスのランプアップ曲線、今後の還元執行ペースの説明を確認しておくとよいでしょう。

【アマゾン決算(2025年3Q)】AIと広告の拡大で次の成長ステージに挑む(Amazon)

【アマゾン決算(2025年3Q)】AIと広告の拡大で次の成長ステージに挑む(Amazon)

本記事では、アマゾン(AMZN)の2025年7月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、10月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、AWSの成長持続と広告事業の拡大が焦点です。前回決算ではAWSが売上+17%で高収益を維持し、広告も2桁成長を続けました。今回決算ではAI関連投資の回収ペース、データセンター費用増とキャッシュフローのバランス、さらにFTC和解など規制対応の影響が注目されます。前回決算のハイライト4–6月期の売上高は1,677億ドル(前年比+13%)と増収、営業利益は192億ドルへ拡大しました。セグメント別ではAWSが309億ドル(+17.5%)とけん引し、同部門の営業利益は102億ドルに達しています。北米は売上1,001億ドル(+11%)で利益体質を維持、国際も黒字幅を拡大しました。一方、トレーリング12か月のフリーキャッシュフローは182億ドルと前年から縮小し、AI・データセンターを中心とする投資強化の影響がにじみました。会社はQ3売上高1,740〜1,795億ドル、営業利益155〜205億ドルを見込み、通期に向け堅調なトーンを維持しています。広告事業は引き続き高成長で、Q2の広告収入は157億ドルと推計され、前年比+22〜23%の伸びを示しました。CTVやDSPの機能強化、Prime Videoの広告面展開が追い風です。これにより「コマース × メディア」の収益ミックスが一段と厚みを増しています。決算発表以降の主要ニュース整理リテールでは、7月のプライムデー(4日間)が「過去最大」を更新し、年後半需要の先行指標として好感されています。さらに10月7–8日には秋の「Prime Big Deal Days」を実施し、ホリデー商戦の立ち上がりを早めた格好です(こちらはQ4寄与)。配送面では当日・翌日配送の対象拡大が続き、利便性を梃子にシェア防衛を図っています。規制面では9月、米FTCとプライム入会・解約設計(いわゆる“ダークパターン”)を巡る係争で総額25億ドルの和解が報じられました。民事罰10億ドルと消費者返金15億ドルを含む内容で、短期的には一時費用・返金実行のキャッシュ負担、長期的には入会・解約フローの変更によるサブスク成長率への影響が論点となります。クラウドとAIでは、2025年の設備投資(主にAWS向け)が年1000億ドル規模に達するとの観測が続き、電力・用地・半導体の確保を背景に投資先行の局面が続いています。AWSはBedrockやエージェント関連の提供拡充に加え、広告在庫の強化(Rokuとの連携)で広告事業とのシナジーも高めています。