投資を学ぶ/ライブラリー/ブルーモ経済調査部 Economic Research Department

ブルーモ証券

ブルーモ経済調査部(Economic Research Department)

ブルーモ証券株式会社で経済・金融の調査を担当しているチームです。代表の中村をはじめ、市場や企業の分析経験豊かなメンバーで構成されています。日々の経済動向や、個人投資家向けの資産運用のコツをお届けします。

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【ナイキ決算(2025年4Q)】在庫改善と中国回復が業績底打ちへの試金石に(NIKE)

【ナイキ決算(2025年4Q)】在庫改善と中国回復が業績底打ちへの試金石に(NIKE)

本記事では、ナイキ(NKE)の2025年3月発表2025年度第3四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第4四半期決算の見どころを解説します。株価は年初来20%程度の下落で低迷するなか、今回の決算では「減収幅の着地」「在庫圧縮とコスト削減の進捗」「中国・デジタル販売の回復度合い」が最大の焦点となります。前回決算(2025年第3四半期)の概要ナイキの前回の決算(2025年3月発表)では、売上高は前年同期比で約9%減少し113億ドルとなりました。為替の影響を除いた場合でも7%の減収と苦しい内容でしたが、一方で市場予想を上回る1株あたり利益(EPS)0.54ドルを達成しました。これは市場の予測である0.28ドルを大きく上回る内容だったため、収益面での改善期待から一時的に株価が支えられました。ただし、粗利益率は値引き販売の影響で前年より悪化し41.5%となり、利益率回復の難しさも同時に示されました。経営陣は決算説明会で「Win Now(今すぐ勝つ)」という経営戦略を推進し始めたことで、今後の収益回復に自信を示したものの、次の四半期(今回の決算)に関しても10%台前半の売上減少を予告するなど、依然として慎重な見通しを示しています。決算後の主な動きとニュースこうした業績低迷を受けて、ナイキは収益改善を目指し、2025年4月に世界全体の従業員の約2%に相当する1,600人以上を削減する人員整理を発表しました。また、ナイキにとって長く課題となっている在庫過剰の問題については、2025年4月以降アウトレット店舗を活用した在庫整理が順調に進み始めているとの見方があり、ようやく改善方向に向かっているという報告もあります。ただし、これらは値引き販売に頼った面も強く、収益性にはまだ不安が残っています。海外市場の中でも特に重要な中国市場は、売上が前年比17%減と依然低調な状態が続いています。また、2025年6月には期待された人気ブランド『スキムズ(Skims)』との女性向け商品の共同ブランドの立ち上げが生産遅延により延期されるなど、製品戦略でもつまずきが見られます。一方で『Vaporfly 4』や『Streakfly 2』など高性能ランニングシューズの新製品が投入され、製品ラインの刷新が一定の評価を得ていることも事実です。今回の決算(2025年第4四半期)の注目ポイント今回の決算で投資家が最も気にするべきポイントは、やはり売上高の減少幅が実際にどの程度に収まるかという点です。経営陣が予告した10%台前半の減収という予測よりも改善が見られれば、市場予想を上回る結果として株価の短期的な反発を促す可能性があります。また、在庫問題の改善がさらに進展しているかどうかも注目されます。在庫が想定より大幅に減少し、粗利益率が改善方向に向かう見通しが示されれば、業績の底打ち感が高まり株価へのプラス材料になるでしょう。逆に、在庫整理が思ったより進まず追加の値引きが発生する場合、利益率改善の遅れとして株価へのマイナス材料となります。さらに、中国を中心とした海外市場での需要回復度合いも大きな焦点です。中国市場での売上回復が遅れれば、ナイキのグローバルな収益改善ストーリーに水を差すことになります。この他にも、オンライン直販(DTC)分野での回復状況や、マーケティング投資とコスト削減のバランスをどう取るかといった戦略的なポイントにも注目が集まります。特に、2024年のパリ五輪に向けたマーケティング投資が費用対効果を発揮しているかどうかは、今後の業績見通しを占う意味でも重要です。株価への影響と投資家の対応ナイキの株価は2025年に入ってから約20%下落し、59ドル前後という低水準で推移しています。これは市場がナイキの業績改善に対し慎重な見方を崩していないことを示しています。今回の決算結果次第で、株価は短期的に大きく上下する可能性があります。売上や在庫整理が市場予想より好転していれば、一時的に株価の反発が見られるでしょう。一方、引き続き中国市場が弱含みであったり、追加の値引きが利益を圧迫したりすれば、さらなる株価下落もあり得ます。個人投資家としては、今回の決算では単なる数値だけでなく、ナイキ経営陣が描く2026年度以降の成長戦略や具体的な改善策に注目することが重要です。特に在庫整理やコスト削減の実行度合いが示されれば、長期的な視点で株価回復の可能性を探る上で良いヒントとなるでしょう。業績低迷期は株価のボラティリティが大きくなりがちです。個人投資家の皆様には、リスク管理として投資の規模やタイミングを慎重に検討し、落ち着いた対応をお勧めします。

【ウォルグリーンブーツアライアンス決算(2025年3Q)】業績底打ちを占う再編加速、買収動向も株価の鍵に(Walgreens Boots Alliance)

【ウォルグリーンブーツアライアンス決算(2025年3Q)】業績底打ちを占う再編加速、買収動向も株価の鍵に(Walgreens Boots Alliance)

本記事では、ウォルグリーンブーツアライアンス(WBA)の2025年4月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。前四半期(2Q)は売上高386億ドルで前年同期比4.1%増と増収を確保した一方、のれん減損などの影響で調整後1株利益(EPS)は0.63ドルへ半減、フリーキャッシュフローも赤字が続きましたその後、配当停止や大量閉店、さらにはシカモア・パートナーズによる買収合意など激震が相次ぎ、株価は低迷したままです。今回決算ではコスト削減の実行度合いとヘルスケア事業の再建が焦点となり、買収成立の行方も絡んでボラティリティの高い値動きが予想されます。前回決算(2025年第2四半期)の振り返り前回(2025年度第2四半期)は、売上高が386億ドルとなり、前年同期比で4.1%増加しました。一方、収益面では依然として課題が残り、調整後の1株あたり利益(EPS)は0.63ドルとなりました。この背景には、薬局部門における処方箋の取扱いが増えた一方で、美容品や季節商品といった小売販売の落ち込み、さらに関連会社VillageMDの事業価値の減損(約58億ドル)などの一時的なコスト増があります。結果として、フリーキャッシュフローも大きく赤字となり、WBAの経営課題が改めて浮き彫りになりました。決算発表後の主な動きとニュースWBAは前回の決算発表前から事業再編策がとられており、市場は期待と不安を交錯させながら現在も株価が推移しています。さらに3月には、大規模な店舗再編が発表されました。2025年中に米国内で新たに500店舗を閉鎖し、累計で1,200店規模を整理するという計画です。また、ヘルスケア事業の再編も急速に進めており、かつて成長を期待されたVillageMDについても一部店舗の整理や持分の売却検討が報じられました。最も大きなニュースは、3月下旬に明らかになったプライベートエクイティのシカモア・パートナーズによる買収提案です。WBAを最大237億ドル(1株あたり11.45ドル)で買収し、株式を非公開化するという基本合意が成立し、同社を巡る経営環境は大きく変化しています。今回決算(2025年第3四半期)の注目ポイント今回の決算で投資家が最も注目すべきポイントは、WBAが収益悪化をどこまで抑えられるかということです。前回好調だった薬局部門の売上高が今回も伸びを維持し、収益改善に貢献できるかが第一のポイントになります。また、WBAは1年間で10億ドル規模のコスト削減を掲げていますが、これが実際にどれほど効果を出しているのか、営業費用の削減が進んでいるのかについて、具体的な数字が求められます。さらに重要なのがキャッシュフローです。VillageMDなどの資産整理に伴う追加の減損費用や、米国のオピオイド問題関連の和解金支払いなどが再びキャッシュフローを圧迫する可能性があります。今回の決算ではこうした特別要因が再び利益を押し下げていないか、注意が必要でしょう。そしてもう一つの大きな焦点が、買収提案に関する動向です。買収に関する進捗状況が示されるか、正式な業績見通し(ガイダンス)が再び提示されるかが、株価の短期的な動きを左右する重要な要素になるでしょう。特に、現在の市場株価とシカモアが提示している買収価格との差が縮まるかどうかにも市場は注目しています。株価への影響と今後の見通しWBAの株価は現在、1月中旬以降から10%以上下落したまま低迷が続いています。配当停止や店舗閉鎖、事業再編による将来不安が重なり、買収期待で一時的に上昇したものの、その後は再び低調な動きを見せています。今回の決算発表前後では、市場参加者は株価が上下10%程度動く可能性を想定しています。コスト削減が具体的に成果を出し、キャッシュフロー改善の兆しが見えれば、短期的な反発(リリーフラリー)が起こる可能性があります。一方、減損損失の再発や買収の不透明感が続けば、株価の下押し圧力が強まる恐れもあります。個人投資家としては、この決算で薬局事業の回復やコスト削減策の進捗を確認するとともに、経営陣の買収プロセスに関する説明にも注目しておく必要があります。まとめと個人投資家としての対応WBAは現在、大胆な再編と買収による非公開化という二つの大きな変化の真っただ中にあります。今回の決算はその方向性や経営再建の成果を確かめる重要な局面です。特に収益回復が明確になれば、株価も底打ち感が出てくる可能性があります。しかし、経営の混乱や追加の減損リスクなど、マイナス面も決して軽視できません。このため、投資家の皆様は、決算発表をきっかけに予想される株価の大きな動きに備え、慎重に変化の方向性を分析しながら対応していくことをお勧めします。

【マイクロン・テクノロジー決算(2025年3Q)】HBM急伸の勢い継続か、巨額投資の影響も焦点に(Micron Technology)

【マイクロン・テクノロジー決算(2025年3Q)】HBM急伸の勢い継続か、巨額投資の影響も焦点に(Micron Technology)