衛星ブロードバンド「Project Kuiper」は発射の積み増しで衛星数を伸ばし、将来の通信基盤としての外部選択肢を広げています。直接的な損益貢献は先ですが、物流・ラストマイルや新興国接続での応用余地が評価材料です。今回決算の注目ポイント第一に、AWSの成長持続と収益性です。前四半期は売上+17.5%に加え営業利益102億ドルと高収益を維持しました。今期も需要の柱が汎用クラウドから生成AI・エージェントの推論/学習基盤へ広がっているか、契約更新・新規案件のバランスやリージョン別動向を確認したいところです。マージン(Q2は売上比で約33%)が高水準で維持されれば、投資先行でも株価は織り込みやすくなります。第二に、広告と小売の質的改善です。広告は2桁成長が定着し、Prime VideoやCTV在庫の拡大、Roku連携による認証世帯リーチの増強がアトリビューションの優位性を一段と高めています。小売はネットワーク最適化の成果で配送コスト効率を維持しつつ、プライムデー効果がQ3のGMV・テイクレートにどう反映されるかが焦点です。第三に、キャッシュフローと投資計画です。TTMのフリーキャッシュフローは前年から低下しましたが、これはAI・データセンター投資の積み増しが主因です。投資の回収見取り図(CAPEXのピーク感、電力契約・自社チップやGPUサプライの確度、誘致インセンティブの活用)に踏み込んだ説明があれば、先行投資への市場の許容度は高まります。第四に、規制対応の定量影響です。FTC和解の費用認識タイミングや、UX変更に伴うプライム解約率・継続率の短期的なブレは監視ポイントです。欧州のDMA対応も含め、中期的にプラットフォームの価格決定力や広告入札のダイナミクスに与える影響をどう抑制するか、コールでの言及が注目されます。株価インパクトの見立て市場が最も敏感に反応しますのは、「AWSの二桁台後半の伸びと高マージン維持」「広告の二桁成長の継続」「投資先行でもキャッシュ創出の道筋がブレない」の三点が同時に確認できるかどうかです。Q3ガイダンスが保守的に見積もられている一方、AWSのデマンドと広告の在庫/価格が強ければ、来期に向けた増益期待でバリュエーションの天井感は切り上がりやすいでしょう。逆に、AWSの伸びが想定を下回り、FTC和解に絡む一時費用やプライムのKPI鈍化が前面に出ると、短期は「投資回収の時間軸」への不安が上値を抑えやすくなります。まとめ今回決算は、①AWSの成長とマージンの両立、②広告×メディア在庫の拡大による収益ミックス改善、③先行投資(データセンター/電力/半導体)とFCFのバランス、④規制対応の一時コストと中長期の影響、という四つの軸で読み解くと全体像がつかみやすくなります。まずは決算資料とコール(日本時間10月31日早朝)で、Q4入り直後の「Prime Big Deal Days」の手応えやホリデー見通しまで言及があるかを確認し、ヘッドラインの上下に振らされず、成長の“質”と投資回収の整合性を丁寧に評価していきたい局面です。

【アップル決算(2025年4Q)】新機種効果とサービス好調が再評価を導くか(Apple)

【アップル決算(2025年4Q)】新機種効果とサービス好調が再評価を導くか(Apple)

本記事では、アップル(AAPL)の2025年7月発表2025年度第3四半期決算を振り返り、10月に控える2025年度第4四半期決算の見どころを解説します。今回の決算はiPhone 17シリーズの初期販売動向とサービス収益の持続性が焦点となります。前回決算では売上高940億ドルと堅調で、サービス事業が過去最高を更新しました。前回決算のハイライト4–6月期は売上高940.4億ドル(前年比+約10%)、EPSは1.57ドルと市場予想を上回り、サービスは274.2億ドルで過去最高、iPhone売上は445.8億ドル(+13%)と力強さを示しました。一方、関税関連コストは当四半期で約8億ドル、9月期には約11億ドルの影響を見込むと説明しており、コスト環境の不確実性が残る構図です。地域別では中華圏が持ち直し、Macは想定超、iPadとウェアラブルはやや弱含みというミックスでした。経営陣はAI関連投資を「有意に拡大」すると明言し、9月期の売上は「中~高シングル」の伸びを見込むと示唆しました。決算発表以降の主要ニュース整理9月の発表会では、iPhone 17ラインアップに新機種「iPhone Air」が加わり、薄型筐体やA19系プロセッサ、上位に匹敵する仕様をアピールしました。Proモデルは価格改定も行われ、シリーズ全体でカメラ・表示・バッテリーが底上げされています。新機種の初期需要は年末商戦の先行指標となるため、今回の決算でも早期販売の手応えへの言及が注目点です。生成AIでは「Apple Intelligence」を巡る動きが続きました。年初に対応OSで既定オンとなる場面があった一方、広告表現の見直しを勧告した業界団体の判断を受け、提供状況の表示を修正するなど、段階導入の現実が浮き彫りになりました。こうした開発・提供のタイムラインは、来期の製品差別化とサービス収益のモメンタムに影響し得ます。規制面ではEUのDMA(デジタル市場法)に基づく是正・制裁が継続し、アプリ流通・課金周りでの方針変更や訴訟・上訴がニュースとなりました。短期の数値影響は限定的でも、中期のサービス粗利とプラットフォームの価格決定力を評価するうえでウォッチが必要です。今回決算の注目ポイント第一に、ハードの販売動向です。iPhone 17シリーズ(含むAir)の初期販売やミックス、地域別の需給が語られるかに注目します。9月発売機の寄与は部分的ですが、為替・関税環境下でも平均販売価格(ASP)と台数が維持・改善できているなら、ホリデー商戦への期待が高まります。Pro価格改定の弾力性、サプライの立ち上がり、インド・中国の生産配分も投資家の関心事です。第二に、サービスの持続的成長です。前四半期は二桁増で過去最高を更新しましたが、DMA対応やアプリ内課金の制度面に揺らぎがある中、クラウド、広告、決済、サブスクリプションの広がりでどこまで粗利率を支えられるかが焦点です。ARPUの押し上げ要因として、Apple Intelligenceを活用した付加価値の具体像(検索・推薦・生成系の統合)に踏み込んだ説明があれば、マルチプルの防御力が増します。第三に、関税・コストの見通しです。9月期に最大11億ドルと見積もった関税負担が実績としてどう着地したか、価格転嫁・生産移転・原価改善でどこまでオフセットできたかはマージンのカギです。来期も関税が続く場合の感応度(粗利率レンジ、在庫・物流面の調整)まで踏み込めると、不確実性は和らぎます。第四に、AI投資の規模と回収ロードマップです。経営陣はAI投資を「有意に増やす」と明言しており、Siriの高度化やデバイス内AIの展開タイムラインが、ハードとサービスのクロスセルを通じてどの程度トップラインと粗利に寄与し得るかが問われます。足元の機能は段階導入であるだけに、26年に向けた機能拡張の里程標と必要CapEx/Opexのバランスは重要な示唆となります。株価インパクトの見立て市場が最も敏感に反応しますのは、「iPhone初期需要の手応え」と「サービスの二桁成長」そして「関税・規制の不確実性の緩和」が同時に確認できるかどうかです。ハードのミックス改善とサービス粗利の積み上げが並走し、関税負担の実績が想定線内なら、決算後は素直な上方向を試しやすいでしょう。反対に、初期需要が慎重でサービスも伸びが鈍るなか、DMA対応や関税が重くのしかかる構図が強調されると、ガイダンスの保守化とあいまって短期のレンジ下限を探りやすくなります。AIに関しては、機能の段階導入や広告表現の見直しが示すとおり、拙速よりも完成度を優先する姿勢が継続しており、ロードマップ提示の明確さが評価差につながりやすい局面です。まとめ今回決算は、①iPhone 17/ Airの初期販売と価格弾力性、②サービスの成長持続とDMA対応の影響、③関税・原価のオフセット力、④AI投資の里程標と回収見取り図、という四点で確認すると全体像が把握しやすいです。日本時間では10月31日早朝に初期報道が出そろうため、まずはIRのリリースとカンファレンスコールで、販売・サービス・コストの三位一体を一次情報で点検してください。数値のサプライズがなくとも、不確実性低下と中期の語り口が整えば、評価の底上げは十分にあり得ます。

【マスターカード決算(2025年3Q)】国際決済の成長と法規制対応の均衡を問う(Mastercard)

【マスターカード決算(2025年3Q)】国際決済の成長と法規制対応の均衡を問う(Mastercard)