本記事では、マイクロン・テクノロジー(MU)の2025年3月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。前四半期はAI向け高帯域幅メモリ(HBM)の急伸で大幅増益を達成し、会社側ガイダンスでも“過去最高売上”が示唆されています。一方で競合サムスンの追い上げや大型投資によるキャッシュフロー懸念もあり、株価は年初来50%超上昇後に神経質な値動きが続いています。前回(2025年第2四半期)決算のポイント前回決算(2Q)は売上高80.5億ドル(前年同期比38%増)と、業績が大幅に改善しました。利益面でも、非GAAPベースの1株利益(EPS)が1.56ドルと前年同期から約3.7倍となり、業績回復が鮮明となりました。特に、売上増加の背景には生成AI向け高帯域幅メモリ(HBM)需要の急速な拡大があります。データセンター向けDRAMの売上は四半期として過去最高を記録し、HBM関連だけで10億ドルを突破しました。こうした強い成長を背景に、会社側は2025年3Qについても「売上高88億ドル±2億ドル、EPSは1.57ドル±0.10ドル」と強気な見通しを示しました。一方、利益率の改善も注目すべき点で、純利益率は前年同期の14%から20%へと回復しました。これにより営業キャッシュフローも前年同期比で約3倍に増加するなど、好調さが目立つ決算でした。決算後の主な動きとニュース前回決算以降もマイクロンの事業環境には重要な動きがありました。その一つが、次世代HBM3Eメモリの量産を開始したことです。特にNVIDIA向けに供給を始めたことで、株価も一時的に上昇しました。さらに6月には、マイクロンが米国国内での設備投資計画を当初の想定から2000億ドル規模へと大幅に拡大することを発表しました。米国内のDRAM生産比率を40%まで引き上げることを目指し、競争力を長期的に高める狙いがあります。ただ、これほどの巨額な投資は財務上の負担が大きく、将来的なフリーキャッシュフロー(FCF)の圧迫が懸念されています。競合の動きも重要です。5月には韓国サムスン電子がHBM3Eの量産を開始し、主要顧客向け供給準備を整えていると報道されました。これにより競争激化や価格低下圧力が意識され、マイクロンの株価にもネガティブな影響がありました。また、Bloomberg Intelligenceは2033年までにHBM市場規模が今後大きく成長すると予測しており、長期的にはマイクロンにとって追い風となる材料です。アナリストは2025年通期のEPS予想を6.21ドルと前年の10倍近くになると見込んでおり、業績への期待は依然として非常に高い状態が続いています。今回決算で特に注目すべき点は?今回の2025年第3四半期決算ではいくつかのポイントに注目が集まっています。まず、市場の予測値と実績がどうなるかです。アナリストの売上予想は会社のガイダンスをやや下回る水準(84~86億ドル、EPS1.4~1.6ドル)にあり、市場の予想を上回る好決算(ビート&レイズ)であれば、株価にさらなる上昇の可能性があります。また、引き続きHBM関連の売上拡大のペースが焦点となります。前回四半期で急伸したHBMが今後どの程度まで成長を続けられるか、具体的な売上数字や経営陣のコメントが重要になります。特に会社はHBM売上について「年間ベースで数十億ドル規模」と見込んでいるため、この進捗が注目されます。次に、大型投資計画の影響です。米国への2,000億ドルの巨額設備投資は中長期的には市場競争力を高めますが、一方で短期的には財務面への負担増が懸念されます。今回決算では、投資に伴うキャッシュフローの見通しや財務戦略について、明確な説明が求められています。さらに、競合との価格競争状況や中国市場をめぐる地政学リスクも無視できません。特に、サムスンやSK HynixとのHBMのシェア争いが価格プレミアム維持に悪影響を及ぼす可能性があります。また米中関係の緊張がマイクロンのサプライチェーンに与える影響も市場の懸念材料として引き続き注意が必要です。株価への影響と個人投資家の対応ポイントマイクロン株は今年に入ってから既に約40%以上上昇し、6月中旬時点でPER約28倍まで買われています。これはAI関連銘柄としての注目が高まっているためですが、逆に言えば業績予想を少しでも下回ると大きく売られやすい水準でもあります。現在の市場環境では、決算発表当日のオプション市場が±7~10%程度の株価変動を想定していることから、結果次第で株価が大きく動く可能性が高いと見ておいた方が良いでしょう。今回の決算において個人投資家が特に注意すべきポイントは、HBM関連の売上高や利益率の推移、設備投資に伴う財務状況、そして次四半期の会社側ガイダンスの内容です。特にカンファレンスコールでの経営陣のコメントは、投資計画の資金調達方法や競争戦略について重要なヒントを与えてくれるでしょう。以上を踏まえ、短期的な株価変動を覚悟しつつ、中長期的な視点でマイクロンの成長ストーリーを冷静に分析していくことをお勧めします。

中東情勢が株価の重しに。FOMCと日銀会合の結果、金利差が意識され円安に|米国市場サマリー

中東情勢が株価の重しに。FOMCと日銀会合の結果、金利差が意識され円安に|米国市場サマリー

先週は、イスラエル‐イラン紛争を巡るヘッドラインとFOMC後のタカ派スタンスが交錯し、方向感に欠ける一週間となりました。週明けは原油急落を追い風にハイテク株が買われ、NASDAQが+1.5%でスタートしましたが、翌日は戦線拡大懸念と弱い小売売上高で主要3指数がそろって約0.8%下落しました。FOMCは利上げを見送りつつ「関税で夏場にインフレが上振れし得る」と警戒を示し、株価の戻りを抑えました。週末金曜日はトリプルウィッチングでは出来高が跳ね上がったものの、ダウ+0.1%、S&P500-0.2%、NASDAQ-0.5%で動かず。結果、週間ではダウ横ばい、S&P500-0.2%、NASDAQ+0.2%と強弱が分かれ、原油・金利・地政学要因が投資家心理を揺さぶる展開でした。為替は、144円台後半で始まり、中東リスクで一時円買いとなったものの、FOMC据え置きや日米金利差拡大観測からドル買いが優勢となり、20日終値は146.10円でした。米2年債利回り上昇がドルを支え、Juneteenthの薄商いとトリプルウィッチングのフローも絡んで上値を試す展開となり、週間では約1.4円のドル高・円安となりました。金融政策の方向性乖離を背景に、円が安全資産として買われにくい構図が鮮明でした。米国株式市場:イスラエル・イラン紛争が株価の重しに、FOMCは金利を据え置き6月16日(月) 米国株式市場は反発し、ダウ工業株30種平均が317ドル高(+0.75%)、S&P500が+0.94%、NASDAQが+1.52%と主要3指数そろって上昇しました。イスラエルとイランの空爆による原油供給懸念が後退し、原油価格が下落したことが買い安心感を誘いました。セクターでは情報技術とコミュニケーションがけん引し、Advanced Micro Devicesが8.8%高、U.S. Steelが日本製鐵の買収承認を受けて5.1%高。一方、Sarepta Therapeuticsは遺伝子治療の2例目の死亡報告で42%急落しました。6月17日(火) 中東情勢の悪化が再び市場心理を冷やし、ダウは299ドル安(-0.70%)、S&P500は-0.84%、NASDAQは-0.91%で終了。原油高を背景にエネルギー株は上昇したものの、太陽光関連銘柄が米上院による税控除段階的廃止案で急落(Enphase Energy-24%、Sunrun-40%)。テクノロジー大手も軟調でTeslaが4%下落しました。米5月小売売上高が予想外の減少となり景気懸念も加わりました。6月18日(水) FOMCは政策金利を据え置きましたが、パウエル議長が「関税の影響で今夏はインフレが上振れし得る」と発言し、序盤の上げを相殺。ダウは-0.10%、S&P500はほぼ横ばい(-0.03%)、NASDAQは+0.13%と小動きで終えました。業種別ではITが堅調で、Stablecoin企業 Circle Internet が米上院の規制法案可決を受け33.8%高、Nucorは好調な利益見通しで3.3%高。エネルギー株は原油反落を受け軟調でした6月19日(木) Juneteenth National Independence Dayの祝日で市場休場6月20日(金) 週末を控え投資家がイスラエル‐イラン紛争の拡大リスクを警戒するなか、ダウは35ドル高(+0.08%)と小幅高となった一方、S&P500は-0.22%、NASDAQは-0.51%で3日続落。四半期末の「トリプルウィッチング」に伴う出来高急増も相場を不安定にしました。個別では、好決算と通期売上高見通し引き上げで Kroger が9.8%急伸、Accenture は新規受注減少を嫌気して6.9%下落。半導体・メガキャップ株は軟調で NVIDIA などが指数の重しとなりました。為替市場:日米金利の乖離が意識され、安全資産としての円逃避も進まず円安へ為替は米長期金利動向と中東情勢をにらみつつ、週を通じて円安基調が続きました。16日はイスラエル―イラン衝突への警戒感から一時円買いが入ったものの、米金利の底堅さが下支えし、終値は144.74円でした。17日は日本銀行が政策金利と国債買い入れ計画を据え置いたことが「慎重姿勢」と受け止められ、ドル買いが優勢となり145.28円で引けました。18日はFOMCが金利を据え置き、パウエル議長がインフレ上振れリスクに言及した一方、弱い米小売売上高が重しとなり、145円近辺でもみ合い、終値は145.12円でした。19日は米国のJuneteenth祝日で薄商いの中、中東リスクとタカ派的なFRB見通しを背景にドル高が続き、145.46円へ小幅続伸しました。20日は地政学リスクへの警戒による安全資産としてのドル需要と四半期末のポジション調整が重なり、日中高値146.23円を付けた後、終値は146.10円となりました。ドルは対円で3週間ぶりの高値を更新し、週間では約1.36円(+0.9%)のドル高・円安です。日銀とFRBの政策スタンスの乖離が改めて意識され、地政学リスク下でも円が「安全資産」として買われにくい構図が浮き彫りになった一週間でした。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest

キャリートレードとは?日本の金利上昇がもたらす円キャリートレード解消リスク

キャリートレードとは?日本の金利上昇がもたらす円キャリートレード解消リスク

本記事では、「キャリートレード」の基本的な仕組みを解説した上で、円キャリートレードの巻き戻しリスクと、日本の長期金利上昇が円キャリートレードに与える影響について掘り下げていきます。キャリートレードとは「キャリートレード」とは、金利の低い通貨で資金を調達し、高利回りの資産に投資することで、その利回り差から利益を得る投資手法です。例えば、円を借りて米国のハイテク株や新興国通貨建て債券といった相対的にリスクの高い資産に投資し、最終的に外貨を円に戻して元本を返済するという流れが挙げられます。為替レートが安定していれば、調達金利と投資先利回りの差による利益が期待できますが、為替変動や金融政策の転換によって損失を被るリスクもあります。なお、金融用語で「キャリー」とは、保有資産から継続的に得られる金利や収益のことを指します。なぜ「円」がキャリートレードの調達通貨として選ばれるのか円キャリートレードが本格的に広がったのは、1999年に日本でゼロ金利政策が導入されたことが契機でした。デフレと低成長が続いた日本では、日本銀行(日銀)がマイナス金利政策やイールドカーブ・コントロール(YCC)など、長期にわたり緩和的な金融政策を継続してきました。特に、2013年の量的・質的金融緩和以降は、米国の利上げ局面と円安の進行が重なり、円キャリートレードは活発化。円は「低コストで借りやすい通貨」として、国際金融市場での地位を確立しました。また、為替のボラティリティが比較的低いことも調達通貨としての魅力を高めています。2022~2023年にかけては、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を5%超に引き上げる一方、日銀はゼロ金利を維持。結果として金利差が拡大し、キャリートレードは一段と活性化しました。2025年6月時点、日銀の短期金利は0.5%にとどまっており、円キャリートレードの環境は依然として存在しています。円キャリートレードの巻き戻しとは「巻き戻し」とは、キャリートレードによって積み上げられたポジションが、何らかの要因で一斉に解消される動きを指します。これは、金融政策の転換や市場のボラティリティ上昇などをきっかけに発生しやすく、投資家はリスク資産の売却と同時に、調達通貨である円の買い戻しに動きます。レバレッジをかけた取引が多いため、巻き戻しは急激に進行し、株式・債券市場を含む幅広い資産価格の下落を引き起こすことがあります。2024年以降、日銀はマイナス金利とYCCを終了し、政策正常化に舵を切りました。利上げは一時停止中とはいえ、日本国債の利回り上昇観測は資金調達コストの上昇を意味するため、円を借りてリスク資産に投資するメリットが低下しつつあります。昨年8月に円キャリートレードの巻き戻しが進み、急激な円高が発生したことも記憶に新しいところです。日本の長期金利上昇がキャリートレードに与える影響現在、日本の長期金利は過去最高水準付近で推移しており、キャリートレード解消への警戒感が市場で高まっています。この状況に対し、ソシエテ・ジェネラルのアルバート・エドワーズ氏は最近の顧客向けレポートで、日本国債の利回り急上昇により、米国の株式・国債市場の支えとなってきた日本の資金が急激に流出する可能性を指摘。これにより、米国のハイテク株など、円キャリートレードの恩恵を受けてきた資産が下落するリスクがあるとしています。一方、円キャリートレードの巻き戻しが昨年8月のように急激に進むとの見方には慎重論もあります。資産運用会社アムンディのガイ・ステア氏は、「大きなキャリーポジションは通常、為替トレンドが強いとき、または為替ボラティリティが非常に低いとき、そして短期金利差が大きいときに積み上がる」と述べ、短期金利差が縮小している現在、昨年よりも円の空売りポジションが減少していると指摘しています。アムンディのデータによると、2024年第2四半期には米日2年国債の利回り差は4.5%だったのが、直近では3.2%まで縮小し、キャリートレードの収益性を低下させています。日本の金融政策が大きな転換点を迎える中、円キャリートレードを取り巻く環境も徐々に変化しつつあります。特に、円金利の上昇は国際的な資金フローや米国市場のリスク資産価格にも影響を及ぼす可能性がある点で、投資家にとって重要な視点となります。