本記事では、マスターカード(MA)の2025年7月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、10月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、越境取引とサービス収益の持続力が焦点です。前回決算では旅行需要を背景にクロスボーダー取引が好調で、サービス事業も2桁成長を維持しました。前回決算のハイライト7月31日に発表された第2四半期は、ネット売上高が前年同期比+17%(恒常通貨+16%)と伸長し、調整後EPSは4.15ドルで市場予想を上回りました。総決済額(GDV)は+9%、越境(クロスボーダー)ボリュームは+15%と旅行・レジャー需要が引き続き追い風となり、収益の質を支える「サービス(不正検知・コンサル・データ)」も通貨中立ベースで+22%と好調でした。大型提携ではアメリカン航空との独占的パートナーシップ延長が明らかにされ、発行体・ブランド双方のロイヤルティ強化が進む構図が確認されました。会社側は需要の底堅さを背景に通期の売上成長見通しを“ミッドティーンズの上限”方向へ引き上げ、決算発表後の株価はじり高で反応しています。決算発表以降の主要ニュース整理事業面では、チェックアウト体験の変革が進展しました。欧州ではオンライン取引の約半数がトークン化され、加盟店保存トークン(SCOF)やClick to Pay、ウォレット連携の普及が不正率の低下と承認率の改善に寄与しています。前回の決算前から進めていたペイパルとの「One Credential」連携や、オープンバンキング・口座払いの実装拡大も発表され、カードに加えて“選べる決済”のハブとしての存在感を高めています。これらは短期の決済件数だけでなく、中期のテイクレートと付帯サービス売上の底上げに効く布石です。9月には決済オーケストレーションのPaytentlyが、Mastercard Open Financeを用いたA2Aチェックアウト「Paytently Open Banking」をローンチしました。強固な本人認証(SCA)を含む一連のフローを一体化し、承認の即時性と資金回転の改善を訴求しています。10月にもPayPalとの拡大提携が伝えられ、Mastercard Agent PayをPayPalのブランド決済(デジタルウォレット)に統合する計画が示されました。これにより、AIエージェントがユーザーに代わって購入手続きを完了するユースケースの実装が進み、年末商戦に向けたスケール化の加速が期待されています。null今回決算の注目ポイント第一に、越境トラベルの粘着度です。Q2で力強かったクロスボーダーは、夏の繁忙期を経たQ3でも二桁増を維持できたかが焦点となります。航空・宿泊価格の高止まりや為替の振れが追い風と向かい風を同時に生むなか、地域別の動向と為替中立ベースの伸び率が注目されます。クロスボーダーは手数料率が相対的に高く、上振れは売上ミックス改善と営業レバレッジの押し上げに直結します。第二に、サービス収益のモメンタムです。不正検知、データ&コンサル、サイバー対策などの「サービス」は決済ボリュームの循環を超えた成長ドライバーで、Q2は通貨中立+22%と高水準でした。チェックアウトのトークン化やOne Credential、リスクスコアリングの浸透が持続すれば、ARPUとスイッチングコストの同時上昇が期待できます。逆にマクロの減速でマーケ支出関連のコンサルが鈍ると、短期の伸び率はややブレやすくなります。第三に、規制・訴訟の波及リスクです。英国のMIF判決やEUの上限規制、国内外の加盟店手数料議論は尾を引きます。現時点で欧州の消費者向けカードの上限(デビット0.2%、クレジット0.3%)は変わっていませんが、商用カードや域外取引は相対的に高率のため、ここにメスが入ると収益性への示唆が大きくなります。会社がコールで示す規制対応の見取り図や、価格ではなく付加価値(不正低減・承認率改善)での説得力が評価の分かれ目になるでしょう。第四に、発行体・ブランド連携の深化です。大型エアライン提携の継続や、富裕・プレミアム層向けカードの刷新、銀行・フィンテックとの口座払い連携は、顧客獲得コストとLTVの改善に効きます。特に米系航空のクレジットパートナー再編が続く中で、マスターカードがどの程度プラットフォーム価値を示し、次の10年のキャッシュフローを取り込めるかが中期評価の鍵となります。株価インパクトの見立て市場が最も敏感に反応しますのは、「越境の上振れ」と「サービスの持続高成長」が同時に確認できるかどうかです。両者が揃えば、マージンのレバレッジが働きやすく、ガイダンスの上方バイアスとともにバリュエーションの天井感を切り上げる余地があります。反対に、越境が鈍化し、サービスも一時的に減速するようなら、需要循環のピークアウト懸念が先立ちやすいでしょう。法規制はヘッドライン・リスクとして短期のボラティリティを高めますが、トークン化・本人認証・不正抑止などの付加価値で加盟店・発行体双方に実益を示せれば、価格交渉力の低下は緩和できます。決算日当日はヘッドラインに加えて、地域別クロスボーダーの伸びとサービス収益の内訳、加えて法務・規制のアップデートに市場が素早く反応する可能性があります。まとめ今回決算は、①クロスボーダーの持続、②サービス収益のモメンタム、③規制・訴訟の波及、④発行体・パートナー連携の深度、という四つの軸で整理すると全体像がつかみやすいです。短期は英国のMIF判決など規制ニュースがノイズになり得ますが、トークン化やOne Credential、オープンバンキング連携の広がりは、中期の競争優位(承認率・不正率・UX)の源泉です。まずは決算資料とコールで、越境とサービスの“成長の質”が維持されているか、そして通期見通しに上振れ余地があるかを確認しつつ、ヘッドラインでのボラティリティ拡大要因となり得るため、個々の投資判断においてはリスク・許容度等を踏まえた慎重な検討が必要です。