イーロン・マスクCEOとトランプ大統領の関係が与えるテスラ株への影響とは

イーロン・マスクCEOとトランプ大統領の関係が与えるテスラ株への影響とは

イーロン・マスク氏とドナルド・トランプ大統領の関係は、米国株市場における政治リスクの典型例として浮上しています。特にテスラ株は、両者の確執によって大きく振れ、単なる企業業績だけでなく、政権との関係性や政策の方向性といった外部要因に大きく左右される銘柄となっています。 両者の関係の推移(2016~2025年)2016年、マスク氏はトランプ氏の大統領当選を受けて政権の経済諮問委員に就任。当初は協調姿勢を見せましたが、2017年のパリ協定離脱に抗議して辞任し、気候政策を巡る立場の違いが浮き彫りになりました。その後2020年には、コロナ禍によるカリフォルニア州の工場閉鎖命令に反発したマスク氏を、トランプ氏がSNSで支持。再び接近の兆しを見せたものの、2022年にはマスク氏がフロリダ州知事ロン・デサンティス氏の支持を示唆すると、トランプ氏は激しく非難。以降、両者の関係は冷却化しました。2024年の大統領選ではマスク氏が最終的にトランプ陣営に巨額献金を行い、選挙戦を側面支援。トランプ氏が再選を果たすと、2025年にはホワイトハウス内にマスク氏主導の政府改革タスクフォースが設置され、一時的な蜜月が復活します。マスク氏は行政の無駄を削減する「政府効率化」プロジェクトの中心人物として政権内で重用され、SpaceXの宇宙通信インフラやAI開発推進といった分野でも協業が見込まれていました。しかし、2025年春に提出された大型減税・歳出法案「Big Beautiful Bill」にEV補助金の撤廃が含まれていたことをきっかけに、両者の関係は急速に悪化。マスク氏は法案を「財政規律を無視し、EV産業を冷遇するもの」と批判。トランプ氏は「マスクは補助金目当て」と反発し、テスラやSpaceXに対する連邦契約・補助金の見直しを示唆しました。この対立は短期間で一気に激化し、マスク氏はSNSで「トランプ大統領は弾劾されるべき」と投稿。さらに、政権がテスラ車の認証や政府調達の面で冷遇している可能性に言及するなど、直接的な企業運営への干渉を警戒する姿勢を鮮明にしました。トランプ氏もマスク氏を「恩知らず」と非難し、Starlinkや宇宙インフラ事業への契約停止にまで言及するなど、対立は制御不能なレベルにまで達しました。2025年6月のテスラ株急落(14%下落)の背景2025年6月5日、マスク氏とトランプ氏の確執が鮮明になる中、テスラ株は1日で14.2%下落。時価総額ベースでは約1,520億ドルが失われました。これはテスラにとって過去最大級の下落であり、政治的発言が株価に直撃する構図が改めて浮き彫りとなりました。背景には、(1)EV補助金撤廃の具体化、(2)政府契約打ち切りリスクの高まり、(3)ホワイトハウスとの関係断絶による将来的不確実性、といった複数の懸念が市場に波及したことがあります。投資家の売買動向ヘッジファンド:トランプ政権との関係悪化を“売り材料”と見なし、テスラ株の空売りを急増。6月5日の1日で約40億ドルのショート利益を得たとされます。アクティブ運用機関:ARK Investなどがテスラ株の一部を売却。政権リスクと収益鈍化の両面からポジションを減らす動きが見られました。個人投資家:下落を押し目と見て買い向かう層も多く、リテールは同日ネットで2億ドル以上の買い越し。レバレッジ型ETF(TSLLなど)への資金流入も増加しました。オプション市場:プットオプションの建玉が過去最高水準に膨らみ、ヘッジ需要の高まりと市場の警戒感が顕在化しました。市場では、「政治的な期待が剥落したことで、テスラ株のバリュエーションが現実に引き戻された」との評価が支配的となりました。テスラに影響を与える3つの構造リスク1. 政治リスクトランプ政権が政敵への報復的姿勢を見せた場合、テスラやマスク氏が関与するSpaceX・Starlinkなどの連邦契約が打ち切られる可能性があります。また、NHTSA(運輸省)による自動運転認可や安全審査にも政治的圧力がかかる恐れがあります。こうした契約の打ち切りは、マスク氏の資産構成にも影響を与え、テスラ株の売却圧力につながる懸念もあります。2. 政策リスクEV購入補助金の廃止、EVユーザーへの追加課税、州独自のZEV(ゼロエミッション車)義務撤廃などが含まれます。特に補助金撤廃はJPモルガンの試算で年間利益に最大12億ドルの影響とされ、テスラの利益構造に大きな圧力をかけます。また、中国製電池・パーツへの関税引き上げや米中対立の再燃により、テスラのコスト構造が不安定になる可能性もあります。上海工場に依存するグローバル供給体制が不安定化すれば、生産計画や価格戦略に影響を及ぼしかねません。3. ブランドリスクマスク氏の政治的発言やSNS上の言動が、テスラのブランドイメージを傷つけるリスクがあります。民主党系リベラル層はマスク氏の右傾化に反発し、保守層はトランプ批判に反発。結果的に「両サイドからの離反」が起こる可能性が指摘されており、顧客基盤の縮小に直結する懸念があります。また、環境志向の高い層や若年層がSNS上で「反マスク」的ムーブメントを強めることにより、購買意欲の低下やリセールバリューの下落といった間接的影響が出る可能性もあります。今後3〜6ヶ月の注目イベントと株価への影響予想直近の急落劇を受け、今後数ヶ月間のテスラ株は引き続き政局や政策ニュースに敏感な展開が予想されます。個人投資家が適切な判断を下せるよう、この先3〜6ヶ月の主要なイベント・ニュースフローと、そのテスラ株への潜在的影響を整理します。以下に、政策スケジュールや外部環境の主なポイントをまとめました。EV税額控除の撤廃法案の行方 2025年夏〜秋(議会審議)7,500ドルの税優遇廃止が成立すれば需要減退・利益圧迫要因となり、年間12億ドル規模の減益試算となります。成立阻止ならポジティブ材料になります。米中通商協議と関税措置 2025年後半(首脳会談模索)トランプ政権による対中関税・輸出規制の強化リスクとなります。車両関税や電池素材の供給制限が生じればコスト増で株価下押し要因となるでしょう。逆に首脳会談で摩擦緩和なら調達コスト改善に寄与し好材料になります。実際6月には鉱物紛争が一時懸念されました。自動運転規制の動向 2025年内(FSD調査結果等)NHTSAによる「完全自動運転(FSD)」機能の調査や、運輸省によるロボタクシー車両の認可動向に注視します。政権が非協力的なら認可遅延・追加規制の可能性もあります。ロボタクシー実証実験(2025年6月予定)への政府対応も焦点となります。前向きな規制緩和なら株価の追い風になります。政治・政策を巡る不透明感はテスラの評価に強く影響を与え続けます。両者の関係改善の兆しが見えれば、再評価の機運が高まる一方、対立が長期化すればバリュエーションの修正圧力が続くと見られます。政策リスクと感情的対立が株式市場に波及する構図は、今後の米国株全体にも示唆を与える重要なテーマといえるでしょう。