【メルク決算(2025年3Q)】KEYTRUDA成長とガーダシル回復が焦点(Merck)

【メルク決算(2025年3Q)】KEYTRUDA成長とガーダシル回復が焦点(Merck)

本記事では、メルク(MRK)の2025年7月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、10月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、主力抗がん剤KEYTRUDAの成長持続と、中国で落ち込むガーダシル(HPVワクチン)需要の回復が焦点です。前回決算では売上158億ドルと堅調でしたが、中国市場の調整が続いています。前回決算のハイライト4–6月期は売上高が158億ドルでした。オンコロジー(KEYTRUDA)とアニマルヘルスがけん引する一方、中国でのガーダシル(HPVワクチン)需要減速が重石となりました。会社は通期レンジを維持・微修正しつつ、費用効率化とパイプライン投資の両立を強調しています。あわせて管理部門・R&Dの一部再編を含むリストラクチャリングを承認し、成長分野への資源再配分を進める方針を示しました。投資家目線では、主力の成長持続とワクチンのボラティリティが同居する内容でした。中国HPV市場の失速は象徴的です。メルクは2025年末まで対中出荷を停止・縮小する対応を継続し、Q2のガーダシル売上は大幅に減少しました。株価は短期的に調整しましたが、経営陣は売上構成全体に占める中国ガーダシルの比率は限定的と説明しています。ここは短期変動の源泉である一方、企業価値全体を決める決定打ではないという会社のメッセージが読み取れます。決算発表以降の主要ニュース最も大きいトピックは、KEYTRUDAの皮下注製剤「KEYTRUDA QLEX」の米FDA承認です。従来の点滴投与(約30分)に対し、最短1分の皮下注投与が可能となり、投与環境の柔軟性とチェアタイム削減が期待されます。多くの固形がん適応で承認され、今後は米国外でも審査が進展中です(欧州では9月にCHMPが承認勧告)。大型製品の“利便性イノベーション”は、シェア維持や医療現場での選好拡大に資する可能性があります。M&Aでは、英Verona Pharmaの買収合意を発表しました。対象薬Ohtuvayre(エンシフェントリン)は2024年にCOPD維持療法で米承認済みです。呼吸器領域への本格展開と、KEYTRUDAの特許満了以降を見据えた収益源の多角化という戦略意図が明確です。取引総額は約100億ドル、クローズは年内~年末を見込みます。大型買収ながら、既承認品の拡販余地と適応拡大のオプションが評価点となります。今回決算の注目ポイント第一に、KEYTRUDAの成長持続と「QLEX」寄与の示し方です。売上の量(患者数・適応拡大)に加え、皮下注の立ち上がりがどの程度チェアタイム制約を緩め、施設側のキャパシティ拡大→新規投与の取り込みにつながるかを会社がどう語るかが重要です。QLEXは投与オプションの拡張で実需を押し上げうるため、出荷ミックス・価格・シェア動向の定性コメントに注目が集まります。あわせて、術前・術後や早期がん領域での承認進展も成長ドライバーとして再確認したい論点です。第二に、ガーダシルのボトム確認です。中国の需要調整が続くなか、四半期でのボラティリティがどこで落ち着くのか、また他地域(米・欧・新興国)の伸長でどこまで吸収できるのかが問われます。会社は対中出荷抑制を延長し、市場動向を見極める姿勢です。Q3で底打ちの兆しや在庫正常化が見えれば、ワクチン関連のディスカウントは徐々に縮小する可能性があります。第三に、呼吸器フランチャイズの青写真です。Verona買収の戦略的位置づけ、販売体制・アクセス戦略、国際展開のロードマップが語られれば、中期の収益多角化に対する確度が高まります。COPDは高齢化と吸入療法の見直しニーズから構造的な需要が見込める領域であり、適応拡大(例:非嚢胞性線維症気管支拡張症)もオプションとして株式市場は意識します。経営陣がKPI(処方者数、継続率、保険償還の進捗など)をどこまで開示するかが注目です。第四に、費用・投資のバランスです。R&Dや設備投資はKEYTRUDA後の時代を見据えた“必要投資”ですが、短期では粗利率とフリーキャッシュフローの振れにつながります。7月に示されたリストラクチャリングの具体化、販管費の伸び抑制、M&A関連費用の扱いなど、来期に向けた利益体質のトレンドが確認できれば、バリュエーションの防御力が高まります。株価インパクトの見立て市場が最も敏感に反応しますのは、「KEYTRUDAの成長持続×QLEX立ち上がり」と「ガーダシルの底打ちサイン」を同時に示せるかどうかです。前者で上振れ感が出れば、特許満了(2028年)への警戒が一時的に後景化し、マルチプルの下押し要因が和らぎます。後者で在庫正常化・地域分散の手応えが出れば、ワクチン起因の割引は縮小しやすいでしょう。さらに、Verona買収の定量ロードマップが提示されれば、中期の“第二の柱”への期待が株価の下支えになり得ます。逆に、ガーダシルの弱さが長引き、費用増(買収費用・R&D・販管費)でマージンが想定を下回ると、足元の評価は慎重化しやすい点に注意が必要です。まとめ今回決算は、①KEYTRUDAの数量成長とQLEXの初期浸透、②ガーダシルの需給調整と地域分散、③Verona買収を軸とした呼吸器フランチャイズの立ち上げ、④再編・費用管理を含む資本配分の実効性、という四つの軸で確認すると全体像がつかみやすいです。ヘッドラインの売上・EPSだけでなく、プロダクト別の質的コメントと来期示唆(価格・ミックス・在庫)に目を凝らすことで、短期のボラティリティに振り回されにくい投資判断につながるはずです。