【クローガー決算(2025年1Q)】デジタル戦略と新経営体制の行方(Kroger)

【クローガー決算(2025年1Q)】デジタル戦略と新経営体制の行方(Kroger)

本記事では、クローガー(KR)の2025年3月発表2024年度第4四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第1四半期決算の見どころを解説します。前四半期はデジタル強化とコスト抑制で底堅さを示した一方、経営トップ交代やアルバートソンズとの統合断念など構造的な変化が相次ぎました。市場は同社が「日常必需品+デジタル会員基盤」というハイブリッド戦略を維持しつつ、物価動向と競争激化のはざまで利益成長を確保できるかを注視しています。前回(2024年度第4四半期)決算の振り返りクローガーは2025年3月6日に2024年度第4四半期(2025年2月1日締め)の決算を発表しました。売上高は343億ドルとなり前年同期比で減少しましたが、燃料や売却済み事業を除く既存店売上高は前年同期比2.4%増加し、安定的な業績を示しました。また、調整後の1株当たり利益(EPS)は市場予想を上回る1.14ドルを記録し、利益水準も堅調でした。特に評価されたのは利益率の改善です。粗利益率は在庫管理の改善やコスト削減の取り組みにより22.7%まで高まりました。さらに、デジタル売上高が前年同期比11%増加し、年間デジタル売上が130億ドルに達したことも、デジタル戦略の成功を印象付けました。クローガーはまた、通期業績見通しを「燃料を除く既存店売上高2〜3%増、調整後EPSは4.60〜4.80ドル」と発表しました。これに加え、自社株買いを総額75億ドルの枠内で加速的に進めることも明らかにし、株主還元策への積極姿勢を示しました。前回決算以降の主なニュース決算後に最も注目されたニュースは経営陣の交代でした。3月初旬、長年CEOを務めていたロドニー・マクマレン氏が個人的な行動が倫理規定に反したとして辞任を余儀なくされました。暫定的な後任として、元ステイプルズCEOのロン・サージェント氏が取締役会長兼CEOに就任しました。一時的な不安感が市場に広がったものの、株価への影響は限定的で、会社のガバナンスへの信頼は概ね維持されています。また、大きな戦略転換として、総額246億ドル規模で進められていた同業大手アルバートソンズの買収がFTC(連邦取引委員会)や州裁判所による差し止めにより頓挫しました。さらにアルバートソンズ側からクローガーが訴えられる展開になっています。この合併が実現しなかったことで期待されていたシナジー効果は失われましたが、財務的な柔軟性が保たれたと見る投資家もいます。今回(2025年6月)決算の注目ポイント今回の決算で投資家が注目すべき主なポイントは三つあります。一つ目は燃料を除く既存店売上高が引き続きガイダンスの上限近く(3%増)を達成できるかどうかです。食品業界では競争激化が続いており、生鮮品の価格競争が利益率を圧迫する可能性もあります。販売数量の維持・拡大がどの程度可能かが焦点です。二つ目はデジタル販売の成長持続性です。前四半期のデジタル売上は11%増と好調でしたが、宅配や店頭受け取りを中心としたデジタルサービス「Boost」の拡大が粗利益率改善に引き続き寄与するか注視されます。三つ目はコスト管理の徹底と収益性維持です。特に人件費の上昇が続くなかで、販管費をどこまで抑制できるかが重要です。さらに買収の中止に伴う訴訟費用や関連コストがどの程度影響するかも気になります。株価の動向と投資家への示唆2025年6月10日時点のクローガーの株価は65.37ドルで、4月22日の史上最高値72.63ドルからは約10%下落した水準にあります。現在の株価指標を見ると、株価収益率(PER)が約15.9倍、株価純資産倍率(PBR)は約1.6倍で、食品小売業界としては妥当な水準と評価されています。直近では、CEO交代や買収断念の影響による株価調整局面から徐々に回復しています。今回の決算が好調な内容であれば、過去の高値圏への再接近も十分考えられます。ただし、FTCとの訴訟問題や今後の訴訟費用、物価動向などの外的要因が短期的な不安要素として残っており、投資判断には慎重な姿勢が求められます。まとめと個人投資家への提言今回のクローガー決算では、デジタル販売の継続的な拡大と既存店売上高の堅調な推移、経営陣交代後のコスト管理力が焦点となります。訴訟関連費用や外部環境の影響を冷静に見極める必要はありますが、安定した財務基盤や株主還元方針に対する市場の評価は高く、中長期的な視点から投資を検討する価値は十分あるでしょう。投資家は今回の決算発表を受けて、株価の一時的な変動に惑わされず、堅実に業績トレンドを確認しつつ、投資戦略を慎重かつ柔軟に構築していくことが望ましいでしょう。

【アクセンチュア決算(2025年3Q)】生成AIの受注と利益率が焦点(Accenture)

【アクセンチュア決算(2025年3Q)】生成AIの受注と利益率が焦点(Accenture)

本記事では、アクセンチュア(ACN)の2025年3月発表2025年度第2四半期決算を振り返り、6月に控える2025年度第3四半期決算の見どころを解説します。生成AI需要を軸に受注と業績の改善が見込まれる一方、マクロ環境の減速懸念が交錯しており、個人投資家にとっては成長ポテンシャルとバリュエーションのバランスを見極める局面となります。前回決算の振り返りとその後の主なニュースを整理し、今回決算の注目点を明らかにするとともに、株価への影響を見ていきます。前回決算(2025年3月)の振り返りアクセンチュアは2025年3月20日に2025年度第2四半期決算を発表しました。この四半期の売上高は16.66億ドルで、前年同期比では5%増となりました。為替変動を調整した場合では8.5%の伸びを記録しており、業績の底堅さを示しました。利益面でも、1株当たり利益(EPS)は2.82ドルとなり、前年同期比2%の伸びとなりました。また、受注総額は209億ドルと堅調な水準を維持しました。その中でも特に注目されたのが生成AI関連の受注で、その規模は14億ドルに達し、市場からも高評価を受けました。この結果を踏まえ、経営陣は通期の売上成長率の予想下限を従来より引き上げ、5%としました。AIサービスの需要拡大を見込んだ前向きな姿勢を示しています。決算発表後の主なニュースと動向前回決算以降も、アクセンチュアは積極的な投資を続けています。6月初旬には、NVIDIAのスタートアップ支援プログラム「Inception」との連携を発表しました。これは、生成AI分野のスタートアップ企業を支援し、その成長を加速させることを狙った取り組みです。さらに5月中旬には、フィンランドの大手金融グループOP Financial Groupとの協業を拡大し、保険業務におけるAIや自動化に関する大型プロジェクトを獲得しています。このような大型案件は、アクセンチュアがAI分野で持続的な成長を遂げている証拠となります。他方、企業の多様性目標に関しては課題も指摘されました。多様性促進策の一部を見直す方針が報道され、企業ガバナンス面での懸念材料として一部で取り沙汰されています。投資家にとっては、このような企業文化の課題も無視できない要素となります。今回決算の注目ポイント6月20日に予定される決算発表では、生成AI分野の受注が引き続き好調を維持できるかどうかが最大の焦点となります。前回の14億ドルという受注額をさらに超えることができるか注目されます。また、コンサルティング部門の業績回復も重要なポイントです。前回決算ではインフラ移行やサイバーセキュリティなど必須分野での受注は順調でしたが、顧客の裁量的なIT支出の抑制が継続している点が懸念材料でした。この裁量的支出の回復状況についても、今回の決算で明確な動向が確認できるか注目されます。さらに、営業利益率の維持・向上も投資家にとって重要な判断材料です。ここ数四半期のコスト削減効果は一巡しつつあり、人件費の上昇圧力も無視できません。利益率が堅調に維持されるかどうかは、業績全体の評価を左右します。加えて、海外市場での業績も要注意です。特に欧州の為替の影響やアジア市場の景気減速が、ドル換算の業績にどのように影響するのかについても投資家は注意を払う必要があります。株価動向と投資への示唆6月10日時点の株価は320.92ドルで、直近の52週高値である398.35ドルから約19%下落しています。3月の決算発表直後には、一時的に業績を評価した買いが入り株価は上昇しましたが、その後、米国の金利上昇や顧客企業のIT支出減速に対する警戒感から調整局面を迎えました。現在の株価収益率(PER)は約26倍で、同業他社と比較すると特別割高感はありません。AIサービスへの需要拡大を見込めば、やや割安と評価する声もありますが、米国景気の不透明感や顧客企業の予算縮小が株価の上値を抑えている状態です。個人投資家にとっては、今回の決算で明らかになる生成AI関連受注の勢い、受注残高の質的変化、営業利益率の維持状況の3点が特に重要な判断材料です。AI分野での成長が持続すると考える投資家にとっては、現在の株価調整を押し目買いのチャンスと捉えることも可能です。一方、慎重な姿勢の投資家は、今回の決算内容を確認した上で投資判断を行うことが推奨されます。今回の決算が株価に与えるインパクトは、生成AI分野の勢い次第で大きく左右されるでしょう。サプライズがあれば短期的な反発も期待できますが、見通しに慎重な姿勢が見られれば株価の調整が長引く可能性もあります。投資戦略としては、こうしたリスク要素を念頭に、慎重な分散投資を心がけることが望ましいでしょう。