【サービスナウ決算(2025年3Q)】生成AIが次の成長ドライバーとなるか(ServiceNow)

【サービスナウ決算(2025年3Q)】生成AIが次の成長ドライバーとなるか(ServiceNow)

本記事では、サービスナウ(NOW)の2025年7月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、10月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。今回の決算は、生成AIの実装度と収益化の進展が焦点となります。前回決算ではサブスクリプション収入と受注残がともに2桁成長し、AI製品「Now Assist」の拡販が成長を牽引しました。前回決算のハイライト2025年7月23日に公表された第2四半期は、サブスクリプション売上が31.13億ドル(前年比+22.5%、恒常通貨+21.5%)と高成長を維持し、総売上は32.15億ドルでした。cRPO(向こう12か月の残存履行義務)は109.2億ドル(+24.5%)、RPO全体は239億ドル(+29%)と、受注残の厚みも着実に拡大しました。100万ドル超の新規純ACV案件は89件、ACV5百万ドル超の顧客は528社まで増加しています。経営陣は「Now Assist」などAI製品群の新規ACVが想定を上回っており、2026年に10億ドルACV到達を目指すと強調しました。なお、米連邦政府向けの需要鈍化を見込み、Q3ガイダンスにはその影響をあらかじめ織り込んだとしています。これらは“ビート&レイズ”の決算として投資家心理を支える内容でした。決算発表以降の主要ニュース整理まず日程面では、10月29日(米国時間)に2025年Q3決算のカンファレンスコールが予定され、機関・個人投資家の関心が集まっています。製品面では9月のストア・リリースでEmployee Experience領域のNow Assist機能を拡充し、生成AIを用いた従業員向けサポートの自動化・回答精度の改善を進めました。これは「生成AIの実装が、具体的な運用効率にどう効くか」という投資家の目線に直結するアップデートです。M&A・エコシステム面では、3月に発表した生成AIアシスタント企業Moveworksの買収(対価28.5億ドル)を継続進行するとともに、買収は年後半にクローズ予定で、AIエージェントの理解力・ガバナンス面の強化に資すると説明しています。NVIDIAやAWS、Ciscoなど大手との協業も拡大し、エージェント型AIを中核に据える戦略の外枠が固まってきました。 今回決算の注目ポイント最初の焦点は「生成AIの実装度と収益化の歩調」です。Now Assistの拡販が新規ACVのボリュームとディールサイズを同時に押し上げているか、既存ワークフロー(ITSM/CSM/HR/セキュリティなど)へAIエージェントをどこまで深く組み込めたかが問われます。四半期ベースでのAI由来パターンの定量(アタッチ率、プロプラス系SKUの寄与、アップセル/クロスセルの事例)に踏み込んだ説明があれば、成長の「質」への信頼度は一段と高まります。