米中協議とインフレ沈静化で株価は上昇基調に乗るも、中東情勢緊迫化でリスクオフへ|米国市場サマリー

米中協議とインフレ沈静化で株価は上昇基調に乗るも、中東情勢緊迫化でリスクオフへ|米国市場サマリー

先週は、前半の「米中協議期待」と後半の「中東リスク」で明暗が分かれました。9~10日はロンドンでの米中通商協議への期待から Amazon.com や Alphabet が買われ、S&P500 と NASDAQ が高値圏へ。11日は CPI 減速でもイスラエル・イラン情勢の緊迫化でハイテク中心に反落。12日は Oracle の強気見通しが AI 楽観を再燃させ、Microsoft や NVIDIA が上昇し主要指数も持ち直し。しかし13日、イスラエルがイラン核施設を攻撃したとのニュースで原油高・防衛株高となる一方、ハイテクと航空が売られ、ダウ平均は769ドル安と急落し週間では主要3指数ともマイナスで終了しました。為替は、144円台前半でスタートし、米長期金利の反発で10〜11日に145.41円まで上昇。12日の米5月CPIが予想を下回ると144.20円へ反落し、週末は144.06円で終了。週間レンジは約1.3円と小幅で、米金利動向とインフレ指標が主導し、日銀会合前で国内材料は限定的でした。米国株式市場:米中協議進展とCPI下振れで上昇基調ができるも、中東情勢でリスクオフへ6月9日(月) 米国株式市場は反発し、S&P500とNASDAQがそろって上昇しました。米中がロンドンで開始した第2回閣僚級通商協議への期待が追い風となり、Amazon.comとAlphabetが1%超上昇した一方、Appleは年次開発者会議の材料不足で1.2%下落しました。公益・金融セクターは軟調で、Warner Bros. DiscoveryやMcDonald’sが下げ、Robinhood MarketsもS&P500採用見送りで売られました。6月10日(火) 米中協議の進展期待が続き、市場は続伸。ダウ平均は105ドル高となり、S&P500は史上高値付近で推移しました。Teslaが5.6%急伸して相場を牽引し、AlphabetもGoogle Cloudの採用報道で1.4%高。対照的にMicrosoftは小幅安でした。Insmedが治験好結果で約29%急騰した一方、J.M. Smuckerは通期見通しの下方修正で15%超急落。エネルギーがセクター首位となり、投資家は翌日のCPI発表を注視しました。6月11日(水) 中東情勢の緊迫化を背景に、S&P500とNASDAQが下落し、ダウ平均は横ばいで終了しました。5月CPIは市場予想を下回ったものの、イスラエルとイランを巡る地政学リスクがリスクオフを誘発。Amazon.comとNVIDIAが下げ、GameStopは決算失望で5%超下落しました。Teslaは前週の急落からわずかに反発しましたが、一般消費財と素材セクターが売られ、市場の重しとなりました。6月12日(木) OracleがAI関連需要を背景に通期売上高見通しを引き上げ、株価が13%超急騰。これを受けてAI関連楽観が広がり、Microsoft、NVIDIA、Broadcomも1%超上昇しました。中東リスクやBoeingの5%安(インドでの墜落事故報道)を吸収して主要指数は上昇。PPI低下と失業保険申請増により利下げ期待が強まり、金鉱株も買われました。6月13日(金) イスラエルがイランの核関連施設を攻撃し、報復の応酬懸念が高まったことで投資家心理が急速に悪化。ダウ平均は769ドル安、S&P500とNASDAQも大幅安となりました。原油が約7%急騰し、Exxon Mobilなどエネルギー株、Lockheed Martinなど防衛株が上昇する一方、燃料コスト増懸念から航空株は4%前後下落。AdobeがAI導入ペース懸念で5%安、NVIDIAとAppleも下落しましたが、Oracleは好業績見通しで7%高と逆行高でした。為替市場:関税交渉と雇用統計で相場は揺れるも、ドル買いが優勢2025年6月9日〜13日のドル円は、米金利見通しと米インフレ指標をにらみつつ 144円台中心に小幅上下しました。9日(月)は前週末と同水準の144.69円で寄り付き、材料乏しく144円台前半で小動き。10日(火)は米長期金利が持ち直したためロンドンで145円を超え、NY高値は145.29円。11日(水)も米株堅調を背景に買いが続き、週内の最高値145.41円を記録しました。12日(木)発表の米5月CPIは伸びが市場予想を下回り、利下げ観測が再燃してドル売りが優勢となり、144.20円へ反落して引け。13日(金)は翌週の日銀会合を控えポジション調整が中心で、米生産者物価指数(PPI)がわずかに上振れしたものの動意は限定的、週末終値は144円でした。週間レンジは約1.3円(144.20〜145.41円)と比較的狭く、上方向は米金利反発、下方向はCPI下振れという米指標主導の値動きにとどまりました。ブルーモの公式Xでは決算や指標の速報をお届けしているので、興味ある方はフォローしてみてください。https://x.com/Bloomo_invest