前四半期の発言どおりのトレンドが再確認されれば、株価にはポジティブに働きやすいでしょう。次に「公共(特に米連邦)需要の揺らぎと民間大型案件の綱引き」です。Q2時点で同社は米連邦の予算環境変化を理由にQ3への慎重姿勢を示しました。今回、公共の弱さが出ても民間のグローバル大型更新・拡張案件で相殺できているか、cRPOの伸びが20%台半ばを保てているかが、通期見通しの堅さを占います。公共の逆風を上回る民間のAI投資サイクルが確認できれば、短期のバリュエーション・ディスカウントは縮小しやすいと見ます。三点目は「プロダクトの幅とデータ戦略」です。の統合でデータガバナンスやカタログ機能がプラットフォームに内在化し、AIエージェントの“理解力”や説明可能性を底上げします。さらに、NVIDIAとの協業強化やエージェント評価ツールの提供は、導入前から検証→最適化→運用までの一連のワークフローを可視化し、企業の安心感を高めます。これらは案件化・導入スピードの加速に効くため、RPOの質改善という形で数字にも波及しやすい論点です。四点目は「M&Aの波及効果と費用構造」です。Moveworksの買収はプロダクト重複ではなく、エージェント型AIの“入口”強化として位置付けられており、オンボーディングやセルフヘルプ、チケット自動化の生産性を引き上げます。一方で、買収関連費用や人件費増、データセンター投資(推論コストを含む)の前倒しが粗利率に与える影響には注意が必要です。統合ロードマップとシナジーの早期顕在化が示されれば、短期の利益率懸念は緩和しやすいと考えます。 株価インパクトの見立て市場が最も敏感に反応しますのは、「AIドリブンなトップライン加速」と「費用・投資の回収見取り図」を同時に提示できるかどうかです。具体的には、サブスクリプション成長がガイダンス上限に近づき、cRPOの伸びが20%台半ばを維持し、AI製品のアタッチ率や大型更新の進捗が確認できれば、足元の評価は上がる可能性があります。反対に、公共向けの弱さが顕著で、AI関連費用や買収関連の費用増がマージンを圧迫する構図が強まれば、短期のリスク回避が先行しやすくなります。決算当日のコールでは、生成AI案件の勝ち筋(導入期間の短縮、運用自動化の実績、推論コストの最適化)がどれだけ具体化されるかが、翌日の株価方向性を占うカタリストになるはずです。 まとめ今回決算は、①Now Assistとエージェント型AIの実装度と売上寄与、②公共の鈍さと民間大型案件の均衡、③data.world等の統合とNVIDIA・AWS連携に象徴されるデータ/推論基盤の強化、④Moveworks買収の進捗と費用コントロール、の四つの観点で読み解くと全体像がつかみやすいです。10月29日の発表後は、ガイダンスやcRPO、AI関連の定量に市場が素早く反応します。一次情報(IRリリースやスライド、質疑応答)で、成長の“質”と投資回収の整合性を丁寧に確認していただくことをおすすめします。